(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[幾つかの実施形態に関連する用語と概念]
分析器:自動化診断分析器(“分析器”)は、診断化学分析器、自動化免疫アッセイ分析器、もしくは任意の他のタイプのインビトロ診断(IVD)試験分析器を含む。概して、分析器は、複数の患者サンプルにおいて自動化された一連のIVD試験を実施する。患者サンプルは、分析器に(手動もしくはオートメーションシステムを介して)装填され、分析器は、その後、各サンプルに対して、免疫アッセイ、化学試験もしくは他の観察可能な試験のうちの一つ以上を実施することができる。分析器という用語は、モジュール分析システムとして構成される分析器のことを称する可能性があるが、それに限定はされない。モジュール分析システムは、オートメーショントラックなどのオートメーション面によって、線形もしくは他の幾何学的構造で相互接続された複数のモジュール(同一タイプのモジュールもしくは異なるタイプのモジュールを含む可能性がある)の任意の組み合わせを含む、一体型の拡張可能システムを含む。幾つかの実施形態においては、オートメーショントラックは、モジュール間で患者サンプルおよび他のタイプの材料を動かすために独立したキャリアが使用される、一体型輸送システムとして構成されてもよい。概して、モジュール分析システムにおける少なくとも一つのモジュールは、分析器モジュールである。モジュールは、患者サンプルに対して、より高い分析タスクのスループットを可能にするために、特化されるか、冗長化されてもよい。
【0018】
分析器モジュール:分析器モジュールは、患者サンプルに対して免疫アッセイ、化学試験もしくは他の観察可能な試験などのIVD試験を実施するように構成されたモジュール分析器内のモジュールである。典型的には、分析器モジュールは、サンプル容器から液体サンプルを抽出して、(概して反応器と称される)反応キュベットもしくはチューブ内で試薬とサンプルを一緒にする。分析器モジュールにおいて利用可能な試験は、電解質の分画、腎もしくは肝機能、代謝、心臓、ミネラル、血液疾患、薬剤、免疫アッセイ、もしくは他の試験を含むが、そのいずれにも限定はされない。幾つかのシステムにおいては、分析器モジュールは、より高いスループットを可能とするために、特化されてもよいし、または冗長化されてもよい。分析器モジュールの機能は、モジュールアプローチを利用しないスタンドアロン分析器によって実施されてもよい。
【0019】
キャリア:キャリアは、オートメーションシステムにおいてサンプル容器(および、拡張すると流体サンプル)もしくは他の単位体を動かすために使用することができる輸送ユニットである。幾つかの実施形態においては、キャリアは、従来のオートメーションパック(例えば、チューブもしくは単位体をかみ合わせるためのホルダ、オートメーショントラックにおける外部コンベヤベルトが推進力を提供することを可能にするための摩擦表面、トラックがパックをその宛先へとルーティングすることを可能にするために、パックをオートメーショントラックにおける壁もしくはレールによって誘導することを可能にする複数側面を含む受動デバイス)の様に単純であってもよい。幾つかの実施形態においては、キャリアは、プロセッサ、モーションシステム、誘導システム、センサなどのアクティブコンポーネントを含んでもよい。幾つかの実施形態においては、キャリアは、オートメーションシステムにおける地点間で、キャリアを自己誘導することを可能にする内蔵(オンボード)知能を含む可能性がある。幾つかの実施形態においては、キャリアは、他の場所で推進力がトラックなどのオートメーション表面によって提供されうる間に、推進力を提供する内蔵コンポーネントを含む可能性がある。幾つかの実施形態においては、キャリアは、決定点間で単一方向(例えば、前後)へと動きを制限するオートメーショントラックに沿って動く。キャリアは、サンプルチューブと噛み合って運搬するためのチューブホルダを有するIVD環境において任意のペイロードへと特化されてもよいし、または、オートメーションシステム周囲の異なる単位体を運搬するのに適した取り付け表面を含んでもよい。キャリアは、一つ以上のスロットを含むように構成することができる(例えば、キャリアは、一つもしくは複数のサンプル容器を保持してもよい)。
【0020】
キャリア/トレイ/ラック:キャリアは、トレイから区別可能であってもよい。トレイは、通常、オートメーショントラックに沿って移動せずに(例えば、オペレータによって運ばれる)、複数のペイロード(例えば、サンプルチューブ)を保持するように構成されるデバイスのことを称する。ラックは、複数のペイロード(例えば、サンプルチューブ)を保持するように構成されたデバイスを記述するための一般用語である。ラックは、複数のペイロードを運搬するように構成されたトレイ(オートメーショントラックの外側で使用されるとき)もしくはキャリア(オートメーショントラックを移動するように構成されるとき)のことを称してもよい。ラックは、幾つかの実施形態においては、スロットの一次元もしくは二次元アレイのことを称することがある。
【0021】
中央コントローラもしくはプロセッサ:中央コントローラ/プロセッサ(ときには中央スケジューラと称されることがある)は、オートメーションシステムの一部であって、任意のプロセッサ内蔵キャリアから分離されたプロセッサである。中央コントローラは、キャリア用のトラフィック方向、スケジューリングおよびタスク管理を容易にすることができる。幾つかの実施形態においては、中央コントローラは、オートメーションシステムにおけるサブシステムと通信し、キャリアとワイヤレスで通信することができる。これは、キャリアに対して、軌道もしくは操縦に関する情報もしくは命令を送信することと、どのキャリアがいつ、どこへ移動するべきかを決定することをも含んでもよい。幾つかの実施形態においては、ローカルプロセッサは、ローカル待ち行列を管理することなどのローカルトラックセクション(部分)上のキャリアの管理を担当することがある。これらのローカルプロセッサは、中央コントローラに対するローカル均等物として機能してもよい。
【0022】
決定点(デシジョンポイント):決定点は、異なる操縦もしくは軌道決定が異なるキャリアに対してなされることがある、オートメーショントラックの地点である。よくある例は、トラック内の分岐点(フォーク)を含む。あるキャリアは、転回することなく進行するが、別のキャリアは、減速して転回する。決定点は、幾つかのキャリアは停止するが他のキャリアは進行することがある、器具における停止点を含んでもよい。幾つかの実施形態においては、転回前の減速領域は決定点として機能し、減速して転回する予定のキャリアが横力を制限することを可能にし、他のキャリアは、転回しない場合、もしくは当該キャリアに対するモーションプロファイルが減速することを必要としない場合には進行してもよい。決定点においてなされる決定は、実施形態に依存して、プロセッサ内蔵キャリア、トラックセクションに対してローカルなプロセッサ、中央プロセッサもしくはその任意の組み合わせによって行われる可能性がある。
【0023】
独立キャリア:幾つかの実施形態においては、キャリアは独立して制御されるキャリアとして特徴づけられてもよい。独立して制御されるキャリアは、独立して制御される軌道を有するキャリアである。幾つかの実施形態においては、独立キャリアは、一つもしくは複数の、サイズ、重量、フォームファクタおよび/もしくは内容の異なるペイロードの組み合わせを運搬するキャリアを有し、同一トラック上で同時に動作してもよい。各独立して制御されるキャリアの軌道は、モーションプロファイル(オートメーションシステムで動く間のキャリアに対する最大ジャーク(jerk:加加速度)、加速度、方向および/もしくは速度を含む)によって制限されてもよい。モーションプロファイルは、各キャリアに対する軌道を独立して制限するか、規定することができる。幾つかの実施形態においては、モーションプロファイルは、オートメーションシステムの異なるセクション(例えば、直線トラックセクション対、転回中に付加される横力を処理するためのカーブ周囲)で異なるか、異なるキャリア状態(例えば、空のキャリアはサンプルを輸送するキャリア、または試薬もしくは他の品を輸送するキャリアとは異なるモーションプロファイルを有することがある)で異なるか、および/もしくは異なるキャリアで異なる可能性がある。幾つかの実施形態においては、キャリアは、各分離されたキャリアに対して意図されたモーションプロファイルまたは軌道もしくは宛先命令に応じて、個々のキャリアが独立して動作することを可能にする、内蔵推進コンポーネントを含むことができる。
【0024】
知能キャリア/半自律キャリア:幾つかの実施形態においては、キャリアは、知能キャリアとして特徴づけられてもよい。知能キャリアは、作動、ルーティングもしくは軌道決定に寄与する内蔵回路を有するキャリアである。知能キャリアは、命令に応じてオートメーション表面に沿って進行するためにソフトウェア命令を実行するデジタルプロセッサ、または作動入力に応答する内蔵アナログ回路(例えば、ラインフォロワ回路)を含むことができる。命令は、モーションプロファイル、トラフィック、もしくは軌道ルールを特徴づける命令を含んでもよい。幾つかの知能キャリアは、キャリアの環境に応じてキャリアをルーティングするか決定を行うために内蔵プロセッサを支援するための内蔵センサも含んでもよい。幾つかの知能キャリアは、内蔵プロセッサの制御に応じてキャリアを動かすことを可能にする、モータもしくは磁石などの内蔵コンポーネントを含んでもよい。
【0025】
インビトロ診断(IVD):インビトロ診断(IVD)は、疾病、状態、感染、代謝マーカを検出できる、または生体材料/流体の種々の成分を定量化することができる試験である。これらの試験は、患者の身体外で、研究室、病院、診療所、もしくは他の健康専門施設で実施される。IVD試験は、概して、試験管もしくは他のサンプル容器、またはより一般的には生存生物外の制御された環境におけるアッセイからの診断を実施することを意図された医療デバイスを利用する。IVDは、患者の流体サンプルに実施されるアッセイに基づいて、試験および疾病の診断もしくは生体材料/流体の種々の成分を定量化することを含む。IVDは、患者の身体の流体もしくは腫瘍から採取された液体サンプルの分析によって実施できる、患者の診断および治療に関連する種々のタイプの分析試験およびアッセイを含む。これらのアッセイは、典型的には、患者のサンプルを含むチューブもしくはバイアルが装着された分析器で実施される。IVDは、本明細書で記述されたIVD機能の任意のサブセットのことを称する可能性がある。
【0026】
ランドマーク:キャリアが内蔵センサを含む実施形態においては、トラック表面から視認できる/検知できるトラック表面もしくは位置における光もしくは他のマークは、ランドマークとして機能できる。ランドマークは、現在位置、近づいてくる停止位置、決定点、転回、加速/減速点など、キャリアに対する地形情報を伝送することができる。
【0027】
研究室オートメーションシステム:研究室オートメーションシステムは、研究室環境内のサンプル容器もしくは他の単位体を自動的に(例えば、オペレータもしくはソフトウェアの要求で)動かすことができる任意のシステムを含む。分析器に関連して、オートメーションシステムは、分析器内のステーションへ、ステーションから、もしくはステーション間で容器もしくは他の単位体を自動的に動かしてもよい。これらのステーションは、モジュール試験ステーション(例えば、あるタイプのアッセイに特化されるか、さもなければ、より大きい分析器へと試験サービスを提供することができるユニット)、サンプル取扱ステーション、格納ステーションもしくは作業セルを含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0028】
モジュール:モジュールは、モジュール分析システム内の特定の(複数の)タスクもしくは(複数の)機能を実施する。モジュールの実施例は、分析試験用にサンプルを準備する分析前モジュール(例えば、サンプル試験チューブの頭部上のキャップを除去するデキャッパモジュール)、サンプルの一部を抽出して、試験もしくはアッセイを実施する分析器モジュール、分析試験後の格納用にサンプルを準備する分析後モジュール(例えば、サンプル試験チューブをリシール(再封)するリキャッパモジュール)、またはサンプル取扱モジュールを含んでもよい。サンプル取扱モジュールの機能は、在庫管理の目的でサンプルコンテナ/容器を管理すること、ソーティング(分類)、サンプルコンテナ/容器をオートメーショントラック(一体型輸送システムを含んでもよい)内外へ動かすこと、サンプルコンテナ/容器を分離された研究室オートメーショントラック内外へ動かすこと、ならびにトレイ、ラック、キャリア、パックおよび/もしくは格納位置内外へサンプルコンテナ/容器を動かすことを含んでもよい。
【0029】
ペイロード:例示的なキャリアが患者サンプルを運搬することに関連して記述されるが、幾つかの実施形態においては、キャリアはオートメーションシステムにわたって、任意の他の合理的なペイロードを輸送するために利用することができる。これは、流体、流体容器、試薬、廃棄物、使い捨て製品、部品もしくは任意の他の適切なペイロードを含んでもよい。
【0030】
プロセッサ:プロセッサは、一つ以上のプロセッサおよび/もしくは関連するソフトウェアおよび処理回路のことを称することがある。これは、適切な場合、各実施形態において前述された処理機能を実現するための、シングルもしくはマルチコアプロセッサ、単一もしくは複数のプロセッサ、埋め込み型システム、もしくは分散型処理アーキテクチャを含んでもよい。
【0031】
プルアウト、サイドカー、分岐経路:これらの用語は、トラックシステムの主要部分以外のトラックセクションのことを称するために使用されてもよい。プルアウトもしくはサイドカーは、コード、並行トラック、もしくは主要なトラフィックパターンから幾つかのキャリアを分離するための他の適切な手段を含んでもよい。プルアウトもしくはサイドカーは、メイントラックセクションにおけるトラフィックを中断することなく、物理待ち行列を容易にするか、あるキャリアが停止するか減速することを可能にするように構成されてもよい。
【0032】
サンプル:サンプルは、患者(人間もしくは動物)から採取された流体もしくは他のサンプルのことを称し、血液、尿、ヘマトクリット、羊水流体、またはアッセイもしくは試験を実施するのに適した任意の他の流体を含んでもよい。サンプルは、ときには、他の患者サンプルを処理するうえで分析器を支援するために使用される、キャリブレーション流体もしくは他の流体のことを称することがある。
【0033】
STAT(短いターンアラウンド時間)サンプル:サンプルは、分析器内の非STATサンプルに対して先行するべきサンプルに対してSTAT優先度を割り当てるために、研究室情報システム(LIS)もしくはオペレータによって割り当てられた異なる優先度を有してもよい。賢明な方法で利用されると、これによって、試験プロセス中に他のサンプルよりも迅速にあるサンプルを動かすことが可能になり、試験結果を医師もしくは他の開業医が迅速に受け取ることを可能にする。
【0034】
ステーション:ステーションは、モジュール内で特定のタスクを実施するモジュールの一部を含む。例えば、分析器モジュールと関連付けられたピペッティングステーションは、一体型輸送システムもしくは研究室オートメーションシステム上のキャリアによって運搬されるサンプルコンテナ/容器の外のサンプル流体をピペッティング(pipetting:ピペット操作)するために使用されてもよい。各モジュールは、モジュールに対して機能を追加する一つ以上のステーションを含むことができる。
【0035】
ステーション/モジュール:ステーションは、分析器内の特定のタスクを実施する分析器の一部を含む。例えば、キャッパ/デキャッパステーションは、サンプル容器からキャップを除去して元に戻してもよい。試験ステーションは、サンプルの一部を抽出して、試験もしくはアッセイを実施することができる。サンプル取扱ステーションは、サンプル容器を管理し、サンプル容器をオートメーショントラック内外へと動かし、格納位置もしくはトレイ内外へとサンプル容器を動かすことができる。ステーションは、モジュールであってもよく、ステーションをより大きい分析器に加えることができる。各モジュールは、分析器に機能を追加する一つ以上のステーションを含み、分析器は一つ以上のモジュールで構成されてもよい。幾つかの実施形態においては、モジュールは、複数のモジュールおよび/もしくはステーションをリンクしうるオートメーションシステムの一部を含むか、または、オートメーションシステムから分離されてもよい。ステーションは、特定のタスクを実施するための一つ以上の器具を含んでもよい(例えば、ピペット(pipette)は、オートメーショントラック上のサンプルと相互作用するために免疫アッセイステーションで使用されうる器具である)。そうでないと記述される場合を除いて、モジュールとステーションの概念は、交換可能なように(ほぼ同じ意味で)称されてもよい。
【0036】
チューブ/サンプル容器/流体容器:キャリア表面を汚染することなくキャリアがサンプルを輸送することを可能にするために、サンプルは、試験管もしくは他の適切な容器などの容器で運搬されてもよい。
【0037】
[例示的実施形態]
従来技術における物理待ち行列に通常関連付けられる問題の一つ以上は、仮想待ち行列を利用することによって、本発明の実施形態の利用によって解決されるか、または軽減される可能性がある。従来技術において使用される物理待ち行列は、バッファと論理待ち行列の間で概して区別しない。即ち、従来技術の分析器内の各待ち行列は、論理待ち行列における各サンプルの物理的存在を必要とする。実際には、論理待ち行列は、待ち行列用の物理空間から区別することができない。論理待ち行列に対する各サンプルに対して、当該サンプルは、当該待ち行列によって占められた空間へと物理的に配置される。これは、結果として各待ち行列用のバッファを生じる。バッファは、待ち行列への到着が、サンプルが使用される時間と同時ではない状況に対して、有用なことがある。バッファは、同一速度でサンプルが到着することを必要とすることなく、ステーションが自身のペースで動作することを可能にする。サンプルの待ち行列への到着は、不規則であり、分析器内のビジー時間に一斉に到着することもあり得る。一方、処理ステーションは、典型的には一定速度で動作する。
【0038】
概して、物理待ち行列にサンプルを配置することは有益である。なぜなら、それによって、待ち行列を利用するステーションがサンプルを必要とするとき、サンプルが使用可能であることを保証するからである。即ち、サンプルを物理待ち行列に配置することによって、サンプルが論理待ち行列の先頭に到達するときにサンプルが物理的に使用可能であることを保証する。従来の待ち行列は、物理待ち行列と論理待ち行列の間で区別しないために、この保証は、待ち行列に配置されたサンプルによって必ず満たされる。
【0039】
しかしながら、物理待ち行列および論理待ち行列が同一であるとき、それは、サンプルが必要とされる前に、サンプルが待ち行列に対して、その中に配置されるように物理的に準備されなければならないことを意味する。これによって、各サンプルが必要とされて待機する前に待ち行列に到着しなければならないため、結果としてシステム内のレイテンシーの増加を生じる。これによって、サンプルによってオートメーションシステム内で費やされる時間の大部分が、移動もしくは処理ではなく、むしろ待機して費やされるため、各サンプル用のターンアラウンド時間の増加を引き起こす。これによって、オートメーションシステムが拡大縮小されるにつれて、相当数のサンプルがオートメーション上で待機するように、貴重な空間を浪費する可能性もある。これは結果として、トラフィックおよび非効率を生じる。さらには、サンプルが物理的に存在し、かつ待ち行列において論理的に存在する場合、当該サンプルは、その他の場所では物理的に存在することはできない。したがって、当該サンプルは、一度に複数の待ち行列に存在することはできない。このルールは、物理待ち行列を利用する場合、オートメーションシステム内のタスクをスケジューリングするときに考慮されなければならない。サンプルは、一度に二つの位置に存在することはできないので、先の待ち行列が当該サンプルを解放するまでは、待ち行列へと配置することができない。
【0040】
