(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明は様々な形の実施形態が可能ではあるが、現在の開示は、本発明の例証と見なされるべきものであり、説明された具体的な実施形態に本発明を限定することを意図するものではない、という理解とともに、現在好ましい実施形態を以下に記載していく。
【0017】
本明細書の本セクションのタイトル、すなわち、「本発明の詳細な説明」は、アメリカ合衆国特許庁の要件に関連しており、そして本明細書中に開示された特定事項を暗示してもいなければ、本明細書中に開示された特定事項を限定すると推測されるべきでもない、ということが、さらに理解されるべきである。
【0018】
本発明は、ある特定の化学物質の使用から得られた予期せぬ結果を立証しており、その化学物質は、予期せず、排煙湿式スクラバープロセスの水相ブローダウン中のセレン濃度を10倍近く減少させた。特定のメカニズムにより拘束されることを望むものではないが、排煙湿式スクラバープロセス内への化学物質の添加を通して、この化学物質は、亜セレン酸がさらに酸化してセレン酸塩になる機会を有するより前に、亜セレン酸塩を捕捉する機会を有する。セレン酸塩は、水相から除去することが難しい。
【0019】
加えて、この化学物質はまた、排煙湿式スクラバーシステムにおける腐食を最小化するのに好都合であることが判明した。詳細には、この化学物質は、2205合金製の排煙湿式スクラバーシステムにおける腐食を最小化するのを助けた。予期せず、これらの化学物質が、排煙湿式スクラバー液を備えた排煙湿式スクラバープロセスにおいて循環させられたときに、排煙湿式スクラバープロセス内の酸化還元電位(「ORP」)を低下させたということが発見された。ORPの低下は、腐食傾向を低下させる。この低下を示す例を以下に提供している。
【0020】
ORPは腐食電位と厳密に同じではないが、2つの数字はお互いに追随しあう、ということに注意することが重要である。ORPは、環境の酸化的又は還元的な特質を指し示すものである。腐食電位は、具体的な金属の表面での酸化的又は還元的な特質である。それ故に、腐食電位は一般にORPを反映する、しかしこの2つの値は同じではない。しかしながら、ORPの動向は、典型的には腐食電位の動向を指し示すだろう。従って、ORPの低下が観察されれば、腐食電位の低下につながると期待される。目の前にある本発明にとって、重金属除去のための化学物質、キレート剤の添加が、ORP値の低下及びそれによる腐食速度の低下をもたらすことがわかるとは、予期せぬことであった。
【0021】
一実施形態において、排煙湿式スクラバープロセスは湿式排煙脱硫器プロセスを含む。
【0022】
一実施形態において、排煙湿式スクラバープロセスは2205合金を含む設備を採用する。
【0023】
一実施形態において、燃料は、石炭、再生石炭、天然ガス、産業廃棄物、ガス化廃棄物、バイオマス、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0024】
化学物質1:
化学物質1は500〜10,000の分子量を有する水溶性エチレンジクロライドアンモニアポリマーであって、ジチオカルバメート塩の基を5〜55モル%含む。化学物質1は加えて遷移金属塩を含んでもよく、この遷移金属塩は鉄塩であってよい。水相中のセレンの低下と酸化還元電位の低下の両方に及ぼす化学物質1の好ましい効果が
図1に示されている。このエチレンジクロライド−アンモニアポリマーは、エチレンジクロライドとアンモニアとの反応によって調製される。出発エチレンジクロライド−アンモニアポリマーは一般に、500〜100,000の幅の分子量を有する。好ましい実施形態において、分子量は1,500〜10,000であり、最も好ましい分子量の範囲は1,500〜5,000である。本発明のコポリマーは、請求項に係る発明において使用することのできる前記コポリマーの例である、米国特許第4,731,187号;5,500,133号;又は5,658,487号に示された方法を用いて作り出すことができる。このコポリマーは、ポリアミン又はポリイミンと二硫化炭素とを反応させポリジチオカルバミン酸又はその塩を生じることによって作り出される。このような反応は、好ましくは、水又はアルコールなどの溶媒中で、30℃〜100℃の温度で、1〜10時間の幅の期間、行われる。40℃〜70℃の温度で、2〜5時間で、良好な転化が得られる。これらの反応条件は、前述のエチレンジクロライド−アンモニアポリマーの改質に適用される。
【0025】
完成したポリマー中のジチオカルバメート塩の基のモル%は、一般に5〜55%の幅内である。好ましい幅は20〜55モル%であり、最も好ましい幅は約30〜55モル%である。
【0026】
この塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム又はカルシウムなどのアルカリ及びアルカリ土類があるがこれらに限定されない。この化学物質は、少なくとも1つの遷移金属塩を含んでもよく、これは鉄塩であってよい。
【0027】
現在産業界において用いられているスクラバープロセスには、例として、スプレー塔、ジェットバブラー、及び並流充填塔がある。これらのタイプの空気清浄度制御装置(「AQCDs」)は、例として提供されており、いかなる限定をも表す又は示唆することを意図されていない。この水溶性コポリマーは、スクラバーへ添加するより前に、未使用石灰岩又は石灰スラリーに添加してよく、スクラバー液の再循環ループ、又は「低固形物」は、スクラバーパージストリームからスクラバーに戻る。
【0028】
典型的には、コポリマーは、1:1〜2000:1の、捕捉されるセレンの質量に対する質量コポリマーの比で、適用される。好ましい割合は5:1〜1000:1で、最も好ましい範囲は5:1〜500:1である。
【0029】
一般にポリジチオカルバミン酸化合物は、スクラバー内に導入されてよく、それによっていくつかのルートを通ってスクラバー液内に導入されてよい。下記の事項は、化合物をスクラバー液内に導入するのに利用できるバリエーションのほんの一部としての役割を果たすこととなる。スクラバー液は、湿式排煙スクラバー(「FGS」、湿式排煙脱硫器、すなわち「FGD」としても知られる)において用いられてSO
