【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するものであるが、決してその範囲の制限を目的とする訳ではない。
【0063】
実施例1−臍帯血幹細胞の増殖を誘導するエピジェネティックリプログラミング
方法
CB CD34
+細胞の単離及びそのエクスビボ培養
CB収集物は、ニューヨーク血液センター(New York Blood Center)のPlacental Blood Programから購入した。CB−MNCは、フィコール・ハイパック(Ficoll−Hypaque)密度遠心分離法によって単離し、CD34
+細胞は、先に記載した通り免疫磁性選別法により精製した(Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。高純度(90%〜98%)PC(4.0〜5.0×10
4)を、SF Stemline II(Sigma−Aldrich社)培地または30%FBS(HyClone Laboratories社)含有IMDM(Lonza社)中で、150ng/mlのSCF、100ng/mlのfms様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3リガンド)、100ng/mlのトロンボポエチン(TPO)、及び50ng/mlのインターロイキン3(IL−3)(R&D Systems社)を補充して培養し、37℃にて5%CO
2を維持した加湿インキュベーター内でインキュベートした。16時間インキュベートした後、更に7日間、サイトカインの非存在下または持続的存在下のいずれかにて、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、VPA(Sigma−Aldrich社)、SCR、及びCAY10433(C433、BML−210とも称される)、CAY10398(MD85としても知られる)、及びCAY10603(分子式:C
22H
30N
4O
6)(Cayman Chemicals社)を含む種々の濃度の各HDACIに、細胞を曝露した(
図1A)。検討した細胞集団及びその集団を培養した各種条件は、表1に記載された特定の用語により示される。
【0064】
(表1)検討した細胞集団を表すために使用される用語
【0065】
生存可能なPC及び培養細胞は、トリパンブルー排除方法を使用して数えた。CD34
+細胞または亜集団の増殖倍率は、各CB収集物中に存在すると測定したCD34
+細胞の数、及び仮に最初のCB収集物中のすべてのCD34
+細胞が、記載された各種培養条件を使用して培養されていた場合に産生されていたであろうCD34
+細胞の数に基づいて計算した。
【0066】
表現型解析
PC、またはHDACIの存在下または非存在下にて増殖させた培養細胞は、抗ヒトCD34 mAbまたはアイソタイプ適合コントロールmAbで染色し、FACSCanto II(BD社)を使用して解析した。CD34
+細胞は、更なる表現型及び機能解析のために、先に記載した通りCD34
+細胞単離キットを使用して再単離された。すべてのmAbは、BD Biosciences社及びCell Signaling Technology社から購入した。コントロール培養、またはHDACIを加えたサイトカイン中で7日間エクスビボにおいて増殖させた細胞の表現型解析(CD34−APC、CD90−FITC、CD184−PE、CD117−PE、CD49f−PE、及びCD45RA
−PECy7)は、先に記載した通り実施した(Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。
【0067】
遊走アッセイ
CB CD34
+細胞の遊走挙動は、直径6.5mm、5μm孔のTranswellプレート(Costar社)を使用して、先に記載した通り評価した(Shivtiel et al., "CD45 Regulates Homing and Engraftment of Immature Normal and Leukemic Human Cells in Transplanted Immunodeficient Mice," Exp. Hematol. 39(12):1161-1170 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。Transwellの下層区画に、100ng/mlのストローマ細胞由来因子1(SDF1)(R&D Systems社)を補充したStemLine II SF培地を充填した。Transwellフィルターは、30分間37℃にてマトリゲルでコーティングした。コントロール及びVPA含有培養物に由来する再単離されたCD34
+細胞(1×10
5)は、100μlのStemline II培地中にて、マトリゲルコーティングしたフィルター上へプレーティングした。16時間後及び48時間後、下層区画へと遊走した細胞を数えて、遊走割合(%)を以下の通り計算した:(遊走した細胞数/プレーティングした細胞の総数)×100。
【0068】
ホーミングアッセイ
コントロール条件下またはVPAでの処理後に再単離されたCD34
+細胞(5×10
5/マウス)のホーミングを、先に記載した通り実施した(Shivtiel et al., "CD45 Regulates Homing and Engraftment of Immature Normal and Leukemic Human Cells in Transplanted Immunodeficient Mice," Exp. Hematol. 39(12):1161-1170 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。レシピエントNSGマウスは、Jackson Laboratory社から購入し、4時間亜致死線量の放射線を照射(300cGy)をして、再単離されたCD34
+細胞を尾静脈から注入した。注入後16時間及び48時間で、各レシピエントマウスの大腿骨2本及び脛骨2本からBM細胞を採取し、ヒトCD34−APC mAbを使用して、ヒトCD34
+細胞の存在をフローサイトメトリーによって解析した。これらの細胞集団のホーミングは、レシピエントマウスのBM中において、得られた10
6イベント当たりのCD34
+細胞数を定量化して測定した。4匹のマウスでは細胞が生着せず、実験サンプルからのバックグラウンドを差し引くために同様に解析した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるColvin et al., "Allogeneic In vivo Stem Cell Homing,". J. Cell. Physiol. 211(2):386-391 (2007))。コントロール条件下で培養したCD34
+細胞が8匹のNSGマウスで生着し、VPA含有培養物に由来するCD34
+細胞が10匹のマウスで生着した。
【0069】
BrdUラベリングによる細胞周期解析
培養されたCD34
+CD90
+細胞の細胞周期状態は、メーカーの取扱説明書に従ってFITC−BrdU Kit(BD Pharmingen)を使用して評価した。VPAの存在下でコントロール条件下において7日間培養したCB CD34
+細胞を、続いて2.5時間BrdUでパルスした。次いで、細胞を染色バッファー(3%FBS添加PBS)で洗浄し、CD34−APC及びCD90−PE mAbで染色し、Cytofix/Cytopermバッファーで固定及び透過処理を行い、Perm/Washバッファー(両方ともBD Pharmingen)で洗浄した。透過処理後、細胞を30μgのDNAseで30分間37℃にて処理し、次いで、FITC共役抗BrdU抗体及び7AADで染色した。次いで、CD34
+CD90
+でゲートした細胞の細胞周期状態を、FAC−SCanto IIフローサイトメーターでFACSDivaソフトウエア(BD Biosciences社)を使用して記録した。
【0070】
HDACに対するHDACIの効果
全細胞抽出物は、SCR(8μM)、C433(80μM)、及びVPA(1.25mM)の存在下で培養した、新たに単離されたCB−MNC及びヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞から調製した。細胞タンパク質は、Novex(Invitrogen社)を使用してSDS−PAGEによって分離し、iBlot(Invitrogen社)で転写した。メンブレンを、各ヒストンデアセチラーゼ(HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、及びβ−アクチン;Cell Signaling Technology社)に対するmAbで調査し、メーカーの取扱説明書に従ってHRP共役二次抗体(Amersham Biosciences社)を用いた化学発光系を使用して現像した。ウェスタンブロッティングの濃度解析は、ImageJソフトウエア(NIH)で実施した。
【0071】
ALDH活性に基づいた未分化細胞の単離
高いALDH活性は、未分化造血細胞及び癌幹細胞の特性である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Hess et al., Functional Characterization of Highly Purified Human Hematopoietic Repopulating Cells Isolated According to Aldehyde Dehydrogenase Activity," Blood 104:1648-1655 (2004);Lioznov et al., "Aldehyde Dehydrogenase Activity as a Marker for the Quality of Hematopoietic Stem Cell Transplants," Bone Marrow Transplant 35:909-914 (2005);Storms et al., "Distinct Hematopoietic Progenitor Compartments are Delineated by the Expression of Aldehyde Dehydrogenase and CD34," Blood 106:95-102 (2005);Aguila et al., "SALL4 is a Robust Stimulator for the Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Blood 118:576-585 (2011))。高ALDH活性で細胞集団を同定するために、Aldefluorキット(StemCell Technologies社)をメーカーの取扱説明書に従って使用した。細胞(1×10
