特許第6525907号(P6525907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525907
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】電算機室空調システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20190527BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20190527BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20190527BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   G06F1/20 C
   G06F1/20 B
   H05K7/20 U
   F24F13/10 A
   F24F13/24
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-48743(P2016-48743)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-162395(P2017-162395A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楯 龍平
(72)【発明者】
【氏名】三野 洋介
(72)【発明者】
【氏名】篠田 拓也
【審査官】 白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−316989(JP,A)
【文献】 特開2014−197244(JP,A)
【文献】 特開2014−190624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
F24F 13/08 − 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を内部に収容し、冷却空気を取り入れる吸気面と熱を帯びた温熱空気を排気する排気面とを有する複数の収容ラックと、
温熱空気を吸い込んで冷却空気を送り出す空気調和装置と、
前記収容ラックの吸気面または排気面に臨む通路の上部を覆って、冷却空気の流通部と温熱空気の流通部を隔成する上部遮蔽体と、を備え、
前記上部遮蔽体は、延出方向の一端側が固定構造物に連結される固定端とされるとともに、延出方向の他端側が固定構造物に連結されない自由端とされ、
前記上部遮蔽体の延出方向の前記一端側寄りには、前記通路の内外を連通する開口部と、前記通路の内外の圧力差に応じて前記開口部を開放して前記通路の内外の圧力差を低減する避圧ダンパーと、が設けられていることを特徴とする電算機室空調システム。
【請求項2】
前記上部遮蔽体は、前記通路の内外の圧力差が、前記避圧ダンパーが前記開口部を開放する前記圧力差よりも大きい閾値圧力差以上になったときに、前記自由端側の変位によって前記通路の内外を連通することを特徴とする請求項1に記載の電算機室空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子計算機等の各種機器を収容する収容ラックが複数配置された電算機室の電算機室空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電算機室では、電子計算機や情報機器、通信装置等の機器が複数の収容ラックに収容されて高集約化して配置されている。そして、各収容ラックに収容される機器は使用時に熱を発するが、その運用温度は機器の安定作動を得るために低く抑える必要がある。
【0003】
例えば、複数の機器が収容ラックに設置される電算機室では、空気調和装置の冷却空気を収容ラックの前面側の通路に吹き出すようになっている。
ここで採用される電算機室空調システムは、機器を収容する各収容ラックの前面側に冷却空気を取り入れるための吸気面が設けられるとともに、各収容ラックの背面側または上面側に熱を帯びた温熱空気を外部に排気するための排気面が設けられている。電算機室内では、複数の収容ラックが、通路を挟んで吸気面を対向させるようにして配置され、空気調和装置から吹き出された冷却空気がラック間の通路を通って各収容ラックに供給される。そして、各収容ラックで機器を冷却して昇温した空気(温熱空気)は空気調和装置の吸い込み口に再度戻される。
【0004】
この種の電算機室空調システムにおいては、吸気面側への温熱空気の回り込みを招くことなく収容ラック内の機器を効率良く冷却するために、通路の両側の収容ラックの間が、通路の上部を覆う上部遮蔽体と通路の端部を覆う端部遮蔽体とによって閉塞されている。また、各収容ラックには、機器を冷却して熱を帯びた温熱空気を外部に放出するために、背面側や上面側に放熱ファンが設置されている。
【0005】
また、この種の電算機室空調システムでは、排熱側の温熱が各部の隙間を通して冷却側の通路に入り込むのを防ぐために、空気調和装置の冷気供給能力が収容ラックの排熱ファンでの排気能力よりも僅かに高く設定されている。しかし、通路に供給される空気調和装置からの送風量が、何等かの原因によって収容ラック側の放熱ファンの排熱風量を大幅に上回ることがあると、通路の内外の圧力差が大きくなって、通路の周囲を被う遮蔽体や排気ファンに大きな負荷が作用することが懸念される。
