(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
120℃での貯蔵弾性率(G’)が、10Pa〜1,000,000Paの範囲であり、120℃での損失弾性率(G”)が、10Pa〜1,000,000Paの範囲である、請求項1に記載の硬化性固体フィルム。
幅8mm、厚さ1mmの試験片を平行板間に配置し、温度差25℃〜300℃の範囲で、2℃/min、周波数1Hzにて測定した場合に、前記試験片が、120℃で少なくとも1700Pa・sの粘度を有する、請求項1に記載の硬化性固体フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、「超強塩基」触媒を含む特定のオルガノシロキサンブロックコポリマーの硬化性組成物に関する。本発明の硬化性組成物により、超強塩基触媒を含まない類似の組成物を超える硬化率の向上、機械的強度の改善、及び熱安定性の改善が得られる。
【0033】
本明細書に記載される実施形態の硬化性組成物は、
i)
ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜90モルパーセントと、
トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜60モルパーセントと、
シラノール基[≡SiOH]0.5〜35モルパーセントと、を含み、
(式中、
R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、
R
2は独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルであり、
式中、
ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、線状ブロック当たり平均で10〜400個のジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を有する線状ブロックの中に配置され、
トリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非線状ブロックの中に配置され、この非線状ブロックの少なくとも30%は互いに架橋されており、各線状ブロックは少なくとも1つの非線状ブロックに連結されており、
オルガノシロキサンブロックコポリマーは、平均分子量(M
w)が少なくとも20,000g/モルである)、オルガノシロキサンブロックコポリマー、及び
ii)超強塩基触媒、を含む。
【0034】
i)オルガノシロキサンブロックコポリマー
このオルガノシロキサンブロックコポリマーは、
ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜90モルパーセントと、
トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜60モルパーセントと、
シラノール基[≡SiOH]0.5〜35モルパーセントと、を含み、
(式中、
R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、
R
2は独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルであり、
式中、
ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、線状ブロック当たり平均で10〜400個のジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を有する線状ブロックの中に配置され、
トリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非線状ブロックの中に配置され、この非線状ブロックの少なくとも30%は互いに架橋されており、各線状ブロックは少なくとも1つの非線状ブロックに連結されており)、そして
このオルガノシロキサンブロックコポリマーは少なくとも20,000g/モルの分子量を有する。
【0035】
この実施形態のオルガノポリシロキサンは、本明細書に「樹脂−直鎖状」オルガノシロキサンブロックコポリマーとして記述した。オルガノポリシロキサンは、独立して(R
3SiO
1/2)、(R
2SiO
2/2)、(RSiO
3/2)又は(SiO
4/2)シロキシ単位から選択されるシロキシ単位を含むポリマーであり、Rは、任意の有機基であってよい。これらのシロキシ単位は一般にそれぞれM、D、T、及びQ単位と呼ばれる。これらのシロキシ単位は、様々な方法で組み合わされて、環状、線状、又は分枝状構造を生成することができる。結果として得られるポリマー構造の化学的及び物理的性質は、オルガノポリシロキサン中のシロキシ単位の数とタイプによって変化する。例えば、「線状」オルガノポリシロキサンは、典型的には
、D又は(R
2SiO
2/2)シロキシ単位を含んでいてよく、その結果、「重合度」に応じて様々な粘度の流体であるポリジオルガノポリシロキサン又はポリジオルガノポリシロキサン中においてD単位の数によって示されるようなDPとなる。「線状」オルガノポリシロキサンは、典型的には、25℃よりも低いガラス転移温度(T
g)を有する。「樹脂」オルガノポリシロキサンは、シロキシ単位の大半がT又はQシロキシ単位から選択される場合に生じる。Tシロキシ単位が主にオルガノシロキサンを生成するために使用される場合、その結果得られるオルガノシロキサンは、「樹脂」又は「シルセスキオキサン樹脂」と呼ぶことが多い。オルガノポリシロキサン内のT又はQシロキシ単位の量が増えると、典型的には、硬さの増加した及び/又はガラスのような特性を有するポリマーが生じる。このため、「樹脂」オルガノポリシロキサンは、T
g値がさらに高く、例えば、シロキサン樹脂のT
g値は、40℃超、例えば、50℃超、60℃超、70℃超、80℃超、90℃超又は100℃超である。いくつかの実施形態において、シロキサン樹脂のT
gは、約60℃〜約100℃、例えば、約60℃〜約80℃、約50℃〜約100℃、約50℃〜約80℃又は約70℃〜約100℃である。
【0036】
本明細書において使用するとき、「オルガノシロキサンブロックコポリマー」又は「樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー」は、「樹脂」Tシロキシ単位と共に「線状」Dシロキシ単位を含むオルガノシロキサンを指す。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサンコポリマーは、「ランダム」コポリマーとは対照的に「ブロック」コポリマーである。同様に、開示された実施形態の「樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー」は、D及びTシロキシ単位を含むオルガノシロキサンを指し、一部の実施形態では、D単位(すなわち、[R
12SiO
2/2]単位)は
、結合して平均10〜400個のD単位(例えば、約10〜約400個のD単位;約10〜約300個のD単位;約10〜約200個のD単位;約10〜約100個のD単位;約50〜約400個のD単位;約100〜約400個のD単位;約150〜約400個のD単位;約200〜約400個のD単位;約300〜約400個のD単位;約50〜約300個のD単位;約100〜約300個のD単位;約150〜約300個のD単位;約200〜約300個のD単位;約100〜約150個のD単位、約115〜約125個のD単位、約90〜約170個のD単位又は約110〜約140個のD単位)を有するポリマー鎖を形成し、これらは、本明細書において「線状ブロック」と呼ばれる。
【0037】
T単位(すなわち、[R
2SiO
3/2])は
、互いに結合して分枝ポリマー鎖を形成し、これらは、「非線状ブロック」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーの固体形態がもたらされるとき、これらの非線状ブロックのかなりの数は更に凝集して、「非ドメイン」を形成することもある。いくつかの実施形態では、これらのナノドメインは、樹脂リッチ相を形成するように、D単位を有する線状ブロックから形成される相から分離される任意の相を形成する。一部の実施形態では、ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、線状ブロックあたり平均10〜400個(例えば、約10〜約400個のD単位;約10〜約300個のD単位;約10〜約200個のD単位;約10〜約100個のD単位;約50〜約400個のD単位;約100〜約400個のD単位;約150〜約400個のD単位;約200〜約400個のD単位;約300〜約400個のD単位;約50〜約300個のD単位;約100〜約300個のD単位;約150〜約300個のD単位;約200〜約300個のD単位;約100〜約150個のD単位、約115〜約125個のD単位、約90〜約170個のD単位又は約110〜約140個のD単位)のジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を有する線状ブロック内に配置され、トリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]は、分子量少なくとも500g/モルを有する非線状ブロック内に配置され、非線状ブロックの少なくとも30%は互いに架橋される。
【0038】
一部の実施形態では、非線状ブロックの数平均分子量は少なくとも500g/モル例えば、少なくとも1000g/モル、少なくとも2000g/モル、少なくとも3000g/モル又は少なくとも4000g/モルである、又は、分子量が約500g/モル〜4000g/モル、約500g/モル〜3000g/モル、約500g/モル〜2000g/モル、約500g/モル〜1000g/モル、約1000g/モル〜2000g/モル、約1000g/モル〜1500g/モル、約1000g/モル〜1200g/モル、約1000g/モル〜3000g/モル、約1000g/モル〜2500g/モル、約1000g/モル〜4000g/モル、約2000g/モル〜3000g/モル又は約2000g/モル〜4000g/モルである。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも30%の非線状ブロックが互いに架橋し、例えば、少なくとも40%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも50%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも60%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも70%の非線状ブロックが互いに架橋し、又は、少なくとも80%の非線状ブロックが互いに架橋する。他の実施形態では、約30%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約40%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約55%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約60%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、又は約60%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋する。
【0040】
オルガノシロキサンブロックコポリマー(例えば、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜90モルパーセント及びトリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜60モルパーセントを含むこれらのポリマー)は、式[R
12SiO
2/2]a[R
2SiO
3/2]bによって示すことができ、添字a及びbは、コポリマー中のシロキシ単位のモル比を示し、
aは0.4〜0.9、
あるいは0.5〜0.9、
あるいは0.6〜0.9で変化するものとし、
bは0.1〜0.6、
あるいは0.1〜0.5で可変であってよく、
あるいは0.1〜0.4で変化するものとし、
R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、
R
2は独立してC
1〜C
10ヒドロカルビルである。
【0041】
一部の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2]40〜90モルパーセント、例えば、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])65〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])70〜90モルパーセント、又はシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])80〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜50モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜70モルパーセント、又はジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])70〜80モルパーセントを含む。
【0042】
一部の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2]10〜60モルパーセント、例えば、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜20モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])40〜50モルパーセント、又はトリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2]40〜60モルパーセント)を含む。本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、Mシロキシ単位、Qシロキシ単位、他の固有のD又はTシロキシ単位(例えば、R
1又はR
2以外の有機基を有する)など、更なるシロキシ単位を含み得るものと理解するべきであり、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、上述のジシロキシ単位及びトリシロキシ単位のモル分率を含むものとする。換言すれば、添字a及びbにより示されるモル分率の和は、必ずしも合計して1にならなければならないわけではない。a+bの和は、オルガノシロキサンブロックコポリマー内に存在し得る少量の他のシロキシ単位を考慮した場合に1未満になってもよい。あるいは、a+bの和は、0.6超、あるいは0.7超、あるいは0.8超、あるいは0.9超である。いくつかの実施形態では、a+bの和は、約0.6〜約0.9、例えば、約0.6〜約0.8、約0.6〜約0.7、約0.7〜約0.9、約0.7〜約0.8、又は約0.8〜約0.9である。
【0043】
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、実質的に、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])及びトリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])からなり、0.5〜25モルパーセントのシラノール基[≡SiOH](例えば、0.5〜5モルパーセント、0.5〜10モルパーセント、0.5〜15モルパーセント、0.5〜20モルパーセント、5〜10モルパーセント、5〜15モルパーセント、5〜20モルパーセント、5〜25モルパーセント、10〜15モルパーセント、10〜20モルパーセント、10〜25モルパーセント、15〜20モルパーセント、15〜25モルパーセント、又は20〜25モルパーセント)をも含み、式中、R