x排出を捕捉する、炭酸カルシウム(石灰岩)又は酸化カルシウム(石灰)の水性の分散液として定義される。この液はまた、マグネシウムなどの他の添加剤及び低分子量の有機酸を含んでもよく、これらは硫黄の捕捉を向上させる働きをする。このような添加剤の一つの例は、二塩基酸(「DBA」)として知られている低分子量の有機酸の混合物である。DBAは、アジピン酸、コハク酸、及びグルタル酸のブレンドから成る。これらの有機酸のそれぞれはまた、個別に用いることもできる。加えて、湿式スクラバーにおける硫黄の捕捉を向上させるために用いることのできるもう一つの低分子量の有機酸は、ギ酸である。最終的に、スクラバー液はまた、石灰又は石灰岩と硫黄種との間の相互作用の副生成物を含むこととなり、このことは、様々な量の亜硫酸カルシウム又は硫酸カルシウムの存在につながる。スクラバー液には、補給液、戻り液、再生液、未使用液及び直接に排煙中に注入された液があるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明のポリジチオカルバミンの化合物を湿式スクラバーへ添加するもう一つのポイントは、「低固形物」液の戻りを通じたものである。未利用の石灰又は石灰岩から反応副生成物を分離する目的で、液の一部は通常連続してスクラバーから除去される。現在用いられている分離の一つの手段は、遠心分離である。本プロセスにおいて、スクラバー液は「高固形物」ストリーム及び「低固形物」ストリームに分離される。この高固形物ストリームは排水処理に回される。低固形物画分は湿式スクラバーに戻り、「再生」希薄液と見なすことができる。本発明のポリジチオカルバミン酸化合物は、スクラバーに戻るより前に、都合よく再生低固形物ストリームに添加することができる。
【0031】
湿式排煙脱硫器の稼働において見られるもう一つの供給液は、「未使用液」と呼ばれる。未使用液は、排煙にさらされる前の、石灰か石灰岩のどちらか一方の水性の分散液であり、スクラバー液レベル及び湿式FGDの効率を維持しながら、新しい石灰又は石灰岩を添加するのに用いられる。これは、石灰又は石灰岩を水中に分散させることによって調製される。ここで、ポリジチオカルバミン酸化合物は、分散液の水に添加するか、又は直接未使用液に添加することができる。
【0032】
最終的に、いくつかの湿式スクラバー設備は、排煙の相対湿度又はその温度を制御する目的で、スクラバーより前に直接に排煙中に注入された、スクラバー液及び/又は水(新しい又はリサイクルされた)を用いる。余剰の液体は次に、湿式スクラバーに運び込まれる。ここにもまた、本発明のポリジチオカルバミン酸化合物を導入するための2つの可能性のある添加ポイントがある。
【0033】
ポリジチオカルバミン酸化合物は、これらの位置のいずれかにおいて、全体的に又は部分的に(すなわち単一の供給ポイント又は複数の供給ポイント)、添加することができ、その位置としては石灰又は石灰岩スラリーのための補給水又はスクラバー液があるが、これらに限定されない。
【0034】
化学物質2:
A.組成物
本開示は、少なくとも2つのモノマー:アクリル−x及びアルキルアミン、に由来するポリマーを含む組成物を提供する。ここで、前記アクリル−xは、以下の式を有する:
【化3】
式中、X=OR、OH及びその塩、又はNHR
2であり、R
1及びR
2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、Rはアルキル基又はアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、前記ポリマーは改質され、1つ又は複数の金属を含む組成物を1つ又は複数捕集する能力のある官能基を含む。
【0035】
この金属としては、ゼロ価の、一価の、及び多価の金属が含まれ得る。この金属は、有機化合物又は無機化合物によって結合されていてもされていなくてもよい。また、この金属は放射性及び非放射性であり得る。例としては、遷移金属及び重金属があるが、これらに限定されない。具体的な金属としては、銅、ニッケル、亜鉛、鉛、水銀、カドミウム、銀、鉄、マンガン、パラジウム、白金、ストロンチウム、セレン、ヒ素、コバルト及び金が含まれ得るがこれらに限定されない。このポリマーの分子量は変更し得る。例えば、ポリマーの目的とする種/用途は1つの検討事項となり得る。もう一つの要因は、モノマー選択であり得る。分子量は当業者に知られている様々な手段によって計算することができる。例えば、下記の実施例において論じられているように、サイズ排除クロマトグラフィーを利用することができる。
【0036】
分子量に言及するとき、それは未改質のポリマー、言い換えればポリマー主鎖、の分子量に言及するものである。主鎖に付加されている官能基は、計算の要素ではない。それ故に、官能基を備えたポリマーの分子量は、その分子量範囲を大きく上回る可能性がある。
【0037】
一つの実施形態において、ポリマーの分子量は1,000〜16,000である。
【0038】
別の実施形態において、前記ポリマーの分子量は1,500〜8,000である。様々な官能基を金属捕集に利用することができる。以下の用語は当業者によってよく理解されるだろう:ここで前記ポリマーは改質され、1つ又は複数の金属を含む組成物を1つ又は複数捕集する能力のある官能基を含む。より具体的には、このポリマーは改質され、金属を結合することのできる官能基を含む。
【0039】
一つの実施形態において、官能基は化学物質を含む硫化物を含む。
【0040】
別の実施形態において、官能基はジチオカルバメート塩の基である。
【0041】
別の実施形態において、官能基は以下のうち少なくとも1つである:アルキレンリン酸基、アルキレンカルボン酸及びその塩、オキシム基、アミドオキシム基、ジチオカルバミン酸及びその塩、ヒドロキサム酸、並びに窒素酸化物。
【0042】
未改質のポリマー中に含まれる全体のアミンに対する官能基のモル量は、同様に変更することができる。例えば、二硫化炭素の3.0モル当量の、1.0:1.0モル比のアクリル酸/TEPAコポリマー(これは重合後に、反復単位あたり、アミンを4モル当量含む)に対する反応は、改質され75モル%のジチオカルバメート塩の基を含むポリマーをもたらすこととなる。言い換えれば、未改質のポリマー中の全体のアミンの75%が、ジチオカルバメート塩の基に転化した。
【0043】
一つの実施形態において、ポリマーはジチオカルバメート塩の基を5〜100モル%有する。さらなる実施形態において、ポリマーはジチオカルバメート塩の基を25〜90モル%有する。なおさらなる実施形態において、ポリマーはジチオカルバメート塩の基を55〜80モル%有する。
【0044】
モノマー選択は、当業者が作りたいと願う所望のポリマーによって決まるだろう。
【0045】
アルキルアミンの種類は変更してもよい。
【0046】
一つの実施形態において、アルキルアミンは以下のうちの少なくとも1つである:エチレンアミン、ポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)。
【0047】
アクリル−xモノマーの基も同様に変更することができる。
【0048】
別の実施形態において、アクリル−xは以下のうちの少なくとも1つである:メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、プロピルアクリレート及びプロピルメタクリレート。
【0049】
別の実施形態において、アクリル−xは以下のうち少なくと1つである:アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリルアミド、並びにメタクリルアミド。
【0050】
