(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525900
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】ムライトと、チアライト及び/又はアーマルコライトと、バデレアイト及び/又はスリランカイトとから成る鉱物学的相を含む酸化アルミニウムをベースとする焼結成形砥粒、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20190527BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
B24D3/00 340
B24D3/00 320A
C09K3/14 550D
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-20984(P2016-20984)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-144864(P2016-144864A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】10 2015 101 709.1
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2016 100 196.1
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514131294
【氏名又は名称】センター フォア アブラシブズ アンド リフラクトリーズ リサーチ アンド ディベロップメント ツェー アー エァ エァ デー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−アンドレ アラリー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヒルシュ
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/060213(WO,A1)
【文献】
特表2003−510418(JP,A)
【文献】
特表平08−502304(JP,A)
【文献】
米国特許第6287353(US,B1)
【文献】
米国特許第3387957(US,A)
【文献】
特開昭62−192480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
C09K 3/14
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結砥粒を製造する方法であって、下記工程:
‐ 85質量%〜95質量%のアルミナ(Al2O3)、1.0質量%〜10質量%のジルコンサンド(ZrSiO4)、及び0.5質量%〜8.0質量%のイルメナイト(FeTiO3)の均質乾燥混合物を調製する工程であって、原材料ベース不純物が2質量%未満である、該工程;
‐ 分散剤、潤沢剤及び可塑剤を含む群から選択される1種以上の添加剤と共に、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の溶媒を添加して、押出可能塊を得る工程;
‐ 前記塊を押し出す工程;
‐ 押出生成物をカットして成形砥粒前駆体にする工程;及び
‐ 前記成形砥粒前駆体を1450℃〜1650℃の温度範囲で焼結して焼結砥粒を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
ジルコンサンド対イルメナイトの質量パーセント比が1:6〜6:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下記質量含量の成分:
‐ 85質量%〜95質量%のAl2O3;
‐ 0.5質量%〜5.0質量%の、TiO2として表される、チタン化合物;
‐ 0.3質量%〜4.0質量%の、SiO2として表される、ケイ素化合物;
‐ 0.4質量%〜9.0質量%の、Fe2O3として表される、鉄化合物;
‐ 1.0質量%〜9.0質量%の、ZrO2として表される、ジルコニウム化合物;及び
‐ 2質量%未満の原材料ベース不純物
を含む、酸化アルミニウムをベースとする焼結砥粒。
【請求項4】
前記焼結砥粒の鉱物学的成分が、コランダム(Al2O3)、ムライト(3Al2O3*2SiO2)、チアライト及び/又はアーマルコライト(Al2TiO5/AlFeTiO5)と、バデレアイト及び/又はスリランカイト(ZrO2/Ti0.75Zr0.25O2)を含む、請求項3に記載の焼結砥粒。
【請求項5】
ムライト対チアライト及び/又はアーマルコライトの質量パーセント比が6:1〜1:6である、請求項3又は4に記載の焼結砥粒。
【請求項6】
