特許第6525385号(P6525385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許6525385選択的な金属被覆のための遮断コーティング
<>
  • 特許6525385-選択的な金属被覆のための遮断コーティング 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525385
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】選択的な金属被覆のための遮断コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20190527BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20190527BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20190527BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20190527BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C23C18/20 Z
   C09D5/00 D
   C09D171/02
   H05K3/28 C
   H05K3/18 E
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-172705(P2017-172705)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-44241(P2018-44241A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】15/263,640
(32)【優先日】2016年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン・タット・チャン
(72)【発明者】
【氏名】カ・ミン・イップ
(72)【発明者】
【氏名】チット・イウ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】クォック・ワイ・イー
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0175824(US,A1)
【文献】 特開昭63−105973(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00729293(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0106484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00− 18/20
H05K 3/00− 3/28
C09D 5/00
C09D 171/00−171/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基板の金属被覆の方法であって、
a)ポリマー基板を提供することと、
b)下記式(V)を有する芳香族複素環式化合物を含むプライマーを前記ポリマー基板に適用して、前記ポリマー基板上に親水性のコーティングを提供することと、
【化1】
式中、Rが、窒素原子または硫黄原子から選択されるが、但し、Rが硫黄である場合、R14が存在しないことを条件とし、R10及びR14が独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C24)アルキル;チオール;直鎖または分岐鎖チオール(C−C24)アルキル;ニトロ;直鎖または分岐鎖ニトロ(C−C24)アルキル;ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C2)アルキル;直鎖または分岐鎖アルコキシ(C−C24)アルキル;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C24)アルキル;ハロゲン;直鎖または分岐鎖ハロ(C−C24)アルキル;カルボキシル;直鎖または分岐鎖カルボキシル(C−C24)アルキル;アシル基;エステル基;置換または非置換アリール(C−C)アルキル;及び置換または非置換アリール基から選択され、R15、R16、R17、及びR18が独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C24)アルキル;ハロゲン;ハロ(C−C24)アルキル;ニトロ;ヒドロキシル;直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C24)アルキル;チオール;直鎖または分岐鎖チオール(C−C24)アルキル;ニトロ;シアノ;アミノ;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C24)アルキル;置換または非置換アリール(C−C)アルキル;及び置換または非置換アリールから選択される、
c)前記プライマーと直接隣接して疎水性のトップコートを適用して、前記基板上に遮断コーティングを形成することであって、前記疎水性のトップコートは、アルキルアルコールアルコキシレート、アルキルチオール、非ポリマー一級アルキルアミン、及び非ポリマー二級アルキルアミンから選択される1つ以上の化合物を含む、形成することと、
d)前記遮断コーティングを選択的にエッチングして、前記ポリマー基板の一部を露出させることと、
e)前記ポリマー基板に触媒を提供することと、
f)前記ポリマー基板を選択的に無電解金属めっきすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記プライマーが、1つ以上の金属イオンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の金属イオンが、銅、ニッケル、マンガン、及び亜鉛から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキルアルコールアルコキシレートが、次の式を有するポリエトキシ化アルコールポリマーであり、
CH(CH−(O−CH−CH−OH (VII)
式中、mが、7〜25であり、nが、〜25の平均エトキシ化度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキルチオールが、次の式を有し、
19−SH (XII)
