(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検知手段は、前記捕捉手段によって前記宇宙浮遊物を捕捉可能な射程範囲内に前記宇宙浮遊物が存在するか否か判断するための視差画像を取得する画像読取手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の宇宙浮遊物捕捉装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故障した人工衛星などでは、制御機能が働かず、一般に、タンブリングと呼ばれる、不規則な回転運動を伴い、軌道を周回している。このようにタンブリングしている物体に対して、テザーや受圧装置などの除去装置を接続するには、除去装置を搭載した宇宙機と、タンブリングしている物体の衝突を防ぐ、所定の距離をおいて作業をする必要がある。
【0007】
上記従来の方法では、除去装置を搭載した宇宙機が、タンブリングしている物体と衝突することはないが、ロボットアームの操作や、銛を打ち込むことにより、捕捉対象の浮遊物が破損して、破片が新たな宇宙浮遊物となるおそれがあった。
【0008】
なお、上述した問題は、例えば、人工衛星などに限らず、宇宙空間を浮遊する物体、例えば、人工物に由来する物体、あるいは、これから投入される人工衛星の軌道上において障害となる浮遊物などの宇宙浮遊物においても同様である。
【0009】
本発明は、比較的簡単な構成で宇宙浮遊物を破壊することなく捕捉する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
宇宙浮遊物を捕捉する宇宙浮遊物捕捉装置であって、
前記宇宙浮遊物を検知する検知手段が設けられた装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記宇宙浮遊物を捕捉する捕捉手段と、を備え、
前記捕捉手段は、前記検知手段が検知した前記宇宙浮遊物に向けて、前記宇宙浮遊物の表面に接着固定される接着体を前記装置本体から紐付き状態で発射し、前記宇宙浮遊物と前記装置本体とを相互連結するものであり、
前記接着体は、前記装置本体との間で紐連結されるプランジャ部と、前記プランジャ部の先端面に形成された紫外線硬化性接着層とを有し、
前記装置本体には、発射前の前記接着体を紫外線から遮蔽するシャッタ手段が設けられ、
前記捕捉手段は、前記シャッタ手段による紫外線の遮蔽状態が解除されたのちに前記接着体を発射することを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、宇宙浮遊物の表面に接着体を接着固定して宇宙浮遊物を捕捉するため、比較的簡単な構成で宇宙浮遊物を破壊することなく捕捉できる。
【0011】
かかる本発明の態様によれば、発射前の接着体を紫外線から守り、宇宙浮遊物の表面に接着体をより確実に接着固定できる。
【0012】
また、上記本発明は、前記プランジャ部は、紫外線を透過する部材から設けられたことを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、紫外線がプランジャ部を透過して紫外線硬化性接着層に入射するため、宇宙浮遊物の表面に対して接着体をより早く接着固定できる。
【0013】
また、上記本発明は、さらに、前記検知手段が検知した前記宇宙浮遊物を前記捕捉手段によって捕捉可能な位置まで前記装置本体を移動させる推進手段を備えたことを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、検知した宇宙浮遊物に接近して捕捉することが可能となる。
【0014】
また、上記本発明は、さらに、前記捕捉手段が捕捉した前記宇宙浮遊物を所定の軌道から離脱させる離脱手段を備えたことを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、自装置が離脱手段を備えることで、捕捉した宇宙浮遊物を所定の軌道から離脱させることができる。
【0015】
また、上記本発明は、さらに、前記捕捉手段によって前記宇宙浮遊物を捕捉可能な射程範囲内に前記宇宙浮遊物が存在するか否かを前記検知手段が取得した前記宇宙浮遊物の画像情報から判断する判断手段を備えたことを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、自装置が宇宙浮遊物の位置を判断して捕捉することが可能となる。