6個/ml)をアッセイバッファー中に懸濁し、次いで細胞の半分をAldefluor基質(テストサンプル)に添加して、残りの半分をDEAB阻害剤(コントロールサンプル)に添加した。テストサンプル及びコントロールサンプルは、40分間37℃にてインキュベートした。その後、細胞をCD34−APC及び/もしくはCD117−PE mAbまたはアイソタイプ適合IgGで、更に20分間染色した。細胞を洗浄し、BD FACSCanto IIフローサイトメーターによって解析した。
【0072】
多能性遺伝子のqPCR
全RNAは、ヒトES細胞株H9(WA09;WiCell Research Institute社、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ)、PC、SF及びSC培地でのコントロール培養物またはVPA含有培養物に由来する再単離されたCD34
+細胞から、TRIzol及びQIAGEN社(CA)製RNeasyキットを使用して抽出した。全RNA(0.5〜1.0μg)は、RNA to cDNA EcoDry Premixキット(Clontech社)を使用して、cDNAへと逆転写した。プライマー配列は、表6に記載されている。qPCRは、SYBR Green(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びRealplex thermocycler(Eppendorf社)を使用して実施した。すべての実験は3回実施し、非鋳型コントロール(cDNA鋳型無し)を各アッセイに含めた。GAPDHは、内部標準としての役割を果たした。アンプリコンは、50bpサイズ(DNAラダー)マーカーを用いて2%アガロースゲル上で泳動した。
【0073】
(表6)RT−PCR及びQ−PCR用プライマー配列
*その内容全体が本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw & Strain, “Human haematopoietic stem cells express Oct4 pseudogenes and lack the ability to initiate Oct4 promoter-driven gene expression,” J. Negat. Results Biomed. 9:2-8 (2010)。
【0074】
免疫蛍光染色
PC並びにコントロール培養物及びVPA含有培養物に由来する再単離された培養CD34
+細胞は、メタノールフリーのホルムアルデヒド(2.8%)で10分間37℃にて固定して、少しの間氷上で冷却し、氷冷した100%メタノールで透過処理を行った。更に、細胞を氷上で20分間インキュベートし、インキュベーションバッファー(0.5%BSA含有PBS)で10分間ブロッキングして、FITC共役mAbまたはアイソタイプコントロールで1時間室温にて、SOX2及びOCT4に対して染色した。細胞はまた、NANOGに対してウサギmAb、続いてFITC共役抗ウサギ二次抗体でも染色し、細胞を洗浄して、フローサイトメトリーによって解析した。
【0075】
PC並びにコントロール培養物及びVPA含有培養物に由来する再単離された細胞を、スライドガラス上に付着させ、ホルムアルデヒドで固定し、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して、メーカーの取扱説明書(Cell Signaling Technology社)に従って抗体で染色した。ES細胞は、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現するので、ポジティブコントロールとしての役割を果たした。共焦点顕微鏡解析は、ライカTCS SP5(ウェッツラー)を使用してZ軸方向について実施した。画像は、LAS AFイメージングソフトウエアを用いて得た。
【0076】
NANOG及びOCT4のCo−IP
ES細胞及びVPAで7日間処理したCD34
+細胞を、RIPAバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1%Triton、0.1%NP40、及び1.5mM EDTA)中に溶解させた。ES細胞またはVPAで処理された細胞に由来する細胞溶解物(1.0mg)を、6μgのIgG(コントロール)、20μl(6μg)のNANOG pAb(カタログ AF1997;R&D Systems社)でインキュベートして、4℃にて回転プラットフォーム上に一晩置いた。翌日、Protein Gビーズ(50μl)(Cell Signaling Technology社)を添加し、更に4時間サンプルを回転させ続けた。ビーズを溶解バッファーで3回洗浄し、煮沸して、結合タンパク質を溶出させた。ES細胞に由来する全細胞溶解物(25μg)及びVPAで処理された細胞に由来する全細胞溶解物(125μg)を、SDS−PAGEによって分画し、NANOG mAb(Cell Signaling Technology社)を使用してウェスタンブロッティングによって解析した。IP実験からのタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、iBlot(Invitrogen社)を使用して転写し、ヤギpAb抗OCT4で免疫ブロットして、洗浄し、ECL検出キットを使用して現像した。
【0077】
siRNAによる多能性遺伝子のサイレンシング
CB CD34
+細胞は、SF培養条件下においてVPAで処理した。VPAで処理された細胞に、SOX2、OCT4、NANOG、GAPDH、及びスクランブルsiRNAそれぞれ、またはSOX2、OCT4、及びNANOGの組み合わせであるSilencer Select siRNA(Invitrogen社、CA)をトランスフェクションした。GFPプラスミドは、Neon transfection system(Invitrogen社)のメーカー取扱説明書に従ってトランスフェクション効率を測定するために含めた。
【0078】
VPA処理の72時間後、細胞(0.5×10
6個〜1×10
6個)をPBS中で洗浄し、8μlのNeon resuspension buffer Rで懸濁させた。各siRNA(2μl、10〜30nM)もしくはSOX2、OCT4、NANOG(SON)の組み合わせ、またはpcDNA6.2/EmGFPプラスミド(200ng;Invitrogen社)を、メーカーの取扱説明書に従って8μlの細胞と混合した。細胞を、電圧1,400及びパルス幅20msで3回パルスし、すぐにVPA添加サイトカイン補充済みの予熱した培地へと移した。細胞生存能は、トリパンブルー排除方法を使用してトランスフェクションから48時間後に評価した。
【0079】
加えて、スクランブルsiRNAまたは複合SON siRNAで処理された細胞を、ヒトCD34 mAb及びCD90 mAbを使用して染色し、CD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の割合(%)をフローサイトメトリー解析によって測定した。RNAはトランスフェクションの7日後に調製し、qPCRは、上記の通りSOX2、OCT4、NANOG、ZIC3、CD34、及びGAPDH mRNAに対して、SYBR Green法を使用して実施した。相対発現レベルは、CD34の発現を基準として正規化した。SON siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンに続いて、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3タンパク質の発現レベルを、上記の通り共焦点顕微鏡によって評価した。
【0080】
エクスビボにおいて増殖させたCB CD34
+細胞のインビボ骨髄再構築能アッセイ
前述の通り、NSGマウスに、4時間300cGyで亜致死線量の放射線を照射をして、PC(2×10
5)を注入し、サイトカインの存在下もしくは非存在下でのコントロール条件下での培養またはVPA含有培養から1週間後に再単離されたCD34
+細胞を、NSGマウスに尾静脈から注入した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007))。移植後13〜14週間でマウスを犠牲死させた。各マウスのBM細胞を、ヒトCD45−PECy7またはAPC、CD34−APCまたはFITC、CD36−APC、CD33−PECy7、CD14−FITC、CD19−PE、CD41−FITC、CD71−FITC、及びグリコフォリンA−PE(GPA−PE)を発現する細胞の存在について解析した。各レシピエントマウスの骨髄中に、ドナー由来ヒト造血細胞の生着を示す、少なくとも0.1%のヒトCD45
+細胞の存在が確認された(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007);Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。一次レシピエントNSGマウスのBM細胞(2×10
6個)を、亜致死線量の放射線を照射した二次NSGレシピエントマウスに再注入した。移植後15〜16週間でマウスを犠牲死させ、BM細胞をmAbで染色し、上記の通りヒト細胞キメリズムの証拠をフローサイトメトリーによって解析した。
【0081】
限界希釈解析
PC及びコントロール条件下またはVPAの存在下で増殖させた当量数のCD34
+細胞の子孫におけるヒトSRCの頻度を、前述の通り限界希釈解析によって解析した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるBoitano et al., "Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Science 329:1345-1348 (2010))。数を増加させたPC(50、250、500、2,500、5,000)またはVPAで7日間もしくはコントロール条件下で培養した当量数のPCの子孫を、NSGマウスに注入した(n=111)。限界希釈実験の結果データを収集し、シングルヒットモデルに対してポアソン統計を適用して解析した(n=111)。頻度は、L−Calcソフトウエア(StemCell Technologies社)を使用して計算し、ウォルター・アンド・エリザ・ホール医学研究所(Walter and Eliza Hall Bioinformatics Institute of Medical Research)で入手可能なELDAソフトウエア(bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を使用してプロットした。以下の式を使用して、未反応値のlogフラクションをネガティブマウスの割合(%)に変換した:ネガティブマウスの割合(%)=e logフラクション。
