特許第6525992号(P6525992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525992
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】吸音材を含むコンクリート要素
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
   E04B1/86 N
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-527447(P2016-527447)
(86)(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公表番号】特表2016-539260(P2016-539260A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014072987
(87)【国際公開番号】WO2015063022
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】13191001.0
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン メニヒ
(72)【発明者】
【氏名】サルナス トゥルツィンスカス
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−096019(JP,A)
【文献】 特許第4148318(JP,B2)
【文献】 特開2011−219281(JP,A)
【文献】 特開平08−013640(JP,A)
【文献】 米国特許第04272230(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82 − 1/90
E04C 2/00 − 2/54
C04B 14/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強されたコンクリート要素であって、該コンクリート要素の表面上に部分的に露出している吸音性でかつ少なくとも部分的に連続気泡型の発泡材料を含む前記補強されたコンクリート要素であって、その際、該発泡材料が露出している表面は部分的にのみ該発泡材料からなるものとする前記補強されたコンクリート要素において、補強材が部分的に該発泡材料によって包囲されており、発泡材料が表面上に周期的な間隔でストリップ状に分配されていることを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート要素であって、該コンクリート要素は板状であり、かつ、部分的に露出している発泡材料を有する表面から反対側の表面への延在方向で該発泡材料は該コンクリート要素を完全には貫通していないことを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート要素であって、発泡材料が露出している表面の10〜40面積%が該発泡材料からなることを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項4】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素であって、発泡材料がジオポリマー発泡体を含むことを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素であって、発泡材料が200〜400kg/m3の密度を有することを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素であって、発泡材料がエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素であって、発泡材料の20〜90体積%が空気からなることを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素であって、該コンクリート要素が、天井構造物、壁構造物または屋根構造物であることを特徴とする、前記コンクリート要素。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素の製造方法であって、補強材と、反応性の流動可能な材料の形態での吸音性発泡材料とを、型枠内に導入し、かつ該反応性の流動可能な材料を少なくとも部分的に硬化させることを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