ポリマーを構成するモノマー、特にアクリル−xとアルキルアミンのモル比は、変更することができ、結果として得られる所望のポリマー生成物によって決まる。用いられるモル比は、アルキルアミンのモル数で割ったアクリル−xのモル数として定義される。
【0051】
一つの実施形態において、アクリル−xとアルキルアミンのモル比は、0.85〜1.5である。
【0052】
別の実施形態において、アクリル−xとアルキルアミンのモル比は、1.0〜1.2である。
【0053】
関連したポリマーの分子量だけでなく、アクリル−xとアルキルアミンの様々な組み合わせが、本発明により包含される。
【0054】
一つの実施形態において、アクリル−xはアクリル酸エステルであり、アルキルアミンはPEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAである。さらなる実施形態において、アクリル−xとアルキルアミンのモル比は、0.85〜1.5である。なおさらなる実施形態において、分子量は、範囲:500〜200,000、1,000〜16,000、又は1,500〜8,000を包含する可能性がある。なおさらなる実施形態において、アクリル酸エステルは以下のうち少なくとも1つである可能性がある:メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、プロピルアクリレート及びプロピルメタクリレート。このアクリル酸エステルはアルキルアミンのうち少なくとも1つと結合され、そのアルキルアミンとしてはPEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAがある。なおさらなる実施形態において、結果として生じるポリマーは改質され、以下の範囲のジチオカルバメート塩の基を含む:5〜100モル%、25〜90モル%、55〜80モル%。
【0055】
別の実施形態において、アクリル−xはアクリルアミドであり、アルキルアミンはTEPA又はDETA又はTETA又はEDAである。さらなる実施形態において、アクリル−xとアルキルアミンのモル比は、0.85〜1.5である。なおさらなる実施形態において、分子量は、範囲:500〜200,000、1,000〜16,000、又は1,500〜8,000を包含する可能性がある。なおさらなる実施形態において、アクリルアミドは、アクリルアミドとメタクリルアミドのうち少なくとも1つ又はそれらの組み合わせである可能性がある。このアクリルアミドはアルキルアミンのうち少なくとも1つと結合され、そのアルキルアミンとしては、PEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAがある。なおさらなる実施形態において、結果として生じるポリマーは改質され、以下の範囲のジチオカルバメート塩の基を含む:5〜100モル%、25〜90モル%、又は55〜80モル%。
【0056】
別の実施形態において、アクリル−xはアクリル酸及びその塩であり、アルキルアミンはPEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAである。さらなる実施形態において、アクリル−xとアルキルアミンのモル比は、0.85〜1.5である。なおさらなる実施形態において、分子量は、範囲:500〜200,000、1,000〜16,000、又は1,500〜8,000を包含する可能性がある。なおさらなる実施形態において、アクリル酸はアクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩のうち少なくとも1つ又はそれらの組み合わせである可能性がある。このアクリル酸はアルキルアミンのうち少なくとも1つと結合され、そのアルキルアミンとしては、TEPA又はDETA又はTETA又はEDAがある。なおさらなる実施形態において、結果として生じるポリマーは改質され、以下の範囲のジチオカルバメート塩の基を含む:5〜100モル%、25〜90モル%、又は55〜80モル%。
【0057】
追加のモノマーを、構成モノマーアクリル−x及びアルキルアミンで構成されているポリマー主鎖に組み入れることができる。縮合ポリマー反応スキームを利用して、塩基性ポリマー主鎖を作ることができる。様々な他の合成方法を利用して、ポリマーを、例えば、ジチオカルバメート及び/又は他の非金属捕集官能基で官能化することができる。当業者は過度の実験をすることなくポリマーを官能化することができる。
【0058】
さらに、本発明の組成物は、参照により本明細書の一部となる、米国特許第5,164,095号において開示されているような、他のポリマー、具体的には、500〜100,000の分子量を有し、ジチオカルバメート塩の基を5〜50モル%含む、水溶性エチレンジクロライドアンモニアポリマー、を用いて配合することができる。一つの実施形態において、ポリマーの分子量は1500〜10,000であり、ジチオカルバメート塩の基を15〜50モル%含む。好ましい実施形態において、ポリマーの分子量は1500〜5000であり、ジチオカルバメート塩の基を30〜55モル%含む。また、本発明の組成物は、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、TMT−15(登録商標)(トリメルカプト−S−トリアジンのナトリウム塩又はカルシウム塩;Evonik Industries Corporation 17211 Camberwell Green Lane、Houston、TX77070、USA)、ジメチルジチオカルバメート及びジエチルジチオカルバメートなどの、他の小分子硫化物沈殿剤を用いて配合することができる。
【0059】
B.用量
用いる開示されたポリマーの用量は変更してよい。用量の量の計算は、過度の実験をすることなく行うことができる。
【0060】
プロセス媒体の質及びプロセス媒体処理の程度は、用量の量を選択する際に当業者によって考慮される可能性のある、二つの要因である。ジャーテスト分析は、プロセス水媒体、例えば排水という状況において、効果的な金属除去を実現するために求められる用量の量を決定する根拠として利用されるものの典型的な例である。
【0061】
一つの実施形態において、汚染水から金属を効果的に除去する能力のある本発明の改質ポリマーの量は、好ましくは、金属1モルあたりジチオカルバメートが0.2〜2モルの範囲内である。より好ましくは、用量は、水中に含まれる金属1モルあたり、ジチオカルバメートが1〜2モルである。本発明の一つの実施形態によれば、100mlの18ppm可溶性銅を約1ppm以下にキレートし沈殿させるのに必要な金属除去ポリマーの用量は、0.011gm(11.0mg)のポリマーであった。形成された金属ポリマー錯体は、自己凝集性であり迅速に沈殿する。これらの凝集剤は容易に処理水から分離される。
【0062】
ポリマーを排煙などのガスシステムに適用するという状況において、ポリマーは増加的に投与することができ、そして例えば水銀などの特定の金属の捕捉率を、本技術分野において知られる技術によって計算することができる。
【0063】
C.使用方法