【0082】
奇形腫形成アッセイ
コントロール培養物もしくはVPA含有培養物から再単離されたCD34
+細胞(1×10
6個)またはほぼ同等の数のES細胞を、100μlのPBS中に懸濁した。これらの細胞を、等容積の氷冷マトリゲルと混合し、グループ(コントロール培養物、VPAで処理された培養物から再単離されたCD34
+細胞、及びES細胞)当たり3匹のNSGマウスの右後肢へと皮下注射した。マウスの奇形腫形成を週毎に観察し、8週間後に犠牲死させた。奇形腫を切開、固定、薄切りし、H&Eで染色して形態学的に調査した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるO'Connor et al., "Functional Assays for Human Embryonic Stem Cell Pluripotency," Methods Mol Biol. 690:67-80 (2011))。
【0083】
統計
結果は、各実験における様々な数値の平均±SDまたは平均±SEMとして表した。統計差は、別段の指定がない限り、スチューデント両側t検定を使用して評価した。テューキーの検定による対比較を併用した一元配置ANOVA並びに/または等分散性のためのバートレット検定及び分散比較のためのF検定も使用した。0.05以下のP値は、有意であると判断した。
【0084】
研究承認
すべての動物実験は、アイカーン医科大学(Icahn School of Medicine)の動物実験委員会(animal care and use committee)によって承認された。少量の匿名CB単位は、ニューヨーク血液センター(New York Blood Center)から購入したので、インフォームドコンセントまたは対象承認は、本研究では不要であった。
【0085】
結果
CB CD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞のエクスビボにおける増殖に対するHDACI及びSF培地の効果
HSCのエクスビボにおける増殖を可能にする培養条件の決定は、多数の研究の主題であった(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010);Boitano et al., "Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Science 329:1345-1348 (2010);De Felice et al., "Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Enhances the Cytokine-Induced Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Cancer Res. 65:1505-1513 (2005);Himburg et al., "Pleiotrophin Regulates the Expansion and Regeneration of Hematopoietic Stem Cells," Nat. Med. 16:475-482 (2010);Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Nishino et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells by a Small-Molecule Agonist of c-MPL," Exp. Hematol. 37:1364-1377 e1364. (2009);North et al., "Prostaglandin E2 Regulates Vertebrate Haematopoietic Stem Cell Homeostasis," Nature 447:1007-1011 (2007))。SC培養条件並びにDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTI)及びHDACIを用いた一連の処理を使用すると、CB HSC数の増加が制限される可能性があると、これまでに実証されている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007);Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。CB HSC増殖をより促進させる培養条件を更に最適化するために、まずCD34
+細胞、次いでCD34
+CD90
+細胞の産生を、本明細書においてはコントロール条件と称する、サイトカインを補充したSF培養及びSC培養において評価した。CB CD34
+細胞を増殖させるために使用したエクスビボにおける増殖方法の略図及び検討した細胞集団を表すために使用した用語は、
図1A及び表1で提供される。種々のHDACI(VPA、スクリプタイド[SCR]、トリコスタチンA[TSA]、スベロイルアニリドヒドロキサム酸[SAHA]、BML−210としても知られるCAY10433[C433]、MD85としても知られるCAY10398、及びCAY10603[分子式:C22H30N4O6])を、様々な添加量及びインキュベーション期間(5〜9日間)で、添加した。SCまたはSF培養条件下において、インビトロで産生させたCD34
+細胞数を増加させる、HDACIの能力を評価した。検討した8つのHDACIの内、VPA、SCR、及びC433で7日間処理することが、本目的に対して最も有効であると分かった。コントロール条件(16.2%±9.2%)と比較して、これらの剤の各々で処理すると、ほぼ同等の割合(%)のCD34
+CD90
+細胞(SCR:73.4%±13.9%、C433:70.1%±18.4%、及びVPA:75.2%±10.7%)が産生された(ANOVA、P<0.0001)。しかしながら、7日間を超えて細胞を維持すると、その割合(%)は次第に減少した。同様に、これらのHDACIの各々は、CD34
+CD90
+細胞によるCXCR4発現(CD184)を促進するだけでなく、CB収集物当たりのCD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の産生絶対数を高め(ANOVA、P≦0.0007)(
図1B及び1C)、コントロール条件と比較してCD34
+CD90
+CD184
+細胞の産生絶対数を高める(ANOVA、P<0.0001)(
図1D)のに有効であったことが見出された。最適濃度及び半最適濃度で混ぜ合わせた場合、VPA、SCR、及びC433の効果は、付加的ではなかった。
【0086】
CD34
+細胞の増殖を促進させるHDACIの能力に対する血清の効果を、より詳細に調査した。SFコントロール培養条件を使用すると、CD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の増殖数が、SCコントロール培養条件で得られた数よりも多かった(ANOVA、それぞれP<0.0001)(
図2A)。SF条件下においてVPAを添加すると、CD34
+細胞の細胞数(213倍)及びCD34
+90
+細胞の細胞数(20,202倍)が、VPAを添加したSC条件(CD34
+細胞では78倍増殖及びCD34
+90
+細胞では89倍増殖)と比較して劇的に増加した(ANOVA、P≦0.005)(
図2A)。
【0087】
VPAにより増殖したCD34
+細胞のより詳細な表現型解析は、VPAで処理されたCD34
+CD90
+細胞による白血球共通抗原のアイソフォームCD45RA及びインテグリンα6(CD49f)の発現を解析することにより調査した。ヒトHSCは、CD49fは発現するが、CD45RAは発現しないことが分かっていた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるNotta et al., "Isolation of Single Human Hematopoietic Stem Cells Capable of Long-Term Multilineage Engraftment," Science 333(6039):218-221 (2011))。
図2Bでは、VPA含有培養物に由来するCD34
+CD90
+細胞の47.0%±4.4%がCD49fを発現し、同時にこれらの細胞の若干が、CD45RA(1.9%±2.1%)を発現したことを実証した。
【0088】
CXCR4/SDF1軸は、HSCホーミングに対して非常に重要なので(Gul et al., "Valproic Acid Increases CXCR4 Expression in Hematopoietic Stem/Progenitor Cells by Chromatin Remodeling," Stem Cells Dev. 18:831-838 (2009),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)、VPAで処理されたCD34
+細胞のSDF1に対する遊走を調査した。
図3Aに見ることができる通り、16時間後及び48時間後、有意に多数のVPAで処理されたCD34
+細胞がSDF1に対して遊走した(P=0.01及びP=0.03)。次に、VPA処理後のCD34
+細胞によるCXCR4発現の上方制御が、これら細胞のNOD/SCID/γcnull(NSG)マウス骨髄へのホーミングの増加と関連があるかどうかを調査した。
図3Bで実証した通り、VPA処理によって、注入後16時間(P<0.0001)及び48時間(P=0.01)の両方で、コントロール条件下にて培養されたCD34
+細胞と比較して、CD34
+細胞のホーミングが増加した。次に、培養したCD34
+細胞の細胞周期状態は、コントロール培養物及びVPA含有培養物中の細胞子孫を、培養から7日目にBrdUで(2.5時間)ラベリングすることによって調査し、細胞周期の種々の段階にあるCD34
+CD90
+細胞の比率を比較した(
図4A)。VPAで処理された細胞では、CD34
+CD90
+細胞の含まれる比率が、コントロール培養細胞よりもはるかに高い比率となった(75.2%±10.7%対16.2%±9.2%)ことが見出された。加えて、VPAで処理されたCD34
+CD90
+細胞のより多数が、コントロール培養物中(2.2%±1.0%、P<0.0001)の細胞よりも、G2/M内(18.0%±1.2%)にあった。このことは、VPAで処理されたCD34
+CD90
+細胞が分裂しても初期の表現型を維持し続けていることを示し、それによって、7日目でもより多数のCD34
+CD90
+細胞が観察されることが説明された。CD34
+CD90