本発明の実施形態は、物理的存在と論理待ち行列の間のもつれを低下させるか、または除去することによって、これらの問題点のうちの一つ以上を処理してもよい。幾つかの実施形態においては、仮想待ち行列が利用される。本明細書で使用されるように、仮想待ち行列は、論理待ち行列内にある各サンプルを物理待ち行列内の物理的関係に置く必要なく、論理構造もしくはスケジューリングアルゴリズムの一部としてソフトウェア内で保持される待ち行列のことを称する。幾つかの実施形態においては、サンプルは、オートメーションシステム内の単一位置に関連付けられた仮想待ち行列に論理的に存在する、一方、オートメーションシステム内で実質的に非近傍もしくはいずれの位置に存在してもよい。例えば、ピペッティングステーションは、サンプルを要求して処理するために使用する論理待ち行列を有してもよい。この論理待ち行列内のサンプルは、ピペッティングステーションに物理的に存在する必要はなく、当該サンプルが論理待ち行列にある間にオートメーションシステム内で動かすことを可能にする。幾つかの実施形態においては、当該サンプルは、当該待ち行列にある間、別のステーションと関連付けられたトラック部分に存在するなど、オートメーションシステム内の他のセクションをアクティブに移動することができる。これは、サンプルが任意の処理ステーションに物理的に到着する前に論理待ち行列へと配置することを可能にすることによって、有利とすることができる。これによって、論理待ち行列におけるサンプルが待ち行列の先頭に到達する前に物理的に適応される必要がないため、当該ステーションにサンプルを格納するために必要な空間量を減少させる可能性がある。さらには、幾つかの実施形態においては、サンプルは、複数の論理待ち行列に存在することがあり、合間に他のステーションによって処理されるサンプルの性能を制限することなく、複数の取扱ステーションがこれらのサンプルが使用可能であると考えることを可能にする。
【0041】
二つの従来タイプの待ち行列が存在する。これらの待ち行列は、従来物理的であるが、幾つかの実施形態で利用するために、これらの待ち行列が論理的に実現されてもよい。第一タイプの待ち行列は、FIFO待ち行列である。FIFO待ち行列は、実質的にバッファのように動作し、サンプル到着とサンプルが処理される時間との間に遅延を導入する。サンプルは、決まった順序のFIFO待ち行列を有する各ステーションに対して利用可能にされる。いったんサンプルが使用可能にされると、ステーションは当該サンプルを処理してサンプルを解放する。当該サンプルは、当該ステーションによって再度利用されることはない。ステーションが時間毎に1サンプルを処理するなど、決まった速度で動作する場合、サンプルが待ち行列の終端に配置される前に経過する時間、ならびに待ち行列の先頭にサンプルがいつ到達するかは容易に決定することができる。サンプルが所定位置かつ待ち行列内にある場合、サンプルは、数周期後にステーションによって必要とされるであろう。幾つかの実施形態においては、スケジューリングソフトウェアは、この時間と位置との関係を利用する。
【0042】
しかしながら、FIFO待ち行列は、分析器内の全ての待ち行列に対して適切ではないことがある。FIFO待ち行列の厳密な予測性は、幾つかの処理タスクの並列化を可能とするが、モジュールが試験の再順序付けを必要とする日和見性スケジューリングを使用することも予防する。例えば、ほとんどの免疫アッセイ分析器の内部リソース競合は、最大効率に達するために、複数サンプルから試験をインターリービングすることを必要とし、第二のサンプルにおける第一ステップを、第一サンプルにおける最終ステップ前に開始することを可能とする。物理バッファで実現されるとき、FIFO待ち行列は、これらの分析器のスループットを20%減少させる。FIFO待ち行列の別の問題は、優先度を有するサンプルを扱うことができないことである。
【0043】
FIFO待ち行列は、処理前もしくは処理後のタスク(キャッパもしくはデキャッパなど)を実施する処理モジュールによって最も適切に利用されるが、決まった順序のサンプルを許容することができるタスク(例えば、一度のアスピレーションが実施される試験)を処理するために使用されてもよい。FIFO待ち行列を利用するステーションは、一旦サンプルがFIFO待ち行列に配置されると、サンプルの順序ならびにサンプルが待ち行列の先頭に到達するタイミングが固定された間は、動作することが可能であるべきである。
【0044】
一方、ランダムアクセス待ち行列は、ステーションが、待ち行列内で順序に関係なく、サンプルを要求することを可能とする。ステーションがその待ち行列におけるサンプルを処理する計画を立てる順序に関して幾らかの知識もなく、サンプルが当該ステーションによっていつ必要とされるかを予測することは不可能である。ランダムアクセス待ち行列内のサンプルは、複数回要求されてもよい。理想的には、一旦サンプルがランダムアクセス待ち行列に配置されると、待ち行列を利用するステーションは、当該ステーションが何時でもサンプルにアクセスでき、任意の順序でサンプルにアクセスでき、好きなだけ何度でもアクセスでき、サンプルが当該ステーションによって明白に解放されるまで、待ち行列内の各サンプルの制御を維持することを仮定する。従来の物理的ランダムアクセス待ち行列は、各サンプルがランダムアクセス用の待ち行列内にあり、任意の順序でサンプルにアクセスすることを可能にすることを保証するために、カルーセル(回転ベルトコンベヤ)を利用してきた。カルーセルのサイズがサンプル数の二乗に比例して大きくなり、それほど多くはないサンプル用に大量の面積を必要とするため、従来の物理的ランダムアクセス待ち行列は、スペースの制約に悩んできた。同様に、待ち行列の列サイズが大きくなると、ランダムアクセスを提供するため、循環する必要がある大量のサンプルを収容するために、より大きなカルーセルをより速く動かす必要があるだろう。
【0045】
したがって、従来のランダムアクセス待ち行列は、幾つかのサンプルのみに対するものに限定されるか、またはサンプルがランダムにアクセスされうる程度を制限した。例えば、純粋なランダムアクセス待ち行列においては、待ち行列における任意のサンプルは任意の時刻にアクセスすることができ、現在要求されるサンプルと以前のサンプルの間に相関はない。しかしながら、コンピュータアーキテクチャにおけるキャッシングの原則に類似し、幾つかの実施形態においては、次の動作サイクル中に待ち行列内の全てのサンプルが使用可能であることを必要とすることなく、表面上ランダムアクセスを可能とする、ランダムアクセスに課されうる理にかなった制約が存在する。例えば、サンプル待ち行列がその中に20サンプルを有する場合、待ち行列の先頭に到達する次のサンプルが、カルーセル内の現在のサンプルに対してより近接した5個のサンプルのうちの一つに制限されるとき、制約は許容できるものである。これによって、次のサイクル用の待ち行列内の全サンプルに対して、ランダムアクセスを提供することなく、ランダムアクセスを提供してもよい。これは、部分的ランダムアクセス待ち行列と称されることがある。この概念は、幾つかの実施形態で使用される幾つかのランダムアクセス待ち行列によって使用されてもよい。
【0046】
物理的ランダムアクセス待ち行列は、以下の不利益を有することがある。つまり、複雑性/コストが増加し、信頼性が低下する。サンプルをランダムアクセス待ち行列内外へと動かさなければならないために、定常状態処理時間が増加する(処理遅延は、処理系に依存する)。トラックの物理的フットプリントを増加させる(例えば、カルーセルの直径は、カルーセルが保持するように設計されたサンプル数に伴って増加する)。それは、ほとんどの処理系においてモジュールがオフラインになる場合、待ち行列を素早くフラッシュするのを妨げる。
【0047】
図1は、動作中のFIFO待ち行列を示す。FIFO待ち行列10は、メイントラック12外のサイドカー上に配置される。メイントラック12に沿って移動するサンプルは、矢印の方向に移動する。状態8においては、3つのサンプルA、BおよびCがFIFO待ち行列10内にある。サンプルAは、待ち行列の先頭にあって、前処理モジュール14によって処理される。モジュール14は、到着した順序でサンプルを処理する、デキャッパなどのステーションであってもよい。一方、STATサンプル16は、メイントラック12に沿って到着し、FIFO待ち行列10に入る。状態18においては、FIFO待ち行列10は、フラッシュされる。サンプルAが処理を完了する間、サンプルBおよびCは、STATサンプル16の処理を支援するためにフラッシュされなければならない。サンプルBおよびCは、その後、FIFO待ち行列10内へ戻すために、オートメーションシステム全体もしくはオートメーションシステム内のループを移動しなければならない。一方、サンプルDは、FIFO待ち行列10へ配置するために、トラック12に沿って到着する。サンプルBおよびCがFIFO待ち行列に入る前にオートメーションシステムの別の回路を作成しなければならない場合、前処理モジュール14の必要性に依存して、元の順序が重要性を有することがある。幾つかの実施形態においては、前処理モジュール14は、FIFO待ち行列の順序の変更に適応でき、待ち行列においてSTATサンプル16の後ろにサンプルDを配置することを可能にし、サンプルBおよびCの前にサンプルDを処理することを可能にする。
【0048】
図2は、動作中のランダムアクセス待ち行列を示す。ランダムアクセス待ち行列22は、カルーセル(carousel)内の4つの位置を含む物理的ランダムアクセス待ち行列である。モジュール24は、所望の位置がモジュール24内のピペットと整列するように、カルーセルを回転させることによって、待ち行列内のサンプルに対するアクセスを与えられる。サンプルは、矢印の方向にメイントラック12に沿って移動し、モジュール24によって処理されるべきサンプルは、ランダムアクセスカルーセルへとサンプルを配置するサイドカーへと方向づけられる。モジュール24は、例えば、分析器試験ステーションであってもよい。状態26においては、サンプルA、BおよびCは、ランダムアクセスカルーセル22内に配置される。一方、STATサンプル16は、モジュール24によって処理するために、メイントラック12に沿って到着する。状態27においては、STATサンプル16をカルーセル内の空のスロットへと配置する間に、モジュール24は、サンプルAの処理を完了する。サンプルDは、処理用にメイントラック12に沿って到着する。状態28においては、サンプルAは処理を完了して、モジュール24による処理用に、待ち行列の先頭へと別のサンプルを動かすことを可能にする。この例においては、STATサンプルは任意の優先度を有する。カルーセル22は、モジュール24との相互作用のための位置へとSTATサンプルを動かす。サンプルDは、サンプルAによって残された空のスロットへと配置されてもよい。この状態においては、サンプルBおよびCはフラッシュされないことに留意されたい。なぜなら、STATサンプル16は、カルーセルによって収容でき、サンプルBおよびCの前にSTATサンプルを処理することを可能にするために動かすことができるからである。さらには、サンプルBおよびCは、ランダムアクセス待ち行列内に存在したままであるため、サンプルにおける試験を容易にするためにモジュール24によって利用されるローカルスケジューリングアルゴリズムに依存して、モジュール24は、サンプルDの前にサンプルBおよびCを処理するか否かを決定することができる。
【0049】
本発明の実施形態は、論理待ち行列から物理待ち行列を分離することによって、
図1および
図2に示された待ち行列の機能の全てもしくはそのサブセットを提供してもよい。即ち、ランダムアクセスおよびFIFO待ち行列の機能は、待ち行列の先頭において転回を待つ間に、物理的に隣接して待ち行列内のサンプルを格納する必要なく、これらの品質を有する論理待ち行列を保持することによって提供されてもよい。例えば、ソフトウェアにおける仮想FIFO待ち行列は、それらが待ち行列の先頭に到達する前に、分析器オートメーションシステムの異なる部分にサンプルが存在することを可能にしてもよい。これは、FIFO待ち行列におけるサンプルが予め決められた順序を有する、つまり、論理待ち行列におけるその位置に基づいて、サンプルが待ち行列の先頭に到達する確定可能な時刻を有するという事実によって影響されることがある。サンプルが、FIFO待ち行列における待ち行列の先頭に到達する前に、当該サンプルは、他のステーションによる処理などの、オートメーションシステム内の他のタスク用に利用されてもよい。例えば、ソフトウェアFIFO待ち行列は、試験ステーション用のFIFO待ち行列とデキャッパステーション用のFIFO待ち行列の双方にサンプルが存在することを可能にしてもよい。分析器内の動作順序は、試験ステーションによって処理される前に、キャッパステーションにサンプルが加えられて前処理されることを保証するので、サンプルがデキャッパステーションの待ち行列の先頭に到達することによって処理され、サンプルが試験ステーション用の論理待ち行列の先頭に到達する前に試験ステーションに対して移動するのに十分な時間を有することが判定されうる限り、サンプルは、双方の仮想待ち行列に配置されてもよい。
【0050】
仮想ランダムアクセス待ち行列は、同様の方法で動作することができる。従来技術のシステムは、典型的には、カルーセルなどの待ち行列機構にサンプルが物理的に配置されることを必要とするが、器具がランダムアクセス待ち行列の先頭においてサンプルを要求するとき、当該器具と相互作用するための位置にサンプルを配置することができることをオートメーションシステムが保証できる限り、サンプルは、仮想ランダムアクセス待ち行列に存在し、かつオートメーションシステムにおける任意の合理的な位置に物理的に位置してもよい。
【0051】
これは、オートメーションシステムにサンプルがある間、信頼性および確定可能性を提供するオートメーションシステムを利用することによって達成することができる。各ジャンクションで単一化され、識別されなければならない摩擦トラックおよびサンプルパックを利用する大部分の従来のオートメーションシステムは、仮想待ち行列を物理待ち行列から分離することを可能にするのに十分な繰り返し性もしくは信頼性を提供することがない。従来のIVDオートメーションシステムにおいては、オートメーションシステム内のトラフィックが、現在オートメーションシステムの一部に位置するサンプルが、いつオートメーションシステム内の何れの位置においても利用可能にできるかを高い信頼性で判定することを困難もしくは不可能にしている。オートメーションシステム内の各単一化点によって生成されるバッファなどの性能ボトルネックは、オートメーションシステムの二点間でサンプルを動かすために必要なレイテンシーを困難にしている。幾つかの実施形態においては、本明細書で開示されたオートメーションシステムは、物理待ち行列によって限定されない仮想待ち行列の利用を容易にすることで、この非信頼性のうちの幾らかもしくは全てを解決する可能性がある。したがって、仮想待ち行列は、サンプルが待ち行列内にある間、全ての時刻において、待ち行列に関連付けられたステーションにサンプルが物理的に近接する必要なく、仮想待ち行列をソフトウェア内に保持することができる。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態は、より少ないレイテンシーおよびより多い個々の制御で、種々の分析器試験ステーション間でサンプルを動かすことを可能にするために、より効率的な研究室オートメーションシステムを提供するシステムおよび方法を含む。本発明の実施形態は、オートメーションシステムを移動するサンプルによって経験される待ち行列を減少させるか排除することができる。通常、サンプルは、単一の試験ステーションでは使用可能ではない、自動化された診断分析器(分析器)において多くの異なるタイプの試験を経験することを必要とする。分析器内の試験ステーションは、特化された試験用に適応することができる。例えば、免疫アッセイは、あるインキュベーション性能を含み、免疫アッセイに固有な特定の試薬を利用する免疫アッセイステーションによって実施されてもよい。化学分析は、診断分析器によって実施することができ、電解質化学分析は、イオン選択電極(ISE)診断分析器によって実施することができる。このモジュールアプローチを利用することによって、分析器は、サンプルに対して行われる試験タイプにのみ適応できるわけではなく、研究室の必要性に適合するために必要な試験の頻度および容量に対しても適応できる。さらなる免疫アッセイ性能が必要とされる場合、研究室は、さらなる免疫アッセイステーションを加えることを選択し、当該システム内の免疫アッセイ試験に対する全体のスループットを増加させることができる。
【0053】
従来技術の構成において典型的な分析器内のサンプルを輸送するうえで使用するための例示的なトラック構造が
図3に示される。このトラックは、トラックシステムを設計するうえでの問題を導入しうる、従来技術の摩擦トラックを含む可能性がある。しかしながら、本発明のある実施形態は、作動用に摩擦トラックを必ずしも使用することなく、類似の構造を利用することもできる。トラック100は、サンプル準備もしくは分析/試験ステーション110、120および130などの種々のステーション間で、パックもしくはトレイでサンプルを運ぶ、ほぼ楕円形状のトラックとすることができる。トラック100は、単一方向のトラックであるか、幾つかの実施例においては、線形の双方向トラックである。この例示的構成においては、各分析器110、120、130は、其々のサイドカー112、122、132によって処理される。トラック100と各サイドカーの間の接合点においては、サンプルをトラック100とサイドカーとの間で方向転換することを可能にするゲートもしくはスイッチを配置することができる。トラック100の楕円特性は、各分析器に対するアクセスを待つ間、サンプルを循環させるために使用することができる。例えば、分析器110がサイドカー112内の保留サンプルの扱いを終えて、トラック100のメイントラフィックフローへとそれを戻すまで、トラック100上の新規サンプルが、プルアウト112へと方向転換することができないように、分析器110は、サイドカー112において一杯になった待ち行列を有してもよい。
【0054】
幾つかの従来技術のシステムにおいては、各サイドカーは、サンプルプローブアーム114、124および134などの取り扱い機構によって処理することができる。これらのロボット的取扱アームは、プローブ針を介してサイドカー内のサンプルからサンプル材料を吸引するか、サイドカーからサンプルチューブを取り出して、対応する試験ステーションへとサンプルチューブを輸送することができる。この例示的システムにおいては、利用可能な試験ステーションは、免疫アッセイステーション110、小容量化学ステーション120および拡張可能な希釈/ISE電解質および大容量化学ステーション(もしくは複数のステーション)130を含む。このアプローチの幾つかの利点は、トラック100が自己完結型ステーションに加えることのできる分離した研究室オートメーションシステムの一部であって、トラック100およびステーション110、120、および130を独立してアップグレード、購入もしくは処理することができるということである。大容量化学ステーション130などの幾つかのステーションは、トラック100と独立して動作するそれ自身の摩擦トラック136を含むことができる。摩擦トラック136は、大容量化学ステーション130のサブモジュール間でサンプルを動かすことが可能な双方向摩擦トラックを含むことができる。このタイプのシステムの欠点は、分離した摩擦トラックが独立して動作し、オートメーション全体の制御がより複雑になる点である。さらには、特に二つの摩擦トラック間に直接ルートが存在しない場合、摩擦トラック136と100の間の通過は、時間がかかってかつ厄介である可能性がある。幾つかのシステムにおいては、トラック間での移動は、ロボットアームを介したサンプルの引き上げおよび配置を必要とすることがある。
【0055】
従来技術の分析器用研究室オートメーションシステムは、概して個々の分析器/試験ステーションをトラック上のサンプル用の汎用の宛先として扱う。本発明の幾つかの実施形態においては、研究室オートメーションシステムは、個々の試験ステーション内に統合することができ、個々の試験ステーションの複雑性を実質的に軽減するか排除し、各ステーション内でサンプル取扱システムを分離する必要性を減少させる。幾つかの実施形態においては、研究室オートメーションシステムをステーションへと統合することによって、システムは、汎用宛先としてよりは、かつ、サンプルが移動することができるマルチルートトラックの一部として、個々のステーションの扱いを開始することができる。
【0056】
図4Aは、本発明での使用のために適応することができるトラックシステムの一実施形態を示す。トラック150は、時計回り(もしくは反時計回り)方向にサンプルキャリアが移動する長方形/楕円/円形トラックである。トラック150は、一方向であってもよいし、双方向であってもよい。キャリアは、流体サンプル、試薬もしくは廃棄物など、IVD環境での任意の適切なペイロードを輸送することができる。患者サンプルなどの流体は、試験管、バイアル、キュベットなど、キャリアによって輸送できるコンテナもしくは容器に配置することができる。キャリア(拡張すると、サンプルなどのペイロード)は、メイントラック150上を移動することができるか、164もしくは166などの決定点を介して方向転換することができる。これらの決定点は、(従来技術と同様に)機械的ゲートであるか、サンプルをメイントラック150から本明細書で記述されたような160、160A、160B、160Cなどのサイドカーへと方向転換することを可能にするために適切な他の機構とすることができる。例示する目的のために、サンプルキャリアがメイン経路150を移動して、決定点166に到達する場合、サンプルキャリアは、セグメント162へとメイントラック上に存在し続けてもよいし、またはサイドカー160へと方向転換されてもよい。決定点166においてサンプルキャリアを方向転換するための決定がなされるシステムおよび方法は、本明細書に記述される。