≧3.6g/cm3の密度及び14〜18GPaの硬度HVを有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の焼結砥粒。
【請求項7】
≦2.0%のMKZ値を有する、請求項3〜6のいずれか1項に記載の焼結砥粒。
【請求項8】
≦1.2%のMKZ値を有する、請求項7に記載の焼結砥粒。
【請求項9】
前記焼結砥粒が、0.5〜5mmの直径及び1〜10mmの長さを有する棒状体であって、直径対長さの比が0.2:1.0〜1.0:1.0である、請求項3〜8のいずれか1項に記載の焼結砥粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムライトと、チアライト及び/又はアーマルコライトと、バデレアイト及び/又はスリランカイトとから成る鉱物学的相を含む酸化アルミニウムをベースとする焼結成形砥粒、並びに原材料としてアルミナ、イルメナイト、及びジルコンサンドを使用することによって焼結成形砥粒を製造する方法に関する。本発明はまた、特に、固定研磨材における焼結成形砥粒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化アルミニウムをベースとする砥粒は、その高硬度、高破壊靱性、化学的安定性及び高温抵抗のため、産業上、研磨品の製造のために大量に使用される。電気アーク炉でコスト効率よく生産され、かつ数量基準で、研磨品の生産用砥粒の最大の割合を占める溶融酸化アルミニウムに加えて、セラミック又は化学的プロセスによって製造される焼結砥粒は、しばしば特殊用途に使用される。特殊な研削作業用の焼結砥粒の利点は、その微結晶構造及び/又はその幾何学的に特定の形状に起因する。
一般的に、砥粒又は研磨品の研削性能は、いわゆるg-比によって決まり、それは取り代(stock removal)対アブレシブ摩耗(abrasive wear)の比として計算される。砥粒の高硬度は、高取り代率及び結果として高g-比をもたらす。同時に、砥粒の高破壊靱性は、低アブレシブ摩耗のみならず高g-比を生じさせる。従って、理想的ケースでは、砥粒の硬度及び破壊靱性は、高g-比を得るためにできるだけ高くすべきである。
【0003】
しかしながら、例えば、木材、スチール、ステンレススチール、プラスチック、石、セラミック等のような加工すべき複数の材料の異なる物理的性質のため、砥粒は、それぞれ、その硬度及び破壊靱性に関して、硬度対破壊靱性の比に関して、様々な要件を満たさなければならない。
この比は、例えば化学組成の変更によって影響を受け得る。しかしながら、砥粒の研削性能は、その化学組成のみならず、その結晶構造、その密度、及びとりわけその幾何学的形状によっても特徴づけられる。さらに、ある砥粒を特殊な研削作業に使用するか否かの判断は、その潜在的研削性能に影響されるのみならず、多くの場合、実質的に原材料コスト及びプロセス条件に応じた砥粒生産コストが重要な役割を果たす。
【0004】
US-A-3,387,957には焼結棒状砥粒が記載され、この砥粒は、微粉化ボーキサイト、水及び結合剤の混合物を押し出すことによって製造される。このように得られた均一円形断面を有する細長い押出グリーンボディ(green body)は、引き続き限定長の粒子にカットされ、これらの粒子は引き続き1300℃〜1600℃の温度範囲で焼結される。該棒状焼結砥粒は、ステンレスビレット及び高合金鋼のバリスリ(snagging)等の重研削作業用のレジンボンド砥石車に好ましく用いられる。
酸化アルミニウム以外に使用する原材料のため、結果として生じる砥粒は酸化ケイ素、酸化鉄、酸化チタン並びに少量の他の酸化物、例えば酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含む。当該酸化物のいくつかが酸化アルミニウムと共に別々の鉱物学的相、例えばムライト(3Al
2O
3*2SiO
2)又はチアライト(Al
2TiO
5)等を形成し、これらの相は、酸化アルミニウム(コランダム)より低い硬度を有し、対応する砥粒も低硬度にするが、異なる相の分離又は包含のため、砥粒はより高い破壊靱性を示すことが多く、特殊な研削用途に有利なことがある。この場合、ボーキサイトは低価格原材料として用いられるため、対応する砥粒の可能な適用分野はさらに拡大される。しかしながら、製品品質に不利な効果を及ぼし得る化学組成変動の可能性によって、天然に存在するボーキサイトを使用することの悪影響が生じる。
【0005】
US-A-4,252,544には、3.75g/cm
3超えの密度、1.900kg/mm