現在の開示はまた、セレンを含む媒体からセレンを除去する方法を提供し、その方法は以下のステップを含む:(a)金属を含む前記媒体を、少なくとも2つのモノマー:アクリル−xとアルキルアミンに由来するポリマーを含む組成物で処理するステップ。ここで前記アクリル−xは以下の式を有する:
【化4】
式中、X=OR、OH及びその塩、又はNHR
2であり、R
1及びR
2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、Rはアルキル基又はアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、そして前記ポリマーは改質され1つ又は複数の金属を含む組成物を1つ又は複数捕集する能力のある官能基を含む。;及び(b)前記処理された金属を収集するステップ。
【0064】
上述の組成物はこの章に組み込まれ、本発明によって包含された、特許請求の範囲に記載の方法論の範囲内で適用することができる。
【0065】
セレンを含む媒体は変更することができ、セレンを含む媒体としては、以下の排水ストリーム(液体炭化水素系ストリーム、排煙ストリーム、フライアッシュ、及び他の粒子状物質)のうち少なくとも1つが含まれ得る。様々な処理ステップは、金属除去を備えることができ、その金属除去には、ろ過ステップ及び/又は空気清浄度制御装置(例えばバグハウス及び電気集塵装置及び他の空気清浄度制御装置など)があるが、これらに限定されない。
【0066】
液相媒体/液相を含む媒体、を含む媒体は、請求項に係る発明の1つの標的である。
【0067】
一つの実施形態において、媒体は、例えば、排水又は発電所若しくは工業環境(発電所、採掘作業、廃棄物焼却、及び/又は製造作業)からの排水などの、水を含むプロセスストリームである。
【0068】
別の実施形態において、媒体は、石油精錬プロセス又は石油化学プロセスにおいてよく見られる液体炭化水素系ストリームである。例としては、石油炭化水素原料(原油、及びナフサ、ガソリン、灯油、ディーゼル、ジェット燃料、燃料油、軽油真空残留物などの原油の留分がある)などの石油炭化水素を含むこれらのプロセスからのストリーム、又はオレフィン系若しくはナフテン系プロセスストリーム、エチレングリコール、芳香族炭化水素、及びそれらの誘導体などがある。
【0069】
別の実施形態において、本発明によって包含される化学物質と共に、追加の化学物質、凝集剤及び/又は凝固剤を利用することができる。金属を含む媒体に適用される化学物質は変更することができ、以下のうち少なくとも1つの添加を含む:カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、及び双性イオン性ポリマー。
【0070】
別の実施形態において、本発明の方法は、500〜100,000の分子量を有する水溶性エチレンジクロライドアンモニアポリマーを錯体を形成する量で用いる、プロセスストリームに対する追加の処理をさらに含み、このポリマーは、ジチオカルバメート塩の基を5〜50モル%含んで、これらの金属、例えば重金属の錯体を形成する。さらなる実施形態において、ポリマーの分子量は1500〜10,000であり、ジチオカルバメート塩の基を15〜50モル%含む。好ましい実施形態において、ポリマーの分子量は1500〜5000であり、ジチオカルバメート塩の基を30〜55モル%含む。
【0071】
別の実施形態において、ポリマー処理及び追加の処理は、1:1の割合で添加される。
【0072】
ガス相媒体/ガス相を含む媒体、を含む媒体は、請求項に係る発明のもう一つの標的である。加えて、液相及び/又はガス相媒体を含むプロセスも同様に本発明により包含される。
【0073】
別の実施形態において、媒体は、発熱システム、例えば排煙ストリームの一部である。
【0074】
別の実施形態において、発熱システムは、以下のうちの少なくとも1つである:燃焼システム;発電所燃焼システム;石炭燃焼システム;廃棄物焼却システム;キルン;採掘作業又はセメント作業用のキルン;及び鉱石処理システム。別の実施形態において、本発明の方法はさらに、酸化剤を発熱システムに適用することを含む。さらなる実施形態において、酸化剤は前記ポリマー処理より前に適用される。
【0075】
なおさらなる実施形態において、プロセスのための多相処理プロトコルは、ガス及び液体、例えば、水銀などのガス中の1つ又は複数の金属、及び液体中の1つ又は複数の金属、を処理することを含む。これは、上述のようなポリマー処理及び追加の処理を含むことができる。
【0076】
なおさらなる実施形態において、酸化剤は以下のうちの少なくとも1つである:熱不安定性分子のハロゲン、臭化カルシウム、又はハロゲン含有化合物。なおさらなる実施形態において、本発明はさらに、酸化剤を排煙に適用することを含み;任意に前記酸化剤は、500℃以上の温度で又は酸化剤が水銀を産生するプロセス中に存在する分子の水銀を酸化することのできる温度で、標的種を酸化し;任意に前記標的種は、元素水銀又はその誘導体であり;そして任意に前記酸化剤は、以下のうちの少なくとも1つである:熱不安定性分子のハロゲン、臭化カルシウム、又はハロゲン含有化合物。水銀酸化剤の方法論は、米国特許第6,808,692号及び第6,878,358号に記載されており、これらは参照により本明細書の一部となる。
【0077】
別の実施形態において、ポリマー処理は、300℃以下の温度、好ましくは250℃以下の温度で起こる。
【0078】
本発明は、本明細書に添付の請求項において特に明記しない限り、本発明を限定することを意図していない、ここに始まる記述及び以下の例により説明される。
【実施例】
【0079】
前述のことは、以下の例を参照することにより、よりよく理解されるだろう。そしてこれらの例は、本発明を実施するための方法を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0080】
本明細書中に記載されている現在好ましい実施形態の様々な変更及び改質は、当業者にとって明らかなものとなるだろうということが理解されるべきである。このような変更及び改質は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そしてその意図する好都合な点を損なうことなく、行うことができる。それ故に、このような変更及び改質が添付の請求項によってカバーされるということが意図されている。
【0081】
化学物質1:例1〜6
例1
スクラバー水のサンプルを、真空フィルターにより処理した。この目的は、水銀を除去することであった。このサンプルを、pH及び用量の2つの変数のある実験計画を用いて、水銀除去について調査した。
【0082】
この結果は、様々なpHで、十分な生成物用量で、処理水において0.5ppb未満の水銀濃度が実現したことを示した。この研究は、この生成物が湿式FGD液からの水銀捕捉を実現したことを証明した。この分析法の検出下限は0.5ppbであった。
【0083】
結果は以下の通りである:
【表1】
aDTCPは、本発明のポリジチオカルバミンの化合物である。
