特許第6525512号(P6525512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6525512物品分割前処理方法とその方法を実施するX線検査装置並びにその装置を使用した定量切り分けシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525512
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】物品分割前処理方法とその方法を実施するX線検査装置並びにその装置を使用した定量切り分けシステム
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/34 20060101AFI20190527BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20190527BHJP
   G01G 9/00 20060101ALI20190527BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20190527BHJP
   B26D 7/27 20060101ALI20190527BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20190527BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   B26D5/34 Z
   G01N23/04
   G01G9/00
   G01G11/00 N
   B26D7/27
   B26D5/00 B
   A22C17/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-125471(P2014-125471)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-2631(P2016-2631A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(72)【発明者】
【氏名】杉本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−125581(JP,A)
【文献】 特許第5148285(JP,B2)
【文献】 特開2011−053070(JP,A)
【文献】 特開2002−221499(JP,A)
【文献】 特開2012−141176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/34
A22C 17/00
B26D 5/00
B26D 7/27
G01G 9/00
G01G 11/00
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送しながら該物品にX線を照射して得られるX線透過画像から、前記物品の搬送方向と交差する方向の1画素ライン毎の前記物品が占める領域の各画素の濃淡レベルを質量に変換し、得られた1画素ライン毎の質量を前記搬送方向に沿って逐次加算することによって、前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得する工程と、取得した前記物品質量が、予め指定された1分割片の物品質量に到達するときの前記1画素ラインを、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置として特定する工程と、特定された各分割片の切断位置に関する情報と前記物品とを対応させて、切断位置の特定された前記物品を下流の切断装置へ送る工程とを備えたことを特徴とする物品分割の前処理方法。
【請求項2】
物品を搬送しながら該物品にX線を照射して得られるX線透過画像から前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得する質量計測手段と、前記物品から一定量の分割片を切り出すときの1分割片の質量を指定する分割指定手段と、指定された1分割片の物品質量を、前記搬送量に応じた物品質量に基づいて取得することにより、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置を特定する特定手段と、特定された各分割片の切断位置に関する情報を下流の切断装置へ送信する送信手段と、切断位置の特定された前記物品を前記切断装置へ搬送する搬送手段とを備え
前記質量計測手段が、前記X線透過画像から、前記物品の搬送方向と交差する方向の1画素ライン毎の前記物品が占める領域の各画素の濃淡レベルを質量に変換し、得られた1画素ライン毎の質量を前記搬送方向に沿って逐次加算することによって、前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得するものであり、
