特許第6525963号(P6525963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6525963血液疾患を治療するための、濃縮されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525963
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】血液疾患を治療するための、濃縮されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20190527BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20190527BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20190527BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20190527BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20190527BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20190527BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20190527BHJP
【FI】
   C12N5/0789
   C12Q1/02
   A61K35/51
   A61P7/00
   !C12N15/113 ZZNA
   !C12N5/10
   !C12N9/99
【請求項の数】30
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-514978(P2016-514978)
(86)(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公表番号】特表2016-524468(P2016-524468A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】US2014038361
(87)【国際公開番号】WO2014189781
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/983,805
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/825,354
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513321467
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディシン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チョウラシア プラティマ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ロナルド
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−534653(JP,A)
【文献】 PLoS One,2011年,Vol.6, No.7,e22158
【文献】 Stem Cells,2006年,Vol.24,pp.2877-2887
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞の濃縮された集団であって、該造血幹細胞が、サイトカインSCF、Flt3、TPO、及びIL3と接触しており、造血幹細胞が、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、かつCD45RAでありかつ多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する、前記濃縮された集団。
【請求項2】
前記造血幹細胞の少なくと60%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、請求項1に記載の濃縮された集団。
【請求項3】
前記造血幹細胞が、通常のヒト造血幹細胞と比較して、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて上方制御を示さない、請求項1または請求項2に記載の濃縮された集団。
【請求項4】
前記造血幹細胞の少なくと95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、求項1〜3のいずれか一項に記載の濃縮された集団。
【請求項5】
前記造血幹細胞が、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触している、求項1〜4のいずれか一項に記載の濃縮された集団。
【請求項6】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、VPA、SCR、LBH589、TSA、SAHA、Cay10433、及びCay10398からなる群より選択される、請求項に記載の濃縮された集団。
【請求項7】
前記造血幹細胞が、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触していない単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞と比較して減少した、HDAC1、HDAC3、及びHDAC5の発現を有する、請求項または請求項に記載の濃縮された集団。
【請求項8】
前記造血幹細胞の少なくと18.0%±1.2%が、G2/M期にある、求項1〜7のいずれか一項に記載の濃縮された集団。
【請求項9】
前記造血幹細胞の少なくと23.2%±13.8%が、G0/G1期にある、求項1〜8のいずれか一項に記載の濃縮された集団。
【請求項10】
以下の工程を含む、単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞の濃縮された集団の作製方法:
単離されたヒト造血臍帯血幹細胞の集団を提供する工程であって、該造血幹細胞が、サイトカインSCF、Flt3、TPO、及びIL3と接触している、工程、ならびに
単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞の濃縮された集団を作製するために、無血清培養系においてヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下にて、ヒト造血臍帯血幹細胞の単離された集団を処理する工程であって、該増殖したヒト造血臍帯血幹細胞が、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、かつCD45RAでありかつ多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する、工程。
【請求項11】
前記単離されたヒト造血臍帯血幹細胞の集団が、前記処理を行う20,202倍に増殖する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記処理が7日間実施される、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと88.3%±5.9%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖した造血幹細胞が、通常のヒト造血幹細胞と比較して、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて上方制御を示さない、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、請求項1014のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、VPA、SCR、LBH589、TSA、SAHA、Cay10433、及びCay10398からなる群より選択される、請求項1015のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖した造血幹細胞が、前記処理前の前記単離された幹細胞と比較して減少した、HDAC1、HDAC3、及びHDAC5の発現を有する、請求項1016のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、請求項1017のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと18.0%±1.2%が、G2/M期にある、請求項1018のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと23.2%±13.8%が、G0/G1期にある、請求項1019のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
象の血液疾患を治療するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞の濃縮された集団を含む薬学的組成物であって、該対象に投与される、薬学的組成物
【請求項22】
前記投与する工程が、濃縮または精製された調製物に由来する前記造血幹細胞を前記対象内に移植することによって実施される、請求項21に記載の薬学的組成物
【請求項23】
前記増殖した造血幹細胞が、前記対象由来である、請求項21または請求項22に記載の薬学的組成物
【請求項24】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと60%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、請求項2123のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項25】
前記増殖した造血幹細胞が、通常のヒト造血幹細胞と比較して、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて全く上方制御を示さない、請求項2124のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項26】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、請求項2125のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項27】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと23%が、G2/M期にある、請求項2126のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項28】
前記増殖した造血幹細胞の少なくと18%が、G0/G1期にある、請求項2127のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項29】
以下の工程を含む、造血幹細胞に対する化合物の効果を決定する方法:
請求項1〜のいずれか一項に記載の単離されかつ増殖したヒト造血臍帯血幹細胞の濃縮された集団を提供する工程;
造血幹細胞を、試験される化合物に接触させる工程;ならびに
造血幹細胞に対する該化合物の効果を決定するために、該接触後に該造血幹細胞を解析する工程。
【請求項30】
前記処理が、単一のエピジェネティックな制御因子の存在下にて実施され、該単一のエピジェネティックな制御因子がヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年5月20日出願のU.S. 61/825,354、及び2014年4月24日出願のU.S. 61/983,805の利益を主張し、両方ともその内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、濃縮されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞、その作製方法、及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
臍帯血(「CB」)造血幹細胞(「HSC」)は、幹細胞とその成熟細胞とを区別する多くの表現型及び機能的特性を有する(Cairo et al., "Placental and/or Umbilical Cord Blood: An Alternative Source of Hematopoietic Stem Cells for Transplantation," Blood 90:4665-4678 (1997)(非特許文献1);Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)(非特許文献2);Delaney et al., "Cord Blood Graft Engineering," Biol. Blood Marrow Transplant 19(1): S74-S78 (2013)(非特許文献3);Navarrete et al., "Cord Blood Banking: A Historical Perspective," Br. J. Haematol. 147:236-245 (2009)(非特許文献4);Stanevsky et al., "Umbilical Cord Blood Transplantation: Pros, Cons and Beyond," Blood Rev. 23:199-204 (2009)(非特許文献5))。CB CD34細胞が、より未分化であると考えられている理由は、その広範囲な増殖能、インビトロで造血コロニーを生成する高い能力、胎児ヘモグロビンを含有する赤血球細胞を形成する能力、及びこのような細胞の若干が持つ骨髄破壊的同種レシピエントを再構築する能力にある(Cairo et al., "Placental and/or Umbilical Cord Blood: An Alternative Source of Hematopoietic Stem Cells for Transplantation," Blood 90:4665-4678 (1997)(非特許文献1))。CB細胞を、血液悪性腫瘍及び遺伝性疾患に罹患した同種幹細胞レシピエントへのHSC移植片として使用することは、単一のCB収集物中に存在する幹細胞数に限りがあるため、小児または若年成人レシピエントに限定されてきた(Cairo et al., "Placental and/or Umbilical Cord Blood: An Alternative Source of Hematopoietic Stem Cells for Transplantation," Blood 90:4665-4678 (1997)(非特許文献1);Navarrete et al., "Cord Blood Banking: A Historical Perspective," Br. J. Haematol. 147:236-245 (2009)(非特許文献4);Stanevsky et al., "Umbilical Cord Blood Transplantation: Pros, Cons and Beyond," Blood Rev. 23:199-204 (2009)(非特許文献5))。これらの制約から、成人レシピエントにおける移植失敗及び生着速度(kinetics)遅延の割合が容認できないほど高い結果となった(Cairo et al., "Placental and/or Umbilical Cord Blood: An Alternative Source of Hematopoietic Stem Cells for Transplantation," Blood 90:4665-4678 (1997)(非特許文献1);Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)(非特許文献2);Delaney et al., "Cord Blood Graft Engineering," Biol. Blood Marrow Transplant 19(1): S74-S78 (2013)(非特許文献3);Navarrete et al., "Cord Blood Banking: A Historical Perspective," Br. J. Haematol. 147:236-245 (2009)(非特許文献4);Stanevsky et al., "Umbilical Cord Blood Transplantation: Pros, Cons and Beyond," Blood Rev. 23:199-204 (2009)(非特許文献5);Barker et al., "Combined Effect of Total Nucleated Cell Dose and HLA Match on Transplantation Outcome in 1061 Cord Blood Recipients with Hematologic Malignancies," Blood 115:1843-1849 (2010)(非特許文献6);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010)(非特許文献7))。これらの障害を克服する試みとして、2つの異なるCB移植片注入、またはCB CD34細胞のHSC周期進行及びそれに続く分裂を促進できる様々なサイトカインの組み合わせを使用するCD34細胞のエクスビボでの増殖など、いくつかの異なる方法が挙げられてきた(2、6−9)。エクスビボでの幹細胞増殖におけるこれらの初期の試みでは、より多数の造血始原及び前駆細胞を産生したが、骨髄再構築細胞数は減少してしまった。HSCの大半は、インビボでの細胞周期が遅い静止細胞である。(Giebel et al., "Primitive Human Hematopoietic Cells Give Rise to Differentially Specified Daughter Cells Upon their Initial Cell Division," Blood 107(5):2146-2152 (2006)(非特許文献8);Ho et al., "The Beauty of Asymmetry: Asymmetric Divisions and Self-Renewal in the Haematopoietic System," Curr. Opin. Hematol. 14(4):330-336 (2007)(非特許文献9);Huang et al., "Symmetry of Initial Cell Divisions Among Primitive Hematopoietic Progenitors Is Independent of Ontogenic Age and Regulatory Molecules," Blood 94(8):2595-2604 (1999)(非特許文献10);Srour et al., "Modulation of In vitro Proliferation Kinetics and Primitive Hematopoietic Potential of Individual Human CD34+CD38-/lo Cells in G0," Blood 105(8):3109-3116 (2005)(非特許文献11))。このようなサイトカインの組み合わせの存在下で生じるCB CD34細胞のエクスビボ細胞周期進行及び分裂を早めることで、HSCへのコミットメントをもたらしたが、静止状態を維持したまたは細胞分裂回数の少なかったわずかな幹細胞画分に、骨髄再構築能が残されていた(10−13)。ごく最近では、移植可能なCB HSCの数を増やすことを目的として、これらのサイトカインの組み合わせに対して、間葉系細胞フィーダー層、または固定化したnotchリガンド、銅キレート剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACI)、オールトランスレチノイン酸、アリールハイドロカーボン受容体のアンタゴニスト、プロスタグランジンE2(PGE2)、もしくはc−MPLアゴニストなどの多数の分子を添加してきた(Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)(非特許文献2);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010)(非特許文献7);Boitano et al., "Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Science 329:1345-1348 (2010)(非特許文献12);De Felice et al., "Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Enhances the Cytokine-Induced Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Cancer Res. 65:1505-1513 (2005)(非特許文献13);Himburg et al., "Pleiotrophin Regulates the Expansion and Regeneration of Hematopoietic Stem Cells," Nat. Med. 16:475-482 (2010)(非特許文献14);Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004)(非特許文献15);Nishino et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells by a Small-Molecule Agonist of c-MPL," Exp. Hematol. 37:1364-1377 e1364. (2009)(非特許文献16);North et al., "Prostaglandin E2 Regulates Vertebrate Haematopoietic Stem Cell Homeostasis," Nature 447:1007-1011 (2007)(非特許文献17))。これらのアプローチのいくつかは、臨床試験で評価されたが、長期ではなく短期の骨髄再構築細胞が多数産生される結果となった(Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)(非特許文献2);de Lima et al., "Transplantation of Ex vivo Expanded Cord Blood Cells Using the Copper Chelator Tetraethylenepentamine: A Phase I/II Clinical Trial," Bone Marrow Transplant 41:771-778 (2008)(非特許文献18);de Lima et al., "Cord-Blood Engraftment with Ex Vivo Mesenchymal-Cell Coculture," N. Engl. J. Med. 367(24):2305-2315 (2012)(非特許文献19);Delaney et al., "Notch-Mediated Expansion of Human Cord Blood Progenitor Cells Capable of Rapid Myeloid Reconstitution," Nat. Med. 16(2):232-236 (2010)(非特許文献20))。あるいは、同種CB移植の有効性を向上させるために、CB CD34細胞のホーミング及び生着効率を促進する方法も進められている(Goessling et al., "Prostaglandin E2 Enhances Human Cord Blood Stem Cell Xenotransplants and Shows Long-Term Safety in Preclinical Nonhuman Primate Transplant Models," Cell Stem Cell 8(4):445-458 (2011)(非特許文献21);Hoggatt et al., "Differential Stem and Progenitor-Cell Trafficking by Prostaglandin E2," Nature 495(7441):365-369 (2013)(非特許文献22);O'Leary et al., "The Role of Dipeptidyl Peptidase 4 in Hematopoiesis and Transplantation," Curr. Opin. Hematol. 20(4):314-319 (2013)(非特許文献23))。