1及びR
2は、上述のとおりである。それゆえに、一実施形態では、a+bの和(モル分率を使用してコポリマー内のジシロキシ及びトリシロキシ単位の量を表す場合)は、0.95超、あるいは0.98超である。
【0044】
いくつかの実施形態では、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーもシラノール基(≡SiOH)を含む。オルガノシロキサンブロックコポリマー上に存在するシラノール基の量は、0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]、
あるいは2〜32モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]、
あるいは8〜22モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]で変化するものとする。
【0045】
シラノール基は、オルガノシロキサンブロックコポリマー内の任意のシロキシ単位上に存在し得る。上記の量は、オルガノシロキサンブロックコポリマー内に見出されるシラノール基の合計量を表す。いくつかの実施形態では、シラノール基の大部分(例えば、75%超、80%超、90%超;約75%〜約90%、約80%〜約90%、又は約75%〜約85%)がトリシロキシ単位、すなわち、ブロックコポリマーの樹脂成分に残存することになる。理論に束縛されるものではないが、シラノール基がオルガノシロキサンブロックコポリマーの樹脂成分上に存在することにより、高温で更にブロックコポリマーを反応又は硬化させることができる。
【0046】
上記ジシロキシ単位の式中、R
1は独立して、C
1〜C
30ヒドロカルビルである。この炭化水素基は独立して、アルキル、アリール又はアルキルアリール基であり得る。本明細書で使用するとき、ヒドロカルビルとしては、ハロゲン置換ヒドロカルビルが挙げられ、ハロゲンは、塩素、フッ素、臭素、又はこれらの組み合わせであってよい。R
1はC
1〜C
30アルキル基であり得、あるいはR
1はC
1〜C
18アルキル基であり得る。あるいは、R
1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどのC
1〜C
6アルキル基であり得る。あるいは、R
1はメチルであり得る。R
1は、フェニル、ナフチル又はアンスリル基などのアリール基であり得る。あるいは、R
1は、前述のアルキル又はアリール基の任意の組み合わせであり得る。あるいは、R
1は、フェニル、メチル又はこれらの組み合わせである。
【0047】
上記トリシロキシ単位の式中、各R
2は独立して、C
1〜C
20ヒドロカルビルである。本明細書で使用するとき、ヒドロカルビルとしては、ハロゲン置換ヒドロカルビルが挙げられ、ハロゲンは、塩素、フッ素、臭素、又はこれらの組み合わせであってよい。R
2は、フェニル、ナフチル又はアンスリル基などのアリール基であり得る。あるいは、R
2は、メチル、エチル、プロピル又はブチルなどのアルキル基であり得る。あるいは、R
2は、前述のアルキル又はアリール基の任意の組み合わせであり得る。あるいは、R
2は、フェニル又はメチルである。
【0048】
オルガノシロキサンブロックコポリマーを記述するために本明細書で使用するとき、式[R
12SiO
2/2]
a[R
2SiO
3/2]
b及びモル分率で使用される関連式は、コポリマーにおけるジシロキシ[R
12SiO
2/2]単位及びトリシロキシ[R
2SiO
3/2]単位の構造秩序を示すものではない。むしろ、この式は、添字a及びbを介して上記で説明されるモル分率によりコポリマー内の2つの単位の相対量を説明するための便宜的表記法をもたらすことを目的としている。本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマー内の様々なシロキシ単位のモル分率並びにシラノール含有量は、実施例において詳細に説明するように、
29Si NMR技術により容易に決定することができる。
【0049】
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量(M
w)が少なくとも20,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも40,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも50,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも60,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも70,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも80,000g/モルである。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量(M
w)は、約20,000g/モル〜約250,000g/モル、又は約100,000g/モル〜約250,000g/モル、又は重量平均分子量約40,000g/モル〜約100,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約100,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約80,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約70,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約60,000g/モルである。平均分子量は、実施例において記載されるものなどのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術を用いて容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの数平均分子量(M
n)は、約15,000〜約50,000g/モル、約15,000〜約30,000g/モル、約20,000〜約30,000g/モル、又は約20,000〜約25,000g/モルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、ジシロキシ単位及びトリシロキシ単位の構造秩序は、更に以下のとおり、記述されていてもよい。ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、線状ブロック当たり、平均10〜400個のジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を有する線状ブロック内に配置され、トリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]は、少なくとも分子量500g/モルを有する非線状ブロック内に配置される。各線状ブロックは、ブロックコポリマーの中の少なくとも1個の非線状ブロックに連結されている。更に、非線状ブロックの少なくとも30%が互いに架橋されており、
あるいは、非線状ブロックの少なくとも40%は、互いに架橋されており、
あるいは、非線状ブロックの少なくとも50%は、互いに架橋されている。
【0051】
他の実施形態では、約30%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約40%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約60%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、又は約60%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋する。
【0052】
非線状ブロックの架橋は、様々な化学的機序及び/又は部分を介して達成され得る。例えば、ブロックコポリマー内の非線状ブロックの架橋は、コポリマーの非線状ブロック内に存在する残留シラノール基の縮合から生じ得る。ブロックコポリマー内の非線状ブロックの架橋はまた、「遊離樹脂」成分と非線状ブロックとの間で生じ得る。「遊離樹脂」成分は、ブロックコポリマーの調製中に過剰量のオルガノシロキサン樹脂を使用する結果として、ブロックコポリマー組成物中に存在し得る。遊離樹脂成分は、ブロック以外の部分上及び遊離樹脂上に存在する残留シラノール基の縮合により非線状ブロックと架橋し得る。遊離樹脂は、下記のように、架橋剤として添加された低分子量化合物と反応することにより、架橋をもたらし得る。存在する場合、遊離樹脂は、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量に対して約10%〜約20%、例えば、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量に対して約15%〜約20%の量で存在し得る。
【0053】
あるいは、特定の化合物は、具体的に非樹脂ブロックを架橋させるために、ブロックコポリマーを調製する間、添加され得る。これらの架橋化合物は、オルガノシラン(式R
5qSiX
4−q)を含み得る。オルガノシランは、ブロックコポリマー形成中に添加され(以下に記載の工程II)、式中、R
5は、C
1〜C
8ヒドロカルビル又はC
1〜C
8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Xは、加水分解性基であり;qは0、1、又は2である。R
5はC
1〜C
8ヒドロカルビル又はC
1〜C
8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、あるいはR
5はC
1〜C
8アルキル基又はフェニル基であり、あるいはR
5はメチル、エチル又はメチルとエチルの組み合わせである。Xは任意の加水分解基であり、あるいはXは、オキシモ原子、アセトキシ原子、ハロゲン原子、水酸基(OH)又はアルコキシ基であり得る。
【0054】
一実施形態では、オルガノシラン(式R
5qSiX
4−q)は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン又はこれらの両者の組み合わせなど、アルキルトリアセトキシシランである。市販の代表的なアルキルトリアセトキシシランとしては、ETS−900(Dow Corning Corp.(Midland,MI))が挙げられる。
【0055】
架橋剤として有用な、他の好適な非限定的なオルガノシランとしては、メチル−トリス(メチルエチルケトキシム)シラン(MTO)、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラオキシムシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジオキシムシラン、メチルトリス(メチルメチルケトキシム)シランが挙げられる。
【0056】
ブロックコポリマー内での架橋は、主にシロキサン結合(≡Si−O−Si≡)となり、これは、上述のように、シラノール基の縮合の結果から得られる。
【0057】
ブロックコポリマー内の架橋の量は、GPC技術などでブロックコポリマーの平均分子量を決定することにより、推定され得る。典型的には、ブロックコポリマーを架橋すると、その平均分子量は増加する。したがって、ブロックコポリマーの平均分子量、線状シロキシ成分の選択(すなわち、その重合度により示されるものとしての鎖長)及び非線状ブロックの分子量(ブロックコポリマーを調製するために使用されるオルガノシロキサン樹脂の選択により主に制御される)が与えられると、架橋の範囲を推定することができる。
【0058】
本明細書で記載した実施形態の硬化性組成物は、さらに有機溶剤を含んでよい。有機溶媒は典型的には、ベンゼン、トルエン又はキシレンなどの芳香族系溶剤である。
【0059】
本明細書に記載の実施形態の硬化性組成物は、更にオルガノシロキサン樹脂(例えば、ブロックコポリマーの一部ではない遊離樹脂)を含んでもよい。これらの組成物中に存在するオルガノシロキサン樹脂は、オルガノシロキサンブロックコポリマーを調製するために使用されるオルガノシロキサン樹脂である。このため、オルガノシロキサン樹脂は、その式中にシロキシ単位[R
2SiO
3/2]の少なくとも60モルパーセント(例えば、少なくともシロキシ単位[R
2SiO
3/2]70モルパーセント又はシロキシ単位[R
2SiO
3/2]少なくとも80モルパーセント、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]少なくとも90モルパーセント、又はシロキシ単位[R
2SiO
3/2]100モルパーセント、又はシロキシ単位[R
2SiO
3/2]60〜100モルパーセント、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]60〜90モルパーセント、又は、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]70〜80モルパーセント)を含むことができ、R
2は、それぞれ独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルである。あるいは、オルガノシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン樹脂又はフェニルシルセスキオキサン樹脂である。
【0060】
本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、本分野に周知の方法で調製でき、これらの方法には公開国際特許出願第2012/040302号及び国際特許出願第2012/040305号に記述の方法を含み、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
ii)超強塩基触媒
本発明の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマー組成物は、超強塩基触媒も含む。用語「超強塩基」及び「超強塩基触媒」は、本明細書で同義的に使用される。
【0062】
用語「超強塩基」は、本明細書で使用され、リチウムジイソプロピルアミドなどの非常に塩基性の高い化合物を指す。また、用語「超強塩基」は、2つ(以上)の塩基を混合することによって得られる塩基を包含し、特有の新規特性を有する新規の基本種となる。用語「超強塩基」は、必ずしも他よりも熱力学的に及び/又は動力学的に強力な塩基を意味するものではない。その代り、いくつかの実施形態では、いくつかの異なる塩基の特性を組み合わせることによって、塩基性試薬が生成されることを意味する。また、用語「超強塩基」は、1,8−ビス−(ジメチルアミノ)−ナフタリンに対してより高い絶対プロトン親和力(APA=245.3kcal/モル)及び固有の気相塩基性(GB=239kcal/モル)を有する任意の種を包含する。
【0063】
超強塩基の非限定例としては、有機性超強塩基、有機金属超強塩基及び無機超強塩基が挙げられる。
【0064】
有機超強塩基としては、窒素含有化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、窒素含有化合物も、低求核性を有し、比較的穏やかな使用条件を示す。窒素含有化合物の非制限例としては、ホスファゼン、アミジン、グアニジン、多環ポリアミンが挙げられる。また、有機超強塩基には、反応金属が、酸素(非安定性アルコキシド)又は窒素(リチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド)など、ヘテロ原子上の水素として交換されている化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、超強塩基触媒は、アミジン化合物である。