式中、R19が、1〜24個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、5〜14個の炭素原子を有するアリール基、またはアルキルアリールであり、前記アルキルアリールのアルキが、1〜24個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖であり
、前記アリールが、5〜14個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非ポリマー一級アミンが、次の式を有し、
20−CH−NH (XIII)
式中、R20が独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C
)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C20)アルケニル
、置換もしくは非置換(C−C)シクロアルキル、または置換もしくは非置換(C
−C10)アリールから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非ポリマー二級アミンが、次の式を有し、
21−CH−NH−CH−R22 (XIV)
式中、R21及びR22が独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C20)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C20)アルケニル、置換もしくは非置換(C−C)シクロアルキル、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記疎水性のトップコートが、1つ以上の有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の有機溶媒が、アルコール、ジオール、トリオール、及び高級ポリオールから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
金属が、銅である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型相互接続装置に関するポリマー基板の選択的な金属被覆のための遮断コーティングを対象とする。より具体的には、本発明は、遮断コーティングがその後の触媒及び無電解金属めっきに対するバリア層としての働きをする、成型相互接続装置についてのポリマー基板の選択的な金属被覆のための遮断コーティングを対象とする。
【背景技術】
【0002】
レーザー直接構造化プロセス(LDS)が、成型相互接続装置(MID)と呼ばれる成型プラスチック材料の選択的なめっきのために10年超にわたり開発及び使用されてきた。LDSにより、複雑な3次元基板での高機能回路配置を実現することが可能である。本プロセスの基礎は、無機充填剤を含む、添加剤をドープした熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックを含み、これによりレーザー活性化による回路トレースの形成、その後の無電解めっきを使用した金属被覆が可能になる。そのようなプラスチックに組み込まれた添加剤を含む金属は、レーザー光線によって活性化され、めっきされるプラスチックの表面の処理部分で無電解銅めっき用の触媒として活性化する。活性化に加えて、レーザー処理が微視的粗面を作り出す場合があり、微視的粗面に銅が金属被覆中にしっかりと固定されるようになる。しかしながら、そのような技術が添加剤をドープしたプラスチックへの適用に限定される一方、添加剤をドーピングしないエンジニアリングプラスチックの一般的なタイプは、無電解銅めっきについて活性化することができない。
【0003】
別の技術ではLDSと一緒に専売塗料が使用される。プラスチック部分に塗料の薄膜層を最初に吹き付けることによってなされる。次いで、LDSプロセスにより塗料のコーティング上に回路配置が作り出され、同時に回路上の塗料を活性化する。次いで、プラスチックが、金属被覆用の無電解銅めっきを経る。この手法は、添加剤をドーピングしないプラスチックに及び得る。しかしながら、まだプロトタイプの段階であり、大量生産にはまだ準備が整っていない。
【0004】
レーザー再構成印刷(LRP)は、MID適用時の別の革新的技術である。LRPは高精度印刷を利用して、回路配置を形成するように加工対象物上に導電図(銀ペースト)を作り出す。次いで、印刷済みの加工対象物がレーザートリミングされる。高精度な回路構造が加工対象物上に生み出される。この技術は、高価な3D印刷機への高い初期投資を含む。
【0005】
別の技術は、セミアディティブ工法(SAP)である。第1のステップは、プリント回路基板上の金属被覆のために既存のコロイド触媒及び無電解銅を利用してプラスチック基板上で無電解銅の薄膜層をめっきすることである。ネガ型電着フォトレジストの層が、プラスチック基板上にコーティングされる。露光及び現像により、回路パターンがフォトレジストを被覆せずに露出される。露出された回路が、必要とされる厚さを達成するように、銅、次いでニッケルでめっきされ得る。残部のフォトレジストが除去される。過剰な銅の層がマイクロエッチングによって除去される。この技術の利点は、通常の無電解めっきプロセスの代わりに、完全な銅の蓄積及びニッケルについて低予算の電解めっきプロセスを適用することができることである。プラスチック基板が、無電解銅の層で既に完全めっきされている。また、この技術は、添加剤をドーピングせずにプラスチック上に適用され得る。しかしながら、レーザーを使用した回路の粗化は含まないため、めっきの密着性が不安である。加えて、プロセスの順序がかなり長く、かつ複雑であり、追加のフォトレジストプロセスを必要とする。
【0006】
ポリマー及びプラスチック材料の選択的な金属被覆に関する種々のプロセスがあるが、ポリマー及びプラスチック材料の選択的な金属被覆の改善された方法、特にMIDの必要性がまだある。
【発明の概要】
【0007】
ポリマー基板の金属被覆の方法であって、ポリマー基板を提供することと、芳香族複素環式化合物を含むプライマーをポリマー基板に適用して親水性のコーティングをポリマー基板上に提供することと、プライマーと直接隣接して疎水性のトップコートを適用して、遮断コーティングを基板上に形成することであって、疎水性のトップコートは、アルキルアルコールアルコキシレート、アルキルチオール、非ポリマー一級アルキルアミン、及び非ポリマー二級アルキルアミンから選択される1つ以上の化合物を含む、形成することと、遮断コーティングを選択的にエッチングしてポリマー基板の一部を露出させることと、ポリマー基板に触媒を提供することと、ポリマー基板を選択的に無電解金属めっきすることと、を含む、方法。
