特許第6525614号(P6525614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525614
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】椅子の背もたれ
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20190527BHJP
   A47C 7/64 20060101ALI20190527BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   A47C7/40
   A47C7/64 A
   A47C7/62 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-17800(P2015-17800)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-140506(P2016-140506A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】磯田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
(72)【発明者】
【氏名】和田 光平
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06382719(US,B1)
【文献】 特開2013−103069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00−7/74
A47C 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に開口して上端部が左右長手のアッパメンバーで構成された合成樹脂製のバックフレームを備えており、前記アッパメンバーに、オプション品支持ブラケットを後ろ側から配置可能な構成であって、
前記オプション品支持ブラケットに、前記バックフレームのアッパメンバーに下方から重なる前向き抱持部が形成されている一方、
前記アッパメンバーのうち前記オプション品支持ブラケットの前向き抱持部が下方から重なる部位の下面に、下向きに開口した凹部が形成されており、
前記凹部の上底面に、前記バックフレームを射出成形法によって成型するに際して残ったゲート跡を位置させることにより、前記ゲート跡が前記オプション品支持ブラケットの前向き抱持部によって下方から覆われるようになっている、
椅子の背もたれ。
【請求項2】
前記オプション品はハンガー装置であって、前記バックフレームのアッパメンバーに、前記ハンガー装置の支持ブラケット後ろから取り付くハンガー保持部を形成しており、前記ハンガー保持部の箇所に前記ゲート跡が位置している、
請求項1に記載した椅子の背もたれ。
【請求項3】
前記ハンガー装置を取り付けない状態では、前記ハンガー保持部には、当該ハンガー保持部を覆うカバーが取り付けられるようになっている、
請求項2に記載した椅子の背もたれ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、合成樹脂製のバックフレームを有する背もたれに関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれは様々な構造になっているが、例えばオフィス用椅子の場合、大まかには、クッションタイプとメッシュタイプとに大別される。クッションタイプは、樹脂製の背インナーシェル(背板)の前面にクッションを張って、背インナーシェルはその後ろに配置されたアウター部材に取り付けたものであり、この場合のアウター部材は、背もたれの背面の外観の略全体を構成するシェル形状になっていることが殆どである。
【0003】
他方、メッシュタイプは、前後に開口した枠状のアウター部材(バックフレーム)にメッシュ材を張った構造であり、メッシュ材をアウター部材に張る方法としては、メッシュ材の周縁にテープ状で可撓性の縁部材を縫着して、この縁部材を、アウター部材の外周に形成した溝穴に差し込むことが多いが、本願出願人の出願に係る特許文献1には、メッシュ材の周縁に剛性の高い縁部材を取り付けて、縁部材をアウター部材の前面に取り付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−244253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、背もたれを構成するアウター部材の多くは、合成樹脂を材料にした射出成形法で製造されている。この射出成形法は、金型の空洞に溶融した合成樹脂をゲートから注入して固まらせるものであり、金型は、キャビと呼ばれている固定型と、コアと呼ばれている可動型との対を基準にしており、一般に、ゲートは固定型に設けている。また、アウター部材が複雑な形状である場合は、固定型又は可動型若しくは両方にスライド型を装着している。