請求項に記載のコンクリート要素の製造方法であって、反応性の流動可能な材料がアルカリ活性化されたアルミノケイ酸塩結合材を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のコンクリート要素の製造方法であって、反応性の流動可能な材料が界面活性剤を含み、かつ空気の機械的導入により該材料を発泡させることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項に記載のコンクリート要素の製造方法であって、反応性の流動可能な材料が、少なくとも1種の水乳化型エポキシ化合物および/または少なくとも1種の自己乳化型エポキシ樹脂エマルションを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか1項に記載のコンクリート要素の製造方法であって、反応性の流動可能な材料が繊維を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
建築物内の防音天井としての、請求項1からまでのいずれか1項に記載のコンクリート要素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強されたコンクリート要素であって、該コンクリート要素の表面上に部分的に露出している吸音性でかつ少なくとも部分的に連続気泡型の発泡材料を含む前記補強されたコンクリート要素に関し、その際、補強材は部分的に該発泡材料によって包囲されているものとする。さらに、そのようなコンクリート要素の製造方法および建築物内の防音天井としての該コンクリート要素の使用を開示する。
【0002】
室内での防音状況は、建築条件によって大きく左右される。その際、室内の防音的印象を決定づけるパラメーターは、相応する室内設計によって多少なりとも強い影響を受けうる。単なる騒音の低減に加え、室内の防音特性をその所定の目的に適合させることが、室内防音の重要な目的の一つである。屋外とは対照的に、室内の音場は直接音および反射音から発生するために、拡散される。その調節は、相応する音響出力の低減により行うことができる。この場合、狙い通りの吸収および反射のプロセスを可能にする工業用吸音材が使用される。
【0003】
基本的には、工業用吸収材は、その動作様式に応じて2つのグループ、すなわち共鳴器と多孔質吸収材とに分類できる。
【0004】
共鳴器の作用様式は、ごく一般的には、顕著な吸音極大を有する音響的ばね質量系である。このような吸音材の例としては、プレート共鳴器、ヘルムホルツ共鳴器または微細多孔吸収材が挙げられる。
【0005】
これに対して、多孔質吸収材への音響エネルギーの吸収は主に孔壁上の摩擦により行われ、この孔壁上で音響エネルギーが熱エネルギーに変換される。このためには、十分な気孔率を有する開気孔構造が必要である。吸音は主に消散によってもたらされるため、多孔質吸音材は共鳴器と比較して有意に異なる吸音スペクトルを有する。この場合、吸音の周波数依存性は、理想的な場合にはS字型で連続的により高い周波数に向かって増加し、かつ漸近的に極大値に接近する。多孔質吸収材は様々な構成であることができる。その際、材料のバリエーションは極めて多岐にわたる。
【0006】
発泡製品は一般には二相系であり、その際、一方の相は気体であり、他方の相は固体または液体である。その際、気相は微細な気泡からなっており、この気泡は球状の形態かまたは四面体の形態のいずれかを有し、かつ固体または液体のセルストラットにより区画されている。従って、発泡製品は球状発泡体と四面体発泡体という2つの大きな群に分類することができる。セルストラットは節点を介して相互に接続されており、その際に骨格を形成している。
【0007】
吸音特性を有する発泡体は、主に連続気泡型である。この場合には、境界ストラットの間の薄壁が破壊されており、かつセルが相互に接続されている。これにより、材料は多孔質吸収材として機能する。連続気泡型発泡体におけるセルストラットの物理的特性は、極めて多様である。これは、金属から無機材料、そして有機ポリマーにわたる。この有機ポリマーは、工業的使用において現在最大のシェアを占めており、かつ一般に発泡体と呼ばれている。有機ポリマー発泡体は、その硬さに応じて軟質発泡体と硬質発泡体とに分類される。その際、気泡の形成は主に噴射剤ガスにより行われる。この噴射剤ガスは、in−situで化学反応によりまたは化学化合物により生じる。この化学化合物は有機マトリックス中に溶解され、かつ低温で沸騰するかまたはガス状生成物へと分解される。また発泡体は、ガスの機械的混入によって、相分離下での溶液重合によって、または充填剤の使用によっても生成されることができ、その際、充填剤は硬化後に除去されるものとする。
【0008】