【0008】
遮断コーティングは、水性ベースの触媒を忌避する、触媒の疎水性の特性によってプラスチック基板上で触媒の吸着を抑制する場合があるか、または吸着触媒を非活性化する場合がある。加えて、遮断コーティングは、バックグラウンドめっき及びオーバーめっきを抑制し得る。イオン性触媒及びコロイド触媒の両方が使用され得る。包埋触媒を含む及び含まないポリマーが、本発明によって使用され得る。本発明の方法が3Dポリマー基板上での回路形成において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の全体にわたって使用されるように、以下に所与の略称は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、g=グラム、mg=ミリグラム、mL=ミリリットル、L=リットル、cm=センチメートル、m=メートル、mm=ミリメートル、μm=ミクロン、ppm=百万分率、mg/L=ppm、M=モル濃度、℃=摂氏温度、RT=室温、g/L=1リットル当たりのグラム数、DI=脱イオン、MID=成型相互接続装置、3−D=三(3)次元、Pd=パラジウム、Nd:YAG=ネオジムド−プイットリウムアルミニウムガーネット、EO=エチレンオキシド、PO=プロピレンオキシド、PO−b−EO=プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロックコポリマー、Mn=数平均分子量、wt%=重量パーセント、ABS=アクロルニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、PC=ポリカーボネートポリマー、及びT=ガラス転移温度、の意味を有する。
【0011】
用語の成型相互接続装置、つまりMIDは、典型的には3Dの形状または形態を有する集積電子回路トレースを含む熱可塑性プラスチック射出成型品を意味する。用語「バックグラウンドめっき」は、金属の堆積が意図されていない、ポリマーまたはプラスチックの表面への無作為な金属堆積を意味する。用語「オーバーめっき」は、所望の回路パターンを超えた金属めっき、及び制御不能な金属めっきを意味する。用語「モノマー」または「モノマーの」は、同一または同類分子のうちの1つ以上と結合する場合がある単一分子を意味する。「−−−−」は、可能な化学結合を示す。用語「隣接」は、2つの異なる表面を互いに接触させて共通の境界面を形成する接合を意味する。用語「オリゴマー」は、単一分子を形成するように結合した2つまたは3つのモノマーを意味する。用語「ポリマー」は、結合した2つ以上のモノマー、または単一分子を形成するように結合した2つ以上のオリゴマーを意味する。用語「プリント回路基板」及び「プリント配線板」は、本明細書の全体にわたって互換的に使用される。用語「めっき」及び「堆積」は、本明細書の全体にわたって互換的に使用される。すべての量は、特記されない限り、重量パーセントで示される。すべての数値の範囲は、包括的であり、そのような数値の範囲が合計100%になるという制約を受けることが論理的である場合を除き、順不同で組み合わせ可能である。
【0012】
本発明の遮断コーティングは、1つ以上の芳香族複素環式化合物を含むプライマー組成物を含み、ポリマーの表面または基板のプラスチック材料と隣接して直接適用されて、ポリマーまたはプラスチック材料上に実質的に親水性のコーティングを提供し、次いで、任意選択のすすぎのステップを除く他の介入ステップなしで、アルキルアルコールアルコキシレート、アルキルチオール、非ポリマー一級アルキルアミン、及び非ポリマー二級アルキルアミンのうちの1つ以上を含む疎水性のトップコートをプライマー組成物と直接隣接して適用することで、基板のポリマー材料と直接隣接して遮断コーティングを形成する。したがって、遮断コーティングは、ファンデルワールス力によってポリマーに結合する場合がある芳香族複素環式化合物を含むプライマーと、アルキルアルコールアルコキシレート、アルキルチオール、非ポリマー一級アルキルアミン、及び非ポリマー二級アルキルアミンのうちの1つ以上を含むトップコートとを含む。理論に束縛されるものではないが、疎水性のトップコートに含まれる、化合物の親水性の部分が、親水性のプライマーと相互作用または混合し、トップコートの化合物の疎水性の部分が、実質的に疎水性の頂面を形成するように基板のポリマー材料と対抗して、または遠ざかって延在するため、ポリマー基板上に遮断コーティング層を形成すると考えられる。図は、本発明の4つの基本ステップを説明する。
【0013】
本発明の遮断コーティングの形成時にプライマーとして機能し得るすべての芳香族複素環式化合物が本発明を実施するために使用され得ることが想定される。そのような芳香族複素環式化合物は、環中のヘテロ原子のうちの少なくとも1つが窒素である芳香族複素環式化合物を含む。好ましくは、芳香族複素環式化合物は、環中に少なくとも1つの窒素原子を含み、任意選択で、環中に硫黄原子を含むこともできる。好ましくは、本発明のプライマーに含まれる芳香族複素環式化合物は、次の一般式を有し、
【0014】
【化1】
【0015】
式中、R、R、R、R、及びRが独立して、炭素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択されるが、但し、硫黄原子が環中に含まれる場合、R及びRのうちの1つのみが、いずれの一例でも硫黄原子であり、残りが炭素原子及び窒素原子から選択されることを条件とし、さらに、硫黄原子が環中にある場合、1つの窒素原子のみが環中に存在し、残りが炭素原子であることを条件とし、R10、R11、R12、R13、及びR14が独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C24)アルキル;チオール;直鎖または分岐鎖チオール(C−C24)アルキル;ニトロ;直鎖または分岐鎖ニトロ(C−C24)アルキル;ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C24)アルキル;直鎖または分岐鎖アルコキシ(C−C24)アルキル;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C24)アルキル;ハロゲンであって、塩素、臭素、フッ素、及びヨウ素から選択され、好ましくは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、より好ましくは、塩素及び臭素から選択される、ハロゲン;直鎖または分岐鎖ハロ(C−C24)アルキル;カルボキシル;直鎖または分岐鎖カルボキシル(C−C24)アルキル、ケト基;アシル基 ケタール;アセタール;エステル基;置換または非置換アリール(C−C)アルキル;ならびに置換及び非置換アリール基から選択され、式中、置換基は、限定はされないが、直鎖または分岐鎖アルキル、ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C12)アルキル、ニトロ、チオール、アミノ、アルコキシ、カルボキシル、ケト、ケタール、アシル、アセタール、及びハロゲンを含む。
