【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機化合物が、ジカルボン酸、トリカルボン酸若しくはテトラカルボン酸、ジカルボン酸エステル、トリカルボン酸エステル若しくはテトラカルボン酸エステル、及び/又はかかる化合物の無水物及び/又はエステルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F. Guillemot, A. Brunet-Bruneau, E. Bourgeat-Lami, T. Gacoin, E. Barthel and J.-P. Boilot, Chem. Mater. 2010, 22, 2822-2828.
【非特許文献2】M. C. Bautista and A. Morales, Sol. Energy Mater. Sol. Cells 2003, 80, 217-225.
【非特許文献3】B. B. Troitskii, Yu. A. Mamaev, A. A. Babin, M.A. Lopatin, V. N. Denisova, M. A. Novikova, L. V. Khokhlova and T. I. Lopatina, Glass Physics and Chemistry, 2010, 36 (5), 609-616.
【非特許文献4】P. Falcaro, L. Malfatti, T. Kidchob, G. Giannini, A. Falqui, M. F. Casula, H. Amenitsch, B. Marmiroli, G. Grenci and P. Innocenzi, Chem. Mater. 2009, 21, 2055-2061.
【非特許文献5】K. Biswas, S. Gangopadhyay, H.-C. Kim and R. D. Miller, Thin Solid Films 2006, 514, 350-354.
【非特許文献6】O. M. Yaghi and H. Li, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 10401-10402.
【非特許文献7】C. Janiak, Dalton Trans., 2003, 2781-2804.
【非特許文献8】Jesse L.C. Rowsell, Omar M. Yaghi, Microporous and Mesoporous Materials 73 (2004) 3-14.
【非特許文献9】J. D. Figueroa; T. Fout; S. Plasynski; H. Mcllyried; R. D. Srivastava, Int. J. Greenhouse Gas Contr. 2008, 2, 9-20.
【非特許文献10】Corma, H. Garca and F. X. Llabres i Xamena, Chem. Rev. 2010, 110, 4606-4655.
【発明を実施するための形態】
【0012】
「少なくとも2つの機能的配位基を有する少なくとも1つの有機化合物」という用語は、所与の金属イオンとの配位結合を展開することが可能な少なくとも2つの官能基を含有する有機化合物を特定するものである。本明細書では、2つ以上の機能的結合を展開することが可能な有機基が好まれる。本明細書では、官能基を介して2つ以上、好ましくは2つの金属原子と配位結合を形成することが可能な有機化合物が好まれる。かかる好ましい化合物は配位高分子の構築に特に適している。
【0013】
任意の特定の理論に拘束されるものではないが、配位高分子、特にはMOFは本組成物において形成されると推測される。この目的は、加水分解性金属化合物及び有機化合物によって果たされる。しかしながら、シラン化合物もMOFの形成に関与している。概して、このような配位高分子の構築には、本組成物において既定の孔形成をもたらす既定の骨格を形成するという利点がある。
【0014】
これらの配位結合は個々の化合物に対して形成される必要はない。有機化合物は金属化合物及び/又はシラン化合物の縮合物と連結することも可能である。当然のことながら、MOFに関与していない化合物の一部を孔内に組み込むことも可能である。
【0015】
さらに本組成物内の既定の構造が、反射防止コーティングの作製に非常に重要である。反射防止コーティングを作製するのに、塗布組成物を熱処理する。この処理中に、溶媒が除去され、有機構成要素、すなわち有機化合物を含む構成要素が広く焼失する(burnt out)。これにもかかわらず、本組成物で形成される構造は、後の反射防止コートの構造、より詳細には得られる屈折率に重要となるその孔構造に影響を与える。このようにして、本組成物における既定の構造によって、後の反射防止コーティングの構造に影響を与えることが可能である。
【0016】
本組成物は少なくとも1つの加水分解性シラン化合物を含む。これは式:
R
1aSiX
4−a (I)
(式中、Xは1つ又は複数の加水分解性ラジカルを表し、該加水分解性ラジカルは同一であっても又は異なっていてもよい)の化合物であるのが好ましい。
【0017】
上記式中の加水分解性ラジカルXの好適な例は、水素、ハロゲン(F、Cl、Br又はI、特にはCl又はBr)、アルコキシ(例えばC
1〜6アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、並びにn−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ若しくはtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC
6〜10アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アルカリールオキシ(例えばベンゾイルオキシ)、アシルオキシ(例えばC
1〜6アシルオキシ、好ましくはC