2超えのヌープ硬度、98質量%超えの酸化アルミニウム含量、及び粗結晶粒子と微結晶粒子の混合物で形成された粒子構造を有する焼結砥粒であって、粗結晶粒子が3〜10μmの範囲の平均粒径を有し、小結晶粒子が2μm未満の平均粒径を有する焼結砥粒が開示されている。この砥粒は、水及び結合剤の存在下で、3〜10μmの範囲の粒径を有する粗い電融又は高温か焼アルミナ粉末と、1μm未満の粒径を有する微粉末とを混合し;混合物を押し出し;押出材料を特定長にカットしながら乾燥させ;カットかつ乾燥されたピースを1550℃〜1650℃の温度で焼結することによって製造される。このように得られた砥粒は、ボーキサイトをベースとする砥粒と比較して高い硬度を有し、結果として、高い取り代率をもたらすが、同時に研磨品の摩耗が増す。原材料コスト上昇が悪影響を及ぼし、製造をより高価にする。
US-A-2,360,841は、固溶体中に酸化チタン及び酸化鉄を含有する酸化アルミニウム結晶から成る焼結砥粒について記載している。一実施形態は、結晶成長抑制物質としてさらに酸化ジルコニウムを含むことを記載している。
【0006】
US-A-3,454,385には、30〜70質量パーセントの酸化アルミニウム、15〜60質量パーセントの酸化ジルコニウム、及び5〜15質量パーセントの、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム及び酸化ケイ素から成る群より選択される1種以上の酸化物を含む、重研削又はバリスリ作業に有用な焼結砥粒が記載されている。
US-A-3,481,723の主題は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、ベントナイト、ケイ素及びそれらの混合物から成る群より選択される研磨材から本質的に成る円柱状砥粒である。
EP 2 636 655 A1は、高硬度及び高破壊靱性を有するアルミナ焼結成形体をベースとする砥粒について記載している。この砥粒の製造のため、結合剤を含有する水性媒体にアルミナ粉末及びイルメナイト粉末を加える。その後、混合物を均質化し、所望の形を有するように成形し、焼結して、高硬度及び優れた破壊靱性を有する焼結成形砥粒を得る。該砥粒の破壊靱性は、アルミナ結晶の粒界におけるFeTiAlO
5結晶の形成によって上昇する。
【0007】
全ての上記成形砥粒は、できる限り速くかつ多くの材料を除去すべき重研削作業のために用いられる。鋳造業及び鋼生産業におけるスラブ及びビレットのバリスリ又は粗研削は該用途の例であり、それにより例えば高密度化したほとんど無孔のホットプレスレジンボンド砥石車が使用される。上述したように、砥粒として使用するための緻密固体の適合性は実質的にその硬度及びその破壊靱性によって決まる。しかしながら、他のパラメーター、例えば、砥石車の結合マトリックス中に砥粒を保持するための結合力及び研削プロセス中に外部から砥粒に作用するような力(圧力)も役割を果たす。砥粒の摩耗機構を考慮すると、砥粒は、最初にそれ自体がすり減り、砥粒の一部が壊れるまで鈍くなり、かつ外圧のために新たな切断縁が形成される。砥粒の破壊靱性が非常に高い場合、砥粒全体が結合から切り出され、ひいては研削プロセスが尽きるという逆効果の可能性がある。一貫して、異なる材料は異なる状況下で処理されるため、第1に、加工すべき材料のみならず、生じ得る研削力及び研磨力の条件にも砥粒を適応させること、第2に、特に、硬度と破壊靱性との間の相互作用に関して砥粒を最適化することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、特殊用途に可能な最高の硬度及び破壊靱性を特徴とする砥粒を提供することである。本発明の別の課題は、許容できるコスト/性能比に従って該最適化砥粒を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本研究に従って、85〜95質量%のAl
2O
3量、0.5〜5.0質量%のTiO
2として表されるチタン化合物、0.3〜4.0%質量%のSiO
2として表されるケイ素化合物、0.4〜9.0質量%のFe
2O
3として表される鉄化合物、1.0〜9.0質量%のZrO
2として表されるジルコニウム化合物及び2質量%未満の原材料ベース不純物の質量含量を含む、酸化アルミニウムをベースとする焼結砥粒が最適な硬度及び破壊靱性を有し、それによって特殊研削作業において従来技術に優る利点を提供する砥粒が得られることを確立した。このような砥粒は、本明細書に記載の方法によって製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のサンプルA、B、及びCの例について当該相互関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様において、焼結砥粒を製造する方法であって、下記工程:
‐ 85質量%〜95質量%のアルミナ(Al
2O
3)、1.0質量%〜10質量%のジルコンサンド(ZrSiO
4)、及び0.5質量%〜8.0質量%のイルメナイト(FeTiO