【0057】
図4Bは、本発明のある実施形態用に適した別のトラックレイアウトを示す。トラック170は、時計周り(もしくは反時計回り)に移動するサンプルキャリアを有するほぼ円形のトラックでもある。本実施例においては、トラック外にサイドカーを有するのではなく、プルアウト180、180Aおよび180Bがトラック内の弦である。同様に、サンプルキャリアが決定点に到達すると、メイン経路から経路180などのサイド経路へと方向転換してもよい。決定点186において、メイントラック170上のサンプルは、メイントラック上に存在し続けてもよいし、経路180へと方向転換されてもよい。いったん取扱経路180に沿った分析器ステーションがサンプルの処理を終えると、サンプルは、決定点184へと進行して、メイン経路170へと戻される。
【0058】
図5は、本発明のある実施形態で利用することができるオートメーションシステムトラックに対するモジュールアプローチを示す。本実施例においては、内部作動もしくは個々の研究室ステーションのサンプル取扱システムの一部としてトラックを使用することができるように、トラックが、個々の分析器ステーションへと統合されてもよい。従来技術においては、異なる分析器/試験ステーション内に複数の異なるタイプの作動システムを有することがよくある。例えば、幾つかのステーションは、サンプルチューブのパックもしくはトレイを動かすための摩擦トラックを含み、サンプルの一部を吸引し、分配できるキュベットおよび反応容器などのより小型の容器を含むカルーセルを含んでもよい。幾つかの実施形態においては、トラックシステムの一部を分析ステーション自体へと統合することによって、各ステーションは、自身の待ち行列論理を含み、不必要な内部作動システムを排除するために簡略化されてもよい。
【0059】
図3を参照すると、トラック200は、分析器モジュールに統合されるモジュールコンポーネントへと分解できる。本例示的トラックにおいては、モジュール205、205Aおよび205Bは、互いに組み合わせることができ、任意で、
図4Bに示されたトラックと類似のトラックを形成するために、他のモジュールトラックコンポーネント202および204とも組み合わせることができる。例えば、205Aは、免疫アッセイ110(
図3)と同一の機能を実施するモジュールであって、205は、小容量化学モジュール120(
図3)と同一の機能を実施するモジュールであって、205Bは、モジュール130(
図3)のようにISE電解質試験を実施するモジュールとすることができる。本実施例においては、外部メイントラックは、トラックセグメント202、204、206、206A、206B、208、208Aおよび208Bによって形成することができる。分析器モジュール205、205Aおよび205B内で、内部経路210、210Aおよび210Bは、メイントラックからのプルアウトを形成する。内部経路は、内部待ち行列用に使用することができ、処理されるサンプルに対して各モジュールがより多くの制御を有することを可能にするために、各分析器モジュール内で独立して管理することができる。
【0060】
トラック200ならびにサブ経路210、210Aおよび210Bを其々分析器モジュール205、205Aおよび205Bへと統合する利点の一つは、各分析器モジュール内の内部取り扱い機構が、トラックサブ経路とより良好に調和して機能するように特別に適応させることができることである。幾つかの実施形態においては、モジュール205、205Aおよび205Bは、分析器全体の動作サイクルよりも短い期間内に各サンプルを処理するように適応することができ、処理後にトラックシステムに沿って別のモジュールへとサンプルがルーティングされるのに十分な時間を残し、次の動作サイクルでサンプルを他のモジュールが即座に処理することを可能にする。本明細書で使用されるように、動作サイクルは、サンプルアッセイ用にモジュールに処理時間を割り当てるスケジューリングアルゴリズムによって使用される時間単位である。これらは動的であってもよいし、固定されてもよく、分析器内のモジュールの同期した動作を可能とし、分析器内の複数モジュール間のサンプルをスケジューリングするための信頼できるタイミングモデルを提供することができる。動作サイクル時間は、第一のサンプルの処理を開始する時刻と、予測された定常状態条件下で別のサンプルを処理するために準備する時刻の間で、任意の与えられたモジュールによって必要とされる時間に選択することができる。例えば、分析器が3秒毎に1試験を処理できる場合、サンプル毎の予測される平均試験は7回であり、動作サイクル時間は21秒とすることができる。個々のモジュールは、サンプル毎の試験回数が予測される回数から変化するときでさえ、スループットを最大化するために、並列処理もしくはサイクル内で複数のサンプルを処理するなどの効率的技術を実現することができることを理解されたい。さらには、幾つかの実施形態においては、個々のモジュールは異なる動作サイクル時間を有し、これらのモジュールは互いに対して実質的に非同期に動作することができることを理解されたい。モジュール間でサイクル時間もしくは需要が変化する場合、仮想待ち行列もしくはバッファを、サンプルスケジューリングの管理を支援するために使用することができる。
【0061】
単一の動作サイクル以下の順序で、信頼できるタイムフレームにおいて分析器内のモジュール間の通過を可能にすることは、従来技術のトラックシステムで不可能だった多くの性能の利益を達成する。サンプルが分析器モジュールによって確実に取り扱われ、分析器の単一サイクル内に次の分析器モジュールへと輸送することができる場合、待ち行列におけるトラフィックの取り扱いは、より単純になり、スループットはより一貫性のあるものになり、かつレイテンシーは制御されて減少する可能性がある。本質的に、当該分析器においては、サンプルが待ち行列で待機するトラックシステム上で何もしないでいることがないように、サンプルはトラックシステムによって確実に扱われ、均一に処理することができる。さらには、任意の分析器モジュール内の待ち行列などのシステム内の待ち行列は、確実に短縮され、システム内のモジュールの数によって制限される可能性がある。
【0062】
各決定点において待ち行列に対する必要性が存在しないように、214および216などの決定点が合理化できる場合、物理待ち行列のみが、サブ経路210、210Aおよび210B内にあるようにすることができる。上述されたように、これらは、RA待ち行列もしくはFIFO待ち行列として扱うことができる。STATサンプルがトラック200上に配置される場合、STATサンプルを即座に処理することができるため、サブ経路210、210Aおよび210B内のRA待ち行列は、フラッシュされる必要がない。任意のFIFO待ち行列は、個々にフラッシュすることができる。例えば、STATサンプルがセクション222においてトラック200上に配置される場合、サンプルは、外部トラックおよび決定点216を介して、適切な分析器205Bへとルーティングされてもよい。経路210Bにおける待ち行列において待機している他のサンプル(および拡張すると、それらのサンプルを輸送するサンプルキャリア)が存在する場合、STATサンプルを優先することを可能にするために、待ち行列内の当該サンプルのみがフラッシュされる必要がある。外部トラック200を移動するために、動作サイクル以下の時間がかかることが仮定される場合、210Bにおける待ち行列からフラッシュされた任意のサンプルは、トラック周囲を単に循環し、STATサンプルの直後に経路210Bにおける待ち行列へと即座に戻され、STATサンプルによって引き起こされる任意の休止時間(ダウンタイム)を排除する。
【0063】
入力経路220および222は、トラック200にサンプルを入力するために使用することができる。例えば、標準優先度を有するサンプルは、入力220においてトラック200上に配置され、STAT優先度を有するサンプルは、入力222において配置することができる。これらの入力は、完了すると、サンプル用の出力として使用することができるか、または、(図示されていない)他のポートを、使用されたサンプル用の出力経路として使用することができる。入力220は、トラック200に対するアクセスを求める入力サンプル用のFIFO待ち行列として機能する、入力バッファとして実現することができる。いったんサンプルが入力220において待ち行列の先頭に到達すると、サンプルは、(キャリア内に配置されるか、入力220内に配置されたときキャリア内に配置されるかのいずれかによって)トラックへ移動することができる。STATサンプルは、入力222に配置された直後にトラック200に入ることができ、または、トラック200に詰め過ぎたとき、STATサンプルは、次に利用可能な、すいている動作サイクルでトラックに入ることができる。幾つかの実施形態は、動作サイクル中のトラック上のキャリア数を監視して、総数を管理可能な量に制限し、入力待ち行列に残余部分を残す。入力においてサンプルを制限することによって、トラック200はトラフィックがなく、可能性のある最も効率的な方法で常に動作することが可能となる。これらの実施形態においては、二つのモジュール間のサンプルの通過時間は、限界を有する値(例えば、動作サイクルの幾らかの部分よりも短い)であって、簡略化されたスケジューリングを可能とする。
【0064】
幾つかの実施形態においては、トラックシステム200は、双方向であるように設計することができる。これは、サンプルキャリアが外部経路および/もしくは任意のサブ経路をいずれかの方向に移動することができることを意味する。幾つかの実施形態においては、さらなる決定点215および217を介してアクセスされる211Bなどのさらなるサブ経路によって、双方向アクセスの提供を支援することができる。双方向経路は、固有の利点を有する可能性がある。例えば、通常の優先度のサンプルが常に同一方向に扱われる場合、STATサンプルは、サブ経路に沿って反対方向で扱うことができる。これは、STATサンプルがサブ経路の出口に本質的に入って、待ち行列をフラッシュする必要なく、待ち行列の先頭に即座に配置することができることを意味する。例えば、STATサンプルがセグメント204においてトラック200上に配置される場合、決定点214において経路210Bに入ることができ、任意の待ち行列の先頭において即座に配置されるように経路210Bへと進行することができる。一方、これらの実施例の全てにおいて、待ち行列は、概してサブ経路に限定されることが予測されるため、STATサンプルがそれらのモジュールに対する即座のアクセスを必要としない場合には、他のモジュールにおいて待ち行列をフラッシュする必要がない。その後のサイクルでSTATサンプルを処理する必要がある任意のさらなるモジュールは、その点においてそれらの待ち行列をフラッシュすることができ、各分析器モジュールの動作を中断させることなく、STATサンプルへのジャストインタイム(時間にちょうど間に合う)アクセスを提供する。
【0065】
モジュール設計は、他のある利点も可能とする。分析器モジュール内のオートメーションシステムがモジュールに含まれるトラックシステムを利用するように適応される場合、通常のトラックを利用する新規の特徴を加えることができる。例えば、モジュールは、サンプル用に規定されたアッセイを実施するために必要な全ての試薬を含む、それ自身の内部試薬カルーセルを有することができる。分析器モジュール内にストックされた試薬が欠乏するとき、オペレータは、幾つかの実施形態においては、トラック200上のキャリアにさらなる試薬を単に充填することによって、試薬を補充することができる。トラック200上の試薬が適切なモジュールに到達すると、モジュールは、トラックから試薬を取り出して、モジュール用の試薬貯蔵所へと試薬を配置するアームもしくはフィーダシステムなどの機械システムを利用することができる。
【0066】
幾つかの実施形態においては、
図5および
図4Aおよび
図4Bに示された個々のトラック部分は、互いに独立して動作することができるか、または、受動的とすることができる。独立したキャリア移動は、サンプルキャリアの移動に影響を与えるために摩擦トラック全体が移動しなければならない、非局在化コンベヤベルトなどの摩擦ベースのトラックシステムに対する利点を提供する。これは、当該トラック上の他のサンプルも同一速度で移動しなければならないことを意味する。これは、あるセクションが異なる速度で動作する場合、サンプルを運搬する受動的キャリア間の衝突が生じる可能性があることも意味する。
【0067】
図6Aは、本発明で利用するための例示的なキャリア250を示す。キャリア250は、異なる実施形態においては、異なるペイロードを保持することができる。あるペイロードは、血液もしくは尿などの流体サンプル256を含むサンプルチューブ255とすることができる。他のペイロードは、チューブのラック、試薬カートリッジもしくは任意の他の適切なカートリッジを含んでもよい。サンプルキャリア250は、本明細書で記述された内部電子コンポーネントを収容できるメインボディ260を含む。メインボディ260は、ペイロードを収受できるブラケット262を支持する。幾つかの実施形態においては、これは、サンプルチューブなどの流体容器255を収受し、かつ、それを摩擦嵌め込みで保持するように設計された浅穴である。幾つかの実施形態においては、摩擦嵌め込みは、保持力を生成するために固定できるか、ばねでエネルギーを与えることのできる弾性穴もしくはクランプを利用して、生成することができる。幾つかの実施形態においては、サンプルラックおよび試薬カートリッジは、ブラケット262へと取り付けるようにも設計でき、ブラケット262が複数のペイロードタイプ用のユニバーサルベースとして機能することを可能とする。
【0068】
ボディ260は、ガイド部分266を含むかガイド部分266に結合することができ、決定点間のトラックにキャリア250が従うことを可能にする。ガイド部分266は、例えば、トラック内の一つ以上のレールを収受するためのスロットを含み、横方向および/もしくは垂直方向の支持を提供する。幾つかの実施形態においては、ガイド部分は、キャリア250をトラック内の壁(トラフ形状のトラックの壁など)によって誘導することを可能とする。ガイド部分266は、キャリアボディ260内のモータがトラック上で前後にキャリアもしくはパック250を駆動することを可能にする摩擦ホイールなどの駆動機構も含むことができる。ガイド部分266は、磁石もしくは誘導コイルなどの本明細書で記述された実施形態で使用するのに適した他の駆動コンポーネントを含むことができる。
【0069】
再書き込み可能ディスプレイ268は、キャリア250の上部上に提供することができる。このディスプレイは、LCD配向パネルを含み、サンプル256についての状態情報を表示するために、キャリア250によってリアルタイムでアップデートすることができる。キャリア250の上部上の電子的に再書き込み可能なディスプレイを提供することによって、状態情報はオペレータによって一目で視認できる。これは、グループ内に複数のキャリア250が存在するときに、彼/彼女がどのサンプルを探しているかをオペレータが迅速に判定することを可能にすることができる。キャリア250の上部上に再書き込み可能なディスプレイを配置することによって、オペレータは複数のキャリア250が引出しもしくはラック内にあるときでさえ、状態情報を判定することができる。
【0070】
図6Bは、キャリア250によって使用するための例示的なトラック構造270を示す。本実施例においては、キャリア250Aは、サンプルチューブを輸送し、キャリア250Bは、メイントラック272および/もしくはサブ経路274および274Aに沿ってチューブのラックを輸送する。経路276は、サンプルをキャリアに配置するか、またはこれらのキャリアからサンプルを除去するために、オペレータによって使用することができる。
【0071】
図6Cは、例示的なトラック構造270のさらなる図を示す。本実施例においては、サブ経路274は、免疫アッセイステーションを提供し、サブ経路274Aは、診断化学ステーションを提供する。入力/出力レーン276は、サンプルの挿入もしくはメイントラック272からのサンプルの除去用にバッファするために、サブ経路277および278を利用するサンプル取扱ステーション280によって提供することができる。
【0072】
幾つかの実施形態においては、サンプルハンドラー280は、キャリア250Aおよび250Bへとサンプルもしくは他のペイロードを装填し、キャリア250Aおよび250Bからサンプルもしくは他のペイロードを取り出すこともできる。これによって、分析器用のピーク需要の間、トラック277および278上で何もしないでいる大多数のキャリアを有するのではなく、トラックシステム270におけるステーションによって現在使用されるペイロードを支持するために必要な量へと、キャリア数を減少させることを可能とする。その代わりに、(本明細書で開示されたキャリアのない)サンプルトレイは、入力/出力レーン276においてオペレータによって配置/除去することができる。これによって、システム全体のコストを減少させ、必要とされるキャリア数は、スループットを超える分析器用のピーク需要の予測に基づくのではなく、分析器のスループットによって決定することができる。
【0073】
[知能キャリア]
本発明の幾つかの実施形態は、摩擦ベーストラック上の受動的パックに対して、ある改善を可能とするために、独立した知能キャリアを利用することができる。例えば、従来技術のトラックシステムの不利益の一つは、パックを方向づけるための決定が、各決定点において、パックを回転させ、バーコードを光学的に読み取ることによって、トラックによって行われるということである。回転および光学読みとりは比較的遅いプロセスである。さらには、このプロセスは、余分なものである可能性がある。なぜなら、システムは、サンプルチューブがオペレータによってパックへと配置されるとき、サンプルチューブの識別に関する知識を有するからである。本発明の実施形態は、キャリアを停止させ、回転させ、光学的に読み取る必要なく、サンプルチューブの内容物を識別する(ならびに、任意でオートメーションシステムへとこの情報を光学的に通信する)ための手段を有するキャリアを含むことができる。
【0074】
例えば、キャリアは、ペイロードのバーコードを自動的に読み取るための内蔵光学リーダを含むことができる。キャリアが内蔵処理性能を有する場合には、スキャン結果は、その後、キャリアのメモリに格納することができる。あるいは、キャリアへサンプルを配置するときにオペレータによって操作されるハンドバーコードリーダなどの外部ソースは、RF信号または一時的な電子接触もしくは光学通信を利用する通信プロトコルなどの他の既知の手段を介して、ペイロードのバーコード情報をキャリアへと通信することができる。幾つかの実施形態においては、ペイロードとキャリアの関連付けは、キャリアの外部に格納することができ、キャリアのアイデンティティは、RF、光学、もしくは近距離通信によって、キャリアによってシステムへと伝送することができ、システムがキャリアおよびペイロードをルーティングするか追跡することを支援することを可能とする。ルーティング決定は、その後、ペイロードの一意的バーコードを読み取るのではなく、キャリアによって、もしくはキャリアを識別することによって行うことができる。
【0075】
各個々のキャリアに処理性能および/もしくはセンサ性能を移動することによって、キャリアは、トラックシステムを通して、それ自身のルーティングにアクティブかつ知的に関与することができる。例えば、個々のキャリアが、自律作動性能もしくはトラックとの通信のいずれかによって互いに独立して動くことができる場合、ある性能の利点を実現することができる。
【0076】
キャリアが独立して動くことを可能にすることによって、キャリアは、トラック周囲をより迅速に動くことができる。キャリアの動きに対する一つの鍵となる制限は、キャリアが開放されたチューブサンプルをこぼすべきではないということである。制限要因は、概して、直線におけるキャリアの速度ではなく、飛沫を引き起こす可能性のある、キャリアによって経験される(加速、減速もしく転回中の)加速度およびジャークである。従来技術の摩擦ベースのトラックシステムに対しては、トラック全体が動くため、トラックの速度は、典型的には、パックによって経験される加速度およびジャークが閾値量を超えることを防止するために制限される。しかしながら、個々のキャリアに対応することのできる独立して動作するセクション、もしくは個々の独立した作動性能を有する個々のキャリアを有するトラックシステムを利用することによって、平均速度が従来のトラックの速度よりも大きくなることを可能にする一方で、任意の与えられたキャリアの加速度は、加速/減速およびジャークを制限するために適合させることができる。キャリアの最高速度を制限しないことによって、キャリアは、適切な場合に各トラックセクション上で加速し続けることができ、結果としてトラック周囲での実質的により高い平均速度を生じる。これによって、分析器の1機械サイクルよりも短時間で、トラックシステム全体を移動するキャリアを支援することができる。これらの機械サイクルは、例えば、20もしくは40秒とすることができる。