文献には、連続気泡型PUR発泡体が多数記載されている。これは、通常はイソシアネート含有化合物とポリオールとから製造される。気泡形成には、その沸点が低いことにより物理的に有効である噴射剤ガスが主に使用される。また、発泡時にイソシアネート基と水との化学反応により生成される二酸化炭素と物理的に有効な噴射剤ガスとを構成要素とする目的とする噴射剤ガス組み合わせ物も、よく知られている。水とイソシアネートとの反応の際には、ポリオールとの反応とは対照的に二酸化炭素の他に尿素基が生成され、この尿素基がセル骨格の形成に寄与する。
【0009】
DE390908361には、多孔質構造を有する石膏発泡体、並びに防音および断熱のための該石膏発泡体の製造方法が記載されている。この場合、石膏−水懸濁液を湿潤剤の存在下にさらなる反応パートナーなしでMDIプレポリマーと混合して発泡させることにより、成形体が形成される。
【0010】
DE202009001754から、コンクリート構造物への組み込みに適しており、かつ鉱物材料からなるスペーサーが知られている。この場合、このスペーサーは防音効果を有するガラス系発泡体であり、このガラス系発泡体はセメント系材料で包囲されていることができ、その際、この発泡体の1つの表面は包囲されていない。このスペーサーは、補強材用の支持体として、特に鉄筋用の支持体として使用される。この場合、このスペーサーは次のように配置されており、すなわち、コンクリートを打設して脱型した後に、防音効果を有するガラス系発泡体が露出し、それによってこのガラス系発泡体が吸音材として作用しうるように配置されている。しかし、このように構成されたコンクリート構造物は、吸音材の構造高さを自由に選択することができず、この構造高さが補強材により制限されてしまうという欠点を有している。低周波数に対しても十分な吸音性を達成するためには、多孔質吸収材の場合には比較的厚い層が指定される。従って、相応してこのスペーサーを大きな寸法としなければならず、その結果、コンクリート構造物が比較的厚くなってしまう。建築技術的な問題に加えて、これによって著しくより多量のコンクリートが消費されることとなり、その際、実際には通常は、最適でない吸音性を甘んじて受け入れざるを得ない。
【0011】
コンクリート要素の補強には、特に、リブ付きまたは異形の鉄筋として使用されかつ高い引張強さを有する鉄筋が適している。必要とされる特性は、例えばDIN 488(旧DIN 1045−1)、または欧州規格EN 10080において調整される。こうした鉄筋は、様々な形態で製造される。ドイツでは、特に以下のバージョンが使用されている:
・6、8、10、12、14、16、20、25、28、32および40mmの直径および18mまでの送り長さを有するリブ付き熱間圧延棒鋼としての、コンクリート用棒鋼B500B(DIN 488による)(旧「BSt 500 S(B)」)、
・リブ付きでかつ異形の冷間加工鋼棒(延性等級A)または熱間圧延コンクリート用鋼(延性等級B)を構成要素とし、かつ6mm〜14mm(高延性のバージョンにおいてのみ14mm、通常の延性または高延性のバージョンにおいては6〜12mm)の直径を有する完成溶接格子としての、様々なバリエーションでのコンクリート用鋼格子B500AおよびB500B(DIN 488による)(旧「BSt 500 M(A)および(B)」)、
・特に半完成天井部品および半完成壁部品における曲げ強さの補強材としての、格子状支持体。
【0012】
近年のコンクリート用鋼は、その変形特性に関して、弾性率が200,000〜210,000N/mm2であることと、延性等級の分類とを特徴としている。ドイツでは、引張強さと降伏点との比が少なくとも1.05であり、かつ最大負荷下での鋼の伸びが少なくとも2.5%である冷間加工鋼についての標準的な延性の等級Aと、最大負荷時の鋼の伸びが少なくとも1.08%あるいは5%である熱間加工鋼についての高延性の等級Bとがある。さらに、引張強さと降伏点との比が少なくとも1.15であり、かつ最大負荷下での鋼の伸びが少なくとも8%である高延性の制震鋼の等級Cについて言及しなければならない。これは、450N/mm2の低下された降伏点を有する。
【0013】
コンクリート用鋼の重要な特性の一つに、周囲のコンクリートと該コンクリート用鋼との結合が挙げられる。この結合を改善するために、リブがロールまたはローラで付与される。このリブは、棒径の4.5%の最大高さおよび棒径の60%の間隔を有する。このリブによってコンクリートと鋼との間の局所的な噛み合わせが達成され、それによって短い結合長にわたる最適な力の伝達が可能となる。
【0014】
従って本発明の課題は、組み込まれた吸音材を少なくとも1つ有する補強されたコンクリート要素を提供することであり、その際、該吸音材の構造高さを広範囲で自由に選択することができ、それにより、該コンクリート要素の厚さを変化させる必要なしに最適な吸音が達成されるものとする。