【0006】
このため、これに対処し得る電算機室空調システムとして、収容ラック間の冷気導入側の通路の上部を覆う上部遮蔽体に、通路の内外を連通する開口部と、通路の内外の圧力差に応じて前記開口部を開閉する避圧ダンパーが設けられたものが案出されている。この電算機室空調システムにおいては、収容ラック間の冷気導入側の通路の圧力が収容ラックの排気側の圧力よりも大幅に高まると、避圧ダンパーが開口部を開き、それによって冷気導入側の通路内の圧力を減圧する(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、電算機室空調システムに用いられる構造物の技術として、収容ラック等の固定構造物の間を遮蔽する遮蔽部材を片持ち支持構造とし、地震の発生時に、遮蔽部材と固定構造物の間に大きな応力が発生して遮蔽部材や固定構造物に損傷が生じるのを防止するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−197244号公報
【特許文献2】特開2011−257075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上部遮蔽体に開口部と避圧ダンパーが設けられた上記の電算機室空調システムにおいても、上部遮蔽体を片持ち支持で固定構造物に支持させることが検討されている。この場合、上部遮蔽体は、延出方向の一端側が固定構造物に連結される固定端とされるとともに、延出方向の他端側が固定構造物に固定されない自由端となる。このため、上部遮蔽体に開口部と避圧ダンパーが設置されると、上部遮蔽体の自由端の振れに伴って避圧ダンパーがガタ付き、騒音が発生し易くなることが懸念される。
【0010】
そこでこの発明は、地震発生時における上部遮蔽体の損傷防止と、通常使用時における避圧ダンパーのガタ付きの抑制を図ることができる電算機室空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る電算機室空調システムは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
機器を内部に収容し、冷却空気を取り入れる吸気面と熱を帯びた温熱空気を排気する排気面とを有する複数の収容ラックと、複数列に配置された前記収容ラックの間に形成される通路と、温熱空気を吸い込んで冷却空気を送り出す空気調和装置と、前記収容ラックの吸気面または排気面に臨む前記通路の上部を覆って、冷却空気の流通部と温熱空気の流通部を隔成する上部遮蔽体と、を備え、前記上部遮蔽体は、延出方向の一端側が固定構造物に連結される固定端とされるとともに、延出方向の他端側が固定構造物に連結されない自由端とされ、前記上部遮蔽体の延出方向の前記一端側寄りには、前記通路の内外を連通する開口部と、前記通路の内外の圧力差に応じて前記開口部を開放して前記通路の内外の圧力差を低減する避圧ダンパーと、が設けられるようにした。
【0012】
上記の構成により、地震の発生時には、上部遮蔽体の延出方向の他端側が地震の振動に応じて振れることにより、上部遮蔽体の他端側に大きな応力が生じるのを抑制される。また、通常使用時に通路の内外の圧力差が増大すると、避圧ダンパーが上部遮蔽体の延出方向の一端側寄りの開口部を開き、通路内の圧力を開口部を通して外部に逃がすようになる。このとき、避圧ダンパーは、固定端である上部遮蔽体の延出方向の一端側寄りに設けられているため、開口部との間でガタ付きを生じにくい。
【0013】
前記上部遮蔽体は、前記通路の内外の圧力差が、前記避圧ダンパーが前記開口部を開放する前記圧力差よりも大きい閾値圧力差以上になったときに、前記自由端側の変位によって前記通路の内外を連通するようにしても良い。
この場合、通路の内外の圧力差が比較的小さいときには、避圧ダンパーが上部遮蔽体の延出方向の一端側寄りで開口部を開いて、通路内の圧力を外部に逃がす。通路の内外の圧力差が、避圧ダンパーが前記開口部を開放する圧力差よりも大きい閾値圧力差以上になると、避圧ダンパーが開口部を開き、かつ、上部遮蔽体の延出方向の他端側が上方に変位して固定構造物との間に間隙を作る。このとき、通路内の圧力は、開口部を通して外部に逃がされるとともに、上部遮蔽体と固定構造物の間の隙間を通しても外部に逃がされる。したがって、通路内の圧力は、通路の内外の圧力差に応じた開口面積をもって外部に排出されることになる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、地震の発生時には、上部遮蔽体が自由端側で振れることによって応力集中による上部遮蔽体の損傷を防止することができ、通常使用時には、開口部と避圧ダンパーが固定端である上部遮蔽体の延出方向の一端側寄りに配置されていることから、避圧ダンパーのガタ付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の第1の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す斜視図である。
図2】この発明の第1の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す模式的な断面図である。
図3】この発明の第1の実施形態の電算機室空調システムの図2の一部を拡大した断面図である。