【0004】
機能的CB HSC数を増やす代替アプローチが提案された。このアプローチは、血清含有(SC)培地及びサイトカインの組み合わせを使用してエクスビボでHSCを増殖させる先の試みが、実際はHSCの遺伝的プログラムを抑制するという仮説に基づいている(Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)(非特許文献2);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010)(非特許文献7);Rao et al., "Concise Review: Cord Blood Banking, Transplantation and Induced Pluripotent Stem Cell: Success and Opportunities," Stem Cells 30:55-60 (2012)(非特許文献24);Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004)(非特許文献15);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006)(非特許文献25);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007)(非特許文献26);Azuara et al., "Chromatin Signatures of Pluripotent Cell Lines," Nat. Cell Biol. 8:532-538 (2006)(非特許文献27);Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011)(非特許文献28);Delcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012)(非特許文献29);Gul et al., "Valproic Acid Increases CXCR4 Expression in Hematopoietic Stem/Progenitor Cells by Chromatin Remodeling," Stem Cells Dev. 18:831-838 (2009)(非特許文献30))。この代替方法は、HSCが対称分裂して追加の幹細胞を産生するかどうか、HSCが造血前駆細胞(HPC)を産生すると同時に最善でもHSC数を維持する非対称分裂をするかどうか、または、HSC数を枯渇させてより多くのHPCを産生するコミットメント対称分裂をするかどうかを決定する重要な役割を、エピジェネティックなメカニズムが担うという、多くの証拠と一致する(Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006)(非特許文献25);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007)(非特許文献26);Asai et al., "Necdin, a p53 Target Gene, Regulates the Quiescence and Response to Genotoxic Stress of Hematopoietic Stem/Progenitor Cells," Blood 120(8):1601-1612 (2012)(非特許文献31);Li, "Quiescence Regulators for Hematopoietic Stem Cell," Exp. Hematol. 39(5):511-520 (2011)(非特許文献32);Will et al., "Satb1 Regulates the Self-Renewal of Hematopoietic Stem Cells by Promoting Quiescence and Repressing Differentiation Commitment," Nat. Immunol. 14(5):437-445 (2013)(非特許文献33);Wilson et al., "Hematopoietic Stem Cells Reversibly Switch from Dormancy to Self-Renewal During Homeostasis and Repair," Cell 135(6):1118-1129 (2008)(非特許文献34))。
【0005】
本発明は、当該技術分野におけるこれらの及びその他の足りない点を克服することに関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cairo et al., "Placental and/or Umbilical Cord Blood: An Alternative Source of Hematopoietic Stem Cells for Transplantation," Blood 90:4665-4678 (1997)
【非特許文献2】Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011)
【非特許文献3】Delaney et al., "Cord Blood Graft Engineering," Biol. Blood Marrow Transplant 19(1): S74-S78 (2013)
【非特許文献4】Navarrete et al., "Cord Blood Banking: A Historical Perspective," Br. J. Haematol. 147:236-245 (2009)
【非特許文献5】Stanevsky et al., "Umbilical Cord Blood Transplantation: Pros, Cons and Beyond," Blood Rev. 23:199-204 (2009)
【非特許文献6】Barker et al., "Combined Effect of Total Nucleated Cell Dose and HLA Match on Transplantation Outcome in 1061 Cord Blood Recipients with Hematologic Malignancies," Blood 115:1843-1849 (2010)
【非特許文献7】Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010)
【非特許文献8】Giebel et al., "Primitive Human Hematopoietic Cells Give Rise to Differentially Specified Daughter Cells Upon their Initial Cell Division," Blood 107(5):2146-2152 (2006)
【非特許文献9】Ho et al., "The Beauty of Asymmetry: Asymmetric Divisions and Self-Renewal in the Haematopoietic System," Curr. Opin. Hematol. 14(4):330-336 (2007)
【非特許文献10】Huang et al., "Symmetry of Initial Cell Divisions Among Primitive Hematopoietic Progenitors Is Independent of Ontogenic Age and Regulatory Molecules," Blood 94(8):2595-2604 (1999)
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【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団に関する。この増殖した幹細胞は、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、CD45RA、並びに多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0008】
本発明の別の態様は、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団の作製方法に関する。本方法は、単離されたヒト臍帯血幹細胞の集団を提供する工程、並びに、このヒト臍帯血幹細胞の単離された集団を、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を作製するのに有効な条件下において無血清("SF")培養系においてヒストンデアセチラーゼ阻害剤("HDACI")の存在下にて処理する工程を含む。この増殖した幹細胞は、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、CD45RA、並びに多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0009】
本発明の更なる態様は、対象の血液疾患を治療する方法に関する。本方法は、対象における血液疾患を治療するために、本発明の単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を対象に投与する工程を含む。
【0010】
本発明において、無血清培養条件下においてHDACIで処理されたCD34細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)活性の増強、CD90、c−Kit(CD117)、インテグリンα6(CD49f)、及びCXCR4(CD184)の発現増加、ただしCD45RA発現の欠如、を含む未分化な幹細胞に関連する多くの特徴を備えた追加のCD34細胞を産生可能であることが示された(Notta et al., "Isolation of Single Human Hematopoietic Stem Cells Capable of Long−Term Multilineage Engraftment," Science 333(6039):218−221 (2011))。更に、SOX2、OCT4(POU5F1としても知られる)、NANOG、及び小脳のジンクフィンガータンパク質ファミリーメンバー3(ZIC3、HTXとしても知られる)を含み、ただしhTERT(テロメラーゼ逆転写酵素)は除く、多数の多能性遺伝子の上方制御が、バルプロ酸(VPA)処理と関連があった(Azuara et al., "Chromatin Signatures of Pluripotent Cell Lines," Nat. Cell Biol. 8:532−538 (2006))。HDACIで処理されたCD34細胞におけるSOX2、OCT4、及びNANOGのノックダウンによって、CD34細胞及びCD34CD90細胞の数が劇的に減少した。SF培養条件下でのHDACIを用いた処理によって、より多くの未分化細胞を産生するように、分裂するCB CD34細胞をプログラミングすることができ、その細胞から、放射線照射レシピエントマウス及び免疫不全二次レシピエントマウスの両方で血液悪性腫瘍または奇形腫を発症することなく再構築できたことが見出された。SCID再構築細胞(SRC)の数が、VPA処理された細胞ではCB CD34初代細胞(PC)での数と比較して36倍多かったことが、限界希釈解析により実証された。これらのデータは、幹細胞に特異的な転写因子を上方制御するエピジェネティックな方法により、分裂するCB HSCの自己複製能及び多系統への分化能を維持することを示している。
[本発明1001]
単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団であって、該幹細胞が、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、かつCD45RAでありかつ多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する、前記濃縮された集団。
[本発明1002]
前記幹細胞の少なくとも約60%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、本発明1001の濃縮された集団。
[本発明1003]
前記幹細胞が、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて上方制御を示さない、本発明1001または本発明1002の濃縮された集団。
[本発明1004]
前記幹細胞の少なくとも約95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、前記本発明のいずれかの濃縮された集団。
[本発明1005]
前記幹細胞が、SCF、Flt3、TPO、IL3、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインと接触している、前記本発明のいずれかの濃縮された集団。
[本発明1006]
前記幹細胞が、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触している、前記本発明のいずれかの濃縮された集団。
[本発明1007]
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、VPA、SCR、LBH589、TSA、SAHA、Cay10433、及びCay10398からなる群より選択される、本発明1006の濃縮された集団。
[本発明1008]
前記幹細胞が、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触していない単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞と比較して減少した、HDAC1、HDAC3、及びHDAC5の発現を有する、本発明1006または本発明1007の濃縮された集団。
[本発明1009]
前記幹細胞の少なくとも約18.0%±1.2%が、G2/M期にある、前記本発明のいずれかの濃縮された集団。
[本発明1010]
前記幹細胞の少なくとも約23.2%±13.8%が、G0/G1期にある、前記本発明のいずれかの濃縮された集団。
[本発明1011]
以下の工程を含む、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団の作製方法:
単離されたヒト臍帯血幹細胞の集団を提供する工程、ならびに
単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を作製するのに有効な条件下において、無血清培養系においてヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下にて、ヒト臍帯血幹細胞の単離された集団を処理する工程であって、該増殖したヒト臍帯血幹細胞が、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、かつCD45RAでありかつ多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する、工程。
[本発明1012]
前記単離されたヒト臍帯血幹細胞の集団が、前記処理を行うと約20,202倍に増殖する、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記処理が7日間実施される、本発明1011または本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約88.3%±5.9%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、本発明1011〜1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
前記増殖した幹細胞が、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて上方制御を示さない、本発明1011〜1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、本発明1011〜1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記無血清培養系が、SCF、Flt3、TPO、IL3、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインを更に含む、本発明1011〜1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、VPA、SCR、LBH589、TSA、SAHA、Cay10433、及びCay10398からなる群より選択される、本発明1011〜1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記増殖した幹細胞が、前記処理前の前記単離された幹細胞と比較して減少した、HDAC1、HDAC3、及びHDAC5の発現を有する、本発明1011〜1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、本発明1011〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約18.0%±1.2%が、G2/M期にある、本発明1011〜1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約23.2%±13.8%が、G0/G1期にある、本発明1011〜1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
以下の工程を含む、対象の血液疾患を治療する方法:
該対象における該血液疾患を治療するために、本発明1001〜1010のいずれかの単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を該対象に投与する工程。
[本発明1024]
前記投与する工程が、濃縮または精製された調製物に由来する前記幹細胞を前記対象内に移植することによって実施される、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記増殖した幹細胞が、前記対象由来である、本発明1023または本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約60%が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である、本発明1023〜1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記増殖した幹細胞が、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて全く上方制御を示さない、本発明1023〜1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約95%が、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して陽性である、本発明1023〜1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約23%が、G2/M期にある、本発明1023〜1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記増殖した幹細胞の少なくとも約18%が、G0/G1期にある、本発明1023〜1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
以下の工程を含む、造血幹細胞に対する化合物の効果を決定する方法:
本発明1001〜1010のいずれかの単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を提供する工程;
該幹細胞を、試験される化合物に接触させる工程;ならびに
該幹細胞に対する該化合物の効果を決定するために、該接触後に該幹細胞を解析する工程。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A〜Dは、CB CD34細胞、CB CD34CD90細胞、及びCB CD34CD90CD184細胞のエクスビボにおける増殖に対するHDACIの効果を示している。図1Aは、臍帯血(CB)CD34初代細胞(PC)のエクスビボにおける増殖方法の略図である。新たに単離されたPCを、無血清(SF)培地または血清含有(SC)培地のいずれかにおいてサイトカインで16時間前処理した。次いで、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACI)の存在下/非存在下において、追加のサイトカインを入れてまたは入れずに、前述の培養条件下で細胞を更に7日間処理した。この増殖させた細胞/再単離されたCD34細胞を、更なる解析に使用した。個々のCBPCを、SF培地中、バルプロ酸(VPA)、スクリプタイド(SCR)、またはCAY10433(C433)の非存在下(コントロール)または存在下にて、サイトカインで7日間処理した。VPAでは、その他のHDACIよりも、CB収集物当たりCD34細胞(p<0.05及び**p<0.005)(図1B)、CD34CD90細胞(p<0.05及び**p<0.005)(図1C)並びにCD34CD90CD184細胞(***p=0.0005)(図1D)の絶対数が有意に高い産生結果となった(平均±SE;図1B図1C(ANOVA p≦0.0007)及び図1D(ANOVA、p<0.0001)(n=6〜7)。