【0077】
同様に、自律キャリアは、それ自身のアイデンティティおよびそのペイロードのアイデンティティを知ることができる。これによって、個々の決定点において、キャリアがルーティング決定プロセスにアクティブに関与するかまたは支援することを可能にする。例えば、決定点(例えば、スイッチ、交差点、接合点、分岐点(フォーク)など)に到達することによって、キャリアは、RFもしくは近接場通信を介して、トラックもしくは任意のスイッチング機構(もしくは、ペイロードアイデンティティに基づいてキャリアが決定した意図されたルート)へと、自身のアイデンティティおよび/もしくはそのペイロードのアイデンティティを通信することができる。このシナリオにおいては、キャリアはバーコードスキャン用に決定点において停止する必要がない。その代わりに、キャリアは、減速さえすることなく進行し続けることができ、キャリアは、リアルタイムでルーティングすることができる。さらには、キャリアが決定点に物理的に到着する前に、キャリアがどこに進行しているか知っているか、または、(トラックがキャリアがどこに進行しているかわかるように)トラックへとそのアイデンティティを通信する場合、もし、キャリアが転回するならば、キャリアは決定点の前に減速させることができる。一方、キャリアが決定点において転回する必要がない場合、キャリアはより高い速度で進み続けることができる。なぜなら、キャリアによって運搬されるサンプルは、キャリアがトラックの決定点もしくは曲線セクションにおいて転回しない場合、コーナリングフォースを経験しないからである。
【0078】
自律キャリアは、内蔵処理およびセンサ性能も含むことができる。これによって、トラックによって方向づけられるのではなく(幾つかの実施形態においては、中央コントローラが実行されるべきキャリアへとルーティング命令を送信するが)、キャリアがトラック上のどこにあるか、ならびにどこに行く必要があるかを決定することを可能とする。例えば、トラック内の位置符号化もしくはマーカは、キャリアの位置を決定するために、キャリアによって読み出すことができる。絶対的位置情報は、キャリアがトラックを移動するとき、キャリアに対して参照点を提供するために、トラック表面上に符号化することができる。この位置符号化は、多くの形式をとる可能性がある。トラックは、トラックの現在のセクションを示す光学マーカで符号化されてもよいし(例えば、仮想ハイウェイサインなど)、トラックのセクション内の特定の絶対的位置の光学符号化をさらに含んでもよい(例えば、仮想マイルマーカなど)。位置情報は、絶対的位置マーク間のマーキングで符号化することもできる。これらは、その現在の軌道を計算するうえでキャリアを支援するために、同期情報を提供することができる。光学符号化スキームは、当業者に既知の任意の適切な形式をとることができる。符号化スキームによって使用されるこれらのマークは、ある位置においてトラックに配置されたLED、バーコード、QRコード(登録商標)、データマトリクス、反射的ランドマークなどのロータリエンコーダ、光学ランドマークに見出されるようなバイナリ位置符号化を含んでもよい。一般的位置情報は、RF/ワイヤレス手段を介してキャリアへと伝送することもできる。例えば、トラック内のRFIDマーカは、トラックの所定の部分に入ったことをキャリアに警告するために、キャリアに近接場通信を提供することができる。幾つかの実施形態においては、トラック周囲もしくはトラック近傍のローカル送信機は、キャリアがその位置を決定することを可能にするために、GPS様位置情報を提供することができる。あるいは、ホール効果センサもしくはカメラなどのトラック内のセンサは、個々のキャリアの位置を決定し、キャリアにこの情報を中継することができる。
【0079】
同様に、キャリアは、位置を決定するために蓄積できるデータを提供する、相対的な作動を示すセンサを有することができる。例えば、キャリアは、相対的位置を推定するために使用することができるジャイロスコープ、加速度計、または速度もしくは加速度を決定するためにキャリアが移動するにつれてスペックルパターンを観察する光学センサを有してもよい。
【0080】
キャリアは、どこにキャリアがあるか、およびトラックに対するその動きを知ることができるため、キャリアは、その宛先を知っている限り、それ自身を実質的に駆動することができる。キャリアのルーティングは、種々の実施形態においては、多くの異なる方法で提供することができる。幾つかの実施形態においては、キャリアがサンプルを装填されると、システムはキャリアに宛先分析器ステーションを教えることができる。この情報は、キャリアが自律ルーティング性能を有する実施形態においては、宛先ステーションの識別と同じくらい単純である可能性がある。この情報は、個々のトラックセクション、およびキャリアが移動するであろう決定点の特定の経路を識別するルーティングリストなどの詳細情報である可能性もある。ルーティング情報は、RF通信、近接場/誘導通信、電子的接触通信、もしくは光通信などの、本明細書で記述された任意の通信方法を介してキャリアに伝送することができる。
【0081】
例示的な一実施形態においては、オペレータがサンプルチューブのバーコードをスキャンして、キャリア内へ配置するとき、システムは、キャリアのアイデンティティを判定して、サンプルのアイデンティティとキャリアのアイデンティティを整合する。システムはその後、サンプルが分析器内でどの試験を経験しなければならないかを決定するために、サンプル用の記録の位置を定める。スケジューラは、その後、サンプルに対して試験リソースを割り当て、それは、個々の試験ステーションによってどの試験が行われるか、ならびにサンプルがいつ解析用の各試験ステーションに到達するべきかを選択することを含む。システムはその後、キャリアがどこに進行する必要があるか、ならびに、任意で、キャリアがいつ進行する必要があるかおよび/もしくはキャリアがいつ到着する必要があるかをキャリアに知らせるために、キャリアに対してこのスケジュール(もしくはスケジュールの一部)を通信することができる。
【0082】
一旦キャリアがトラックシステム上に配置されると、ルーティング性能およびキャリアの位置獲得システムは、キャリアがトラック上のどこにあるか、ならびに、キャリアがトラック上のどこに進行する必要があるかをキャリアが決定することを可能にする。キャリアがトラックを移動すると、キャリアは個々の決定点に到達し、メイントラックに沿って、もしくは適切な場合サブ経路に沿って方向づけることができる。各キャリアは互いに独立して動作するため、キャリアは、各決定点において必ずしも停止することなく、ならびに待ち行列における他のキャリアを待つことなく、非常に迅速にこれを行うことができる。これらのキャリアは迅速に移動するため、トラックのメインセクション上のトラフィックは少なく、トラック内の決定点もしくは角部(例えば、キャリアがサンプル上の過度の力を回避するために減速するセクション)において衝突もしくは交通渋滞のリスクは減少する。
【0083】
推進力は、多くの方法でキャリアに対して提供することができる。幾つかの実施形態においては、トラックは、各キャリアに対して個別化された推進力を提供することにアクティブに関与する。幾つかの実施形態においては、推進力は、キャリア内の一つ以上の磁石を推進する、トラックにおける電磁コイルによって提供される。この推進力を提供するための例示的システムは、MagneMotion,Inc.によって提供されるトラックシステムであって、それは、MagneMotion,Inc.に割り当てられた米国特許出願整理番号2010/0236445に見出される、線形同期モータ(LSM)の記述によって概して理解できる。この磁気的作動システムを利用するこれらの従来のシステムは、本明細書で記述されたキャリアの統合された知能を欠く受動的キャリアを含み、全てのルーティングおよび決定は、ルーティングおよび識別プロセスに関与するアクティブキャリアを必要とすることなく、中央コントローラによって行われる。
【0084】
磁気的作動を利用する実施形態においては、電磁的コイルおよび磁石は、速度、加速度およびジャークの精密な制御で、選ばれた方向へと各個々のキャリアを推進させるためのLSMとして動作する。トラック上の各コイル(もしくはローカルセットのコイル)が独立して動作できる場合、個々のキャリアがそれ自身個々に適合された加速度および速度で動くことができるように、これによって、個々のキャリアに対して高度に局所化された推進力を可能とする。任意の瞬間におけるキャリアに対してローカルなコイルは、コイル付近を通過する個々のキャリアの方向、速度、加速度およびジャークの精密な制御を提供するためにアクティブ化することができる。
【0085】
幾つかの実施形態においては、トラックはローカルにカスタマイズ可能な摩擦トラックとして機能する多くの個々の明瞭なローラで構成されてもよい。トラックのうちの個々のマイクロセクションは独立して管理できるため、キャリア周囲のローラは、個別化された速度、加速度、およびジャークを提供するために制御されてもよい。幾つかの実施形態においては、各キャリアに個々に局所化された推進力を提供する他のアクティブトラック構造を使用することができる。
【0086】
幾つかの実施形態においては、トラックは、ほぼ受動的であって、フロア、壁、レールもしくは単一の次元に沿ってキャリアを誘導するための、キャリアの作動に対する任意の他の適切な制限を提供する。これらの実施形態においては、推進力はキャリア自身によって提供される。幾つかの実施形態においては、各個々のキャリアは、トラックとキャリアの間の自己推進摩擦ベースの推進力を提供するためのホイールを駆動する、一つ以上の内蔵モータを有する。従来の摩擦トラックとは異なり、トラックがコンベヤである場合、駆動されたホイールを有するキャリアは、独立してトラックを移動し、個々に加速/減速することができる。これによって、個々に適合されたルートに沿ってトラックを移動するのと同様に、各キャリアがそのペイロードに及ぼされる力を制御するために、自身の速度、加速度およびジャークを任意の瞬間に制御することを可能にする。幾つかの実施形態においては、永久磁石がトラック内に提供され、キャリア内の電磁石がキャリアを前方に推進するために動作し、それによって、駆動磁気力を提供するキャリアを有するLSMとして動作する。キャリアがウォータージェットなどを介して自律的に浮遊して動くことを可能にする流体トラック、トラックによって提供された空気ポケット上にキャリアが浮遊することを可能にする低摩擦トラック(例えば、局所化されたエアホッケーテーブルのように動作する)もしくは個々のキャリアがトラックを移動するときに個別化された推進力を経験することを可能にする任意の他の構成などの、他の受動的トラック構成もまた予測される。
【0087】
図7は、例示的な知能自律キャリア300用の制御システムおよびセンサのトップレベルシステム図を示す。キャリア300は、キャリアを操作するために必要とされる操縦、保守、作動およびセンサ活性を扱うための十分な処理力を含むマイクロコントローラ301によって制御される。キャリアはアクティブであって内蔵電子機器を含むため、従来技術の受動的キャリアとは異なり、キャリアは内蔵電力ステーションを含む。このステーションの詳細は、本発明の異なる実施形態で変化する。幾つかの実施形態においては、電力システム303は、キャリアが動作すると充電されうるバッテリを含み、他の実施形態においては、バッテリは置換可能であるか、またはキャリアが動作していないときに手動で充電することができる。電力システム303は、バッテリを保持するために必要な充電電子機器を含むことができる。他の実施形態においては、電力システム303は、地下鉄車両もしくは模型電車が電力を受信するのとほぼ同じ方法で、トラック自体から電位を獲得するための誘導もしくは電子接触機構によって充電されうるキャパシタを含む。
【0088】
マイクロコントローラ301はシステムメモリ304と通信する。システムメモリ304は、データおよび命令メモリを含んでもよい。メモリ304内の命令メモリは、キャリアを操作するために十分なプログラム、アプリケーションもしくは命令を含む。これは、センサ取扱アプリケーションと同様に操縦手順を含んでもよい。メモリ304内のデータメモリは、現在位置、速度、加速度、ペイロードの内容、操縦計画、キャリアもしくはペイロードのアイデンティティ、もしくは他の状態情報についてのデータを含むことができる。キャリア300内に内蔵メモリを含むことによって、キャリアは、現在の状態のトラックを維持して、トラック周囲を知的にルーティングするか、トラックもしくは他のキャリアに状態情報を伝送するために、情報を利用することができる。
【0089】
マイクロコントローラ301は、モーションシステム305、センサ312、313および314、通信システム315、状態ディスプレイ316ならびにサンプルセンサ317を操作することを担当している。これらの周辺機器は、バス310を介してマイクロコントローラ301によって操作することができる。バス310は、複数の周辺機器と通信することが可能なCANバスなどの任意の標準バスであるか、または、個々の周辺機器へと個々の単一経路を含むことができる。周辺機器は、それ自身の電源もしくは共通の電力システム303を使用することができる。
【0090】
モーションシステム305は、本明細書で記述されたモーションシステムのうちの任意のシステムを操作するために必要な制御論理を含むことができる。例えば、モーションシステム305は、駆動されたホイールを利用する実施形態においては、モータコントローラを含むことができる。他の実施形態においては、モーションシステム305は、キャリア300に推進力を提供するために必要な任意のアクティブトラックシステムと通信するために必要な論理を含むことができる。これらの実施形態においては、モーションシステム305は、マイクロコントローラ301によって実行され、トラックと通信するために通信システム315を利用するソフトウェアコンポーネントであってもよい。モーションシステム305によって制御されるモータ、アクチュエータ、電磁石などのデバイスは、これらのデバイスがキャリアに内蔵される実施形態においては、電力システム303によって電力を供給することができる。LSMがトラック内のコイルにエネルギーを供給することによって推進力を提供する実施形態などの幾つかの実施形態においては、外部電源もまた、電力を供給することができる。幾つかの実施形態においては、モーションシステム305は、推進力を提供するためにキャリア内外のデバイスを制御する。幾つかの実施形態においては、モーションシステム305は、トラック内の近傍のコイルにエネルギーを供給することを要求することによって、もしくはローカルローラの移動を要求することによって、推進力を調整するために、トラック内のコントローラなどの他のコントローラとともに動作する。これらの実施形態においては、モーションシステム315は、キャリアを動かすために通信システム315とともに動作することができる。
【0091】
キャリア300は、一つ以上のセンサを含むことができる。幾つかの実施形態においては、キャリア300は、衝突検出システム312を含む。衝突検出システム312は、キャリアが別のキャリアに近づいているか否かを判定するために、キャリアの前面もしくは背面にセンサを含むことができる。例示的な衝突検出センサは、IR測距装置、磁気センサ、マイクロ波センサもしくは光検出器を含むことができる。多くの従来技術のパックは円形であるが、キャリア300は、前面部分および背面部分を有する指向性であってもよい。指向性の外形を有することによって、キャリア300は、前面衝突検出器および背面衝突検出器を含むことができる。
【0092】
幾つかの実施形態においては、衝突検出情報は、通信システム315を介して受信された情報を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態においては、トラック用の中央コントローラは、衝突を防止するために、トラック上のキャリアの位置および速度を観察して、衝突状態を評価し、キャリアに対してアップデートされた方向を送信することができる。幾つかの実施形態においては、付近のキャリアは、それらの位置をピアツーピア方式で通信することができる。これによって、他のキャリアから受信されたリアルタイム位置情報に基づいて、衝突のリスクをキャリアが個々に評価することを可能とする。キャリアが他のキャリアについての軌道情報を受信するか、または付近のキャリアの軌道情報にアクセスした中央コントローラの支援によって決定が行われる実施形態においては、キャリアは指向性である必要がなく、また、キャリアの任意の方向に依存しないセンサもしくは受信機を含むことができることを理解されたい。
【0093】
キャリア300は位置デコーダ313も含むことができる。このセンサは、本明細書で記述されたようにキャリアの位置を推定することができる。例えば、位置デコーダ313は、トラック内のランドマークを識別するため、もしくはトラック内の光符号化を観察するために、カメラもしくは他の光学手段を含むことができる。幾つかの実施形態においては、位置デコーダ313は、慣性センサ、磁気センサ、もしくはキャリアの現在位置、方向、速度、加速度および/もしくはジャークを決定するために十分な他のセンサも含むことができる。
【0094】
キャリア300は、任意でバーコードリーダ314を含むことができる。バーコードリーダ314を備えている場合、キャリア300は、サンプルがキャリア上に装填されたときか、またはその後の任意の時間に、そのペイロードのバーコードを観察することができる。これによって、サンプルチューブのバーコードをシステムに読みとらせるために、個々の決定点においてキャリアが停止する必要性を回避する。サンプルチューブのアイデンティティを読み取って格納することによって、もしくはこの情報をシステム全体へと伝送することによって、キャリアは、トラックシステムをより効率的に移動してもよい。なぜなら、ルーティング判定は、決定点に到達する前に行うことができるからである。或いは、サンプルがキャリア上に配置されるとき、サンプルのアイデンティティをシステムが知っている場合、システムは、外部バーコードリーダを含み、通信システム315を介して記憶装置およびメモリ304用に、キャリアに対してペイロードのアイデンティティを伝送することができる。
【0095】
通信システム315は、キャリアがオートメーションシステム全体と通信することを可能にするのに十分な任意の機構を含むことができる。例えば、これは、802.15.4、任意の適切なバージョンの802.11、もしくは任意の標準もしくは専用ワイヤレスプロトコルなどのオフザシェルフ(既存の)通信プロトコルを利用するワイヤレス通信用のXBee通信システムを含むことができる。通信システム315は、RF通信プロトコルを操作するための送受信機およびアンテナおよび論理を含むことができる。幾つかの実施形態においては、通信システム315は、近接場通信、光通信、もしくは電子接触コンポーネントも含むことができる。キャリア300へと/キャリア300から通信システムを介して伝送される情報は、本出願を通して記述される。
【0096】
幾つかの実施形態においては、キャリアは、状態ディスプレイモジュール316も含むことができる。状態ディスプレイモジュール316は、コントローラと、LCDパネルもしくはEインクディスプレイなどの再書き込み可能な電子ディスプレイを含むことができる。幾つかの実施形態においては、コントローラは、マイクロコントローラ301が状態ディスプレイ316を容易にアップデートすることができるように、メモリのうちのアドレス指定可能な部分として扱われる。
【0097】
幾つかの実施形態においては、キャリアはサンプルセンサ317も含む。このセンサは、キャリアのチューブブラケット(チューブホルダとも称されうる)内の流体容器の存在もしくは不在を示すために使用することができる。幾つかの実施形態においては、これは、チューブの存在によって押され、チューブが存在しないときには押されない一時的な機械スイッチである。この情報は、チューブの状態を決定するために使用することができ、状態ディスプレイモジュール316による状態情報の表示を支援することができる。
【0098】
[ルーティング]