+細胞のG0/G1区画もまた、コントロール培養物中(5.0%±1.4%)で見られたのと比較して、VPA含有培養物中(23.2%±13.8%)にて増加しており、VPAへ曝露したCD34
+CD90
+細胞は、G0/G1へと戻ることが可能であることを示唆した。また、コントロール培養物に由来するCD34
+CD90
+細胞の方が、VPA含有培養物中よりも、培養の7日後にS期にある細胞の比率がより少なかった(17.5%±1.8%対29.4%±7.9%)(
図4B)。これらのデータは、コントロール細胞は、VPAで処理された細胞よりも培養期間中の早い段階で分裂し、VPAで処理された細胞は、7日目も分裂してCD34
+CD90
+細胞を産生し続けたことを示唆している。VPAの効果は、継続的にサイトカインへ曝露させることに依存するかを決定するために、CB CD34
+細胞に16時間最初のプライミングを行い、次いで7日間SF培地のみで、またはVPAは補充するが、追加のサイトカインの非存在下にてSF培地内で培養した(
図1A)。これらの研究では、サイトカインでの最初のプライミング後、SF培地のみ(サイトカイン無し(
図5A))によるインキュベーション後に、CD34
+細胞及びCD34
+90
+細胞が増殖したことが実証された。しかしながら、細胞をVPAのみ(サイトカイン無し)の存在下において培養した場合、PCと比較して、産生されたCD34
+細胞(P<0.0001)及びCD34
+CD90
+細胞(P<0.05)の絶対数は、一層高かった(
図5A)。しかしながら、最初に前処理をせず、次いで追加のサイトカイン無しでインキュベートした培養物中では、CD34
+細胞増殖が同じ割合で起こらなかったことから、CD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の数の増加は、少なくとも前処理のサイトカインへの曝露に依存することが示された。7日目に、培地のみ(サイトカイン無し)で培養した細胞の21.2%±5.1%はCD34
+であり、それらの表現型はPCと類似していたが、VPAのみに曝露した細胞は、CD90、CD184、及びCD49f、ただしCD45RAは除く、の劇的な上方制御を特徴とし(
図14)、VPAがエピジェネティックリプログラミングをもたらすことと一致することが分かった。CB収集物当たりのCD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の数は、培地のみ(サイトカイン無し)で培養した場合に5.2倍及び144倍増加し、それに比較して、VPAのみ含有(サイトカイン無し)の培養物中では各々9.0倍及び486倍増加した(ANOVA、P<0.0001)(
図5B)。CD34
+細胞の増殖倍率(213倍)及びCD34
+CD90
+細胞の増殖倍率(20,202倍)は、7日間のインキュベーション期間中、VPA含有SF培養へのサイトカインの追加によって更に劇的に増大した(
図2A)。
【0089】
HDACレベルに対するHDACIの効果
HDACは、多タンパク質複合体のサブユニットとして細胞内に存在し、遺伝子発現を制御する。クラスI HDAC(HDAC1、2、3、及び8)は、酵母の転写制御因子RPD3に対して配列相同性を有する。しかしながら、クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7、9、及び10)は、酵母内で見られるデアセチラーゼHDA1と類似したドメインを共有する(その全体が参照として本明細書に組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012))。クラスI及びII HDACは、転写コリプレッサーmSIN3、NCoR、及びSMRTと相互作用し、それによりHDACを転写因子へとリクルートする(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012);Kramer et al., "The Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Selectively Induces Proteasomal Degradation of HDAC2," EMBO J. 22:3411-3420 (2003))。HDACIは、CB CD34
+細胞におけるH3アセチル化を促進させることが、これまでに分かっている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるChaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。しかしながら、HDAC活性は、触媒ドメインでのこれらの阻害剤との結合によるだけでなく、ユビキチン/プロテアソーム経路を介するHDAC分解の微調整によっても調節することができる。E2ユビキチンコンジュガーゼ(conjugase)Ubc8及びE3ユビキチンリガーゼRLIMの量を制限することで、VPAによる調節を受けやすいHDACのバランスのとれた定常状態のタンパク質レベルが維持されると報告されてきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Kramer et al., "The Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Selectively Induces Proteasomal Degradation of HDAC2," EMBO J. 22:3411-3420 (2003);Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Cunliffe, "Eloquent Silence: Developmental Functions of Class I Histone Deacetylases," Curr. Opin. Genet. Dev. 18(5):404-410 (2008))。HDACがHDACIの影響を受けることを決定するために、クラスI及びIIの両方のHDACタンパク質レベルに対するSCR、C433、及びVPAの効果を、CB単核細胞(CB−MNC)及びヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞において、処理の2時間及び24時間後に評価した。CB−MNCの処理から2時間後、SCR、C433、及びVPAはHDACの発現を阻害しなかったが、処理から24時間後、異なる割合でクラスI(HDAC1、2、及び3)、クラスIIa(HDAC4及び5)、並びにクラスIIb(HDAC6)HDACを阻害した。SCR及びC433は、各HDACに対して最も有効な阻害剤であった(
図6及び表7)。
【0090】
(表7)ウェスタンブロットの濃度解析
上部パネル:HDACタンパク質レベルをデンシトメトリーによって評価し、b−アクチンの発現を基準として正規化した。下部パネル:コントロールに対するクラスI及びクラスII HDACの下方制御割合(%)。各HDACIの存在下において、HDAC1、3及び5が減少した。(平均±SE、n=4)
【0091】
各HDACは、細胞特異的な機能において、細胞内プロセスの制御及び細胞外環境への応答に重要な役割を果たすので、特定の細胞型が、導入されたHDACIに反応する仕組みの予測には限界がある(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012);Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。これらHDACIによるHEK293細胞処理後のHDAC阻害パターンは、CB−MNCのパターンとは著しく異なっており、処理の2時間後では、24時間後と比較してより顕著であることが見出された(
図15)。HDAC2及びHDAC4の下方制御は、HEK293細胞に対する3種のHDACI各々の効果に対して共通であったが、HDAC1、3、及び5の減少は、同じ剤で処理したCB−MNCに対して共通であった。これらの結果は、SCR、C433、及びVPAは、各クラスI及びIIのHDACIであるが、特定のHDACに対するその効果は、処理された細胞型に依存して変化することを示している。HDAC3の下方制御が、インビトロでのHSC増殖に必要不可欠であることがこれまでに分かっている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるElizalde et al., "Histone Deacetylase 3 Modulates the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Stem Cells Dev. 21:2581-2591 (2012))。調査した各HDACIは、CB CD34
+細胞数を増加させることが可能であるが、VPAはCD34
+細胞増殖の促進に最も有効な化合物でありながらも、最も強力なHDAC阻害剤ではなかった。VPAを用いて残りの実験を実施した。
【0092】
VPAは、培養されたCB CD34
+細胞におけるALDH活性を変化させる
サイトカインを用いてインビトロで増殖させたCB及び骨髄細胞の表現型は、必ずしも機能と関連するとは限らないので、ALDH活性をHSCの機能マーカーとして使用した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Hess et al., Functional Characterization of Highly Purified Human Hematopoietic Repopulating Cells Isolated According to Aldehyde Dehydrogenase Activity," Blood 104:1648-1655 (2004);Lioznov et al., "Aldehyde Dehydrogenase Activity as a Marker for the Quality of Hematopoietic Stem Cell Transplants," Bone Marrow Transplant 35:909-914 (2005);Spangrude et al., "Long-Term Repopulation of Irradiated Mice with Limiting Numbers of Purified Hematopoietic Stem Cells: In vivo Expansion of Stem Cell Phenotype but not Function," Blood 85(4):1006-1016 (1995);Storms et al., "Distinct Hematopoietic Progenitor Compartments are Delineated by the Expression of Aldehyde Dehydrogenase and CD34," Blood 106:95-102 (2005);Veeraputhiran et al., "Aldehyde Dehydrogenase as an Alternative to Enumeration of Total and Viable CD34(+) Cells in Autologous Hematopoietic Progenitor Cell Transplantation," Cytotherapy 13:1256-1258 (2011))。サイトカインの存在下にて、SC培養中で培養された細胞よりも、SF培養中で培養された細胞において、より多くのALDH活性を有する細胞画分が観察された。更に、SF培養条件下でサイトカインを含有する培養にVPAを添加すると、SC培養中で観察されたのと比較して、ALDH