【0016】
好ましくは、R10、R11、R12、R13、及びR14が独立して、水素、直鎖または分岐鎖(C−C10)アルキル;ヒドロキシル;直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C10)アルキル;直鎖または分岐鎖アルコキシ(C−C10)アルキル;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C10)アルキル;置換または非置換(C−C10)アリール;置換または非置換フェニル(C−C)アルキル;ニトロ、及びチオールから選択される。置換フェニル(C−C)アルキルの(C−C10)アリール及びフェニルの好ましい置換基は、直鎖または分岐鎖(C−C)アルキル;ヒドロキシル;直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C)アルキル、ニトロ;チオール;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C)アルキル;ハロゲン、及び直鎖または分岐鎖ハロ(C−C)アルキルを含む。より好ましくは、R10、R11、R12、R13、及びR14は独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C)アルキル;ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C)アルキル;ニトロ;チオール;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C)アルキル;及び非置換フェニルから選択される。さらにより好ましくは、R10、R11、R12、R13、及びR14は独立して、水素;メチル;エチル、及び非置換フェニルから選択される。
【0017】
10及びR11またはR11及びR12などの連続したR10、R11、R12、R13、及びR14のうちのいずれの対も、炭素または窒素原子と一緒になって、R及びRと共に環を形成するR10及びR11などの、連続したR、R、R、及びRのうちの対応する対と置換もしくは非置換シクロアルキルまたは置換もしくは非置換アリール基を形成することができ、その結果、R、R、R、及びR、ならびにRによって定義される環が別の環に縮合する。この別の環は、1個または2個の窒素原子を含み、残りは炭素原子になり得る。好ましくは、連続したR10、R11、R12、R13、及びR14、ならびに対応する連続したR、R、R、R、及びRは、六員環の芳香族環を形成し、六員環の芳香族環が置換または非置換になり得る。上の構造(I)の線「−−−」は、環の構造の変数R−Rの特定の原子に従って結合が存在しても存在しなくてもよいことを示す。例えば、炭素原子は四価であり、窒素原子は三価であり、硫黄原子は二価である。
【0018】
上の式(I)の非置換のアゾール化合物の例は、ピロール(1H−アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、イソインドール、インドール(1H−ベンゾ[b]ピロール)、ベンズイミダゾール(1,3−ベンゾジアゾール)、インダゾール(1,2−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾール、2H−ベンゾトリアゾール、イミダゾ[4,5−b]ピリジン、プリン(7H−イミダゾ(4,5−d)ピリミジン)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン、及びベンゾチアゾールである。
【0019】
好ましい五員環アゾールは、以下の構造を有することができ、
【0020】
【化2】
【0021】
式中、R、R、R、及びRは独立して、炭素原子または窒素原子から選択されるが、但し、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが炭素原子であるが、R、R、R、及びRのうちの多くて3つが炭素原子で、残りが窒素原子であることを条件とし、R11、R12、R13、及びR14は、上で定義される通りである。そのような五員環アゾール化合物は、五員環が2個の窒素原子を含むイミダゾールと、五員環が3個の窒素原子を含むトリアゾールと、五員環が4個の窒素原子を含むテトラゾールとを含む。
【0022】
より好ましくは、五員環アゾール化合物は、以下の構造を有するイミダゾールであるか
【0023】
【化3】
【0024】
または、
以下の構造を有するトリアゾールであり、
【0025】
【化4】
【0026】
式中、R11、R12、R13、及びR14は、上で定義される通りである。五員環アゾール化合物のR11、R12、R13、及びR14が水素であることが最も好ましい。
【0027】
五員環がアリール基と縮合する好ましい芳香族アゾール化合物は、以下の構造を有し、
【0028】
【化5】
【0029】
式中、Rは、窒素原子または硫黄原子から選択されるが、但し、Rが硫黄であり、R14が存在しない場合を条件とする。R10は、上で定義される通りであり;R15、R16、R17、及びR18は独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C24)アルキル;ハロゲン;ハロ(C−C24)アルキル;ニトロ;ヒドロキシル;直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C24)アルキル;チオール;直鎖または分岐鎖チオール(C−C24)アルキル;ニトロ;シアノ;アミノ;直鎖または分岐鎖アミノ(C−C24)アルキル;置換または非置換アリール(C−C)アルキル;及び置換または非置換アリールから選択される。アリールの置換基は、上記の通りである。好ましくは、R15、R16、R17、及びR18は独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C10)アルキル;ヒドロキシル;直鎖または分岐鎖ヒドロキシル(C−C10)アルキル;ハロゲン;ニトロ;チオール;シアノ;アミノ;置換及び非置換フェニル(C−C)アルキル、ならびに置換または非置換フェニルから選択される。より好ましくは、R15、R16、R17、及びR18は独立して、水素;直鎖または分岐鎖(C−C)アルキル;ヒドロキシル;ハロゲン;ニトロ;チオール;アミノ、ならびに置換及び非置換フェニル;置換及び非置換フェニル(C−C)アルキルから選択され、式中、置換基は、好ましくは、塩素または臭素である。さらにより好ましくは、R15、R16、R17、及びR18は独立して、水素;メチル;エチル;塩素;臭素;チオール;ヒドロキシル、及びアミノ、ならびに置換及び非置換フェニル(C−C)アルキから選択され、式中、置換基は、塩素または臭素である。