1〜4アシルオキシ、例えばアセトキシ又はプロピオニルオキシ)、及びアルキルカルボニル(例えばC
2〜7アルキルカルボニル、例えばアセチル)である。同様に、NH
2基、アルキル、アリール及び/又はアラルキルで一置換又は二置換されたアミノ基(ここで、アルキルラジカル、アリールラジカル及び/又はアラルキルラジカルの例は、R
1について下に示されるものである)、ベンズアミド等のアミド基、又はアルドキシム基若しくはケトキシム基も適している。例えばグリコール、グリセロール又はピロカテコールとのSi−ポリオール錯体の場合のように、2つ又は3つのX基が互いに連結していてもよい。上述の基は任意に、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ又はエポキシ等の置換基を含有していてもよい。好ましい加水分解によって除去可能なラジカルXは、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解によって除去可能なラジカルは、C
1〜4アルコキシ基、特にはメトキシ及びエトキシである。
【0018】
式(I)では、aは0、1又は2の値をとることができ、好ましいシランはaが0又は1のものであり、より好ましくはaは0である。好ましいシランは、好ましくは全て同じである4つの加水分解性ラジカルを有するシランである。
【0019】
R
1は1つ又は複数の非加水分解性ラジカルを表す。非加水分解性ラジカルは例えば、アルキル(例えばC
1〜20アルキル、特にはC
1〜4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル)、アルケニル(例えばC
2〜20アルケニル、特にはC
2〜4アルケニル、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニル)、アルキニル(例えばC
2〜20アルキニル、特にはC
2〜4アルキニル、例えばエチニル又はプロパルギル)、アリール(特にはC
6〜10アリール、例えばフェニル及びナフチル)、並びに対応するアラルキル基及びアルカリール基、例えばトリル及びベンジル、並びに環状C
3〜C
12アルキル基及びアルケニル基、例えばシクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0020】
ラジカルR
1は必要に応じて更に架橋が可能である官能基であり得る慣用の置換基を含んでいてもよい。慣用の置換基は例えば、ハロゲン(例えば塩素又はフッ素)、エポキシド(例えばグリシジル又はグリシジルオキシ)、ヒドロキシル、エーテル、エステル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、任意で置換されたアニリノ、アミド、カルボキシル、アルケニル、アルキニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、メルカプト、シアノ、アルコキシ、イソシアナト、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、酸無水物及びリン酸である。これらの置換基は、二価架橋基、特にはアルキレン架橋基、アルケニレン架橋基又はアリーレン架橋基を介してケイ素原子と結合する。これらには酸素又は−NH−基が間に挿入されていてもよい。架橋基は例えば、1個〜18個、好ましくは1個〜8個、特には1個〜6個の炭素原子を含有する。上述の二価架橋基は例えば、上述の一価のアルキルラジカル、アルケニルラジカル又はアリールラジカルに由来するものである。当然のことながら、ラジカルR
1は2つ以上の官能基を有していてもよい。
【0021】
架橋が可能である官能基を有する非加水分解性ラジカルR
1の好ましい例は、グリシジル又はグリシジルオキシ−(C
1〜20)−アルキレンラジカル、例えばβ−グリシジルオキシエチル、γ−グリシジルオキシプロピル、δ−グリシジルオキシブチル、ε−グリシジルオキシペンチル、ω−グリシジルオキシヘキシル、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、(メタ)アクリロイルオキシ−(C
1〜6)−アルキレンラジカル、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル、(メタ)アクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリロイルオキシプロピル、又は(メタ)アクリロイルオキシブチル、及び3−イソシアナトプロピルラジカルである。特に好ましいラジカルは、γ−グリシジルオキシプロピル及び(メタ)アクリロイルオキシプロピルである。本明細書では、(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを指す。
【0022】
使用するのに好ましいラジカルR
1は、置換基又は官能基を含まないラジカルであり、特にはアルキル基、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特にはメチル及びエチル、並びに更にフェニル等のアリールラジカルである。
【0023】
式(I)のシラン化合物の例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、若しくはフェニルトリエトキシシラン、テトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン(Si(OCH
3)
4)、テトラエトキシシラン(Si(OC
2H
5)
4)、テトラプロポキシシラン(Si(O−n−又はイソ−C
3H
7)
4)、Si(OC
4H
9)
4、及び更にはSiCl
4、HSiCl
3、Si(OOCCH
3)
4、又はかかるシラン化合物の混合物であり、テトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン(Si(OCH