分析器システム内の通過時間を迅速にする要望が、ルーティングを困難なものにする可能性がある。従来技術のシステムにおいては、迅速なルーティングはそれほど重要ではない。なぜなら、サンプルは、各決定点において概して停止し、単一化され、スキャンされるからである。当該システムにおいては、任意の決定点用のルーティング判定は、サンプルが停止している間に行うことができる。迅速なルーティング判定は、概して望ましく、サンプルキャリアが決定点に到達する前にスイッチング決定を決定することを必要とすることがある。さらには、キャリアが従来技術と比較して速い速度で移動するため、サンプルキャリアの即時の軌道の制御は、IVDサンプルの溢流もしくは傷害を防ぐために、リアルタイム処理によって支援することができる。幾つかの実施形態においては、実質的に即時の軌道観察および制御は、リアルタイム制御を容易にするために各内蔵キャリアで実施されるが、全体のルーティング判定は、一群のキャリアを管理する中央コントローラによって行われる。したがって、本発明の幾つかの実施形態においては、キャリアは、中央コントローラからグローバルルーティング命令を受信する半自律ロボットのように動作するが、実質的に自律してローカルモーション判定を行う。
【0099】
例えば、キャリアがサンプル(例えば、患者の流体サンプルもしくは他のペイロード)を受け取ると、一つ以上のキャリアを管理する中央コントローラは、当該キャリア用のスケジュールを決定し、例えば、インビトロ診断オートメーションシステムのトラック上でキャリアがどこに進行するかを、キャリアに対して命令する。この命令は、任意の決定点へと進行する、次の決定点へと前方に移動する、もしくは任意の決定点において転回するなどの次のホップの命令(例えば、ルートの次のレッグを識別する)とすることができる。幾つかの実施形態においては、命令は、トラックセグメントおよび移動するべき決定点ならびに各決定点において転回するか否かの完全もしくは部分的なリストを含むことができる。これらの命令は、本開示を通して説明されるように、ワイヤレスもしくは電子接触シグナリングを含む任意の従来手段を介して、中央コントローラからキャリアへと通信することができる。
【0100】
命令に従う一方で、各キャリアは適切な速度、加速およびジャークの判定を行うことができる(本明細書で使用されるように加速は減速を含む)。これは、衝突を回避するためにもしくは過度の横力を引き起こすことなくカーブに入るためにキャリアが減速しなければならないか否か、または、次の決定点前に減速しなければならないか否かのリアルタイム判定を含むことができる。これらの判定は、付近のキャリアの位置および軌道についての情報などキャリアによって受信された外部情報と同様に、任意の内蔵センサの支援で行うことができる。例えば、加速度計および/もしくはトラックエンコーディング情報は、キャリアの現在位置と同様に、現在速度、加速度およびジャークを決定するために使用することができる。この情報は、各キャリアによってその軌道を決定するために使用することができ、および/もしくは他のキャリアに伝送することができる。RF距離測定器などの衝突検出器は、キャリアが減速するおよび/もしくは停止する必要があるか否かを判定するうえでキャリアを支援するために、衝突が発生しうる条件が存在するか否かを判定することができる。この衝突判定は、観察を通して現在のキャリアによって、もしくはトラック用の中央スケジューラからの情報を受信することによって受信された周囲キャリアについての軌道情報と同様に、現在キャリアについての軌道情報を含むことができる。
【0101】
図8は、オートメーションシステム400における例示的なルーティングシナリオを示す。キャリア430は、RFシグナリングを介して、中央管理プロセッサ440からのルーティング命令を受信する。中央管理プロセッサ440は、ルーティング命令の発行、キャリアの移動および急送のスケジューリングを含む、キャリアの監視および方向づけに関与することができる。中央管理プロセッサ440は、個々のモジュールもしくは状態と相互作用する中央コントローラおよび/もしくはローカルコントローラの一部とすることができる。中央もしくはローカルコントローラは、中央管理プロセッサ440の方向付けにおいて動作することもできる。中央管理プロセッサ440は、ともに、独立しておよび/もしくは互いと通信して動作する一つ以上のプロセッサを含むことができる。中央管理プロセッサ440は、マイクロプロセッサ、一つ以上のプロセッサ上で動作するソフトウェア、もしくはトラックシステム400内で複数キャリア用のスケジュールを計算するのに適した他の従来のコンピュータ手段とすることができる。
【0102】
中央管理プロセッサ440は、トラックシステム400におけるセンサからの任意のセンサ情報および/もしくはキャリアによって報告された情報と同様に、複数キャリアからの位置情報を受信することができる。中央管理プロセッサ440は、キャリアによって運搬されたサンプルもしくは他のペイロードのアイデンティティおよびこれらのサンプルに対してシステムによって実施することが必要とされたアッセイと同様に、キャリアおよびトラックの状態情報を利用する。
【0103】
図8に示された例示的なトラック400は、直線セグメントBおよびプルアウトセグメントG(例えば、試験ステーションを提供するセグメント)に接続する第一のカーブセグメントAを含み、プルアウトセグメントGは、決定点402を介して、分析器/試験ステーション205Aおよびピペット420を提供する。セグメントBは、直線セグメントCおよびプルアウトセグメントHに接続し、プルアウトセグメントHは、決定点404を介して、分析器/試験ステーション205およびピペット422を提供する。セグメントCは、決定点406を介して、曲線セグメントD(サンプル取扱ステーション205Cを提供する)およびプルアウトセグメントI(分析器/試験ステーション205Bおよびピペット424を提供する)に接続する。セグメントDは、決定点408を介して、直線セグメントEおよびプルアウトセグメントIの他端に接続する。即ち、決定点406と408の間には、異なる経路であるセグメントDおよびIが存在する(セグメントIは、ピペット424と相互作用するために、サンプルを送達するのに使用できるプルアウトである)。セグメントEは、決定点410を介して、直線セグメントFおよびプルアウトセグメントHの他端に接続する。セグメントFは、決定点412を介して、カーブセグメントAおよびプルアウトセグメントGの他端に接続する。幾つかの実施形態においては、トラック400は、決定点402および412においてキャリアを追加もしくは除去するために使用できる入力および出力レーンJおよびKを含む。
【0104】
幾つかの実施形態においては、決定点402−412は、適切な宛先セグメントを選択するためにキャリア430が操縦できるトラック内の受動的分岐点である。他の実施形態においては、決定点402−412は、キャリア430もしくは中央管理プロセッサ440によって制御できるアクティブ分岐点である。幾つかの実施形態においては、決定点402−412は、RFもしくは近接場通信などを介して、キャリア430による要求に応答する電磁的に制御されたスイッチである。幾つかの実施形態においては、これらの電磁的に制御されたスイッチは、キャリアが一度ルーティングされたらスイッチが戻るデフォルト位置(直線部分など)を有する。決定点用のデフォルト位置を利用することによって、キャリアは、決定点において切り替えられる必要がない場合に、各決定点において位置を要求する必要がない。
【0105】
スケジューラ中央管理プロセッサ440は、ピペット420の到達範囲内にキャリア430およびそのペイロードを配置するために、第一のルート(ルート1)をキャリア430に割り当てる。キャリア430は、決定点402へとセグメントJに沿って移動し、かつ、ピペット420にアクセス可能な位置で停止するようにセグメントG上を移動するように命令される。幾つかの実施形態においては、キャリア430は、命令を受信して、決定点402に到達するために使用するための方向および軌道を決定するために、キャリアの現在位置および軌道を決定する。キャリア430は、セグメントG上へと決定点402において急激な右転回をするであろうことを考慮に入れることもできる。幾つかの実施形態においては、決定点402は、キャリア430の制御下で動作することができる、トラック内のスイッチング機構を含む。これらの実施形態においては、キャリア430は、セグメントG上へのスイッチングを要求するために、決定点402へ近付くときにトラックと通信する。他の実施形態においては、キャリア430は、トラック内へと一体化された外部ゲートの支援なしで、決定点402においてキャリア430がセグメントG上へ右転回をすることを可能にする操縦機構(移動可能なガイドホイール、指向性磁石、非対称ブレーキなど)を有してもよい。これらの実施形態においては、キャリア430は、セグメントG上への転回を行うために、決定点402において操縦機構を使用する。
【0106】
キャリア430は、光符号化もしくはRFIDタグなどのトラック内の符号化を読みとることによって、キャリアの概略的位置(セクションJなどのキャリアの現在のトラックセクション)を決定することができる。幾つかの実施形態においては、キャリア430は、トラックシステム400内のキャリアの位置を決定するための複数の手段を使用する。例えば、RFIDタグは、どのトラックセグメントにキャリア430が位置するのかを概して判定するために使用することができ、光符号化もしくは他の精密な符号化は、当該トラックセグメント内の位置を判定するために使用することができる。この符号化は、(例えば、位置情報から派生的な)符号化内の変化を観察することによって、速度、加速度もしくはジャークを決定するために使用することもできる。
【0107】
キャリア430は、
図7における内蔵制御システムに示されるように、中央管理プロセッサ440によって受信された明示的な命令、もしくはメモリ304内の内蔵データベース内の適切なルートを探すことのいずれかによって、宛先セクションへと適切なルートを決定するために、現在のトラックセクションの識別を利用することができる。幾つかの実施形態においては、キャリア430は、メモリ304内のキャリア430のメモリに格納されたマップに基づいて、セクションJからセクションGへと如何にして到達するかを理解する。このマップは、単純なルックアップテーブルもしくは、各ノードが対応する決定点によってリンクされるかもしくはその逆にリンクされるトラックセクションのツリーを含むことができる。例えば、キャリアが現在トラックセクションJにあることを識別すると、内蔵データベースは、セクションG上へと右に切り替えるために、決定点402へと進行するようにキャリア430へと知らせることができる。
【0108】
図8に示されるように、キャリア430は、セクションG上へと進行して、ピペット420の近傍の位置で停止することによって、ルート1用の命令に応答する。キャリア430がいったん停止すると、ピペット420を制御する分析器/試験ステーションからのさらなる命令を受信することができる。例えば、分析器205Aは、ピペット420を制御して、かつ、セクションGに沿って正確な位置に自身を配置するように、セクションG上のキャリアに命令することができる。これによって、分析器/試験ステーションがランダムアクセス待ち行列としてトラックセクションを扱うことを可能にする。例えば、いったんキャリア430がセクションG上で停止すると、さらなる命令は、中央管理プロセッサ440を介して伝送されるか、RF伝送またはローカル光もしくは誘導/近接場信号などの他の手段を介して、キャリア430へと分析器205Aから直接伝送することができる。これらの命令は、別のキャリアがピペット420と相互作用する間の停止、ならびに、分析器205Aがキャリア430によって運搬されたサンプルに対する一つ以上のアッセイを実施する準備が出来ているとき、ピペット420にアクセス可能な位置へとその後進行することを含む。
【0109】
いったん、分析器/試験ステーション205Aがキャリア430によって運搬されたサンプルとの相互作用を終えると、さらなるルーティング命令を、中央管理プロセッサ440からキャリア430へと送信することができる。例えば、ルート2は、ピペット422と相互作用するために、セクションHへと進行するためのルーティング命令を含むことができる。幾つかの実施形態においては、キャリア430の内蔵メモリ304内に含まれるルーティングテーブルは、キャリアが自身をセクションHへとルーティングすることを可能にするための、トラックレイアウトについての十分な情報を有する。他の実施形態においては、ルーティングステップのリストは、中央管理プロセッサ440を介してキャリア430へと伝送することができる。キャリア430が次のルーティングステップを常に知り、かつ任意でその後のルーティングステップを知るように、他の実施形態は、ルートの任意のサブセットをキャリア430へと伝送することおよび/もしくは断片的にルーティング命令を送信することを含むことができることを理解されたい。
【0110】
本実施例においては、キャリア430は、決定点412へとセクションGを介して進行するようにキャリアに命令する、ルート2を表す中央管理プロセッサ440からのルートリストを受信する。決定点412において、キャリア430は、上述されたようにゲートと相互作用することによってか、転回することによって、セクションA上へのスイッチングを開始する。キャリア430は、加速度およびジャーク状態が、キャリアが運搬するサンプル用の閾値要件を超えないことを保証するために、セクションGおよびセクションA上の曲線トラック状態を考慮することができる。これは、通過中の溢流もしくは不安定性を防止することができる。キャリア430によって受信されたルート情報は、その後、転回なしで決定点402を通って進行するように、キャリア430へ命令する。決定点402に近づくときにルート2において使用される軌道は、ルート1の間に使用される軌道とは異なる(例えば、より速い)可能性がある。なぜなら、キャリア430は、セクションG上へと急な右転回をする必要がないことを知っているからである。幾つかの実施形態においては、これによって、ルート1の間よりもルート2の間で実質的により速い速度で決定点402にキャリア430が近付くことを可能にする。キャリア430が転回しない場合、決定点402をより速く移動することによって、キャリア430が各決定点において可能性のあるスイッチング用に減速しなければならない実施形態よりも短い時間で、キャリア430はルート2を完了することができる。これは、キャリアが転回するか否かに関わらず、キャリアが典型的に停止かつ単一化される従来技術に対する改良である。
【0111】
決定点402を通過した後、キャリア430はセクションB上へ進行する。決定点404において、キャリア430は、セクションCへと進行する。決定点406において、キャリア430は準備して、キャリアがピペット424との相互作用のために停止するセクションIへと転回する。セクションGと同様に、セクションIは、ピペット424用の待ち行列として機能し、キャリア430は、セクションIによって提供される分析器/試験ステーション205Bによるローカル命令下で制御することができる。
【0112】
ピペット424がキャリア430との相互作用を行うと、中央管理プロセッサ440は、出力経路Kへ進行するようにキャリア430に命令する、新規のルーティング命令をキャリア430へと提供することができる。ルート3は、ルート1およびルート2と同一の方法で処理することができる。ルート3用の命令を受信すると、キャリア430は、セクションIから決定点408へと進行し、そこで、キャリアはメイントラックセクションE上に戻り、(幾つかの実施形態においては、減速する必要なく)通過した決定点410、トラックセクションF、決定点412および、セクションK上に進み、キャリア430および/もしくはサンプルは、オペレータによってシステムから除去することができる。キャリア430は、その後、入力セクションJにおいてサンプル用に再利用することができる。ルート4に対する命令を受信すると、キャリア430は、サンプル取扱ステーション205CへとセクションDを進み、メイントラックセクションE上に戻る決定点408へと進み、その後、ルート3と同様に進行する。
【0113】
幾つかの実施形態においては、
図8の各トラックセクションは、一つ以上の速度領域を含むように構成することができる。これは、各キャリア用のモーションプロファイルを維持するソフトウェア内で速度もしくは加速度制限として表されてもよい。例えば、セクションDは、キャリアがセクションDを移動するとき、トラックによって及ぼされる固有の求心力を処理するために、全キャリア用の低速度領域として軌道制御用に表されてもよい。同様に、トラックセクションは、トラックセクション内の複数の速度領域を含み、それらはモーションプロファイルルールを含んでもよい。例えば、キャリアは、トラックセクションD内で近づいてくる速度制限領域によって、制動領域として、セクションCの後半部分を識別するルールのソフトウェア強制に応じて減速してもよい。幾つかの実施形態においては、キャリア用のモーションプロファイルルールを維持することを担当するソフトウェアは、近づいてくる速度領域および非制限トラックセクションにおける制動を予測して考慮に入れてもよい。さらには、異なるトラックセクション部分は、動的速度領域として表すことができる。例えば、ピペットとの相互作用のための停止点は、当該位置で停止すべきキャリア用にゼロの速度を有する速度領域によって表すことができる。これによって、停止位置に近づくにつれて、軌道強制ソフトウェアが、影響を受けたキャリアを自動的に減速させることを可能にする。
【0114】
図9は、ルーティング命令に従うときのキャリア430の一般的な動作図を示す。方法500に示されるように、動作は、中央管理コントローラなどの中央スケジューラによって、もしくは中央スケジューラとの相互作用によって最小限の制御で、キャリアによって行うことができる。ステップ501において、キャリアは、例えば中央スケジューラからのルーティング命令を受信する。本実施例においては、ルーティング命令は、トラックシステムにおける決定点へのキャリアのルート全体をキャリアが決定するための十分な情報を含む。これらの命令は、転回するための決定点および移動するためのセクションを含む、全ルーティングポイントのリストを含むことができる。幾つかの実施形態においては、ルーティング命令は宛先点を含み、内蔵ルーティング情報は、とるべき最良のルートを決定するためにキャリアによって使用することができる。少なくともメイントラックが一方向であるとき、キャリアによるルーティング計算はかなり単純であって、ノードおよびセクションのツリーの検索、もしくは可能性のあるルート交換のルックアップテーブルの検索を含む任意の既知の方法を含むことができることを理解されたい。
【0115】
これらの命令は、各セクション用の速度および加速モーションプロファイルも含むことができる。幾つかの実施形態においては、トラックの各セクションに対する速度および加速度は、そのペイロードに基づいて、かつ、内蔵データベース内の情報(トラック長、トラックの曲率、決定点の位置、サンプルのタイプもしくは運搬されるペイロードのタイプ、キャリアが決定点に到達すると転回するか、同一方向に進行するか否かの考慮など)に基づいて、キャリアによって計算することができる。幾つかの実施形態においては、ステップ501で受信されるルーティング情報は、いつ通過を開始するかおよび/もしくはいつ通過を完了するかをキャリアに命令するためのタイミング情報も含む。
【0116】
ルーティング命令を受信して通過を開始すると、キャリアは、ステップ502において、現在位置ならびに任意でそのルートを開始するために必要な方向を決定する。一般的に、キャリアはニ方向(前方もしくは後方)にだけ動くことができ、幾つかの実施形態においては、移動中に転回を開始することができる。簡略化された移動モデルのために、キャリアは、RFID情報によって現在のトラックセクションを獲得することなどによって、その現在位置の概略的な理解を有するだけで、通過を開始することができる。幾つかの実施形態においては、キャリアは前進前に、トラックセクション内の現在位置を決定するために、トラックにおいてより精密な符号化を使用する。
【0117】
いったん現在位置および必要な方向が決定されると、キャリアはステップ504において通過を開始することができる。トラック上の位置、現在のトラックの構造、次の決定点への距離、サンプル/ペイロードのタイプおよび現在速度の理解を利用することによって、キャリアは通過を開始するための安全な加速度プロファイルを決定することができる。例えば、キャリアが次の決定点から長距離離れており、かつ現在停止している場合、キャリアはサンプル用の最大加速度での加速を開始することができる。幾つかの実施形態においては、キャリアの加速は、サンプルを高い程度のジャークに晒すことを回避するために、強化される。
【0118】