図2図2A〜Bは、CB CD34細胞及びCB CD34CD90細胞のエクスビボにおける増殖に対するVPAの効果を示している。図2Aでは、サイトカイン存在下におけるCB CD34細胞及びCB CD34CD90細胞の産生割合は、血清含有(SC)培養の場合よりも無血清(SF)培養の場合の方が高かった。SC培養と比較して、VPA含有SF培養で、CD34細胞及びCD34CD90細胞の増加倍率に有意差が観察された。p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005(平均±SE;ANOVA、p<0.0001)、(n=5〜7)。図2Bは、PC細胞、及び、SF培地中、コントロール条件下またはVPAの存在下において処理されたCD34細胞の表現型解析を示している。CD34、CD90、CXCR4(CD184)、CD49f及びCD45RAの発現について、各細胞集団を解析した。CD34CD90細胞(枠内)とCD184、CD49f及びCD45RAとの共発現が図示されている(n=4)。
図3図3A〜Bは、CD34細胞の遊走及びホーミングに対するVPAの効果を示している。図3Aは、VPAの非存在下(コントロール)または存在下(7日間)で産生された再単離されたCD34細胞の、SDF1(100ng/mL)により誘導された遊走の結果を示している。16時間後及び48時間後におけるSDF1に対して遊走した細胞数は、VPAで処理されたCD34細胞の方が有意に高かった(平均±SE、p<0.05、片側t検定)、(n=4)。図3Bは、VPAの非存在下(コントロール)または存在下(7日間)で産生された再単離されたCD34細胞の、注入後16時間及び48時間におけるNSGマウス内でのホーミングを示している(平均±SE、****p<0.0001、p<0.05)。NSGマウスレシピエント(n=35)。
図4図4A〜Bは、CD34CD90細胞の細胞周期の異なる段階に対するVPAの効果を示している。図4Aは、7日間のコントロール条件下のSF培養(上部パネル−26.4%)またはVPA含有培養(下部パネル−82.9%)後のCD34CD90細胞のフローサイトメトリーによる細胞周期解析を示している。対応するドットプロットは、BrdUでパルスラベリング(2.5時間)し、7AADで染色することにより細胞周期の異なる段階における細胞を示している(G0/G1、S及びG2/M)。3つの代表的な実験のうちの1つが示されている。図4Bは、細胞周期の異なる段階におけるCD34CD90細胞の割合(%)を示している。VPA含有培養において、G0/G1期(p<0.05)、S期(P<0.05)、及びG2/M期(****p<0.0001)で、CD34CD90細胞数の有意な増加が観察された(平均±SD;ANOVA p<0.002)、(n=3)。
図5図5A〜Bは、サイトカインの不在下における、CB CD34細胞及びCB CD34CD90細胞のエクスビボにおける増殖に対するVPAの効果を示している。図5Aでは、CB CD34初代細胞(PC)を、図1Aに記載の通りにサイトカインで前処理し、追加のサイトカインを入れずに、SF培養条件下にて培地のみ(サイトカイン無し)またはVPAのみ(サイトカイン無し)で7日間処理した。培地のみ(サイトカイン無し)及びVPAのみ(サイトカイン無し)を含む培養の両方で、PCと比較してCD34細胞及びCD34CD90細胞の数が有意に高い結果となった(****p<0.0001及びp<0.05)(平均±SE;ANOVA、p<0.0001)、(n=6)。図5Bでは、培地のみ(サイトカイン無し)対VPAのみ(サイトカイン無し)を含むSF培養において、CD34細胞及びCD34CD90細胞の増加倍率に有意差が観察されたp<0.05、**p<0.005(平均±SE;ANOVA、(p<0.0001)、(n=6)。
図6】HDACタンパク質発現レベルに対するHDACIの効果を示している。臍帯血単核細胞(CB−MNC)を新たに単離し、スクリプタイド(SCR)、CAY10433(C433)、またはバルプロ酸(VPA)の非存在下及び存在下にて24時間処理した。全細胞溶解物を調製し、実施例に記載された通り、クラスI(1、2、及び3)、クラスIIa(4及び5)、並びにクラスIIb(6)のHDACに特異的なHDAC mAbを使用して、ウェスタンブロットを実施した。ローディングコントロールとしてb−アクチンを使用した。Unは未処理の新たに単離されたCB−MNCであり、Cはコントロールである。4つの代表的な実験のうちの1つが示されている。
図7図7A〜Bは、増殖したCB−CD34細胞におけるアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)機能活性を示している。図7Aは、コントロール条件下またはVPAで7日間処理された臍帯血(CB)CD34初代細胞(PC)の結果を、ALDH活性評価用のサイトカインと共に示している。ALDHCD34細胞(左列)、ALDH細胞(中央列)を含む、様々な細胞集団の等高線プロット解析。ALDH細胞(枠内)は、CD34及びc−kit(CD117)(右列)の共発現用にゲートされた。VPA含有培養(p=0.001)のみならず、血清含有(SC)コントロール培養(p=0.005)と比較して無血清(SF)培養においても、より高い割合でALDH活性が観察された。同様に、ALDHCD34細胞及びALDHCD34CD117細胞の割合(%)は、SC培養と比較してSF培養において有意に高かった(それぞれp=0.001及びp=0.007)。左パネルはSC培養であり右パネルはSF培養である。7つの代表的な実験のうちの1つが示されている。図7Bに示すように、SC培養と比較してSF培養において、VPAの存在下にて、はるかに多数のALDHCD34CD117細胞が産生された(平均±SD;p<0.05、ANOVA、p=0.009)、(n=3〜5)。
図8図8A〜Cは、VPAにより増殖したCD34細胞における多能性遺伝子の転写結果を示している。図8Aは、VPAで処理されたCD34細胞における多能性遺伝子の発現結果を示している。CD34細胞を、無血清(SF)培養及び血清含有(SC)培養においてVPAの存在下又は非存在下にて処理した後、再単離した。全RNAからcDNAを調製し、RT−PCRを実施した。胚性幹(ES)細胞は、SOX2/OCT4/NANOG転写のポジティブコントロールであり、CD34発現のネガティブコントロールである。RT−PCRでは、SF培養条件下にてVPAで処理されたCD34細胞において偽OCT4の発現は検出されなかった。コントロール/VPA(SF)及びVPA(SC)/ES細胞のレーンの泳動は2つの異なるゲルにて実施し、OCT4−偽遺伝子/本物のレーンの泳動は単一ゲルにて実施した。GAPDH:ハウスキーピング遺伝子、M:50bp DNAラダー。4つの代表的な実験のうちの1つが示されている。図8Bは、多能性に関する遺伝子に対するVPAの効果の定量を示している。異なる条件下で培養されたCD34細胞を単離し、上記の通りに処理した(図8A)。遺伝子(SOX2/OCT4/NANOG)の相対転写レベルは、Sybr Green Q−PCRによって計算した。コントロール培養(左パネル)及びVPA含有培養(右パネル)から再単離されたCD34細胞によるmRNA発現の倍率変化は、PC中に存在する、対応する転写レベルを基準として正規化することにより計算した(平均±SD;ANOVA、p=0.0001)、(n=4)。図8Cは、SFまたはSC培養条件下でのVPA処理後のクロマチンリモデリング及び多能性に関する遺伝子発現の定量を示している。SET、MYST3、SMARCAD1、及びZIC3遺伝子のmRNA発現レベルの倍率変化を、上記の通りに計算した(平均±SE、ANOVA、p=0.04)、(n=3)。
図9A図9A〜Cは、VPAにより増殖したCD34細胞における多能性遺伝子の発現結果を示している。図9Aは、コントロール条件下またはVPAへの曝露後の培養から7日後に再単離されたCD34細胞におけるSOX2、OCT4、及びNANOG発現の代表的なフローサイトメトリー解析結果を示している。細胞を固定し、透過処理し、SOX2/OCT4/NANOG mAbまたは対応するアイソタイプIgG(各パネル内の一番左側の曲線)で染色して、コントロール培養(コントロールパネル内の一番右側の曲線)及びVPA培養(VPAパネル内の一番右側の曲線)から再単離されたCD34細胞における細胞内タンパク質レベルを評価した。4つの代表的な実験のうちの1つが示されている。
図9B図9A〜Cは、VPAにより増殖したCD34細胞における多能性遺伝子の発現結果を示している。図9Bは、多能性遺伝子発現の共焦点顕微鏡解析結果を示している:実施例に記載されている通り、SF培養においてVPAで処理した後にCD34細胞を再単離し、アイソタイプ適合IgG、またはOCT4/SOX2/NANOG及びZIC3抗体(FITC)で免疫染色した。細胞核は、DAPIで染色した。共焦点Z軸方向の単一の光学的断面(スケールバー=10μm、OCT4、SOX2、及びNANOG(63倍)並びにIgG、ZIC3及び高倍率OCT4(126倍)が示されている。3つの代表的な実験のうちの1つが示されている。
図9C図9A〜Cは、VPAにより増殖したCD34細胞における多能性遺伝子の発現結果を示している。図9Cは、多能性遺伝子の共免疫沈降結果を示している。ES(H9)細胞及びVPAで処理された細胞の子孫(V)を7日目に溶解させて、ESまたはV細胞溶解物をNANOG pAb(または抗IgGコントロール)で免疫沈降(IP)し、SDS−PAGEにより分画した。ES細胞及びVPAで処理された細胞に由来する全タンパク質溶解物(インプット)も同じゲル内に含まれていたが、不連続であった。ウェスタンブロット解析(WB)を、OCT4 pAbを使用して実施した。NANOG mAbを使用したWBも、ES及びV溶解物で実施した。b−アクチンは、ローディングコントロールである。3つの代表的な実験のうちの1つが示されている。
図10A図10A〜Eは、siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンの結果を示している。図10Aでは、CB CD34初代細胞(PC)を無血清(SF)培養においてVPAで処理した。3日後、SOX2、OCT4、及びNANOG(SON)のプール、スクランブル(ネガティブコントロール)、並びにGAPDH siRNA(ポジティブコントロール)で、実施例に記載された通りに細胞をトランスフェクションした。SOX2、OCT4、NANOG、GAPDH、及びZIC3の転写を、Sybr Green Q−PCRで定量し、CD34の転写物のレベルを基準として正規化したp<0.05、**p≦0.006、***p=0.0001(平均±SE;ANOVA、p<0.0001)、(n=3)。
図10B図10A〜Eは、siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンの結果を示している。図10Bでは、siRNAによるノックダウン後にSOX2/OCT4/NANOG、CD34及びGAPDHの発現をRT−PCRにて解析した。M:DNAマーカー。胚性幹(ES)細胞は、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3のポジティブコントロールである。レーンの泳動は、同じゲル上で実施した。
図10C図10A〜Eは、siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンの結果を示している。図10Cでは、多能性遺伝子の発現を共焦点顕微鏡にて解析した。上部パネル:スクランブルsiRNA及び下部パネル:SON siRNAは、VPAで処理した細胞におけるSOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3の発現を示している。画像は、共焦点z軸方向の光学的断面を表す;スケールバー=10μm(40倍)。2つの追加実験で、類似データが得られた。
図10D図10A〜Eは、siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンの結果を示している。図10Dでは、トランスフェクションの7日後、CD34及びCD34CD90である細胞の割合(%)を、フローサイトメトリーを使用して解析した。このグラフは、スクランブル及びSONを含むsiRNAでトランスフェクションした後、VPA培養において産生されたCD34細胞及びCD34CD90細胞の割合(%)の比較分析を表す。p<0.05(平均±SE;ANOVA、p=0.0005)、(n=3)。
図10E図10A〜Eは、siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンの結果を示している。図10Eは、スクランブルまたはSON siRNAでトランスフェクションした後、VPA含有培養において産生されたCD34細胞及びCD34CD90細胞の絶対数/CB収集物を計算したものを示している。p<0.05、***p=0.0001(平均±SE;ANOVA、p=0.0008)、(n=3)。
図11図11A〜Fは、一次NSGマウスにおけるヒト細胞キメリズム解析結果を示している。NSGマウスに、初代細胞(PC)、コントロール培養物及びVPA含有培養物から再単離されたCD34細胞を移植した。(図11A)ヒト細胞(CD45)、(図11B)CD34CD45細胞、(図11C)CD34CD184細胞、(図11D)CD33細胞、並びに(図11E)巨核球(CD41)、赤血球細胞(グリコフォリンA(GPA))、顆粒球(CD14)、T細胞(CD3)及びB細胞(CD19)のキメリズムの割合(%)の平均値±SDをフローサイトメトリーによって測定した。図11Fでは、PC、VPA含有または非含有のSF培養条件下でサイトカインの非存在下または存在下において処理したCD34細胞の移植について、ヒト細胞キメリズムの割合の平均値の比較分析を行った。(図11A**p=0.006、***p=0.0008(ANOVA p<0.0001)、(図11B**p=0.004(ANOVA、p=0.03)、(図11Cp=0.01、**p=0.0008(ANOVA、p=0.01)、(図11D**p=0.003、****p<0.0001(ANOVA、p<0.0001)及び(図11E)中央値±SD p<0.05、**p<0.005、(ANOVA、p<0.0001)及び(図11Fp<0.05(片側t検定)、**p≦0.002(ANONA<0.0001)。NSGレシピエント(n=27)。
図12図12A〜Bは、二次NSGマウスにおけるヒト細胞キメリズム解析結果を示している。CB CD34初代細胞(PC)または前述の様々な条件下で7日間増殖させた移植片を移植してから13〜14週間後、一次レシピエントマウスを犠牲死させて、2×10個のBM細胞を二次NSGマウスへと移植した。各バーは、モノクローナル抗体染色及びフローサイトメトリー解析により測定した、二次NSGマウスの骨髄内に生じたヒトドナー細胞生着、並びに(図12A及び12B)一次レシピエントから異なる種類の移植片を移植して15〜16週間後の二次NSGマウス内に生じた多系統の造血細胞の生着の割合(%)の中央値を表す。2〜3匹のマウスが、各グループに存在した。系統分化パターンには、統計上の有意差があったP<0.05、**p<0.005、(中央値±SD、図12A及び図12B(ANOVA、p<0.0001))、NSGレシピエント(n=18)。
図13A図13A〜Cは、CB CD34初代細胞(PC)及びコントロール条件下で培養またはVPAで処理された当量数のCD34細胞の子孫中に存在するSCID再構築細胞(SRC)の頻度比較結果を示している。図13Aでは、数を増加させたPC(50、250、500、2500、及び5000)、並びにコントロール条件下またはVPAの存在下で培養した当量数の細胞で培養を始めた子孫を、それぞれNSGマウスに移植した。12〜13週間後の、レシピエントマウスのBMにおけるヒトCD45細胞の生着割合(%)を示している。
図13B図13A〜Cは、CB CD34初代細胞(PC)及びコントロール条件下で培養またはVPAで処理された当量数のCD34細胞の子孫中に存在するSCID再構築細胞(SRC)の頻度比較結果を示している。図13Bでは、ヒト細胞生着の証拠の有るまたは無いマウスの数を用いてポアソン統計解析を行った(表3)。このグラフは、PCまたはコントロール培養物もしくはVPA含有培養物に由来する当量数のCD34細胞の子孫を移植後、ヒト細胞キメリズムが生じなかった(ネガティブ)マウスの割合(%)を表す。点線は、95%信頼区間を表す。
図13C図13A〜Cは、CB CD34初代細胞(PC)及びコントロール条件下で培養またはVPAで処理された当量数のCD34細胞の子孫中に存在するSCID再構築細胞(SRC)の頻度比較結果を示している。図13Cでは、ポアソン統計解析を使用してSRC数を計算し、SRC/1×10個のCD34細胞の数値として表した**P≦0.002(ANOVA、p=0.003)、NSGマウスレシピエント(n=111)。
図14】臍帯血(CB)CD34初代細胞(PC)、及び、サイトカインのない無血清(SF)培地(培地のみ)またはサイトカインのないVPAのみの存在下で7日間培養したCD34細胞の表現型解析結果を示している。培養された細胞のCD34、CD90、CXCR4(CD184)、CD49f及びCD45RAの発現を示している。CD34CD90細胞とCD184、CD49f及びCD45RAとの共発現が図示されている。(n=4)
図15】HEK293細胞におけるHDACタンパク質レベルに対するHDACIの効果を示している。HEK293細胞は、SCR、C433、及びVPAで2時間(T1)及び24時間(T2)処理された。実施例に記載された通り、クラスI(1、2、及び3)、クラスIIa(4及び5)並びにクラスIIb(6)のHDACそれぞれに対してモノクローナル一次抗体(mAb)を用いて、ウェスタンブロットで調査した。各HDACIは、HDAC2及びHDAC4の発現に均一に影響を与えた。β−アクチンは、ローディングコントロールとして使用した。(n=4)
図16】ES細胞における多能性遺伝子の共焦点顕微鏡解析結果を示している。実施例に記載された通り、ES(H9)細胞を固定し、透過処理し、OCT4/SOX2/NANOG/ZIC3抗体(FITC)で染色した。細胞核は、DAPIで染色した。SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を含む多能性遺伝子タンパク質は、ES細胞の細胞質よりも細胞核内でより顕著であった。共焦点Z軸方向の各光学的断面(スケールバー=25μm(光学ズームで63倍))が示されている。
図17図17A〜Gは、奇形腫形成アッセイの結果を示している。1×10個のES(H9)細胞またはコントロール培養物もしくはVPA含有培養物から再単離されたCD34細胞をマトリゲルと混合し、NSGマウスの右後肢に皮下注射した(n=9)。8週間後、マウスを犠牲死させて腫瘤を切開し、固定して、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。(図17A及び図17B)ES(H9)細胞のみ3匹のマウスそれぞれに奇形腫を形成し(左パネル)、(図17C)コントロール及びVPAで処理されたCD34細胞のどちらも奇形腫を形成しなかった(右パネル)。(図17D)3つの異なる胚葉(小さい矢印−外胚葉、実線矢印−中胚葉、及び破線矢印−内胚葉)(4倍)、(図17E)中胚葉(軟骨)(4倍)、(図17F)着色した外胚葉(20倍)、並びに(図17G)内胚葉(20倍)を示す染色断面の顕微鏡写真である。ES(H9)、コントロール及びVPAを含むグループごとに、3匹のマウスを使用した(n=9マウス)。
図18】CD34細胞、CD34CD90細胞、及びCD34CD90CD184細胞の絶対数の結果を示している:CB−CD34細胞をVPAで7日間処理し、凍結保存前後(5週間)に表現型解析を実施した。ns=有意ではない。(n=2)。
図19図19A〜Cは、VPAにより増殖したHSC生成物は、表現型で定義されるすべてのクラスのHSCを含むことを示している。VPAにより増殖したCD34細胞を、CD34CD90CD49f短期(R−SRC)、CD34CD90CD49f中期(IT−SRC)、及びCD34CD90CD49f長期(LT−SRC)について解析した(n=3)。
図20図20A〜Bは、ALDHCD34細胞及びALDHCD34細胞から産生されたBFU−E+CFU−Mixの絶対数に対するHDACIの効果を示すグラフである:以下の実施例に記載された通り、CA、VPA、SCR、またはC433で処理したCD34細胞を、Aldefluor及びCD34モノクローナル抗体で染色し、7日目に分取した。SC培養と比較して、SF培養において各HDACIの存在下で産生されたALDHCD34細胞から、はるかに多数のBFU−E+CFU−Mixが産生された(ANOVA、p=0.001)。一方、SF培養と比較して、SC培養におけるALDHCD34細胞から、多数のBFU−E+CFU−Mixが産生された。平均±SE、ANOVA、p=0.01(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒト臍帯血由来の単離されかつ増殖した幹細胞の濃縮された集団、そのエクスビボにおける増殖、並びに単離されかつ増殖した幹細胞の濃縮された集団を対象に投与する工程を含む治療方法に関する。本発明にしたがって、造血幹細胞を無血清培地内及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下にてエクスビボで培養することにより造血幹細胞を増殖させて、特定の表現型を発現するユニークな幹細胞集団を得ることが可能である。
【0013】
一態様によれば、本発明は、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団に関する。この増殖した幹細胞は、CD34、CD90、CD184、CD49f、CD117、ALDHであるが、CD45RAの発現はわずかであり(即ち、CD45RAであり)、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0014】
造血幹細胞は、多分化性または多能性細胞であり、全系統の血液細胞へと自身を分化させることが可能で、その多分化性または多能性を維持しながら自己再生する能力を持つ。
【0015】
本発明の濃縮されかつ増殖した幹細胞は、ヒトから単離され、ヒト臍帯血由来である。
【0016】