【0016】
また、上記本発明は、前記検知手段は、前記捕捉手段によって前記宇宙浮遊物を捕捉可能な射程範囲内に前記宇宙浮遊物が存在するか否か判断するための視差画像を取得する画像読取手段であることを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、自装置で宇宙浮遊物の視差画像を取得し、例えば、別の衛星や地上設備に送信して、宇宙浮遊物が捕捉可能な位置に存在するか否かを知ることが可能となる。
【0017】
また、上記本発明は、前記捕捉手段は、前記装置本体の複数箇所に設けられたことを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、複数の宇宙浮遊物を捕捉することが可能となる他、1つの宇宙浮遊物に対して複数の接着体を接着固定することも可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的簡単な構成で宇宙浮遊物を破壊することなく捕捉する宇宙浮遊物捕捉装置を実現できる。例えば、接着体を用いて宇宙浮遊物と装置本体とを相互連結し捕捉するため、宇宙浮遊物は破片が生じるほどの破壊を受けない。したがって、宇宙浮遊物が破損して、破片が新たな宇宙浮遊物となるおそれがなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置の一例を示す概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の宇宙浮遊物捕捉装置100は、接着体を用いて宇宙浮遊物200と装置本体1とを相互連結し捕捉して、宇宙浮遊物を捕捉するための装置である。
【0022】
具体的には、本実施形態の宇宙浮遊物捕捉装置100は、例えば、宇宙浮遊物を検知する検知手段2が設けられた装置本体1と、装置本体1に設けられ、宇宙浮遊物200を捕捉する捕捉手段3とを備える。
【0023】
ここで、捕捉手段3は、例えば、検知手段2が検知した宇宙浮遊物200に向けて、宇宙浮遊物200の表面に接着固定される接着体4を有する。
【0024】
そして、捕捉手段3は、接着体4を装置本体1から紐付き状態で発射し、宇宙浮遊物200は装置本体1と相互連結して捕捉される。したがって、この捕捉手段3は、宇宙浮遊物200と装置本体1とを連結する連結手段となる。
【0025】
これによって、宇宙浮遊物捕捉装置100は、接着体4を用いて宇宙浮遊物200と装置本体1とを相互連結し捕捉するため、宇宙浮遊物200は破片が生じるほどの破壊を受けない。すなわち、宇宙浮遊物200を非破壊で捕捉できる。したがって、宇宙浮遊物200が破損して、破片が新たな宇宙浮遊物となるおそれがなくなる。
【0026】
なお、上述した宇宙浮遊物捕捉装置100を用いて、デブリでない、例えば、運用中の衛星などを捕捉することもできる。本発明によれば、破壊せずに衛星などを捕捉できるため、データや試料などを、損傷なく取り出すことが容易となる。なお、本実施形態の宇宙浮遊物捕捉装置100で捕捉対象とする宇宙浮遊物200とは、例えば、一部または全て故障した人工衛星、破片などの人工物などを含む。具体的には、例えば、電源手段などの故障により機能が停止した人工衛星、ロケットが打ち上げの際に投棄した燃え殻やフェアリング、流星などの小天体由来の岩石片などを捕捉対象とできる。
【0027】
以下、
図1に加えて、
図2ないし
図4を参照し、上述した宇宙浮遊物捕捉装置構成について詳細に説明する。なお、
図2は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置の初期状態を示す概略図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置の基本動作を説明する概略図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置の制御ブロック図である。
【0028】
図2ないし
図4に示すように、宇宙浮遊物捕捉装置100は、宇宙浮遊物を検知する検知手段2が設けられた装置本体1と、装置本体1に設けられ、宇宙浮遊物200を捕捉する捕捉手段3とを備える。
【0029】