3)
4)、テトラエトキシシラン(Si(OC
2H
5)
4)、テトラプロポキシシラン(Si(O−n−又はイソ−C
3H
7)
4)、Si(OC
4H
9)
4、及び更にはSiCl
4、HSiCl
3、Si(OOCCH
3)
4、又はそれらの混合物が好まれる。テトラメトキシシラン若しくはテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、又はそれらの混合物が特に好ましい。
【0024】
本組成物は加水分解性金属化合物を更に含む。
【0025】
金属化合物は、加水分解性金属化合物、換言すると水との反応によって置き換えることができる、すなわち加水分解によって除去可能な少なくとも1つの基を含有する金属化合物である。
【0026】
かかる化合物は例えば、ハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物、臭化物若しくはヨウ化物、アルコキシド、カルボン酸化合物、シアン化物、又は硫化物である。
【0027】
本発明の発展形態において、本化合物は式(II):
MX
n (II)
(式中、Mは第Ia族、第IIa族、第IIIa族、第IVa族〜第VIa族、及び第Ib族〜第VIIIb族から選択される)の化合物である。MはMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ro、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiであるのが特に好ましい。MはZn、Al、Mg、Ca、Ti、Zr、Cu、Ni、Fe、Pd、Pt、Ru、Rh及びCoであるのが特に好ましい。MはZn、Al、Ti、Zr、Ni、Cu、Mg、Ca、Feであるのがとりわけ好ましい。これらの元素のイオンに関して、特に注目すべきものはMg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、Sc
3+、Y
3+、Ti
4+、Zr
4+、Hf
4+、V
4+、V
3+、V
2+、Nb
3+、Ta
3+、Cr
3+、Mo
3+、W
3+、Mn
3+、Mn
2+、Re
3+、Re
2+、Fe
3+、Fe
2+、Ru
3+、Ru
2+、Os
3+、Os
2+、Co
3+、Co
2+、Rh
2+、Rh
+、Ir
2+、Ir
+、Ni
2+、Ni
+、Pd
2+、Pd
+、Pt
2+、Pt
+、Cu
2+、Cu
+、Ag
+、Au
+、Zn
2+、Cd
2+、Hg
2+、Al
3+、Ga
3+、In
3+、Tl
3+、Si
4+、Si
2+、Ge
4+、Ge
2+、Sn
4+、Sn
2+、Pb
4+、Pb
2+、As
5+、As
3+、As
+、Sb
5+、Sb
3+、Sb
+、Bi
5+、Bi
3+及びBi
+である。式中、nは金属の価数に相当する。
【0028】
同様に、例えば周期表の第I族及び第II族の主族元素(例えばNa、K、Ca及びMg)、並びに周期表の第V族〜第VIII族の遷移元素(例えばMn、Cr、Fe及びNi)の加水分解性化合物を使用することが可能である。Ce等のランタノイドの加水分解性化合物を使用することもできる。好ましい金属化合物は、MがAl、B、Sn、Fe、Ti、Zr、V又はZn、好ましくはAl、Fe、Ti又はZrであるものであり、Tiが特に好ましい。2つ以上の金属化合物の混合物も使用することができる。
【0029】
Xは好ましくは式(I)に規定される加水分解性ラジカルであり、2つのX基が1つのオキソ基で置き換えられていてもよい。
【0030】
好ましい金属化合物は例えば、B、Al、Zr、特にTiのアルコキシド又はハロゲン化物である。好適な加水分解性金属化合物は例えば、Al(OCH
3)
3、Al(OC
2H
5)
3、Al(O−n−C
3H
7)
3、Al(O−イソ−C
3H
5)
3、Al(O−n−C
4H
9)
3、Al(O−sec−C
4H
9)
3、AlCl
3、AlCl(OH)
2、Al(OC
2H
4OC
4H
9)
3、TiCl
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O−n−C
3H
7)
4、Ti(O−i−C
3H
7)
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(2−エチルヘキソキシ)
4、ZrCl
4、Zr(OC
2H
5)
4、Zr(O−n−C
3H
7)
4、Zr(O−i−C
3H
7)
4、Zr(OC
4H
9)
4、ZrOCl
2、Zr(2−エチルヘキソキシ)
4、並びに更に例えば錯体形成ラジカル、例えばβ−ジケトン及び(メタ)アクリロイルラジカルを有するZr化合物又はTi化合物、ホウ酸、BCl
3、B(OCH
3)
3、B(OC
2H
5)
3、SnCl
4、Sn(OCH
3)
4、Sn(OC
2H
5)
4、VOCl
3、及びVO(OCH
3)
3である。TiOCl
2等の金属化合物は、部分的又は完全に加水分解された形態で存在してもよい。加水分解は、これらの化合物を組成物に添加する前に、これらの化合物を水、好ましくは化合物の加水分解性基に対して測定して例えば2倍〜10倍過剰の過剰量の水、すなわち加水分解性基1モル当たり2モル〜10モルの水と反応させることによって達成することができる。代替的に加水分解は、化学量論量又は準化学量論量の水を用いて行うことができる。
【0031】
上述の配位結合を形成することができる、少なくとも1つの有機化合物の官能基としては、特に下記の官能基、例えば−CO
2H、−NH
2、−OH、−SH、−CS
2H、−NO
2、−B(OH)
2、−SO
3H、−Ge(OH)
3、−Sn(OH)
3、−Si(SH)
4、−Ge(SH)
4、−Sn(SH)
3、−PO
3H、−AsO
3H、−AsO
4H、−P(SH)
3、−As(SH)
3、−CH(RSH)
2、−C(RSH)
3、−CH(RNH
2)
2、−C(RNH
2)
3、−CH(ROH)
2、−C(ROH)