【0065】
いくつかの実施形態では、用語「超強塩基」は、少なくとも2つの窒素原子及び水中で計測するとき、pK
bが約0.5〜約11である有機超強塩基を指す。例えば、pK
bは、水中で計測するとき、約0.5〜約10、約1〜約5、約6〜約11、約3〜約5、約0.5〜約3又は約2〜約5である。いくつかの実施形態では、pK
aに関して、超強塩基のpK
aは、水中で計測させるとき、約3〜約13.5である。例えば、pK
aは、水中で計測させるとき、約5〜約10、約5〜約10、約8〜約13.5、約6〜約8、約10〜約12、又は約9〜約12である。例えば、DABCOとして周知の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのpKaは、2.97及び8.82(2つの窒素を含有するため、)であり、また、DBUとして周知の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンもpKaは約12である。例えば、http://evans.harvard.edu/pdf/evans_pka_table.pdfを参照のこと。
【0066】
有機金属超強塩基としては、有機リチウム、及び有機マグネシウム(グリニャール試薬)化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、有機金属超強塩基は、非求核性にさせるのに必要な範囲まで妨げられる。
【0067】
また、超強塩基には、有機、有機金属及び/又は無機超強塩基の混合物が挙げられる。こうした混合超強塩基の非限定例は、Schlosser base(又はLochmann−Schlosser base)であり、n−ブチルリチウムとカリウムtert−ブトキシドとの組み合わせである。n−ブチルリチウムとカリウムtert−ブトキシドとを組み合わせることにより、いずれかの試薬を単独で使用する場合に比べて、さらに反応性の高い混合凝集が形成され、tert−ブチルカリウムと比べて、明らかに異なる性質を有する。
【0068】
無機超強塩基には、小さい高電荷陰イオンを含む塩様化合物が挙げられる。無機超強塩基の非制限例としては、窒化リチウム並びに水素化カリウム及び水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物が挙げられる。こうした種は強いカチオンーアニオン相互作用によりすべての溶媒において不溶性であるが、これらの材料の表面は、非常に反応性が高く、スラリーを使用できる。
【0069】
本発明のある実施形態では、超強塩基触媒は、上記の又は当分野で既知である任意の有機超強塩基などの有機超強塩基である。
【0070】
更なる実施形態では、超強塩基触媒は、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(CAS番号6674−22−2)、
1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)(CAS番号5807−14−7)、
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(CAS番号280−57−9)、
1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)(CAS番号80−70−6)、
1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)(CAS番号3001−72−7)、
7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)(CAS番号84030−20−6)、
又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
これらの各構造は以下のとおりである:
【0072】
【表1】
R’は、それぞれ同一であるか又は異なり、また、水素又はC
1〜C
5アルキルであり、R”は、水素またはC
1〜C
5アルキルである。本明細書で使用するとき、用語「C
1〜C
5アルキル」は、広く、直鎖又は分鎖飽和炭化水素遊離基を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの直鎖アルキル基、並びに、イソプロピル、tert−ブチル、イソ−アミル、ネオペンチルなどの分鎖アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、炭化水素基はメチルである。
【0073】
本発明の硬化性組成物中の超強塩基触媒の量を変更してもよく、制限はない。典型的に、添加量は触媒的有効量であり、選択した超強塩基、並びに線状樹脂コポリマー組成物中の残留シラノール基の濃度、特に、樹脂成分上の残留シラノール基の量、特に、組成物中の「遊離樹脂」成分上のシラノール量によって異なり得る。超強塩基触媒量は、典型的に、硬化性組成物中の百万分の一(ppm)で測定される。特に、触媒濃度はコポリマー固体に対して計算される。硬化性組成物に添加される超強塩基触媒の量は、硬化性組成物中に存在する樹脂−直鎖状ブロックコポリマー含有量(重量に対して)を基準にして、0.1〜1,000ppm、あるいは1〜500ppm、あるいは10〜100ppmの範囲であり得る。簡便な測定及び本組成物への添加のために、超強塩基触媒は、硬化性組成物に添加する前に有機溶媒に希釈され得る。典型的に、超強塩基は、硬化性組成物中に使用されたものと同じ有機溶媒中に希釈される。
【0074】
いくつかの実施形態では、超強塩基は、最も広い意味で、シラノール縮合促進剤と考えることができ、また、縮合触媒として作用することもできる。いくつかの実施形態では、シラノール縮合促進剤は、実質的には相分離された樹脂リッチ相の中に存在し、その相中でシラノール縮合を促進させてもよい。これによって、その相中での反応性シラノール基のモルパーセントが低下する。理論に束縛されるものではないが、超強塩基は、相分離された樹脂リッチ相の中に存在している樹脂の酸性SiOH基と非常に強く相互作用すると考えられている。いくつかの実施形態では、シラノール縮合促進剤が、例えば、オルガノシロキサンブロックコポリマーリッチ相においてよりも多く、その相(例えば、溶解性)と混合し得るとき、シラノール縮合促進剤は、相分離された樹脂リッチ相の中に存在する可能性が高くなり、シラノール縮合促進剤が相分離された樹脂リッチ相とあまり混合しないとき、相分離された樹脂リッチ相に存在する可能性は少ない。いくつかの実施形態では、相分離された樹脂リッチ相での反応性シラノール基のモルパーセントは、例えば安定剤の非存在下では、相分離された樹脂リッチ相中に存在する反応性シラノール基のモルパーセントに対して約25%、例えば、約35%、約45%、約55%、約65%、約75%、約85%又は約95%低下する。いくつかの実施形態では、相分離された樹脂リッチ相での反応性シラノール基のモルパーセントは、例えば安定剤の非存在下では、相分離された樹脂リッチ相中に存在する反応性シラノール基のモルパーセントに対して、約25%〜約95%、例えば、約25%〜約55%、約25%〜約75%、約35%〜約75%、約55%〜約95%、約55%〜約85%低下する。
【0075】
本開示は更に、
a)上述のように、超強塩基と組み合わせた上記のオルガノシロキサンブロックコポリマー、と
b)有機溶媒と、を含む、硬化性組成物を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、有機溶剤はベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤である。
【0077】
一実施形態では、硬化性組成物は、更にオルガノシロキサン樹脂(例えば、ブロックコポリマーの一部ではない遊離樹脂)を含んでもよい。これらの組成物中に存在するオルガノシロキサン樹脂は、いくつかの実施形態において、オルガノシロキサンブロックコーポリマーを調製するために使用されるものと同じオルガノシロキサン樹脂である。このため、オルガノシロキサン樹脂は、その式中にシロキシ単位[R
2SiO
3/2]を少なくとも60モルパーセント(例えば、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]を少なくとも70モルパーセント又はシロキシ単位[R
2SiO
3/2]を少なくとも80モルパーセント、又はシロキシ単位[R
2SiO
3/2]を60〜70モルパーセント、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]を60〜80モルパーセント、又は、シロキシ単位[R
2SiO
3/2]を70〜80モルパーセント)含むことができ、R
2は、それぞれ独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルである。あるいは、オルガノシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン樹脂又はフェニルシルセスキオキサン樹脂である。
【0078】
本発明の硬化性組成物中のオルガノシロキサンブロックコポリマー、有機溶媒及び任意のオルガノシロキサン樹脂の量は、様々であり得る。本発明の硬化性組成物は、
上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーの40重量%〜80重量%(例えば、40重量%〜70重量%、40重量%〜60重量%、40重量%〜50重量%);
有機溶媒の10〜80重量%(例えば、10〜70重量%、10〜60重量%、10〜50重量%、10〜40重量%、10〜30重量%、10〜20重量%、20〜80重量%、30〜80重量%、40〜80重量%、50〜80重量%、60〜80重量%、又は70〜80重量%、及び
オルガノシロキサン樹脂の5〜40重量%(例えば、5〜30重量%、5〜20重量%、5〜10重量%、10〜40重量%、10〜30重量%、10〜20重量%、20〜40重量%又は30〜40重量%)を含み得る。
【0079】
これらの成分の重量%の和が100%を超えないものとする。一実施形態では、硬化性組成物は、上記のようなオルガノシロキサンブロックコポリマーと、有機溶媒と、オルガノシロキサン樹脂と、から本質的になる。この実施形態では、これらの成分の重量%は合計して100%、又はほぼ100%である。
【0080】
更に別の実施形態では、硬化性組成物は、硬化触媒を含有する。いくつかの実施形態では、超強塩基触媒に加えて、硬化触媒が使用される。硬化触媒は、オルガノシロキサンの縮合硬化に作用する、様々なスズ又はチタン触媒などの当該技術分野において既知の任意の触媒から選択され得る。縮合触媒は、典型的にはヒドロキシ基に結合したケイ素(=シラノール)の縮合を促進してSi−O−Si連結を生成するために使用される任意の縮合触媒であり得る。例としては、限定されるものではないが、アミン、並びに鉛、スズ、亜鉛及び鉄の錯体が挙げられる。
【0081】
オルガノシロキサンブロックコポリマー及びオルガノシロキサンブロックコポリマーを含む硬化性組成物は、更に以下に記述の方法によって調製することができる。これらの調製の代表例はまた、下記の実施例の項において詳細に説明される。
【0082】
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する固体組成物は、上記のような硬化性オルガノシロキサンブロックコポリマー組成物から溶媒を除去することにより調製され得る。溶媒は、任意の既知の処理技術により除去され得る。一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーを含有する硬化性組成物のフィルムが生成され、そのフィルムから溶媒を蒸発させることができる。フィルムを高温及び/又は減圧にかけることにより、溶媒除去及び後続の固体硬化性組成物の生成を促進させ得る。あるいは、硬化性組成物を押出成形機に通して、溶媒を除去し、リボン又はペレットの形状の固体組成物を生成してもよい。剥離フィルムに対するコーティング作業もまた、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロール、ロッド又はグラビアコーティングにおけるように、使用され得る。また、固体フィルムを調製するにあたりロールツーロールコーティング作業も使用され得る。コーティング作業では、コンベアオーブン又は他の溶液の加熱及び排気手段を使用して、溶媒を除去し、最終的な固体フィルムを得ることができる。
【0083】
理論に束縛されるものではないが、ブロックコポリマーの固体組成物が形成されるとき、上記のオルガノシロキサンブロックコポリマー中のジシロキシ単位及びトリシロキシ単位の構造秩序により、コポリマーにある固有の物質的性質の特徴がもたらされ得ることが考えられる。例えば、コポリマー中のジシロキシ単位及びトリシロキシ単位の構造秩序により、高可視光透過率(例えば、波長350nm超)が可能な固体コーティングがもたらされ得る。構造順序はまた、流動し、加熱時に硬化し、室温にて安定性を保持するオルガノシロキサンブロックコポリマーを可能にし得る。これらはまた、積層技術を使用して加工され得る。これらの特性は、様々な電子物品の耐候性及び耐久性を改善させ、一方で、低コストかつ容易な手順を提供るためのコーティングを生成するのに有用である。
【0084】
本開示は更に、前述のオルガノシロキサンブロックコポリマーの固体形状及びこのオルガノシロキサンブロックコポリマーを含む上記硬化性組成物から誘導される固体組成物に関する。したがって、本開示は、
ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜90モルパーセントと、
トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜60モルパーセントと、
0.5〜25モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]と、を含むオルガノシロキサンブロックコーポリマーを提供し、
式中、
R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、
R
2は独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルであり、
ここで、
ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、線状ブロック当たり平均で10〜400個のジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を有する線状ブロックの中に配置され、
トリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非線状ブロックの中に配置され、この非線状ブロックの少なくとも30%は互いに架橋されており、ナノドメイン内に主にまとまって凝集しており、各線状ブロックは少なくとも1つの非線状ブロックに連結されており、
オルガノシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量を有し、25℃で固体である。
【0085】