【0015】
本課題は、補強されたコンクリート要素であって、該コンクリート要素の表面上に部分的に露出している吸音性でかつ少なくとも部分的に連続気泡型の発泡材料を含む前記補強されたコンクリート要素により解決され、その際、該発泡材料が露出している表面は部分的にのみ該発泡材料からなり、かつ補強材は部分的に該発泡材料により包囲されているものとする。
【0016】
上述の課題が完全に解決されたにもかかわらず、本発明によるコンクリート要素は、容易にかつ安価に製造可能であってかつ迅速な建築の進行が可能となるという利点を有する。
【0017】
好ましい一実施形態において、コンクリート要素は板状であり、かつ、部分的に露出している発泡材料を有する一方の表面から反対側の表面への延在方向で該発泡材料は該コンクリート要素を完全には貫通していない。用途に応じて、本発明による板状のコンクリート要素は、この延在方向に、好ましくは5cm〜50cm、特に12cm〜25cmの全厚を有する。この場合、発泡材料は好ましくは、部分的に露出している該発泡材料を有する表面から反対側の表面への延在方向に、1cm〜20cm、特に3cm〜10cm、特に好ましくは4cm〜6cmの最大厚さを有することができる。
【0018】
本発明による補強材は、特に鉄筋であることができる。この鉄筋の用いられる厚さ、形状および品質は、コンクリート要素のそれぞれの用途に依存する。特に適しているのは、溶接または接合されたコンクリート用鋼格子および格子状支持体である。好ましくは、規格DIN 488に適合する鉄筋が使用される。
【0019】
補強材は、本発明によれば、発泡材料により部分的に包囲されている。このことは、補強材の好ましくは5〜60体積%、特に好ましくは10〜30体積%が発泡材料により包囲されていることと理解されたい。
【0020】
好ましい一実施形態において、発泡材料が露出しているコンクリート要素の表面の10〜40面積%、特に15〜25面積%が該発泡材料からなる。この場合、発泡材料がコンクリート要素の表面上に周期的な間隔でストリップ状で分配されていることが特に好ましい。特にこれは、5〜10cmの幅を有しかつ25〜35cmの周期で配置されている吸収材ストリップであることができる。その際、このような配置が特に有利であることが判明した。なぜならば、反響材と吸音材との間でアドミタンスが跳躍し、これが吸音性の増加につながるためである。
【0021】
本発明により補強されたコンクリート要素は、例えば引き続き建築物の建築に使用される完成部材であることができる。これは天井構造物、壁構造物または屋根構造物であることができる。特に好ましくは、このコンクリート要素は、好ましくは建築現場で製造される防音天井であることができる。さらには、本発明により補強されたコンクリート要素を、路面電車および鉄道の線路上の遮音要素として使用することも可能である。
【0022】
発泡材料として使用される材料は、特に、ポリウレタン発泡体、ジオポリマー発泡体およびメラミン樹脂発泡体の系列からの少なくとも1つの発泡体を含むことができる。発泡材料は、好ましくは200〜400kg/m3、特に好ましくは240〜350kg/m3、特に最高で300kg/m3の密度を有する。この場合、これらの密度は乾燥発泡材料に関するものであり、その際、「乾燥」とは、残留水分が3質量%未満であることと理解されたい。特に、発泡材料の20〜90体積%、特に50〜60体積%が空気からなることができる。好ましい一実施形態において、露出している吸音性の発泡材料は連続気泡型発泡材料として提供される。
【0023】
従来技術により知られている防音発泡体は、ポリウレタン発泡体として適している。連続気泡型PUR発泡体に関する概要については、G. Oertel, Polyurethane, Becker Braun Kunststoffhandbuch 7, Hanser Verlag Muenchen 1983に提供されている。
【0024】
特に好ましくは、発泡材料はジオポリマー発泡体を含むことができる。特別な一実施形態において、発泡材料はジオポリマー発泡体からなる。
【0025】
ジオポリマーは、少なくとも2つの成分を反応させることにより形成されるセメント系材料である。第1の成分はSiO2とAl23とを含む反応性固体成分であり、例えばフライアッシュまたはメタカオリンである。第2の成分はアルカリ活性剤であり、例えばナトリウム水ガラスまたは水酸化ナトリウムである。水の存在下にこれら2つの成分を接触させることによって、耐水性のアルミノケイ酸塩の非晶質ないし半結晶性のネットワークの形成により硬化が生じる。
【0026】