図10は、通過時間を最小限化しながら、ジャークおよび加速を制限するために使用できる例示的な加速モーションプロファイルを示す。台形加速プロファイルを使用することによって、加速が(サンプルの傷害もしくは漏流を回避するための閾値量よりも小さい)安全な値に到達するまで、加速は、不必要なジャークを回避するために強化される。加速が閾値量よりも小さいことを保証することによって、キャリアは、衝突を軽減するか、またはペイロードの加速閾値を超えることなく他の予期していない状態を扱うために、使用可能な幾らかの加速を有してもよい。概して、最大速度は、開始点と停止点の間の中間で到達される。幾つかの実施形態においては、トラックの直線セクション用に最高速度が存在せず、過度の横方向の加速を防ぐために、最高速度によってトラックの曲線セクションが管理される。これらの速度制限および加速閾値は、知能キャリアに対して既知であり、内蔵メモリ内でアクセス可能であってもよい。キャリアによって使用される正確なモーションプロファイルは、運搬されるペイロードに依存して変化することができる。例えば、空のキャリア、または試薬もしくはサンプルのないペイロードを輸送するキャリアは、サンプルを運搬するモーションプロファイルよりも高い制限を有するモーションプロファイルを利用してもよい。
【0119】
トラックの一定速度によって管理される従来の摩擦トラックとは異なり、本発明の幾つかの実施形態は、動的加速プロファイルを可能とし、従来技術よりもかなり早い平均速度でキャリアが移動することを可能にする。幾つかの実施形態においては、トラックシステム内の任意の点間の最大通過時間を、診断分析器の動作サイクルの一部よりも短く制限することが概して望ましい。例えば、トラックシステム上の任意の点間の最大距離が25mであって、動作サイクル時間が20秒である場合、全ての転回、加速、減速、発進および停止を含むキャリアの平均速度は、5秒以下で30mもしくは6m/s(〜2.1km/hr)で移動するために十分であることを保証することが望ましい。通過における大半の時間が加速もしくは減速に費やされるため、直線コースにおけるキャリアの最大速度は、実質的にこの平均速度よりも速い可能性があることを理解されたい。
【0120】
ジャークおよび加速はサンプルに対して制限されるべきであるため、加速のリアルタイム制御が望ましい。この目標は、加速度計もしくは他のセンサを利用してキャリアの現在の軌道を監視できるように、キャリア自身に加速の制御を与えることによって達成される。キャリアは、位置、トラフィックおよび近づいてくる転回用に減速する必要性などのトラック条件に基づいて、その軌道を動的に変化させることができる。この方法においては、キャリアは、それ自身の動的安定状態を監視して制御するために責任がある可能性がある。
【0121】
図9に戻ると、ステップ510において、キャリアは、ステップ504において決定された軌道に従って、加速もしくは減速し続けることが安全か否かを判定する。ステップ510は、衝突検出または他の予期されない障害またはシステム全体もしくはキャリア特有の休止コマンド用のチェックを含むことができる。幾つかの実施形態においては、ステップ510における決定は、RF距離測定器を含む衝突検出センサに基づくものだが、中央管理コントローラからもしくは他のキャリアからステップ505で受信されたトラックについての状態情報も含むことができる。この状態情報は、例えば、周囲のキャリアについての位置および軌道情報、もしくは休止命令などのアップデートされたコマンド、または新規ルート命令を含むことができる。
【0122】
キャリアがステップ510において計画された軌道を進み続けることが安全ではないと判定する場合、キャリアは、ステップ512において衝突を軽減するか回避するためのステップを行うことができる。例えば、加速プロファイルが別のキャリアに対して危険なほど近くにキャリアを配置することが判定された場合、キャリアは減速を開始することができる。幾つかの実施形態においては、衝突を回避するために減速する判定は、現在の軌道の推定および他のキャリアの観察された軌道に基づく。現在の軌道が、キャリアの前に存在するキャリアから安全でない追随距離内にキャリアを移動させることが判定される場合、軽減手順が開始される。幾つかの実施形態においては、各キャリアは入ることが安全ではない衝突領域を有するものとしてモデル化される。この衝突領域は、キャリアとともに移動する。キャリアが別のキャリアの衝突領域を侵略する(または別のキャリアが目下のキャリアの衝突領域を侵略する)ことを検知する場合、キャリアは減速する(もしくは幾つかの実施形態においては、後部端での衝突を回避するために加速する)ことによって衝突を軽減することができる。
【0123】
キャリアが衝突を軽減するために減速/加速した後、キャリアは、新規衝突回避条件を考慮に入れるアップデートされた軌道を決定するために、ステップ504へと戻る。安全ではない条件が検出される場合、キャリアはステップ514においてその軌道を実現して進行する(例えば、条件の連続的監視を可能とするために、ステップ504−510を繰り返す前に、軌道の一部で進行する)。これは、加速もしくは減速ならびにキャリアの現在の状態および軌道を決定するためのトラック符号化および加速度計の情報の観察を含むことができる。幾つかの実施形態においては、キャリアは、ステップ515において、ルーティングおよび衝突回避を支援するために、中央コントローラおよび/もしくは他のキャリアに対して、位置、軌道および/もしくは計画された軌道を含むキャリアの現在の状態を通信する。
【0124】
キャリアが、計画された軌道の繰り返し実現を開始すると、ステップ520において、その宛先末端もしくは近づいてくる決定点などの近づいてくるランドマーク用にトラックを観察する。これらのランドマークは、警告もしくは制動LEDなどのトラック内の重要な特徴を介して、観察された符号化からランドマークへの距離の推定によって、もしくはそれらの幾つかの組み合わせによって識別することができる。ランドマークが近付いて来ない場合、キャリアはステップ504へと進行し、計画された軌道を繰り返し計算して実現し続ける。
【0125】
本実施例においては、2タイプの重要なランドマークが存在する。第一のランドマークはキャリアの宛先である。キャリアは、トラック符号化もしくはLEDなどのランドマーク特性に基づいて、その宛先に近づいているか否かを判定することができ、ステップ522において停止を開始するか、停止手順を完了するための情報を利用する。例えば、キャリアはピペットにアクセス可能な正確な位置に停止するように命令されてもよい。この正確な位置は、ミリメートルの精度で正確な位置でキャリアが停止することを支援するために、トラックの壁もしくはフロア内のLEDを含んでもよい。幾つかの実施形態においては、ステップ504において計算された軌道は、その宛先の概略位置におけるキャリアを獲得するために使用され、ステップ522における停止手順は、付近のLEDランドマークを探すことおよび適切な位置で停止することなどによって、正確な停止位置を決定するために使用される。
【0126】
もう一つの重要なランドマークが決定点である。トラック内の符号化もしくは警告LEDは、キャリアに対して、近づいてくる決定点の位置を伝達することができる。例えば、中央管理コントローラは、決定点において不必要な加速もしくは衝突を防ぐために、キャリアに減速するように警告するために、決定点前のトラックの幾らかの距離における制動位置においてLEDを照射してもよい。他の実施形態においては、キャリアは、トラック符号化から近づいてくる決定点の相対的位置を推定して、必要な場合、ステップ524において軌道をアップデートするためにこの距離を利用する。ステップ524において、キャリアは、そのルーティング情報に基づいて決定点の相対的位置を判定して、キャリアが決定点において転回するか進行するか否かを決定する。キャリアが転回する場合、サンプルを害するか漏流させる不必要な横力を防ぐために、決定点においてキャリアが転回するときにキャリアの速度が十分に遅いように、減速を開始するために軌道をアップデートする必要がある。
【0127】
多くの実施例においては、キャリアは、転回することなく通過した決定点を進む。これらの実施例においては、軌道をアップデートする必要がなく、キャリアは現在の速度で進み続けるか、決定点を通して加速し続けることさえもできる。
【0128】
キャリアが近づいてくる決定点で転回する必要があることを判定する場合、キャリアはステップ526において減速して転回を開始することができる。幾つかの実施形態においては、キャリアは、支援なしで前方もしくは後方へ移動することだけできる。これらの実施形態においては、キャリアもしくは中央管理コントローラは、トラックシステム400内の任意の機械的もしくは電磁的デバイスが決定点を移動するとき、適切な方向にキャリアを方向づけるために噛み合わせられることを保証するために、ステップ527において、決定点におけるスイッチング機構と通信することができる。トラック内のデバイスの例は、分岐点におけるある経路をブロックして、分岐点における他の経路をキャリアが転回することを支援する機械的スイッチ(トラックがトラフ様の形状であるとき、レールもしくはゲートに取り付けることができるレールロードスイッチなど)、一方向もしくは別方向にキャリアを引き込む磁石、キャリアが従うLEDなどのキャリアが転回することを支援する経路内の変更シグナリング、キャリアが従来の行列に従う性能を有して備えられる場合、キャリアによって従うことができる行列を含むトラック内のLCDもしくはeインクパネルを含むことができる。決定点で停止した後、個々のキャリアを単一化し、スキャンし、押し込む従来の構成とは異なり、本発明の幾つかの実施形態は、キャリアが物理的に決定点に到達する前に転回を交渉することができる。これによって、転回するために他の機構を停止させるか、待機させるのではなく、転回の曲率によって制限される速度でキャリアが進行することを可能にすることができる。
【0129】
キャリアが幾らかの操縦可能性を有し、次の内部スイッチの支援がなくても、決定点で転回できる実施形態においては、キャリアは、決定点に近づくと、適切な経路へとキャリアを方向づけるための操縦機構を使用することができる。決定点において転回した(もしくは転回なしで進行した)後、キャリアは、次の軌道を決定するために、ステップ504へ戻る。
【0130】
[仮想待ち行列]
本発明の幾つかの実施形態においては、トラックシステムの確実かつ迅速な特性は、待ち行列が物理的ではなく仮想的であることを可能とする。仮想待ち行列は、物理的制限によってではなく、ソフトウェアで扱うことができる。従来、待ち行列は物理的であった。最も単純な物理待ち行列は、サンプル取扱動作の任意の与えられた部分における事実上の交通渋滞である。ボトルネックは、ファストインファストアウト(FIFO)待ち行列を生成し、分析器もしくは決定点が、準備したときに待ち行列における次のサンプルを要求することができるように、サンプルキャリアは、行列において事実上停止し、バッファを提供する。ほとんどの従来技術の研究室オートメーショントラックは、付属モジュール(分析器もしくは前/後分析デバイス)によって処理されることを待っているサンプルをバッファするために、FIFO処理待ち行列を保持する。これらのバッファは、モジュールもしくはオペレータの要求が爆発的需要を作り出しても、トラックが、一定の速度でサンプルチューブを処理することを可能とする。将来のサンプル用の前処理タスク(例えば、現在のサンプルの処理中にキュベットを準備するか試薬を吸引する)を個々のモジュールが実施することを可能にすることによって、FIFO待ち行列は、個々のモジュールのスループットを実質的に増加させることもできる。FIFO待ち行列の確実な予測性によって、幾つかの処理タスクの並列化を可能とするが、リソースを最適化するために、サンプルに対する試験を再順序付けすることによって、モジュールがスループットを増加しうる日和見スケジューリングを利用することを防止する可能性がある。例えば、ほとんどの免疫アッセイ分析器の内部リソース競合は非常に複雑なので、分析器は、最大効率に到達するために、複数のサンプルから試験をインターリーブする必要がある。FIFO待ち行列は、これらの分析器のスループットを20%減少させるだろう。FIFO待ち行列での別の問題点は、優先度を有するサンプル(例えば、STATサンプル)を扱う能力がないことである。STATサンプルを即座に処理する必要がある場合、全体のFIFO待ち行列は、メイントラック上へとフラッシュされなければならず、トラック上の全ての他のサンプルを遅延させ、元のモジュールにその待ち行列をゆっくりと再構築させる。
【0131】
もう一つのタイプの待ち行列は、ランダムアクセス(RA)待ち行列である。カルーセルは、分析器モジュールに見出される物理的RA待ち行列の一実施例である。サンプルの一部をカルーセルリング内の一つ以上の容器内に分割することによって、分析器モジュールは、分析器内の任意の時間に処理される任意の数のサンプルを選択することができる。しかしながら、カルーセルは、複雑性、サイズおよびコストの追加などの多くの欠点を有する。カルーセルは、定常状態処理時間も増加させる。なぜなら、サンプルはランダムアクセス待ち行列の内外へと移動しなければならないからである。処理遅延は、カルーセル内の配置数などの実装に依存する。一方、サンプルに対してランダムアクセスを有することによって、モジュール内のローカルスケジューリング機構は、サンプルを並行して処理することができ、所望の任意の順序でサブステップを実施する。
【0132】
幾つかの実施形態においては、カルーセルもしくは他のRA待ち行列は、モジュールから排除することができ、オートメーションシステム由来のサブ経路(例えば210)は、RAもしくはFIFO待ち行列の一部として使用することができる。即ち、任意の二点間のサンプルの移動時間がカルーセルの移動時間に類似する(動作サイクルの一部よりも予想通り短い)既知の時間に限定することができる場合、トラック200は、任意のモジュール用の待ち行列の一部である可能性がある。例えば、カルーセルを利用するのではなく、モジュール205は、サブ経路210上のキャリアにおけるサンプルを利用することができる。試薬準備などの前処理ステップは、試験下のサンプルの到着前に実施することができる。いったん試験下のサンプルが到着すると、サンプルのうちの一つ以上の部分は、アッセイ用にキュベットもしくは他の反応容器内に吸引することができる。幾つかの実施形態においては、これらの反応容器は、トラック外のモジュール205内に含まれ、他の実施形態においては、これらの反応容器は、容易な作動を可能にするために、サブ経路210上のキャリア内に配置することができる。試験下のサンプルが、動作サイクルよりも長い間モジュールにある必要がある場合、もしくは複数サンプルが動作サイクル中にモジュールによって処理される場合、サブ経路210は、モジュール用の待ち行列として機能することができる。
【0133】
さらには、他のモジュールに現在配置され、まだ試験下ではないサンプルは、次の動作サイクル用にスケジュールすることができる。これらの次のサイクルのサンプルは、モジュール205用の仮想待ち行列内に存在するものとして考えることができる。モジュールは、トラック200上の任意のサンプル用に、任意の動作サイクル中にサンプルが到着するようにスケジュールすることができる。中央コントローラもしくはモジュール自身に関連付けられた複数のコントローラは、所定のサイクル中、サンプルに対する任意の競合を解決することができる。サンプルの到着時間の知識を予めモジュールに与えることによって、各モジュールはリソースを準備して、内部リソースをより効率的に割り当てるために試験もしくは試験の一部をインターリーブすることができる。この方法においては、モジュールは、大きな物理的バッファを利用することによってではなく、ジャストインタイム(ちょうど間に合う)方式でサンプルに対して動作することができる。効果は、所定のモジュールに対する仮想待ち行列が、当該モジュールを提供するサブ経路の物理容量よりも非常に大きくなる可能性があり、既存のスケジューリングアルゴリズムが使用できることである。事実上、従来技術のモジュールにおけるサンプルカルーセルを扱うように、各モジュールは、トラック200を扱うことができる。
【0134】
仮想待ち行列を使用することによって、幾つかの実施形態においては、複数モジュールが複数の待ち行列を有し、待ち行列内の単一の待ち行列もしくはサンプルを共有することができることを理解されたい。例えば、二つのモジュールがあるアッセイを実施するために装備される場合、アッセイを必要とするサンプルは、当該アッセイ用に仮想待ち行列に割り当てることができ、アッセイを扱うことが可能な二つのモジュール間で共有される。これによって、モジュール間の負荷バランスを可能とし、並列処理を容易にすることができる。反応容器がトラック200上のキャリア内に配置される実施形態においては、アッセイは、あるモジュールで開始し(例えば、準備された試薬および/もしくはサンプルが一緒にされる)、当該アッセイは別のモジュールで完了することができる(例えば、反応が別のモジュールで観察される)。複数モジュールは、幾つかの実施形態においては、サンプルを扱うためのマルチコアプロセッサとして事実上考えることができる。これらの実施形態においては、複数モジュール用のスケジューリングアルゴリズムは、所定の動作サイクル中のサンプルに対する競合を回避するために調整されるべきである。
【0135】
仮想待ち行列を使用することによって、サンプルが他のモジュールの仮想待ち行列内にある間に、モジュールはサンプルに対して動作できる。これによって、サンプルの低いレイテンシーを可能とする。なぜなら、物理待ち行列を通して待機させることなく、トラック200上に配置される各サンプルを、モジュールが試験を完了するのと同じくらい迅速に処理できるからである。これによって、任意の与えられた時間におけるトラック200上でサンプルキャリアの数を大きく減少させ、確実なスループットを可能とする。待ち行列もしくはサンプルをモジュールが共有することを可能にすることによって、負荷バランスは、システムのスループットを最大化するために使用することもできる。
【0136】
仮想待ち行列を利用する別の利点は、STATサンプルに動的に優先度を割り当てることができることである。例えば、主に静的な物理待ち行列の先頭へと、STATサンプルを飛び越えるために物理的バイパスを使用しなければならないのではなく、STATサンプルは、ソフトウェア内の次の動作サイクル用に任意の待ち行列の先頭に移動することができる。例えば、モジュールが次の動作サイクル中のアッセイ用にトラック200によって3つのサンプルが送達されることをモジュールが予測している場合、モジュールへとサンプルを割り当てる責任があるスケジューラは、STATサンプルで一つ以上のサンプルを単に置きかえることができ、次の動作サイクル中に処理するためのSTATサンプルをトラック200に送達させることができる。
【0137】
仮想待ち行列は、物理待ち行列の従来のルールを保証するために、ソフトウェア構造を利用することによって達成することができる。従来、サンプルが待ち行列によって提供されるステーションによって期待されるように振る舞うことができることを保証するために、待ち行列は、サンプルの物理的配置を利用する。論理待ち行列は契約として考えることができる。例えば、FIFO待ち行列は、ステーションとサンプル間のニ方向契約として機能する。サンプルは、サンプルに割り当てられた論理スロットが待ち行列の先頭に到達するときに、利用可能であることを承認する。一方、ステーションは、その位置に基づいて、順番にサンプルを処理することを承認する。これは、サンプルの論理位置が論理待ち行列の先頭に到達する前に、何か他のことを行うことによって、契約の結果をサンプルが維持することができることを意味する。サンプルが必要とされるまで待ち行列の先頭に物理的に近接することを必要とする代わりに、その前の各サンプルが処理されるにつれて、サンプルをサイドカー上に配置して、当該サンプルを前方に徐々に動かすことによって、従来の物理FIFO待ち行列は、待ち行列のこの警告を利用しない。仮想待ち行列を使用すると、サンプルは、それが必要とされるまで、器具の相互作用位置に物理的に近接する必要がない。したがって、サンプルが当該位置に物理的に移動することができる前に器具がサンプルを利用可能になる必要がない限り、サンプルは、器具用の相互作用点に到達することが物理的に可能になる前に、論理待ち行列内に配置されてもよい。FIFO待ち行列に対して、サンプルが必要とされるときの確定可能性は、保証するためのプロセッサ用にこれを顕著に単純にすることができる。
【0138】