前記特定手段が、前記物品の搬送量に応じて取得する物品質量が、指定された1分割片の物品質量に到達するときの前記1画素ラインを、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置として特定するものである、
X線検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線検査装置が、搬送される物品にX線を照射するX線照射部と、前記物品を透過したX線を検出するX線検出器とを備え、前記X線照射部と前記X線検出器とが、搬送される前記物品に対して一体的に傾斜するように構成されて、前記物品に対するX線の照射角度が変更可能であるX線検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のX線検査装置と、該X線検査装置の下流側に配置されて、上流から送られてくる前記物品を指示通りに切断する切断装置とを備え、前記X線検査装置からは、前記物品の切断位置に関する指示情報を前記切断装置へ送信するようにした定量切り分けシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さ方向に厚みや幅・密度等が変化する材料から一定量の複数個の定量商品を切り出す前段階の処理方法と、その方法を実施するX線検査装置と、その装置を利用した定量切り分けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
長さ方向に厚みや幅が変化する材料、例えば、冷凍食品や三枚おろしの魚、牛肉・豚肉等のブロック肉から、重量や体積を揃えた切り身を作り出す装置としては、例えば、下記特許文献に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、冷凍食品の周りからレーザー光を照射し、そのレーザー光が描く冷凍食品表面の曲線をカメラで捉え、捉えたその曲線から冷凍食品の断面積と形状を演算し、得られた断面積と形状に基づいて、指定された重量・長さの切り身を冷凍食品から切り出すようにしている。
【0004】
また、特許文献2に記載のものは、三枚おろしの魚の片身(材料)をコンベアで搬送しながらその表面に薄膜状の光を照射し、その光が材料表面に当たって描く曲線をカメラで捉えて曲線部分の断面積を演算し、得られた断面積と材料の送り長さから、送り長さ分の材料の重量を演算し、その演算累積値が目標値に達した時点で、送りを停止させて材料から一定量の切り身を切り出すようにしている。
【0005】
これらの特許文献に記載の技術は、何れも照射した光が材料表面に当たって描く曲線からその照射部分の断面積を求めているので、例えば、ドレス(頭部とハラワタを切除した状態の魚)のように、内部に空洞があるものや、チーズのように、内部に気泡があって密度が一定しないものは、正確な断面積が得られないという問題がある。
【0006】
これに対し、特許文献3に記載のものは、被搬送物にX線を照射し、被搬送物を透過したX線透過量に基づいて、被搬送物の質量を連続的に計量し、その計量値が目標値に達した時点で搬送を停止してカッターを作動させるので、内部に空洞があるものでも一定量の切り身を切り出すことができるメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4072972号公報
【特許文献2】特許第5348518号公報
【特許文献3】特許第4898493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献3の発明では、X線の照射室内にカッターを配置する構成であるから、それを実用化するには、多くの難点がある。例えば、切断の際に飛び散った破片等がX線照射口やX線センサの検出窓等に付着すると、たちまちX線透過量が変化して検出精度が落ちるという問題がある。また、X線照射室は、分厚い金属製のX線遮蔽部材で囲わねばならないから、そこにカッター等を組み込むと、構造が複雑になる問題がある。さらには、切断されて飛び散った破片等がX線照射室の内壁に付着することもあるから、そうした場合でも、内部を簡単に清掃できる新たなX線検査装置を開発しなければならない問題がある。
加えて、この特許文献3の発明では、停止させた被搬送物を再スタートさせるときは、被搬送物を一旦逆方向に戻してから搬送しているので、処理能力の点で効率が悪いという問題もある。
【0009】