本発明の濃縮された集団の幹細胞は、CD34、CD90、CD184、CD49f、CD117、かつCD45RAである。CD34、CD90、CD184、CD49f、CD117とは、細胞表面上に(+)CD(分化抗原群)34、90、184、49f、及び117抗原を発現することを意味する。これらの抗原は、造血幹細胞のマーカーである。CD45RAとは、細胞表面上に抗原CD45RAを発現しない(または発現がわずかである)ことを意味する。本発明の幹細胞集団は、幹細胞マーカーのCD34、CD90、CD184、CD49f、CD117、かつCD45RAについて濃縮され、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0017】
骨髄再構築能を有するヒト造血幹細胞の存在を試験する実験手法は、例えば、糖尿病マウス及び免疫不全マウスを交配させて得られたNOD/SCIDマウスを使用することにより実施することができる。このアッセイにより検出される細胞は、SCID再構築細胞(SRC)と呼ばれ、ヒト造血幹細胞に最も近いと考えられている。
【0018】
本発明の幹細胞集団における幹細胞は、増殖した幹細胞と称され、培養後の造血幹細胞数が培養前よりも多い、言い換えれば、培養後の造血幹細胞数が、臍帯血サンプルから採取した細胞数よりも多いことを意味する。
【0019】
一実施形態では、本発明の幹細胞の濃縮された集団は、臍帯血から単離された造血幹細胞の自己複製から得られる造血幹細胞のみを含有するかまたは主として含有する幹細胞集団である。単離された造血幹細胞から分化した造血前駆細胞、または造血幹細胞及び造血前駆細胞の両方を含有する細胞集団もまた、濃縮された集団内に存在してもよい。しかしながら、一実施形態では、濃縮された集団内の造血前駆細胞数が、造血幹細胞数よりも少ない。例えば、実験結果において、7日後のVPAで処理された細胞は、主にCD34CD90(74.2±9.8%)細胞を含み、残りの細胞はグリコフォリン(17.0±5.4%)、CD41(8.9±2.0%)、CD14(3.9±1.5%)であり、T細胞(CD3− 0.2±0.3%)及びB細胞(CD19− 0.5±0.1%)は実質的に存在しなかった。増殖移植片は、細胞質に顆粒がなく顕著な核小体を有する、未分化の小さな未成熟単核細胞の均一集団から構成された。
【0020】
一実施形態では、濃縮された集団は、細胞質に顆粒がなく顕著な核小体を有する、未分化の小さな未成熟単核細胞の均一集団を含む。
【0021】
造血幹細胞の増殖は更に、上記表現型を有する造血幹細胞の絶対数を増加させるための造血幹細胞の分化を意味する。一実施形態では、濃縮された集団における幹細胞の少なくとも約16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、または26%が、G2/M期にある。あるいは、濃縮された集団における幹細胞の約18.0%±1.2%または約17〜19%が、G2/M期にある。別の実施形態では、濃縮された集団における幹細胞の少なくとも約4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、または37%が、G0/G1期にある。あるいは、濃縮された集団における幹細胞の約23.2%±13.8%または約20〜26%が、G0/G1期にある。
【0022】
本発明の濃縮された集団の幹細胞は、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する追加特性を有する。一実施形態では、濃縮された集団における幹細胞の少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%が、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0023】
一実施形態によれば、濃縮された幹細胞の集団の幹細胞は、胚性幹細胞の多能性遺伝子hTERTの発現レベルにおいて上方制御を示さない。
【0024】
一実施形態では、本発明の濃縮された集団における幹細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である。具体的には、本発明の濃縮された集団における幹細胞の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはそれより多くが、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に対して陽性である。
【0025】
本発明の濃縮された幹細胞の集団は、SCF、Flt3、TPO、IL3、及びこれらのサイトカインの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインと接触していてもよい。
【0026】
加えて、濃縮された集団の幹細胞は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触していてもよい。好適なヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、VPA、SCR、LBH589、TSA、SAHA、BML−210としても知られるCay10433(C433)、及びCay10298が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の濃縮されかつ増殖した集団における幹細胞は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触していない単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞と比較してHDAC1、HDAC3、及びHDAC5の発現が減少している。
【0028】
本発明の幹細胞が濃縮された集団には、T細胞及びB細胞がほぼ無い。例えば、本発明の一実施態様では、濃縮された集団は圧倒的にCD34CD90、CD41、及びCD14細胞を含み、T細胞及びB細胞は実質的に存在しない。例えば、濃縮された集団は、約64〜84%のCD34CD90細胞、約12〜23%のグリコフォリン(GPA)細胞、約7〜11%のCD41細胞、約2.5〜5.5%のCD14細胞、約0〜0.5%のT細胞(CD19)、及び0.4〜0.6%のB細胞(CD3)を含んでもよい。一実施形態では、増殖した幹細胞には、T細胞及びB細胞がほぼ無く、限られた数の単球(CD14)を含む。
【0029】
一実施形態によれば、本発明の濃縮された幹細胞の集団は、以下の表現型マーカーを含む:HDACIの存在下で約7日間培養後、約64〜84%、65〜83%、66〜82%、67〜81%、68〜80%、69〜79%、70〜78%、71〜77%、72〜76%、73〜75%、または74%のCD34CD90細胞;約12〜23%、13〜22%、14〜21%、15〜20%、16〜19%、または17〜18%のグリコフォリン(GPA)細胞;約7〜11%、8〜10%、または9%のCD41細胞;約2.5〜5.5%、3〜5%、または4%のCD14細胞;約0〜0.5%のCD19細胞;及び約0.4〜0.6%のCD3細胞。
【0030】
本発明の濃縮されかつ増殖した集団における幹細胞は、今後の使用のために凍結保存されてもよい。凍結保存方法は、Berz et al., "Cryopreservation of Hematopoietic Stem Cells," Am. J. Hematol. 82(6):463-472 (2007)に開示されており、その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【0031】
本発明の別の態様は、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団の作製方法に関する。本方法は、単離されたヒト臍帯血幹細胞の集団を提供する工程、並びに単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を作製するのに有効な条件下において、無血清培養系においてヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下にて、このヒト臍帯血幹細胞の単離された集団を処理する工程を含む。この増殖したヒト臍帯血幹細胞は、CD34、CD90、CD184、CD117、CD49f、ALDH、CD45RAであり、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する。
【0032】
本発明のこの態様の一実施形態では、無血清培養系においてヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下にて、ヒト臍帯血幹細胞の単離された集団の処理を実施して、幹細胞の絶対数を増加させる。例えば、本方法を実施して、幹細胞(CD34CD90)の絶対数を約2.0×10倍増加させることができる。
【0033】
本発明の方法により得られた単離されかつ増殖した幹細胞の濃縮された集団における幹細胞は、上記の増殖しかつ濃縮された幹細胞の集団の特性を有する。
【0034】
本発明の方法の実施において、培養系としては、ペトリ皿、フラスコ、ポリ袋、テフロン(商標)袋などの動物細胞培養に一般に使用される培養容器を挙げることができ、細胞外マトリックスまたは細胞接着分子で予めコーティングをしていても、またはしていなくてもよい。使用する場合、このようなコーティングの材料は、コラーゲンI〜XIX、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン1〜12、ナイトジェン、テネイシン、トロンボスポンジン、フォン・ヴィレブランド因子、オステオポニン、フィブリノゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、キチン、キトサン、セファロース、アルギン酸ゲル、及び/もしくはハイドロゲルまたはこれらの断片であってもよい。このようなコーティング材料は、人為的に改変したアミノ酸配列を有する組換え材料であってもよい。造血幹細胞は、培地組成、pHなどを機械的に制御し、高密度培養を得ることのできるバイオリアクターを使用することにより培養してもよい(Schwartz, "Rapid Medium Perfusion Rate Significantly Increases the Productivity and Longevity of Human Bone Marrow Cultures," Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:6760 (1991);Koller, "Clinical-scale Human Umbilical Cord Blood Cell Expansion In a Novel Automated Perfusion Culture System," Bone Marrow Transplant 21:653 (1998);Koller, "Large-scale Expansion of Human Stem and Progenitor Cells from Bone Marrow Mononuclear Cells in Continuous Perfusion Cultures," Blood 82:378 (1993)を参照し、その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。
【0035】
培養系が無血清である場合、様々な栄養を使用して、幹細胞の適切な培養及び増殖条件を提供してもよい。好適な栄養培地としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:Dulbecco's Modified Eagles' Medium(DMEM)、Ham's Nutrient Mixture F12、McCoy's 5A培地、Eagles' Minimum Essential Medium(EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles' Minimum Essential Medium)、RPMI1640培地、Iscove's Modified Dulbecco's Medium(IMDM)、StemPro34(Invitrogen社)、X−VIVO 10(Cambrex社)、X−VIVO 15(Cambrex社)、HPGM(Cambrex社)、StemSpan H3000(Stemcell Technologies社)、StemSpan SFEM(Stemcell Technologies社)、StemlineII(Sigma−Aldrich社)、またはQBSF−60(Quality Biological社)。
【0036】
好適な培養培地には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、サイトカイン、ホルモン、抗生物質、血清、脂肪酸、糖などを含んでもよい。培養において、その他の化学的成分または生物学的成分を、場合に応じて、単独または組み合わせて混合してもよい。培地に添加されるこのような成分としては、インスリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、コレステロール、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、寒天、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、各種サイトカイン、各種成長因子などが挙げれ得る。好適なサイトカインとしては、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−14(IL−14)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−21(IL−21)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、単球コロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)、flk2/flt3リガンド(FL)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OM)、エリスロポエチン(EPO)、及びトロンボポエチン(TPO)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0037】
特に好適なサイトカインとしては、SCF、Flt3、TPO、IL−3、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
培養系に添加される好適な成長因子としては、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、マクロファージ炎症性タンパク質−1α(MIP−1α)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞成長因子(HGF)、プロテアーゼネキシンI、プロテアーゼネキシンII、血小板由来成長因子(PDGF)、コリン作動性分化因子(CDF)、ケモカイン、Notchリガンド(Delta1など)、Wntタンパク質、アンジオポエチン様タンパク質2、3、5または7(Angpt2、3、5または7)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)、及びプレイオトロフィンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0039】
加えて、人為的に改変したアミノ酸配列を有する組換えサイトカインまたは成長因子が培養系に含まれてもよく、例えば、IL−6/可溶性IL−6受容体複合体及びHyper IL−6(IL−6/可溶性IL−6受容体融合タンパク質)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態では、サイトカイン及び成長因子は、約0.1ng/mL〜1000ng/mL、好ましくは1ng/mL〜100ng/mLの濃度で、培養系に添加されてもよい。
【0041】
本発明のこの態様の方法による幹細胞の培養において、添加物または処理剤は、直接培養系に添加されてもよく、または、例えば、培養に使用される基材もしくは支持体の表面上に固定されてもよい。本方法は、使用する成分を適切な溶媒に溶解して、得られた溶液で基材または支持体をコーティングし、次いで過剰な成分を洗い落とすことにより行ってもよい。
【0042】
特定の成分を培養系に添加する場合、最初に適切な溶媒中に溶解させて、化合物の濃度が、約100nM〜10mM、または約300nM〜300μM、または約1μM〜100μM、または約3μM〜30μMとなるように、培地に添加してもよい。好適な溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び各種アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
一実施形態では、造血幹細胞は、約25〜39℃、または約33〜39℃の温度で、CO濃度が約4〜10vol%、または約4〜6vol%の雰囲気中にて、通常約7日間培養系において処理される。
【0044】
本発明のこの態様の方法に従って処理された幹細胞は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例は上記に記載)の存在下で処理される。
【0045】
本発明の方法により増殖させた造血幹細胞は、細胞移植片として使用することができる。従って、本発明の更なる態様は、対象の血液疾患を治療する方法に関する。本方法は、対象における血液疾患を治療するために、本発明の単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を対象に投与する工程を含む。
【0046】
造血幹細胞は、全系統の血液細胞へと分化できるので、エクスビボで血液細胞の特定の種類に分化させた後、その細胞を移植してもよい。本発明の方法により増殖させた造血幹細胞は、そのまま移植してもよく、または例えば、磁気ビーズ法もしくはセルソーティング法により、指標として細胞表面抗原を使用して濃縮した後、移植してもよい。増殖した造血幹細胞は、そのドナー(自己)または別の個体(同種)へと移植してもよい。
【0047】
本発明の濃縮されかつ増殖した造血幹細胞は、従来の骨髄移植または臍帯血移植に代わる、造血幹細胞治療用の移植片として使用することができる。本発明の造血幹細胞の移植は、従来の骨髄移植または臍帯血移植と同じ方法で実施される。移植片は、緩衝液、抗生物質、医薬化合物、並びに濃縮されかつ増殖した造血幹細胞を含有する組成物であってもよい。
【0048】
本発明のこの態様の方法は、対象の血液疾患を治療するために実施される。従って、本方法は、各種白血病に対する治療の他、種々の疾患の治療にも好適である。例えば、副作用として骨髄抑制を引き起こす可能性のある化学療法または放射線療法による固形癌患者の治療の場合、治療後の患者に投与すると、患者は造血障害から早期に回復することができる。従って、より強力な化学療法の使用が可能となり、治療効果が改善される。
【0049】
本発明の治療方法は、造血幹細胞を特定の種類の血液細胞に分化させて、その細胞を患者体内に戻すことにより、患者体内における特定の種類の血液細胞不足を緩和するためにも実施されてもよい。
【0050】
本発明の治療方法は、造血細胞の減少及び/もしくは造血不全に関連した疾患、造血細胞の増加を伴う疾患、造血機能障害を伴う疾患、免疫細胞の減少、免疫細胞の増加、自己免疫障害もしくは免疫機能障害を伴う疾患、神経損傷に関連した疾患、筋損傷を伴う疾患、並びに/または虚血性疾患を治療するために実施されてもよい。
【0051】
本発明のこの方法に従って治療可能な疾患または障害の具体例としては、慢性肉芽腫症、重症複合免疫不全症候群、アデノシンデアミナ−ゼ(ADA)欠損症、無ガンマグロブリン血症、Wiskott−Aldrich症候群、Chediak−Higashi症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)などの免疫不全症候群、C3欠損症、サラセミア、酵素欠損による溶血性貧血、及び鎌状赤血球症などの先天性貧血、ゴーシェ病及びムコ多糖症などのライソゾーム蓄積症、副腎白質ジストロフィー、各種癌及び腫瘍、特に急性または慢性白血病などの血液癌、ファンコニ症候群、再生不良性貧血、顆粒球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、カサバッハ・メリット症候群、悪性リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、慢性肝疾患、腎不全、保存血または手術中の大量輸血、B型肝炎、C型肝炎、重症感染症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病、結節性多発動脈炎、橋本病、バセドウ病、重症筋無力症、インスリン依存型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、蛇咬症、溶血性尿毒症症候群、脾機能亢進症、出血、ベルナール・スーリエ症候群、Glanzmann's血小板無力症、尿毒症、骨髄異形成症候群、真性多血症、赤血病、本態性血小板血症、骨髄増殖性疾患、外傷性脊髄損傷、神経損傷、神経断裂、骨格筋損傷、瘢痕、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、並びに閉塞性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の治療方法は、急性放射線症候群(ARS)を含む、放射線への被曝、または過剰被爆による悪影響を緩和するために実施されてもよい。
【0053】
本発明の治療方法による別の実施形態では、本発明の濃縮されかつ増殖した造血幹細胞は、遺伝子治療に使用される。遺伝子治療では、治療遺伝子を造血幹細胞にトランスフェクションし、得られたトランスフェクト細胞(即ち、形質転換された造血幹細胞)を患者に移植する。導入される治療遺伝子としては、治療される疾患に応じて、ホルモン、サイトカイン、受容体、酵素、ポリペプチドなどの遺伝子が挙げられ得るが、これらに限定されない。好適な治療遺伝子の具体例としては、インスリン、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、カルボキシペプチダーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、ホスホリパーゼA2、エステラーゼ、α1−アンチトリプシン、血液凝固因子(第VII因子、第VIII因子、第IX因子など)、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン、UDPグルクロニルトランスフェラーゼ、オルニチントランスカルバノイラーゼ、ヘモグロビン、NADPHオキシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、α−イズロニダーゼ、チトクロームP450酵素、アデノシンデアミナーゼ、ブルトンキナーゼ、補体C1〜C4、JAK3、サイトカイン受容体共通γ鎖、毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)、嚢胞性線維症(CF)、ミオシリン、胸腺液性因子、チモポイエチン、ガストリン、セレクチン、コレシストキニン、セロチニン、サブスタンスP、主要組織適合性複合体(MHC)、及び多剤耐性因子(MDR−1)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