捕捉手段3は、例えば、検知手段2が検知した宇宙浮遊物200に向けて、宇宙浮遊物200の表面に接着固定される接着体4を装置本体1から紐付き状態で発射し、宇宙浮遊物200と装置本体1とを相互連結し捕捉する装置である。具体的には、例えば、接着体4は装置本体1との間で紐連結されるプランジャ部41と、プランジャ部41の先端面に形成された紫外線硬化性接着層42を有する。
【0030】
また、捕捉手段3は、プランジャ部41に推力を発生させて接着体4を発射する発射手段となる、推力発生部31と、紐連結のための接着体4にプランジャ部41を介して接続するワイヤロープ43を有する。さらに、装置本体1は、接着体4の発射方向を微調整する調整構造とアクチュエータ、例えば、ジンバルと電動モータなどを有していてもよい。
【0031】
発射前の状態では、
図2に示すように、接着体4は、例えば、プランジャ部41の先端面の紫外線硬化性接着層42が、粘性を持った状態で装置本体1内に封入されている。ここで、装置本体1は、例えば、発射前の接着体4を紫外線から遮蔽するシャッタ11を備え、シャッタ11が、装置本体1の開口部12を塞ぐことで紫外線硬化性接着層42は遮光されている。
【0032】
また、推力発生部31は、例えば、スプリング31aとラッチ31bなどを備え、ラッチ31bは、圧縮コイルばねであるスプリング31aが反発力を蓄えた状態で、プランジャ部41にかみ合っている。
【0033】
宇宙浮遊物に向けて接着体4を発射する発射時には、
図3に示すように、シャッタ11に備えられたモータ11aが作動することでシャッタ11が開き、ラッチ31bに接続するアクチュエータ31cが作動することでプランジャ部41からラッチ31bのかみ合いを外し、スプリング31aに蓄えられていた力が解放される。プランジャ部41にスプリング31a(推力発生部31)が発した力は伝達され、装置本体1から接着体4を発射する。
【0034】
推力発生部31は、上記説明では、圧縮コイルばねの反発力を用いる例を挙げたが、例えば、固体推薬を内蔵する小型のロケットモータなどであってもよく、後述の制御部の指令に従い、接着体4に推力を与え発射可能であれば、これに限らない。
【0035】
ワイヤロープ43は、接着体4をプランジャ部41を介して装置本体1とつなぎ、接着体4が宇宙浮遊物200に留まることで、宇宙浮遊物200と装置本体1を接続するようになる部材である。ワイヤロープ43は、例えば、数mの紐状であり、発射前の状態では、
図2に示すように、リール44に巻き取られるように収納されてもよい。発射時には、
図3に示すように、接着体4の進行につれて、リール44から送り出される。
【0036】
捕捉手段3により投げ放たれた接着体4は、宇宙浮遊物200の表面に当たり、プランジャ部41と宇宙浮遊物200の相対位置を固定する、固着力を発する。この固着力を発するプロセスにおいて、接着体4は、例えば、紫外線硬化性接着層42を有し、粘性を残した状態で、宇宙浮遊物200の表面に接触し、部材間のすき間や材料表層の微細な凹凸などに入り込み、所定の時間宇宙空間中の紫外線に曝され、硬化する。
【0037】
紫外線に曝される時間は、紫外線硬化性接着層42が完全に硬化する長さが好ましいが、後述の次工程において、宇宙浮遊物200と装置本体1の接続が途切れない強度を発する長さでもよい。また、プランジャ部41が紫外線硬化性接着層42に紫外線が当たらない影とならないよう、プランジャ部41は、例えば、紫外線透過アクリルなどの、紫外線が透過する材質で構成すると、上述の接着体4が宇宙浮遊物200の表面に当たってから必要な紫外線に曝される時間を短縮できる。あるいは、紫外線硬化性接着層42は、例えば、シャッタ11が開いて数秒後、硬化を開始してから捕捉手段3により発射され、連鎖的に反応が進行しながら、宇宙浮遊物200の表面に接触し、部材間のすき間や材料表層の微細な凹凸などに入り込み、硬化するようにしても、接着体4が宇宙浮遊物200の表面に当たってから必要な紫外線に曝される時間を短縮できる。
【0038】
そして、上述の手段などによって、紫外線硬化性接着層42が硬化し、宇宙浮遊物200に留まることで、宇宙浮遊物200と装置本体1を接続できたか、例えば、ワイヤロープ43の張力により確認するようにしてもよい。本発明においては、捕捉手段3は、装置本体1に複数配置されるようにしてもよい。例えば、接着体4の発射方向を同じ方向とする、並列の二か所以上に配置してもよい。このように捕捉手段3を多重化することにより、第一の接着体4と宇宙浮遊物200との接続が途切れた場合であっても、再び接着体4を発射して宇宙浮遊物200を捕捉することができ、捕捉機能の冗長性を高められる。