硬化プロセスは12を上回るpH値を有する溶液中で生じるものであり、例えばポルトランドセメントなどの無機結合材の水和プロセスとは異なる。この主に「溶液」を介して生じるプロセスでは、反応性固体成分の元のケイ酸塩格子中への、Al原子の、そして恐らくはさらにCa原子およびMg原子の組み込みが生じる。本方法により製造される生成物の特性は、特にアルカリ活性剤の濃度と水分状況とに依存する。
【0027】
ジオポリマーは、すでに1950年代にはGlukhovskyにより研究されていた。この系の興味深い特性に基づき、近年ではこの結合材の業界の関心が大幅に高まっている。アルカリ活性化されたアルミノケイ酸塩結合材によって、標準的なポルトランドセメントの強度を凌ぎうる強度が可能となる。さらに、この系は極めて急速に硬化し、かつ極めて高い耐薬品性および耐熱性を示す。
【0028】
アルカリ活性化可能なアルミノケイ酸塩結合材として考慮される物質に関する概要は、刊行物Alkali−Activated Cements and Concretes, Caijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, (2006), 30−63および277−297に提供されている。
【0029】
さらなる好ましい一実施形態において、特にジオポリマー発泡体の場合には、発泡材料はエポキシ樹脂を含む。これにより、特に発泡材料の割れ、曲げ引張強さおよび触覚に関する機械的特性を向上させることができる。本発明によるジオポリマー発泡体は、該ジオポリマー発泡体が不燃性であって、さらには例えばメラミン樹脂発泡体などの他のいくつかの発泡体に比べてホルムアルデヒドを放出することができない、という重要な利点を有する。乾燥ジオポリマー発泡体に対するエポキシ樹脂の割合は、特に0.5〜10質量%であることができる。本発明によるコンクリート要素の不燃性に関して、特に1〜5質量%の割合が特に有利であることが判明した。
【0030】
本発明の範囲において、「乾燥ジオポリマー発泡体」という概念は、残留水分が3質量%未満である発泡体と理解されたい。
【0031】
本発明のもう1つの対象は、本発明によるコンクリート要素の製造方法であり、その際、補強材と、反応性の流動可能な材料の形態での吸音性発泡材料とが、型枠内に導入され、かつ該反応性の流動可能な材料が少なくとも部分的に硬化される。
【0032】
この場合、反応性の流動可能な材料を既に発泡体として型枠内に導入することもできるし、型枠内への導入後に初めて発泡体を形成させることもできる。この場合に重要なことは、コンクリートの添加前に、補強材が発泡材料により部分的に包囲されることである。
【0033】
好ましくは、最初に補強材を伴って型枠が作製され、次のステップにおいて反応性の流動可能な材料の形態での発泡材料が導入され、その結果、該補強材が該発泡材料によって部分的に包囲される。しかし、最初に反応性の流動可能な材料の形態での発泡材料を型枠内に導入し、次いで補強材を挿入することも可能である。反応性の流動可能な材料が少なくとも部分的に硬化した後に、コンクリートが型枠内に導入され、かつ硬化される。
【0034】
特に好ましい一実施形態において、反応性の流動可能な材料はアルカリ活性化されたアルミノケイ酸塩結合材を含み、その際、アルカリ活性化されたアルミノケイ酸塩という概念は、本出願の範囲においてはジオポリマーという概念と同義であるものと理解されたい。
【0035】
上述の通り、発泡材料はジオポリマー発泡体を含むことができ、かつ特に好ましい一実施形態においては、ジオポリマー発泡体からなることができる。この場合、反応性の流動可能な材料は、SiO2とAl23とを含む固体成分として、本発明によれば特に、天然アルミノケイ酸塩および/または合成アルミノケイ酸塩、特に高炉水砕スラグ微粉末、マイクロシリカ、火山灰粉末、オイルシェール、メタカオリン、特にタイプCおよびタイプFのフライアッシュ、高炉スラグ、アルミニウム含有シリカフューム、ポゾラン、玄武岩、粘土、泥灰岩、安山岩、珪藻土またはゼオライト、特に好ましくは、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、マイクロシリカ、スラグ、粘土およびメタカオリンの系列からの少なくとも1種のアルミノケイ酸塩を含むことができる。本発明による反応性の流動可能な材料は、これらの固体成分を好ましくは5〜70質量%の量で、好ましくは10〜50質量%の量で、特に15〜30質量%の量で含み、その際、これらは混合物であってもよい。ジオポリマーの硬化反応のためには、特にケイ素原子対アルミニウム原子の比が極めて重要である。本発明による系においてはケイ素原子対アルミニウム原子の比が10〜1.0:1.0であることが有利であることが判明し、その際、6〜1.5:1.0、特に1.8〜2.2:1.0、および4.7〜5.3:1.0の比が好ましい。
