(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525462
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】移動防止用ステントコーティング
(51)【国際特許分類】
A61F 2/848 20130101AFI20190527BHJP
【FI】
A61F2/848
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-33490(P2018-33490)
(22)【出願日】2018年2月27日
(62)【分割の表示】特願2016-502633(P2016-502633)の分割
【原出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-89428(P2018-89428A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/798,897
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】セドン、ダン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー、ショーン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、マーク ディー
(72)【発明者】
【氏名】カッペル、ゲイリー エス
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−502343(JP,A)
【文献】
特許第4981994(JP,B2)
【文献】
特表2011−509758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/848
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面と内側表面と前記内側表面から前記外側表面まで延びる複数のチャネルとを有する拡張可能な管状構造と、
前記複数のチャネルを横切って広がり、かつ複数の突起を有するコーティングと、
からなり、
前記複数の突起は前記管状構造の基端部分に隣接する第1の突起群と前記管状構造の先端部分に隣接する第2の突起群とを含み、前記第1および前記第2の突起群の各突起は底部と頂部とを備え、前記第1の突起群の各突起の頂部が前記第1の突起群の底部から偏倚する方向と前記第2の突起群の各突起の頂部が前記第2の突起群の底部から偏倚する方向とは反対の方向であり、
前記複数の突起は前記コーティングと一体的に成型されたコーティングの一部である位置移動防止ステント。
【請求項2】
前記複数の突起のうちの少なくとも1つは、シリコーン、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、テレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせのうちの1つのポリマー材料から形成される請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記複数の突起のうちの少なくとも1つは、棘の形状をなし、円形状の底部と円錐状の頂部とを有する請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記ステントの少なくともいくつかの部分に沿って、前記複数の突起が前記管状構造の長手方向軸を完全に包囲する請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記複数の突起は、前記突起の各々の前記底部から前記頂部まで湾曲した形状を有するフックの列からなる請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記第1および第2の突起群の各突起の頂部は、前記複数の突起の各突起の底部から径方向に予め定めた距離だけ離間して配置される請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記複数の突起は、前記管状構造の前記複数のチャネルを通過して延びる請求項1に記載のステント。
【請求項8】
外側表面と内側表面と前記内側表面から前記外側表面まで延びる複数のチャネルとを有する拡張可能な管状支持構造と、
前記複数のチャネルを横切って広がり、かつ複数の突起を有するコーティングと、
からなり、