3)の均質乾燥混合物を調製する工程であって、原材料ベース不純物が2質量%未満である、該工程;
‐ 分散剤、潤沢剤及び可塑剤を含む群から選択される1種以上の添加剤と共に、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の溶媒を添加して、押出可能塊を得る工程;
‐ 前記塊を押し出す工程;
‐ 押出生成物をカットして成形砥粒前駆体にする工程;及び
‐ 前記成形砥粒前駆体を1450℃〜1650℃の温度範囲で焼結して焼結砥粒を得る工程
を含む方法(方法1)が提供される。前記方法1において、ジルコンサンド対イルメナイトの質量パーセント比は1:6〜6:1であり得る。
【0012】
本発明の一態様において、下記質量含量の成分:
‐ 85質量%〜95質量%のAl
2O
3;
‐ 0.5質量%〜5.0質量%の、TiO
2として表される、チタン化合物;
‐ 0.3質量%〜4.0質量%の、SiO
2として表される、ケイ素化合物;
‐ 0.4質量%〜9.0質量%の、Fe
2O
3として表される、鉄化合物;
‐ 1.0質量%〜9.0質量%の、ZrO
2として表される、ジルコニウム化合物;及び
‐ 2質量%未満の原材料ベース不純物
を含む、酸化アルミニウムをベースとする焼結砥粒が提供され、該焼結砥粒は任意に前記方法1に従って製造される。
【0013】
焼結砥粒を製造するため、85質量%〜95質量%のα酸化アルミニウム、0.5質量%〜8.0質量%のイルメナイト及び1.0質量%〜10.0質量%のジルコンサンドを原材料として使用し、それらから、第1に、原材料の均質乾燥混合物を調製する。原材料ベース不純物は2質量%未満である。焼結体の結晶構造は可能な限りきめが細かくあるべきなので、必要ならば、原材料を予め微粉砕する。第2に、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の溶媒を、分散剤、潤沢剤及び可塑剤を含む群から選択される1種以上の添加剤と共に加えて、押出可能塊を得る。第3に、塊を押し出し、成形砥粒前駆体(グリーンボディ)を調製し、これを引き続き1450℃〜1650℃の範囲の温度で焼結する。イルメナイト対ジルコンサンドの質量パーセント比は好ましくは1:6〜6:1である。
焼結後、焼結砥粒の鉱物学的成分は、コランダム(Al
2O
3)と、ムライト(3Al
2O
3*2SiO
2)と、チアライト及び/又はアーマルコライト(Al
2TiO
5/AlFeTiO
5)と、バデレアイト及び/又はスリランカイト(ZrO
2/Ti
0.75Zr
0.25O
2)とを含み、ムライト対チアライト及び/又はアーマルコライトの質量パーセント比は好ましくは6:1〜1:6である。
【0014】
好ましくは、本発明によれば、焼結砥粒は、≧3.6g/cm
3の密度及び14〜18GPaの硬度HVを有する。さらに、焼結砥粒は≦2.0%、さらに好ましくは≦1.2%のMKZ値を有する。
有利には、焼結砥粒は、0.5〜5mmの直径及び1〜10mmの長さを有する棒状体であり、その直径対長さの比は0.2:1.0〜1.0:1.0である。
砥粒の品質を評価するためには、研削試験を行なうことが必須である。研削試験はかなり広範囲に及び、非常に時間がかかる。従って、研磨業界では、前もって機械的特性を用いて砥粒の品質を評価するのが一般的であり、これはより容易に利用することができ、研削試験における後の挙動の指標として役立ち得る。本研究の文脈では、硬度の同定に加えて、ボールミル内で製粉することによる微粒子分解(micro grain decomposition)(MKZ)を通じて砥粒の粒子靭性を判定した。
【0015】
微粒子分解(MKZ)
12個の鋼球(直径19mm、質量330〜332g)を詰めたボールミル(高さ10.5cm、直径6.8cm)において毎分185回転で150秒間にわたって限定的なグリットサイズ(例えばコランダムに基づいて、好ましくはグリットサイズ24又は36)の砥粒10gを粉砕する。その後、Rotap選別機(Haver Bocker EHL 200)で、粉砕粒を5分間、対応するグリットサイズに合わせて規定された底部ふるいより2クラス微細である対応微細ふるい(好ましくは250μm)を通してスクリーンにかけ、その後に、微細部分の収支を合わせる。MKZ値は下式から得られる。
【0017】
微粒子分解は、砥粒の破壊靱性と相関するのみならず、同時に砥粒の研削特性にとって重要な指標でもある。従って、ある一定の研削作業については、対応する研削作業のための硬度と破壊靱性との間の必要な相互作用が与えられるという条件で、MKZ値に基づいて研削性能の比較的信頼できる予測を行うことができる。