加えて、疾患遺伝子の発現を抑制するRNA遺伝子は、治療遺伝子として有効であり、本発明の方法にて使用可能である。例えば、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、デコイRNA、及びリボザイムなどである。
【0055】
造血幹細胞に治療遺伝子を導入するには、マウス幹細胞ベクター(MSCV)及びモロニーマウス白血病ウイルス(MmoLV)などのレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、並びにレンチウイルスベクターなどの動物細胞用ベクターを含む、動物細胞への通常の遺伝子導入方法を使用してもよい(Verma, "Gene Therapy: Promises, Problems and Prospects," Nature 389:239 (1997)を参照し、その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。あるいは、リン酸カルシウム共沈法、DEAE−デキストラントランスフェクション法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などを使用してもよい。これらの方法の内、染色体DNAに組み込むと恒久的に遺伝子発現が期待できることから、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターが、多くの場合好ましい。
【0056】
一実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、以下の通り調製される。最初に、野生型アデノ随伴ウイルスDNAの両端のITR(末端逆位配列)間に治療遺伝子を挿入して得られたベクタープラスミド及びウイルスタンパク質を補うためのヘルパープラスミドを、細胞にトランスフェクションする。続いて、ヘルパーウイルスとしてアデノウイルスを感染させて、AAVベクターを含むウイルス粒子の産生を誘導する。アデノウイルスの代わりに、ヘルパーとして機能するアデノウイルス遺伝子を発現するプラスミドを、トランスフェクションしてもよい。次に、ウイルス粒子を造血幹細胞に感染させる。ベクターDNA中に、標的遺伝子の上流に適切なプロモーター、エンハンサー、インシュレーターなどを挿入し、遺伝子の発現を調節することが好ましい。治療遺伝子に加えて、薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子を導入すると、治療遺伝子を有する細胞の選択が容易となる。治療遺伝子は、センス遺伝子またはアンチセンス遺伝子であってもよい。
【0057】
本発明の造血幹細胞に、本発明の治療方法にて使用する治療遺伝子をトランスフェクションする場合、この細胞は、造血幹細胞を増殖させる上記の適切な方法によって培養される。遺伝子の導入効率は、当該技術分野において標準的な方法により評価することができる。造血幹細胞に遺伝子をトランスフェクションし、得られた細胞(形質転換された造血幹細胞)を、造血幹細胞の上記増殖方法により増殖させて、得られた形質転換された造血幹細胞を、遺伝子治療の方法において対象へ投与するために使用することが可能である。
【0058】
遺伝子治療用の移植片は、緩衝液、抗生物質、医薬品、及び形質転換された造血幹細胞を含む組成物であってもよい。
【0059】
本発明の方法に従って、遺伝子治療により治療可能な好適な疾患としては、慢性肉芽腫症、重症複合免疫不全症候群、アデノシンデアミナ−ゼ(ADA)欠損症、無ガンマグロブリン血症、Wiskott−Aldrich症候群、Chediak−Higashi症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)などの免疫不全症候群、B型肝炎、C型肝炎、サラセミア、酵素欠損による溶血性貧血、ファンコニ貧血、及び鎌状赤血球症などの先天性貧血、ゴーシェ病及びムコ多糖症などのライソゾーム蓄積症、副腎白質ジストロフィー、並びに各種癌及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の別の態様は、造血幹細胞に対する化合物の効果の決定方法に関する。この方法は、単離されかつ増殖したヒト臍帯血幹細胞の濃縮された集団を提供する工程であって、この幹細胞が、CD34、CD90、CD184、CD49f、CD117、ALDH、CD45RAであり、多能性遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現する、工程、並びに、試験される化合物に幹細胞を接触させる工程を含む。次いで、化合物に接触させた後、幹細胞を解析し、幹細胞に対する化合物の効果を決定する。
【0061】
一実施形態では、細胞表面マーカー、多能性遺伝子の発現、細胞の生存及び/もしくは分裂、並びに/または化合物に細胞への致死性があるか否かについて、幹細胞を解析する。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するものであるが、決してその範囲の制限を目的とする訳ではない。
【0063】
実施例1−臍帯血幹細胞の増殖を誘導するエピジェネティックリプログラミング
方法
CB CD34細胞の単離及びそのエクスビボ培養
CB収集物は、ニューヨーク血液センター(New York Blood Center)のPlacental Blood Programから購入した。CB−MNCは、フィコール・ハイパック(Ficoll−Hypaque)密度遠心分離法によって単離し、CD34細胞は、先に記載した通り免疫磁性選別法により精製した(Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。高純度(90%〜98%)PC(4.0〜5.0×10)を、SF Stemline II(Sigma−Aldrich社)培地または30%FBS(HyClone Laboratories社)含有IMDM(Lonza社)中で、150ng/mlのSCF、100ng/mlのfms様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3リガンド)、100ng/mlのトロンボポエチン(TPO)、及び50ng/mlのインターロイキン3(IL−3)(R&D Systems社)を補充して培養し、37℃にて5%COを維持した加湿インキュベーター内でインキュベートした。16時間インキュベートした後、更に7日間、サイトカインの非存在下または持続的存在下のいずれかにて、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、VPA(Sigma−Aldrich社)、SCR、及びCAY10433(C433、BML−210とも称される)、CAY10398(MD85としても知られる)、及びCAY10603(分子式:C2230)(Cayman Chemicals社)を含む種々の濃度の各HDACIに、細胞を曝露した(図1A)。検討した細胞集団及びその集団を培養した各種条件は、表1に記載された特定の用語により示される。
【0064】
(表1)検討した細胞集団を表すために使用される用語
【0065】
生存可能なPC及び培養細胞は、トリパンブルー排除方法を使用して数えた。CD34細胞または亜集団の増殖倍率は、各CB収集物中に存在すると測定したCD34細胞の数、及び仮に最初のCB収集物中のすべてのCD34細胞が、記載された各種培養条件を使用して培養されていた場合に産生されていたであろうCD34細胞の数に基づいて計算した。
【0066】
表現型解析
PC、またはHDACIの存在下または非存在下にて増殖させた培養細胞は、抗ヒトCD34 mAbまたはアイソタイプ適合コントロールmAbで染色し、FACSCanto II(BD社)を使用して解析した。CD34細胞は、更なる表現型及び機能解析のために、先に記載した通りCD34細胞単離キットを使用して再単離された。すべてのmAbは、BD Biosciences社及びCell Signaling Technology社から購入した。コントロール培養、またはHDACIを加えたサイトカイン中で7日間エクスビボにおいて増殖させた細胞の表現型解析(CD34−APC、CD90−FITC、CD184−PE、CD117−PE、CD49f−PE、及びCD45RAPECy7)は、先に記載した通り実施した(Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。
【0067】
遊走アッセイ
CB CD34細胞の遊走挙動は、直径6.5mm、5μm孔のTranswellプレート(Costar社)を使用して、先に記載した通り評価した(Shivtiel et al., "CD45 Regulates Homing and Engraftment of Immature Normal and Leukemic Human Cells in Transplanted Immunodeficient Mice," Exp. Hematol. 39(12):1161-1170 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。Transwellの下層区画に、100ng/mlのストローマ細胞由来因子1(SDF1)(R&D Systems社)を補充したStemLine II SF培地を充填した。Transwellフィルターは、30分間37℃にてマトリゲルでコーティングした。コントロール及びVPA含有培養物に由来する再単離されたCD34細胞(1×10)は、100μlのStemline II培地中にて、マトリゲルコーティングしたフィルター上へプレーティングした。16時間後及び48時間後、下層区画へと遊走した細胞を数えて、遊走割合(%)を以下の通り計算した:(遊走した細胞数/プレーティングした細胞の総数)×100。
【0068】
ホーミングアッセイ
コントロール条件下またはVPAでの処理後に再単離されたCD34細胞(5×10/マウス)のホーミングを、先に記載した通り実施した(Shivtiel et al., "CD45 Regulates Homing and Engraftment of Immature Normal and Leukemic Human Cells in Transplanted Immunodeficient Mice," Exp. Hematol. 39(12):1161-1170 (2011),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)。レシピエントNSGマウスは、Jackson Laboratory社から購入し、4時間亜致死線量の放射線を照射(300cGy)をして、再単離されたCD34細胞を尾静脈から注入した。注入後16時間及び48時間で、各レシピエントマウスの大腿骨2本及び脛骨2本からBM細胞を採取し、ヒトCD34−APC mAbを使用して、ヒトCD34細胞の存在をフローサイトメトリーによって解析した。これらの細胞集団のホーミングは、レシピエントマウスのBM中において、得られた10イベント当たりのCD34細胞数を定量化して測定した。4匹のマウスでは細胞が生着せず、実験サンプルからのバックグラウンドを差し引くために同様に解析した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるColvin et al., "Allogeneic In vivo Stem Cell Homing,". J. Cell. Physiol. 211(2):386-391 (2007))。コントロール条件下で培養したCD34細胞が8匹のNSGマウスで生着し、VPA含有培養物に由来するCD34細胞が10匹のマウスで生着した。
【0069】
BrdUラベリングによる細胞周期解析
培養されたCD34CD90細胞の細胞周期状態は、メーカーの取扱説明書に従ってFITC−BrdU Kit(BD Pharmingen)を使用して評価した。VPAの存在下でコントロール条件下において7日間培養したCB CD34細胞を、続いて2.5時間BrdUでパルスした。次いで、細胞を染色バッファー(3%FBS添加PBS)で洗浄し、CD34−APC及びCD90−PE mAbで染色し、Cytofix/Cytopermバッファーで固定及び透過処理を行い、Perm/Washバッファー(両方ともBD Pharmingen)で洗浄した。透過処理後、細胞を30μgのDNAseで30分間37℃にて処理し、次いで、FITC共役抗BrdU抗体及び7AADで染色した。次いで、CD34CD90でゲートした細胞の細胞周期状態を、FAC−SCanto IIフローサイトメーターでFACSDivaソフトウエア(BD Biosciences社)を使用して記録した。
【0070】
HDACに対するHDACIの効果
全細胞抽出物は、SCR(8μM)、C433(80μM)、及びVPA(1.25mM)の存在下で培養した、新たに単離されたCB−MNC及びヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞から調製した。細胞タンパク質は、Novex(Invitrogen社)を使用してSDS−PAGEによって分離し、iBlot(Invitrogen社)で転写した。メンブレンを、各ヒストンデアセチラーゼ(HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、及びβ−アクチン;Cell Signaling Technology社)に対するmAbで調査し、メーカーの取扱説明書に従ってHRP共役二次抗体(Amersham Biosciences社)を用いた化学発光系を使用して現像した。ウェスタンブロッティングの濃度解析は、ImageJソフトウエア(NIH)で実施した。
【0071】
ALDH活性に基づいた未分化細胞の単離
高いALDH活性は、未分化造血細胞及び癌幹細胞の特性である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Hess et al., Functional Characterization of Highly Purified Human Hematopoietic Repopulating Cells Isolated According to Aldehyde Dehydrogenase Activity," Blood 104:1648-1655 (2004);Lioznov et al., "Aldehyde Dehydrogenase Activity as a Marker for the Quality of Hematopoietic Stem Cell Transplants," Bone Marrow Transplant 35:909-914 (2005);Storms et al., "Distinct Hematopoietic Progenitor Compartments are Delineated by the Expression of Aldehyde Dehydrogenase and CD34," Blood 106:95-102 (2005);Aguila et al., "SALL4 is a Robust Stimulator for the Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Blood 118:576-585 (2011))。高ALDH活性で細胞集団を同定するために、Aldefluorキット(StemCell Technologies社)をメーカーの取扱説明書に従って使用した。細胞(1×10個/ml)をアッセイバッファー中に懸濁し、次いで細胞の半分をAldefluor基質(テストサンプル)に添加して、残りの半分をDEAB阻害剤(コントロールサンプル)に添加した。テストサンプル及びコントロールサンプルは、40分間37℃にてインキュベートした。その後、細胞をCD34−APC及び/もしくはCD117−PE mAbまたはアイソタイプ適合IgGで、更に20分間染色した。細胞を洗浄し、BD FACSCanto IIフローサイトメーターによって解析した。
【0072】
多能性遺伝子のqPCR
全RNAは、ヒトES細胞株H9(WA09;WiCell Research Institute社、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ)、PC、SF及びSC培地でのコントロール培養物またはVPA含有培養物に由来する再単離されたCD34細胞から、TRIzol及びQIAGEN社(CA)製RNeasyキットを使用して抽出した。全RNA(0.5〜1.0μg)は、RNA to cDNA EcoDry Premixキット(Clontech社)を使用して、cDNAへと逆転写した。プライマー配列は、表6に記載されている。qPCRは、SYBR Green(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びRealplex thermocycler(Eppendorf社)を使用して実施した。すべての実験は3回実施し、非鋳型コントロール(cDNA鋳型無し)を各アッセイに含めた。GAPDHは、内部標準としての役割を果たした。アンプリコンは、50bpサイズ(DNAラダー)マーカーを用いて2%アガロースゲル上で泳動した。
【0073】
(表6)RT−PCR及びQ−PCR用プライマー配列
その内容全体が本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw & Strain, “Human haematopoietic stem cells express Oct4 pseudogenes and lack the ability to initiate Oct4 promoter-driven gene expression,” J. Negat. Results Biomed. 9:2-8 (2010)。
【0074】
免疫蛍光染色
PC並びにコントロール培養物及びVPA含有培養物に由来する再単離された培養CD34細胞は、メタノールフリーのホルムアルデヒド(2.8%)で10分間37℃にて固定して、少しの間氷上で冷却し、氷冷した100%メタノールで透過処理を行った。更に、細胞を氷上で20分間インキュベートし、インキュベーションバッファー(0.5%BSA含有PBS)で10分間ブロッキングして、FITC共役mAbまたはアイソタイプコントロールで1時間室温にて、SOX2及びOCT4に対して染色した。細胞はまた、NANOGに対してウサギmAb、続いてFITC共役抗ウサギ二次抗体でも染色し、細胞を洗浄して、フローサイトメトリーによって解析した。
【0075】
PC並びにコントロール培養物及びVPA含有培養物に由来する再単離された細胞を、スライドガラス上に付着させ、ホルムアルデヒドで固定し、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3に対して、メーカーの取扱説明書(Cell Signaling Technology社)に従って抗体で染色した。ES細胞は、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を発現するので、ポジティブコントロールとしての役割を果たした。共焦点顕微鏡解析は、ライカTCS SP5(ウェッツラー)を使用してZ軸方向について実施した。画像は、LAS AFイメージングソフトウエアを用いて得た。
【0076】
NANOG及びOCT4のCo−IP
ES細胞及びVPAで7日間処理したCD34細胞を、RIPAバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1%Triton、0.1%NP40、及び1.5mM EDTA)中に溶解させた。ES細胞またはVPAで処理された細胞に由来する細胞溶解物(1.0mg)を、6μgのIgG(コントロール)、20μl(6μg)のNANOG pAb(カタログ AF1997;R&D Systems社)でインキュベートして、4℃にて回転プラットフォーム上に一晩置いた。翌日、Protein Gビーズ(50μl)(Cell Signaling Technology社)を添加し、更に4時間サンプルを回転させ続けた。ビーズを溶解バッファーで3回洗浄し、煮沸して、結合タンパク質を溶出させた。ES細胞に由来する全細胞溶解物(25μg)及びVPAで処理された細胞に由来する全細胞溶解物(125μg)を、SDS−PAGEによって分画し、NANOG mAb(Cell Signaling Technology社)を使用してウェスタンブロッティングによって解析した。IP実験からのタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、iBlot(Invitrogen社)を使用して転写し、ヤギpAb抗OCT4で免疫ブロットして、洗浄し、ECL検出キットを使用して現像した。
【0077】
siRNAによる多能性遺伝子のサイレンシング
CB CD34細胞は、SF培養条件下においてVPAで処理した。VPAで処理された細胞に、SOX2、OCT4、NANOG、GAPDH、及びスクランブルsiRNAそれぞれ、またはSOX2、OCT4、及びNANOGの組み合わせであるSilencer Select siRNA(Invitrogen社、CA)をトランスフェクションした。GFPプラスミドは、Neon transfection system(Invitrogen社)のメーカー取扱説明書に従ってトランスフェクション効率を測定するために含めた。
【0078】
VPA処理の72時間後、細胞(0.5×10個〜1×10個)をPBS中で洗浄し、8μlのNeon resuspension buffer Rで懸濁させた。各siRNA(2μl、10〜30nM)もしくはSOX2、OCT4、NANOG(SON)の組み合わせ、またはpcDNA6.2/EmGFPプラスミド(200ng;Invitrogen社)を、メーカーの取扱説明書に従って8μlの細胞と混合した。細胞を、電圧1,400及びパルス幅20msで3回パルスし、すぐにVPA添加サイトカイン補充済みの予熱した培地へと移した。細胞生存能は、トリパンブルー排除方法を使用してトランスフェクションから48時間後に評価した。
【0079】
加えて、スクランブルsiRNAまたは複合SON siRNAで処理された細胞を、ヒトCD34 mAb及びCD90 mAbを使用して染色し、CD34細胞及びCD34CD90細胞の割合(%)をフローサイトメトリー解析によって測定した。RNAはトランスフェクションの7日後に調製し、qPCRは、上記の通りSOX2、OCT4、NANOG、ZIC3、CD34、及びGAPDH mRNAに対して、SYBR Green法を使用して実施した。相対発現レベルは、CD34の発現を基準として正規化した。SON siRNAによる多能性遺伝子のノックダウンに続いて、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3タンパク質の発現レベルを、上記の通り共焦点顕微鏡によって評価した。