いくつかの実施形態においては、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2]を40〜90モルパーセント、例えば、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を50〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を60〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を65〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を70〜90モルパーセント、又は、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を80〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を40〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を40〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を40〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を40〜50モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を50〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を50〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を50〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を60〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を60〜70モルパーセント、又は、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])を70〜80モルパーセント含む。
【0086】
一部の実施形態では、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2]10〜60モルパーセント、例えば、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜20モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])40〜50モルパーセント、又はトリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])40〜60モルパーセントを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマーは、シラノール基[≡SiOH]0.5〜25モルパーセント(例えば、0.5〜5モルパーセント、0.5〜10モルパーセント、0.5〜15モルパーセント、0.5〜20モルパーセント、5〜10モルパーセント、5〜15モルパーセント、5〜20モルパーセント、5〜25モルパーセント、10〜15モルパーセント、10〜20モルパーセント、10〜25モルパーセント、15〜20モルパーセント、15〜25モルパーセント、又は20〜25モルパーセント)を含む。
【0088】
いくつかの実施形態においては、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマー中に含まれるジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]は、平均10〜400個のジシロキシ単位、例えば、約10〜約400個のジシロキシ単位、約10〜約300個のジシロキシ単位、約10〜約200個のジシロキシ単位、約10〜約100個のジシロキシ単位、約50〜約400個のジシロキシ単位、約100〜約400個のジシロキシ単位、約150〜約400個のジシロキシ単位、約200〜約400個のジシロキシ単位、約300〜約400個のジシロキシ単位、約50〜約300個のジシロキシ単位、約100〜約300個のジシロキシ単位、約150〜約300個のジシロキシ単位、約200〜約300個のジシロキシ単位、約100〜約150個のジシロキシ単位、約115〜約125個のジシロキシ単位、約90〜約170個のジシロキシ単位又は約110〜約140個のジシロキシ単位を有する線状ブロック内に配置される。
【0089】
一部の実施形態では、固体形態及び固体組成物中に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマー内の非線状ブロックの数平均分子量が少なくとも500g/モルである、例えば、少なくとも1000g/モル、少なくとも2000g/モル、少なくとも3000g/モル又は少なくとも4000g/モルである、又は、分子量が約500g/モル〜約4000g/モル、約500g/モル〜約3000g/モル、約500g/モル〜約2000g/モル、約500g/モル〜約1000g/モル、約1000g/モル〜約2000g/モル、約1000g/モル〜約1500g/モル、約1000g/モル〜約1200g/モル、約1000g/モル〜約3000g/モル、約1000g/モル〜約2500g/モル、約1000g/モル〜約4000g/モル、約2000g/モル〜約3000g/モル又は約2000g/モル〜約4000g/モルである。
【0090】
いくつかの実施形態では、固体形態及び固体組成物中に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマー内の少なくとも30%の非線状ブロックが互いに架橋し、例えば、少なくとも40%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも50%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも60%の非線状ブロックが互いに架橋し、少なくとも70%の非線状ブロックが互いに架橋し、又は、少なくとも80%の非線状ブロックが互いに架橋する。他の実施形態では、約30%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約30%〜約40%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約40%〜約50%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約55%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋し、約50%〜約60%の非線状ブロックが互いに架橋し、約60%〜約80%の非線状ブロックが互いに架橋し、又は約60%〜約70%の非線状ブロックが互いに架橋する。
【0091】
いくつかの実施形態においては、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量(M
w)が少なくとも20,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも40,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも50,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも60,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも70,000g/モル、又は重量平均分子量が少なくとも80,000g/モルである。いくつかの実施形態においては、固体形態及び固体組成物に含まれるオルガノシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量(M
w)は、約20,000g/モル〜約250,000g/モル、又は約100,000g/モル〜約250,000g/モル、又は重量平均分子量約40,000g/モル〜約100,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約100,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約80,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約70,000g/モル、又は重量平均分子量約50,000g/モル〜約60,000g/モルである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の実施形態のオルガノシロキサンブロックコポリマーの数平均分子量(M
n)は、約15,000〜約50,000g/モル、約15,000〜約30,000g/モル、約20,000〜約30,000g/モル、又は約20,000〜約25,000g/モルである。
【0092】
いくつかの実施形態では、前述のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、例えば、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの組み合わせ)中のブロックコポリマー溶液のフィルムを鋳造し、溶媒を蒸発させることによって、固体形態で単離される。これらの条件下において、前述のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、固体を約50重量%〜約80重量%、例えば、約60重量%〜約80重量%、約70重量%〜約80重量%又は約75重量%〜約80重量%含む有機溶媒中の溶液として提供することができる。いくつかの実施形態では、溶媒はトルエンである。いくつかの実施形態では、こうした溶液は、粘度が25℃で約0.0015m
2/s〜約0.004m
2/s(約1500cSt〜約4000cSt)、例えば、25℃で約0.0015m
2/s〜約0.003m
2/s(約1500cSt〜約3000cSt)、約0.002m
2/s〜約0.004m
2/s(約2000cSt〜約4000cSt)又は約0.002m
2/s〜約0.003m
2/s(約2000cSt〜約3000cSt)となる。
【0093】
固体の乾燥又は生成時に、ブロックコポリマーの非線状ブロックは、更に一緒に凝集して、「ナノドメイン」を形成する。本明細書で使用するとき、「主に凝集する」は、オルガノシロキサンブロックコポリマーの非線状ブロックの大半が、「ナノドメイン」として本明細書に記載の固体組成物の特定の領域において見出されることを意味する。本明細書で使用するとき、「ナノドメイン」は、固体ブロックコポリマー組成物内で相分離しており、サイズが1〜100ナノメートルである少なくとも1つの寸法を有する、固体ブロックコポリマー組成物内の相領域を指す。ナノドメインの形状は様々であり得るが、但し、ナノドメインの少なくとも1つの寸法は1〜100ナノメートルのサイズである。したがって、ナノドメインは、規則的又は不規則的な形状であり得る。ナノドメインは、球状、管状、場合によっては層状であり得る。
【0094】
更なる実施形態では、上記のような固体オルガノシロキサンブロックコポリマーは、第一相と不相溶性第二相とを含有し、第一相は主に上記のようなジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]を含有し、第二相は上記のようなトリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]を含有し、非線状ブロックは、十分凝集して、第一相と不相溶性であるナノドメインとなる。
【0095】
固体組成物がオルガノシロキサンブロックコポリマーの硬化性組成物から形成され、上述のとおり、更にオルガノシロキサン樹脂を含むとき、オルガノシロキサン樹脂も主にナノドメイン内に凝集される。
【0096】
本開示の固体ブロックコポリマー内のジシロキシ及びトリシロキシ単位の構造順序、並びに、ナノドメインの特徴は、透過型電子顕微鏡(TEM)法、原子間力顕微鏡法(AFM)、中性子線小角散乱法、X線小角散乱法及び走査型電子顕微鏡法などの特定の分析技術を用いて明示的に決定され得る。
【0097】
あるいは、ブロックコポリマー内のジシロキシ及びトリシロキシ単位の構造順序、並びに、ナノドメインの生成は、本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーから生じるコーティングの特定の物理的特性を特徴付けることにより、示され得る。例えば、本発明のオルガノシロキサンコポリマーは、95%を超える可視光透過率を有するコーティングをもたらし得る。当業者は、可視光がこのような媒質を通過することができ、かつ150ナノメートルを超えるサイズを有する粒子(又は本明細書で使用されるようなドメイン)により回折されないでいることができる場合にのみ、このような光学的透明度が(2つの相の屈折率が一致する以外に)可能であることを理解している。粒径又はドメインが更に小さくなるにつれて、光学的透明度は更に改善され得る。したがって、本発明のオルガノシロキサンコポリマーから誘導されたコーティングは、可視光透過率が少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「可視光」は、波長350nmを超える光を含む。
【0098】
本発明の樹脂−直鎖状オルガノポリシロキサンブロックコポリマーの利点は、数回加工できる点であり、これは、加工温度(T
processing)がオルガノシロキサンブロックコポリマーの最終的な硬化に必要な温度(T
cure)未満(すなわちT
processing<T
cure)であるためである。しかしながら、T
processingがT
cureを上回るとき、オルガノシロキサンコポリマーが硬化し、高温安定性を得られる。このため、本発明の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーは、疎水性、高温安定性、及び耐湿性/耐紫外線性など、典型的にシリコーンに伴う利点を有し、「再加工可能」である大きな利点がもたらされる。
【0099】
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物は、「溶融加工可能」と考えられ得る。この実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマー溶液のフィルムから生成されたコーティングなどの固体組成物は、「溶融」時に高温にて流体挙動を呈する。オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物の「溶融加工可能」特性は、固体組成物が液体挙動を呈する際の固体組成物の「溶融流動温度」を測定することにより、モニターされ得る。溶融流動温度は、市販の器具を用いて、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)及び損失係数(tan delta)を温度保存関数として測定することによって、明確に決定され得る。例えば、市販のレオメーター(TA Instruments製、強制空気乾燥器付き2KSTD標準屈曲式ピボットスプリング変換器を備えたARES−RDA)を用いて、温度の関数として貯蔵弾性率(G’)損失弾性率(G”)、及び損失係数を測定することができる試験片(典型的に、幅8mm、厚さ1mm)を平行板と平行板との間に置き、2℃/minで(周波数1Hz)温度差を25℃〜300℃の範囲として、微小歪み振動レオロジーを用いて測定することができる。流動開始は、G’降下(「流動」と標識されている)に入る変曲温度として計算され得、120℃での粘度が溶融加工性についての尺度として報告され、硬化開始はG’上昇(「硬化」と標識されている)に入る開始温度として計算される。典型的に、固体組成物の流動も、オルガノシロキサンブロックコポリマー中の非線状セグメント(すなわち、樹脂成分)のガラス転移温度と関連づける。
【0100】
いくつかの実施形態では、損失係数が1を超える値から1に到達する時間は、150℃で約3〜約60分、例えば、150℃で約3〜約5分、150℃で約10〜約15分、150℃で約10〜約12分、150℃で約8〜約10分又は150℃で約30分〜約60分である。別の実施形態では、損失係数=1は、150℃で約3〜約60秒、例えば、150℃で約3〜約30秒、150℃で約10〜約45秒、150℃で約5〜約50秒、150℃で約10〜約30秒又は150℃で約30秒〜約60秒である。更に他の実施形態において、損失係数=1は、120℃で約5〜約1200秒、例えば、120℃で約20〜約60秒、120℃で約20〜約600秒、120℃で約60〜約1200秒、120℃で約5〜約100秒、120℃で約10〜約60秒又は120℃で約30秒〜約60秒である。