b凝集剤は、Nalco Companyから市販されており、非常に高分子の、30モル%アニオン性ラテックスポリマーである。
【0084】
例2:
2Lの溶液を、6.7mgの亜セレン酸ナトリウム(Na
2SeO
3・5H
2O)、14mLの0.141M Hg(NO
3)
2及び18.4gの塩化カルシウム(CaCl
2・2H
2O)を溶解して調製した。結果として生じる溶液は、0.037mM セレン、1.04μΜ 水銀及び63mM 塩化カルシウム無水物という測定濃度を有した。
【0085】
結果を以下の表に示している。
【表2】
【0086】
ゼオライトは使用済みの商業触媒であった。フライアッシュサンプルは、石炭火力発電所から得られた。フライアッシュサンプルは、93%の灰分と、6%の残存炭素及び1%の残存硫黄から構成されていた。これらの結果は、フライアッシュもゼオライトも、顕著にイオン水銀含量を減少させない、ということを明確に示している。
【0087】
例3:
人工FGDスクラバー液を、12.58gの塩化カルシウム二水和物(CaCl
2・2H
2O)を400mLの脱イオン水に溶解して調製した。結果として生じる溶液は、塩化カルシウム二水和物として214mMであり、溶液中に15,000ppmの塩化物と8560ppmのカルシウムをもたらす。この溶液を、2つの等しい部分に分けた。200mLの溶液に、164μLの0.61mM硝酸水銀溶液を添加し、130μg/Lのイオン水銀を含有する溶液を得た。この溶液を、27.4gの硫酸カルシウム二水和物、すなわち18質量パーセントで処理した。この溶液を混合し、2つの部分に分けた。小さい方の部分は、75g総量であり、5:1の生成物と水銀との質量比で、ポリジチオカルバミン酸化合物で処理した。このポリジチオカルバミン酸化合物生成物は、30%の活性水混和性溶液であった。この2つの部分を、磁気撹拌バーで12時間、別々に撹拌した。その後、この懸濁液をPall Life Sciences GN−6 Metricel 0.45μメンブレンフィルター(P/N 63069)を用いてろ過した。このろ液を水銀について分析した。
【0088】
第2の部分、200gの塩化カルシウム二水和物溶液を82μLの0.61mM硝酸第二水銀溶液で処理し、78.3μgのイオン水銀を含有する溶液を得た。再びこの溶液を27.4gの硫酸カルシウム二水和物で処理し、18質量%を含有するスラリーを得た。前述同様に、このサンプルを2つの溶液に分け、少ない方の部分、75gを、5:1の生成物質量と水銀質量との比で、ポリジチオカルバミン酸化合物生成物で処理した。さらに12時間磁気撹拌バーを用いて混合した後、この分散液をPall Life Sciences GN−6 Metricel 0.45μメンブレンフィルター(P/N 63069)を用いて濾過した。このろ液を水銀について分析した。
【0089】
結果を以下に示している。
【表3】
【0090】
この例から、本発明のポリジチオカルバミン酸化合物が、液相からイオン水銀を除去することは明らかである。上記のサンプルについての石こう固形物を、分解又は水銀の放出を観察する目的で、TGA(熱重量分析)に供した。全てのサーモグラフは、室温と170℃の間での、付着水及び結合水の損失のみを示し、同一であった。この温度を超えても、さらなる分解は観察することができなかった。このことは、いったん錯体が形成されると、それは、通常のFGDスクラバー稼働下では分解しないということを示している。
【0091】
例4:
220gのCaCl
2・2H
2Oを7Lの脱イオン水に溶解して、0.214M塩化カルシウム二水和物を含有する一般的な貯蔵溶液を調製した。これに、74μLの61mM硝酸水銀溶液を添加し、136μg/Lを含有する溶液を得た。この溶液を2つの部分に分けた。第1の部分を、十分な量の硫酸カルシウム二水和物と混合し、18質量%で固形物が分散されたスラリーを得た。第2の部分を、十分な量の硫酸カルシウム二水和物と混合し、21質量%のスラリーを得た。
【0092】
SO
x除去効率を向上させるために、石灰岩又は石灰の利用だけでなく、有機酸が多くの湿式FGDスクラバーにおいて用いられている。大抵の場合、産業界において二塩基酸又はDBAとして知られている副生成物ストリームが、最適な生成物である。DBAは、アジピン酸(別名ヘキサン二酸)、コハク酸(別名ブタン二酸)及びグルタル酸(別名ペンタン二酸)の混合物である。この例のために、等しいモル比のアジピン酸とコハク酸を用いて、「人工」DBAを調製した。アジピン酸は、Mallinckrodt Chemicals、Cat No.MK180159から得ることができる。コハク酸は、J.T.Baker、試薬等級、Cat.No.JT0346−5から得ることができる。この溶液に等しいモル比の酸を混ぜ、332及び100ppmの全体の酸の濃度を生じた。
【0093】
現在の発明のポリジチオカルバミン酸化合物を、生成物と水銀の質量比が4.5:1及び1:1で、それぞれスラリー中で人工DBAの存在下又は非存在下で、添加した。添加の順序は以下に保った:人工DBA、その次に本発明のポリジチオカルバミン酸化合物。ひとたび様々な添加剤がスラリー内に導入されたら、それは追加の15〜20分間、磁気撹拌バーで混合される。その後、スラリーをPall Life Sciences GN−6 Metricel 0.45μ メンブレンフィルター(P/N63069)を用いてろ過する。その次にろ液を分析する。
【0094】
結果を下表に示している:
【表4】
【0095】
DTCPは本発明のポリジチオカルバミン酸化合物である。人工DBA、別名「Syn DBA」の定義については上記を参照のこと。
【0096】
上記の表にある結果は、スクラバー液中の有機酸の存在は、液相中の水銀を錯体形成することに関する、本発明のポリジチオカルバミン酸化合物の性能を妨げないことを明確に示している。この結果はまた、コポリマーがイオン水銀と相互作用し、イオン水銀を液相から除去して1兆分の500部未満にする、ということを裏付ける。
【0097】
例5:
3つの添加剤を、1−cfmのガス流で、ベンチスケール湿式スクラバーにおいて試験した。1つの添加剤、TMT−15は、焼却炉からの水銀排出を制御するために現在用いられている。用いられたポリジチオカルバミン酸化合物、ナトリウム塩は、請求項に係る発明の一実施形態である。
【0098】
ベンチスケールユニットは、SO
2、NO
x、HC1、CO
2、酸素及び窒素、から構成される疑似排煙の使用を可能にする。湿度は、酸素、二酸化炭素、及び窒素の一部を水飽和器にさらすことによって制御する。本検討において用いられた排煙組成物は、15〜25μg/Nm
3のHgCl
2、12%のCO
2、3%のO
2、1000ppmのSO
2、15ppmのHCl、残りの窒素から成っており、NO
xは含まれていなかった。流速は28L/minであった。吸着剤溶液又はスクラバー液は、55℃の温度に維持し、100mMの塩化ナトリウム、及び10mMの硫酸ナトリウム(初期濃度)から成り、pHが5.0であった。亜硫酸塩濃度は、過酸化水素を吸着剤溶液に添加することによって、5mMに制御した。スクラバー液のpHは、NaOHの添加によって維持した。いずれの場合にも、0.5μΜのHgCl