図4】この発明の第2の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す模式的な断面図である。
図5】この発明の第3の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す模式的な断面図である。
図6】この発明の第4の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す模式的な断面図である。
図7】この発明の第5の実施形態の電算機室空調システムの概要を示す模式的な断面図である。
図8】この発明の第6の実施形態の電算機室空調システムの一部の模式的な断面図である。
図9】この発明の第6の実施形態の電算機室空調システムの一部の模式的な断面図である。
図10】この発明の第7の実施形態の電算機室空調システムの一部の斜視図である。
図11】この発明の第7の実施形態の電算機室空調システムの一部の断面図である。
図12】この発明の第7の実施形態の電算機室空調システムの一部の断面図である。
図13】この発明の第8の実施形態の電算機室空調システムの一部の断面図である。
図14】この発明の実施形態の電算機室空調システムの変形例を示す模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態に係る電算機室空調システム100の全体構成を示す図であり、図2は、同電算機室空調システム100の模式的な断面を示す図である。
図1図2に示すように、電算機室空調システム100は、例えば略箱状に形成された電算機室101内において利用されるものである。電算機室101は、床1と図示しない壁と天井とで囲まれている。床1から上方に離間して二重床2が設けられ、その二重床2上に複数台の収容ラック3が例えば2列対向して設置されている。二重床2上には、これらの2列の収容ラック3に挟まれた通路4が形成されている。二重床2の下には内部空間5が設けられ、内部空間5に各収容ラック3の電気配線や後述する空気調和装置6の電気配線などが収容されている。
【0017】
また、二重床2の長手方向に延びる通路4上には多数の吹き出し孔8が形成されていている。床下の内部空間5と通路4とは、これら複数の吹き出し孔8を介して通気可能に連通している。
通路4の外側の二重床2上には、空気調和装置6が設置されている。空気調和装置6では、収容ラック3から排気された温熱空気を吸込口6aから吸い込んで冷却し、空気調和装置6内で冷却された空気(冷却空気)を底面の吹出口6bから内部空間5内に送り出す。
【0018】
空気調和装置6から内部空間5に供給された冷却空気は吹き出し孔8を通して通路4上に給気される。各収容ラック3は箱状に形成され、内部に電子計算機や通信機器等の機器7が収容されている。各収容ラック3の筐体3aは、前面側に吸気面3b設けられ、上面側に排気面3dが設けられている。排気面3dには排気ファン3cが設けられている。各収容ラック3は、通路4側から冷却空気が吸気され、その冷却空気によって機器7を冷却する。機器7を冷却した空気は温熱空気となって排気ファン3cから外部に排出される。
【0019】
この電算機室空調システム100では、通路4を挟んで対向して配列された収容ラック3の上面間に上部遮蔽体10が架設されている。上部遮蔽体10は、通路4内の冷却空気の流通部を、収容ラック3よりも上方側の温熱空気の流通部と隔成する。また、通路4の延出方向の両側の端部には、通路4を挟んで対向する両側の収容ラック3の側端部間を連結する一対の端部遮蔽体11が取り付けられている。これらの端部遮蔽体11は、通路4内の冷却空気の流通部を、端部の収容ラック3よりも外側の温熱空間の流通部と隔成する。この実施形態においては、通路4は、二重床2上において、両側の収容ラック3と上部遮蔽体10と一対の端部遮蔽体11とに囲まれて閉鎖空間Sとされている。
【0020】
図3は、上部遮蔽体10の設置部を拡大して示した図である。
上部遮蔽体10は、通路4を挟んで対向配置される一方の収容ラック3の上面に締結固定される垂立壁10aと、垂立壁10aの上端部から通路4の上方を横切って他方の収容ラック3の上方に向かって略水平に延出する上部遮蔽壁10bと、を有している。他方の収容ラック3の上面には、上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bの延出端の下面を支持する支持部材12が固定設置されている。したがって、上部遮蔽体10は、通路4を挟んだ一方の収容ラック3の上面に片持ち支持状態で締結固定されている。上部遮蔽体10は、通常使用時には、上部遮蔽壁10bの延出端の下面が支持部材12の上面に当接することにより、他方の収容ラック3との間がほぼ密閉されている。なお、垂立壁10aと上部遮蔽壁10bの間は、相互に連結されていれば回動可能なヒンジ構造であっても良い。
【0021】
上部遮蔽体10は、上述のよう上部遮蔽壁10bの延出方向の一端側が通路4を挟む一方の収容ラック3の上部に片持ち状態で支持され、延出方向の他端側が自由端とされている。このため、地震の発生時には、上部遮蔽壁10bの他端側が自由に触れることにより、上部遮蔽壁10bに大きな応力が生じるのを抑制することができる。
【0022】