+細胞の比率がより高くなった(
図7A及び表2)。
【0093】
(表2)ALDH
+細胞、ALDH
+CD34
+細胞、及びALDH
+CD34
+CD117
+細胞の頻度
PCは、SFまたはSC培地内にてコントロール条件下またはVPA含有培地内で培養された。SF培養にVPAを添加すると、SC培養で観察されたのと比較して、CD34
+細胞及びCD34
+CD117
+細胞におけるALDH活性の割合がより高くなった。各数値は、特定の表現型を有する細胞の割合(%)を表す。平均±SEM。
AP≦0.007。ANOVA、P<0.0001。n=3〜5。
VPAを添加したSF培養において産生されたALDH
+CD34
+CD117
+細胞の絶対数は、SC培養中で得られた数よりも多かった(P=0.009)(
図7B)。
【0094】
VPAは、多能性に関連する遺伝子の発現に影響を及ぼす
転写因子SOX2、OCT4、及びNANOGは、そのプロモーターを含む標的遺伝子を共同占有し、それによって、自己複製及び多能性の維持に必要な調節及び自己調節フィードバックループの両方で協調することにより、胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞(iPS)の両方の運命決定を確定させる調節機能の中核を担う(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Loh et al., "The Oct4 and Nanog Transcription Network Regulates Pluripotency in Mouse Embryonic Stem Cells," Nat. Genet. 38(4):431-440 (2006))。VPA媒介HSC増殖における、このようなマスター転写因子の役割は、コントロール条件下での培養またはSF及びSC培地中にてVPAで処理された培養の7日後に再単離されたCD34
+細胞における、SOX2、OCT4、及びNANOGの発現を調査することで探求した。RT−PCRは、VPA含有SF培養物に由来するCD34
+細胞におけるSOX2、OCT4、及びNANOG転写の発現を明らかにしたが、コントロール培養またはVPAが添加されたSC培養中では、OCT4及びSOX2転写がほとんど検出できなかった(
図8A)。定量PCR(qPCR)によって、これらの多能性遺伝子の発現は、SC培養中で観察されたのと比較して、SF培養中におけるVPAの存在下で増加したことが実証された(ANOVA、P=0.0001)(
図8B)。成体幹細胞におけるOCT4の発現は、機能型のOCT4ではなく、実際には不活性な偽遺伝子の発現によるものであるという可能性が、他の研究者によって報告されている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw et al., "Human Haematopoietic Stem Cells Express Oct4 Pseudogenes and Lack the Ability to Initiate Oct4 Promoter-Driven Gene Expression," J. Negat. Results Biomed. 9(1):2-8 (2010);Zangrossi et al., "Oct-4 Expression in Adult Human Differentiated Cells Challenges its Role as a Pure Stem Cell Marker," Stem Cells 25:1675-1680 (2007))。RT−PCRを使用して、1つのOCT4偽遺伝子が、VPAで処理されたCD34
+細胞においては存在しなかったことが見出された(
図8A)。qPCR解析によって、2つの偽遺伝子の転写は存在しなかったことが示された。OCT4、SOX2、及びNANOGとは異なり、ES細胞における別の既知の多能性マーカーであるテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるTakahashi et al., "Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors," Cell 131:861-872 (2007))は、VPAで処理されたCD34
+細胞において増加しなかった。クロマチンリモデリングにおいて重要な役割を担うSET、SMARCAD1、及びMYST3を含む、SOX2、OCT4、及びNANOGの下流標的遺伝子を、追加の多能性遺伝子ZIC3も加えて調査した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Takahashi et al., "Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors," Cell 131:861-872 (2007);Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007))。SMARCAD1、MYST3、及びZIC3、ただしSETは除く、もまたSF培養中のVPAで処理されたCD34
+細胞において劇的に増加した(ANOVA、P=0.04)。ZIC3 mRNAは、血清の存在下でVPAを補充したコントロール培養中では検出されなかったが、VPAを補充したSF培養中においてのみ増加した(
図8C)。ZIC3遺伝子は、ES細胞においてOCT4、SOX2、及びNANOGの標的として同定されてきた。OCT4、NANOG、及びSOX2の転写ネットワークと一部重なり合うZIC3は、多能性の維持に重要であり、NANOGの発現を直接調節することができる(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007);Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013))。
【0095】
次いで、CD34
+細胞中でのSOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現を、フローサイトメトリー解析によって調査した。SOX2、OCT4、及びNANOGの発現は、SC培養中ではなく、SF培養中でVPAの存在下にて最も高くなった(
図9A及び表3)。次いで、CD34
+細胞中のSOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現を、mAb染色及び共焦点顕微鏡を使用して調査した(
図9B及び
図16)。多能性遺伝子は、VPAで処理されたCD34
+細胞中の細胞核及び細胞質の両方で増加及び局在化していたが、ES細胞中では、これらのタンパク質は、圧倒的に核内領域に局在化した。これらのタンパク質は、コントロール条件下で産生されたCD34
+細胞またはPCにおいては観察されなかったが、低レベルのZIC3タンパク質は、PCにおいて観察された。OCT4及びSOX2は、NANOGプロモーターと結合し、その転写及び関連する遺伝子ネットワークの転写を促進させる、主な転写因子である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Loh et al., "The Oct4 and Nanog Transcription Network Regulates Pluripotency in Mouse Embryonic Stem Cells," Nat. Genet. 38(4):431-440 (2006))。SC培養ではなくSF培養中にて、VPAで処理することでNANOGを上方制御することは、SOX2及びOCT4間での機能的相互作用の可能性を示した(表3)。
【0096】
(表3)多能性遺伝子の発現
SF及びSC培地中にて、7日間のコントロール培養物及びVPAで処理された培養物から再単離されたCD34
+細胞(純度:95%〜99%)における、mAb染色及びフローサイトメトリー解析によって評価したSOX2、OCT4、及びNANOGの発現。各数値は、特定の多能性タンパク質を発現するCD34
+細胞の割合(%)を表す。平均±SEM。
AP<0.05。ANOVA、P<0.0001。n=4。
次いで、NANOG及びOCT4間の物理的相互作用を、VPAで処理された細胞に由来するタンパク質のco−IPによって記録した(
図9C)。更に、ウェスタンブロット解析によって、VPAで処理された細胞における内因性OCT4及びNANOGの発現は、ES細胞の場合よりも多くなかったことが明らかとなった(
図9C)。
【0097】
CD34
+CD90
+細胞の増殖に必要不可欠な多能性遺伝子
VPAで処理された培養物における多能性遺伝子の上方制御とCD34
+CD90
+細胞の増殖との間の機能的関連性を立証するために、CD34
+細胞に各siRNAまたはSOX2、OCT4、及びNANOG(SON)に対するsiRNAの複合プールのいずれかをトランスフェクションした。初めに、異なる濃度のsiRNAを、各遺伝子について、及びコントロール培養またはVPAで処理された培養中の細胞に対する遺伝子の潜在的な毒性作用について試験した。SON siRNAで処理された細胞の形態学的外観は、スクランブルsiRNAで処理されたのと比較して、変化はなかった。スクランブル、SON、及びGAPDH siRNAのトランスフェクション後、コントロール培養及びVPA含有培養において産生された細胞の総数に、有意な減少は観察されなかった(表8)。多能性遺伝子の発現は、qPCR及びRT−PCRを使用して、VPAで処理された培養物におけるsiRNAトランスフェクション後に観察した(