前記複数の突起は基端方向に指向する複数の突起と先端方向に指向する複数の突起とを含み、前記基端方向に指向する各突起は底部と頂部とを備え、前記基端方向に指向する各突起の前記頂部は、基端方向に指向する前記突起の底部から径方向に予め定めた距離だけ離間して配置され、前記基端方向に指向する各突起の前記頂部は、基端方向に指向する前記突起の底部から基端方向に偏倚し、前記先端方向に指向する各突起は、底部と頂部とを備え、前記先端方向に指向する各突起の前記頂部は、先端方向に指向する前記突起の底部から径方向に予め定めた距離だけ離間して配置され、前記先端方向に指向する各突起の前記頂部は、先端方向に指向する前記突起の底部から先端方向に偏倚し、
前記複数の突起は前記コーティングと一体的に成型されたコーティングの一部である位置移動防止ステント。
【請求項9】
前記複数の突起のうちの少なくとも1つは、シリコーン、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、テレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせのうちの1つのポリマー材料から形成される請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記複数の突起のうちの少なくとも1つは、棘の形状をなし、円形状の底部と円錐状の頂部とを有する請求項8に記載のステント。
【請求項11】
前記複数の突起は、前記管状支持構造の前記複数のチャネルを通過して延びる請求項8に記載のステント。
【請求項12】
前記複数の突起は、前記突起の各々の前記底部から前記頂部まで湾曲した形状を有するフックの列からなる請求項8に記載のステント。
【請求項13】
前記複数の突起の各突起の頂部は、前記複数の突起の各突起の底部から径方向に予め定めた距離だけ離間して配置される請求項8に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治療を施す組織の閉塞を緩和するための医療器具に関する。特に、本発明は治療を施す組織から他の隣接領域への移動に関して特徴を有する医療用ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔の開存を維持するための機械的支持構造を提供するために用いられる数種類の異なる設計の移植可能なステントが開発され、市販されている。これらのステントは一般に体腔、特に血管、より詳しくは冠状動脈および末梢動脈内などで使用される。医師がこのようなステントに関して直面しうる問題の1つは、その位置移動である。
【0003】
位置移動防止と径方向に作用する力とは相関しているため、血管等の体内管路内部でステントを位置決めしている間に、ステントに対して径方向の力をさらに加えることによってステントの位置移動を回避する方法がある。しかしながら、径方向の力が一定の閾値以上に大きくなると、位置移動防止効果はほとんど上がらず、その一方で、炎症の大幅な拡大がその後の肉芽組織の形成を招来することがよくある。その結果、ステントの抜去が困難となりえ、刺激の原因となる可能性がある。
【0004】
ステントの位置移動を低減させるその他の方法は、フィンの使用であろう。しかしながら、ステントの位置移動防止のためにフィンを追加することは、ステントの径方向に作用する力を利用する方法と比較して位置移動の程度をより高める結果となるとともに、外傷を伴うこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、位置移動防止能力を増大させるためなどの特徴物を備えるステントが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の特許請求される実施形態のいくつかを以下に短く要約する。本発明の要約された実施形態および/または本発明のその他の実施形態のさらに詳しい内容は、本発明の詳細な説明の中に見ることができる。
【0007】
米国連邦規則法典第37巻1.72項に適合するために、明細書中の技術的開示の簡単な要約文も提供されている。要約文は、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図されていない。
【0008】
本願の何れかの箇所で言及されている米国特許および出願ならびにその他すべての公開文献は、それらの全文が引用によって本願に援用される。