【0101】
更なる実施形態では、固体組成物は、25℃〜200℃、あるいは25℃〜160℃、あるいは50℃〜160℃の範囲の溶融流動温度を有するものとして、特徴付けられ得る。
【0102】
溶融加工性の利点により、最初のコーティング又は固体が装置上で形成された後、T
cure未満の温度で、装置構造周辺でのオルガノシロキサンブロックコポリマーの固定組成物の再流が可能になると考えられる。この機能は、カプセル化される様々な電子デバイスに対して非常に有益である。
【0103】
一実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物は、「硬化可能」であると考えられ得る。この実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマー溶液のフィルムから生成されたコーティングなどの固体組成物は、ブロックコポリマーを更に硬化することにより、更なる物理的特性変化を起こし得る。上述のように、本発明のオルガノシロキサンブロックコポリマーは、特定の量のシラノール基を含有する。こうしたシラノール基がブロックコポリマー上に存在することにより、反応性、すなわち硬化機構が更に得られると考えられる。硬化時に、固体組成物の物理的特性は、下記の特定の実施形態において説明されるように、更に変更され得る。
【0104】
あるいは、オルガノシロキサンブロックコポリマーの固体組成物の「溶融加工性」及び/又は硬化は、様々な温度下でのレオロジー測定値により決定され得る。
【0105】
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む固体組成物は、25℃での貯蔵弾性率(G’)が0.01MPa〜500MPaの範囲及び損失弾性率(G”)が0.001MPa〜250MPaの範囲、あるいは25℃での貯蔵弾性率(G’)が0.1MPa〜250MPaの範囲、及び損失弾性率(G”)が0.01MPa〜125MPaの範囲、あるいは25℃での貯蔵弾性率(G’)が0.1MPa〜200MPaの範囲、損失弾性率(G”)が0.01MPa〜100MPaの範囲であってよい。
【0106】
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む固体組成物は、120℃での貯蔵弾性率(G’)が10Pa〜500,000Paの範囲及び損失弾性率(G”)が10Pa〜500,000Paの範囲、あるいは120℃での貯蔵弾性率(G’)が20Pa〜250,000Paの範囲及び損失弾性率(G”)が20Pa〜250,000Paの範囲、あるいは、120℃での貯蔵弾性率(G’)が30Pa〜200,000Paの範囲及び損失弾性率(G”)が30Pa〜200,000Paの範囲であってよい。
【0107】
オルガノシロキサンブロックコポリマーを含む固体組成物は、200℃での貯蔵弾性率(G’)が10Pa〜100,000Paの範囲、損失弾性率(G”)、5Pa〜80,000Paの範囲、あるいは、200℃での貯蔵弾性率(G’)が20Pa〜75,000Paの範囲、損失弾性率(G”)が10Pa〜65,000Paの範囲、あるいは200℃での貯蔵弾性率(G’)が30Pa〜50,000Paの範囲、損失弾性率(G”)が15Pa〜40,000Paの範囲であってもよい。
【0108】
一実施形態では、固体組成物は、各レオロジーグラフでのG”/G’の「クロスオーバー」の発生によって測定されるように、溶融流動の発生を決定することによって特性評価してもよい。この値は、組成物中の超強塩基濃度に伴って、有意に変化することはないことが明らかになった。例えば、140dp PhMeポリマーと結合させた45重量% T
Phコポリマーから始まり(実施例2を参照)、組成物中のDBU濃度は、0、17、50、100、250及び500ppmと連続して上昇し、G”/G’クロスオーバー温度が63、87、78、91、91、86℃となった。特定の理論に束縛されるものではないが、このクロスオーバー温度がブロックコポリマー組成物中のPh−T樹脂リッチ相のガラス転移に相当すると考えられている。実施例のガラス転移の重要性をまとめたデータを表3に示す。このデータにより、80℃で硬化反応が発生することはほとんどないことが明らかである。任意の理論によって制限されるものではないが、これは超強塩基触媒の自己カプセル化相として機能するブロックコポリマーの樹脂相部分に起因する可能性があると考えられる。樹脂相は、移動相(溶融流動中)となり、触媒は必要な流動性を有し、縮合硬化となる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本実施形態の固体硬化性組成物は、G’/G”クロスオーバー温度を測定することによっても特徴付けることができる。この「クロスオーバー」温度から、樹脂−直鎖状コポリマーの縮合硬化の発生がわかる。本発明者らは、G’/G”クロスオーバー温度は、超強塩基含有量(特にDBU濃度)によって変化することを明らかにした。例えば、140dp PhMeポリマーと結合させた45重量%のPh−Tコポリマー(実施例2)については、DBU濃度は、連続して0ppm、17ppm、50ppm、100ppm、250ppm及び500ppmと上昇し、その結果得られるG”/G’クロスオーバー温度は、183℃、130℃、138℃、106℃、100℃、98℃であった。
図1のオーバーレイに示すとおり、クロスオーバー温度は、約100℃で水平になる。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、また、樹脂リッチ相の流動性の低下に関し、シラノール基は、樹脂上のみに存在し、かつ、この温度は、およそ100℃で樹脂相のT
gに非常に近いと考えている。これにより、大幅な流動性の低下となる。したがって、120℃での超強塩基触媒を含む硬化性組成物の粘度は、超強塩基触媒を含まない場合の粘度よりも高くてもよい。この点は、表2に示す代表例によって示される。したがって、特定の実施形態においては、硬化性組成物の粘度は、120℃で少なくとも1700Pa・s、あるいは、120℃で少なくとも2000Pa・s、あるいは、120℃で少なくとも5000Pa・s、あるいは、120℃で10,000Pa・s、あるいは、120℃で少なくとも20,000Pa・s又は120℃で少なくとも30,000Pa・sである。他の実施形態では、硬化性組成物の粘度は、120℃で約1500Pa・s〜120℃で約50,000Pa・sであり、例えば、120℃で約1700Pa・s〜120℃で約3000Pa・s、120℃で約2500Pa・s〜120℃で約5000Pa・s、120℃で約1500Pa・s〜120℃で約2000Pa・s、120℃で約1600Pa・s〜120℃で約1800Pa・s、120℃で約10,000Pa・s〜120℃で約40,000Pa・s、120℃で約20,000Pa・s〜120℃で約40,000Pa・s又は120℃で約25,000Pa・s〜120℃で約35,000Pa・sである。
【0110】
本発明の樹脂−直鎖状ブロックコポリマー組成物に超強塩基触媒を添加することによって、典型的に120℃〜250℃の範囲の温度から、触媒なく、60℃〜150℃の範囲まで硬化温度を低下させることができる。一実施形態では、本明細書に記載の実施形態の硬化性組成物の硬化温度は、超強塩基触媒を使用しない比較可能な組成物の硬化温度の10%、あるいは20%、又は50%未満である。他の実施形態では、本明細書に記載の実施形態の硬化性組成物の硬化温度は、超強塩基触媒を使用しない比較可能な組成物の硬化温度の約10%〜約50%未満、例えば、約20%〜約50%未満、約10%〜約20%未満、約25%〜約50%未満又は約15〜約30%未満である。
【0111】
固体組成物は、引張強度及び破断伸度(%)などの特定の物理的特性により更に特徴付けられ得る。上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーからもたらされる本発明の固体組成物は、1.0MPaを超える、あるいは1.5MPaを超える、あるいは2MPaを超える初期引張強度を有し得る。いくつかの実施形態では、固体組成物の初期引張強度は、1.0MPa〜約10MPa、例えば、約1.5MPa〜約10MPa、約2MPa〜約10MPa、約5MPa〜約10MPa又は約7MPa〜約10MPaであり得る。上述のオルガノシロキサンブロックコポリマーからもたらされる本発明の固体組成物は、40%を超える、あるいは50%を超える、あるいは75%を超える初期破断(又は破裂)伸度(%)を有し得る。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約20%〜約90%、例えば、約25%〜約50%、約20%〜約60%、約40%〜約60%、約40%〜約50%、又は約75%〜約90%の破断(又は破裂)伸度(%)を有し得る。本明細書で使用するとき、引張強度及び初期破断伸度はASTM D412により測定される。
【0112】
本開示は更に、硬化性組成物を調製するための方法を提供する。
I)
a)式
R
1q(E)
(3−q)SiO(R
12SiO
2/2)
nSi(E)
(3−q)R
1qを有する線状オルガノシロキサン
(式中、各R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、
nは10〜400であり、qは0、1又は2であり、
Eは、少なくとも1個の炭素原子を含有する加水分解性基である)と、
b)少なくとも60モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位をその式中に含むオルガノシロキサン樹脂と、
(式中、R
2は、それぞれ独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルであり)を、
c)有機溶媒中で反応させて、
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを生成する工程であって、
ここで、工程Iで使用されるa)及びb)の量を選択し、ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]40〜90モルパーセント及びトリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]10〜60モルパーセントを有する樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらし、
ここで、工程Iで添加される線状オルガノシロキサンの少なくとも95重量%が樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの中に組み込まれる、工程と、
II)工程I)の樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを反応させて、
樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの平均分子量(M
w)を少なくとも50%増加させるために、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を十分に架橋させる工程と、
III)工程II)からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに超強塩基触媒を添加する工程と、
IV)場合により、有機溶媒を除去する工程と、を含む方法により、調製され得る。
【0113】
線状オルガノシロキサン
本発明の方法の工程Iにおける成分a)は、式R
1q(E)
(3−q)SiO(R
12SiO
2/2)
nSi(E)
(3−q)R
1qを有する線状オルガノシロキサンであり、式中、各R
1は独立してC
1〜C
30ヒドロカルビルであり、添字「n」は線状オルガノシロキサンの重合度(dp)と考えることができ、10〜400で変化するものとし、添字「q」は0、1又は2であるものとし、Eは、少なくとも1個の炭素原子を含有する加水分解性基である。成分a)は式R
1q(E)
(3−q)SiO(R
12SiO
2/2)
nSi(E)
(3−q)R
1qを有する線状オルガノシロキサンと記載されるが、当業者は、T(R
1SiO
3/2)シロキシ単位などの少量の代替的シロキシ単位が線状オルガノシロキサンの中に組み込まれ得、それでも成分a)として使用され得ることを認識する。このように、オルガノシロキサンは、D(R
12SiO
2/2)シロキシ単位の大部分を有することによって、「主に」線状であると考えられ得る。更に、成分a)として使用される線状オルガノシロキサンは、複数の線状オルガノシロキサンの組み合わせであり得る。更に一層、成分a)として使用される線状オルガノシロキサンは、シラノール基を含み得る。いくつかの実施形態では、成分a)として使用される線状オルガノシロキサンは、シラノール基を約0.5〜約5モルパーセント、例えば、約1モルパーセント〜約3モルパーセント、約1モルパーセント〜約2モルパーセント又は約1モルパーセント〜約1.5モルパーセント含む。
【0114】
上記線状オルガノシロキサンの式中、R
1は独立して、C
1〜C
30ヒドロカルビルである。この炭化水素基は独立して、アルキル、アリール又はアルキルアリール基であり得る。R
1はC
1〜C
30アルキル基であり得、あるいはR
1はC
1〜C
18アルキル基であり得る。あるいは、R
1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどのC
1〜C
6アルキル基であり得る。あるいは、R
1はメチルであり得る。R
1は、フェニル、ナフチル又はアンスリル基などのアリール基であり得る。あるいは、R
1は、前述のアルキル基またはアリール基の任意の組み合わせであってよい。あるいは、R
1は、フェニル、メチル又はこれらの組み合わせである。
【0115】
Eは、少なくとも1つの炭素原子を含む任意の加水分解性基から選択され得る。いくつかの実施形態では、Eは、オキシモ(oximo)、エポキシ、カルボキシ、アミノ、アミド基又はこれらの組み合わせから選択される。あるいは、Eは、式R
1C(=O)O−、R
12C=N−O−、又はR
4C=N−O−を有してよく、R
1は上記に定義されたとおりであり、R
4はヒドロカルビルである。一実施形態では、EはH
3CC(=O)O−(アセトキシ)であり、qは1である。一実施形態では、Eは(CH
3)(CH
3CH
2)C=N−O−(メチルエチルケトキシ)であり、qは1である。
【0116】
一実施形態では、線状オルガノシロキサンは、式
(CH
3)
q(E)
(3−q)SiO[(CH
3)
2SiO
2/2)]
nSi(E)
(3−q)(CH
3)
qを有し、式中、E、n及びqは上記で定義した通りである。
【0117】
一実施形態では、線状オルガノシロキサンは、式
(CH
3)
q(E)
(3−q)SiO[(CH
3)(C
6H
5)SiO
2/2)]
nSi(E)
(3−q)(CH
3)
qを有し、式中、E、n及びqは上記で定義した通りである。
【0118】
成分a)として好適な線状オルガノシロキサンを調製するための方法は、既知である。いくつかの実施形態では、シラノール末端ポリジオルガノシロキサンは、アルキルトリアセトキシシラン又はジアルキルケトオキシムなどの「末端封鎖」化合物と反応させる。末端封鎖反応の化学量は、典型的には、ポリジオルガノシロキサン上のすべてのシラノール基と反応させるのに十分な量の末端封鎖化合物が添加されるように、調整される。典型的には、ポリジオルガノシロキサン上のシラノールのモル当たり1モルの末端封鎖化合物が使用される。あるいは、1〜10%といったわずかにモル過剰の末端封鎖化合物が使用されてもよい。反応は典型的には、シラノールポリジオルガノシロキサンの縮合反応を最小化する無水条件下で行われる。典型的には、シラノール末端ポリジオルガノシロキサン及び末端封鎖化合物を、無水条件下で有機溶媒中に溶解させ、室温又は高温(溶媒の沸点まで)にて反応させる。