本発明は、これらの先行技術が抱える問題を解決した、新たな物品分割前処理方法と、その方法を実施する新たなX線検査装置と、そのX線検査装置を利用した定量切り分けシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る物品分割の前処理方法は、物品を搬送しながら該物品にX線を照射して得られるX線透過画像から、前記物品の搬送方向と交差する方向の1画素ライン毎の前記物品が占める領域の各画素の濃淡レベルを質量に変換し、得られた1画素ライン毎の質量を前記搬送方向に沿って逐次加算することによって、前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得する工程と、取得した前記物品質量が、予め指定された1分割片の物品質量に到達するときの前記1画素ラインを、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置として特定する工程と、特定された各分割片の切断位置に関する情報と前記物品とを対応させて、切断位置の特定された前記物品を下流の切断装置へ送る工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この方法を実施するための第2の発明に係るX線検査装置は、物品を搬送しながら該物品にX線を照射して得られるX線透過画像から前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得する質量計測手段と、前記物品から一定量の分割片を切り出すときの1分割片の質量を指定する分割指定手段と、指定された1分割片の物品質量を、前記搬送量に応じた物品質量に基づいて取得することにより、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置を特定する特定手段と、特定された各分割片の切断位置に関する情報を下流の切断装置へ送信する送信手段と、切断位置の特定された前記物品を前記切断装置へ搬送する搬送手段とを備え
前記質量計測手段が、前記X線透過画像から、前記物品の搬送方向と交差する方向の1画素ライン毎の前記物品が占める領域の各画素の濃淡レベルを質量に変換し、得られた1画素ライン毎の質量を前記搬送方向に沿って逐次加算することによって、前記物品の搬送量に応じた物品質量を取得するものであり、
前記特定手段が、前記物品の搬送量に応じて取得する物品質量が、指定された1分割片の物品質量に到達するときの前記1画素ラインを、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置として特定するものである、
ことを特徴とする。
【0012】
ここで使用する質量計測手段としては、特許第5148285号に開示された特許発明を利用する。具体的には、X線透過画像に写し出された物品領域の各画素の濃淡レベルとそれぞれの濃淡レベルに対応させた基準質量とから、その物品が占める画素領域の物品質量を推定していく。その際、各画素の濃淡レベルに対応する推定質量を記憶した変換テーブルを用意する。
【0013】
この変換テーブルは、物品を様々な角度から撮像して、その物品のあらゆる濃淡レベルのX線透過画像を事前に取得しておき、得られたX線透過画像の1画素ごとの濃淡レベルに対応する推定質量mを以下の数式に基づいてテーブル化しておく。

m=ct=−c/μ×In(I/Io)=−αIn(I/Io)・・・(1)

(ただし、m:推定質量、c:物品の厚さから質量に変換する係数、t:物品の厚さ、
I:物品を透過しないときの画素の明るさ、Io:物品を透過したときの画素の明るさ、
μ:線吸収係数、α:変更可能な係数であって、最初は、1.0に設定される)

そして、この変換テーブルを使って求めた物品の推定質量と、その物品の実質量とを比
較して、推定質量が実質量に等しくなるように係数αを調整して変換テーブルを作成しておく。その作成には、本出願人が取得した特許5148285号や特許第5356184号を利用する。こうして、対象となる物品の変換テーブルを事前に用意し、これを使って各画素の濃淡レベルを推定質量に変換していく。
【0014】
X線検査装置で得られるX線透過画像は、物品を一定速で搬送しながら、該物品の搬送方向と交差する方向に配列されたライン状のX線検出器の走査出力を二次元に展開することによって得られるから、該物品の搬送量に応じた物品質量は、X線透過画像の走査方向に沿って物品を輪切りにしたときの最小断片の物品質量を、搬送方向に積算することによって求まる。輪切りにした最小断片の物品質量は、X線透過画像上では、搬送方向と直交する方向の1画素ライン分の物品質量となるから、その平均値が、例えば1gで、分割指定手段によって指定された1分割片の質量が、例えば100gであるときは、100画素ライン分、その物品を搬送した時点が、その分割片の最初の切断位置となる。
【0015】
また、1画素ライン分の物品質量が搬送方向に沿って変化するときは、1画素ライン毎の物品質量を搬送方向に順次加算していき、その加算値が指定された1分割片の物品質量になれば、その時点が次の切断位置となる。こうして、特定手段は、指定された1分割片の物品質量を、搬送量に応じた物品質量に基づいて取得することにより、前記物品から各分割片を切り出すときの切断位置を特定していく。そして、物品に対する各分割片の切断位置が特定できれば、各分割片の切断位置に関する情報とともに、該物品を下流の切断装置に搬送する。