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、外側表面を有する管状構造と、外側表面上に設置された複数の突起と、を含む位置移動防止ステントに関する。複数の突起は、第1の突起群と第2の突起群とを含む。第1および第2の突起群の各々は、底部と頂部を含む。第1の突起群の各々の頂部は第1の突起群の底部から、第2の突起群の各々の頂部が第2の突起群の底部から偏奇する方向と反対の方向に偏奇する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、外側表面を有する管状支持構造と、外側表面の周囲に配置されたコーティングと、を含む位置移動防止ステントに関する。コーティングは複数の突起を含む。複数の突起は、複数の基端方向に指向する突起と複数の先端方向に指向する突起とを含む。各基端方向に指向する突起は、底部と頂部を有する。各基端方向に指向する突起の頂部は、その基端方向に指向する突起の底部から所定の径方向の距離に位置付けられる。各基端方向に指向する突起の頂部は、その基端方向に指向する突起の底部から基端方向に偏奇させることができる。各先端方向に指向する突起は、底部と頂部を含む。各先端方向に指向する突起の頂部は、その先端方向に指向する突起の底部から所定の径方向への距離に位置付けられる。各先端方向に指向する突起の頂部は、その先端方向に指向する突起の底部から先端方向に偏奇させることができる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、ステントの位置移動防止能力を増大させる方法に関する。方法は、中を通るルーメンを画定する内面と、内面を同軸的に取り囲む外面と、各々が内面と外面との間の開放通路を画定する複数の接続チャネルと、を有する管状体を提供するステップを含む。方法は、複数の突起を含む外面を有するインサートを提供するステップをさらに含む。さらに、方法は、インサートを管状体のルーメン内に設置するステップと、インサートを、インサートの外面が管状体の接続チャネルを通って、管状体の外面から外に突出するように向き付けるステップと、を含む。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、ステントの位置移動防止能力を増大させる方法に関する。方法は、中を通るルーメンを画定する内面と、内面を同軸的に取り囲む外面と、を有する管状体を提供するステップを含む。方法は、外側表面の周囲にコーティングを堆積させるステップをさらに含み、コーティングは第1の突起群と第2の突起群とを含む。第1および第2の突起群の各々は、底部と頂部を含む。第1の突起群の各々の頂部は第1の突起群の底部から、第2の突起群の各々の頂部が第2の突起群の底部から偏奇する方向と反対の方向に偏奇する。図面の簡単な説明
本発明と、その特定の実施形態に関する以下の詳しい説明は、次のような図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】患者の体内に手術により留置されたステントを有するシステムの斜視図。
【
図2A】位置移動防止能力を有するステントの斜視図。
【
図3A】本発明のある例示的な実施形態によるステントの斜視図。
【
図4】ステントの位置移動防止能力を増大させる方法を示すフローチャート。
【
図5】ステントをコーティングする方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は様々な形態で実施できるが、本明細書では本発明の特定の実施形態が詳しく説明される。この説明は本発明の原理の例示であり、示されている具体的な実施形態に本発明を限定しようとするものではない。
【0014】
本開示の解釈において、特に別段の表示のないかぎり、複数の図面中の同様の参照符号は同様の特徴物を指すものとする。
本発明の各種の態様が図面中に示されている。所望により、1つの図面に描かれている要素を他の図面に描かれている要素と組み合わせ、および/またはそれに置き換えることができる。
【0015】
本発明の以下の説明文で論じられるかぎり、各種の装置、器械、および構成部品に関して記載されている基端および先端という用語は、ある基準点に関して言及される。この基準点は、この説明の中で使用されているかぎり、操作者の視点である。操作者は、開示のシステム/装置を患者の体内に本発明において説明されているように送達し、留置する処置を施行できる外科医、内科医、看護師、医師、技術者およびその他でありうる。基端という用語は、留置処置中に操作者により近い、または最も近い領域または部分を指す。先端という用語は、操作者からより遠い、または最も遠い領域または部分を指す。
【0016】
ここで、