【0119】
オルガノシロキサン樹脂
本方法中の成分b)は、少なくとも60モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位をその式中に含むオルガノシロキサン樹脂であり、式中、R
2は、それぞれ独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルである。オルガノシロキサン樹脂は、任意の量及び他のM、D及びQシロキシ単位の組み合わせを含んでもよく、オルガノシロキサン樹脂は、少なくとも70モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位を含み、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも80モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位を含み、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも90モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位を含み、あるいはオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも95モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位を含むものとする。いくつかの実施形態では、オルガノシロキサン樹脂は、[R
2SiO
3/2]シロキシ単位約70〜約100モルパーセント、例えば、[R
2SiO
3/2]シロキシ単位約70〜約95モルパーセント、[R
2SiO
3/2]シロキシ単位約80〜約95モルパーセント又は[R
2SiO
3/2]シロキシ単位約90〜約95モルパーセントを含む。成分b)として有用なオルガノシロキサン樹脂としては、「シルセスキオキサン」として知られるものが挙げられる。
【0120】
各R
2は独立してC
1〜C
20ヒドロカルビルである。R
2は、フェニル、ナフチル又はアンスリル基などのアリール基であり得る。あるいは、R
2は、メチル、エチル、プロピル又はブチルなどのアルキル基であり得る。あるいは、R
2は、前述のアルキル又はアリール基の任意の組み合わせであり得る。あるいは、R
2は、フェニル又はメチルである。
【0121】
オルガノシロキサン樹脂の重量平均分子量(M
w)は、非限定であるが、いくつかの実施形態では、1000〜10,000、あるいは1500〜5000g/モルの範囲である。
【0122】
当業者は、多量の[R
2SiO
3/2]シロキシ単位などを含むオルガノシロキサン樹脂が、本質的に特定濃度のSi−OZを有し、Zは水素(すなわち、シラノール)、アルキル基(OZがアルコキシ基であるように)であってよく、あるいは、OZは、上述のとおり、任意の加水分解性基である「E」であってもよいことを認識している。オルガノシロキサン樹脂上に存在するすべてのシロキシ基のモル百分率としてのSi−OZ含有量は、
29Si NMRにより容易に決定され得る。オルガノシロキサン樹脂上に存在するOZ基の濃度は、樹脂の調製モード及び後続処理に応じ様々である。いくつかの実施形態では、本発明の方法での使用に好適なオルガノシロキサン樹脂のシラノール(Si−OH)分には、シラノール含有量を少なくとも5モルパーセント、あるいは少なくとも10モルパーセント、あるいは25モルパーセント、あるいは40モルパーセント、あるいは50モルパーセント有するものとする。他の実施形態では、シラノール含有量は、約5モルパーセント〜約60モルパーセント,例えば、約10モルパーセント〜約60モルパーセント、約25モルパーセント〜約60モルパーセント、約40モルパーセント〜約60モルパーセント、約25モルパーセント〜約40モルパーセント又は約25モルパーセント〜約50モルパーセントである。
【0123】
少なくとも60モルパーセントの[R
2SiO
3/2]シロキシ単位を含むオルガノシロキサン樹脂及びこれらを調製する方法は、当分野では周知である。これらは典型的には、ケイ素原子上に3個の、ハロゲン又はアルコキシ基などの加水分解性基を有するオルガノシランを有機溶媒中で加水分解することにより、調製される。シルセスキオキサン樹脂を調製するための代表的な例は、米国特許第5,075,103号にもみられる。更に、多くのオルガノシロキサン樹脂は市販されており、固体(フレーク又は粉末)か又は有機溶媒溶液のいずれかとして販売されている。成分b)として有用な、好適な非限定的な市販のオルガノシロキサン樹脂としては、Dow Corning(登録商標)217フレーク樹脂、233フレーク、220フレーク、249フレーク、255フレーク、Z−6018フレーク(Dow Corning Corporation(Midland,MI))が挙げられる。
【0124】
当業者は更に、このような多量の[R
2SiO
3/2]シロキシ単位及びシラノール含有量を含有するオルガノシロキサン樹脂がまた、特に高湿度条件下で、水分子を保持し得ることを認識している。したがって、工程Iにおける反応に先立ってオルガノシロキサン樹脂を「乾燥」させることにより、樹脂上に存在する過剰な水を除去することが、多くの場合、有益である。これは、オルガノシロキサン樹脂を有機溶媒中に溶解させ、加熱して還流させ、分離技術(例えば、Dean Starkトラップ又は同等の方法)により水を除去することによって達成され得る。
【0125】
工程Iの反応に使用される成分a)及び成分b)の量を選択し、ジシロキシ単位[R
12SiO
2/2]40〜90モルパーセント及びトリシロキシ単位[R
2SiO
3/2]10〜60モルパーセントを有する樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらす。成分a)及びb)に存在するジシロキシ単位及びトリシロキシ単位のモルパーセントは、
29Si NMR技術を用いて容易に測定できる。その後、開始モルパーセントにより、工程Iで使用される成分a)及びb)の質量を決定する。
【0126】
一部の実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2]40〜90モルパーセント、例えば、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])65〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])70〜90モルパーセント、又はジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])80〜90モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])40〜50モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜70モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])50〜60モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜80モルパーセント、ジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])60〜70モルパーセント、又はジシロキシ単位(式[R
12SiO
2/2])70〜80モルパーセントを含む。
【0127】
一部の実施形態では、オルガノシロキサンブロックコポリマーは、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2]10〜60モルパーセント、例えば、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜20モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])10〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜30モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜35モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])20〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜40モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜50モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])30〜60モルパーセント、トリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])40〜50モルパーセント、又はトリシロキシ単位(式[R
2SiO
3/2])40〜60モルパーセントを含む。
【0128】
また、選択された成分a)及びb)の量では、確実に、添加される線状オルガノシロキサンの量に対して、オルガノシロキサン樹脂のシラノール基のモルが過剰にあるものとするべきである。したがって、工程I)において添加したすべての線状オルガノシロキサンと反応させることができるように、十分な量のオルガノシロキサン樹脂を添加すべきである。同様に、モル過剰のオルガノシロキサン樹脂が使用する。使用する量は、線状オルガノシロキサンのモル当たりに使用されるオルガノシロキサン樹脂のモル数を計算することにより決定され得る。
【0129】
上述のように、工程Iにおいて影響がある反応は、線状オルガノシロキサンの加水分解性基とオルガノシロキサン樹脂上のシラノール基との間の縮合反応である。本発明の方法の工程IIにおいて更に反応させるためには、生成した樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの樹脂成分上に十分な量のシラノール基が残存している必要がある。いくつかの実施形態では、少なくとも10モルパーセント、又は少なくとも20モルパーセント、又は少なくとも30モルパーセントのシラノールは、この方法の工程Iで生成されるように、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーのトリシロキシ単位上に残存するべきである。いくつかの実施形態では、約10モルパーセント〜約60モルパーセント、例えば、約20モルパーセント〜約60モルパーセント、又は約30モルパーセント〜約60モルパーセントがこの方法の工程Iで生成されるように、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーのトリシロキシ単位上に残存するべきである。
【0130】
前述の(a)線状オルガノシロキサンと(b)オルガノシロキサン樹脂とを反応させる反応条件に制限はない。いくつかの実施形態では、反応条件はa)線状オルガノシランとb)オルガノシロキサン樹脂との縮合型反応に影響を及ぼす反応条件が選択される。様々な非限定的な実施形態及び反応条件が下記の実施例において説明される。一部の実施形態では、(a)線状オルガノシロキサンと(b)オルガノシロキサン樹脂は、室温にて反応する。他の実施形態では、室温を超える温度で(a)と(b)とを反応させ、その温度範囲は、約50、75、100℃以下であり、又は150℃以下である。あるいは、溶媒の還流で(a)と(b)とを共に反応させることができる。更に他の実施形態において、5℃、10℃又は更には10℃超ほど室温に足らない温度で(a)と(b)とを反応させる。更に別の実施形態では、1分、5分、10分、30分、60分、120分若しくは180分又は更に長い時間、(a)と(b)とを反応させる。典型的には、(a)と(b)は、窒素又は希ガスなどの不活性雰囲気下で反応する。あるいは、(a)と(b)は、一部の水蒸気及び/又は酸素を含む雰囲気下で反応し得る。更に、(a)と(b)は任意のサイズの容器において、ミキサー、ボルテックスミキサー、スターラー、加熱器など、任意の設備を用いて反応させ得る。他の実施形態では、極性又は非極性であってよい1つ又は複数の有機溶媒において(a)と(b)とを反応させる。典型的には、トルエン、キシレン、ベンゼン及びこれらに類するものなどの芳香族系溶剤が利用される。有機溶媒中に溶解させるオルガノシロキサンの量は様々であるが、典型的にはその量は、線状オルガノシロキサンの鎖延長又はオルガノシロキサン樹脂の早すぎる縮合を最小化するように、選択されるべきである。
【0131】
成分a)及びb)を添加する順番は、変更してもよい。いくつかの実施形態において、線状オルガノシロキサンは、有機溶剤に溶解されたオルガノシロキサン樹脂溶液に添加される。この添加の順序は、線状オルガノシロキサン上の加水分解性基とオルガノシロキサン樹脂上のシラノール基との縮合を向上させ、一方で、線状オルガノシロキサンの鎖延長又はオルガノシロキサン樹脂の早すぎる縮合を最小化すると考えられている。いくつかの実施形態において、オルガノシロキサン樹脂は、有機溶剤に溶解された線状オルガノシロキサン溶液に添加される。
【0132】
工程Iにおける反応の進行及び樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの生成は、GPC、IR又は
29Si NMRなどの様々な分析技術によりモニターされ得る。典型的に、工程Iでの反応は、工程Iで添加した線状オルガノシロキサンの少なくとも95重量%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%)が、線状オルガノシロキサンブロックコポリマーに取り込まれるまで、持続させることができる。
【0133】
本発明の方法の第二工程は、工程I)から得た樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に反応させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を架橋させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量を少なくとも50%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも70%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも100%増加させる工程を含む。いくつかの実施形態では、この方法の第二工程には、工程I)から得た樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシ単位を架橋させて、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量を約50%〜約100%、例えば、約60%〜約100%、約70%〜約100%、約80%〜約100%又は約90%〜約100%増加させるために、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーを更に反応させる工程を含み、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量の100%増加は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーの分子量の2倍量に相当する。
【0134】