【0016】
ここで使用する切断装置は、物品に適合した既存のものを使用することができる。例えば、物品が冷凍食品であれば、それに適した回転刃を備えた専用の切断装置を使用する。そして、この切断装置は、指示された方向と位置で物品を切断することになるから、切断刃の方向を、物品を撮像したときの方向と一致させる。すなわち、X線は、物品の搬送方向と直交する方向に扇状に照射されて検出されるから、物品をX線が照射されたときの姿勢のままで切断刃へ送り込むときは、切断刃の方向を搬送方向と直交する方向に向ける。そうすれば、切断装置は、特定された切断位置と切断方向で物品を切り分けていくことができる。
【0017】
また、第3の発明に係る定量切り分けシステムは、前記X線検査装置と、該X線検査装置の下流側に配置されて、上流から送られてくる前記物品を指示通りに切断する切断装置とを備え、前記X線検査装置からは、前記物品の切断位置に関する指示情報を前記切断装置へ送信するように構成したものである。
【0018】
物品の切断位置に関する指示情報には、各分割片の切断間隔で表した情報と、各切断位置に到達するまでの搬送時間で表した指示情報とがある。切断間隔の場合には、例えば、物品の先端から次に切断するまでの距離となり、搬送時間の場合には、物品の先端検出時点から各切断位置に到達するまでの搬送時間となる。後者の場合には、X線検査装置での物品の搬送速度と、切断装置での物品の搬送速度とを整合させておく必要がある。また、切断位置に関する指示情報には、さらに物品を切断するときの切断角度に関する情報、例えば、搬送方向に対して物品を斜めに切断するときの交差角度や、鉛直方向に対して物品を斜めに削ぎ切りするときの傾斜角度等の情報も含めることができる。ただし、これは一例であって、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、X線透過画像から検出した、搬送量に応じた物品質量に基づいて前記物品の切断位置を特定し、特定した切断位置に基づいて下流の切断装置に対して、切断位置を指示するので、長さ方向に厚みと幅が変化する物品や、内部に空洞のある密度の異なる物品であっても、それを精度良く一定質量の分割片に切り出すことができる。
また、X線検査装置の下流側に切断装置を配置するので、物品を切断する際に、破片等が周囲に飛び散っても、X線検査装置内が汚れたり検出精度が低下したりする問題を回避することができる。
さらに、物品の種類に応じて専用の切断装置を使用することができるから、あらゆる物品に適用できる汎用性の高い検査装置やシステムとすることができる。
加えて、物品を連続的に搬送しながらその物品の切断位置を先に特定してから、下流の切断装置でその物品を切り分けていくので、従来装置と比べて、その処理能力を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る定量切り分けシステムの概略構成図。
図2】上記定量切り分けシステムの構成ブロック図。
図3】制御コンピュータで実行される各機能を示すブロック図。
図4】チーズブロックを検査対象物として撮像した場合のX線透過画像。
図5】画素ライン毎の物品質量を記憶した記憶テーブル。
図6】分割指定手段としての入力画面の一例。
図7】X線検査装置の動作フローの一例を示したフローチャート。
図8】物品を斜めに切断する場合の、他の実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るX線検査装置とそれを利用した定量切り分けシステムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、定量切り分けシステムの概略構成図を示す。この図において、定量切り分けシステム100は、上流側のX線検査装置1と、下流側の切断装置2と、これら両装置の間に架け渡されて、X線検査装置1から搬出される物品PをX線が照射されたときの姿勢のまま切断装置2へ送り込む搬送手段3と、X線検査装置1から切断装置2へ物品Pの切断位置に関する情報を送信する送信手段4とを備えている。
また、X線検査装置1の前段には、該X線検査装置1へ物品Pを送り込む搬入コンベア5が接続され、切断装置2の後段には、一定量に切断された物品の切り身Bを下流の包装工程等へ送り出す搬出コンベア6が接続されている。
【0022】
X線検査装置1は、入口11と出口12を有するX線検査室13と、その検査室13に収納された搬送コンベア14と、入口11と出口12からのX線の漏洩を防止する図示しない遮蔽カーテンと、X線検査室13内の中央上部に配置されたX線照射部15と、搬送コンベア14の上下のベルト間に配置されて、物品Pを透過したX線を検出するX線検出器16と、これらを収納する筐体17と、その筐体17の前面に設けられたタッチパネル18と、前記筐体17を支持する4本の支持脚19とを備えている。そして、X線検査室13と筐体17とは、X線検査室13の入口11と出口12を除いて外部にX線が漏洩しない遮蔽構造とされている。