【0080】
エクスビボにおいて増殖させたCB CD34細胞のインビボ骨髄再構築能アッセイ
前述の通り、NSGマウスに、4時間300cGyで亜致死線量の放射線を照射をして、PC(2×10)を注入し、サイトカインの存在下もしくは非存在下でのコントロール条件下での培養またはVPA含有培養から1週間後に再単離されたCD34細胞を、NSGマウスに尾静脈から注入した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007))。移植後13〜14週間でマウスを犠牲死させた。各マウスのBM細胞を、ヒトCD45−PECy7またはAPC、CD34−APCまたはFITC、CD36−APC、CD33−PECy7、CD14−FITC、CD19−PE、CD41−FITC、CD71−FITC、及びグリコフォリンA−PE(GPA−PE)を発現する細胞の存在について解析した。各レシピエントマウスの骨髄中に、ドナー由来ヒト造血細胞の生着を示す、少なくとも0.1%のヒトCD45細胞の存在が確認された(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007);Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。一次レシピエントNSGマウスのBM細胞(2×10個)を、亜致死線量の放射線を照射した二次NSGレシピエントマウスに再注入した。移植後15〜16週間でマウスを犠牲死させ、BM細胞をmAbで染色し、上記の通りヒト細胞キメリズムの証拠をフローサイトメトリーによって解析した。
【0081】
限界希釈解析
PC及びコントロール条件下またはVPAの存在下で増殖させた当量数のCD34細胞の子孫におけるヒトSRCの頻度を、前述の通り限界希釈解析によって解析した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるBoitano et al., "Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Science 329:1345-1348 (2010))。数を増加させたPC(50、250、500、2,500、5,000)またはVPAで7日間もしくはコントロール条件下で培養した当量数のPCの子孫を、NSGマウスに注入した(n=111)。限界希釈実験の結果データを収集し、シングルヒットモデルに対してポアソン統計を適用して解析した(n=111)。頻度は、L−Calcソフトウエア(StemCell Technologies社)を使用して計算し、ウォルター・アンド・エリザ・ホール医学研究所(Walter and Eliza Hall Bioinformatics Institute of Medical Research)で入手可能なELDAソフトウエア(bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を使用してプロットした。以下の式を使用して、未反応値のlogフラクションをネガティブマウスの割合(%)に変換した:ネガティブマウスの割合(%)=e logフラクション。
【0082】
奇形腫形成アッセイ
コントロール培養物もしくはVPA含有培養物から再単離されたCD34細胞(1×10個)またはほぼ同等の数のES細胞を、100μlのPBS中に懸濁した。これらの細胞を、等容積の氷冷マトリゲルと混合し、グループ(コントロール培養物、VPAで処理された培養物から再単離されたCD34細胞、及びES細胞)当たり3匹のNSGマウスの右後肢へと皮下注射した。マウスの奇形腫形成を週毎に観察し、8週間後に犠牲死させた。奇形腫を切開、固定、薄切りし、H&Eで染色して形態学的に調査した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるO'Connor et al., "Functional Assays for Human Embryonic Stem Cell Pluripotency," Methods Mol Biol. 690:67-80 (2011))。
【0083】
統計
結果は、各実験における様々な数値の平均±SDまたは平均±SEMとして表した。統計差は、別段の指定がない限り、スチューデント両側t検定を使用して評価した。テューキーの検定による対比較を併用した一元配置ANOVA並びに/または等分散性のためのバートレット検定及び分散比較のためのF検定も使用した。0.05以下のP値は、有意であると判断した。
【0084】
研究承認
すべての動物実験は、アイカーン医科大学(Icahn School of Medicine)の動物実験委員会(animal care and use committee)によって承認された。少量の匿名CB単位は、ニューヨーク血液センター(New York Blood Center)から購入したので、インフォームドコンセントまたは対象承認は、本研究では不要であった。
【0085】
結果
CB CD34細胞及びCD34CD90細胞のエクスビボにおける増殖に対するHDACI及びSF培地の効果
HSCのエクスビボにおける増殖を可能にする培養条件の決定は、多数の研究の主題であった(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010);Boitano et al., "Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Science 329:1345-1348 (2010);De Felice et al., "Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Enhances the Cytokine-Induced Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Cancer Res. 65:1505-1513 (2005);Himburg et al., "Pleiotrophin Regulates the Expansion and Regeneration of Hematopoietic Stem Cells," Nat. Med. 16:475-482 (2010);Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Nishino et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells by a Small-Molecule Agonist of c-MPL," Exp. Hematol. 37:1364-1377 e1364. (2009);North et al., "Prostaglandin E2 Regulates Vertebrate Haematopoietic Stem Cell Homeostasis," Nature 447:1007-1011 (2007))。SC培養条件並びにDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTI)及びHDACIを用いた一連の処理を使用すると、CB HSC数の増加が制限される可能性があると、これまでに実証されている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Milhem et al., "Modification of Hematopoietic Stem Cell Fate by 5aza 2'deoxycytidine and Trichostatin A," Blood 103:4102-4110 (2004);Araki et al., "Expansion of Human Umbilical Cord Blood SCID-Repopulating Cells Using Chromatin-Modifying Agents," Exp. Hematol. 34:140-149 (2006);Araki et al., "Chromatin-Modifying Agents Permit Human Hematopoietic Stem Cells to Undergo Multiple Cell Divisions While Retaining Their Repopulating Potential," Blood 109:3570-3578 (2007);Chaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。CB HSC増殖をより促進させる培養条件を更に最適化するために、まずCD34細胞、次いでCD34CD90細胞の産生を、本明細書においてはコントロール条件と称する、サイトカインを補充したSF培養及びSC培養において評価した。CB CD34細胞を増殖させるために使用したエクスビボにおける増殖方法の略図及び検討した細胞集団を表すために使用した用語は、図1A及び表1で提供される。種々のHDACI(VPA、スクリプタイド[SCR]、トリコスタチンA[TSA]、スベロイルアニリドヒドロキサム酸[SAHA]、BML−210としても知られるCAY10433[C433]、MD85としても知られるCAY10398、及びCAY10603[分子式:C22H30N4O6])を、様々な添加量及びインキュベーション期間(5〜9日間)で、添加した。SCまたはSF培養条件下において、インビトロで産生させたCD34細胞数を増加させる、HDACIの能力を評価した。検討した8つのHDACIの内、VPA、SCR、及びC433で7日間処理することが、本目的に対して最も有効であると分かった。コントロール条件(16.2%±9.2%)と比較して、これらの剤の各々で処理すると、ほぼ同等の割合(%)のCD34CD90細胞(SCR:73.4%±13.9%、C433:70.1%±18.4%、及びVPA:75.2%±10.7%)が産生された(ANOVA、P<0.0001)。しかしながら、7日間を超えて細胞を維持すると、その割合(%)は次第に減少した。同様に、これらのHDACIの各々は、CD34CD90細胞によるCXCR4発現(CD184)を促進するだけでなく、CB収集物当たりのCD34細胞及びCD34CD90細胞の産生絶対数を高め(ANOVA、P≦0.0007)(図1B及び1C)、コントロール条件と比較してCD34CD90CD184細胞の産生絶対数を高める(ANOVA、P<0.0001)(図1D)のに有効であったことが見出された。最適濃度及び半最適濃度で混ぜ合わせた場合、VPA、SCR、及びC433の効果は、付加的ではなかった。
【0086】
CD34細胞の増殖を促進させるHDACIの能力に対する血清の効果を、より詳細に調査した。SFコントロール培養条件を使用すると、CD34細胞及びCD34CD90細胞の増殖数が、SCコントロール培養条件で得られた数よりも多かった(ANOVA、それぞれP<0.0001)(図2A)。SF条件下においてVPAを添加すると、CD34細胞の細胞数(213倍)及びCD3490細胞の細胞数(20,202倍)が、VPAを添加したSC条件(CD34細胞では78倍増殖及びCD3490細胞では89倍増殖)と比較して劇的に増加した(ANOVA、P≦0.005)(図2A)。
【0087】
VPAにより増殖したCD34細胞のより詳細な表現型解析は、VPAで処理されたCD34CD90細胞による白血球共通抗原のアイソフォームCD45RA及びインテグリンα6(CD49f)の発現を解析することにより調査した。ヒトHSCは、CD49fは発現するが、CD45RAは発現しないことが分かっていた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるNotta et al., "Isolation of Single Human Hematopoietic Stem Cells Capable of Long-Term Multilineage Engraftment," Science 333(6039):218-221 (2011))。図2Bでは、VPA含有培養物に由来するCD34CD90細胞の47.0%±4.4%がCD49fを発現し、同時にこれらの細胞の若干が、CD45RA(1.9%±2.1%)を発現したことを実証した。
【0088】
CXCR4/SDF1軸は、HSCホーミングに対して非常に重要なので(Gul et al., "Valproic Acid Increases CXCR4 Expression in Hematopoietic Stem/Progenitor Cells by Chromatin Remodeling," Stem Cells Dev. 18:831-838 (2009),その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる)、VPAで処理されたCD34細胞のSDF1に対する遊走を調査した。図3Aに見ることができる通り、16時間後及び48時間後、有意に多数のVPAで処理されたCD34細胞がSDF1に対して遊走した(P=0.01及びP=0.03)。次に、VPA処理後のCD34細胞によるCXCR4発現の上方制御が、これら細胞のNOD/SCID/γcnull(NSG)マウス骨髄へのホーミングの増加と関連があるかどうかを調査した。図3Bで実証した通り、VPA処理によって、注入後16時間(P<0.0001)及び48時間(P=0.01)の両方で、コントロール条件下にて培養されたCD34細胞と比較して、CD34細胞のホーミングが増加した。次に、培養したCD34細胞の細胞周期状態は、コントロール培養物及びVPA含有培養物中の細胞子孫を、培養から7日目にBrdUで(2.5時間)ラベリングすることによって調査し、細胞周期の種々の段階にあるCD34CD90細胞の比率を比較した(図4A)。VPAで処理された細胞では、CD34CD90細胞の含まれる比率が、コントロール培養細胞よりもはるかに高い比率となった(75.2%±10.7%対16.2%±9.2%)ことが見出された。加えて、VPAで処理されたCD34CD90細胞のより多数が、コントロール培養物中(2.2%±1.0%、P<0.0001)の細胞よりも、G2/M内(18.0%±1.2%)にあった。このことは、VPAで処理されたCD34CD90細胞が分裂しても初期の表現型を維持し続けていることを示し、それによって、7日目でもより多数のCD34CD90細胞が観察されることが説明された。CD34CD90細胞のG0/G1区画もまた、コントロール培養物中(5.0%±1.4%)で見られたのと比較して、VPA含有培養物中(23.2%±13.8%)にて増加しており、VPAへ曝露したCD34CD90細胞は、G0/G1へと戻ることが可能であることを示唆した。また、コントロール培養物に由来するCD34CD90細胞の方が、VPA含有培養物中よりも、培養の7日後にS期にある細胞の比率がより少なかった(17.5%±1.8%対29.4%±7.9%)(図4B)。これらのデータは、コントロール細胞は、VPAで処理された細胞よりも培養期間中の早い段階で分裂し、VPAで処理された細胞は、7日目も分裂してCD34CD90細胞を産生し続けたことを示唆している。VPAの効果は、継続的にサイトカインへ曝露させることに依存するかを決定するために、CB CD34細胞に16時間最初のプライミングを行い、次いで7日間SF培地のみで、またはVPAは補充するが、追加のサイトカインの非存在下にてSF培地内で培養した(図1A)。これらの研究では、サイトカインでの最初のプライミング後、SF培地のみ(サイトカイン無し(図5A))によるインキュベーション後に、CD34細胞及びCD3490細胞が増殖したことが実証された。しかしながら、細胞をVPAのみ(サイトカイン無し)の存在下において培養した場合、PCと比較して、産生されたCD34細胞(P<0.0001)及びCD34CD90細胞(P<0.05)の絶対数は、一層高かった(図5A)。しかしながら、最初に前処理をせず、次いで追加のサイトカイン無しでインキュベートした培養物中では、CD34細胞増殖が同じ割合で起こらなかったことから、CD34細胞及びCD34CD90細胞の数の増加は、少なくとも前処理のサイトカインへの曝露に依存することが示された。7日目に、培地のみ(サイトカイン無し)で培養した細胞の21.2%±5.1%はCD34であり、それらの表現型はPCと類似していたが、VPAのみに曝露した細胞は、CD90、CD184、及びCD49f、ただしCD45RAは除く、の劇的な上方制御を特徴とし(図14)、VPAがエピジェネティックリプログラミングをもたらすことと一致することが分かった。CB収集物当たりのCD34細胞及びCD34CD90細胞の数は、培地のみ(サイトカイン無し)で培養した場合に5.2倍及び144倍増加し、それに比較して、VPAのみ含有(サイトカイン無し)の培養物中では各々9.0倍及び486倍増加した(ANOVA、P<0.0001)(図5B)。CD34細胞の増殖倍率(213倍)及びCD34CD90細胞の増殖倍率(20,202倍)は、7日間のインキュベーション期間中、VPA含有SF培養へのサイトカインの追加によって更に劇的に増大した(図2A)。
【0089】
HDACレベルに対するHDACIの効果
HDACは、多タンパク質複合体のサブユニットとして細胞内に存在し、遺伝子発現を制御する。クラスI HDAC(HDAC1、2、3、及び8)は、酵母の転写制御因子RPD3に対して配列相同性を有する。しかしながら、クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7、9、及び10)は、酵母内で見られるデアセチラーゼHDA1と類似したドメインを共有する(その全体が参照として本明細書に組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012))。クラスI及びII HDACは、転写コリプレッサーmSIN3、NCoR、及びSMRTと相互作用し、それによりHDACを転写因子へとリクルートする(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012);Kramer et al., "The Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Selectively Induces Proteasomal Degradation of HDAC2," EMBO J. 22:3411-3420 (2003))。HDACIは、CB CD34細胞におけるH3アセチル化を促進させることが、これまでに分かっている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるChaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))。しかしながら、HDAC活性は、触媒ドメインでのこれらの阻害剤との結合によるだけでなく、ユビキチン/プロテアソーム経路を介するHDAC分解の微調整によっても調節することができる。E2ユビキチンコンジュガーゼ(conjugase)Ubc8及びE3ユビキチンリガーゼRLIMの量を制限することで、VPAによる調節を受けやすいHDACのバランスのとれた定常状態のタンパク質レベルが維持されると報告されてきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Kramer et al., "The Histone Deacetylase Inhibitor Valproic Acid Selectively Induces Proteasomal Degradation of HDAC2," EMBO J. 22:3411-3420 (2003);Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Cunliffe, "Eloquent Silence: Developmental Functions of Class I Histone Deacetylases," Curr. Opin. Genet. Dev. 18(5):404-410 (2008))。HDACがHDACIの影響を受けることを決定するために、クラスI及びIIの両方のHDACタンパク質レベルに対するSCR、C433、及びVPAの効果を、CB単核細胞(CB−MNC)及びヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞において、処理の2時間及び24時間後に評価した。CB−MNCの処理から2時間後、SCR、C433、及びVPAはHDACの発現を阻害しなかったが、処理から24時間後、異なる割合でクラスI(HDAC1、2、及び3)、クラスIIa(HDAC4及び5)、並びにクラスIIb(HDAC6)HDACを阻害した。SCR及びC433は、各HDACに対して最も有効な阻害剤であった(図6及び表7)。
【0090】
(表7)ウェスタンブロットの濃度解析
上部パネル:HDACタンパク質レベルをデンシトメトリーによって評価し、b−アクチンの発現を基準として正規化した。下部パネル:コントロールに対するクラスI及びクラスII HDACの下方制御割合(%)。各HDACIの存在下において、HDAC1、3及び5が減少した。(平均±SE、n=4)
【0091】
各HDACは、細胞特異的な機能において、細胞内プロセスの制御及び細胞外環境への応答に重要な役割を果たすので、特定の細胞型が、導入されたHDACIに反応する仕組みの予測には限界がある(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるDelcuve et al., "Roles of Histone Deacetylases in Epigenetic Regulation: Emerging Paradigms from Studies with Inhibitors," Clin. Epigenetics 4(1):5 (2012);Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。これらHDACIによるHEK293細胞処理後のHDAC阻害パターンは、CB−MNCのパターンとは著しく異なっており、処理の2時間後では、24時間後と比較してより顕著であることが見出された(図15)。HDAC2及びHDAC4の下方制御は、HEK293細胞に対する3種のHDACI各々の効果に対して共通であったが、HDAC1、3、及び5の減少は、同じ剤で処理したCB−MNCに対して共通であった。これらの結果は、SCR、C433、及びVPAは、各クラスI及びIIのHDACIであるが、特定のHDACに対するその効果は、処理された細胞型に依存して変化することを示している。HDAC3の下方制御が、インビトロでのHSC増殖に必要不可欠であることがこれまでに分かっている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるElizalde et al., "Histone Deacetylase 3 Modulates the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Stem Cells Dev. 21:2581-2591 (2012))。調査した各HDACIは、CB CD34細胞数を増加させることが可能であるが、VPAはCD34細胞増殖の促進に最も有効な化合物でありながらも、最も強力なHDAC阻害剤ではなかった。VPAを用いて残りの実験を実施した。