【0006】
樹脂の成形品において、ゲートの位置は製品の品質に影響する重要な要素であり、樹脂の流れ等を考慮して位置が決定される。そして、椅子における背もたれのアウター部材の場合は、上端部にゲートを位置させていることが多いが、ゲート内において固まった樹脂がアウター部材と一体に繋がっているため、型抜きしてアウター部材を金型から取り出した後に、山形のゲート跡が残るという現象が発生している。
【0007】
そして、ゲート跡が露出したままで残っていると、美観を悪化させるのみでなく、人が手で触れたときに違和感を感じたり怪我をしたりするおそれがある。そこで従来は、人手を掛けてゲート跡の凹凸の除去作業を行っているが、外観もきれいに処理する必要があるため、大きな工数が伴う作業であり、さらに人が作業する為に処理の精度にバラつきが伴うことも否めないものであった。また、外観処理は行うものの、削り取った面と成形面とは少し見た目で違うため、違和感が残る場合もあった。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、典型例が各請求項で特定される。このうち請求項1の発明に係る背もたれは、
「前後に開口して上端部が左右長手のアッパメンバーで構成された合成樹脂製のバックフレームを備えており、前記アッパメンバーに、オプション品支持ブラケットを後ろ側から配置可能な構成であって、
前記オプション品支持ブラケットに、前記バックフレームのアッパメンバーに下方から重なる前向き抱持部が形成されている一方、
前記アッパメンバーのうち前記オプション品支持ブラケットの前向き抱持部が下方から重なる部位の下面に、下向きに開口した凹部が形成されており、
前記凹部の上底面に、前記バックフレームを射出成形法によって成型するに際して残ったゲート跡を位置させることにより、前記ゲート跡が前記オプション品支持ブラケットの前向き抱持部によって下方から覆われるようになっている」
というものである。
【0010】
ここに、オプション品には、ハンガー装置やヘッドレスト装置、カバン掛け、把手、銘板などの各種のものが含まれる
【0011】
請求項2の発明は、
「前記オプション品はハンガー装置であって、前記バックフレームのアッパメンバーに、前記ハンガー装置の支持ブラケット後ろから取り付くハンガー保持部を形成しており、前記ハンガー保持部の箇所に前記ゲート跡が位置している
という構成になっている。
【0012】
ハンガー装置は、全体が一体構造になっている場合と、バックフレームのアッパメンバーに固定されるハンガー支持ブラケットに別体のハンガーが装着されている場合とがあり、後者の場合は、一般にハンガー体は高さ調節可能な状態でハンガー支持ブラケットに装着されていることが多い。本願発明では、いずれの態様も含んでいる。
【0013】
【0014】
請求項の発明は、請求項2において、
前記ハンガー装置を取り付けない状態では、前記ハンガー保持部には、当該ハンガー保持部を覆うカバーが取り付けられるようになっている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、ゲート跡をオプション品支持ブラケットの前向き抱持部で隠すことができるため、ゲート跡を削り取る作業を不要にできるか、また、削り取り作業を簡素化できる。削り取る場合であっても、綺麗に処理する必要はなくておおまかでよいため、作業の手間を抑制できると共に、処理にバラツキがあっても特段の問題は生じない。
【0016】
そして、ゲート跡を隠すことのみを目的として専用のカバーで覆うのではなく、別の用途を持っているオプション品支持ブラケットで隠すものであるため、構造が複雑化することもない。
【0017】
なお、オプション品を取り付けない場合は、ゲート跡はカバーで覆うことができるが、このカバーはゲート跡の有無に関係なく必要なものであるため、やはり、構造が複雑化することはないのである。
【0018】