【0039】
宇宙浮遊物を検知する検知手段2は、例えば、複数のレンズ群や撮像素子などを有して宇宙浮遊物200と装置本体1との相対位置や姿勢を求めるために視差を利用して画像情報と距離情報を得る、ステレオカメラ21である。
【0040】
なお、検知手段2は、上述のようなステレオカメラに限らず、例えば、固定単眼のカメラであってもよく、距離情報を画素毎の位相差などから求めてもよいし、視野の中で宇宙浮遊物200の像が占める割合から求めてもよい。上述のようなステレオカメラを用いて視差画像を得られるようにすることで、距離情報を取得するための演算を軽減でき、後述の演算部を簡略化することができる。また、宇宙浮遊物捕捉装置100に対して別の衛星や地上設備との通信手段を持たせ、宇宙浮遊物捕捉装置(自装置)100で宇宙浮遊物の視差画像を取得した後、例えば、別の衛星や地上設備に送信して、宇宙浮遊物が捕捉可能な位置に存在するか否かを別の場所で分析し、その結果を宇宙浮遊物捕捉装置100が取得して捕捉処理に活用するようにしてもよい。この場合には、自装置内で演算部などの構成を省略できる。
【0041】
上述した構成により、接着体4を用いて宇宙浮遊物200と装置本体1とを相互連結し捕捉するため、宇宙浮遊物200は破片が生じるほどの損傷を受けない。したがって、宇宙浮遊物200が破損して、破片が新たなデブリとなるおそれがなくなり、宇宙浮遊物200を、傷つけることなく捕捉することが可能となる。
【0042】
さらに、
図2ないし
図4に示すように、宇宙浮遊物捕捉装置100は、上述した他に、装置本体1の移動を行う推進手段5と、捕捉手段3が捕捉した宇宙浮遊物200を所定の軌道から離脱させる離脱手段6を、装置本体1に備えてもよい。なお、本実施形態の宇宙浮遊物捕捉装置100は、離脱手段6を推進手段5が兼ねる構成である。
【0043】
推進手段5は、検知手段2が検知した宇宙浮遊物200を捕捉手段3によって捕捉可能な位置まで装置本体1を移動させる。例えば、液体燃料を使用したアポジエンジンであって、
図2および
図3に示すように、複数の方向に備えられたノズル51と、これらのノズルから噴射するガスを発生させる液体燃料を積むタンク52などを備える。後述の制御部がノズル51からのガス噴射量を調節することで、装置本体1の所望の方向への移動がなされる。
【0044】
離脱手段6は、捕捉手段3が捕捉した宇宙浮遊物200を、宇宙浮遊物200と装置本体1とを相互連結された状態で速度を変えることで、所定の軌道から離脱させる。例えば、推進手段5のガス噴射量を後述の制御部が制御して、装置本体1を加速または減速させる手段として用いてもよい。
【0045】
また、離脱手段6は、推進手段5と同一のものでなくともよい。例えば、地球磁場との電磁気的な相互作用によって制動力を生じさせる、導電性のテザーや、地上への落下ないし軌道変更を促す、大気または太陽光輻射圧を受ける、膜状の受圧装置であってもよい。
【0046】
さらに、
図2ないし
図4に示すように、宇宙浮遊物捕捉装置100は、制御手段7を、装置本体1に備えてもよい。
【0047】
制御手段7は、例えば、検知手段2などからの信号を受けて処理する演算部71と、演算部71の計算結果に基づいて、捕捉手段3や推進手段5などに指令を送信する制御部72を有する。
【0048】
演算部71は、検知手段2により得られた画像情報と距離情報を基に、宇宙浮遊物200と装置本体1との相対位置や姿勢の時系列情報から宇宙浮遊物200の運動モデルを推定し、捕捉位置および姿勢を計算する。例えば、宇宙浮遊物200を背景差分で抽出し、その領域内の数点を追跡して距離情報を組み合わせることで、宇宙浮遊物200の回転中心や重心などを求めることができる。演算部71は、具体的には、CPUなどの演算処理装置により構成され、検知手段2により得られた画像などを記憶する記憶装置を備え、制御部72の一部として装置本体1に備えられていてもよい。
【0049】
制御部72は、演算部71の計算結果に基づいて推進手段5を作動させ、装置本体1は、検知手段2が検知した宇宙浮遊物200を捕捉手段3によって捕捉可能な位置まで移動し、接着体4を発射する向きを整える。捕捉手段3に、接着体4の発射方向を微調整する調整構造とアクチュエータなどを備える場合には、推進手段5での粗位置決めと、アクチュエータの駆動を組み合わせ、接着体4の発射方向を所望の方向に細かく調整してもよい。また、制御部72は、接着体4を発射する作動指令を捕捉手段3へ送る判断を行う。