図1を参照すると、位置移動防止ステント100(ステント100ともいう)が示されている。ステントは、基端部分102と先端部分104を有する。ステントは、基端部分102から先端部分104までに及ぶ長さ106を含む。ステント100は、外側表面110(外面110ともいう)を有する管状構造108(管状体ともいう)を含む。ステント100は、外側表面110上の複数の突起112(立ち上げられた特徴物112ともいう)をさらに含む。管状構造108は、幅114を画定する。いくつかの実施形態において、幅114は基端部分102から先端部分104までの間で同一である。いくつかの実施形態において、幅114は基端部分102と先端部分104との間で異なっていてもよい。ステント100は、患者の体内治療部位122で医療処置を施行するために使用可能である。ステント100は、ステント100の基端部分102が体内治療部位122の基端部分116の付近にあり、ステント100の先端部分104が体内治療部位122の先端部分118の付近にあるように設置される。ある実施形態において、ステント100は、患者の体内通路120の中の病変を治療するために患者の体内に位置付けられる。ステント100は一般に柔軟および/または弾性的特性を備える。ステント100は管内カテーテル移植のために径方向において圧縮可能である。ステント100が治療部位、即ち標的の体腔の付近に適正に位置付けられたところで、ステント100は径方向に拡張されて、血管を支持・補強する。ステント100の径方向への拡張は、カテーテルに取り付けられたバルーン(図示せず)を膨らませることによって行われてもよい。いくつかの実施形態において、ステント100は自己拡張型であってもよく、これは、治療すべき体腔内に留置されると径方向に拡張できる。
【0017】
図1に示されるように、ステント100は患者の気管、すなわち肺へとつながる気道内に設置され、中に存在する閉塞部を開放して、即ち値肺の中に気流が流れることを促す。ある実施形態において、管状構造108の外側表面110を治療とする部位局所薬物送達のための薬物で被覆することができる。ステント100が気管内に位置付けられているように示されているが、当業者であれば、本明細書で説明されているステント100は気管に限定されず、動脈、脈管および、胆管、尿路等のその他の体内管系でも使用できることがわかるであろう。
図1は、人体内で使用中のステント100を示している。この医療システムはまた、所望により、動物等、人以外にも使用できることがわかるであろう。機能的に、ステント100は患者の体内の物質や空気の流れを可能にするために通路を拡張または開放するように構成される。ステント100またはそのいくつかの部分は、形状記憶ポリマーもしくは金属、または単純な弾性医療用ポリマー、または医療用の可塑性使い捨て材料を使って製造できる。
【0018】
図2Aは、ステント100の斜視図を示す。
図2Bはステント100の部分断面図を示す。
ここで、
図2Aと2Bを参照すると、ステント100は、管状体108と、同ステント100の基端部分102と先端部分104との間においてステント内に画定されるルーメン202と、管状体108の外側表面110上の複数の突起112と、を含む。管状体108は、内側表面230(内面ともいう)と、内側表面230から外側表面110へと延びる複数のチャネル208とを有する。内側表面230はルーメン202を画定する。外側表面110と内側表面230との間において開放通路210を形成するように複数のチャネル208がそれぞれ構成される(
図2Bに示されている)。複数のチャネル208の各々は、複数の突起112が内側表面230から外側表面110へと、複数のチャネル208の中に形成された開放通路210を通過することができるように製造される。これは、複数のチャネル208の内部に適合でき、開放通路210を通って突出する特徴物を、マイクロブラスト、研磨、PTFEモールド等の工程を通じて加工することを通じて実現できる。外側表面110は、長手方向軸212の周囲で内側表面230を同軸的に取り囲み、外側表面110が体内治療部位122の少なくとも一部と接触できるように構成されている。複数の突起112は、第1の突起群214と第2の突起群216とを含む。第1の突起群214および第2の突起群216の各々は、底部218と頂部220を含む。突起の各々の頂部220は(
図2Bに示されるように)、その突起の底部218から所定の径方向の距離222に位置付けられる。所定の径方向の距離は、第1の突起群214と第2の突起群216の各々について同じである。いくつかの実施形態において、底部218は円形の形状を有する。他の実施形態において、底部218は円形以外の形状を有することができる。いくつかの実施形態において、底部218は多角形の形状を有することができる。例えば、底部218は正方形または長方形の形状または輪郭を有することができる。いくつかの実施形態において、頂部220は円錐の形状または輪郭を有することができる。いくつかの実施形態において、頂部220はテーパの付いた輪郭を有することができる。ある実施形態において、第1の突起群214の各々の頂部220は第1の突起群214の底部218から、第2の突起群216の各々の頂部220が第2の突起群216の底部218から偏奇する方向A2と反対の方向A1に偏奇している。方向A1を基端方向ということもあり、方向A2を先端方向ということもある。