上記したとおり、オプション品には多くのものが含まれるが、請求項2のハンガー装置は多くの椅子に使用されているため、本願発明の適用対象として好適である。更に述べると、椅子の背もたれは、ローバックやミドルバック、ハイバックのように高さが相違しており、市販品ではミドルバックと呼ばれる中間高さのものが最も多いと云えるが、このミドルバックタイプの背もたれには、ヘッドレストは取り付けずにハンガー装置を取り付けることが多いため、本願発明の適用対象として好適である。
【0019】
本願発明では、ゲート跡は凹部に納まっているため、オプション品の取り付けの邪魔になることはない。
【0020】
請求項3の構成を採用すると、ハンガー装置が使用されていない状態ではハンガー保持部を隠して、美観や安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】椅子の外観を示す図で、(A)はハンガー装置を取り付けずに全体を後ろから見た斜視図、(B)はハンガー装置を取り付けた状態で後ろから見た斜視図、(C)はハンガー装置を取り付けた状態で前ろから見た斜視図である。
図2】(A)は椅子の主要構成要素を示す斜視図、(B)は背もたれの分離斜視図である。
図3バックフレームとハンガー装置との分離斜視図であり、(A)は前から見た図、(B)は後ろから見た図である。
図4】(A)はバックフレームの上部の斜視図、(B)は要部の斜視図、(B)とカバーを付けた状態での斜視図である。
図5】(A)はハンガー装置の斜視図、(B)はハンガー支持ブラケットの斜視図、(C)はカバーの斜視図である。
図6】ハンガー装置を取り付けた状態を図4のX−X視で見た側断面図である。
図7】(A)はカバーを取り付けた状態で図4のX−X視で見た側断面図、(B)はハンガー装置を取り付けた状態を図4のY−Y視で見た側断面図である。
図8】(A)は金型装置の概略を示す側面図、(B)は成形状態での要部の縦断側面図、(B)は成形後の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願では、方向を特定するため前後や左右の文言を使用するが、これらの文言は、椅子に普通に腰掛けた人が向いた状態を基準にしている。正面視は、椅子に腰掛けた人と対向した方向から見た状態である。
【0023】
(1).椅子の概要
まず、図1〜3に基づいて概要を説明する。本実施形態は、事務用に広く使用されている回転椅子に適用しており、椅子は、ガスシリンダとしての脚支柱を有する脚装置1と、脚装置1の上に配置された座2と、着座者がもたれ掛かり得る背もたれ3とを備えている。
【0024】
図2に示すように、背もたれ4は、前後に開口した正面視略台形状のシートフレーム4と、このシートフレーム4を後ろから支えるバックフレーム5とを備えており、シートフレーム4にメッシュ材等の可撓性シート材6が張られている。バックフレーム5は、図示しないベース部に後傾自在に取り付けられている。図3に示す符号7は、座2の前半部を下方から覆う座アウターシェルである。背もたれ3はロッキングするが、ロッキング機構は本願発明と関係がないので、説明は省略する。
【0025】
バックフレーム5は、合成樹脂を材料にして射出成形法で製造された成形品であり、上下長手の左右サイドメンバー8と、その上端に繋がった左右長手のアッパメンバー9と、左右サイドメンバー8の下端に繋がった左右長手のロアメンバー10とによって前後に開口した枠状体が構成されており、ロアメンバー10には左右一対の前向きアーム部11を設けている。サイドメンバー8とアッパメンバー9とは、前向きに開口した溝型に形成されている。また、各メンバーには多数の補強リブを設けている。
【0026】
図1(B)(C)及び図2に示すように、バックフレーム5のアッパメンバー9にはハンガー装置12を取り付けることができる。ハンガー装置12はオプション品の一例であり、図3に示すように、正面視略T形のハンガー体13と、ハンガー体13が高さ調節可能に装着されたハンガー支持ブラケット14と、ハンガー支持ブラケット14とアッパメンバー9との間に介在した金具15とを備えている。
【0027】
金具15は、上向きのビス(後述する)により、ハンガー支持ブラケット14と一緒にアッパメンバー9に共締めされている。ハンガー支持ブラケット14は更に、金具15に対して前向きのビス16で固定されている。図では省略しているが、ハンガー支持ブラケット14とハンガー体13との間には、ハンガー体13の昇降を許容するための操作部材が介在しており、操作部材がゴム17によってハンガー体13に当接している。