【0036】
特に、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、リチウム水ガラス、アンモニア水ガラス、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルカリ金属硫酸塩、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウムの系列からの少なくとも1種の化合物がアルカリ活性剤として適しており、好ましくは、カリウム水ガラス、ナトリウム水ガラスおよび苛性カリの系列からの少なくとも1種の化合物がアルカリ活性剤として適している。特に、固形分40〜50質量%、およびSiO2:K2Oの質量比0.6〜0.8、またはモル比0.9〜1.1のメタケイ酸カリウム溶液を使用することもできる。さらに好ましくは、濃度0.1〜1モル/lの苛性カリを使用することができ、少なくとも0.9モル/lの濃度が特に好ましい。本発明によれば、アルカリ活性剤は、本発明による反応性の流動可能な材料に対して、有利に1〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、特に25〜50質量%の量で含まれており、その際、アルカリ活性剤はこれらの化合物の混合物であってもよい。
【0037】
充填材としては特に、岩石粉、玄武岩、粘土、長石、雲母粉末、ガラス粉末、黒鉛粉末、石英砂または石英粉末、ボーキサイト粉末、アルミナ水和物、およびアルミナ工業、ボーキサイト工業若しくはコランダム工業の廃棄物、灰、スラグ、非晶質シリカ、高熱法シリカ、マイクロシリカ、石灰岩および鉱物繊維材料が考慮される。この場合特に、最高で2mmの粒径が適している。例えばパーライト、珪藻土、バーミキュライト、発泡ガラスおよび発泡砂といった軽量充填材を使用することもできる。好ましくは、軽量充填材、特に発泡ガラスが使用される。特に好ましくは、発泡ガラスは50〜300μmの平均粒径を有する。本発明によれば、充填材は、本発明による反応性の流動可能な材料に対して、好ましくは5〜50質量%、好ましくは10〜35質量%の量で含まれ、その際、充填材はこれらの化合物の混合物であってもよい。
【0038】
曲げ引張強さや圧縮強さといった機械的特性をさらに向上させるために、本発明による反応性の流動可能な材料は、アルミノケイ酸塩を、最高で100μmの好ましい粒径を有する微小中空ビーズの形態で含むことができる。本発明による反応性の流動可能な材料に対する微小中空ビーズの割合は、好ましくは最高で30質量%であり、その際、微小中空ビーズ対残りのアルミノケイ酸塩の好ましい比は、0.8:1〜1:0.8である。
【0039】
さらに、本発明による反応性の流動可能な材料は、特に最高で3質量%の割合で繊維を含むことができる。これにより、発泡体の機械的安定性を向上させることができる。好ましくは、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、玄武岩繊維およびそれらの混合物が使用される。特に、繊維は最高で120mm、特に最高で6mmの長さを有する。
【0040】
発泡体の撥水作用を向上させるために、該発泡体は疎水化剤を含むことができる。疎水化剤の割合は、本発明による反応性の流動可能な材料に対して特に最高で3質量%であることができる。好ましくは、疎水特性を有するシリコーン油または再分散性粉末が使用される。好ましくは、300〜1000mPa・sの粘度を有するシリコーン油を使用することができる。適した市販品の一つとして、例えばWacker Chemie AG社のシリコーン油AK500が挙げられる。さらに、例えばWacker Chemie AG社の7031Hなる名称のVinnapas型の再分散性粉末を使用することができる。
【0041】
本発明による反応性の流動可能な材料の固化挙動および凝結時間は、アルミン酸カルシウムセメントの添加により好影響を受けうる。反応性の流動可能な材料に対するアルミン酸カルシウムセメントの割合は、有利に少なくとも3質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。さらに、凝結時間はCo(OH)2の添加によっても調節可能である。本発明による反応性の流動可能な材料に対するCo(OH)2の割合は、1〜15質量%であることができ、特に3〜10質量%であることができる。
【0042】
特に好ましい一実施形態において、本発明による反応性の流動可能な材料は、空気連行剤および/または泡安定剤を含む。この場合、これは好ましくは界面活性剤であることができる。特に、界面活性剤は少なくとも1種のC8〜C10アルキルグルコシドであることができる。界面活性剤の一部、好ましくは界面活性剤の30質量%未満が、鹸化されたバルサム樹脂およびトール油ロジンに置き換えられてもよい。この場合、例えばBASF SE社のVinapor MTZ/K50を使用することができ、その際、これは、粉末化され、噴霧乾燥変性されかつ鹸化されたバルサム樹脂およびトール油ロジンである。