3、−CH(RCN)
2、−C(RCN)
3(ここでRは例えば、好ましくは1個、2個、3個、4個若しくは5個の炭素原子を有するアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基若しくはn−ペンチレン基等、又は任意に縮合していても、互いに独立してそれぞれの場合で好適な方法で少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、及び/又は互いに独立して例えばN、O及び/又はS等の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、例えば2つのC
6環等の1個若しくは2個の芳香核を含有するアリール基である)が挙げられる。同様に好ましい実施の形態によれば、上述のラジカルRが存在しない官能基が言及される。かかる基としては、−CH(SH)
2、−C(SH)
3、−CH(NH
2)
2、−C(NH
2)
3、−CH(OH)
2、−C(OH)
3、−CH(CN)
2又は−C(CN)
3が挙げられる。
【0032】
好ましい基は、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びチオール、又はかかる基の前駆体であり、カルボン酸が好ましい。
【0033】
カルボン酸基の前駆体は例えば、無水物基、エステル又はアミドである。化合物は複数の異なるかかる基及び/又は前駆体も含み得る。
【0034】
少なくとも2つの官能基は原則として、これらの官能基を含有する有機化合物が、配位結合を形成するとともに、骨格材料を生成する、すなわち少なくとも1つの金属化合物及び/又は少なくとも1つのシラン化合物と配位結合することが可能であれば、任意の好適な有機化合物と結合することができる。
【0035】
少なくとも2つの官能基を含有する有機化合物は、飽和若しくは不飽和脂肪族化合物、若しくは芳香族化合物、又は脂肪族化合物及び芳香族化合物の両方に由来するものであるのが好ましい。
【0036】
脂肪族化合物又は脂肪族化合物及び芳香族化合物の両方の脂肪族部分は、線形及び/又は分岐及び/又は環状であってもよく、1つの化合物当たり複数の環を有することも可能である。更に好まれるのは、脂肪族化合物又は脂肪族化合物及び芳香族化合物の両方の脂肪族部分が、1個〜15個、より好ましくは1個〜14個、より好ましくは1個〜13個、より好ましくは1個〜12個、より好ましくは1個〜11個、特に好ましくは例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のC原子等の1個〜10個のC原子を含むことである。これに関してとりわけメタン、アダマンタン、アセチレン、エチレン又はブタジエンが特に好ましい。
【0037】
芳香族化合物又は芳香族化合物及び脂肪族化合物の両方の芳香族部分は、1つ又はそうでなければ例えば2つ、3つ、4つ若しくは5つの核等の2つ以上の核を有していてもよく、核が互いに分離して存在し、及び/又は少なくとも2つの核が縮合形態で存在することが可能である。特に好まれるのは、芳香族化合物又は脂肪族化合物及び芳香族化合物の両方の芳香族部分が、1つ、2つ又は3つの核を含むことであり、この場合1つ又は2つの核が特に好ましい。その上、互いに独立して、上述の化合物の各核は、例えばN、O、S、B、P、Si、Al、好ましくはN、O及び/又はS等の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。更に好まれるのは、芳香族化合物又は芳香族化合物及び脂肪族化合物の両方の芳香族部分が、1つ又は2つのC
6核を含むことであり、この場合2つの核が互いに別々に又は縮合形態で存在する。芳香族化合物としては特に、ベンゼン、ナフタレン及び/又はビフェニル、及び/又はビピリジル及び/又はピリジルが挙げられる。
【0038】
例えばとりわけ、トランス−ムコン酸又はフマル酸又はフェニレンビスアクリル酸が言及される。
【0039】
本発明における例は、ジカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、酒石酸、1,4−ブタンジカルボン酸、4−オキソピラン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ヘキサン−ジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8−ヘプタデカンジカルボン酸、1,9−ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、1,3−ブタジエン−1,4−ジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、p−ベンゼンジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸、2−メチルキノリン−3,4−ジカルボン酸、キノリン−2,4−ジカルボン酸、キノキサリン−2,3−ジカルボン酸、6−クロロキノキサリン−2,3−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、キノリン−3,4−ジカルボン酸、7−クロロ−4−ヒドロキシキノリン−2,8−ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、2−メチルイミダゾール−4,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、2−イソプロピルイミダゾール−4,5−ジカルボン酸、テトラヒドロピラン−4,4−ジカルボン酸、ペリレン−3,9−ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、Pluriol E 