【0092】
VPAは、培養されたCB CD34細胞におけるALDH活性を変化させる
サイトカインを用いてインビトロで増殖させたCB及び骨髄細胞の表現型は、必ずしも機能と関連するとは限らないので、ALDH活性をHSCの機能マーカーとして使用した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Hess et al., Functional Characterization of Highly Purified Human Hematopoietic Repopulating Cells Isolated According to Aldehyde Dehydrogenase Activity," Blood 104:1648-1655 (2004);Lioznov et al., "Aldehyde Dehydrogenase Activity as a Marker for the Quality of Hematopoietic Stem Cell Transplants," Bone Marrow Transplant 35:909-914 (2005);Spangrude et al., "Long-Term Repopulation of Irradiated Mice with Limiting Numbers of Purified Hematopoietic Stem Cells: In vivo Expansion of Stem Cell Phenotype but not Function," Blood 85(4):1006-1016 (1995);Storms et al., "Distinct Hematopoietic Progenitor Compartments are Delineated by the Expression of Aldehyde Dehydrogenase and CD34," Blood 106:95-102 (2005);Veeraputhiran et al., "Aldehyde Dehydrogenase as an Alternative to Enumeration of Total and Viable CD34(+) Cells in Autologous Hematopoietic Progenitor Cell Transplantation," Cytotherapy 13:1256-1258 (2011))。サイトカインの存在下にて、SC培養中で培養された細胞よりも、SF培養中で培養された細胞において、より多くのALDH活性を有する細胞画分が観察された。更に、SF培養条件下でサイトカインを含有する培養にVPAを添加すると、SC培養中で観察されたのと比較して、ALDH細胞の比率がより高くなった(図7A及び表2)。
【0093】
(表2)ALDH細胞、ALDHCD34細胞、及びALDHCD34CD117細胞の頻度
PCは、SFまたはSC培地内にてコントロール条件下またはVPA含有培地内で培養された。SF培養にVPAを添加すると、SC培養で観察されたのと比較して、CD34細胞及びCD34CD117細胞におけるALDH活性の割合がより高くなった。各数値は、特定の表現型を有する細胞の割合(%)を表す。平均±SEM。P≦0.007。ANOVA、P<0.0001。n=3〜5。

VPAを添加したSF培養において産生されたALDHCD34CD117細胞の絶対数は、SC培養中で得られた数よりも多かった(P=0.009)(図7B)。
【0094】
VPAは、多能性に関連する遺伝子の発現に影響を及ぼす
転写因子SOX2、OCT4、及びNANOGは、そのプロモーターを含む標的遺伝子を共同占有し、それによって、自己複製及び多能性の維持に必要な調節及び自己調節フィードバックループの両方で協調することにより、胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞(iPS)の両方の運命決定を確定させる調節機能の中核を担う(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Loh et al., "The Oct4 and Nanog Transcription Network Regulates Pluripotency in Mouse Embryonic Stem Cells," Nat. Genet. 38(4):431-440 (2006))。VPA媒介HSC増殖における、このようなマスター転写因子の役割は、コントロール条件下での培養またはSF及びSC培地中にてVPAで処理された培養の7日後に再単離されたCD34細胞における、SOX2、OCT4、及びNANOGの発現を調査することで探求した。RT−PCRは、VPA含有SF培養物に由来するCD34細胞におけるSOX2、OCT4、及びNANOG転写の発現を明らかにしたが、コントロール培養またはVPAが添加されたSC培養中では、OCT4及びSOX2転写がほとんど検出できなかった(図8A)。定量PCR(qPCR)によって、これらの多能性遺伝子の発現は、SC培養中で観察されたのと比較して、SF培養中におけるVPAの存在下で増加したことが実証された(ANOVA、P=0.0001)(図8B)。成体幹細胞におけるOCT4の発現は、機能型のOCT4ではなく、実際には不活性な偽遺伝子の発現によるものであるという可能性が、他の研究者によって報告されている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw et al., "Human Haematopoietic Stem Cells Express Oct4 Pseudogenes and Lack the Ability to Initiate Oct4 Promoter-Driven Gene Expression," J. Negat. Results Biomed. 9(1):2-8 (2010);Zangrossi et al., "Oct-4 Expression in Adult Human Differentiated Cells Challenges its Role as a Pure Stem Cell Marker," Stem Cells 25:1675-1680 (2007))。RT−PCRを使用して、1つのOCT4偽遺伝子が、VPAで処理されたCD34細胞においては存在しなかったことが見出された(図8A)。qPCR解析によって、2つの偽遺伝子の転写は存在しなかったことが示された。OCT4、SOX2、及びNANOGとは異なり、ES細胞における別の既知の多能性マーカーであるテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるTakahashi et al., "Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors," Cell 131:861-872 (2007))は、VPAで処理されたCD34細胞において増加しなかった。クロマチンリモデリングにおいて重要な役割を担うSET、SMARCAD1、及びMYST3を含む、SOX2、OCT4、及びNANOGの下流標的遺伝子を、追加の多能性遺伝子ZIC3も加えて調査した(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Takahashi et al., "Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors," Cell 131:861-872 (2007);Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007))。SMARCAD1、MYST3、及びZIC3、ただしSETは除く、もまたSF培養中のVPAで処理されたCD34細胞において劇的に増加した(ANOVA、P=0.04)。ZIC3 mRNAは、血清の存在下でVPAを補充したコントロール培養中では検出されなかったが、VPAを補充したSF培養中においてのみ増加した(図8C)。ZIC3遺伝子は、ES細胞においてOCT4、SOX2、及びNANOGの標的として同定されてきた。OCT4、NANOG、及びSOX2の転写ネットワークと一部重なり合うZIC3は、多能性の維持に重要であり、NANOGの発現を直接調節することができる(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007);Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013))。
【0095】
次いで、CD34細胞中でのSOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現を、フローサイトメトリー解析によって調査した。SOX2、OCT4、及びNANOGの発現は、SC培養中ではなく、SF培養中でVPAの存在下にて最も高くなった(図9A及び表3)。次いで、CD34細胞中のSOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現を、mAb染色及び共焦点顕微鏡を使用して調査した(図9B及び図16)。多能性遺伝子は、VPAで処理されたCD34細胞中の細胞核及び細胞質の両方で増加及び局在化していたが、ES細胞中では、これらのタンパク質は、圧倒的に核内領域に局在化した。これらのタンパク質は、コントロール条件下で産生されたCD34細胞またはPCにおいては観察されなかったが、低レベルのZIC3タンパク質は、PCにおいて観察された。OCT4及びSOX2は、NANOGプロモーターと結合し、その転写及び関連する遺伝子ネットワークの転写を促進させる、主な転写因子である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Boyer et al., "Core Transcriptional Regulatory Circuitry in Human Embryonic Stem Cells," Cell 122:947-956 (2005);Loh et al., "The Oct4 and Nanog Transcription Network Regulates Pluripotency in Mouse Embryonic Stem Cells," Nat. Genet. 38(4):431-440 (2006))。SC培養ではなくSF培養中にて、VPAで処理することでNANOGを上方制御することは、SOX2及びOCT4間での機能的相互作用の可能性を示した(表3)。
【0096】
(表3)多能性遺伝子の発現
SF及びSC培地中にて、7日間のコントロール培養物及びVPAで処理された培養物から再単離されたCD34細胞(純度:95%〜99%)における、mAb染色及びフローサイトメトリー解析によって評価したSOX2、OCT4、及びNANOGの発現。各数値は、特定の多能性タンパク質を発現するCD34細胞の割合(%)を表す。平均±SEM。P<0.05。ANOVA、P<0.0001。n=4。
次いで、NANOG及びOCT4間の物理的相互作用を、VPAで処理された細胞に由来するタンパク質のco−IPによって記録した(図9C)。更に、ウェスタンブロット解析によって、VPAで処理された細胞における内因性OCT4及びNANOGの発現は、ES細胞の場合よりも多くなかったことが明らかとなった(図9C)。
【0097】
CD34CD90細胞の増殖に必要不可欠な多能性遺伝子
VPAで処理された培養物における多能性遺伝子の上方制御とCD34CD90細胞の増殖との間の機能的関連性を立証するために、CD34細胞に各siRNAまたはSOX2、OCT4、及びNANOG(SON)に対するsiRNAの複合プールのいずれかをトランスフェクションした。初めに、異なる濃度のsiRNAを、各遺伝子について、及びコントロール培養またはVPAで処理された培養中の細胞に対する遺伝子の潜在的な毒性作用について試験した。SON siRNAで処理された細胞の形態学的外観は、スクランブルsiRNAで処理されたのと比較して、変化はなかった。スクランブル、SON、及びGAPDH siRNAのトランスフェクション後、コントロール培養及びVPA含有培養において産生された細胞の総数に、有意な減少は観察されなかった(表8)。多能性遺伝子の発現は、qPCR及びRT−PCRを使用して、VPAで処理された培養物におけるsiRNAトランスフェクション後に観察した(図10A及び10B)。siRNAによるノックダウンによって、SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3転写の発現(80%〜84%)が著しく減少した(ANOVA、P<0.0001)。共焦点顕微鏡及びmAb染色によっても、SOX2、OCT4、及びNANOGタンパク質の発現が著しく減少したことが明らかとなった。OCT4、SOX2、及びNANOG調節ネットワークの下流であるZIC3タンパク質の発現は、より少ない程度に減少した(図10C)。CD34細胞(47.8%±4.4%対22.8%±8.6%)及びCD34CD90細胞(20.5%±6.1%対11.7%±4.5%)(ANOVA、P=0.0005)の割合(%)における有意な減少が、多能性遺伝子各々について特異的な各siRNAまたはスクランブルsiRNAと比較して、SON siRNAでの処理後に観察された(図10D)。更に、VPAで処理されたCD34細胞をSON siRNAで処理した後、CB収集物当たりのCD34細胞及びCD34CD90細胞の絶対数が、それぞれ89.1%及び88.7%(ANOVA、P=0.0008)減少したことが観察された(図10E)。
【0098】
これらのデータは、VPA処理が、SF培養物中のCD34細胞及びCD34CD90細胞の産生に必要不可欠な、多能性遺伝子の以降の転写活性化を導く、培養されたCD34細胞のエピジェネティックなリプログラミングを引き起こすことを示している。
【0099】
(表8)コントロール培養物及びVPAで処理された培養物に対するsiRNAトランスフェクションの効果
上部パネル:コントロール培養物は、VPA培養物について先に記載したとおりにsiRNAをトランスフェクションした。CD34CD90細胞の総細胞数及び割合(%)における有意差は、スクランブルsiRNA及びSON siRNAのトランスフェクションから72時間後では観察されなかった。(n=4)(p≦0.5、ns)
下部パネル:VPAで処理された培養物は、方法セクションにて先に記載したとおりにスクランブルsiRNA及びGAPDH siRNAをトランスフェクションした。CD34CD90細胞の総細胞数及び割合(%)における有意差は、GAPDH siRNAトランスフェクションから72時間後では観察されなかった。(n=3)(p<0.25、ns)
【0100】
NSGマウスにおけるVPAで処理されたCD34細胞のインビボでの機能的挙動
PC並びにコントロール条件下並びにVPA及びサイトカインで培養されたCB CD34細胞の骨髄再構築能を、NSGレシピエントマウスの骨髄内での細胞生着を確認することによって評価した。すべてのレシピエントマウスにおいて、移植された移植片の種類に関係なく、ヒトCD45細胞及びCD45CD34細胞が検出された。移植から13〜14週間後(図11A及び11B)、PCが生着したマウス内における骨髄細胞の19.4%±4.9%がドナー由来のCD45細胞であり、それに比較して、コントロール培養物に由来する細胞が生着したマウス内では13.2%±6.4%であった。一方、VPAで処理されたCB CD34細胞の移植では、ヒトCD45細胞キメリズム(32.2%±11.3%)及びCD45CD34細胞(13.0%±8.7%)の割合が、コントロール細胞で得られたのと比較して、より高い割合となった(それぞれ、P=0.0008及びP=0.004)(図11A及び11B)。VPA移植片でのCD45細胞キメリズムの割合もまた、PCで得られた割合よりも統計上高い割合となった(P=0.006)。
【0101】
VPAで処理されたCD34細胞が生着したマウスの骨髄内のドナー由来CD34細胞では、PCまたはコントロール条件下で増殖させた移植片が生着したマウスの骨髄内と比較して、CD184(9.9%±9.6%)と共発現した細胞数が有意に多かった(ANOVA、P=0.01)(図11C)。VPAで処理されたCD34細胞移植片の、移植後に複数の造血系統に分化するパターンは、PCまたはコントロール条件下で増殖させた細胞でのパターンとは明らかに異なり(ANOVA、P<0.0001)(図11D及び11E)、VPAで処理された移植片が生着したマウス内に現れるCD41細胞、CD19細胞、及びグリコフォリンA陽性(GPA)細胞の比率が高かった。
【0102】
次に、VPAによるSRC増殖の依存性を、その増殖中にサイトカインに曝露し続けることで評価した。図11Fに見ることができる通り、サイトカインの非存在下にて培地のみ(サイトカイン無し)及びVPAのみ(サイトカイン無し)で培養したCD34細胞の移植では、キメリズムの割合はほぼ同等であった(8.2%±5.0%対12.5%±5.0%;P=0.1、NS)。継続的なサイトカインへの曝露無しで産生された移植片は、複数の造血系統に属する細胞を産生する能力を保持していた(表9)。
【0103】
(表9)NOD/SCID/ycnull(NSG)マウスにおけるサイトカイン無しの無血清(SF)条件下で培養したVPAで処理されたCD34細胞のインビボでの機能的挙動
2.0×10個のCB CD34初代細胞(PC)または無血清(SF)条件下にて培地のみ含有した培養(サイトカイン無し)及びVPAのみ含有した培養(サイトカイン無し)から7日後に再単離されたCD34細胞が生着したNSGマウスの骨髄解析。移植から12〜13週間後のヒト細胞キメリズム(CD45、CD33、及びCD34)並びにB細胞(CD19)、顆粒球(CD14)、赤血球細胞(グリコフォリンA(GPA))及び巨核球(CD41)を含む多系統の造血細胞の生着割合(%)が示されている。
(平均±SE、p<0.05、(ANOVA P<0.0001)。NSGマウスレシピエント(n=15))。
【0104】
コントロール条件下で培養した細胞の移植で得られたドナー細胞キメリズムの割合は、培地のみ(サイトカイン無し)またはVPAのみ(サイトカイン無し)にて7日間サイトカインに曝露しなかった細胞で得られた割合とほぼ同等であった。しかしながら、サイトカイン+VPAの存在下において産生された移植片の移植後に、ヒト細胞キメリズムの割合の劇的な増加が観察された(32.3±10.2%;ANOVA、P<0.0001)。これらのデータは、PCを16時間だけサイトカインで前処理し、次いでサイトカインの非存在下にて培地のみまたはVPAのみで培養するのであれば、SRCは存続することを示唆している。しかしながら、培養期間を通してサイトカインが存在すると、VPAの有効性を更に向上させて、NSGレシピエントにおけるヒト細胞キメリズムの割合が高くなった。
【0105】
増殖させた移植片の自己複製能は、一次レシピエント中に存在するドナー由来細胞を二次レシピエントに移植することで評価した。15〜16週間後、VPAで処理されたCB CD34細胞を移植した一次レシピエントに由来する骨髄細胞を移植した二次レシピエントでは、ヒトCD45細胞キメリズムの割合が最も高い結果となった(ANOVA、P<0.0001)(図12A)。図12Bに示すように、二次レシピエントマウス内のドナー由来細胞は複数の造血系統に属し、このパターンは、PC移植片またはコントロール条件下で増殖させた移植片が生着した一次レシピエントに由来する骨髄細胞が生着した二次レシピエント内で観察されたパターンとは異なっていた(ANOVA、P<0.0001)。ドナー由来赤血球細胞の生着割合は、VPAで処理された移植片が生着したマウスに由来する骨髄細胞を持つ二次レシピエント内で、特に顕著であった(図12B)(その全体が参照として本明細書に組み込まれるSauvageau et al., "In vitro and In vivo Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Oncogene 23:7223-7232 (2004))。VPAで処理された移植片が生着した骨髄細胞を持つ一次または二次レシピエントのいずれも、血液癌の証拠を発現または奇形腫を発症しなかった。奇形腫形成の可能性を更に排除するために、コントロール培養物もしくはVPA含有培養物から再単離されたCD34細胞またはES細胞を、それぞれNSGマウスの後肢に皮下注射し、8週間後に評価した。3つの異なる胚葉由来の細胞から成る奇形腫が、ES細胞を注入した動物に限り観察された(図17)。
【0106】
VPA処理後の多能性遺伝子の上方制御の持続性を評価するために、ドナー細胞におけるこれら遺伝子の発現を、一次及び二次レシピエントNSGマウスにて評価した。qPCRを使用しても、一次及び二次レシピエントの骨髄細胞におけるSOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3を含む多能性遺伝子の転写が検出されなかったことは、VPA誘導の上方制御が一過性であったことを示した。
【0107】
VPA処理で得られたHSCの増殖の割合を評価するために、限界希釈解析を使用して、PC、コントロール条件下で培養された当量数のPC由来の細胞、またはVPA含有培養物における、SRC頻度を比較した。数を増加させたPC(50、250、500、2,500、及び5,000)、またはコントロール条件下及びVPAでの処理後の当量数のPCに由来する細胞子孫を移植した結果、移植後のヒト細胞キメリズムの割合が増加した(図13A)。ポアソン分布解析によって、SRC頻度は、PCでは1,115分の1(95%CI:1/596〜1/2,087)、コントロール培養物では9,223分の1(95%CI:1/3,419〜1/24,879)、及びVPAで処理された培養物では31分の1(95%CI:1/14〜1/66)であることが明らかとなった。PC、コントロール、及びVPA含有培養物の間の幹細胞頻度における全体の差は非常に有意であり(P=9.42×10−29)、PCまたはコントロール培養物と比較して、VPA培養物においてSRC数が効果的に増加することが示された(図13B並びに表4及び5)。
【0108】
(表4)NSGマウスにおけるヒト細胞生着の限界希釈解析
NSGマウスのBM中に存在するSRCの頻度一覧。PC及びコントロール条件下またはVPAで7日間培養した当量数のPCの子孫をNSGマウスに移植した。12〜13週間後、ヒトCD45細胞生着についてBMを解析した。
【0109】
1×10個のPC及びコントロール条件下で培養した細胞では、それぞれ897個のSRC及び108個のSRCが存在していたと計算された。一方、VPA含有培養物に由来する1×10個の細胞では、32,258個のSRCが存在していたと計算された(表5)。従って、コントロール培養条件下でのPCのインキュベーションはSRC数を減少させたが、VPA処理によって、PCと比較してSRC数が36倍(P≦0.002)増加し、コントロール条件下で培養した細胞と比較してSRC数が299倍(P≦0.002)増加する結果となった(図13C)。