【0023】
搬送コンベア14は、X線検査室13の入口11から出口12に架け渡されたベルトコンベアで構成され、設定速度でもって物品Pを搬送するように構成されている。
また、X線照射部15は、X線検査室13の上部に設けられた図示しないX線管と、そこから照射されるX線を、物品Pの搬送方向Yと直行する方向に扇状に広げる図示しないコリメータとで構成されている。そして、X線検出器16に向けて照射されたX線は、物品Pと搬送コンベア14のベルトとを透過してX線検出器16に入力される。
【0024】
X線検出器16は、物品Pの搬送方向Yと直行する方向に直線状に配列された複数個のフォトダイオードと、その上に重ねられた複数個のシンチレータとで構成され、物品Pを透過したX線は、各シンチレータで光に変換され、その光がフォトダイオードで電気信号に変換されて、X線透過信号として出力される。こうして出力されたX線透過信号は、図示しないA/D変換器でデジタル量に変換されて、後述の制御手段30に入力される。また、このX線変換器16は、搬送コンベア14の上下のベルト間に配置されている。
【0025】
タッチパネル18は、フルドット表示の液晶ディスプレイで構成され、そこに表示される設定画面を操作することにより、X線検査装置1の起動・停止、必要な運転条件や検査条件の設定、推定質量を最適化するための操作等ができるようになっている。また、運転開始前の初期画面では、搬送コンベア14の搬送速度やX線照射部15のX線強度等が設定でき、また、運転開始後の画面では、例えば、X線透過画像を処理するときの検出感度や、質量推定機能を働かせるためのX線出力や暗部強調等の設定、さらには、物品Pの濃淡レベルと推定質量との対応関係を最適化するための操作ができるようになっている。また、必要に応じて、欠品検査、異物検査、割れ欠け検査等の検査項目とその検査条件も設定でき、さらに、物品PにX線を照射したときのX線透過画像も表示されるようになっている。
【0026】
また、本発明に特有の設定項目としては、物品Pの搬送方向長さや、物品Pを切り分けるときの1分割片の物品質量、例えば一切れ100g等と設定できるようになっている。さらに、X線透過画像の濃淡レベルと推定質量との対応関係を最適化するために、切り分ける前の物品Pの質量も設定登録できるようになっている。
【0027】
図2は、定量切り分けシステム100の構成ブロック図を示す。この図において、X線検査装置1の制御コンピュータ30は、CPU31、ROM32、RAM33、HDD34を備えるとともに、下流に設置される切断装置2と通信するLANポート35を備えている。また、入出力装置であるタッチパネル18と接続され、そこで入力された各種パラメータや設定値がRAM33やHDD34に記憶されるようになっている。
【0028】
CPU31は、ROM32、RAM33、HDD34とアドレスバス、データバスを介して接続され、ROM32やHDD34に格納された各種プログラムを読み出して実行することにより、図3の画像生成手段36、推定質量調整手段37、質量計測手段38、分割指定手段39、切断位置特定手段(特定手段)40の各機能を実現する。また、HDD34には、タッチパネル18から入力された検査条件や設定値、物品Pの切断位置に関する情報等が記憶されている。
【0029】
制御コンピュータ30は、X線照射部15、X線検出器16、搬送コンベア14と接続されてこれらを駆動制御する。特に、搬送コンベア14は、常に設定速度となるように、制御コンピュータ30によって細かく速度制御される。また、搬送コンベア14の入口には、物品Pの先端を検出する投光器と受光器が対向配置される場合もあるが、これに代えて、X線検出器16から出力されるX線透過信号をモニタすることによって、物品Pの先端を検出する場合もある。
【0030】
HDD34には、推定質量最適化モジュール、画像生成モジュール、質量推定モジュール、分割指定モジュール、切断位置特定モジュールがプログラムとして格納され、また、必要に応じて、異物検査モジュールや割れ欠け検査モジュール等も格納されている。そして、CPU31が、これらのプログラムを読み出して実行することにより、図3の画像生成手段36、推定質量調整手段37、質量推定手段38、分割指定手段39、切断位置特定手段(特定手段)40の各機能が実現されるようになっている。
【0031】
画像生成手段36は、X線検出器16から出力されたX線透過信号に基づいて、図4に示すような二次元のX線透過画像Mを生成する。具体的には、X線検出器16から一定サイクルで出力されるX線透過信号が制御コンピュータ30に入力されて内部のバッファメモリに記憶される。そして、X線透過信号に一定の変化が見られなくなくなると、物品PがX線検出器16を通過したと判断して、その時点から既に読み取った物品Pの長さ分に相当するイメージデータをバッファメモリから読み出して、図4のような二次元のX線透過画像に展開する。なお、図4のX線透過画像は、ブロック状のチーズにX線を照射して取得した画像である。物品Pの占める領域Mは、濃淡レベルが暗い領域である。また、物品Pの搬送方向が、矢印で示す方向Yであれば、物品Pの先端は、矢印Zで示すライン上の部分となる。