【0030】
五員環がアリール基と縮合する芳香族アゾール化合物が、以下の構造を有することが好ましく、
【0031】
【化6】
【0032】
式中、Rは、窒素原子または硫黄原子であり、R14は、上で定義される通りであり、最も好ましくは、Rが窒素原子である場合に水素であり、Rが硫黄の場合に存在せず、またR10は、上で定義される通りであり、より好ましくは、構造(VI)について水素;チオール;ヒドロキシル;メチル;塩素;及び臭素から選択され、最も好ましくは、R10は構造(VI)について水素である。構造(VI)の例示的な化合物は、ベンズイミダゾール及びベンゾチアゾールである。
【0033】
本発明の前述の芳香族複素環式化合物は、0.5g/L〜20g/L、好ましくは、1g/L〜15g/L、より好ましくは、1g/L〜10g/Lの量で含まれる。
【0034】
任意選択で、プライマー組成物は、プライマーとトップコート化合物の混合を助ける1つ以上の金属イオンを含み得る。そのような金属イオンは、限定はされないが、銅イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、及び亜鉛イオンを含む。そのようなイオンは、それらの水溶性塩によってプライマー組成物に添加される。銅塩は、限定はされないが、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、及び酢酸銅を含む。ニッケル塩は、限定はされないが、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、及びスルファミン酸ニッケルを含む。マンガン塩は、限定はされないが、硫酸マンガンを含む。亜鉛塩は、限定はされないが、硝酸亜鉛を含む。そのような塩は、0.5g/L〜15g/L、好ましくは、1g/L〜10g/Lの量でプライマーに含まれる。好ましくは、選択の金属イオンは、銅、及びニッケルである。より好ましくは、選択の金属イオンは、銅イオンである。一般に、プライマー溶液には1つ以上の金属イオンを含むことが好ましいが、この1つ以上の金属イオンが特定のポリマー材料へのトップコート化合物の吸着を改善するか否かを判定するためにわずかな実験がなされ得る。
【0035】
プライマーは、水中で順不同に成分を混合することによって調製され得る。プライマーのpHは、好ましくは、7〜13、より好ましくは、8〜12に及び得る。
【0036】
プライマーをポリマー材料に適用する前に、ポリマー材料が、すべての表面油及び残渣をポリマーの表面から除去すべく洗浄されることが好ましい。図は、ステップ1で洗浄された基板を示す。従来の洗浄組成物、及び当該技術において既知の方法が使用され得る。典型的には、洗浄は、超音波を使用して、10%のCUPOSIT(商標)Z洗浄製剤(マサチューセッツ州マルボロ、Dow Advanced Materialsより入手可能)などの洗浄溶液で室温にて行われる。
【0037】
プライマーは、ポリマー材料を含む基板をプライマーに浸漬することによってポリマー材料と直接隣接して適用され得るか、またはポリマー材料と直接隣接して吹き付けられ得る。好ましくは、プライマーは、室温〜80℃、より好ましくは、30℃〜50℃の温度で適用される。ポリマー材料とトップコートの接触前の休止時間は、好ましくは、1分〜10分、より好ましくは、3分〜8分に及ぶ。
【0038】
基板のポリマー材料へのプライマーの適用後、トップコートが、任意選択の水すすぎのステップを除く本発明の方法の他の介入ステップなしで、プライマーと直接隣接してポリマー材料上に適用される。トップコートは、ポリマー材料をトップコートの溶液に浸漬することによって、またはポリマー材料をコーティングするプライマーと直接隣接してトップコートを吹き付けることでプライマーと直接隣接して適用されるか、トップコートは、好ましくは、室温〜80℃、より好ましくは、30℃〜50℃の温度で適用される。トップコートの適用についての休止時間は、好ましくは、1分〜10分、より好ましくは、3分〜8分に及ぶ。トップコートがプライマーに適用された後、トップコートが、基板においてポリマー材料と直接隣接して遮断コーティングを形成するようにプライマー上で乾燥しても構わない。図は、ポリマー基板に隣接する遮断コーティングを示す。任意選択で、トップコートは、室温下でブロー乾燥によって乾燥され得る。
【0039】
トップコートは、アルキルアルコールアルコキシレート、アルキルチオール、ならびに非ポリマー一級及び非ポリマー二級アミンから選択される。それらは、0.5g/L〜100g/L、好ましくは、1g/L〜30g/Lの量で含まれ得る。アルキルアルコールアルコキシレートは、限定はされないが、次の式を有するポリエトキシ化アルコールポリマーを含み、
CH(CH−(O−CH−CH−OH (VII)
式中、mは、7〜25であり、nは、1〜25の平均エトキシ化度を示す。好ましくは、nは、7〜15であり、mは、好ましくは、13〜25である。アルキルアルコールアルコキシレートは、次の式を有する脂肪族エトキシ化/プロポキシ化コポリマーも含み、 R−O−(CHCHO)−(CHCHCHO)−H (VIII)、または、
R−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)−H (IX)
式中、Rは、8〜22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、またはイソトリデシル基であり、x及びyは独立して、1〜20から選択される。アルキルアルコールアルコキシアルテス(alkoxyaltes)は、次の式を有するプロポキシ化/エトキシ化コポリマーも含み、
R−O−(CHCH(CH)O)−(CHCHO)−H (X)、または、
R−O−(CHCHCHO)−(CHCHO)−H (XI)
式中、R、ならびにx及びyは、上記のように定義される。