また、上部遮蔽壁10bの垂立壁10a寄り位置には、通路4の内外を連通する略長方形状の開口部13が形成されている。開口部13には、ヒンジ部14を介して略長方形状の蓋体15が開閉可能に取り付けられている。この実施形態においては、蓋体15とヒンジ部14とが、通路4の内外の圧力差に応じて開口部13を開放する避圧ダンパー16を構成している。蓋体15は、上下面に作用する通路4の内外の圧力差による上昇力と、自重とのバランスによって開口部13を開閉する。蓋体15は、通路4の内外の圧力差が第1の閾値圧力差に満たない間は開口部13を閉じており、通路4の内外の圧力差が第1の閾値圧力差以上になった時点で開口部13を開放する。
【0023】
ヒンジ部14は、開口部13の垂立壁10a側の辺に取り付けられている。開口部13の垂立壁10aと離反する側の辺の下縁部には、開口部13を閉塞した蓋体15の下面を支持するストッパ部材17が取り付けられている。また、開口部13の垂立壁10aと離反する側の辺の上縁部には、蓋体15の開放変位を規制する開放規制部材18が取り付けられている。
【0024】
なお、この実施形態における上部遮蔽体10は、垂立壁10aと上部遮蔽壁10bを有する複数のピースが通路4の長手方向に並べられて構成されている。開口部13と避圧ダンパー16とは、複数のピースのうちの任意のものに設けられている。
【0025】
また、この実施形態に係る電算機室空調システム100においては、通路4の内外の圧力差が、第1の閾値圧力よりも大きい第2の閾値圧力差以上に達すると、上部遮蔽壁10bの支持部材12側の端縁10b−e(自由端側の端縁)が内外の圧力差によって上方に押し上がり、上部遮蔽壁10bと支持部材12の間に隙間dが作られるようになっている。
【0026】
この実施形態に係る電算機室空調システム100は、上部遮蔽体10を挟んだ通路4の内外の圧力差が第1の閾値圧力差に達しないときには、避圧ダンパー16の蓋体15が自重によって上部遮蔽体10の開口部13を閉塞している。
この状態から、通路4に流入する冷却空気の風量と、収容ラック3からの排出空気の風量の差が何等かの原因によって大きくなり、上部遮蔽体10を挟んだ通路4の内外の圧力の差が第1の閾値圧力差以上になると、避圧ダンパー16の蓋体15がヒンジ部14を中心として上方に持ち上がる。これにより、開口部13が開放され、通路4内の冷却空気の一部が開口部13を通って外部に逃がされる。この結果、通路4内の圧力が減圧される。
【0027】
また、通路4に流入する冷却空気の風量と、収容ラック3からの排出空気の風量の差がさらに大きくなり、上部遮蔽体10を挟んだ通路4の内外の圧力差が第2の閾値圧力差以上になると、開口部13が避圧ダンパー16によって開放された状態において、上部遮蔽壁10bの支持部材12側の端縁10b−eが上方に押し上げられて隙間dができる。これにより、通路内4の圧力が隙間を通して外部に逃げ、通路4内の圧力が減圧される。
【0028】
以上のように、この実施形態に係る電算機室空調システム100においては、上部遮蔽体10の一端側が固定構造物(一方の収容ラック3)に連結される固定端とされ、他端側が固定構造物(他方の収容ラック3)に連結されない自由端とされている。このため、地震の発生時には、上部遮蔽体10が自由端側で振れることによって応力集中による上部遮蔽体10の損傷を防止することができる。
さらに、この実施形態に係る電算機室空調システム100においては、開口部13と避圧ダンパー16が固定端である上部遮蔽体10の延出方向の一端側寄りに配置されているため、上部遮蔽体10が片持ちで固定構造物に連結される構造を採用しながらも、避圧ダンパー16のガタ付きを防止することができる。
【0029】
また、この実施形態に係る電算機室空調システム100は、通路4の内外の圧力差が第2の閾値圧力差以上に大きくなったときに、上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bの自由端側が上方に変位して、支持部材12との間に隙間dを作る構造とされている。このため、製造の容易な簡単な構造でありながら、通路4の内外の圧力差に応じた開口面積によって通路4内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0030】
ところで、上述した実施形態においては、通路4を挟む一方側の収容ラック3の上部に連結された上部遮蔽体10が他方側の収容ラック3の上方に延出しているが、この構造に限らず、図4図6にそれぞれ示すよう実施形態も採用することができる。
【0031】
図4に示す第2の実施形態は、通路4を挟む一方側の収容ラック3と他方側の収容ラック3とに上部遮蔽体10が個別に取り付けられている。左右の各上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bは、通路4の略中央部付近まで延出し、通路4内の図示しない固定構造部に固定された支持部材12に延出端(端縁10b−e)の下面を支持されるようになっている。
【0032】
図5に示す第3の実施形態は、収容ラック3と壁30の間に通路4が形成されており、収容ラック3の上部に上部遮蔽体10が取り付けられている。上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bは、壁30付近まで延出し、固定構造物である壁30に固定された支持部材12に延出端(端縁10b−e)の下面を支持されるようになっている。
【0033】