【0043】
本発明による反応性の流動可能な材料に対する界面活性剤の割合は、特に0.1〜2.5質量%、特に0.5〜1.5質量%であることができる。
【0044】
本発明による方法の特に好ましい一実施形態は、本発明による反応性の流動可能な材料が界面活性剤を含み、かつ空気の機械的導入により該材料を発泡させることを提供する。好ましくは防音的に有効となるようにするために、発泡体が50〜60体積%の空気含有率を有することが望ましい。特定の一実施形態において、本発明による反応性の流動可能な材料の成分と界面活性剤とが混合され、その際、例えば市販の建築現場用ミキサーを使用することができる。この場合、好ましくは1000〜1200g/Lの濃度の懸濁液が形成される。次いで、この懸濁液を、ステータ・ロータ動作原理により構成されている混合ヘッド中で空気を用いて発泡させることができる。この場合、適した装置は、例えばHeitec Auerbach GmbH社のMuegromix+型である。発泡体の湿潤粗密度は、好ましくは100〜800g/L、特に150〜600g/Lである。
【0045】
さらに好ましい一実施形態において、反応性の流動可能な材料は、少なくとも1種の水乳化型エポキシ化合物および/または少なくとも1種の自己乳化型エポキシ樹脂エマルションを含む。上記の利点に加えて、エポキシ樹脂はジオポリマー発泡体により早期に機械的安定性を付与するため、本発明による補強されたコンクリート要素は6時間後にすでに脱型が可能である。
【0046】
エポキシ化合物は、樹脂および硬化剤を含むこともできるし、樹脂と硬化剤と反応性希釈剤との組み合わせを含むこともできる。エポキシドは好ましくはビスフェノールA/F混合物であり、かつ硬化剤は好ましくポリアミノ付加物である。反応性希釈剤として、好ましくはアルコキシ化脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルが使用される。
【0047】
好ましい一実施形態において、エポキシ樹脂は反応性希釈剤と60:40〜40:60の質量部の比で混合され、さらに、好ましくはこの混合物に硬化剤140〜160質量部が添加される。
【0048】
エポキシ樹脂として、特に自己分散型エポキシ樹脂エマルションを使用することができ、これは、好ましくはポリアミノアミド付加物と0.9〜1.1:1の化学量論比で使用される。市販の自己分散型エポキシ樹脂エマルションとしては、例えばWaterpoxy 1422、Waterpoxy 1439、Waterpoxy 1466が考慮され、かつ硬化剤としてはWaterpoxy 751、Waterpoxy 760、Waterpoxy 801が考慮される。Waterpoxy 1422とWaterpoxy 760との混合物を使用することが好ましい。上述のエポキシ樹脂エマルションは、BASFSE社の製品である。
【0049】
本発明による方法は、ジオポリマー発泡体を、好ましくは20〜30℃の温度、および少なくとも65%の相対空中湿度で乾燥させることを提供する。本発明による板状の補強されたコンクリート要素の脱型は、24〜48時間後に行うことが可能である。
【0050】
ジオポリマー系発泡体を使用することのもう1つの利点として、有利な火炎挙動が挙げられる。有機添加剤を使用した場合であっても、そして特にエポキシ樹脂の存在下であっても、極めて優れた結果が得られた。火炎曝露中に、煙も滴下物も生じない(DIN EN ISO 11925−2)。この場合に、本発明によるジオポリマー発泡体は、特にDIN 13501−1によるA2またはA1の燃焼挙動を示す。
【0051】
さらに、被覆物を有する本発明による板状の補強されたコンクリート要素を提供することも可能であるが、その際、これにより該要素の吸音特性が実質的に低下することのないように留意しなければならない。特に、開気孔を有しかつ音が通る構造を有する、ウールフリース、石膏、塗料およびテキスタイルが適している。特に、テキスタイルには印刷モチーフが設けられていてよい。
【0052】
本発明のもう1つの態様は、建築物内の防音天井としての本発明によるコンクリート要素の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、周期的に配置された吸収材ストリップを有する本発明による天井要素の上面図である。
図2図2は、周期的に配置された吸収材ストリップを有する本発明による天井要素の模式断面図を示し、その際、補強材はコンクリート要素の表面に対して平行となるように位置合わせがなされている。