2を0.5mMのHgCl
2の溶液として注入する直前に、そして系が平衡に達した後に、適当量の添加剤をスクラバー液内に導入した。
【0099】
このベンチスケールスクラバーはバブラー型ガス接触器を用いる。ガス接触槽は、液が重力排水を通って反応器槽に戻るように、スクラバー液反応槽の上に位置している。この液は再循環ポンプを通ってスクラバー内に再循環され、一定の液体/ガス割合を維持する。pHはスクラバー内と反応槽内の両方で監視する。反応槽のpHは、水酸化ナトリウム溶液の添加によって維持する。反応槽は磁気撹拌により混合される。フロースルーセル及び分光光度計を用い、M.W.Scoggins、Analytical Chemistry、42(9)、1091(1970)により報告された方法を改良した方法によって、スクラバー液中の亜硫酸塩濃度を監視した。その結果は、標的亜硫酸塩濃度を維持するために、過酸化水素の添加を自動的に制御するのに用いられた。乾燥窒素ガスの一部に水銀拡散セルを通過させることによって、酸化水銀をガスに添加する。この方法で導入された水銀の全体の約5%が元素であった。2つの別々のCVAAS(低温蒸気原子吸着分光法(Cold Vapor Atomic Adsorption Spectroscopy))機器が、丁重に、排煙入口及びスクラバー出口を監視した。水銀再排出を、以下の通り計算した:
平均再排出=[出口の平均元素Hg]−[入口の平均元素Hg]
【0100】
結果を下表に示している:
【表5】
bジエチルジチオカルバメート、ナトリウム塩
【0101】
これらのベンチスケールの結果から、現在の発明のポリジチオカルバミン酸化合物が、湿式FGDからの水銀の再排出を首尾よく制御し、現在の技術よりもずっと効率よく制御する、ということは明らかである。
【0102】
例6:
検討は、低温電気集塵装置(「ESP」)を装備した512MWボイラー及び石灰岩強制酸化(「LSFO」)湿式FGDシステムから構成される排煙湿式スクラバープロセス、から成る商用用地で取り組まれた。このボイラーは、高硫黄の瀝青炭を燃やした。LSFO湿式FGD液のサンプルを、注記された条件下での実証の間に収集し、全体のセレンについて分析した。この結果を、下表及び
図1に示している。
【0103】
例6の結果
【表6】
【0104】
未処理ユニットは、この商用試験の間、同じ燃料を燃やしていた。化学物質1を処理ユニットに適用した。この技術が適用されている間の、実証の異なる期間で、2つのサンプルが取り込まれた。サンプリングの前に、開示された技術を、18時間止めた(すなわち、上に示された条件 添加剤オフ)。その次に化学物質1を再適用し、最終条件、すなわち添加剤再適用、を得た。
【0105】
先の表に見ることができるように、未処理ユニットの全体のセレンは、585〜676μg/Lで変化した。開示された技術の適用は、スクラバー液中のセレンの65%の減少をもたらした。この技術の有効性は、この技術の適用の中断によって全体のセレンの上昇が観察され、それがこの技術の再適用によって再び減少させられた、ということによって、さらに証明される。これらの結果から、化学物質1が湿式FGD液中のセレン濃度を減少させることは明らかである。
【0106】
化学物質2:例7〜11:
例7:
ジチオカルバメート基で次に官能化される、メチルアクリレート/テトラエチレンペンタミンポリマー主鎖
a.メチルアクリレート/テトラエチレンペンタミンポリマー主鎖合成
【0107】
テトラエチレンペンタミン(TEPA)(18.275質量%)を、機械的撹拌器及び凝縮器が取り付けられたガラス反応器内に入れた。窒素でヘッドスペースをパージし撹拌しながら、メチルアクリレート(16.636質量%)を30分間にわたり滴下し、ここで、添加の間及び添加が終了した後1時間、温度を25〜31℃に維持した。次に、2回目のTEPA(18.275質量%)の投入を実施し、結果として生じる反応混合物を130℃に加熱した。ディーン・スターク・トラップ内で凝縮物を収集しながら、この温度を〜3時間保持した。この時点で、このポリマー溶融物を120℃に冷却させ、そしてその次に、希釈の間、温度を90℃より高く保ちながら、脱イオン(DI)水(46.814質量%)でゆっくりと希釈した。その次に、結果として生じる〜50質量%ポリマー溶液を室温に冷却した。ポリマーの重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法及び多糖類標準物質を用いて、7,500と測定された。
【0108】
b.ジチオカルバメートポリマーの調製
第2のステップは、メチルアクリレート/TEPAポリマー(35.327質量%)、DI水(28.262質量%)、及びDow Chemical Company Midland、MI 48674、USAのDowfax 2A1(0.120質量%)を、機械的撹拌器を取り付けられた丸底フラスコに添加することを含んだ。次に、50%NaOH溶液(9.556質量%)を撹拌されている反応混合物に添加した。混合物が40℃に加熱され維持されると、二硫化炭素(17.179質量%)を2時間にわたり滴下した。二硫化炭素の添加中1時間すると、50%NaOH(9.556質量%)をさらに追加で入れた。反応混合物を、追加の2時間、40℃に維持した。最終的に、この反応を室温に冷却し、ろ紙を通してろ過して、〜40質量%のポリマージチオカルバメート生成物を得た。
【0109】
例8:
ジチオカルバメート基で次に官能化される、アクリル酸/テトラエチレンペンタミンポリマー主鎖
【0110】
a.アクリル酸/テトラエチレンペンタミンポリマー主鎖合成
テトラエチレンペンタミン(TEPA)(37.556質量%)と硫酸(0.199質量%)を、機械的撹拌器及び凝縮器が取り付けられたガラス反応器内に入れた。窒素でヘッドスペースをパージし撹拌しながら、アクリル酸(14.304質量%)を30分間にわたり滴下し、ここで、添加の間、酸塩基反応からの発熱を所望の温度に到達させ、温度を130〜140℃に維持した。次に、結果として生じる反応混合物を160℃に加熱した。ディーン・スターク・トラップ内で凝縮物を収集しながら、この温度を4.5時間保持した。この時点で、このポリマー溶融物を120℃に冷却させ、そしてその次に、希釈の間、温度を90℃より高く保ちながら、DI水(47.941質量%)でゆっくりと希釈した。その次に、結果として生じる〜50質量%ポリマー溶液を室温に冷却した。ポリマーの重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法及び多糖類標準物質を用いて、4,700と測定された。
【0111】
b.ジチオカルバメートポリマーの調製