【0110】
(表5)SRCの頻度
SRCの頻度は、表4で提供されたデータ(STEMCELL Technologies社製L−Calcソフトウェア及びELDAソフトウェア)からポアソン統計を適用することで決定した。PC、コントロール、及びVPAを含むグループ間での幹細胞頻度における全体の差(P=9.42×10−29)。
【0111】
考察
HSCの多能性は、HSCのクロマチン構造及びエピジェネティックな可塑性が動的に維持されることによって説明することができる。クロマチン構造の変換は、主に特異的なヒストンの翻訳後修飾により制御されて、結果として得られたクロマチン構造が、許容的か抑制的かを決定する(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。CB CD34細胞による幹細胞機能がSC培養条件及びサイトカインの組み合わせを使用したインビトロでの培養後に次第に失われることは、依然として、移植可能なHSC数のインビボでの増加に対する障壁である(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Giebel et al., "Primitive Human Hematopoietic Cells Give Rise to Differentially Specified Daughter Cells Upon their Initial Cell Division," Blood 107(5):2146-2152 (2006);Ho et al., "The Beauty of Asymmetry: Asymmetric Divisions and Self-Renewal in the Haematopoietic System," Curr. Opin. Hematol. 14(4):330-336 (2007);Huang et al., "Symmetry of Initial Cell Divisions Among Primitive Hematopoietic Progenitors Is Independent of Ontogenic Age and Regulatory Molecules," Blood 94(8):2595-2604 (1999);Srour et al., "Modulation of In vitro Proliferation Kinetics and Primitive Hematopoietic Potential of Individual Human CD34+CD38-/lo Cells in G0," Blood 105(8):3109-3116 (2005))。この幹細胞機能の減退は、十分に機能的なHSCが、宿主内に存在する許容的環境から分離されて不利なエクスビボ環境へと配置され、それにより、自己複製能、骨髄再構築能、及び多系統分化能を含む、幹細胞の重要な機能を決定する遺伝子発現プログラムを変更するようなエピジェネティックな変化がもたらされることに起因すると考えられる。このHSC機能の喪失は、使用された培養条件に対して生じる細胞周期の急激な進行及び細胞分裂に起因している(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013);Sauvageau et al., "In vitro and In vivo Expansion of Hematopoietic Stem Cells," Oncogene 23:7223-7232 (2004);Walasek et al., "Hematopoietic Stem Cell Expansion: Challenges and Opportunities," Ann. NY Acad. Sci. 1266:138-150 (2012))。エクスビボでの幹細胞増殖における先の試みは、造血微小環境と類似させ、それによって幹細胞の機能的完全性の保持を促す環境の構築に重点を置いたことが恐らく部分的な要因となり、ある程度の成果を得てきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Dahlberg et al., "Ex vivo Expansion of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells," Blood 117:6083-6090 (2011);Delaney et al., "Cord Blood Graft Engineering," Biol. Blood Marrow Transplant 19(1): S74-S78 (2013);Delaney et al., "Strategies to Enhance Umbilical Cord Blood Stem Cell Engraftment in Adult Patients," Expert Rev. Hematol. 3:273-283 (2010))。エクスビボでのこのような微小環境構築の難しさは、十分理解されており、クロマチン構造に影響を及ぼす剤を使用してHSCのエピジェネティック特性を直接維持する試みである別のアプローチが取られてきた。このアプローチは、クロマチン状態の動的変化が、ヌクレオソームリモデリング、DNAメチル化、及びヒストンアセチル化によって媒介されるという理解に基づいている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012);Elizalde et al., "Histone Deacetylase 3 Modulates the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells," Stem Cells Dev. 21:2581-2591 (2012))。このために、本研究では、細胞分裂を繰り返した後でも幹細胞の機能保持に関与する遺伝子を持つクロマチン構造の脱凝縮を図るために、いくつかのHDACIについて、クラスI及びII HDACの両方を阻害することが可能であるかを評価した。HDAC1、HDAC3、及びHDAC5タンパク質は、3種の最も活性なHDACIによって均一に減少し、このことは、これら3種のHDACの組み合わせは、インビトロでの分裂後も幹細胞の機能を保持することを支持する幹細胞の運命決定において重要な役割を担うことを示唆した。
【0112】
HDACI処理はH3ヒストンアセチル化の増加をもたらすと、これまでに報告されてきた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるChaurasia et al., "Chromatin-Modifying Agents Promote the Ex vivo Production of Functional Human Erythroid Progenitor Cells," Blood 117:4632-4641 (2011))、それと同時に、他の研究では、このような剤への曝露により、HDACへの結合及び/もしくはDNA脱メチル化の促進、並びに転写因子を関連DNAに結合させ得るヌクレオソームのスライド及び/もしくは移動、または特定のHDACのプロテアソーム分解を引き起こすポリユビキチン化のいずれかにより、抑制的修飾が失われる結果になることが示された(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。これらの相互作用によって、転写機構の形成に必要な追加のコアクチベーター及び/またはヒストン修飾酵素の動員が可能になり、転写活性化がもたらされる(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Cedar et al., "Epigenetics of Haematopoietic Cell Development," Nat. Rev. Immunol. 11:478-488 (2011);Kouzarides, "Chromatin Modifications and Their Function," Cell 128:693-705 (2007);Oh et al., "Concise Review: Multidimensional Regulation of the Hematopoietic Stem Cell State," Stem Cells 30:82-88 (2012))。VPAは、一次及び二次NSGマウスへの細胞移植後に最大割合のヒト細胞キメリズムを生成可能な細胞の産生にて評価した、すべてのHDACIの内で最も有効であったことを本明細書で報告している。VPA処理によって、SRC頻度はPCでの頻度と比較して36倍増加したが、HSCの高い増殖能及び多系統分化能特性は保持されたままであった。機能的HSCを産生する取り組みに関して、SC培養条件ではなくSF培養条件の使用が重要であることが示された。SF培養条件下でのVPA処理は、SC条件下でのVPA処理よりも、CD34CD90細胞の産生数が20,202倍高い結果となった。これらの結果は、血清は、機能的HSCの保持及び/または増殖に関与する調節遺伝子を阻害または抑制する因子を含むこと、並びに、血清の存在によってコミットメント及び分化に関与する遺伝子が上方制御されることを示している。これらの結果は、Hirai及び共同研究者によって報告された結果と非常に類似しており、彼らは、iPS細胞の作製効率は、培地の組成及び形質導入した細胞をフィーダー層上に播種する濃度の変化によって、劇的に改善させることが可能であることを示した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるHirai et al., "Efficient iPS Cell Production with the MyoD Transactivation Domain in Serum-Free Culture," PLoS One 7(3):e34149 (2012))。SF培養条件下でのVPA処理によって、7日間のインキュベーション後に分裂中のCD34CD90細胞画分の多くの継続的な分裂がもたらされ、それによって、CD34CD90細胞数の増加が説明されることも示した。これらの結果は、VPA処理によって、7日間の培養期間を更に超えて分裂し続けるための、CD34CD90細胞の能力が保持されることを示している。しかしながら、この特性は、より長期間のインキュベーション後に失われ、このことは恐らく、使用した条件下におけるエクスビボでの幹細胞決定遺伝子発現プログラムの一時的な保持を表している。SF条件及びVPA処理を使用して産生させたCB CD34細胞の未分化な性質を、CD184及びインテグリンα6(CD49f)発現割合の増大、CD45RA発現の欠如、並びにALDH活性割合の増加によって、更に本研究で立証した。CXCR4の発現増加は特に重要であり、その理由は、CXCR4とそのリガンドSDF1との相互作用が、幹細胞移植片の、移植されたレシピエント骨髄へのホーミングにおいて重要な役割を果たすからである(その全体が参照として本明細書に組み込まれるMotabi et al., "Advances in Stem Cell Mobilization," Blood Rev. 26(6):267-278 (2012))。
【0113】
VPAで処理されたCD34細胞における上方制御されたCD184の機能性は、これらの細胞がコントロール培養物に由来するCD34細胞よりも高い割合で、インビトロでSDF1に対して遊走する能力及びNSGマウス骨髄へホーミングする能力によって、本研究で立証した。従って、VPAで処理されたCB CD34細胞の骨髄再構築能の増大は、HSCの産生だけでなく、レシピエントマウス骨髄へのHSCホーミングの促進に対する効果に起因し得る。VPAで処理されたCD34細胞はまた、多能性関連遺伝子SOX2、OCT4、NANOG、及びZIC3、ただしhTERTは除く、の上方制御を特徴とすることが見出された。VPAで処理されたCD34細胞のこれらの性質は、iPS細胞及びES細胞の特性であり、通常のHSCとはこれまで関連がなかった。これらの多能性遺伝子(SOX2、OCT4、及びNANOG)のノックダウンは、VPAによるCD34CD90細胞のエクスビボでの産生を減少させるために実施した。加えて、SON処理後にZIC3の下方制御が観察されたのは、恐らくOCT4、SOX2、及びNANOGの下流を制御することによる多能性維持への寄与の表れである(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Lim et al., "Zic3 is Required for Maintenance of Pluripotency in Embryonic Stem Cells," Mol. Biol. Cell 18:1348-1358 (2007);Declercq et al., "Zic3 Enhances the Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells," Stem Cells Dev. (2013))。OCT4がヒト腫瘍内に存在するという先行文献が、他の研究者によって研究されており、それはOCT4活性を欠くOCT4偽遺伝子に起因していた(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる、Redshaw et al., "Human Haematopoietic Stem Cells Express Oct4 Pseudogenes and Lack the Ability to Initiate Oct4 Promoter-Driven Gene Expression," J. Negat. Results Biomed. 9(1):2-8 (2010);Zangrossi et al., "Oct-4 Expression in Adult Human Differentiated Cells Challenges its Role as a Pure Stem Cell Marker," Stem Cells 25:1675-1680 (2007))。これら偽遺伝子の転写は、VPAで処理された細胞においては検出することができなかった。NANOGとOCT4の物理的相互作用を、VPAにより増殖した細胞に由来するこれらタンパク質のco−IPによって更に記録すると、ES細胞で観察された結果と類似していた。興味深いことに、Yu及び共同研究者の最近の報告によると、OCT4及びSOX2は、ヒト間葉系幹細胞におけるCD49fの発現を促進し、VPAで処理されたCD34細胞を特徴付ける表現型マーカーの多くが、これら多能性遺伝子の上方制御に関連する可能性を高めている(その内容全体が、本明細書に参考として組み込まれるYu et al., "D49f Enhances Multipotency and Maintains Stemness Through the Direct Regulation of OCT4 and SOX2," Stem Cells 30(5):876-887 (2012))。VPAで処理されたCB CD34細胞は不死化した細胞ではなく、iPS及びES細胞とは明らかに異なる生物学的特性を有していた。培養において無期限に維持可能であるiPS及びES細胞とは異なり、VPAで処理されたCD34細胞数は、培養から8日後に減少した。加えて、VPAで処理されたCD34細胞は、NSGマウス内にES及びiPS細胞の特性である奇形腫を形成しなかった。VPAで処理されたCD34細胞によるこれら多能性遺伝子の一時的な発現は、一次及び二次レシピエントNSGマウス内で、計30週間持続したヒト細胞における遺伝子転写の欠如によって更に立証した。これらのデータは、VPAで処理されたCD34細胞において誘導された、このような多能性遺伝子の一時的な発現が、恐らく細胞を不死化することなく、分裂するCB HSCの機能に影響を与えることを示している。
【0114】
CB CD34細胞の表現型を変化させるVPAの能力は、造血細胞分化の階層に沿って、未分化細胞の挙動に影響を与えることが知られているサイトカインの組み合わせの添加によって劇的な影響を受けた。PCは、少なくともサイトカインで16時間前処理しない限り、HSC数が減少した。CD34細胞及びCD34CD90細胞の数の増加は、これらの細胞を少なくともサイトカインで前処理し、次いで培地のみ(サイトカイン無し)またはVPAのみ(サイトカイン無し)の存在下で更に7日間インキュベートした場合に限り、可能であった。しかしながら、後続の7日間の期間中にサイトカイン無しでVPAに曝露された細胞のみが、VPA及びサイトカイン含有培養において観察された細胞と類似したHSC表現型(CD34CD90CD117CD49fCD184CD45RA)を発現した。重要なのは、7日間のインキュベーション期間にわたってサイトカインをVPAに添加した場合に、CD34細胞の増殖割合が更に大幅に増加したことであった。驚いたことに、サイトカインの存在下及び非存在下の両方で産生されたCD34細胞は、NSGマウスへの細胞移植時に多系統の造血を構築する能力を保持しており、このことは、プライミング段階における短期間のサイトカイン曝露によって、限定的な増殖と、血液学的生着を生じさせるのに十分なHSC機能の維持とがもたらわれたことを示していた。これらのデータは、HSCをある程度置いたエクスビボ環境が細胞の運命を決定すること、及び表現型に関与するHSCプログラムの保持は、SF培地内のVPAによってエピジェネティックにリプログラミングされた結果であり、同時に、細胞数の増加はサイトカイン曝露により促進された細胞増殖の結果であることを示している。
【0115】
本明細書で報告された研究は、CB移植の臨床研究に対して重要な意味を持つ。本報告で概要を示したアプローチの実施には、十分なSRC数を含む利用可能な幹細胞移植片を作製し、成人でもより好ましい成果の上がる同種CB幹細胞移植を継続できる可能性がある。
【0116】
実施例2−BFU−E+CFU−Mixの絶対数に対するHDACIの効果
VPA補充SF培養を用いて産生させた精製ALDHCD34細胞では、産生したBFU−E及びCFU−Mixの絶対数(8.4x10±6.7x10/CB収集物)が、SC培養(1.4x10±0.88x10)と比較して、より多かった(ANOVA,p=0.001)(図20A)。一方、VPA補充SC培養物に由来するALDHCD34細胞では、産生したBFU−E及びCFU−Mixの数(2.7x10±1.0x10)が、SF培養(3.5x10±0.78x10)と比較して、より多かった(ANOVA,p=0.01)(図20B)。これらのデータは、血清が、ALDH細胞及びALDH細胞の集団のインビトロでの運命に対して、特異的に影響を与えることを示している。
【0117】
実施例3−幹細胞表現型に対する凍結保存の効果
増殖させたHSC生成物は、移植センターへの配送前に凍結保存すると予想されるので、HSC表現型を発現する生存可能な細胞の回復に対する凍結保存の効果を調査した。CB−CD34細胞をVPAで7日間処理し、細胞数を数えて、解凍前後の両方で表現型解析を実施した。凍結保存は、Invitrogen社(Life Technologies社、グランドアイランド、NY)製Synth−a−Freezeを使用して実施した。
【0118】
Synth−a−Freezeは、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する合成液体凍結保存培地である。Synth−a−Freezeは、抗生物質、抗真菌剤、ホルモン、成長因子、血清、またはタンパク質を含まない。この培地は、HEPES及び重炭酸塩を緩衝剤としている。CD34細胞、CD34CD90細胞、及びCD34CD90CD184細胞の割合(%)は、凍結保存の前後で有意に変化しなかった(90%〜95%の細胞が生存可能のままであった)。これらのHSC表現型を発現する細胞の絶対数は、凍結保存の前後で変化しなかった(図18)。これらのデータは、動物性タンパク質の必要なく、増殖させたHSC生成物の凍結保存の実施が可能であることを実証している。
【0119】
実施例4−表現型で定義されるすべてのクラスのHSCを含む、VPAにより増殖したHSC生成物
VPAにより増殖したHSCは多数の長期再構築細胞を含むことを示した。これらの細胞は、全能性細胞の特性である多能性遺伝子を発現するので、このような移植片には生着遅延を伴う可能性があるという妥当な懸念がある。Dick研究室では、短期並びに中間時点後及び長期間後にNSGマウスにおいて再構築されるHSCの階層を定義し、その表現型階層特性を同定した(その全体が参照として本明細書に組み込まれるNotta et al., "Isolation of Single Human Hematopoietic Stem Cells Capable of Long-term Multilineage Engraftment," Science 333(6039):218-221 (2011))。短期SCID再構築細胞(R−SRC)は移植後2〜4週間でNSGマウスから検出され、その表現型はCD34CD90CD49fであり、中期SRC(IT−SRC)は12〜14週間後に再構築され、その表現型はCD34CD90CD49fであり、及び長期SRC(LT−SRC)は>24週間後に再構築され、その表現型はCD34CD90CD49fである。これらの様々なHSCクラスの分布を、VPAにより増殖したHSC生成物3つについて評価した。図19A〜Cに見ることができる通り、HSCのこれらのクラスは各々、CB−CD34初代細胞と比較して、VPAで処理された細胞に存在する数が多かった。このことは、これらの増殖移植片が、未処理のCB移植片と比較して恐らくより短期で、持続的な生着パターンをもたらし、加えて移植失敗の発生率を低下させるだろうことを示唆した。興味深いことに、SF条件下にてサイトカインのみの存在下で処理したCB−CD34細胞が含む、R−SRC数が最も高い(図19C)。この興味深い結果は、第1相試験の完了後にVPAで処理された移植片の注入が、造血回復に対して短期と関連がない場合、重要であり得る。これらの結果に基づいて、R−SRC数をより大幅に増加させることで更に短期での生着を促進させるために、CD34初代細胞のごく一部をサイトカインのみの存在下で増殖し、VPAで処理された細胞生成物と混ぜ合わせることが可能となった。
【0120】
本明細書(付随する特許請求の範囲、要約、及び図面のすべてを含む)に記載されたすべての特徴、及び/または同様に開示されたいかなる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、このような特徴及び/またはステップの少なくともいくつかが相互排他的な場合の組み合わせを除いて、任意の組み合わせでいかなる上記態様とも組み合わせられ得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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