【0028】
(2).要部の詳細
次に、図4以下の図面も参照し、バックフレーム5におけるアッパメンバー9の構造及びハンガー装置12の詳細を説明する。
【0029】
図3(C)や図4(B)(C)に示すように、バックフレーム5におけるアッパメンバー9の後面は、手前側に向けて段落ちした形態になっている。換言すると、アッパメンバー9には、下方と後方とに開口した後ろ段部20が左右全長に亙って形成されている。
【0030】
そして、図4(B)に明示するように、後ろ段部20の左右中間部に、ハンガー装置12のハンガー支持ブラケット14をアッパメンバー9の後ろ側から取り付けるためのランド部21が、後ろ段部20を埋めるような状態で形成されている。ランド部21は左右方向に長い角形になっており、後面はアッパメンバー9の後面よりも若干手前にずれており、また、下面はアッパメンバー9の下面よりも若干上にずれている。また、アッパメンバー9の前端でかつ下端には、左右中間部において若干の寸法だけ切欠かれた第1凹部22が、下向きに開口するように(或いは上向きに凹むように)形成されている。この第1凹部22が、請求項に記載した凹部に該当する。
【0031】
図5に示すように、金具15は、背板15aと上水平片15bと下水平片15cとを有する側面視コ字形の基本形態であるが、上下水平片15b,15cに、左右外側と手前側とに張り出した上下一対ずつの上下左右の張り出し部15d,15eを設けており、上張り出し部15dはランド部21に形成したスリット23に挿入し、下張り出し図15eはランド部21の下面に当接させている。
【0032】
図4(B)に示すように、ランド部21のスリット23は左右に一連に長く延びており、左右中間部は上下幅が大きい広幅部23aになっている。例えば図5に示すように、金具15における左右張り出し部15d,15eの間には上下の切り欠き24が形成されているが、下の切り欠き24は、ランド部21に形成した角形突起25(図4図6参照)に嵌まっている。ランド部21の左右中間部には第2凹部26が形成されており、角形突起25は凹部26の底面まで至っている。
【0033】
例えば図5から理解できるように、ハンガー支持ブラケット14は、アッパメンバー9のランド部21を下方と左右両側とから囲う前向き抱持部27と、前向き抱持部27の後端に一体に設けた略上下長手のガイド28とで構成されており、図7(B)に示すように、前向き抱持部27の底板27aと金具15の張り出し部15とアッパメンバー9とが、上向きのビス29及びナット30によって共締めされている。
ナット30は、アッパメンバー9に形成した前向きの開口のナット保持穴31に手前から嵌め込まれている。図6に示すように、アッパメンバー9の第1凹部22は、前向き抱持部27の底板27aによって下方から覆われている。
【0034】
図4(A)に示すように、バックフレーム5におけるアッパメンバー9の前面には前段部32が形成されており、前段部32には、当該前段部32を仕切るような状態で多数枚の補強リブ33を設けている。また、例えば図7(A)に示すように、アッパメンバー9のうち前段部32の左右中間部には下向きのセンター凹所34を形成し、センター凹所34の前後両側に係合穴35,36を空けている。
【0035】
図2(B)に僅かに示すように、シートフレーム4におけるアッパ部の左右中間部の後面に下向きストッパー37を設けているが、下向きストッパー37がセンター凹所34に上から嵌合して、下向きストッパー37に設けた係合突起(図示せず)が係合穴35,36に嵌まるようになっている。
【0036】
図5(A)に示すように、ハンガー支持ブラケット14における抱持部27の内面には多数のリブを形成している。また、図5(A)に示すように、ハンガー体13の支柱部に、左右の内向きフランジ39を有する蟻溝40が形成されているが、ハンガー支持ブラケット14のガイド部28には、蟻溝40に嵌まる左右の縦長リップ41が形成されている。
【0037】
また、ハンガー支持ブラケット14のガイド部28には、後方と下方とに開口した凹所42が形成されており、凹所42に既述の操作部材(図示せず)が嵌め込まれている。ハンガー体13は、ゴム17の弾性に抗して昇降させることができる。ハンガー体13における蟻溝40の底面には、下限規制ストッパー43と抜け防止ストッパー44とが形成されている。各図では、ハンガー体13を下限まで下降させた状態を表示している。ハンガー体13を抜きは外すときは、操作部材を操作して、抜け防止ストッパー44との係合を解除することになる。