反対方向の偏奇によってステント100の位置移動防止特性が増大するが、これは、先端部分104に設置され、基端方向を向く基端方向に指向する突起が体内治療部位122の先端部分118に留まり、基端部分102に設置され、先端方向を向く先端方向に指向する突起が体内治療部位122の基端部分116に留まることができるからである。複数の先端方向に指向する突起によって、ステント100を体内治療部位122の基端部分116に結合しやすくなり、複数の基端方向に指向する突起によって、ステント100を体内治療部位122の先端部分118に結合しやすくなり、それによってステント100の運動または位置移動に対する機械的ロックが作られる。複数の基端方向に指向する突起214と複数の先端方向に指向する突起216の頂部220の各々は、管壁(輪状軟骨)に食い込む固定点の役割を果たし、位置移動の可能性を低減させるのを助けることができる。複数の突起112は、ステント100の外側表面110と管壁との間のより大きな摩擦相互作用を提供でき、それによって位置移動防止機能が増進し、管壁内でのステント100全体の運動が防止される。複数の突起112は、ステント100送達システムにおける様々な抵抗(tolerance)、例えば径方向への圧縮による留置またはバルーンによる留置に対応できるように製造できる。
【0019】
いくつかの実施形態において、頂部220をステント100の基端部分102に向かう方向A1に偏奇させることができる。ステント100の基端部分102に向かう方向A1に偏奇している複数の突起112は、複数の基端に指向する突起または第1の突起群214ということができる。いくつかの実施形態において、頂部220をステント100の先端部分104に指向する方向A2に偏奇させることができる。先端部分104に向かう方向A2に偏奇している複数の突起112は、複数の先端に指向する突起または第2の突起群216ということができる。いくつかの実施形態において、
図2Aに示されているように、基端に指向する突起はステント100の先端部分104の周囲に存在でき、先端に指向する突起はステント100の基端部分102の周囲に存在できる。他の実施形態において、基端に指向する突起はステント100の基端部分102の周囲に存在でき、先端に指向する突起はステント100の先端部分104の周囲に存在できる。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数の突起112をステント100の基端部分102と先端部分104の周囲にのみ存在させることができる。ある実施形態においては、複数の突起112を管状構造108の長さ106全体にわたって提供でき、管状構造108の長手方向軸212を完全に取り囲むように構成できる。いくつかの実施形態において、外側表面110をかなり平滑に設計してもよく、複数の突起112を別の構造として外側表面110に連結してもよい。
【0021】
図2Bに示されるように、第1の突起群214の各々を第1の偏奇角度αをもって底部218から偏奇させることができ、第2の突起群216の各々を第2の角度βをもって底部218から偏奇させることができる。第1の偏奇角度αは、第1の突起群214の各突起の頂部220の平面224と長手方向軸212との間に成される。第2の偏奇角度βは、第2の突起群216の各突起の頂部220の平面226と長手方向軸212との間に成される。いくつかの実施形態において、第1の偏奇角度αを第2の偏奇角度βと等しくすることができる。第1の偏奇角度αと第2の偏奇角度βの度数は、体内治療部位122の大きさ、体内治療部位122の構造、および体内治療部位122の輪郭形状に応じて異なっていてもよい。
【0022】
ある実施形態において、コーティング228は外側表面110の周囲に配置され、(
図2Bに示されるように)コーティング228は複数の突起112を有する。ある実施形態において、コーティング228は例えば浸漬塗装法、エアスプレー法、またはその他の方式等の技術により形成できる。いくつかの実施形態において、コーティング228は複数の突起112を含む立体(3D)幾何学構造を画定してもよい。3D構造として形成される場合、ステント100の外側表面110全体を不均一な高低差のある不規則面とすることができ、これは摩擦面として機能し、それによってステント100の位置移動防止能力が増大する。ある実施形態において、山と谷を持つ波形構造の形態で不均一な不規則性を画定できる。他の実施形態においては、コーティング228を堆積させることによって、外側表面110の全体に不規則性を構成することができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112は、外側表面110の全体に、特定の輪郭を展開するためのコンピュータ制御による噴霧装置を使ってコーティング228の形態で展開できる。いくつかの実施形態において、コーティング228は2つの層、すなわち外側表面110の全体に展開される複数の突起112を含む第1の層と、治療すべき部位(標的部位)局所薬物送達のための治療用化合物を含む第2の層を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を成型して、管状体108の中に挿入することができ、コーティング228は標的部位局所薬物送達のための治療用薬剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112の各々を、個々に硬質であったり弾性的に柔軟であったりするように製造することにより、複数の突起112と管壁とを機械的にロックしやすくするようにできる。