前述したように、棒状砥粒は、高度に圧縮されたほとんど無孔のレジンボンド砥石車が用いられる鋳造業及び鋼生産業においてスラブ及びビレットの粗研削又はバリスリのために好ましく用いられる。典型的試験では、例えば、厚さ220mm、幅400mm、及び長さ1540mmの炭素鋼製ワークピース、又は厚さ140mm、幅500mm、及び長さ2080mmのステンレススチール製ワークピースを、砥石車が616mm及び76mm幅の断面寸法を有するレジンボンド砥石車を用いて一定の機械パラメーターで処理する。これらの試験では、本発明の砥粒を使用すると、一般的に、MKZ値が低下するにつれてg-比(砥石摩耗に対する材料除去の比)が上昇することが見出された。結果として、MKZ値から砥粒の能力への結論を導き出すことができる。しかしながら、これは、砥粒の硬度も特定の研削作業に要求される範囲内にある場合にのみ当てはまり、この範囲は、本発明の砥粒に関しては総計14〜18GPaの硬度HVに達する。
【0018】
砥粒の硬度とMKZ値との相互作用は、それぞれ、ジルコンサンドの添加又はジルコンサンド対イルメナイトの比によって影響され得る。焼結砥粒は最終的に鉱物学的成分ムライト対チアライト及び/又はアーマルコライトの比にもこれを反映させる。高性能砥粒を保証するためには、原材料において、ジルコンサンド対イルメナイトの質量パーセント比が1:6〜6:1であることが好ましい。とりわけ、ジルコンサンド及びイルメナイトを5:1〜1:1の比で用いた砥粒では驚くべき結果が得られることが分かった。焼結砥粒は、好ましくは6:1〜1:6のムライト対チアライト及び/又はアーマルコライトの質量パーセント比を有する。
【実施例】
【0019】
下表1は、いくつかの選択した棒状焼結砥粒の化学組成、使用原材料、物理的性質、及び鉱物学的相の要約を提供する。
【表1】
【0020】
本発明の例A、B、及びCでは、いずれの場合も90質量%のアルミナを原材料として使用したが、ジルコンサンド及びイルメナイトの分量は変動させた。3:1のジルコンサンド対イルメナイトの比を有するサンプルAは、最も低いMKZ値を示し、それと共に最も高い粒子破壊強度を有する。最終製品中の高割合(8%)のムライト相が役割を果たしている可能性があり、この事実はさらなる研究の主題であろう。サンプルB及びCは、それぞれ、1:1及び1:3のジルコンサンド対イルメナイトの比を有し、わずかに高いMKZ値を示し、それ故に、より低い研削性能が予想され得る。
例D及びEでは3:1のジルコンサンド対イルメナイトの比を維持したが、アルミナのパーセンテージを増やした。この場合、MKZ値は、アルミナ含量の増加とともに悪くなったが、3:1のジルコンサンド対イルメナイトの比を有し、アルミナ含量がより低い例Fは、1.0%という優れたMKZ値及び16.6GPaの硬度を示し、この事実は、添加物イルメナイト及びジルコンサンドの利点の別の指標であることが見出された。
【0021】
比較例G、H、及びIは、原材料としてボーキサイトをベースとしており、比較例Iでは高品質のボーキサイトを用いた。原材料として、異なるタイプのボーキサイトに基づく、サンプルG及びHの間の差異は、主に製品中のムライト相のパーセンテージが異なることからなる。またこの場合、ムライト相が製品品質に及ぼす影響をさらに詳細に研究しなければならない。
さらに、例Jでは、純粋アルミナをベースとする焼結コランダム棒を比較のために使用した。比較例Jは、18.6GPaの高硬度及び1.0%の低MKZ値を示し、本発明の例B、C及びFと同一範囲に入っている。一方で例AのMKZ値は有意に良い。事前の通常の研削試験は、本サンプルでは、g-比(砥石摩耗に対する材料除去の比)はMKZ値と直接相関することを示唆した。その結果、本発明の砥粒においては、コスト効率よく製造でき、かつ特殊な研削作業のために、純粋アルミナをベースとする焼結棒に比べて同等又はより良くさえある研削結果をもたらす製品を入手可能である。
【0022】
図1は、さらに本発明のサンプルA、B、及びCの例について当該相互関係をグラフで示す。3:1のジルコンサンド対イルメナイト比を有するサンプルAは、HV 15.1GPaという比較的高い硬度と同時に0.8%という非常に低いMKZ値を特徴とすることが分かる。結果として、それは非常に良い研削性能を期待できる特性を提供する。実際に、事前の研削試験では、該焼結砥粒は、ボーキサイトベース(サンプルG及びH)の焼結棒に比べて75%まで改善されたg-比を提供した。1:1のジルコンサンド対イルメナイトの比を有する例B、及び1:3のジルコンサンド対イルメナイトの比を有する例Cは、それらの機械的特性のわずかな差異を特徴とする。しかしながら、15GPa未満の硬度HV及び約1.0%の微粒子分解MKZは、焼結アルミナ棒の範囲内のg-比をもたらすが、低価格の原材料に基づくため製造コストがより好意的である。状況をさらに良くするためには、鉱物学的相は、わずかに低減した硬度と共に上昇した粒子破壊強度(低いMKZ)をもたらし、従って、本発明の砥粒は、特殊タイプの非常に強靭な鋼を機械加工するために運命づけられている。