【0050】
さらに、
図2ないし
図4に示すように、宇宙浮遊物捕捉装置100は、装置本体1の外周面に配置された太陽電池81と、太陽電池81により充電され、装置本体1に搭載された機器などに電力供給する電源手段8とを、装置本体1に備えてもよい。
【0051】
電源手段8は、例えば、装置本体1の外周面に配置された太陽電池81と、太陽電池81により充電される充電池82である。充電池82は、蓄えられた電力を制御部72や検知手段2などに分配する装置を介して供給する。
【0052】
以上、本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明はこの一実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上述した一実施形態では、接着体4が紫外線硬化性接着層42を有する構成を例示して説明したが、本発明はもちろんこれに限定されず、エポキシ系の主剤と硬化剤を予め混合し、加熱によって硬化する接着層であってもよい。なお、加熱硬化する接着層は、例えば、粘性を残した状態で、宇宙浮遊物200の表面に接触し、部材間のすき間や材料表層の微細な凹凸などに入り込み、所定の時間太陽光などに曝されて加熱され、硬化するようにしてもよい。
【0054】
また、上述した一実施形態では、検知手段2がステレオカメラ21である構成を例示して説明したが、本発明はもちろんこれに限定されず、例えば、レーザレーダなどによって宇宙浮遊物200を検知してもよい。
【0055】
なお、上述した第一実施形態では、装置本体にマウントされたステレオカメラなどにて視差画像を得ているが、例えば、装置本体に備えた固定単眼のカメラと、この宇宙機近傍の人工衛星などの他の宇宙機が備えたカメラとが得た画像を組み合わせて位置情報(距離情報)の把握を行ってもよい。
【0056】
上述した一実施形態では、装置本体1は、例えば、1辺が数mの直方体である人工衛星の形状を有する。さらに、宇宙浮遊物捕捉装置100は、GPSセンサ13、ジャイロなどが装置本体1に搭載されていてもよい。
【0057】
なお、本発明は、宇宙浮遊物を捕捉する宇宙浮遊物捕捉装置に関するものであればよく、その具体的な構成においては、例えば、宇宙浮遊物を捕捉する宇宙浮遊物捕捉装置において、宇宙浮遊物を検知する検知手段が設けられた装置本体と、装置本体に設けられ、宇宙浮遊物を捕捉する捕捉手段とを設け、捕捉手段は、検知手段が検知した宇宙浮遊物に向けて、宇宙浮遊物の表面に接着固定される接着体を装置本体から紐付き状態で発射し、宇宙浮遊物と装置本体とを相互連結するものである。
【0058】
このように、本発明は、接着体を用いて宇宙浮遊物と装置本体とを相互連結し捕捉するため、宇宙浮遊物は破片が生じるほどの損傷を受けない。したがって、宇宙浮遊物が破損して、破片が新たな宇宙浮遊物となるおそれがなくなり、宇宙浮遊物を、傷つけることなく捕捉することが可能となる。これにより、安定して確実性の高い、宇宙浮遊物の捕捉が実現でき、有用な軌道確保などに利用できる。
【0059】
以下、
図1ないし
図4に加えて、
図5ないし7を参照し、上述した宇宙浮遊物捕捉装置による、宇宙浮遊物の捕捉と、宇宙浮遊物の所定の軌道からの除去について詳細に説明する。なお、
図5は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置における軌道到達から宇宙浮遊物捕捉までを説明する図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉装置における宇宙浮遊物の所定の軌道からの除去を説明する図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る宇宙浮遊物捕捉のフローチャートである。
【0060】
図5ないし
図7に示すように、本実施形態の宇宙浮遊物の所定の軌道からの除去方法は、宇宙浮遊物と宇宙浮遊物捕捉装置を接続した状態で、軌道から離脱させることによって、軌道上の宇宙浮遊物を取り除く除去方法である。
【0061】