200−ジカルボン酸、3,6−ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ペンタン−3,3−カルボン酸、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ベンジジン−3,3’−ジカルボン酸、1,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン−2,5−ジカルボン酸、1,1’−ジナフチルジカルボン酸、7−クロロ−8−メチルキノリン−2,3−ジカルボン酸、1−アニリノアントラキノン−2,4’−ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン−250−ジカルボン酸、1,4−ビス(カルボキシメチル)ピペラジン−2,3−ジカルボン酸、7−クロロキノリン−3,8−ジカルボン酸、1−(4−カルボキシ)−フェニル−3−(4−クロロ)−フェニルピラゾリン−4,5−ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4,5−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、2−ベンゾイルベンゼン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4,5−cis−ジカルボン酸、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、3,6,9−トリオキサウンデカンジカルボン酸、ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、Pluriol E 300−ジカルボン酸、Pluriol E 400−ジカルボン酸、Pluriol E 600−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5,6−ジメチル−2,3−ピラジンジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルジイミドジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンジイミドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−メトキシ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−ニトロ−2,3−ナフタレンカルボン酸、8−スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、アントラセン−2,3−ジカルボン酸、2’,3’−ジフェニル−p−ターフェニル−4,4’’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、4−(1H)−オキソチオクロメン−2,8−ジカルボン酸、5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、7,8−キノリン−ジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7−ヘプタジカルボン酸、5−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、フラン−2,5−ジカルボン酸、1−ノネン−6,9−ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、1−アミノ−4−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,3−ジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン−2,3−ジカルボン酸、2,9−ジクロロフルオルビン−4,11−ジカルボン酸、7−クロロ−3−メチルキノリン−6,8−ジカルボン酸、2,4−ジクロロベンゾフェノン−2’,5’−ジカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、1−メチルピロール−3,4−ジカルボン酸、1−ベンジル−1H−ピロール−3,4−ジカルボン酸、アントラキノン−1,5−ジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ヘプタン−1,7−ジカルボン酸、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、5,6−デヒドロノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、若しくは5−エチル−2,3−ピリジンジカルボン酸等;トリカルボン酸、例えば、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、7−クロロ−2,3,8−キノリントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、2−ホスホノ−1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、4,5−ジヒドロ−4,5−ジオキソ−1H−ピロロ[2,3−F]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸、5−アセチル−3−アミノ−6−メチルベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、3−アミノ−5−ベンゾイル−6−メチルベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、若しくはアウリン(aurine)トリカルボン酸等;又はテトラカルボン酸、例えば1,1−ジオキシドペリロ[1,12−BCD]チオフェン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸若しくはペリレン−1,