図3図3は、周期的に配置された吸収材ストリップを有する本発明による天井要素の模式断面図を示し、その際、補強材は格子状支持体である。
【0054】
以下、本発明を添付の図面を参照して詳説する。
【0055】
実施例
ジオポリマー発泡体の製造
【表1】
【0056】
ステータ・ロータ原理により動作する、液体および低粘度ペーストの連続発泡用の完全自動化発泡装置(Heitec Auerbach GmbH社のMuegromix+型)を用いて、ジオポリマー発泡体を製造した。
【0057】
第1表に列挙した成分を、界面活性剤を除いて、建築現場用ミキサー(Collomix Ruehr− und Mischgeraete GmbH社のZwangsmischer XM)中で混合する。その結果、1000〜1200g/Lの濃度を有する懸濁液が生じる。最後に、界面活性剤を添加し、さらに30秒間混合する。この懸濁液を上述の完全自動化発泡装置にホースを介してポンプ輸送する。
【0058】
方法パラメータは、次のとおりである:
− 混合ヘッド回転数 300rpm
− 系のエア圧 約2バール
− 材料処理量 120L/時間。
【0059】
製造された発泡体は、375g/Lの密度を有し、かつ55体積%の空気含有率を有する。この場合、この空気含有率は、DIN EN 1015−6に準拠して未発泡の懸濁液に対する体積変化により決定される。この発泡体は、274kg/m3の乾燥粗密度を有する。製造された発泡体の粗密度は、該発泡体の質量と該発泡体が占める体積との商により決定される。
【0060】
実施例1
本発明による天井要素のサイズは、1m×1.5m×0.12mである。まず、100mm×100mmのメッシュサイズを有する鉄筋格子B500A(DIN 488による)を対応する型枠に取り付け、その際、鋼棒は6mmの直径を有するものとする。続いて、この補強材上に、上述の通りにして得られるジオポリマー発泡体をストリップ状に吹付け、かつ25℃、空中湿度80%で2時間乾燥させ、次いでコンクリートを打設する。この天井要素を製造するために、8mmの最大粒径を有する強度クラスC25/30の現場打ちコンクリートを選択する。フレッシュコンクリートは、2328kg/m3の密度およびF5のコンシステンシー等級を有する。
【0061】
図1に、本発明によるこの天井要素を示す。この天井要素は、100cmの幅(参照符号8)および150cmの長さ(参照符号9)を有する。この天井要素は、ジオポリマーを構成要素とする吸収材ストリップ3を有する。ジオポリマー発泡体を構成要素とするこれらの吸収材ストリップは、表面上に25cmの間隔(参照符号10)で配置されている。ジオポリマー発泡体を構成要素とするこれらの吸収材ストリップは、5cmの幅(参照符号6)を有する。さらに、この表面は、コンクリート1を構成要素とするストリップにより形成されている。
【0062】
図2に、本発明によるこの天井要素の断面図を示す。この天井要素は、12cmの構造高さ(参照符号7)を有し、かつジオポリマー発泡体を構成要素とする吸収材ストリップ3を有する。ジオポリマー発泡体を構成要素とするこれらの吸収材ストリップは、5cmの幅(参照符号6)および5cmの構造高さ(参照符号4)を有し、かつ20cmの間隔(参照符号5)で配置されている。この天井要素は、さらにコンクリート1からなる。補強材2は、100mm×100mmのメッシュサイズを有する建築用鋼格子B500A(DIN 488による)であり、その際、鋼棒は6mmの直径を有する。この補強材は、ジオポリマー発泡体を構成要素とする吸収材ストリップにより部分的に包囲されており、かつコンクリート要素の表面に対して平行となるように位置合わせがなされている。
【0063】
実施例2
実施例2は、補強材として格子状支持体が使用される点で実施例1と異なる。
【0064】
図3に、本発明によるこの天井要素の断面図を示す。この天井要素は、12cmの構造高さ(参照符号7)を有し、かつジオポリマー発泡体を構成要素とする吸収材ストリップ3を有する。ジオポリマー発泡体を構成要素とするこれらの吸収材ストリップは、5cmの幅(参照符号6)および5cmの構造高さ(参照符号4)を有し、かつ20cmの間隔(参照符号5)で配置されている。この天井要素は、さらにコンクリート1からなる。補強材は、Filigran Traegersysteme GmbH & Co社のFilligran−E−Gittertraegerなる名称の格子状支持体である。この格子状支持体は、鉄筋B500A(DIN 488による)からなり、その際、鋼棒は6mmの直径を有する。この補強材は、ジオポリマー発泡体を構成要素とする吸収材ストリップにより部分的に包囲されている。
図1
図2
図3