【実施例】
【0021】
以下、より具体的な実施態様を説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
図3は実施例において製造した積層インダクタの積層体の層構造の模式分解図である。ここで、積層体の積層方向をz軸方向と定義し、積層体の短辺に沿った方向をx軸方向と定義し、積層体の長辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。外部電極(図示せず)は、y軸方向の両端に位置する2つの側面を覆うように設けられている。積層体では、絶縁体層A21〜A29がz軸方向に積層されることで絶縁部を構成する。絶縁体層A21〜A29は、ガラスを主成分とする素材により作製されており、実施例及び比較例として0.6mm×0.3mmと、1.0mm×0.5mm及び0.4mm×0.2mmの長方形状を有し、コイル部は絶縁部に挟まれて存在しており、旋廻しながらz軸方向に進行するスパイラル状を呈し、導体パターンB21〜B26及びビアホール導体C21〜C25を含んでいる。導体パターンB21〜B26はそれぞれ、絶縁体層A22〜A27の主面上に形成されており、絶縁体層A21、A28、A29と共に積層されている。コイル部はAgからなる。導体パターンB21、B26は引出部である。導体パターンB21、B26はそれぞれ、外部電極に接続されている。各導体パターンはビアホール導体C21〜C25によりそれぞれ接続されている。
【0022】
この積層インダクタの製造にあたり、まず、ガラス材料を含有するスラリーをドクターブレード法でフィルム上に塗布することで厚さ18μmのグリーンシートを形成した。次いで、グリーンシートの所定の位置、すなわちビアホール導体C21〜C25を形成する予定の位置に、レーザー加工によってスルーホールをそれぞれ形成した。そして、銀ペーストを、絶縁体層A22〜A27となるグリーンシートのそれぞれの所定の位置に、スクリーンマスクを用いて印刷した。続いて、絶縁体層A21〜A29となるグリーンシートを
図3に示される順序に従って積層し、積層方向に圧力を加えてグリーンシートを圧着した。そして、この圧着したグリーンシートをチップ単位に切断した後に、800℃〜900℃にて焼成を行い、積層体を形成した。
【0023】
得られた積層体の、y軸方向の両端に位置する2つの側面を覆うように外部電極を形成した。まず、Agペースト又はAgPd合金ペーストを塗布して、680℃〜900℃で焼き付けを行って第一電極層11を形成した。AgPd合金を用いる場合における、Agの含有割合は10mol%であった。
【0024】
次いで、第一電極層11の上に電気めっきを施して第二電極層12を得た。電気めっきはCuめっき、Niめっきのいずれかを行った。Cuめっきは、50℃に保温したCu塩水溶液の銅めっき浴中で0.4A/dm
2にて通電するバレルめっきによって行った。Cuめっき層の厚さはバレルめっきの通電時間(30〜120分)によって制御した。Niめっきは、50℃に保温したNi塩水溶液の銅めっき浴中で0.2A/dm
2にて通電するバレルめっきによって行った。Niめっき層の厚さはバレルめっきの通電時間によって制御した。
【0025】
第二電極層12の形成後、室温中、Sn塩水溶液中で0.1A/dm
2にて60分間通電するバレルめっきによって厚さ3μmのSn層(第三電極層13)を形成した。また、実施例6における、CuSn合金層の形成は、第二電極層12にCuめっき、第三電極層13にSnめっきを施した後、150℃で1時間の加熱処理を行い形成した。その結果、第二電極層(厚さ9.0μm)には合金化していない銅と銅錫合金とが共存することとなり、これを、以下、「Cu+CuSn合金層、9.0μm」と表記する。このCuSn合金層においてCu:Sn=3:1(原子比)であった。
このようにして、実施例、比較例の積層インダクタを得た。
【0026】