図10A及び10B)。siRNAによるノックダウンによって、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3転写の発現(80%〜84%)が著しく減少した(ANOVA、P<0.0001)。共焦点顕微鏡及びmAb染色によっても、SOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現が著しく減少したことが明らかとなった。OCT4、SOX2、及びNANOG調節ネットワークの下流であるZIC3タンパク質の発現は、より少ない程度に減少した(
図10C)。CD34
+細胞(47.8%±4.4%対22.8%±8.6%)及びCD34
+CD90
+細胞(20.5%±6.1%対11.7%±4.5%)(ANOVA、P=0.0005)の割合(%)における有意な減少が、多能性遺伝子各々について特異的な各siRNAまたはスクランブルsiRNAと比較して、SON siRNAでの処理後に観察された(
図10D)。更に、VPAで処理されたCD34
+細胞をSON siRNAで処理した後、CB収集物当たりのCD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の絶対数が、それぞれ89.1%及び88.7%(ANOVA、P=0.0008)減少したことが観察された(
図10E)。
【0098】
これらのデータは、VPA処理が、SF培養物中のCD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の産生に必要不可欠な、多能性遺伝子の以降の転写活性化を導く、培養されたCD34
+細胞のエピジェネティックなリプログラミングを引き起こすことを示している。
【0099】
(表8)コントロール培養物及びVPAで処理された培養物に対するsiRNAトランスフェクションの効果
上部パネル:コントロール培養物は、VPA培養物について先に記載したとおりにsiRNAをトランスフェクションした。CD34
+CD90
+細胞の総細胞数及び割合(%)における有意差は、スクランブルsiRNA及びSON siRNAのトランスフェクションから72時間後では観察されなかった。(n=4)(
*p≦0.5、ns)
下部パネル:VPAで処理された培養物は、方法セクションにて先に記載したとおりにスクランブルsiRNA及びGAPDH siRNAをトランスフェクションした。CD34
+CD90
+細胞の総細胞数及び割合(%)における有意差は、GAPDH siRNAトランスフェクションから72時間後では観察されなかった。(n=3)(
*p<0.25、ns)
【0100】
NSGマウスにおけるVPAで処理されたCD34
+細胞のインビボでの機能的挙動
PC並びにコントロール条件下並びにVPA及びサイトカインで培養されたCB CD34
+細胞の骨髄再構築能を、NSGレシピエントマウスの骨髄内での細胞生着を確認することによって評価した。すべてのレシピエントマウスにおいて、移植された移植片の種類に関係なく、ヒトCD45
+細胞及びCD45
+CD34
+細胞が検出された。移植から13〜14週間後(
図11A及び11B)、PCが生着したマウス内における骨髄細胞の19.4%±4.9%がドナー由来のCD45
+細胞であり、それに比較して、コントロール培養物に由来する細胞が生着したマウス内では13.2%±6.4%であった。一方、VPAで処理されたCB CD34
+細胞の移植では、ヒトCD45
+細胞キメリズム(32.2%±11.3%)及びCD45
+CD34
+細胞(13.0%±8.7%)の割合が、コントロール細胞で得られたのと比較して、より高い割合となった(それぞれ、P=0.0008及びP=0.004)(
図11A及び11B)。VPA移植片でのCD45
+細胞キメリズムの割合もまた、PCで得られた割合よりも統計上高い割合となった(P=0.006)。
【0101】
VPAで処理されたCD34
+細胞が生着したマウスの骨髄内のドナー由来CD34
+細胞では、PCまたはコントロール条件下で増殖させた移植片が生着したマウスの骨髄内と比較して、CD184(9.9%±9.6%)と共発現した細胞数が有意に多かった(ANOVA、P=0.01)(
図11C)。VPAで処理されたCD34
+細胞移植片の、移植後に複数の造血系統に分化するパターンは、PCまたはコントロール条件下で増殖させた細胞でのパターンとは明らかに異なり(ANOVA、P<0.0001)(
図11D及び11E)、VPAで処理された移植片が生着したマウス内に現れるCD41
+細胞、CD19
+細胞、及びグリコフォリンA陽性(GPA
+)細胞の比率が高かった。
【0102】
次に、VPAによるSRC増殖の依存性を、その増殖中にサイトカインに曝露し続けることで評価した。
図11Fに見ることができる通り、サイトカインの非存在下にて培地のみ(サイトカイン無し)及びVPAのみ(サイトカイン無し)で培養したCD34
+細胞の移植では、キメリズムの割合はほぼ同等であった(8.2%±5.0%対12.5%±5.0%;P=0.1、NS)。継続的なサイトカインへの曝露無しで産生された移植片は、複数の造血系統に属する細胞を産生する能力を保持していた(表9)。
【0103】
(表9)NOD/SCID/yc
null(NSG)マウスにおけるサイトカイン無しの無血清(SF)条件下で培養したVPAで処理されたCD34
+細胞のインビボでの機能的挙動
2.0×10
5個のCB CD34
+初代細胞(PC)または無血清(SF)条件下にて培地のみ含有した培養(サイトカイン無し)及びVPAのみ含有した培養(サイトカイン無し)から7日後に再単離されたCD34
+細胞が生着したNSGマウスの骨髄解析。移植から12〜13週間後のヒト細胞キメリズム(CD45
+、CD33
+、及びCD34
+)並びにB細胞(CD19
+)、顆粒球(CD14
+)、赤血球細胞(グリコフォリンA(GPA
+))及び巨核球(CD41
+)を含む多系統の造血細胞の生着割合(%)が示されている。
(平均±SE、
*p<0.05、(ANOVA P<0.0001)。NSGマウスレシピエント(n=15))。
【0104】
コントロール条件下で培養した細胞の移植で得られたドナー細胞キメリズムの割合は、培地のみ(サイトカイン無し)またはVPAのみ(サイトカイン無し)にて7日間サイトカインに曝露しなかった細胞で得られた割合とほぼ同等であった。しかしながら、サイトカイン+VPAの存在下において産生された移植片の移植後に、ヒト細胞キメリズムの割合の劇的な増加が観察された(32.3±10.2%;ANOVA、P<0.0001)。これらのデータは、PCを16時間だけサイトカインで前処理し、次いでサイトカインの非存在下にて培地のみまたはVPAのみで培養するのであれば、SRCは存続することを示唆している。しかしながら、培養期間を通してサイトカインが存在すると、VPAの有効性を更に向上させて、NSGレシピエントにおけるヒト細胞キメリズムの割合が高くなった。
【0105】
増殖させた移植片の自己複製能は、一次レシピエント中に存在するドナー由来細胞を二次レシピエントに移植することで評価した。15〜16週間後、VPAで処理されたCB CD34
+細胞を移植した一次レシピエントに由来する骨髄細胞を移植した二次レシピエントでは、ヒトCD45
+細胞キメリズムの割合が最も高い結果となった(ANOVA、P<0.0001)(
図12A)。
図12Bに示すように、二次レシピエントマウス内のドナー由来細胞は複数の造血系統に属し、このパターンは、PC移植片またはコントロール条件下で増殖させた移植片が生着した一次レシピエントに由来する骨髄細胞が生着した二次レシピエント内で観察されたパターンとは異なっていた(ANOVA、P<0.0001)。ドナー由来赤血球細胞の生着割合は、VPAで処理された移植片が生着したマウスに由来する骨髄細胞を持つ二次レシピエント内で、特に顕著であった(
図12B)(その全体が参照として本明細書に組み込まれるSauvageau et al., "In vitro and In vivo Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Oncogene 23:7223-7232 (2004))。VPAで処理された移植片が生着した骨髄細胞を持つ一次または二次レシピエントのいずれも、血液癌の証拠を発現または奇形腫を発症しなかった。奇形腫形成の可能性を更に排除するために、コントロール培養物もしくはVPA含有培養物から再単離されたCD34
+細胞またはES細胞を、それぞれNSGマウスの後肢に皮下注射し、8週間後に評価した。3つの異なる胚葉由来の細胞から成る奇形腫が、ES細胞を注入した動物に限り観察された(
図17)。
【0106】
VPA処理後の多能性遺伝子の上方制御の持続性を評価するために、ドナー細胞におけるこれら遺伝子の発現を、一次及び二次レシピエントNSGマウスにて評価した。qPCRを使用しても、一次及び二次レシピエントの骨髄細胞におけるSOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を含む多能性遺伝子の転写が検出されなかったことは、VPA誘導の上方制御が一過性であったことを示した。
【0107】
VPA処理で得られたHSCの増殖の割合を評価するために、限界希釈解析を使用して、PC、コントロール条件下で培養された当量数のPC由来の細胞、またはVPA含有培養物における、SRC頻度を比較した。数を増加させたPC(50、250、500、2,500、及び5,000)、またはコントロール条件下及びVPAでの処理後の当量数のPCに由来する細胞子孫を移植した結果、移植後のヒト細胞キメリズムの割合が増加した(
図13A)。ポアソン分布解析によって、SRC頻度は、PCでは1,115分の1(95%CI:1/596〜1/2,087)、コントロール培養物では9,223分の1(95%CI:1/3,419〜1/24,879)、及びVPAで処理された培養物では31分の1(95%CI:1/14〜1/66)であることが明らかとなった。PC、コントロール、及びVPA含有培養物の間の幹細胞頻度における全体の差は非常に有意であり(P=9.42×10
−29)、PCまたはコントロール培養物と比較して、VPA培養物においてSRC数が効果的に増加することが示された(
図13B並びに表4及び5)。
【0108】
(表4)NSGマウスにおけるヒト細胞生着の限界希釈解析
NSGマウスのBM中に存在するSRCの頻度一覧。PC及びコントロール条件下またはVPAで7日間培養した当量数のPCの子孫をNSGマウスに移植した。12〜13週間後、ヒトCD45
+細胞生着についてBMを解析した。
【0109】
1×10
6個のPC及びコントロール条件下で培養した細胞では、それぞれ897個のSRC及び108個のSRCが存在していたと計算された。一方、VPA含有培養物に由来する1×10
6個の細胞では、32,258個のSRCが存在していたと計算された(表5)。従って、コントロール培養条件下でのPCのインキュベーションはSRC数を減少させたが、VPA処理によって、PCと比較してSRC数が36倍(P≦0.002)増加し、コントロール条件下で培養した細胞と比較してSRC数が299倍(P≦0.002)増加する結果となった(