【0038】
ハンガー装置12を取り付けない場合は、図4(C)や図7(A)に示すように、アッパメンバー9のランド部21はカバー45で囲っている。カバー45の詳細は図5(C)に表示しており、ハンガー支持ブラケット14の前向き抱持部27と類似した内部構造になっている。但し、カバー45の上部に左右一対の略板状のストッパー突起46を形成している一方、図4(B)に示すように、ランド部21には、ストッパー突起46が嵌まる長溝穴47を形成しており、これにより、カバー45は落下不能に保持される。
【0039】
また、カバー45の底部には、アッパメンバー9のランド部21に形成したビス挿通穴48に下方から係合する係合爪49を形成しており、これにより、後ろ向きに離脱しない。ランド部21への装着は、カバー45の弾性に抗して係合爪49をビス挿通穴48に嵌め込むことで行われる。取り外しは、カバー45を弾性変形させることによって行われる。
【0040】
例えば図5に示すように、ハンガー支持ブラケット27及びカバー45の下端には、第1凹部22に嵌まる前向き突起26b,45aを設けている。
【0041】
(3).成形方法
バックフレーム5の成形方法の概略を、図8(A)に示している。すなわちバックフレーム5の成形は金型装置を使用した射出成形法で行われるが、金型装置は、バックフレーム5に後ろから重なる形状の固定型(キャビ)51と、バックフレーム5に手前から重なる形状の可動型(コア)52とを基本的な要素にしており、両型51,52の合わせ面に形成された空洞に、溶融した合成樹脂がゲート53から注入される。
【0042】
この場合、バックフレーム5は非常に複雑な形状をしており、センター凹所34の部分や手前側の係合穴35の成形は、可動型52に設けたスライド型54,55を使用して行われる。
【0043】
そして、ゲート53は、ランド部21における第1凹部22の底面の箇所に位置させている。従って、製品としてのバックフレーム5には、図8(C)や図4(B)等に示すように、第1凹部22の底面に下向きのゲート跡56が残るが、図6及び図7(A)のとおり、ゲート跡56はハンガー支持ブラケット14の前向き抱持部27又はカバー45で隠れていて人が触れることはないため、常に露出していることによる美観や安全性の問題は皆無である。特に、ゲート跡56は下向きであるためハンガー装置12やカバー45を外した状態で人目には触れにくい。従って、美観に優れている。
【0044】
ゲート跡56はその全体を残したままでもよいし、刃物で削り取ってもよい。削り取る場合は大まかでよい。すなわち、ゲート跡56が多少残っていてもよいし、逆に、過剰に削っても、特段の問題はない。従って、処理にバラ付きがあっても特に問題はない。第1凹部22は帯状の形態であるので、ゲート跡に刃物を当て易くて、作業も容易である。この点は、本実施形態の利点である。
【0045】
【0046】
(4).その他
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は上記の他にも様々に具体化できる
【0047】
実施形態のハンガー装置は、ハンガー体とハンガー支持ブラケットとが別部材になっているが、高さ調節式でない単一構造品も使用可能である。この点は、付属品としてヘッドレストを使用する場合も同様である。本願発明は、ゲート跡が複数存在する場合にも適用できる。なお、図示したランド部21の箇所には、ヘッドレスト等の他の付属品(オプション品)を取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、実際に椅子の背もたれに適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0049】
3 背もたれ
4 シートフレーム
5 アウター部材の一例としてのバックフレーム
9 バックフレームのアッパメンバー
12 オプション品の一例としてのハンガー装置
13 ハンガー体
14 ハンガー支持ブラケット
15 金具
16 ビス
20 後ろ段部
21 ランド部
22 第1凹部(請求項の凹部)
29 ビス
30 ナット
45 カバー
51 金型装置を構成する固定型
52 金型装置を構成する可動型
53 ゲート
56 ゲート跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8