ランダムアクセス待ち行列は、やや異なって振る舞う。ランダムアクセス待ち行列においてサンプルと器具間に形成された契約は、サンプルが器具による要求によって利用可能になることを承認することである。純粋なランダムアクセス待ち行列においては、器具は、何の交換も保証しない。しかしながら、幾つかの実施形態においては、分析器内の基本的ワークフローは、ランダムアクセス待ち行列がサンプルにいつアクセスする必要があるかについて、幾つかの制限を提供するために調査することができる。例えば、ブランチ(枝)実行を含みうるソフトウェア命令とは異なり、分析器内の典型的なワークフローは、結果として、前のステップの結果に基づいて変化する依存性ステップ(例えば、試験)を生じない。試験順序が試験の結果に依存する実施形態においては、試験とその後の試験用の必要性の間の時間の量は、オートメーションシステムがサンプルを適切に扱うことを可能にするのに十分であってもよい。この方法においては、サンプルが論理ランダムアクセス待ち行列内にある間に、待ち行列の先頭の物理位置においてサンプルがいつ必要とされるかの制限が存在してもよい。これは、サンプルがランダムアクセス待ち行列の先頭で必要とされうる前に、オートメーション内でサンプルを扱うためのオプションを提供してもよい。
【0139】
同様に、幾つかの実施形態においては、ステーション内の処理は、予めスケジュールされた幾つかの器具サイクルである可能性がある。これは、分析器内のワークフローを方向づけるプロセッサが、サンプルが物理的に処理できるよりも速く動作できるためである。例えば、スケジューリングアルゴリズムは、ミリ秒内にプロセッサによって完全に分析できる分析器内のワークフローのモデルを利用し、一方、実際のワークフローにおいて分析器は数分の時間がかかることがある。したがって、種々の実施形態においては、ランダムアクセス待ち行列は、完全にランダムアクセスではなく、器具の各サイクルで必要とされうるランダムアクセス待ち行列内のサンプルのアイデンティティは、ランダムアクセス待ち行列内のサンプルのサブセットのみに限定されてもよい。例えば、10サンプルを有するランダムアクセス待ち行列は、サンプルが待ち行列内に配置されるか、待ち行列の先頭に物理的に近接した位置から離れてオートメーションシステムによって動かされる前に、判定されてスケジュールされうる、任意の与えられた動作サイクル中に、5サンプルのうちの一つだけを必要としてもよい。
【0140】
FIFO待ち行列は、以下のワークフロー特性を有し、仮想FIFO待ち行列を操作するソフトウェアにおいて考えられてもよい。
待ち行列内のサンプルは、一定の順序でモジュールに対して利用可能にされる
いったんサンプルが利用可能にされると、再度要求されない
サンプルはいったん先頭に到達すると、待ち行列から自動的に除去される
待ち行列内のN番目のサンプルは、少なくとも数秒間(N×ステーションサイクル時間)モジュールによって要求されない
優先度を有するサンプルを処理するために、待ち行列全体がフラッシュされるべきである
【0141】
ランダムアクセス待ち行列は、以下の品質を有し、仮想ランダムアクセス待ち行列を操作するソフトウェアにおいて考えられてもよい。
待ち行列内のサンプルは、任意の順序でモジュールによって要求することができる
サンプルは複数回要求されてもよい;モジュールは待ち行列からサンプルを明確に解放しなければならない
待ち行列内の任意のサンプルは、モジュールによって要求することができ、要求されたサンプルは、要求するステーションのサイクル時間内にモジュールへと利用可能にされなければならない
優先度を有するサンプルは、任意の時間に待ち行列に追加することができる(しかしながら、既に開始されたスケジュールされた試験が処理されるまで、優先度を有する試験は分析器によって処理される必要がない)
【0142】
中央コントローラ440などのプロセッサ上で動作するソフトウェアは、それらの待ち行列に配置されうる各サンプル用のタイミング条件を決定するために、ローカル待ち行列を制御する他のプロセッサと通信することができる。オートメーションシステムおよびローカル待ち行列のタイミングの知識を利用することによって、ソフトウェア管理仮想待ち行列は、それが準備されるまで、待ち行列を利用するステーションの物理的位置へとサンプルを方向づけることなく、待ち行列へとサンプルを割り当てることができる。例えば、中央コントローラ440は、分析器内で一つの位置にFIFO待ち行列の先頭において、35秒内にサンプルが必要とされることを理解している場合、コントローラ440は、35秒間をおいて、サンプル用の他のタスクをスケジュールしてもよい。同様に、中央コントローラ440が、5機械サイクルで、ランダムアクセス待ち行列に追加されるサンプルが必要とされることを知る場合、サンプルが5機械サイクル内で利用可能にできることを現在のトラフィック制限が保証する時はいつでも、コントローラ440は、ローカルランダムアクセス待ち行列へとサンプルを追加してもよい。同様に、オートメーションシステムが十分に速いとすると、サンプルがランダムアクセス待ち行列の先頭において要求される同一の機械サイクル中に。サンプルに対してアクセスを要求する他のステーションがない限り、ソーシャルコントローラ440は、オートメーションシステムの他の何れの場所にあるときでも、サンプルがランダムアクセス待ち行列用の必要性を満足できることを保証することができる。
【0143】
仮想待ち行列は、各ローカルモジュール用に各ローカル待ち行列へとサンプルを割り当てる中央コントローラを利用することによって支援されてもよい。中央コントローラ上で動作するソフトウェアは、その後、どのサンプルがどの待ち行列へといつ配置されるかを規定できる。これによって、中央オーソリティが任意の可能性のある競合を監督することも可能にする。中央コントローラは、オートメーショントラック外にサンプルを配置する責任がある、サンプル取扱モジュールもしくはサンプルマネージャモジュールとともに機能することもできる。これは、システム上の全体トラフィックを制限するために有用であり、必要な性能が維持されることを可能とする。これによって、仮想待ち行列の契約を満たすために、ステーションへとサンプルを確実に動かすことを可能にする。
【0144】
システムレベルルーティングソフトウェアは、処理モジュールへとサンプルを分配することによって、できる限り迅速に、サンプル全てを処理しようと試みることができる。このソフトウェアは、待ち行列の先頭と関連付けられたシステムにおける位置(例えば、任意のステーション用のピペットもしくは取り扱いアームの位置)へと、現在の位置からサンプルを確実に動かすために必要な最大量の時間のモデルを維持することができる。
【0145】
幾つかの実施形態においては、このモデルは、ステーションの論理クルーに配置された任意のサンプルがIVD装置内の現在位置から、1システムサイクル時間より短い時間で動かされうる、オートメーション機構を利用することによって簡略化することができる。システムサイクル時間は、サンプルがシステム内の位置間で移動する速度を定義する、オートメーションシステムによって使用される時間単位とすることができる。即ち、システムサイクル時間は、サンプルが引き続きスケジュールされる、トラックシステム内の任意の点間での最大通過時間を識別する。例えば、トラックシステム上の任意の点間の最大距離(サンプルが確実にスケジュールされる)が25mである場合、オートメーションシステム用の動作サイクル時間は20秒である。全サンプルがオートメーションシステムの動作サイクル内に到達できる距離(例えば、25m)のままである場合、オートメーションシステムは、サンプルが要求に応じて(例えば、サンプルが論理待ち行列の先頭に到達するとき)待ち行列の先頭に配置することができることを保証することができる。
【0146】
モジュールサイクル時間は、所定のサンプルの処理を完了するために、モジュール/ステーションによって必要とされる量の時間である。オートメーション通過時間は、ある位置から別の位置へサンプルが動くために必要な量の時間である。例えば、サンプルが分析器用の連続的システムサイクル中に、二つのモジュールステーションによって使用されるようにスケジュールされる場合、中央コントローラは、モジュールサイクル時間と通過時間の和がシステムサイクル時間よりも短いことを保証する必要がある。サンプルが要求される前に何もしていない場合、中央コントローラは、通過時間がシステムサイクル時間よりも短いことを単に保証する必要がある。これによって、当該待ち行列内の任意のサンプルをステーションが要求することを可能とし、サンプルがステーションに物理的に近接しているか、数メートル離れているか否かに関わらず、もしくは別のステーションによって処理されているか否かにも関わらず、サンプルが必要とされたときに到着することを知る。本実施例においては、要求するステーションは、各システムサイクルで単一サンプルを要求する。
【0147】
このバランスは、要求するステーションの最小サイクル時間(例えば、ステーションがサンプルを要求する速度)が、オートメーションシステムの動作サイクル時間と実質的に同一か、オートメーションシステムの動作サイクル時間よりも長いときに生じる可能性がある。オートメーションがステーションへとサンプルを通過することを可能にするために、要求するステーションがオートメーションシステムのコントローラに、システムサイクル時間のうちの十分短い時間でサンプルを必要とすることを知らせる限り、このバランスは維持することができる。
【0148】
これは、最大許容可能待機時間(例えば、サンプルがオートメーションシステムから要求されるときとサンプルが必要とされるときの間の許容可能な最大量の時間)がオートメーションシステムサイクル時間(任意のさらに必要とされる通過時間を付け足し、また、オートメーションシステムが大きすぎて、システムサイクル時間が前のステーション用の最大モジュールサイクル時間より長いことを保証できない実施形態においては、必要とされる通過時間を付け足す)と同一かそれより長いときに達成されてもよい。例えば、ステーションは、数モジュールサイクル先の時間に(もしくは、少なくとも単一のシステムサイクルの開始時に、オートメーションシステムで必要とされる距離をサンプルが通過することが可能な十分な時間で)必要とされる予定のサンプルのアイデンティティを知ることができる。このバランスが中央コントローラの制御によって満たされる場合、ソフトウェア内の論理待ち行列に配置される輸送機構上の任意のサンプルは、FIFOもしくはRA待ち行列のいずれかにおけるサンプル用に予め定義された要件を満たすことができる。これは、いずれかのタイプの仮想待ち行列の物理的実装が、モジュールの前において単純に単一の処理位置にあることを意味する。“待ち行列内”のサンプルの残りは、幾つかの実施形態においては、輸送機構上の何れの場所にも存在する可能性がある。多くのモジュールを有する大規模オートメーションシステムなどの、幾つかの実施形態においては、待ち行列内のサンプルは、付近のモジュール内の何れの場所にも存在する可能性があり、システム全体に対する通過時間がより大きいときでさえも上述された通過時間要件を維持することを可能とする。これによって、付近のモジュールがワークセルとして機能し、オートメーションシステムのある側から別の側へとサンプルが進行し続ける必要なく、その待ち行列内でサンプルを共有するため、よりスケーラブルな(拡大縮小が容易な)システムを可能とすることができる。
【0149】
ステーションによる要求によって、サンプルが待ち行列の先頭に物理的に配置できることの保証を維持することによって、中央コントローラは、オートメーションシステム自体を、論理待ち行列内のサンプル用の絶えず移動する物理空間として利用することができる。中央コントローラは、これらの制約を保証するソフトウェア構造を維持することができ、これらの制約が満たされることを保証するために待ち行列へとサンプルを割り当てる責任がある。中央コントローラは、異なる待ち行列の扱いが異なる可能性がある。例えば、デキャッパなどのサンプル取扱ステーションは、サンプルの或る順序を必要としないFIFO待ち行列である可能性がある。したがって、中央コントローラは、任意の合理的な順序でこの待ち行列の先頭へとサンプルを送信し、それによって、サンプルが待ち行列内へと配置される他のステーションによるその後の取り扱い用に、サンプルを中央コントローラが準備することを可能にする。同様に、中央コントローラは、一時的な物理記憶装置として機能するために、オートメーションシステム内で適切な位置へと、何もしていないが待ち行列内で順番を待つサンプルを動かすことで充電することができる。これは、アクティブトラックセクション、専用記憶領域などである可能性がある。
【0150】
サンプルの物理位置から待ち行列用の論理モデルを区別することによって、待ち行列はソフトウェア内で管理されてもよい。ソフトウェア内で待ち行列を管理することは、従来の物理待ち行列で実用的ではない、ある利点を提供する。例えば、ソフトウェア待ち行列は、即座に管理され、再配列されてもよい。これによって、待ち行列を管理するプロセッサが、待ち行列内のサンプルのアイデンティティを判定し、研究室情報システムからこの情報を要求することなどによって、サンプルを扱うことを必要とされる試験パネルを調査し、各サンプル用の試験パネルによって必要とされるステップを実行するためのステーションの利用可能性を判定し、性能を最適化して任意のステーションの休止回数を最小化するために、各サンプル用の試験およびステップをインターリーブし、試験ステーションにおけるサンプルの物理的到達の前に、試験用に必要な任意の試薬の準備をスケジュールし、それによって各サンプル用の適切な待ち行列を決定するか、分析器内の各ステーションによってサンプルが何時必要とされるかを概算するかもしくは決定することを可能にする。このプロセス全体は、ミリ秒以下の時間で行うことができる。
【0151】
STATサンプルが到着すると、待ち行列は、当該待ち行列において保留中のサンプルの任意の物理的移動を必要とせずに、STATサンプルのより高い優先度に適応させるために迅速に再配列されてもよい。ソフトウェアにおいては、所定のステーションでサンプルが必要とされる、将来におけるサイクルを変更すること以外に、サンプルに物理的に影響を及ぼすことなく、サンプルに対して適用されるステップを再配置することができる。例えば、待ち行列のサイズは、ソフトウェア内で動的に構成可能であってもよい。従来技術のFIFO待ち行列は、その前のサンプルの前の待ち行列の先頭にSTATサンプルを移動することを可能にするために、サンプルの物理的順序を変更するために、待ち行列を物理的にフラッシュすることを必要としたが、ソフトウェア内に保持されたFIFO待ち行列におけるサンプル順序の変更は、些細な問題である。各サンプルに関連付けられた待ち行列内の位置は、一つによって単にシフトすることができ、STATサンプルが、処理されるべき待ち行列内の次の位置を占めることを可能とする。同様に、カルーセルなど、その中に含まれたサンプルへのランダムアクセスを可能とするために使用される物理的システムの拡張性問題によって、物理的制約に基づいて、ランダムアクセス待ち行列は、従来技術において典型的には制限されていたが、ソフトウェア内に保持されるランダムアクセス待ち行列は、動的に構成可能であってもよい。例えば、ランダムアクセス待ち行列は、STATサンプルが到着すると、通常の優先度の5つのサンプルを有してもよい。6つ目の位置は、STATサンプルに適応させるために、ソフトウェア内の待ち行列に生成されてもよい。待ち行列を保持し、かつ、待ち行列内のピペットとサンプルの間の相互作用をスケジューリングするプロセッサは、STATサンプルの存在に対して変更することができ、待ち行列内でアクセスされるべき、より高い優先度のサンプルへとSTATサンプルを、プロセッサがスケジュールすることを可能にする。ピペットは、時間的にずらされることがある当該サンプルに物理的に影響を及ぼすことなく、待ち行列内の通常の優先度のサンプルの前に、STATサンプルを要求してもよい。
【0152】
図11は、サンプルマネージャ604、第一の分析器ステーション610、デキャッパステーション620および第二の分析器ステーション630の4つのモジュールを含む、例示的な分析器システム600を示す。ステーションは、個々のステーションを処理する複数のサイドカーを含むオートメーショントラック602によって処理される。分析器600内で、複数のサンプルAからPが処理される。物理的バッファと仮想待ち行列の組み合わせが、サンプルの処理を容易にするために使用できる。システム600で使用される待ち行列の選択は、単に例示的なものにすぎず、仮想待ち行列および物理的バッファリングの任意の組み合わせが使用されうることを理解されたい。幾つかの実施形態においては、全ての待ち行列が仮想的である。サンプルマネージャ604は、サンプルを格納するために使用されるオートメーションシステム外の物理的空間の利用を示す。サンプルIからPは、トレイ606内に配置され、当該サンプルを順序付けし、長期間の格納用に保持することを可能にする。サンプルのトレイは、オペレータによってサンプルを操作するための単純な機械的インターフェイスを提供する分析器内に配置され、かつ分析器外へと取り出されてもよい。サンプルマネージャ604は、任意の合理的な方法でこれらのトレイ内に格納されたサンプルを処理し、オートメーショントラック外のランダムアクセス待ち行列もしくはFIFO待ち行列としてこれらを効率的に扱う。サンプルは、これらのトレイから除去されて、処理を開始するためにオートメーショントラック上に配置されてもよい。処理を受けるサンプルは、トレイ606内の位置へとサンプルマネージャ604によって動かされてもよい。したがって、トレイ606は、オートメーショントラック602およびローカルサイドカー上にあるバッファおよび仮想待ち行列から区別可能であってもよい。本実施例においては、サンプルHは、サンプルマネージャ604によって最近処理されたものであり、サンプルHをオートメーショントラック602上に配置する。
【0153】
図11に示された状態において、システム600は、オートメーショントラック602上にサンプルAからHを含み、サンプルIからPはトレイ606内にあり、サンプルマネージャ604による処理を待っている。
【0154】
分析器610は、本明細書で議論された原理を利用することによって仮想FIFO待ち行列612を保持する。本実施例においては、仮想FIFO612は、仮想FIFO612の論理構造内に配置された3つのサンプル(サンプルF、JおよびK)を含む。サンプルCは、仮想FIFO612内の位置614(待ち行列の先頭に対応する)に配置され、これは、サンプルが分析器610によって現在処理されていることを意味する。示されるように、サンプルCは、分析器ステーション610と相互作用するのに適した位置で、分析器610と関連付けられたサイドカー上に存在する。例示する目的のために、サンプルJおよびKは現在、オートメーショントラック602上にはない。しかしながら、サンプルJおよびKは、少なくとも更なる2システムサイクル先には、分析器610によって必要とされない。サンプルCおよびFは、FIFO待ち行列のルールにしたがって、最初に処理されなければならない。種々の待ち行列内のサンプルをスケジュールする(サンプルの追加もしくは除去を含む)コントローラ(中央コントローラ440など)は、この関係に注目する。コントローラ440は、サンプルJおよびKが次の2システムサイクル内に、オートメーショントラック602上で処理するために利用可能であることを判定するために、サンプルマネージャ604と通信することができる。したがって、サンプルマネージャ604が通常のパラメータ内で動作する限り、分析器610は、時間通りにこれらのサンプルにアクセスすることができる。したがって、仮想FIFO612は、分析器610が将来の相互作用のためにサンプルを論理的にスケジュールすることを可能とする。分析器610は、サンプルJおよびKがオートメーショントラック602上に現在位置していないことを知りえない。幾つかの実施形態においては、システム600は、ある程度のフォルトトレランス(故障許容性)を維持し、それによって、サンプルマネージャ604が、スケジュールされたようにサンプルJもしくはKを提供できない場合には、分析器610は、フォルトトレラントモードにおいてサイクルを単にスキップしてもよい。これは物理待ち行列よりもより効率的に仮想待ち行列を利用する典型的な利点によって克服される、小規模かつ一度の遅延を引き起こす可能性がある。
【0155】
デキャッパ620は、物理待ち行列622を保持する。この物理待ち行列は、オートメーションシステム内のサンプル用のバッファとして機能する。示されるように、サンプルBは、物理待ち行列の先頭における論理位置624において、キャッパ620に関連付けられたサイドカー上に存在する。一方、サンプルBは、当該サイドカーによって作成される物理バッファの一部として、サイドカー上に存在もする。サイドカーおよび物理待ち行列622は、一対一対応を有し、物理待ち行列622が、論理バッファおよび物理バッファの双方であることを可能にする。幾つかの実施形態においては、デキャッパ620は、任意の保証された性能要件なく動作し、デキャッパ620が、任意の適切なペースかつ任意の順序でサンプルを消費することを可能とする。一方、物理バッファ622内のサンプルは、任意の他の仮想待ち行列内にスケジュールすることができない。なぜなら、コントローラ440は、待ち行列内にサンプルを配置する黙示的契約を満たすことができることを保証できないからである。