工程IIの反応により、工程Iで形成される樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーのトリシロキシブロックが架橋され、これによりブロックコポリマーの平均分子量が増加することになると考えられる。本発明者らはまた、トリシロキシブロックの架橋により、トリシロキシブロックが凝集し濃縮されたブロックコポリマーが生成され、これが最終的にブロックコポリマーの固体組成物内に「ナノドメイン」を生成する助けとなり得ると考えている。換言すれば、このトリシロキシブロックの凝集による濃縮は、ブロックコポリマーがフィルム又は硬化済みコーティングなどの固体形態で単離される場合には、相分離し得る。ブロックコポリマー内のトリシロキシブロックの凝集による濃縮及びその後のブロックコポリマーを含有する固体組成物内での「ナノドメイン」の生成は、これらの組成物の光学的透明度並びにこれらの物質に関連する他の物理的特性の向上をもたらし得る。
【0135】
工程IIにおける架橋反応は、様々な化学的機序及び/又は部分を介して達成され得る。例えば、ブロックコポリマー内の非線状ブロックの架橋は、コポリマーの非線状ブロック内に存在する残留シラノール基の縮合から生じ得る。ブロックコポリマー内の非線状ブロックの架橋はまた、「遊離樹脂」成分と非線状ブロックとの間で生じ得る。「遊離樹脂」成分は、ブロックコポリマーの調製工程Iにおいて過剰量のオルガノシロキサン樹脂を使用する結果として、ブロックコポリマー組成物中に存在し得る。遊離樹脂成分は、非線状ブロック上及び遊離樹脂上に存在する残留シラノール基の縮合により非線状ブロックと架橋し得る。遊離樹脂は、下記のように、架橋剤として添加された低分子量化合物と反応することにより、架橋をもたらし得る。
【0136】
本発明の方法の工程IIは、工程Iの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンの生成と同時に生じ、又は、工程IIの反応に作用するように条件を修正した分離反応を含む。工程IIの反応は、工程Iと同じ条件下で生じ得る。この状況において、工程IIの反応は、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーが生成されるにつれて、進行する。あるいは、工程I)に使用される反応条件は、更に工程IIの反応にも拡大適用される。あるいは、反応条件は変更することができ、又は、工程IIの反応に作用させるために追加成分を添加することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、工程IIの反応条件は、開始線状オルガノシロキサンに使用される加水分解性基(E)の選択によって決定され得る。線状オルガノシロキサン内の(E)がオキシム基である場合、工程IIの反応が工程Iと同じ反応条件下で生じる可能性がある。すなわち、線状−樹脂オルガノシロキサンコポリマーが工程Iにおいて生成されると、それは継続して、樹脂成分上に存在するシラノール基の縮合により反応して、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの分子量を更に増加させる。理論に束縛されるものではないが、(E)がオキシモ基である場合、工程Iでの反応から得られた加水分解オキシモ基(例えば、メチルエチルケトオキシム)は、工程IIの反応のための縮合触媒として機能し得ることが考えられる。同様に、工程IIの反応は、工程Iと同じ条件下で同時に進行し得る。換言すれば、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーが工程Iにおいて生成されるにつれ、これは更に同じ条件下で反応して、コポリマーの樹脂成分上に存在するシラノール基の縮合反応によりその分子量を更に増加させ得る。しかしながら、線状オルガノシロキサン上の(E)がアセトキシ基である場合、生じる加水分解性基(酢酸)は工程II)の反応を十分に触媒しない。したがって、この状況では、工程IIの反応は、下記の実施形態において説明されるように、樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーの樹脂成分の縮合に作用する更なる成分により向上され得る。
【0138】
本発明の方法の一実施形態では、オルガノシラン(式R
5qSiX
4−q)は工程II)中で添加され、式中、R
5は、C
1〜C
8ヒドロカルビル又はC
1〜C
8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、qは0、1、又は2である。R
5はC
1〜C
8ヒドロカルビル又はC
1〜C
8ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、あるいはR
5はC
1〜C
8アルキル基又はフェニル基であり、あるいはR
5はメチル、エチル又はメチルとエチルの組み合わせである。Xは任意の加水分解性基であり、あるいはXは上記に定義されたようなE、ハロゲン原子、ヒドロキシル(OH)又はアルコキシ基であり得る。一実施形態では、オルガノシランは、アルキルトリアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン又はこれらの組み合わせである。市販の代表的なアルキルトリアセトキシシランとしては、ETS−900(Dow Corning Corp.(Midland,MI))が挙げられる。本実施形態において有用な他の好適な非限定オルガノシランには、メチル−トリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラオキシモシラン、ジメチルジアセトキシラン、ジメチルジオキシムシラン、メチルトリス(メチルメチルケトオキシム)シランが挙げられる。
【0139】
工程II)中に添加する際の式R
5qSiX
4−qを有するオルガノシランの量は様々であるが、方法中で使用されるオルガノシロキサン樹脂の量に基づくべきである。使用されるシランの量は、オルガノシロキサン樹脂上のSiモル当たりオルガノシラン2〜15モルパーセントとするモルの化学量がもたらされるべきである。更に、工程II)中に添加される式R
5qSiX
4−qを有するオルガノシランの量は、オルガノシロキサンブロックコポリマー上のすべてのシラノール基を消費しない化学量が確保されるように制御する。一実施形態では、工程IIにおいて添加されるオルガノシランの量は、0.5〜35モルパーセントのシラノール基[≡SiOH]を含有するオルガノシロキサンブロックコポリマーをもたらすように選択される。
【0140】
この方法の工程IIIは、工程II)超強塩基触媒からの樹脂−直鎖状オルガノシロキサンブロックコポリマーに添加することを含む。上記のとおり、工程IIIに使用される超強塩基触媒及び量は同一である。
【0141】
本発明の方法の工程IVは任意であり、工程I及びIIの反応において使用される有機溶媒を除去する工程を含む。有機溶媒は任意の既知の技術により除去され得るが、典型的には、大気条件下又は減圧条件下のいずれかで高温にて樹脂−直鎖状オルガノシロキサンコポリマーを加熱する工程を含む。いくつかの実施形態では、すべての溶媒が除去されるものではない。この実施形態では、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の溶媒が除去され、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも90%の溶媒が除去される。いくつかの実施形態では、20%未満の溶媒が除去され、例えば、15%未満、10%未満、5%未満又は0%未満の溶媒が除去される。他の実施形態では、約20%〜約100%の溶媒が除去され、例えば、約30%〜約90%、約20%〜約80%、約30〜約60%、約50〜約60%、約70〜約80%又は約50%〜約90%の溶媒が除去される。
【0142】
本発明は、更に、組成物に超強塩基触媒を添加することによって、以下の本明細書に記載の実施形態の樹脂−直鎖状オルガノポリシロキサンの固体硬化フィルム組成物の特性、硬化、引張強度又は熱安定性の少なくとも1つを改善する方法を提供する。本明細書に記載の実施形態の樹脂−直鎖状オルガノポリシロキサンの固体硬化フィルム組成物及び超強塩基触媒は、上記に定義したとおり同一である。
【0143】
硬化特性の改善は、本組成物の最終硬化の開始に必要な硬化温度の低下によって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、上述のレオロジー評価からG’/G”クロスオーバー温度を決定することによって評価され得る。本発明の樹脂−直鎖状ブロックコポリマー組成物に超強塩基触媒を添加することによって、典型的に120℃〜250℃の範囲の温度から、触媒を使用せずに、60℃〜150℃の範囲まで硬化温度を低下させることができる。一実施形態では、本発明の硬化性組成物を硬化させるために必要な温度は、超強塩基触媒を添加することによって、又は超強塩基触媒を使用せずに比較可能組成物を添加する場合に比較して、10%、あるいは20%、あるいは50%低下する。他の実施形態では、本明細書に記載の実施形態の硬化性組成物の硬化温度は、超強塩基触媒を使用しない比較可能な組成物の硬化温度の約10%〜約50%未満、例えば、約20%〜約50%未満、約10%〜約20%未満、約25%〜約50%未満又は約15〜約30%未満である。
【0144】
引張強度の改善は、超強塩基触媒を含むこれらの組成物では、超強塩基触媒を含まない場合に比べて、少なくとも50%の増大、あるいは少なくとも75%の増大、あるいは少なくとも100%の引張強度の増大によって特性評価してもよい。いくつかの実施形態では、引張強度の改善は約50%〜約100%、例えば、約50%〜約75%、約60%〜約90%、約60%〜約100%又は約75%〜約100%の引張強度の増大であってよい。
【0145】
熱安定性の改善は、定性的又は定量的のいずれかによって特性評価してもよい。例えば、熱安定性の改善は、視覚的に熱経年硬化フィルムの色変化を評価(例えば、100時間後、250℃での色評価)することによって、定性的に評価され得る。超強塩基を含む本発明の硬化性組成物から生成したフィルムは、超強塩基触媒を用いない比較可能な組成物よりも薄い色を有してもよい。いくつかの実施形態では、超強塩基を含む硬化性組成物から作製したフィルムは、可視光透過率が少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「可視光」は、波長350nmを超える光を含む。あるいは、5℃/minにて加熱中、5重量%の損失が発生する時点で温度(T
d)を決定する方法などの技術によって熱安定性を定量的に評価することもできる(詳細は、実施例参照のこと)。
【0146】
これらの実施形態は、本開示のいくつかの態様を示すように意図されるため、本明細書に記載され、請求されている本発明の実施形態は、本明細書で開示されている具体的な実施形態による範囲に制限されるものではない。いかなる同等の実施形態も、本開示の範囲内にあるものであることを意図する。実際に、本明細書に示し、記載したものに加え、本実施形態の様々な変形形態が、前述の説明から当業者に明らかになる。また、こうして変形形態は、添付の請求項の範囲内であることを意図するものである。
【0147】
本技術の開示により、迅速に本質を究明することができるように、要約を提示する。本請求項の範囲又は意味を解釈する又は制限するために使用するものではないことを理解されるものとする。
【実施例】
【0148】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すとおりとする。しかし本開示の見地から、当業者には当然のことながら、開示される特定の実施形態において本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で多くの変更をなすことができ、依然として類似する、又は同様の結果を得ることができる。全てのパーセンテージは重量%である。すべての測定は、特に指示がないかぎり、23℃で実施した。
【0149】
特性評価法
29Si及び
13C NMRスペクトル分析法
溶媒非含有樹脂−直鎖状3グラム(サンプルを室温で一晩乾燥させて作製)、CDCl
3中のCDCl
3を1グラム、0.04M Cr(acac)
3溶液4グラムを秤量して樹脂−直鎖状物のNMRサンプルを作製し、バイアルに入れ、完全に混和させる。次に、サンプルを、ケイ素を含まないNMR管の中に移した。Varian Mercury 400MHz NMRを使用して、スペクトルを得た。サンプル4グラムをCDCl
3で希釈して4グラムの0.04MのCr(acac)
3として、217フレーク及びシラノール末端PDMSなど、他の材料のNMR試料を調製した。
【0150】
13C NMR実験を以下の方式で行った。サンプルは、16mmガラスNMR管に入れた。5mm NMR管を16mm管の内側に入れ、固定溶媒を充填した。12〜20分の信号平均化ブロックにおいて13C DEPT NMRを得た。1Hの共鳴周波数400MHzを用いて、Varian Inova NMRスペクトロメータによりデータを得た。
【0151】
樹脂−直鎖状物のシラノール含有量は、
29Si NMRスペクトルのT(Ph、OZ)領域とT(Ph、OZ2)領域との積分値から計算したT(アルキル)基は、完全に縮合したものと考えられ(推定)、T(Ph,Oz)から差し引かれた。
29Si NMRからのD(Me2)の積分値に比率(合成の組成に使用されるPDMSに含まれるSiモル量に対するカップリング剤に含まれるSiモル量)を乗じることにより、T(アルキル)含有量を計算した。217フレーク由来のイソプロポキシは、低濃度であるため、Oz値から差し引かなかった。したがって、総OZ=総OHとみなされた。
【0152】
GPC分析
サンプルは、濃度0.5%(重量/体積)で認定されたTHF中で調製し、0.45μm PTFEシリンジフィルターでろ過し、ポリスチレン標準物質と比較して分析した。分子量決定に使用される比較検量線(三次フィット)は、580〜2,320,000ダルトンの分子量範囲の16のポリスチレン標準によるものであった。クロマトグラフィー装置は、真空脱気装置を装備したWaters 2695セパレーションモジュールと、Waters 2410示差屈折計と、ガードカラムが前に設置された2つ(300mm×7.5mm)のPolymer Laboratories Mixed Cカラム(分子量分離範囲:200〜3,000,000)と、からなる。流量が1.0mL/minとなるようにプログラムされた認定等級のTHFを用いて分離させ、注入量を100μLに設定し、カラム及び検出器は35℃に加熱した。データ収集は25分行い、Atlas/Cirrusソフトウェアを使用して処理を行った。
【0153】
遊離樹脂含有量を測定するために、低分子量側の遊離樹脂ピークを積分して、面積(%)を得た。
【0154】
レオロジー分析
市販の強制空気乾燥器付きレオメーター(TA Instruments製)(2KSTD標準屈曲式ピボットスプリング変換器を備えたARES−RDA、TA Instruments製、デラウェア州、ニューキャッスル、19720)を用いて、温度の関数として、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、及び損失係数を測定した。試験片(典型的に、幅8mm、厚さ1mm)を平行板間に配置し、温度差を25℃〜300℃の範囲で2℃/minにて、小さな歪みの振動レオロジーを用いて測定した(周波数1Hz)。
【0155】
コポリマーを特性評価するために、流動開始をG’降下(「流動」と標識されている)に入る変曲温度として計算し、120℃での粘度を溶融加工性についての尺度として報告し、硬化開始をG’上昇(「硬化」と標識されている)に入る変曲温度として計算した。
【0156】
光学的透明度
本発明の組成物のキャストシートの厚さ1mmのサンプルを通して測定された、約350〜1000ナノメートルの波長での光透過率(%)として、光学的透明度を評価した。サンプルの透過率が少なくとも95%である場合、光学的に透明であるとみなした。
【0157】
実施例1(参照)
47dpジアセトキシ末端PhMeシロキサンを用いるPhMe樹脂直鎖状