【0023】
いくつかの実施形態において、複数の突起112を管状構造108の上、または管状構造108の外側表面110の周囲に配置されたコーティング228の上に形成し、または成型できる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を射出成型または真空成型できる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を予備成形して、ルーメン202に挿入し、開放通路を通って、例えば管状構造108の外側表面110から外に突出するようにできる。いくつかの実施形態において、複数の突起112は、突起の各々の底部218から頂部220へと湾曲した形状を有するフックの列を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を棘の形状とすることができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を、円形の底部218と円錐形状の頂部220を有する棘の形状とすることができる。いくつかの実施形態において、複数の突起112を、管状構造108の上に直接形成または設置されるか、またはコーティング228の上に形成される、もしくは外側表面110の上のコーティング228の一体部分として形成される山と谷の形態とすることができる。
【0024】
ある実施形態において、例えばシリコーン、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、テレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせ等からなるポリマー材料から複数の突起112を作製することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、複数の突起112は三角形の形状である。いくつかの実施形態において、第1の突起群214の形状を第2の突起群216の形状と同じとすることができる。他の実施形態において、第1の突起群214の形状を第2の突起群216の形状と異なるようにすることができる。複数の突起112は、第1の突起群214を方向A1またはA2の何れか一方に付勢し、第2の突起群216を第1の突起群214の付勢方向と反対の方向に付勢するのを容易にすることのできる何れの形状を有することもできる。第1の偏奇角度を利用して第1の突起群214の付勢に影響を与えることができる。いくつかの実施形態において、第1の偏奇角度を鋭角とすることができ、これによって第1の突起群214が方向A1に沿って付勢される。いくつかの実施形態において、第1の偏奇角度を鈍角とすることができ、これによって第1の突起群214が方向A2に沿って付勢される。第2の偏奇角度を利用して第2の突起群216の付勢に影響を与えることができる。いくつかの実施形態において、第2の偏奇角度を鋭角とすることができ、これによって第2の突起群216が方向A2に付勢される。いくつかの実施形態において、第2の偏奇角度を鈍角とすることができ、これによって第2の突起群216が方向A1に沿って付勢される。
【0026】
ほとんどの場合、ステント100は、体内に配置され、長手方向軸212に沿って血管壁と相互作用できる形状に製造される。したがって、ステント100の方向A1とA2に沿った運動が防止されれば、ステント100は所定の位置に保持されるであろう。
【0027】
図3Aは、波形輪郭を有するステント100の斜視図を示す。
図3Bは、例えば
図3Aに示されるようなステント100の断面図を示す。
図3Aと
図3Bとは管状構造108の長さ106の一部にわたる複数の突起112を示しており、これは
図2Aと
図2Bとに示されるような長さ106全体の場合と対照的である。
【0028】
ここで、
図3Aと