【0040】
アルキルチオールは、限定はされないが、次の式を有するチオールを含み、
19−SH (XII)
式中、R19は、1〜24個の炭素原子、好ましくは、16〜21個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、5〜14個の炭素原子を有するアリール基、及びアルキルアリールであり、式中、アルキルアリールのアルキは、1〜24個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖であり、アリールは、5〜14個の炭素原子を有する。例示的なアルキルチオールは、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、2,2−ジメチル−1−プロパンチオール、1−ヘキサンチオール、1,6−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1,8−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1,9−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラドデカンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール、1−オクトデカンチオール、1−ノナデカンチオール(nonadecanthiol)、及び1−エイコサンチオールである。好ましい例示的なアルキチオールは、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール、1−オクトデカンチオール、1−ノナデカンチオール(nonadecanthiol)、及び1−エイコサンチオールである。
【0041】
一級及び二級アミンは、限定はされないが、次の式を有するアミン化合物を含み、
20−CH−NH (XIII)、または、
21−CH−NH−CH−R22 (XIV)
式中、R20、R21、及びR22は独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C24)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C20)アルケニル、置換もしくは非置換(C−C)シクロアルキル、及び置換もしくは非置換(C−C10)アリールから選択され、式中、置換基は、限定はされないが、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C−C20)アルキル、アミノ、(C−C20)アルコキシ、フッ素、塩素、及び臭素などのハロゲン、メルカプト、ならびにフェニルを含む。好ましくは、アミン化合物は、非ポリマー一級アミンであり、式中、R20は、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換(C−C21)アルキルであり、より好ましくは、アミン化合物は、非ポリマー一級アミンであり、式中、R20は、直鎖または分岐鎖の非置換(C−C21)アルキルである。
【0042】
例示的な一級アミンは、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノ−2−メチルアミノペンタン、2−アミノ−2−メチルプロパン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、ネオペンチルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、1−アミノオクタン、2−アミノオカトン(aminoocatne)、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノテトラデカン、1−アミノペンタデカン、1−アミノヘキサデカン、1−アミノヘプタデカン、及び1−アミノオカトデカン(aminoocatdecane)を含む。好ましくは、例示的な一級アミンは、1−アミノヘキサデカン、1−アミノヘプタデカン、及び1−アミノオカトデカン(aminoocatdecane)を含む。
【0043】
任意選択で、トップコートは、有機化合物の可溶化を助ける1つ以上の有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、疎水性のトップコート化合物を可溶化するのに十分な量で含まれる。好ましくは、1つ以上の有機溶媒は、0〜60容量%、好ましくは、10容量%〜50容量%の量で含まれる。そのような有機溶媒は、アルコール、ジオール、トリオール、及び高級ポリオールを含む。好適なアルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン(hecane)−1,6−ジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール(propaoxyethanol)、及び2−ブトキシエタノール(butoxyeethanol)を含む。また、ブタン−ジオール、ヘキサン−ジオールなどの不飽和ジオール、及びブチンジオールなどのアセチレニクス(acetylenics)が含まれる。好適なトリオールは、グリセロールである。追加のアルコールは、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、チレチレン(tirethylene)グリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロリルレン(diprolylene)グリコール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ならびにポリエチレン及びポリエチレングリコールのブロックポリマーを含む。
【0044】