【0032】
推定質量調整手段37は、質量が既知の物品PにX線を照射して取得される図4のようなX線透過画像Mから、前述の(1)式から求める。続いて、求めた各画素の推定質量を物品Pが占める全ての領域について積算して物品P全体の質量を推定し、その推定質量と設定登録されたその物品Pの実際の質量とを比較して、両者の偏差がゼロとなるように係数αを調整していく。
こうした処理を、搬送時の物品Pの向きや形を変えながら複数回繰り返す。例えば、物品Pがチーズのようなブロック体であるときは、それを横向きや縦向きにし、ときには、ブロック体を細かく分けて、同じ質量の物品であっても、取得される濃淡レベルが毎回変化するようにして、同じ物品Pから質量を繰り返し推定していく。推定質量調整手段37は、そうした操作が繰り返される度に、前述の係数αを調整して、各画素の濃淡レベルを質量に変換する変換テーブルを作成していく。
【0033】
質量推定手段38は、画像生成手段36で生成されたX線透過画像から物品Pの占める領域Mを特定し、その領域Mの各画素の濃淡レベルを前述の変換テーブルを用いて質量に変換していく。そして、例えば、魚の三枚おろしのように、物品Pの占める領域Mが搬送方向Yに沿って大きく変化していく場合は、図5に示すように、1画素ライン毎の質量をRAM33上に記憶していき、それらの質量を逐次加算することによって、搬送量に応じた物品質量を求めていく。また、図4に示すように、1画素ライン毎の物品質量が搬送方向Yに沿って殆ど変化しない場合は、物品Pの切り分けラインaを予め定め、想定したラインaで区画された1区画m1に含まれる各画素の質量を積算し、その積算値を指定された1分割片の目標質量と比較して、その偏差に基づいてラインaの位置を搬送方向Yにシフトしながら、目標質量に収束する切り分けラインaを特定するようにしても良い。
【0034】
分割指定手段39は、入力表示装置であるタッチパネル18で構成されるもので、例えば、図6のような表示画面をタッチパネル18に表示させて、物品Pから一定量の分割片を切り出すときの1分割片の質量や、その許容範囲を入力させる。
【0035】
切断位置特定手段(特定手段)40は、タッチパネル18で指定された1分割片の質量と、求めた搬送量に応じた物品質量とから、各分割片の切断位置を求めていく。例えば、1分割片の物品質量が100gに設定されている場合は、図5の各画素ラインの質量を順次加算していき、その加算値が100gに到達した時点の画素ラインがその物品Pを切り分けるときの最初の切断位置となる。そして、1画素ラインの幅が、例えば、0.5mmで、100画素ライン分の質量の加算値がちょうど100gになったとすると、物品Pを先端から50mm搬送した時点が最初の分割片の切断位置となる。こうした処理を繰り返して、搬送方向Yと交差する方向で切断するときの各切断位置を順次求めてHDD34に記憶していく。
なお、1画素ラインの幅は、搬送コンベア14の搬送速度と、X線検出器16の走査周期とから求めることができる。
【0036】
また、この制御コンピュータ30には、異物検査モジュール、欠品検査モジュール、割れ欠け検査モジュール等が組み込まれており、各分割片の切断位置を特定する処理に加えてその物品Pに対する異物検査、欠品検査、割れ欠け検査を実行する場合もある。
【0037】
図2に戻って、切断装置2は、切断される物品Pに適合した専用のものを使用することができる。そして、この切断装置では、指示された方向と位置で物品を切断していくことになるから、切断刃の方向を物品の搬送方向と直交する方向に向けることができ、また、物品Pは、搬送手段3によってX線が照射されたときの姿勢のままで送り込まれるから、切断装置2は、その姿勢を維持したまま、指示された位置で物品Pを切断するものであれば、どのような構成のものでも良い。一例として挙げれば、切断装置2の搬送装置としては、物品の姿勢を維持した状態で搬送できるものを使用し、また、その搬入端には、送り込まれる物品Pの先端を検出する物品検出センサ20を設け、その検出センサ20が物品Pの先端を検出すると、その時点から搬送量計測手段21が働いて物品Pの搬送量を計測する。そして、その搬送量が指示された搬送量になると、物品Pを停止させた後、切断手段23を働かせて、指示された位置で物品Pを切断するように構成する。
【0038】
次に、この実施形態に係るX線検査装置1の動作を図7のフローチャートに基づいて説明する。
物品Pの質量を推定するためには、初期設定として、まず、物品PをX線検査装置1で複数回、好ましくは、10回以上撮像して、物品Pのあらゆる濃淡レベルのX線透過画像を取得しておく必要がある。