12−スルホニル−3,4,9,10−テトラカルボン酸等のペリレンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸若しくはメソ−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等のブタンテトラカルボン酸、デカン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン−2,3,11,12−テトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,11,12−ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10−デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、若しくはシクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等のシクロペンタンテトラカルボン酸である。
【0040】
任意に少なくとも一置換された単環式、二環式、三環式、四環式又はより高次の多環式の芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸を使用することが特に好ましい。各核が少なくとも1つのヘテロ原子を含み、2つ以上の核が同一の又は異なるヘテロ原子を含むことが可能である。例えば単環式ジカルボン酸、単環式トリカルボン酸、単環式テトラカルボン酸、二環式ジカルボン酸、二環式トリカルボン酸、二環式テトラカルボン酸、三環式ジカルボン酸、三環式トリカルボン酸、三環式テトラカルボン酸、四環式ジカルボン酸、四環式トリカルボン酸及び/又は四環式テトラカルボン酸が好まれる。好適なヘテロ原子は例えば、N、O、S、B、P、Si、Alであり、本明細書で好ましいヘテロ原子はN、S及び/又はOである。これに関する好適な置換基はとりわけ、−OH、ニトロ基、アミノ基、又はアルキル基若しくはアルコキシ基である。
【0041】
少なくとも二座有機化合物としての使用に特に好ましいのは、アセチレンジカルボン酸(ADC)、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、例えば4,4’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸(BPDC)、例えば2,2’−ビピリジンジカルボン酸、例えば2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸等のビピリジンジカルボン酸、例えば1,2,3−ベンゼントリカルボン酸若しくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等のベンゼントリカルボン酸(BTC)、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸(ATC)、アダマンタンジベンゾエート(ADB)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラベンゾエート、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、又は例えば2,5−ジヒドロキシテレフタル酸等のジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(=ピロメリット酸)、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸(=3,3’−4,4’−ベンゾイルベンゼンテトラカルボン酸)、3,3’−4,4’−イソプロピリデンジフタル酸、3,3’−4,4’−オキシジフタル酸、及び(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸である。
【0042】
とりわけイソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、又は2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸が使用に特に好ましい。
【0043】
上述の化合物に加えて、例えばこれらの無水物、エステル又はアミド等のこれらの酸の前駆体又は異形体(variants)を使用することも可能である。低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール又はtert−ブタノール等のヒドロキシル基を有する溶媒を使用する場合、対応するエステルが本組成物において形成されていてもよい。無水物を使用する場合、遊離酸基の数を、水を添加することで調整することができる。有機化合物に存在するカルボン酸基が化合物内で環状無水物を形成することができる場合、無水物が特に好ましい。特に好ましい化合物については、このような対応する無水物は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸1,2:4,5−二無水物である。
【0044】
これらの最低限の二座有機化合物に加えて、MOFは、1つ又は複数の単座配位子を更に含んでいてもよい。
【0045】
MOFを調製するのに好適な溶媒としては、水、アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール及び1−ブタノール等の低級脂肪族アルコール(C
1〜C
8アルコール)、ケトン、好ましくはアセトン及びメチルイソブチルケトン等の低級ジアルキルケトン、エーテル、好ましくはジエチルエーテル等の低級ジアルキルエーテル、又はエチレングリコール若しくはプロピレングリコール等のジオール(C
1〜C