第2のステップは、アクリル酸/TEPAポリマー(31.477質量%)、DI水(36.825質量%)、及びDowfax 2A1(0.118質量%)を、機械的撹拌器を取り付けられた丸底フラスコに添加することを含んだ。次に、50%NaOH溶液(8.393質量%)を撹拌されている反応混合物に添加した。混合物が40℃に加熱され維持されると、二硫化炭素(14.794質量%)を2時間にわたり滴下した。二硫化炭素の添加中1時間すると、50%NaOH(8.393質量%)をさらに追加で入れた。反応混合物を、追加の2時間、40℃に維持した。最終的に、この反応を室温に冷却し、ろ紙を通してろ過して、〜35質量%のポリマージチオカルバメート生成物を得た。
【0112】
例9:
a.アクリルアミド/テトラエチレンペンタミンポリマー主鎖合成
テトラエチレンペンタミン(TEPA)(14.581質量%)を、機械的撹拌器及び凝縮器が取り付けられたガラス反応器内に入れた。窒素でヘッドスペースをパージし撹拌しながら、48.6%アクリルアミド溶液(30.441質量%)を1時間にわたり滴下した。その間に、所望の温度に至り、温度は65〜75℃に維持した。アクリルアミドを投入した後、温度を追加の1時間維持した。次に、TEPA(14.581質量%)の2回目の投入を実施し、ディーン・スターク・トラップを通して蒸留水を収集しながら、結果として生じる反応混合物を160℃に加熱した。ディーン・スターク・トラップ内で凝縮物を収集することを続けながら、そして放出されたアンモニア副生成物を捕捉しながら、この温度を〜4時間保持した。この時点で、ポリマー溶融物を120℃に冷却させ、そしてその次に、希釈の間、温度を90℃より高く保ちながら、DI水(40.397質量%)でゆっくりと希釈した。その次に、結果として生じる〜50質量%ポリマー溶液を室温に冷却した。ポリマーの重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法及び多糖類標準物質を用いて、4500と測定された。
【0113】
b.ジチオカルバメートポリマー調製
第2のステップは、アクリルアミド/TEPAポリマー(34.004質量%)、DI水(36.518質量%)、及びDowfax 2A1(0.122質量%)を、機械的撹拌器を取り付けられた丸底フラスコに添加することを含んだ。次に、50%NaOH溶液(7.763質量%)を撹拌されている反応混合物に添加した。混合物が40℃に加熱され維持されると、二硫化炭素(13.830質量%)を2時間にわたり滴下した。二硫化炭素の添加中1時間すると、50%NaOH(7.763質量%)をさらに追加で入れた。反応混合物を、追加の2時間、40℃に維持した。最終的に、この反応を室温に冷却し、ろ紙を通してろ過して、〜35質量%のポリマージチオカルバメート生成物を得た。
【0114】
例10:
スクラバー水のサンプルを処理し、その次に沈殿させた。上清サンプルを採取し全体の水銀含量を測定し、そしてその次に溶解水銀含量のためにろ過した。目的は、水銀を除去することであった。このサンプルを、2つの異なる石炭火力発電所からの湿式FGD液における化学物質2の用量に対する、水銀除去について調べた。
【0115】
この結果は、十分な生成物用量で、処理水中の0.5ppb未満の水銀濃度が実現されたことを示す。この研究は、このポリマーが湿式FGD液からの水銀捕捉を実現したことを証明した。この分析法の検出下限は0.010ppbであった。化学物質2による水銀捕捉の効率的な/効果的な働きから、稼働中の湿式FGD内での水銀再排出を首尾よく防ぐその能力を推定することができる。
【0116】
【表7】
aDTCPは、本発明のポリジチオカルバミンのポリマーである。
b凝集剤は、Nalco Companyから市販されており、非常に高分子の、65モル%カチオン性ラテックスポリマーである。
【0117】
例11:
スクラバー水のサンプルを、湿式FGD稼働に特有の温度(50℃)で処理し、ORP電極で測定し、そしてその次にろ過した。目的は、化学物質2が液のORPに与える効果及び用量に対するセレン除去を調査することであった。
【0118】
この結果は、化学物質2には湿式FGD液からセレンを除去する能力があることを示している。この場合、セレンの56%の除去が実現された。この研究はまた、化学物質2が首尾よく液のORPを低くすることができ、それ故に湿式FGDスクラバー内の腐食傾向を減少させる、ということを証明した。これらの試験のグラフの結果を
図2に図示している。
【0119】
【表8】
aDTCPは、本発明のポリジチオカルバミンのポリマーである。
【0120】
本明細書中で参照された全ての特許は、この開示の本文中で具体的に組み込まれているかいないかに関わりなく、本明細書中で参照することにより本明細書の一部となる。
【0121】
本開示において、「a」又は「an」という語は、単数及び複数の両方を含むものと解釈されるべきものである。反対に、複数の項目へのいかなる言及も、必要に応じて、単数を含むものとする。
【0122】
前述の内容から、本発明の新概念の真の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の改質及び変更を達成することができる、ということに気が付くだろう。説明された具体的な実施形態又は例に関する限定は、全く意図されておらず、又は推測されるべきでない、ということが理解されるべきである。本開示は、添付の請求項により、請求項の範囲に含まれるものとして、すべてのこのような改質をカバーすると意図されている。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1−16に列記する。
[1]
排煙湿式スクラバープロセスにおいて、腐食を最小化する及び/又はセレンを排煙から除去するための方法であって、該方法が、以下のステップを含む、方法。
燃料を燃やし、それにより該排煙を作り出すステップ;及び
該排煙を、スクラバー液及び以下(i)(ii)のうち少なくとも1つを含む組成物を含む、該排煙湿式スクラバープロセス内に通すステップ
(i)少なくとも2つのモノマー:アクリル−x及びアルキルアミンに由来するポリマーであって、前記アクリル−xが以下の式を有する、ポリマー:
【化5】
(式中、X=OH及びその塩又はNHR2であり、R1及びR2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、前記ポリマーは改質されて少なくとも1つの金属含有組成物を捕集する能力のある官能基を含む);及び
(ii)少なくとも1つのポリチオカルバミンの材料のポリジチオカルバミンの化合物
[2]
該排煙湿式スクラバープロセスが、加えて、遷移金属塩を含む第2の組成物を含む、項目1に記載の方法。
[3]
該排煙湿式スクラバープロセスが、湿式排煙脱硫器プロセスを含む、項目1に記載の方法。
[4]
該官能基がジチオカルバメート塩の基であり、該ポリマーが、前記ジチオカルバメート塩の基を55〜80モル%有する、項目1に記載の方法。
[5]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、ジチオカルバメート塩の基を30〜80モルパーセント含む、項目1に記載の方法。