各実施例、比較例の積層インダクタにおける外部電極の第一電極層および第二電極層の種類と厚さは以下のとおりにした。各層の厚さは外部電極の中央付近における切断面の光学顕微鏡観察により確認、5箇所測定し得られた数値の最小値を求めた。「厚み比率」は、第二電極層の厚みに対する第一電極層の厚みの比率である。チップサイズについて、比較例1〜
4と実施例1〜
5、6は0.6mm×0.3mm、実施例7
と比較例8は1.0mm×0.5mm、実施例9
と比較例10は0.4mm×0.2mmである。
比較例1:第一電極層(Ag層、1.1μm)、第二電極層(Ni層、3.9μm)、厚み比率(0.28)
比較例2:第一電極層(Ag層、1.1μm)、第二電極層(Ni層、5.8μm)、厚み比率(0.19)
比較例3:第一電極層(Ag層、5.0μm)、第二電極層(Cu層、3.0μm)、厚み比率(1.67)
実施例1:第一電極層(Ag層、1.0μm)、第二電極層(Cu層、4.0μm)、厚み比率(0.25)
実施例2:第一電極層(Ag層、2.0μm)、第二電極層(Cu層、5.0μm)、厚み比率(0.40)
実施例3:第一電極層(Ag層、2.0μm)、第二電極層(Cu層、8.0μm)、厚み比率(0.25)
比較例4:第一電極層(Ag層、4.0μm)、第二電極層(Cu層、7.0μm)、厚み比率(0.57)
実施例5:第一電極層(AgPd合金層、2.0μm)、第二電極層(Cu層、5.0μm)、厚み比率(0.40)
実施例6:第一電極層(Ag層、0.9μm)、第二電極層(Cu+CuSn合金層、9.0μm)、厚み比率(0.10)
実施例7:第一電極層(Ag層、1.1μm)、第二電極層(Cu層、4.0μm)、厚み比率(0.28)
比較例8:第一電極層(Ag層、3.0μm)、第二電極層(Cu層、4.0μm)、厚み比率(0.75)
実施例9:第一電極層(Ag層、1.1μm)、第二電極層(Cu層、4.0μm)、厚み比率(0.28)
比較例10:第一電極層(Ag層、2.5μm)、第二電極層(Cu層、4.0μm)、厚み比率(0.63)
【0027】
各実施例、比較例の積層インダクタについて、1nHのインダクタンスにおける直流抵抗値RおよびQ値をRF Impedance Analyzerを使って測定した。さらに、JIS C60068−2−58:2006,8.2.1項に準じ、外部電極10にフラックス(ロジン25%溶液)処理した後、はんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)を260℃、10秒間浸漬した後、フラックスを除去し、外部電極10の断面を約20〜30倍の拡大鏡で観察し、浸食された面積割合を観察し、測定サンプル数10個において、10個ともはんだに食われずに残っている外部電極の面積が全体の75%以上なら○と評価し、1つでもはんだに食われた部分が75%未満のものがあったら×と評価した。
【0028】
各実施例、比較例の積層インダクタにおける、上記R値、Q値および「半田良否」の評価は以下のとおりであった。
比較例1:R値(262.1mΩ)、Q値(54.2)、半田良否(○)
比較例2:R値(261.0mΩ)、Q値(55.1)、半田良否(○)
比較例3:R値(190.4mΩ)、Q値(68.0)、半田良否(×)
実施例1:R値(212.2mΩ)、Q値(77.9)、半田良否(○)
実施例2:R値(195.2mΩ)、Q値(78.1)、半田良否(○)
実施例3:R値(186.8mΩ)、Q値(74.3)、半田良否(○)
比較例4:R値(183.1mΩ)、Q値(66.8)、半田良否(○)
実施例5:R値(201.2mΩ)、Q値(75.1)、半田良否(○)
実施例6:R値(208.1mΩ)、Q値(72.6)、半田良否(○)
実施例7:R値(205.3mΩ)、Q値(78.5)、半田良否(○)
比較例8:R値(203.7mΩ)、Q値(74.3)、半田良否(○)
実施例9:R値(378.7mΩ)、Q値(38.8)、半田良否(○)
比較例10:R値(369.1mΩ)、Q値(30.0)、半田良否(○)