【0156】
分析器630は、仮想ランダムアクセス待ち行列632を保持する。分析器630は、トラック602外のサイドカーによって処理されてもよい。本実施例においては、分析器630は、サンプルAに対するステップを実施し終えたところである。したがって、待ち行列の“先頭”に対応する(例えば、サンプルが現在利用されている)物理スロット634は、占有されていない。なぜなら、サンプルAが当該物理位置を離れ、待ち行列632の仮想ランダムアクセスプールに戻るからである(例えば、待ち行列632の論理プールおよびトラック602上のあらゆる物理位置で、コントローラ440はサンプルを配置する)。一方、分析器630は、別のサンプルであるサンプルDを要求する。
【0157】
仮想待ち行列632は、本実施例においては、トラック602上で全て容易に利用可能である4つのサンプルを含む。仮想待ち行列632は、分析器630との相互作用のために、物理位置634に向かって位置を移動すべき、次のサンプルのアイデンティティ636も保持する。位置634は、ピペットに対応する位置であって、サンプルの一部を分析器630が吸引することを可能にする。本実施例においては、サンプルAは、仮想待ち行列632の通常のプールへと戻って、トラック602上に配置され、位置634を離れる。サンプルDは、中央コントローラ440との通信によって、分析器によって要求される。したがって、サンプルDは、論理位置636を占有し、次のサンプルが処理されるときに、それを識別する。幾つかの実施形態においては、各分析器内のローカルプロセッサは、ローカル待ち行列判定を行うことを担当し、一方、コントローラ440は、待ち行列の要件を満たすための物理位置へとサンプルを移動させ、かつ各待ち行列へどのサンプルを配置するようにスケジュールするかを選択することを担当する。
【0158】
本実施例においては、トラフィック管理を簡略化するために、二つの仮想待ち行列内にサンプルは配置されていない。これは、分析器610と分析器630との間に競合がないことを保証するための簡単な方法である。例えば、サンプルFが仮想待ち行列612および632の双方に配置された場合、同一のシステムサイクル中に、サンプルFを双方の分析器610および630が要求することがあり得るため、競合を生成する。幾つかの実施形態においては、サンプルは複数の待ち行列に配置されてもよいが、待ち行列はフォルトトレラントである必要があり、競合が生じる場合、サイクルをモジュールがスキップすることを可能とするか、または競合を調停するソフトウェアが適用されなければならない。例えば、プロセッサ440上で動作するソフトウェアは、仮想FIFO612の再構成を交渉でき、仮想待ち行列632に対して優先度を与える(もしくは、その逆)。分析器610は、これらのサンプルのいずれかを要求する前に、サンプルFおよびJのために準備をするのに十分な機構を有してもよい。したがって、分析器610は、中央コントローラ440の要求で、仮想FIFO612の順序における変更を許容できる可能性がある。
【0159】
コントローラ440などのプロセッサ上に保持されるスケジューリングルールは、待ち行列間の競合を回避するために利用することができる。待ち行列は、他の待ち行列に対する優先度を与えることができ、例えば、コントローラ442が、サンプルがどの待ち行列へと最初に配置されるべきかを選択することを可能とする。ワークフローは、これを規定してもよい。例えば、ルールは、処理ステーションに関連付けられた待ち行列へとサンプルを配置する前に、必要な場合、処理ステージに関連付けられた待ち行列を識別するソフトウェア内に確立されてもよい。ルールは、サンプルが複数の待ち行列内に配置できるか否か、および、サンプルを複数待ち行列に配置するべきときに、競合が起きたときにすべきことを規定することもできる。サンプルが同時に複数待ち行列内に存在することを許可される実施例においては、あるルールおよびソフトウェアは、競合を最小化し、かつシステム内で発生しうる競合がエラーを扱わないように保証するための要件を識別できる。例えば、各待ち行列は、行わなければならない保証の識別と同様に、サンプル用のある設定および保持時間を有するものとして定義できる。例えば、重要な待ち行列は、コントローラ440が要求に応じて待ち行列のサンプルを送達できる絶対的保証を必要とするものとして識別できる。一方、他のステーションはより許容的であってもよい。例えば、デキャッパに支援される仮想待ち行列は、デキャッパがサンプルを受け取る順序は気にせず、現在要求されたサンプルが利用可能ではないとき、サンプルの交換を要求することを可能とする。
【0160】
ソフトウェア内のルールを利用することによって、待ち行列は動的に構成可能であってもよい。ルールは、ステーションが如何にサンプルと相互作用するかを変更し、研究室および現在の状態の要件に対処するために、遠隔構成もしくは構成の変更を可能とする。例えば、分析器630は、研究室の1シフト中に、ある試験を実施するように構成されたとき、仮想待ち行列を有するように構成されるが、その後、研究室の別のシフト中に、仮想FIFO待ち行列を使用するように構成されてもよい。同様に、より効率的なスケジューリングアルゴリズムが開発されると、これらのアルゴリズムは、ハードウェアを変更する必要なく、ソフトウェアアップデートを通して、待ち行列が相互作用する方法を変更するために利用することができる。
【0161】
ルールは、待ち行列間の競合を回避するための誘導を提供するために、分析器内のワークフローを利用してもよい。例えば、システムの全体のスループットは、前処理ステーション用のFIFO待ち行列、および分析器試験ステーションなどの処理ステーション用のFIFO待ち行列へと同時にサンプルを配置することによって減少することがある。ルールは、これらの待ち行列間の偶発的な関係用の必要性を識別するために利用することができる。例えば、サンプルがデキャッパによって処理された後で、分析器FIFO待ち行列の先頭に到達すると仮定すると、サンプルは、サンプルが待ち行列の先頭の近くにあるように、デキャッパステーションのFIFO待ち行列に配置され、一方で、分析器ステーション用のFIFO待ち行列内にも配置される。これは、キャップなしで分析器ステーションにサンプルが到着することを保証する。動作の順序を考慮することによって、サンプルがデキャップされたほぼ直後に処理されるように、サンプルは、これらの待ち行列の双方に配置されてもよい。これは、何もしていないサンプルが渋滞に加わるため、オートメーションシステム内のトラフィック量を最小限化するために有用である。競合を制限して、性能基準を保証するために、ルールを有する複数待ち行列へとサンプルを配置することによって、サンプルは、効率的に分析器内で扱われ、一旦オートメーションシステム内に配置されたら各サンプルの休止時間を最小限化する。
【0162】
複数のランダムアクセス待ち行列(もしくはFIFO待ち行列およびランダムアクセス待ち行列)にサンプルを配置することは、より挑戦的である可能性がある。これが達成されうる一方法は、共有されたサンプルに対して、フォルトトレラントを適用することである。例えば、待ち行列の保証(待ち行列内のサンプルが要求される任意の時刻に利用可能であること)は、同一の動作サイクル中に、二つのステーションがサンプルを要求する場合、破られることがある。幾つかの実施形態においては、ステーションは、この発生しうる競合を扱うように構成することができる。幾つかの実施形態においては、ステーションは、別のステーションと競合する場合、その要求を単に延期して、もし実行可能な場合には、処理用の次のサンプルへと移動する。幾つかの実施形態においては、ステーションは、サイクルを単にスキップして、競合したサンプルを受け取るためにさらなるサイクルの間待機する。これは、競合が稀な場合のシステムに適していることがある。サンプルを複数の待ち行列で共有することを可能にする性能全体の利点は、競合によって欠落したサイクルの一時的な非効率性を軽減する性能利点を概して提供してもよい。中央コントローラは、これらの競合を解決するための仲裁者として機能することができる。幾つかの実施形態においては、中央コントローラは、複数の仮想ランダムアクセス待ち行列(もしくは単一の仮想ランダムアクセス待ち行列および任意の他の待ち行列)にサンプルが現れないことを保証することによって、これらの競合を全体として回避することができる。
【0163】
幾つかの実施形態においては、サンプル用の必要性の先進のモデル化は、複数の待ち行列間で共有されるサンプルの競合を解決することができる。いったんロット(例えば新規トレイ)内のサンプルが識別されると、分析器用の中央コントローラは、研究室オートメーションシステムからこれらのサンプルの各々のために、試験パネルを検索することができることを理解されたい。サンプル用の試験パネルは、ロット内の全サンプルを処理するために実施しなければならない全タスクのロードマップを提供する。中央コントローラは、その後、マルチモジュール分析器内のどのステーションが試験パネルにおいて各ステップを達成できるかの識別を検索することができる。分析器は、その後、同時に複数のステーションに複数のサンプルがあることを必要とせずに、複数のステーションを利用する全試験パネルを適応させるスケジュールを識別するために、スケジューリングアルゴリズムを実行してもよい。一ステーション内に遅延を引き起こす一サンプル内のエラーが、サンプルを再スケジューリングすること、もしくは一つ以上のステーションのフォルトトレラント休止時間を可能とすることによって克服できるように、このスケジュールは、オートメーションシステム内の通過時間を考慮し、バッファおよび不測の事態をスケジュールへと組み入れる。
【0164】
サンプルが処理される前に、ソフトウェア内で計算されてモデル化されうる、予め決められたスケジュールを利用することによって、中央コントローラは、サンプルがスケジュールされて任意の待ち行列に配置される前に、競合をモデル化して回避することができる。同様に、ロットの試験動作中に、スケジュール由来の任意の逸脱が中央コントローラへと報告され、中央コントローラが逸脱を処理するためのスケジューリングアルゴリズムに戻ることを可能とする。例えば、第一の試験ステーションが、一つ以上の動作サイクルを回復するのに要求するエラーに遭遇する場合、中央コントローラは、この休止時間を処理する新規スケジュールを決定することができる。例えば、新規スケジュールは、付近のステーションが遅延ステーションの冗長な特性を有することに言及してもよい。遅延ステーション用の待ち行列に以前配置されたサンプルは、ソフトウェア内の余分なステーションに関連付けられた待ち行列に配置されてもよい。この方法においては、サンプルは、ある物理待ち行列から別の物理待ち行列へとサンプルを物理的に動かすことを必要とすることなく、1秒の何分の一かでたちまち、再ルーティングされてもよい。サンプルを再スケジュールするために必要な時間は、オートメーショントラックの物理的移動ではなく、プロセッサによって制限されるだろう。この再ルーティングおよび再スケジューリングは、オートメーショントラック上でサンプルが移動し続ける間に生じる可能性がある。
【0165】
幾つかの実施形態においては、本明細書で記述されたスケジューリングタスクは、複数のプロセッサ間で分割することができる。例えば、中央コントローラは、待ち行列へとサンプルを割り当てる責任があって、ステーションもしくはモジュールに関連付けられたローカルプロセッサは、当該待ち行列を管理することができる。サンプルをスケジューリングして、ソフトウェア内の待ち行列へとサンプルを配置するうえで、中央コントローラを支援するために、ローカルプロセッサは、それらの待ち行列内のサンプルの処理用に予期されるスケジュールを報告してもよい。FIFO待ち行列のために、この情報はかなり良好に定義された順序として報告され、待ち行列によって必要とされるときにいつサンプルが利用可能になるかの正確な考えを中央コントローラが有すること可能とする。ランダムアクセス待ち行列は、幾つかの実施形態においては、中央コントローラに正確にこの情報を報告してもよい。幾つかの実施形態においては、ランダムアクセス待ち行列コントローラは、要件と釣り合う方法で、情報を報告することもできる。例えば、サンプルがステーションによって提供されるべきある免疫アッセイを必要とする旨の通知を受信すると、当該ステーション用のローカルプロセッサは、試験用の試薬を準備するのに5マシンサイクルかかり、その後、次の5マシンサイクル内にある点において免疫アッセイ用のサンプルを必要とすることを、中央コントローラに報告することができる。中央コントローラは、サンプルを処理用の他の仮想待ち行列に配置することを可能とするためにこの情報を利用し、免疫アッセイを処理するステーション用のランダムアクセス待ち行列マネージャによって報告される制約を処理する。
【0166】
図12は、オートメーションシステム内の仮想待ち行列を利用するための例示的なステップを示す。方法650は、分析器内の一つ以上のプロセッサによって実行されうるステップを含む。例えば、中央コントローラは、これらのステップのうちの幾つかもしくは全ての責任を持つことができる。ステップのうちの幾つかは任意であってもよい。ステップのうちの幾つかは、分析器内のローカルモジュールプロセッサによって実行されてもよい。ステップ652において、プロセッサは、分析器内のサンプルのアイデンティティを受信する。これは、本明細書で記述された機構のうちの任意の機構を通して生じる可能性がある。例えば、サンプルがキャリアへと配置されるときに各サンプルの各バーコードが読みとられると、当該サンプル用のアイデンティティ或いは位置情報は、オートメーションシステムを監督するプロセッサへと通信することができる。ステップ654において、サンプルのアイデンティティを利用して、当該サンプル用に必要とされる試験パネルは、研究室情報システムもしくは他のデータベースから試験パネルを検索することによって決定することができる。ステップ656において、プロセッサは検索された試験パネルを解析し、各サンプル用に試験パネルを完全なものにするために必要な分析器内のステップを識別する。ステップ658において、プロセッサは、試験パネルを完全なものにするために必要なタスクをどのステーションが実施できるかを判定する。この情報を利用して、プロセッサは、処理するサンプルに対して制約を規定する機能的ルールを決定することができる。例えば、サンプルが免疫アッセイを必要とし、かつ単一の免疫アッセイステーションのみが利用可能である場合、プロセッサは、処理中にある点で当該ステーションにサンプルがルーティングされなければならないことを決定することができる。プロセッサは、ステップが生じなければならない順序を決定するために、試験パネルおよびワークフローのモデルも利用してもよい。例えば、プロセッサは、全サンプルが処理前にデキャップされなければならないことを決定してもよい。
【0167】
ステップ660において、プロセッサは、ステーションにサンプルおよびタスクを割り当てる。いったん必要とされるタスクが決定されて、各ステーションの特性が考慮されると、プロセッサは、必要性に特性を整合することができる。ステップ662において、プロセッサは、各モジュール用の所望の待ち行列を決定する。所望の待ち行列は、ランダムアクセスもしくはFIFOなどの待ち行列のタイプの識別、各待ち行列に配置されるサンプルの順序および任意の時間制約の識別を含むことができる。いったんスケジュールが容認されると、これらの各待ち行列のモデルは、プロセッサに関連付けられたメモリに保持することができ、仮想待ち行列を生成する。各仮想待ち行列は、プロセッサによって割り当てられた複数のサンプルを有し、一つ以上のプロセッサは、当該待ち行列におけるサンプルの順序をスケジュールすることができる。仮想待ち行列においてサンプルを管理する実施例は、
図11における仮想待ち行列に見ることができる。
【0168】
ステップ664において、プロセッサは各モジュール用のモジュールサイクル時間を決定する。これは、考慮する必要のある任意の通過時間制限を識別するため、また、各待ち行列内でサンプルがいつ処理されうるかを決定するために使用されてもよい。モジュールサイクル時間は、少なくとも一サンプルを処理するためにモジュールによって必要とされる時間の長さを含んでもよい。ステップ666において、タイミングおよび待ち行列割り当て情報は、複数のステーション内の全サンプルの全体スケジュールを決定するために考慮される。これは、どのサンプルがどこで使用されるかを決定するために有用である可能性がある。幾つかの実施形態においては、スケジュールされたタスクは、オートメーションシステムおよびステーション用に次の幾つかの動作サイクル内で複数のステーションによって実行されるべき全タスクを予め決定してもよい。この方法においては、全待ち行列は、予測通りに処理することができる。例えば、ステップ666において決定されたタスクのスケジュールに基づいて、従来のランダムアクセス待ち行列はあらゆる任意の順序でサンプルにアクセスしてもよいが、仮想ランダムアクセス待ち行列がサンプルを使用する順序は、サンプルがステーションに物理的に近接して配置される前に、予め適切に決定されてもよい。
【0169】
ステップ668において、プロセッサは、ステップ666において決定されたスケジュールされたタスクが任意の発生しうる競合を含むか否かを判定する。例えば、プロセッサは、システムの通過時間制約が、サンプルがスケジュールを満たすことを可能にするか否かを判定してもよい。プロセッサは、任意の二つのステーションが同時にサンプルを必要とするか否かも考慮してもよい。もしそうである場合、方法650はステップ662へと戻って、異なるスケジュールを決定する。例えば、各モジュールもしくはステーションに優先度レベルを割り当てて、競合を解決するスケジュールを選択するために優先度レベルを比較することによって、このステップの間、競合は解決されることがある。ステップ670において、プロセッサは決定されたスケジュールが性能閾値を満たすか否か、もしくは最適なスケジュールと考えられてもよいかを任意で判定してもよい。例えば、性能閾値は、各ステーション用のダウンサイクルの最大数、サンプル用の最大ターンアラウンド時間、もしくはスケジュールが許容可能か否かを判定するうえで有用でありうる任意の他の性能基準を定義してもよい。スケジュールが許容可能ではない場合、方法650はステップ660へ戻る。スケジュールが許容可能である場合、ステップ672において、プロセッサはスケジュールおよびメモリを格納する。スケジュールはその後、サンプルのその後の物理的処理において使用される。
【0170】
ステップ674において、スケジュールに基づいて各モジュール用に決定された待ち行列を満たすために、プロセッサは、オートメーションシステム内の各サンプルの配置を容易にする。各サンプルは、スケジュールを満たすために必要な通過時間基準を満たす位置でオートメーションシステム内に配置される。通過時間、トラフィックパターン、モジュールサイクル時間などはすべて、ステップにおいて考えられてもよい。ステップ676において、オートメーションシステムは、スケジュールに従って、決められた時間に各モジュールへサンプルを提供する。ステップ678において、エラーがない場合には、ステップ674および676を繰り返し、スケジュールを実現して、サンプルを処理するために必要なステーションに物理的に近接した位置の内外へとサンプルを動かす。エラーがステップ678において生じる場合、プロセッサは、遭遇したエラーを克服する仮想待ち行列を使用する新規スケジュールを開発するために、ステップ660から672までを繰り返してもよい。エラーは、例えば、物理的妨害、故障、予期されないサンプルエラーなどによる、ステーション用の予期されない欠落したマシンサイクルを含んでもよい。
【0171】
本発明の実施形態は、既存の分析器およびオートメーションシステムと統合されてもよい。キャリアは、任意の意図された分析器もしくは器具との使用に適したレイアウトおよび物理的構成を含む、多くの形状および寸法で構成されてもよいことを理解されたい。例えば、幾つかの実施形態においては、キャリアはオートメーショントラック周囲で複数のサンプルを運搬するための複数のスロットを含んでもよい。例えば、一実施形態は、一つ以上の輸送トラック内に複数のスロットを有するキャリアのチューブ保持部分の物理的レイアウトを含んでもよい。各ラックは、複数スロット(例えば、5以上のスロット)を含み、各スロットはチューブ(例えば、サンプルチューブ)を保持するように構成されてもよい。
【0172】
本発明は例示的実施形態を参照して記述されてきたが、それに限定されることはない。当業者は、多数の変更および改変が本発明の望ましい実施形態に対してなされてもよいこと、ならびに、当該変更および改変は、本発明の真の趣旨から逸脱することなくなされてもよいことを理解するであろう。したがって、添付の請求項は、本発明の真の趣旨および範囲内にある全ての均等な変形を包含するように解釈されることを意図される。