具体的には、宇宙浮遊物200が周回する軌道O近傍に、宇宙浮遊物捕捉装置100が到達するまでの、軌道到達工程(S1)と、宇宙浮遊物捕捉装置100を移動させ、宇宙浮遊物捕捉装置100が位置P2へ到達後、宇宙浮遊物200を検知し、宇宙浮遊物200に接着体4を発射して捕捉可能な位置P3および姿勢(以下、捕捉位置P3および捕捉姿勢ともいう)を求め、宇宙浮遊物捕捉装置100を捕捉位置P3および捕捉姿勢をとるように移動させる、捕捉準備工程(S2〜7)と、宇宙浮遊物200に接着体4を発射し装置本体1と宇宙浮遊物200とを接続する、捕捉工程(S8)と、装置本体1が宇宙浮遊物200と接続された状態で、宇宙浮遊物捕捉装置100が軌道Oから離脱する、軌道離脱工程(S9)とを有する。
【0062】
ここで、軌道到達工程(S1)は、宇宙浮遊物200が周回する軌道O近傍に、宇宙浮遊物捕捉装置100を送り込む工程である。装置本体1は、例えば、1辺が数mの直方体である人工衛星の形状を有し、地球上から、宇宙浮遊物捕捉装置100を所望の軌道に投入するには、打ち上げロケットによる輸送を利用できる。宇宙浮遊物捕捉装置100はロケットに搭載され、地球の引力圏外に脱出する速度以上に加速され、パーキング軌道である高度約200kmに一時的に投入される。パーキング軌道上では惰力で航行し、その後さらに打ち上げロケットにより、所定の位置で所定の方向へと再度加速されることで、狙う軌道へと投入される。ここで、狙う軌道とは、軌道Oまたは近い軌道であり、加速する位置と方向は、あらかじめ宇宙浮遊物200の運動を、地上から計測した結果から求められる。
【0063】
投入精度を高めるために、例えば、GPSの情報に基づいて、装置本体1に備えた推進手段5を使用して、高度などを調整してもよい。好ましくは、宇宙浮遊物捕捉装置100は、打ち上げロケットによって、軌道Oよりも、低い高度に投入され、遠心力により軌道Oに近づきながら、推進手段5を用いて宇宙浮遊物200との距離を縮めると、所要時間を短くできる。
【0064】
なお、捕捉準備工程(S2〜7)は、宇宙浮遊物捕捉装置100を、検知手段2が宇宙浮遊物200を検知する位置P2(以下、検知位置P2ともいう)を経て捕捉位置P3および捕捉姿勢をとるように移動させる工程である。検知位置P2は、例えば、軌道O上において、宇宙浮遊物200から数十m離れた位置にある。宇宙浮遊物捕捉装置100は、前工程である軌道到達工程(S1)が終了した位置P1から検知位置P2まで、自己位置を把握しながら、宇宙浮遊物200に向かい、移動する。この動作には、軌道到達工程(S1)と同様、GPSの情報に基づいて、装置本体1に備えた推進手段5を使用してもよい。このとき、宇宙浮遊物捕捉装置100は、検知位置P2に到達しているか、あるいは、到達していないか、を判断し(S2)、検知位置P2に到達していなければ、検知位置P2に向かって、移動を繰り返す(S3)。検知位置P2に到達していれば、宇宙浮遊物捕捉装置100を捕捉位置P3および捕捉姿勢をとるように移動させる(S5〜7)。
【0065】
検知位置P2に到達した宇宙浮遊物捕捉装置100は、宇宙浮遊物200を検知する(S4)。この検知は、例えば、装置本体1に備えた検知手段2を用いた撮像である。撮像で得られた画像情報などに基づいて、宇宙浮遊物200の運動状態を推定した結果より、捕捉位置P3および捕捉姿勢を求める(S5)。捕捉位置P3は、例えば、宇宙浮遊物200から数m離れた位置にある。捕捉位置P3は、宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200が衝突しないよう、距離をおいて設定され、軌道Oから外れた位置でもよい。好ましくは、捕捉位置P3は、宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200が衝突しない限りで、宇宙浮遊物200に接近した位置とすると、接着体4が宇宙浮遊物200に当たらず、捕捉に失敗する確率を低下させることができる。捕捉姿勢は、捕捉位置P3において、宇宙浮遊物200の任意の箇所に接着体4を発射することが可能な方向に、捕捉手段3が向いている状態を保つ姿勢である。
【0066】