組成:(PhMeSiO
2/2)
0.52(PhSiO
3/2)
0.41(45重量%のフェニル−T)
500mLの4つ口丸底フラスコに、ダウコーニング製217フレーク(45.0g、0.329モルSi)及びトルエン(Fisher Scientific製、70.38g)を充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行い、Dean Stark装置には予めトルエンを充填し、加熱には油浴を使用した。反応混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を108℃に冷却した後、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンの溶液を迅速に添加した。50/50重量%メチルトリアセトキシシラン(MTA)/エチルトリアセトキシシラン(ETA)(3.34g、0.0144モルSi)混合物をトルエン(29.62g)に溶解させた47dpシラノール末端PhMeシロキサン溶液(55.0g、0.403モルSi)に添加して、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを調製した。溶液は、窒素雰囲気下において室温で2時間混合した。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを添加後、反応混合物は、2時間、還流下で加熱した。この時点で、50/50重量MTA/ETA(6.94g、0.0300モルSi)を108℃で添加した。反応混合物は、さらに1時間、還流下で加熱した。反応混合物を90℃に冷却した後、DI水(15mL)を添加した。温度を上昇させて還流させ、水を共沸蒸留により除去した。反応混合物を再び90℃に冷却し、さらにDI水(15mL)を添加した。これを加熱して還流させ、水を再び除去した。その後、一部のトルエン(56.4グラム)を蒸留によって除去し、固形含有量を増やした。物質を室温に冷却し、その後、5.0μmのフィルターで加圧濾過した。キャストシート(溶液を型枠に注ぎ、溶媒を蒸発させることにより作製)は光学的に透明であった。
【0158】
実施例2(参照)
140dpジアセトキシ末端PhMeシロキサンを用いるPhMe樹脂直鎖状
組成:(PhMeSiO
2/2)
0.52(PhSiO
3/2)
0.42(45重量%のフェニル−T)
500mLの4つ口丸底フラスコに、ダウコーニング製217フレーク(45.0g、0.329モルSi)及びトルエン(Fisher Scientific製、70.38g)を充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行い、Dean Stark装置には予めトルエンを充填し、加熱には油浴を使用した。反応混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を108℃に冷却した後、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンの溶液を迅速に添加した。50/50重量% MTA/ETA(1.21g、0.00523モルSi)混合物をトルエン(29.62g)に溶解させた140dpシラノール末端PhMeシロキサン溶液(55.0g、0.404モルSi)に添加して、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを調製した。溶液は、窒素雰囲気下において室温で2時間混合した。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを添加後、反応混合物は、2時間、還流下で加熱した。この時点で、50/50重量% MTA/ETA(7.99g、0.0346モルSi)を108℃で添加した。反応混合物は、さらに1時間、還流下で加熱した。反応混合物を90℃に冷却した後、DI水(12mL)を添加した。温度を上昇させて還流させ、水を共沸蒸留により除去した。反応混合物を再び90℃に冷却し、さらにDI水(12mL)を添加した。これを加熱して還流させ、水を再び除去した。その後、一部のトルエン(56.9グラム)を蒸留によって除去し。固形含有量を増やした。材料を室温まで冷却した後、5.0μmフィルターを通して加圧濾過させた。キャストシート(溶液を型枠に注ぎ、溶媒を蒸発させることにより作製)は、光学的に透明であった。
【0159】
実施例3(参照)
230dpジアセトキシ末端PhMeシロキサンを用いるPhMe樹脂直鎖状
組成:(PhMeSiO
2/2)
0.53(PhSiO
3/2)
0.41(45重量%のフェニル−T)
500mLの4つ口丸底フラスコに、ダウコーニング製217フレーク(45.0g、0.329モルSi)及びトルエン(Fisher Scientific製、70.38g)を充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行い、Dean Stark装置には予めトルエンを充填し、加熱には油浴を使用した。反応混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を108℃に冷却した後、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンの溶液を迅速に添加した。50/50重量% MTA/ETA(0.82g、0.00355モルSi)混合物をトルエン(29.62g)に溶解させた230dpシラノール末端PhMeシロキサン溶液(55.0g、0.404モルSi)に添加して、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを調製した。この溶液を窒素雰囲気下で室温にて2時間にわたって混合した。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを添加後、反応混合物は、2時間、還流下で加熱した。この時点で、50/50重量% MTA/ETA(9.89g、0.0428モルSi)を108℃で添加した。反応混合物は、さらに1時間、還流下で加熱した。反応混合物を90℃に冷却した後、DI水(15mL)を添加した。温度を上昇させて還流させ、水を共沸蒸留により除去した。反応混合物を再び90℃に冷却し、さらにDI水(15mL)を添加した。これを加熱して還流させ、水を再び除去した。その後、一部のトルエン(57.0グラム)を蒸留によって除去し、固形含有量を増やした。物質を室温に冷却し、その後、5.0μmのフィルターで加圧濾過した。キャストシート(溶液を型枠に注ぎ、溶媒を蒸発させることにより作製)は光学的に透明であった。
【0160】
実施例4(参照)
140dpジアセトキシ末端PhMeシロキサンを用いるPhMe樹脂直鎖状
組成:(PhMeSiO
2/2)
0.64(PhSiO
3/2)
0.32(35重量%のフェニル−T)
500mLの4つ口丸底フラスコに、ダウコーニング製217フレーク(35.0g、0.256モルSi)及びトルエン(Fisher Scientific製、65.0g)を充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行い、Dean Stark装置には予めトルエンを充填し、加熱には油浴を使用した。反応混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を108℃に冷却した後、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンの溶液を迅速に添加した。50/50重量% MTA/ETA(1.44g、0.00623モルSi)混合物をトルエン(35.0g)に溶解させた140dpシラノール末端PhMeシロキサン溶液(65.0g、0.477モルSi)に添加して、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを調製した。溶液は、窒素雰囲気下において室温で2時間混合した。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを添加後、反応混合物は、2時間、還流下で加熱した。この時点で、50/50重量% MTA/ETA(6.21g、0.0269モルSi)を108℃で添加した。反応混合物は、さらに1時間、還流下で加熱した。反応混合物を90℃に冷却した後、DI水(12mL)を添加した。温度を上昇させて還流させ、水を共沸蒸留により除去した。反応混合物を再び90℃に冷却し、さらにDI水(12mL)を添加した。これを加熱して還流させ、水を再び除去した。その後、一部のトルエン(54.0グラム)を蒸留によって除去し、固形含有量を増やした。物質を室温に冷却し、その後、5.0μmのフィルターで加圧濾過した。キャストシート(溶液を型枠に注ぎ、溶媒を蒸発させることにより作製)は光学的に透明であった。
【0161】
(実施例5〜12)
DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、Aldrichより提供)をトルエンで希釈し、希釈濃度を0.1%とした。このトルエン溶液を、トルエン中約70%の樹脂−直鎖状固体溶液に添加し、目的の触媒レベルに到達させた。
【0162】
【表2】
【0163】
注記:熱重量分析を用いて、10℃/minでの空気中における純粋なDBUを測定した。この分析により、DBUは一過性の触媒であり、160℃になる前に抜けることがわかる。
【0164】
未硬化フィルム及びレオロジー用サンプルを作製し、流れ及び硬化速度を測定するための手順:
1.約0.2mm(8mil)に設定した4”ドローダウンバー(draw down bar)を用いて、フッ素化放出フィルム(2mil)上でフィルムを鋳造する。
2.ホットプレート上でトルエンを20分間、60℃で蒸発させる。
3.フィルムをその上で折り畳み、冷圧し、平行板レオロジー実験に必要な厚さ(約1mm)とする。
4.レオメーターを所望の温度(80℃〜160℃)に設定し、直径8mmのサンプルをプレート間に設置する。
5.10秒以内に実験を開始する。
【0165】
いくつかの樹脂−直鎖状ブロックコポリマー組成物におけるDBU超強塩基の触媒活性は、以下の表2にまとめる。G”/G’クロスオーバーから、樹脂−直鎖状コポリマーの溶融流動の発生がわかる。この値は、DBU濃度に併せて大きく変化するものではなかった。例えば、140dp PhMeポリマーと結合させた45重量%のPh−Tコポリマー(実験2)では、DBU濃度は、連続して0ppm、17ppm、50ppm上昇し、100ppm、250ppm及び500ppmであり、その結果、G”/G’クロスオーバー温度は、63℃、87℃、78℃、91℃、91℃、86℃となる。このクロスオーバーは、Ph−T樹脂リッチ相のガラス転移に相当する。このガラス転移の重要性は表3に示し、80℃では行われている硬化反応が非常にわずかであることがわかる。これは樹脂相が触媒の自己カプセル化相として機能するという事実に起因し得る。樹脂相が移動相となるとき、触媒は必要な流動性を有し、縮合硬化となる。
【0166】
このG’/G”クロスオーバー温度から、樹脂−直鎖状コポリマーの縮合硬化の発生がわかる。この値は、DBU含有量により、劇的に変化する。例えば、140dp PhMeポリマーと結合させた45重量%のPh−Tコポリマー(実施例2)については、DBU濃度は、連続して、0ppm、17ppm、50ppm、100ppm、250ppm及び500ppmと上昇して、G’/G”クロスオーバー温度は183℃、130℃、138℃、106℃、100℃、98℃となった。このデータは、更に
図1にまとめ、約100℃でのクロスオーバー温度を示す。これは、また、樹脂リッチ相の流動性の低下に関し、シラノール基は、樹脂上のみにおよそ100℃で存在し、この温度は、樹脂相のT
gに非常に近いものと考えられる。これにより、大きな流動性の低下となる。また、120℃での粘度を測定し、表2にまとめる。この結果から、DBU濃度が高いと非常に高い粘度が得られ、これらは硬化挙動の加速により得られる。
【0167】
【表3】
*その代りG’の変曲点では、クロスオーバーは発生せず(必ずG’>G”)
**G’最小値では、クロスオーバーは発生せず(必ずG’>G”)
【0168】
上記実施例のうちのいくつかについて、等温条件における硬化速度を
図2及び表3に示す。その結果から、DBU濃度が高いと、ゲル化点(G’/G”クロスオーバー時間)が速くなり、さらに粘度が増大し、特定の反応時間後の貯蔵弾性率(対象となる等温温度において1時間後のG’)が高くなることがわかる。G’とG”とがクロスオーバー(G’/G”クロスオーバー)する時点がゲル点であり、また、以下の表3に示す。
【0169】
【表4】
1 Δη
*/η
*0は粘度(η
*−η
*0)をコポリマー溶融の初期粘度η
*0で割った粘度の変化として定義する。「
*」は、単に、複素粘度の規模を測定する振動レオロジー実験を用いて、粘度が得られたことを意味する点に留意のこと。
【0170】
表4にまとめたように、硬化の加速に加えて、DBU超強塩基の添加により、酸化的環境において高温に曝露後、組成物の引張強度の増大、組成物の熱安定性の改善、組成物の色の減少がもたらされた。
【0171】
【表5】
【0172】
実施例13〜15;117dpジアセトキシ末端PhMeシロキサンを用いるPhMe樹脂直鎖状組成:(PhMeSiO
2/2)
0.54(PhSiO
3/2)
0.40(45重量%フェニル−T)
5Lの4つ口丸底フラスコにトルエン(1196.53g)及び217フレークフェニル−T樹脂(765.0g、5.60モルSi)を充填した。このフラスコに、温度計と、Teflon撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置と、を装備させた。窒素封入を行った。Dean Stark器具には、トルエンをあらかじめ充填し、加熱マントルを使用して加熱した。反応混合物を30分間、加熱させて還流させ、水3.7mLを除去した。次いで、反応混合物を108℃(ポット温度)まで冷却した。
【0173】
50/50 MTA/ETAをシロキサンに添加して、室温で2時間混合することによって、グローブボックス中で、窒素下において、シラノール末端PhMeシロキサンのトルエン溶液(1438.5g溶液;935.0gシロキサン,6.85モルSi)に50/50 MTA/ETA(22.96g,0.0993モルSi)で覆った(同日)。シロキサン溶液を108℃で迅速に217フレーク溶液に添加した。反応混合物を2時間、加熱させて還流させ、水6.1mLを除去した。再び反応混合物を108℃に冷却した。この時点で、50/50重量MTA/ETA(135.95g、0.588モル)。反応混合物を1時間、加熱させて還流させ、水0.48mLを除去した。
【0174】
以下の方法を2回繰り返した。
反応混合物を90℃に冷却し、DI水(204mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、共沸蒸留によって水を除去した。それぞれのサイクルを1時間、40分持続させた。反応混合物は、洗浄と洗浄との間に、室温で一晩放置した。除去した水相総量:484.0g。
【0175】
トルエン部分(1004g残存酢酸のほとんどの部分と共に)を除去し、55分間にわたって、固体含有量を増やした。DBUをトルエンで希釈し、希釈度0.1%とした。このトルエン溶液を、トルエン中約70%の樹脂−直鎖状固体溶液に添加し、以下の表5及び表6に示す触媒濃度に到達させた。反応混合物を室温まで冷却し、5.0μmフィルターを通して加圧濾過した。
【0176】
本実施例において作製された組成物を用いて生成した硬化フィルム及び未硬化フィルムは、透明であった。いずれのサンプルも、25℃で一晩、厚さ約1mmのシートに鋳造し、オーブンに入れ、50℃になるまで5時間、70℃になるまで5時間、120℃になるまで1時間及び160℃になるまで3時間加熱した。
【0177】
【表6】
【0178】
【表7】