遮断コーティングが基板のポリマー上に形成された後、電気回路のパターンを形成するように遮断コーティングが選択的にエッチングされる。パターンは、限定はされないが、レーザーエッチング、サンドペーパーエッチング、及びプラズマエッチングなど、プラスチック業界のめっきにおいて既知の従来の方法によってエッチングされる場合がある。好ましくは、遮断コーティングは、LPKF Laser & Electronics AGから入手可能なNd:YAG、1064nm LPKFレーザーなどのレーザー光によって選択的にエッチングされる。レーザー光を超微細寸法に調節することができるため、レーザーエッチングにより微細線回路用の微細線パターンの形成が可能になる。これにより、回路の小型化、及び3D電子製品の小型化がさらに可能になる。典型的なトラック幅は、150μm以上で、200μm以上の間隔またはギャップである。遮断コーティングを除去するようにエッチングがポリマー材料に至るまで行われ、図に示されるようにステップ3でポリマー表面が粗化される。ポリマー材料が包埋触媒を有する場合、十分な量のポリマー材料が表面から除去され、無電解金属めっき用に触媒を露出させる。ポリマー材料が包埋触媒を含まない場合、従来のイオン触媒またはコロイド触媒が、図のステップ4で示されるように無電解金属めっき用にポリマーに適用され得る。イオンまたはコロイド触媒は、エッチングされた基板上に触媒を浸すこと、または吹き付けることなど従来の手段で適用され得る。触媒液の温度、pH、及び滞留時間など従来の触媒のパラメータが、本発明を実施するために使用され得る。触媒のタイプによって、従来の後処理が、無電解金属被覆前に触媒を活性化するために使用される場合がある。イオン触媒は、好ましくは、銀イオン及びパラジウムイオンなどの触媒イオンを含む。典型的には、錯化剤が金属イオンに含まれ、触媒作用前に金属イオンを安定化される。コロイド触媒は、好ましくは、従来のスズ/パラジウムである。
【0045】
触媒がイオン触媒である場合、ポリマーへの触媒適用後及び金属被覆前に、1つ以上の還元剤が触媒化されたポリマーに適用されて、金属イオンをそれらの金属状態に還元する。金属イオンを金属に還元すると知られている従来の還元剤が使用される場合がある。そのような還元剤には、限定はされないが、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ギ酸、及びホルムアルデヒドが含まれる。還元剤は、金属イオンの実質的にすべてを金属に還元する量で含まれる。そのような量は、概して従来の量であり、当業者にはよく知られている。
【0046】
本発明の方法は、プリント回路基板及びMIDなどの種々の基板を無電解金属めっきするために使用され得る。好ましくは、本発明の方法は、プリント回路基板などの平面構造の基板ではなく、3D構造を典型的に有するMIDを選択的に無電解金属めっきするために使用される。そのような3D構造の基板は、回路をMID構造の表面の不規則な輪郭に従わせる必要がある3D構造ゆえ、連続的な均一な回路では無電解金属めっきすることが難しい。そのようなプリント回路基板及びMIDは、ガラス繊維などの繊維、及び前述の浸漬された実施形態を含む、熱硬化性樹脂、熱可塑性プラスチック樹脂、及びそれらの組み合わせのポリマー材料を含み得る。
【0047】
熱可塑性プラスチック樹脂は、限定はされないが、アセタール樹脂、アクリル酸メチルなどのアクリル、酢酸エチル、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及び硝酸セルロースなどのセルロース樹脂、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン及びコポリマーならびにアクリロニトリル−ブタジエンスチレンコポリマーなどのスチレンブレンド、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ならびに酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、ならびにビニルホルマールなどのビニルポリマー及びコポリマーを含む。
【0048】
熱硬化性樹脂は、限定はされないが、アリルフタラート、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、及びフェノール−フルフラールコポリマー、ブタジエンアクリロニトリルコポリマーまたはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーの単体もしくは化合物、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、フタル酸グリセリン樹脂、ならびにポリエステルを含む。
【0049】
本発明の方法は、低及び高T樹脂の両方で基板をめっきするために使用され得る。低T樹脂は、160℃未満のTを有し、高T樹脂は、160℃以上のTを有する。典型的には、高T樹脂は、160℃〜280℃、または170℃〜240℃などのTを有する。高Tのポリマー樹脂は、限定はされないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリテトラフルオロエチレンブレンドを含む。そのようなブレンドは、例えば、ポリフェニレンオキシド及びシアネートエステルを含むPTFEを含む。高Tの樹脂を含むポリマー樹脂の他の級は、限定はされないが、二官能性及び多官能性エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビスマレイミド/トリアジン及びエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシ、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0050】
温度及び時間などのめっきのパラメータは、従来のものである場合がある。無電解金属めっき槽のpHは、アルカリ性である。基板表面の洗浄もしくは脱脂、表面の粗化もしくは微細粗化、表面のエッチングもしくは微細エッチング、溶剤膨潤適用、貫通孔のスミア除去、ならびに種々のすすぎ及び変色防止処理などの従来の基板製法の方法が使用される場合がある。そのような方法及び製剤は、当業者にはよく知られており、文献でも開示されている。
【0051】
本発明が無電解めっきされる場合があるすべての金属を無電解堆積するために使用され得ることを想定する一方、好ましくは、金属は、銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択される。市販の無電解銅めっき槽の例は、CIRCUPOSIT(商標)880無電解銅槽(マサチューセッツ州マルボロ、Dow Advanced Materialsより入手可能)である。市販の無電解ニッケルめっき槽の別の例は、DURAPOSIT(商標)SMT 88(マサチューセッツ州マルボロ、Dow Advanced Materialsより入手可能)である。市販の無電解ニッケル槽の例は、DURAPOSIT(商標) SMT 88無電解ニッケルである。
【0052】