好ましくは、宇宙浮遊物捕捉装置100は、宇宙浮遊物200の重心部など、タンブリングしている宇宙浮遊物200の運動状態において不動点や変動が少ない点に接着体4を発射して捕捉可能な位置および姿勢を、捕捉位置P3および捕捉姿勢とする。捕捉位置P3および捕捉姿勢が求められた後、宇宙浮遊物捕捉装置100を、推進手段5を使用し、捕捉位置P3および捕捉姿勢をとるように移動させる。このとき、宇宙浮遊物捕捉装置100は、捕捉位置P3および捕捉姿勢に到達しているか、あるいは、到達していないか、を判断し(S6)、捕捉位置P3および捕捉姿勢に到達していなければ、捕捉位置P3および捕捉姿勢をとるように、移動を繰り返す(S7)。捕捉位置P3および捕捉姿勢に到達していれば、次工程に移る。
【0067】
また、捕捉工程(S8)は、宇宙浮遊物200に接着体4を発射し宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200とを接続し捕捉する工程である。接着体4はワイヤロープ43によって装置本体1と接続されており、接着体4が宇宙浮遊物200に留まると、宇宙浮遊物200と宇宙浮遊物捕捉装置100がワイヤロープ43によりつながった状態となる。このように接着体4を用いて宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200とを接続し捕捉するため、宇宙浮遊物200は変形や破壊の損傷を受けない。したがって、他の方法(例えば、銛を打ち込む方法)のような、宇宙浮遊物200が破損して新たなデブリを生じるおそれがなくなり、有用な軌道上の物体を、傷つけることなく除去することが可能となる。
【0068】
そして、軌道離脱工程(S9)は、宇宙浮遊物捕捉装置100が宇宙浮遊物200と接続された状態で、宇宙浮遊物捕捉装置100が軌道Oから離脱する工程である。この離脱工程は、例えば、宇宙浮遊物捕捉装置100の高度を下げて、軌道Oから離脱する工程である。軌道到達工程(S1)で用いた装置本体1に備えた推進手段5を、宇宙浮遊物捕捉装置100へ進行方向と逆向きの速度成分を与え減速するよう、噴射させてもよい。
【0069】
宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200は、減速によって、遠心力のつりあい状態が変化するため、高度が下がる方向へ移動し、軌道Oを外れる。好ましくは、宇宙浮遊物捕捉装置100と宇宙浮遊物200が、デブリまたはデブリの発生源とならないよう、大気圏再突入させる。例えば、突入角度を深く取り、地表に到達する前に燃え尽きさせると、落下物の回収を不要とできる。
【0070】
また、この離脱工程は、
図6に示すように、例えば、宇宙浮遊物捕捉装置100を加速させて、軌道Oから離脱させる工程であってもよい。推進手段5によって、宇宙浮遊物捕捉装置100を加減速させ、任意の軌道へと面外移行可能とすることで、複数の軌道に存在するデブリを宇宙浮遊物捕捉装置100を再利用して捕捉することが容易となる。
【0071】
さらに、この離脱工程における、装置本体1に備えられ、宇宙浮遊物200に接続されて速度を変え、軌道Oから離脱させる離脱手段6は、軌道到達工程(S1)で用いる推進手段と同一のものでなくともよい。前述の通り、例えば、地球磁場との電磁気的な相互作用によって制動力を生じさせる、導電性のテザーや、地上への落下ないし軌道変更を促す、大気または太陽光輻射圧を受ける、膜状の受圧装置であってもよい。
【0072】
上述した工程を有する方法を用いて、故障した人工衛星でない、例えば、運用中の衛星などを除去対象として、軌道から離脱させることもできる。本発明の宇宙浮遊物捕捉装置によれば、破壊せずに衛星などを捕捉できるため、データや試料などを、損傷なく取り出すことが容易となる。
【0073】
上述した一実施形態では、宇宙浮遊物捕捉装置が推進手段や離脱手段を備えて、宇宙浮遊物を所定の軌道から取り除く方法を例示して説明したが、本発明は、宇宙浮遊物を捕捉する宇宙浮遊物捕捉装置であって、宇宙浮遊物を検知する検知手段が設けられた装置本体と、装置本体に設けられ、宇宙浮遊物を捕捉する捕捉手段とを備え、捕捉手段は、検知手段が検知した宇宙浮遊物に向けて、宇宙浮遊物の表面に接着固定される接着体を装置本体から紐付き状態で発射し、宇宙浮遊物と装置本体とを相互連結するものである。
【0074】
以上の通り、本発明は、接着体を用いて宇宙浮遊物と装置本体とを相互連結し捕捉するため、宇宙浮遊物は破片が生じるほどの損傷を受けず、宇宙浮遊物が破損して、破片が新たな宇宙浮遊物となるおそれがなくなり、宇宙浮遊物を、傷つけることなく捕捉することが可能となる。これにより、安定して確実性の高い、有用な軌道確保を実現することができる。