[6]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、500〜100,000Daの分子量を有する、項目1に記載の方法。
[7]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、該排煙湿式スクラバープロセス内に、該セレン含量について、1:1〜2000:1の質量比で存在する、項目1に記載の方法。
[8]
項目1に記載の方法であって、該アクリル−xがアクリル酸又はその塩であり、該アルキルアミンがPEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAであり、アクリル−xとアルキルアミンのモル比が0.85〜1.5であり;前記ポリマーの分子量が1,500〜8,000であり;該ポリマーが改質されて55モルパーセントより多くのジチオカルバミン酸又はその塩を含む、方法。
[9]
該燃料が、石炭、再生石炭、天然ガス、産業廃棄物、ガス化廃棄物バイオマス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
[10]
該排煙湿式スクラバープロセスが2205合金を含む設備を採用する、項目1に記載の方法。
[11]
(i)少なくとも2つのモノマー:アクリル−x及びアルキルアミン、に由来するポリマーであって、ここで前記アクリル−xが該以下の式:
【化6】
(式中、X=OH及びその塩又はNHR2であり、R1及びR2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、前記ポリマーは改質されて少なくとも1つの金属含有組成物を捕集する能力のある官能基を含む)を有する、ポリマー;及び
(ii)遷移金属塩
を含む物質の組成物。
[12]
該組成物が、加えて、少なくとも1つのポリチオカルバミンの材料のポリジチオカルバミンの化合物を含む、項目11に記載の組成物。
[13]
該官能基がジチオカルバメート塩の基であり、該ポリマーが前記ジチオカルバメート塩の基を30〜55モル%有する、項目11に記載の組成物。
[14]
該アクリル−xがアクリル酸又はその塩であり、該アルキルアミンがPEHA又はTEPA又はDETA又はTETA又はEDAであり、アクリル−xとアルキルアミンのモル比が0.85〜1.5であり;前記ポリマーの分子量が1,500〜8,000であり;該ポリマーが改質されて55モルパーセントより多くのジチオカルバミン酸又はその塩を含む、項目11に記載の組成物。
[15]
該遷移金属塩が鉄塩である、項目11に記載の組成物。
[16]
該遷移金属塩がマンガン塩である、項目11に記載の組成物。
本発明の別の実施態様の一部を以下の項目1−19に列記する。
[1]
排煙湿式スクラバープロセスにおいて、セレンを排煙から除去するための方法であって、該方法が、
排煙を、スクラバー液及び少なくとも1つのポリチオカルバミンの材料のポリジチオカルバミンの化合物を含む、該排煙湿式スクラバープロセス内に通すステップを含む、方法。
[2]
該排煙湿式スクラバープロセスが、少なくとも2つのモノマー:アクリル−x及びアルキルアミンに由来するポリマーであって、前記アクリル−xが以下の式を有する、ポリマー:
【化7】
(式中、X=OH及びその塩又はNHR2であり、R1及びR2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、前記ポリマーは改質されて少なくとも1つの金属含有組成物を捕集する能力のある官能基を含む)
を含む組成物をさらに含む、項目1に記載の方法。
[3]
該ポリジチオカルバミンの化合物が該ポリマーである、項目2に記載の方法。
[4]
該排煙湿式スクラバープロセスが、遷移金属塩を含む第2の組成物をさらに含む、項目1に記載の方法。
[5]
該排煙湿式スクラバープロセスが、湿式排煙脱硫器プロセスを含む、項目1に記載の方法。
[6]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、ジチオカルバメート塩の基を30〜80モルパーセント含む、項目1に記載の方法。
[7]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、500〜100,000Daの分子量を有する、項目1に記載の方法。
[8]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、該排煙湿式スクラバープロセス内に、該セレン含量について、1:1〜2000:1の質量比で存在する、項目1に記載の方法。
[9]
該排煙が、石炭、再生石炭、天然ガス、産業廃棄物、ガス化廃棄物、バイオマス、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される燃料を燃やすことにより生じる、項目1に記載の方法。
[10]
排煙湿式スクラバープロセスにおいて、腐食を最小化するための方法であって、該方法が、
排煙を、少なくとも1つのポリチオカルバミンの材料のポリジチオカルバミンの化合物を含む、該排煙湿式スクラバープロセス内に通すステップを含む、方法。
[11]
該排煙湿式スクラバープロセスが、少なくとも2つのモノマー:アクリル−x及びアルキルアミンに由来するポリマーであって、前記アクリル−xが以下の式を有する、ポリマー:
【化8】
(式中、X=OH及びその塩又はNHR2であり、R1及びR2はH又はアルキル基若しくはアリール基であり、前記ポリマーの分子量は500〜200,000であり、前記ポリマーは改質されて少なくとも1つの金属含有組成物を捕集する能力のある官能基を含む)
をさらに含む、項目10に記載の方法。
[12]
該ポリジチオカルバミンの化合物が該ポリマーである、項目11に記載の方法。
[13]
該排煙湿式スクラバープロセスが、遷移金属塩をさらに含む、項目10に記載の方法。
[14]
該排煙湿式スクラバープロセスが、湿式排煙脱硫器プロセスを含む、項目10に記載の方法。
[15]
該排煙湿式スクラバープロセスが2205合金を含む設備を採用する、項目10に記載の方法。
[16]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、ジチオカルバメート塩の基を30〜80モルパーセント含む、項目10に記載の方法。
[17]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、500〜100,000Daの分子量を有する、項目10に記載の方法。
[18]
該ポリジチオカルバミンの化合物が、該排煙湿式スクラバープロセス内に、該セレン含量について、1:1〜2000:1の質量比で存在する、項目10に記載の方法。
[19]
該排煙が、石炭、再生石炭、天然ガス、産業廃棄物、ガス化廃棄物、バイオマス、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される燃料を燃やすことにより生じる、項目10に記載の方法。