図13C)。
【0110】
(表5)SRCの頻度
SRCの頻度は、表4で提供されたデータ(STEMCELL Technologies社製L−Calcソフトウェア及びELDAソフトウェア)からポアソン統計を適用することで決定した。PC、コントロール、及びVPAを含むグループ間での幹細胞頻度における全体の差(
AP=9.42×10
−29)。
【0111】
考察
HSCの多能性は、HSCのクロマチン構造及びエピジェネティックな可塑性が動的に維持されることによって説明することができる。クロマチン構造の変換は、主に特異的なヒストンの翻訳後修飾により制御されて、結果として得られたクロマチン構造が、許容的か抑制的かを決定する(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。CB CD34
+細胞による幹細胞機能がSC培養条件及びサイトカインの組み合わせを使用したインビトロでの培養後に次第に失われることは、依然として、移植可能なHSC数のインビボでの増加に対する障壁である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Giebel et al., "Primitive Human Hematopoietic Cells Give Rise to Differentially Specified Daughter Cells Upon their Initial Cell Division," Blood 107(5):2146-2152 (2006);Ho et al., "The Beauty of Asymmetry: Asymmetric Divisions and Self-Renewal in the Haematopoietic System," Curr. Opin. Hematol. 14(4):330-336 (2007);Huang et al., "Symmetry of Initial Cell Divisions Among Primitive Hematopoietic Progenitors Is Independent of Ontogenic Age and Regulatory Molecules," Blood 94(8):2595-2604 (1999);Srour et al., "Modulation of In vitro Proliferation Kinetics and Primitive Hematopoietic Potential of Individual Human CD34+CD38-/lo Cells in G0," Blood 105(8):3109-3116 (2005))。この幹細胞機能の減退は、十分に機能的なHSCが、宿主内に存在する許容的環境から分離されて不利なエクスビボ環境へと配置され、それにより、自己複製能、骨髄再構築能、及び多系統分化能を含む、幹細胞の重要な機能を決定する遺伝子発現プログラムを変更するようなエピジェネティックな変化がもたらされることに起因すると考えられる。このHSC機能の喪失は、使用された培養条件に対して生じる細胞周期の急激な進行及び細胞分裂に起因している(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013);Sauvageau et al., "In vitro and In vivo Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Oncogene 23:7223-7232 (2004);Walasek et al., "Hematopoietic Stem Cell Expansion: Challenges and Opportunities," Ann. NY Acad. Sci. 1266:138-150 (2012))。エクスビボでの幹細胞増殖における先の試みは、造血微小環境と類似させ、それによって幹細胞の機能的完全性の保持を促す環境の構築に重点を置いたことが恐らく部分的な要因となり、ある程度の成果を得てきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011);Delaney et al., "Cord Blood Graft Engineering," Biol. Blood Marrow Transplant 19(1): S74-S78 (2013);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010))。エクスビボでのこのような微小環境構築の難しさは、十分理解されており、クロマチン構造に影響を及ぼす剤を使用してHSCのエピジェネティック特性を直接維持する試みである別のアプローチが取られてきた。このアプローチは、クロマチン状態の動的変化が、ヌクレオソームリモデリング、DNAメチル化、及びヒストンアセチル化によって媒介されるという理解に基づいている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012);Elizalde et al., "Histone Deacetylase 3 Modulates the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Stem Cells Dev. 21:2581-2591 (2012))。このために、本研究では、細胞分裂を繰り返した後でも幹細胞の機能保持に関与する遺伝子を持つクロマチン構造の脱凝縮を図るために、いくつかのHDACIについて、クラスI及びII HDACの両方を阻害することが可能であるかを評価した。HDAC1、HDAC3、及びHDAC5タンパク質は、3種の最も活性なHDACIによって均一に減少し、このことは、これら3種のHDACの組み合わせは、インビトロでの分裂後も幹細胞の機能を保持することを支持する幹細胞の運命決定において重要な役割を担うことを示唆した。
【0112】
HDACI処理はH3ヒストンアセチル化の増加をもたらすと、これまでに報告されてきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるChaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))、それと同時に、他の研究では、このような剤への曝露により、HDACへの結合及び/もしくはDNA脱メチル化の促進、並びに転写因子を関連DNAに結合させ得るヌクレオソームのスライド及び/もしくは移動、または特定のHDACのプロテアソーム分解を引き起こすポリユビキチン化のいずれかにより、抑制的修飾が失われる結果になることが示された(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。これらの相互作用によって、転写機構の形成に必要な追加のコアクチベーター及び/またはヒストン修飾酵素の動員が可能になり、転写活性化がもたらされる(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。VPAは、一次及び二次NSGマウスへの細胞移植後に最大割合のヒト細胞キメリズムを生成可能な細胞の産生にて評価した、すべてのHDACIの内で最も有効であったことを本明細書で報告している。VPA処理によって、SRC頻度はPCでの頻度と比較して36倍増加したが、HSCの高い増殖能及び多系統分化能特性は保持されたままであった。機能的HSCを産生する取り組みに関して、SC培養条件ではなくSF培養条件の使用が重要であることが示された。SF培養条件下でのVPA処理は、SC条件下でのVPA処理よりも、CD34
+CD90
+細胞の産生数が20,202倍高い結果となった。これらの結果は、血清は、機能的HSCの保持及び/または増殖に関与する調節遺伝子を阻害または抑制する因子を含むこと、並びに、血清の存在によってコミットメント及び分化に関与する遺伝子が上方制御されることを示している。これらの結果は、Hirai及び共同研究者によって報告された結果と非常に類似しており、彼らは、iPS細胞の作製効率は、培地の組成及び形質導入した細胞をフィーダー層上に播種する濃度の変化によって、劇的に改善させることが可能であることを示した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるHirai et al., "Efficient iPS Cell Production with the MyoD Transactivation Domain in Serum-Free Culture," PLoS One 7(3):e34149 (2012))。SF培養条件下でのVPA処理によって、7日間のインキュベーション後に分裂中のCD34
+CD90
+細胞画分の多くの継続的な分裂がもたらされ、それによって、CD34
+CD90
+細胞数の増加が説明されることも示した。これらの結果は、VPA処理によって、7日間の培養期間を更に超えて分裂し続けるための、CD34
+CD90
+細胞の能力が保持されることを示している。しかしながら、この特性は、より長期間のインキュベーション後に失われ、このことは恐らく、使用した条件下におけるエクスビボでの幹細胞決定遺伝子発現プログラムの一時的な保持を表している。SF条件及びVPA処理を使用して産生させたCB CD34
+細胞の未分化な性質を、CD184及びインテグリンα6(CD49f)発現割合の増大、CD45RA発現の欠如、並びにALDH活性割合の増加によって、更に本研究で立証した。CXCR4の発現増加は特に重要であり、その理由は、CXCR4とそのリガンドSDF1との相互作用が、幹細胞移植片の、移植されたレシピエント骨髄へのホーミングにおいて重要な役割を果たすからである(その全体が参照として本明細書に組み込まれるMotabi et al., "Advances in Stem Cell Mobilization," Blood Rev. 26(6):267-278 (2012))。
【0113】
VPAで処理されたCD34
+細胞における上方制御されたCD184の機能性は、これらの細胞がコントロール培養物に由来するCD34
+細胞よりも高い割合で、インビトロでSDF1に対して遊走する能力及びNSGマウス骨髄へホーミングする能力によって、本研究で立証した。従って、VPAで処理されたCB CD34
+細胞の骨髄再構築能の増大は、HSCの産生だけでなく、レシピエントマウス骨髄へのHSCホーミングの促進に対する効果に起因し得る。VPAで処理されたCD34
+細胞はまた、多能性関連遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3、ただしhTERTは除く、の上方制御を特徴とすることが見出された。VPAで処理されたCD34