図6に示す第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に収容ラック3と壁30の間に通路4が形成されているが、上部遮蔽体10は壁30側に取り付けられている。上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bは、収容ラック3の上方まで延出し、固定構造物である収容ラック3に固定された支持部材12に延出端(端縁10b−e)の下面を支持されるようになっている。
【0034】
図4図6に示した第2〜第4の各実施形態においては、第1の実施形態と同一部分に同一符号を付してある。ここで説明した第2〜第4の実施形態の場合も、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記の実施形態の電算機室101は、冷却空気が導入される通路4の上部が上部遮蔽体10によって覆われるものであるが、収容ラック3から温熱空気が排出される通路の上部が同様の上部遮蔽体10によって覆われるものであっても良い。
【0036】
図7は、収容ラック3から温熱空気が排出される通路204の上部が上部遮蔽体10によって覆われる第5の実施形態の電算機室空調システム200を示す図である。なお、図7において、図1図4に示す実施形態と同一部分には同一符号を付してある。
電算機室201は、複数列に配置された収容ラック3の間に各収容ラック3から温熱空気が排出される通路204が形成され、上記の実施形態と同様の上部遮蔽体10が通路204の上部を覆っている。通路204の下方の二重床2には、空気調和装置6の吸込口6aに連なる内部空間5に連通する排出孔208が形成されている。上部遮蔽体10は、延出方向の一端側が一方の収容ラック3の上部に連結され、延出方向の他端側が他方の収容ラック3に連結されずに自由端とされている。上部遮蔽体10の上部遮蔽壁10bの固定端寄り位置には、開口部13と避圧ダンパー16とが設けられている。
【0037】
また、上記の各実施形態においては、避圧ダンパー16の蓋体15の開放変位を開放規制部材18によって規制するようにしているが、図8図9に示す第6の実施形態のように、規制高さを調整可能な開放規制部材318を採用し、蓋体15のバタ付き状態に応じて蓋体15に対する規制高さを調整できるようにしても良い。図8図9に示す開放規制部材318は、規制壁318aを支持する支柱壁318bの高さを昇降調整できる構造とされている。図8は、規制壁318aによる規制高さを低く設定した状態を示し、図9は、規制壁318aによる規制高さを高く設定した状態を示している。
この実施形態の場合、開放規制部材318によって蓋体15の開放変位を適正に調整することにより、蓋体15のバタ付きを抑制することができる。
【0038】
蓋体15に対する規制高さを調整できる開放規制部材の構造としては、図10図12に示すようなものも採用可能である。
図10図12に示す第7の実施形態の開放規制部材418は、開口部13の上方側を所定高さで跨ぐ略コ字状の部材によって構成され、その開放規制部材418が上部遮蔽体10の延出方向に沿って位置調整可能とされている。この実施形態の場合、図11に示すように、開放規制部材418をヒンジ部14から離反する方向に位置調整することにより、蓋体15の開放変位を小さくし、図12に示すように、開放規制部材418をヒンジ部14に近接する方向に位置調整することにより、蓋体15の開放変位を大きくすることができる。この実施形態の場合も、第6の実施形態と同様に、開放規制部材418によって蓋体15の開放変位を適正に調整することにより、蓋体15のバタ付きを抑制することができる。
【0039】
また、蓋体15のバタ付き音を効果的に抑制し得る実施形態としては、図13に示すようなものを採用することができる。
図13に示す第8の実施形態は、開口部13を閉塞した蓋体15の下面を支持するストッパ部材17の上面にウレタン等の消音部材40が取り付けられている。この実施形態の場合、蓋体15の閉動作時に、蓋体15が消音部材40に当接することでバタ付き音の発生を抑制することができる。
【0040】
また、上記の各実施形態においては、上部遮蔽壁10bの垂立壁10a寄り位置に、通路4の内外を連通する開口部13と避圧ダンパー16の組が一つのみ設けられているが、開口部13と避圧ダンパー16の組は上部遮蔽壁10bの垂立壁10a寄り位置に複数並列に配設するようにしても良い。
【0041】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、空気調和装置6から吹出された冷却空気が二重床2の下方の内部空間5を通って通路4内に導入されているが、図14に示すように、空気調和装置6は、吹出口6bが通路4に直接臨むように任意の収容ラック3に隣接して配置するようにしても良い。図14においては、図1図3に示す実施形態と同一部分に同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0042】
3…収容ラック
6…空気調和装置
10…上部遮蔽体
13…開口部
16…避圧ダンパー
100…電算機室空調システム
図1
図2
図3
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図5
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図14