図3Bを参照すると、いくつかの実施形態において、外側表面110は波形の輪郭302を有する。波形の輪郭302は、複数の山304と複数の谷306とを有する。複数の山304と谷306とは突出部を画定し、これが第1の突起群214と第2の突起群216とを含む複数の突起112としての役割を果たす。複数の山304の各々は、基端部分308と先端部分310を含むことができ、基端部分308が管状構造108の外側表面110と接触し、先端部分が方向A1またはA2に向かって偏奇するようになっている。いくつかの実施形態において、ステント100の基端部分102に近い複数の山304は先端方向(A2)を向き、ステント100の先端部分104に近い複数の山304は基端方向(A1)を向く。他の実施形態において、ステント100の基端部分102に近い複数の山304は基端方向(A1)を向き、ステント100の先端部分104に近い複数の山304は先端方向(A2)を向くことができる。反対方向にあり、反対方向を向く複数の山304は機械的ロックを構成し、それによってステント100の位置移動の可能性を低減させる。複数の突起112または複数の山304は、複数の谷306と共に、輪状軟骨または体内治療部位122のその他の隣接領域に機械的に食い込み、ステント100の位置移動防止能力を増大させる。
【0029】
図4は、ステント100の位置移動防止能力を増大させるための方法400を示すフローチャートである。402において、この方法400は、ルーメン202に類似したルーメンを画定する内側表面230と同様の内面と、ステント100の内面を同軸的に取り囲む外側表面110に類似する外面とを有する管状体108を製造するステップを含む。方法400は、外側表面110と内面との間に複数の接続チャネルを作るステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、接続チャネルの各々は、内面と外側表面110との間の開放通路を画定する。404において、方法400は外面を有するインサートを製造するステップを含む。インサートの外面は、複数の立ち上げられた特徴物(複数の突起112)を含む。406において、方法は、インサートを管状体108のルーメン202内に配置するステップをさらに含む。インサートは、管状体108のルーメン202の内部において、インサートが複数の接続チャネルを通過して開放通路へと進入するように配置される。408において、方法400は、インサートを、インサートの外面の複数の立ち上げられた特徴物が管状体108の接続チャネル208を通過し、管状体108の外側表面110から外に突出するように配向されるステップを含む。その結果、外側表面110の全体に複数の突起112が形成される。いくつかの実施形態において、複数の突起112は治療用物質で被覆されている。
【0030】
図5は、ステント100の位置移動防止能力を増大させるための方法500を示すフローチャートである。502において、方法は、ルーメン202を画定する内面と、同内面を同軸的に包囲する外側表面110とを有する管状体108を製造するステップを含む。504において、方法は外側表面110の周囲にコーティング228を堆積させるステップを含む。コーティング228は、第1の突起群214と第2の突起群216を含む。第1突起群2214および第2の突起群216の各々は、底部218と頂部220を含む。第1の突起群214の各々の頂部220は底部218から偏奇し、その偏奇方向は、第2の突起群216の頂部220が底部218から偏奇する方向と反対の方向である。いくつかの実施形態において、浸漬塗装法228、エアスプレー法の一方またはその他の何れかの技術を使ってコーティング228が形成される。
【0031】
本発明のいくつかの例示的実施形態の説明は、以下の箇条書きの項目に含めることができる。1.外側表面を有する管状構造と、外側表面上に配置され、第1の突起群と第2の突起群とを含む複数の突起であって、第1突起群および第2の突起群の各々が底部と頂部を有し、第1の突起群の各々の頂部が第1の突起群の底部から、第2の突起群の各々の頂部が第2の突起群の底部から偏奇する方向と反対の方向に偏奇する複数の突起群と、を含む位置移動防止ステント。2.複数の突起のうちの少なくとも1つは、シリコーン、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、テレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料から作製される第1項目のステント。3.複数の突起のうちの少なくとも1つは棘の形状であり、円形の形状の底部と円錐の形状の頂部を有する第1項目または第2項目のステント。4.複数の突起のうちの少なくとも1つは管状の支持構造の長手方向軸を完全に包囲する第1項目または第2項目のステント。5.外側表面の周りに配置されたコーティングをさらに含み、コーティングは複数の突起を有する第1〜4項目の何れかのステント。6.複数の突起は外側表面の周囲に配置されたコーティングの上に形成されるか、成型される第5項目のステント。7.