そこで、運転に際しては、まず、X線検査装置1を、推定質量の学習モードに切り替え
て、物品Pを少なくとも10回撮像する。その際、物品Pの向きや角度を変えながら、ときには、物品Pを細かくした状態で搬送コンベア14に送り込んで撮像する。すると、毎回のX線透過画像が記憶され、それらの画像がタッチパネル18上に表示される(ステップS1)。
【0039】
続いて、物品Pの実質量(重量)をタッチパネル18から入力し、続いて、タッチパネル18に表示されたスタートキーを押す。すると、最適化プログラムが実行されて、各回のX線透過画像の濃淡レベルと、前述の数式(1)とを使って、画像の濃淡レベルを質量に変換する変換テーブルが作成され、さらにそれを使って各回のX線透過画像から同一物品Pの推定質量が算出される。次に、算出された推定質量と実質量との偏差に基づいて、仮の変換テーブルが濃淡レベルごとに調整されて最適化が行われる。こうして、最適化が終了すると、推定質量と実質量との偏差は、ほぼ数パーセント以内に収まった状態となる(ステップS2)。
【0040】
こうして変換テーブルが出来上がると、次に分割指定モードに切り替えて、分割する物品名を入力する。すると、タッチパネル18上に入力した物品名に対応する図6の画面がHDD34から読み出されて表示され、それを操作して1切れ当たりの質量とその許容範囲を入力する(ステップS3)。入力された内容は、HDD34に記憶される。
【0041】
以上の準備が整うと、X線検査装置1を通常モードに切り替えて運転を開始する。する
と、各コンベア5、14、3が駆動されて、物品PがX線検査装置1に送り込まれる。続いて、X線検出器16の出力が制御手段30に順次取り込まれてRAM33上で二次元のX線透過画像が形成され、それが同時にタッチパネル18に表示される。そして、そのX線透過画像の濃淡レベルが大きく変化すると、その時点より少し前の時点からのX線透過画像がワーキングエリアに取り込まれ、濃淡レベルが変化しなくなると、物品PがX線検出器16を通過したと判断して、その時点までのX線透過画像が処理対象として特定される(ステップS4)。
【0042】
次に、X線透過画像を二値化した後、それにラベリング処理を施して図4の物品Pが写り込んだ領域Mを特定する(ステップS5〜S7)。続いて、元のX線透過画像の領域Mに対し、先頭の1画素ラインZから各画素ラインの物品質量を順次加算していき、その加算値と指定された1分割片の物品質量とを比較して、その加算値が1分割片の物品質量と等しくなる画素ラインを特定し、特定した画素ラインの位置をその分割片の切断位置として記憶する(ステップS8、S9)。
【0043】
こうした処理を繰り返して、最後の画素ラインに到達すると、その物品Pに対する全ての切断位置が特定されたことになるので、それまでに記憶した各分割片の切断位置に関する情報を下流の切断装置2に送信する(ステップS10、S11)。続いて、停止キーが操作されていれば、運転を終了するが、そうでなければ、再びステップS4に戻って、次の物品Pに対する処理を継続する。
一方、切断位置の特定された物品Pは、X線検査室13から搬出されて搬送手段3に乗り移り、そのままの姿勢で下流の切断装置2へ搬送される。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その他の実施形態も採用可能である。例えば、三枚おろしの魚を一定質量で切断するときは、切断面が鉛直面に対し斜めになるように削ぎ切りにするのが常である。そうした場合には、例えば、図8に示すように、X線検査装置1のX線照射部15とX線検出器16とをC型フレームFで上下に一体的に連結し、そのC型フレームFを水平な軸芯C回りに回転可能に構成して、X線照射軸bが鉛直方向に対して傾斜するように構成する。そして、そのX線照射軸bが三枚おろしの魚を削ぎ切りにするときの傾斜角度と一致するように調整してX線を照射し、得られたX線透過画像を前述と同様に1画素ライン毎の物品質量を積算して1分割片の物品質量を求めていけば、斜めにカットする場合の切断位置を特定することができる。
【0045】
さらに、前記C型フレームFを、鉛直軸回りにも回転できるように構成すれば、X線の照射方向を、物品の搬送方向と交差する方向に少し斜めにずらすことができる。こうすれば、例えば、三枚おろしの魚を搬送方向に対して斜めに横断するように削ぎ切りにする場合でも利用できる。ただし、これらの場合には、物品の搬送方向とX線の照射面との交差角度も併せて切断装置に送信して、切断装置の方で、X線の交差角度と切断刃の交差角度とを整合させる必要がある。
【符号の説明】
【0046】
1 X線検査装置
2 切断装置
3 搬送手段
4 送信手段
15 X線照射部
16 X線検出器
33 質量計測手段
39 分割指定手段
40 特定手段
100 定量切り分けシステム
F C型フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8