+細胞のこれらの性質は、iPS細胞及びES細胞の特性であり、通常のHSCとはこれまで関連がなかった。これらの多能性遺伝子(SOX2、OCT4、及びNANOG)のノックダウンは、VPAによるCD34
+CD90
+細胞のエクスビボでの産生を減少させるために実施した。加えて、SON処理後にZIC3の下方制御が観察されたのは、恐らくOCT4、SOX2、及びNANOGの下流を制御することによる多能性維持への寄与の表れである(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007);Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013))。OCT4がヒト腫瘍内に存在するという先行文献が、他の研究者によって研究されており、それはOCT4活性を欠くOCT4偽遺伝子に起因していた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw et al., "Human Haematopoietic Stem Cells Express Oct4 Pseudogenes and Lack the Ability to Initiate Oct4 Promoter-Driven Gene Expression," J. Negat. Results Biomed. 9(1):2-8 (2010);Zangrossi et al., "Oct-4 Expression in Adult Human Differentiated Cells Challenges its Role as a Pure Stem Cell Marker," Stem Cells 25:1675-1680 (2007))。これら偽遺伝子の転写は、VPAで処理された細胞においては検出することができなかった。NANOGとOCT4の物理的相互作用を、VPAにより増殖した細胞に由来するこれらタンパク質のco−IPによって更に記録すると、ES細胞で観察された結果と類似していた。興味深いことに、Yu及び共同研究者の最近の報告によると、OCT4及びSOX2は、ヒト間葉系幹細胞におけるCD49fの発現を促進し、VPAで処理されたCD34
+細胞を特徴付ける表現型マーカーの多くが、これら多能性遺伝子の上方制御に関連する可能性を高めている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるYu et al., "D49f Enhances Multipotency and Maintains Stemness Through the Direct Regulation of OCT4 and SOX2," Stem Cells 30(5):876-887 (2012))。VPAで処理されたCB CD34
+細胞は不死化した細胞ではなく、iPS及びES細胞とは明らかに異なる生物学的特性を有していた。培養において無期限に維持可能であるiPS及びES細胞とは異なり、VPAで処理されたCD34
+細胞数は、培養から8日後に減少した。加えて、VPAで処理されたCD34
+細胞は、NSGマウス内にES及びiPS細胞の特性である奇形腫を形成しなかった。VPAで処理されたCD34
+細胞によるこれら多能性遺伝子の一時的な発現は、一次及び二次レシピエントNSGマウス内で、計30週間持続したヒト細胞における遺伝子転写の欠如によって更に立証した。これらのデータは、VPAで処理されたCD34
+細胞において誘導された、このような多能性遺伝子の一時的な発現が、恐らく細胞を不死化することなく、分裂するCB HSCの機能に影響を与えることを示している。
【0114】
CB CD34
+細胞の表現型を変化させるVPAの能力は、造血細胞分化の階層に沿って、未分化細胞の挙動に影響を与えることが知られているサイトカインの組み合わせの添加によって劇的な影響を受けた。PCは、少なくともサイトカインで16時間前処理しない限り、HSC数が減少した。CD34
+細胞及びCD34
+CD90
+細胞の数の増加は、これらの細胞を少なくともサイトカインで前処理し、次いで培地のみ(サイトカイン無し)またはVPAのみ(サイトカイン無し)の存在下で更に7日間インキュベートした場合に限り、可能であった。しかしながら、後続の7日間の期間中にサイトカイン無しでVPAに曝露された細胞のみが、VPA及びサイトカイン含有培養において観察された細胞と類似したHSC表現型(CD34
+CD90
+CD117
+CD49f
+CD184
+CD45RA
−)を発現した。重要なのは、7日間のインキュベーション期間にわたってサイトカインをVPAに添加した場合に、CD34
+細胞の増殖割合が更に大幅に増加したことであった。驚いたことに、サイトカインの存在下及び非存在下の両方で産生されたCD34
+細胞は、NSGマウスへの細胞移植時に多系統の造血を構築する能力を保持しており、このことは、プライミング段階における短期間のサイトカイン曝露によって、限定的な増殖と、血液学的生着を生じさせるのに十分なHSC機能の維持とがもたらわれたことを示していた。これらのデータは、HSCをある程度置いたエクスビボ環境が細胞の運命を決定すること、及び表現型に関与するHSCプログラムの保持は、SF培地内のVPAによってエピジェネティックにリプログラミングされた結果であり、同時に、細胞数の増加はサイトカイン曝露により促進された細胞増殖の結果であることを示している。
【0115】
本明細書で報告された研究は、CB移植の臨床研究に対して重要な意味を持つ。本報告で概要を示したアプローチの実施には、十分なSRC数を含む利用可能な幹細胞移植片を作製し、成人でもより好ましい成果の上がる同種CB幹細胞移植を継続できる可能性がある。
【0116】
実施例2−BFU−E+CFU−Mixの絶対数に対するHDACIの効果
VPA補充SF培養を用いて産生させた精製ALDH
+CD34
+細胞では、産生したBFU−E及びCFU−Mixの絶対数(8.4x10
7±6.7x10
7/CB収集物)が、SC培養(1.4x10
7±0.88x10
7)と比較して、より多かった(ANOVA,p=0.001)(
図20A)。一方、VPA補充SC培養物に由来するALDH
−CD34
+細胞では、産生したBFU−E及びCFU−Mixの数(2.7x10
6±1.0x10
6)が、SF培養(3.5x10
5±0.78x10
5)と比較して、より多かった(ANOVA,p=0.01)(
図20B)。これらのデータは、血清が、ALDH
+細胞及びALDH
−細胞の集団のインビトロでの運命に対して、特異的に影響を与えることを示している。
【0117】
実施例3−幹細胞表現型に対する凍結保存の効果
増殖させたHSC生成物は、移植センターへの配送前に凍結保存すると予想されるので、HSC表現型を発現する生存可能な細胞の回復に対する凍結保存の効果を調査した。CB−CD34
+細胞をVPAで7日間処理し、細胞数を数えて、解凍前後の両方で表現型解析を実施した。凍結保存は、Invitrogen社(Life Technologies社、グランドアイランド、NY)製Synth−a−Freezeを使用して実施した。
【0118】
Synth−a−Freezeは、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する合成液体凍結保存培地である。Synth−a−Freezeは、抗生物質、抗真菌剤、ホルモン、成長因子、血清、またはタンパク質を含まない。この培地は、HEPES及び重炭酸塩を緩衝剤としている。CD34
+細胞、CD34
+CD90
+細胞、及びCD34
+CD90
+CD184
+細胞の割合(%)は、凍結保存の前後で有意に変化しなかった(90%〜95%の細胞が生存可能のままであった)。これらのHSC表現型を発現する細胞の絶対数は、凍結保存の前後で変化しなかった(
図18)。これらのデータは、動物性タンパク質の必要なく、増殖させたHSC生成物の凍結保存の実施が可能であることを実証している。
【0119】
実施例4−表現型で定義されるすべてのクラスのHSCを含む、VPAにより増殖したHSC生成物
VPAにより増殖したHSCは多数の長期再構築細胞を含むことを示した。これらの細胞は、全能性細胞の特性である多能性遺伝子を発現するので、このような移植片には生着遅延を伴う可能性があるという妥当な懸念がある。Dick研究室では、短期並びに中間時点後及び長期間後にNSGマウスにおいて再構築されるHSCの階層を定義し、その表現型階層特性を同定した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるNotta et al., "Isolation of Single Human Hematopoietic Stem Cells Capable of Long-term Multilineage Engraftment," Science 333(6039):218-221 (2011))。短期SCID再構築細胞(R−SRC)は移植後2〜4週間でNSGマウスから検出され、その表現型はCD34
+CD90
−CD49f
−であり、中期SRC(IT−SRC)は12〜14週間後に再構築され、その表現型はCD34
+CD90
+CD49f
−であり、及び長期SRC(LT−SRC)は>24週間後に再構築され、その表現型はCD34
+CD90
+CD49f
+である。これらの様々なHSCクラスの分布を、VPAにより増殖したHSC生成物3つについて評価した。
図19A〜Cに見ることができる通り、HSCのこれらのクラスは各々、CB−CD34
+初代細胞と比較して、VPAで処理された細胞に存在する数が多かった。このことは、これらの増殖移植片が、未処理のCB移植片と比較して恐らくより短期で、持続的な生着パターンをもたらし、加えて移植失敗の発生率を低下させるだろうことを示唆した。興味深いことに、SF条件下にてサイトカインのみの存在下で処理したCB−CD34
+細胞が含む、R−SRC数が最も高い(
図19C)。この興味深い結果は、第1相試験の完了後にVPAで処理された移植片の注入が、造血回復に対して短期と関連がない場合、重要であり得る。これらの結果に基づいて、R−SRC数をより大幅に増加させることで更に短期での生着を促進させるために、CD34
+初代細胞のごく一部をサイトカインのみの存在下で増殖し、VPAで処理された細胞生成物と混ぜ合わせることが可能となった。
【0120】
本明細書(付随する特許請求の範囲、要約、及び図面のすべてを含む)に記載されたすべての特徴、及び/または同様に開示されたいかなる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、このような特徴及び/またはステップの少なくともいくつかが相互排他的な場合の組み合わせを除いて、任意の組み合わせでいかなる上記態様とも組み合わせられ得る。