コーティングは浸漬塗装法およびエアスプレー法の一方により形成される第5項目のステント。8.複数の突起は射出成型または真空成型により形成される第1項目のステント。9.複数の突起の各々は底部から頂部まで湾曲した形状を有するフックの列を含む第1〜8項目の何れかのステント。10.第1および第2の突起群の各々の頂部は、複数の突起の底部から所定の径方向の距離に配置される第1〜9項目の何れかのステント。11.外側表面を有する管状支持構造と、外側表面の周囲に配置されたコーティングであって、複数の突起を有し、これら複数の突起が複数の基端方向に指向する突起と複数の先端方向に指向する突起とを含むコーティングと、を含む位置移動防止ステントであって、各基端方向に指向する突起は底部と頂部を有し、各基端方向に指向する突起の頂部は底部から径方向へ所定距離だけ離間して配置され、各基端方向に指向する突起の頂部は底部から基端方向に偏奇し、各先端方向に指向する突起は底部と頂部を有し、各先端方向に指向する突起の頂部は底部から径方向へ所定の距離だけ離間して配置され、各先端方向に指向する突起の頂部は底部から先端方向に偏奇する位置移動防止ステント。12.複数の突起は外側表面の周囲に配置されたコーティングの上に形成、または成型される第11項目のステント。13.コーティングは浸漬塗装法およびエアスプレー法の一方により形成される第11項目のステント。14.ステントの位置移動防止能力を増大させる方法であって、ルーメンを画定する内面と、同内面を同軸的に包囲する外面と、各々が内面と外面との間の開放通路を画定する複数の接続チャネルとを有する管状体を提供する工程と、複数の突起を備えた外面を有するインサートを提供する工程と、インサートを管状体のルーメン内に配置する工程と、インサートを、外面の突起が管状体の接続チャネルを通過して、管状体の外面から外に突出するように配向させる工程とを含む方法。15.インサートの突起の少なくとも1つは、シリコーン、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、テレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料から作製される第14項目の方法。16.突起が三角形の形状である14項目または第15項目の方法。17.突起は波形の形状である第14〜16項目の何れかの方法。18.突起は、体腔の壁に食い込むように構成され、配置される第14〜17項目の何れかの方法。19.構造は輪状軟骨を含む第18項目の方法。20.体腔は気管または気道を含む第18項目の方法。21.ステントの位置移動防止能力を増大させる方法であって、ルーメンを画定する内面と、同内面を同軸的に包囲する外面とを有する管状体を提供する工程と、外側表面の周囲にコーティングを堆積させる工程であって、コーティングが第1の突起群と第2の突起群とを有し、第1の突起群および第2の突起群の各々は底部と頂部を有し、第1の突起群の各々の頂部が底部から偏奇し、第2の突起群の各々の頂部が底部から偏奇し、これら偏奇する方向は反対の方向である工程と、を含む方法。22.コーティングは浸漬塗装法およびエアスプレー法の一方により形成される第21項目のステント。
【0032】
上記の開示は例示的であり、全てを網羅するものではない。また、上記の記載事項により、当業者は数多くの変更形態や代替形態を想到するであろう。図面に示され、上記に説明された各種の要素は、必要に応じて組み合わせることができ、または組み合わせるために変更可能である。これらの代替形態と変更形態はすべて、特許請求の範囲の中に含められるものとする。
【0033】
さらに、従属請求項の中に示された特定の特徴を、本発明の範囲から逸脱せずに、他の方法で相互に組み合わせることができ、それによって本発明は、従属請求項の特徴の他の考えうるあらゆる組み合わせを有するその他の実施形態にも明確に関すると認識されるべきである。例えば、特許請求の範囲の公開の目的のために、下記の何れの従属請求項も、あるいは、当該の従属請求項の中で言及されたすべての先行記載事項を有するすべての先行請求項への多項従属形式に、かかる多項従属形式がその法域内で容認される形式であれば、書き換えられるとみなされるべきである(例えば、請求項1に直接従属する各請求項は、あるいは、すべての先行請求項に従属するとみなされるべきである)。多項従属請求項形式が制限されている法域においては、下記の従属項の各々はまた、あるいは、下記のかかる従属項の中に列挙された具体的な請求項以外の、先行記載事項を有する先行請求項への従属性を生じさせる各単項従属請求項形式に書き換えられると解釈されるべきである。
【0034】
これで、本発明の説明を終える。当業者であれば、本明細書に記載された具体的な実施形態に対する他の均等物を認識でき、この均等物は本明細書に付属の特許請求の範囲に包含されるものとする。