典型的には、銅イオン源は、限定はされないが、水溶性ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、ならびに他の有機及び無機銅塩を含む。そのような銅塩のうちの1つ以上の混合が、銅イオンを提供するために使用される場合がある。例は、硫酸銅五水和物などの硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅、及びスルファミン酸銅を含む。銅塩の従来の量が、組成物で使用され得る。
【0053】
1つ以上の合金金属も無電解組成物に含まれ得る。そのような合金金属は、限定はされないが、ニッケル及びスズを含む。銅合金の例には、銅/ニッケル及び銅/スズが含まれる。典型的には、銅合金は、銅/ニッケルである。
【0054】
ニッケル及びニッケル合金の無電解槽についてのニッケルイオン源は、1つ以上の従来の水溶性ニッケル塩を含み得る。ニッケルイオン源は、限定はされないが、硫酸ニッケル及びハロゲン化ニッケルを含む。ニッケルイオン源は、従来の量で無電解合金組成物に含まれ得る。スズイオン源は、限定はされないが、硫酸スズ、塩化スズ、及びスルホン酸アルキルスズなどの有機スズ塩を含む。スズ塩は、従来の量で無電解合金組成物に含まれ得る。
【0055】
温度及び時間などの無電解金属めっきのパラメータは、従来のものになり得、また当該技術で周知である。無電解金属めっき槽のpHは、典型的にはアルカリ性である。
【0056】
露出されたポリマー材料の選択的な無電解金属めっき中、遮断コーティングでコーティングされたポリマー材料の部分は、図のステップ5に示されるように無電解金属めっきを抑制する。金属めっきが実質的にポリマーのエッチングされた部分で起こるように、遮断コーティングでコーティングされたポリマーの部分で望まれないバックグラウンドめっき及びオーバーめっきが抑制される。遮断コーティングは、3D製品の輪郭に従う金属回路の形成を可能にする一方、欠陥製品をもたらし得るバックグラウンドめっき及びオーバーめっきを抑制する。微細線回路のパターン形成を可能にするレーザーエッチングと遮断コーティングとの組み合わせにより、小型電子製品の形成用に3Dポリマー基板の不規則な表面での連続的な小型回路の形成が可能になる。
【0057】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することを意図しているわけではないが、本発明をさらに説明する。
【0058】
実施例1
ABS、PC/ABS(XANTAR(商標)3720)、及びPC(XANTAR(商標)3730)から選択された複数のポリマー基板が提供された。各々の基板が、下の表1に開示の方法に従って処理され、選択的に無電解銅めっきされた。各々のポリマー基板は、イミダゾール、ならびに硫酸マンガン五水和物、硫酸ニッケル六水和物、硫酸亜鉛六水和物、及び硝酸銅から選択された金属塩のうちの一タイプを含んだプライマー組成物、または金属塩を除去したプライマー組成物で処理された。無電解銅めっきがなされた遮断コーティングの部分が、炭化ケイ素タイプのP220サンドペーパーで除去された。水溶性のイオン触媒液は、40ppmのパラジウムイオン及び1,000ppmの2,6−ジメチルピラジンを含んだ。還元剤は、1g/Lの濃度のジメチルアミンボランであった。無電解銅めっきは、Dow Advanced Materialsから入手可能なCUPOSIT(商標)71HS無電解銅槽で行われた。
【0059】
【表1】
【0060】
無電解銅めっき後、ポリマー基板は銅堆積の品質について分析された。すべてのポリマー基板が明るい銅堆積を有した。各々のイミダゾールのプライマー製剤に関するバックグラウンドめっきの結果が下の表2に示される。
【0061】
【表2】
【0062】
バックグラウンドめっきの性能は、試験されたポリマー基板及び金属塩によって変化した。硝酸銅がイミダゾールを含むプライマー組成物に含まれたときに、最善のバックグラウンド抑制性能が見受けられた。ABS及びPC/ABSポリマーではバックグラウンドめっきが観察されなかった一方、PCポリマー基板ではごく少量のバックグラウンドめっきが見受けられた。
【0063】
実施例2
プライマー組成物に含まれた複素環式窒素化合物がベンズイミダゾールであった点を除き、上の実施例1に記載の無電解銅めっきの方法が繰り返された。すべてのポリマー基板が明るい銅堆積を有した。バックグラウンドめっきの結果を下の表に開示する。
【0064】
【表3】
【0065】
ベンズイミダゾールは、金属塩を含んでまた含まずに良好なバックグラウンドめっき抑制を提供した。金属塩が硫酸亜鉛及び硝酸銅であったABSポリマー基板では、ごく少量のバックグラウンドめっきが観察された。
【0066】
実施例3
プライマー組成物に含まれた複素環式窒素化合物が2−フェニル−イミダゾールであった点を除き、上の実施例1に記載の無電解銅めっきの方法が繰り返された。すべてのポリマー基板が明るい銅堆積を有した。バックグラウンドめっきの結果を下の表に開示する。
【0067】
【表4】
【0068】
最善の結果が、金属塩がプライマー組成物に含まれなかったとき、及び硫酸亜鉛五水和物の金属塩が含まれたときに達成された。硝酸銅も、ABSでごく少量のバックグラウンドめっきを伴い、良好なバックグラウンドめっきを提供した。硫酸ニッケル六水和物を含むプライマーは、PC/ABS及びPCポリマー基板で少量のバックグラウンドめっきを伴い3番目になった。
【0069】
実施例4
プライマー組成物に含まれた複素環式窒素化合物が1,2,4−トリアゾールであった点を除き、上の実施例1に記載の無電解銅めっきの方法が繰り返された。すべてのポリマー基板が明るい銅堆積を有した。バックグラウンドめっきの結果を下の表に開示する。
【0070】
【表5】
【0071】
ポリマー基板は1つもバックグラウンドめっきの徴候を示さなかった。1,2,4−トリアゾールを含むプライマーは、金属塩を含む状態及び含まない状態で良好に機能した。すべての基板が遮断コーティングの除去部分において滑らかかつ均一な銅堆積を有した。
【0072】
実施例5
プライマー組成物に含まれた複素環式窒素化合物がベンゾチアゾールであった点を除き、上の実施例1に記載の無電解銅めっきの方法が繰り返された。すべてのポリマー基板が明るい銅堆積を有した。バックグラウンドめっきの結果を下の表に開示する。
【0073】
【表6】
【0074】
ポリマー基板は1つも実質的なバックグラウンドめっきの徴候を示さなかった。多くの試料が良好なバックグラウンドめっき抑制を示した。バックグラウンドめっきが観察されなかった、硫酸ニッケル六水和物を含んだプライマー組成物を除き、ごく少量のバックグラウンドめっきがPC基板で観察された。ベンゾチアゾールを含むプライマーは、金属塩を含む状態及び含まない状態で良好に機能した。すべての基板が遮断コーティングの除去部分において滑らかかつ均一な銅堆積を有した。
図1