6アルコール)のモノエーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、スルホン、アセトニトリル若しくはブチルグリコール、並びにそれらの混合物が挙げられる。水及びアルコールを使用するのが好ましい。高沸点溶媒を使用してもよく、この例はトリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエーテルである。或る特定の場合、他の溶媒も有用であり、この例は軽質パラフィン(石油エーテル、アルカン及びシクロアルカン)、芳香族化合物、トルエン、複素芳香族化合物及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素である。コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、及びそれらの混合物等のジカルボン酸エステルも適用することができ、更に例えば炭酸プロピレン及び炭酸グリセロール等の環状カルボン酸エステルも適用することができる。
【0046】
好ましい溶媒はアルコール及びエーテルであり、より好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール及び1−ブタノール等の低級脂肪族アルコール、並びに更にエチレングリコール又はテトラヒドロフランである。好ましくはテトラヒドロフラン又はより好ましくは10:1〜1:10、非常に好ましくは2:1〜1:2の比率のイソプロパノールと1−ブタノールとの混合物である。
【0047】
形成される配位高分子が、得られる組成物の溶液中にあることが重要である。塗布前に本組成物の遠心分離又は濾過が必要となる場合がある。そのため、好ましい配位高分子は選択溶媒に可溶性のものである。
【0048】
同時に溶媒の選択によって、得られる配位高分子の構造に影響を与えることが可能である。
【0049】
配位高分子の自己集合化により、シラン化合物及び金属化合物と有機化合物との比率を広範に変更することが可能である。この比率は、例えば金属イオンに対するケイ素のmmol量で測定され、100:1〜1:100であり得る。シラン化合物及び金属化合物は従来、有機化合物に対して過剰量で、好ましくはmmol量(有機化合物に対するケイ素と金属イオンとの合計量)で測定される100:1〜1:1、好ましくは50:1〜1:1という比率で用いられる。この比率は有機化合物が展開することができる配位結合の数、及び/又は有機化合物が少なくとも1つの配位結合を形成することができる異なる金属中心又はケイ素中心の数に応じたものであり得る。n個の配位結合を形成することができる場合の比率は少なくともn:1であるのが好ましい。この場合、比率は50:n〜n:1、好ましくは10:n〜n:1であるのが好ましい。例えば有機化合物が2つの金属イオンに対する配位結合を展開することができる場合、モル比は50:1〜2:1、好ましくは30:1〜2:1、より好ましくは10:1〜2:1であるのが好ましい。
【0050】
別の重要な可変値はシラン化合物と金属化合物との比率である。配位高分子の構築によって、純粋なシラン系反射防止コーティングに比して、得られるコーティングの透過率を大幅に低下させることなく、高レベルの金属化合物を得られるSiO
2の構造に組み込むことが可能である。mmol量で測定される、シラン化合物中のケイ素と金属化合物中の金属イオンとの比率は、好ましくは100:1〜1:2、より好ましくは100:1〜1:1、非常に好ましくは50:1〜1:1である。この比率は30:1〜1:1又は20:1〜1:1とすることもできる。
【0051】
高レベルの金属化合物は、反射防止コートの屈折率に影響を与えることが可能であるだけではない。金属化合物はコーティングに硬度の増大等の他の特性を与えることもできる。
【0052】
1つの好ましい形態において、金属化合物はチタン化合物である。結果として、反射防止コートには、光触媒特性を有する二酸化チタン画分が含まれる。この結果、反射防止コーティングに自浄特性を与えることもできる。ここでは別個の二酸化チタン粒子が形成されない代わりに、配位高分子により二酸化チタンが構造へと組み込まれる。
【0053】
溶媒の量は組成物の更なる処理に応じて変動し得る。本発明の1つの好ましい形態において、組成物中のシラン化合物及び金属化合物の量は、0.001mol/l〜10mol/l、好ましくは0.01mol/l〜1mol/l、より好ましくは0.1mol/l〜0.8mol/lである。
【0054】
本組成物の更なる用途に応じて、基板に塗布する前の組成物の固形分は、1〜20wt%、より好ましくは2〜5wt%であるのが好ましい。
【0055】
本組成物は更に、他の構成要素を含んでいてもよい。これらは光学系に慣用の添加剤とすることができる。例としては、可塑剤、増感剤、湿潤助剤、付着促進剤、流動制御剤、抗酸化剤、安定化剤、染料、及びフォトクロミック化合物又はサーモクロミック化合物である。
【0056】
本発明の1つの形態において、本組成物は更に、光学的に活性な物質、例えば屈折率に影響を与える物質を含んでいてもよい。したがって、例えば(TEMによって測定される)粒径が500nm未満の更なるナノ粒子を添加することが可能である。これらのナノ粒子は例えば、SiO
2、ZrO
2及び/又はTiO
2粒子とすることができる。
【0057】
本発明は更に、反射防止コーティングを製造する方法に関する。
【0058】
個々の工程を以下でより詳細に説明する。これらの工程は必ずしも示される順で行う必要はなく、概説される方法は示されていない更なる工程を含んでいてもよい。
【0059】
第1の工程では、上記の組成物を準備する。組成物の粘度及び濃度を使用されるコーティングプロセスに適合させる必要があり得る。
【0060】
続く工程では、組成物を基板に塗布する。コーティングは、ディッピング、フラッディング、ナイフコーティング、鋳込み(pouring)、遠心分離コーティング、射出、ブラッシング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、流延成形、スピニング、又は噴霧等の慣用の技法に従って行うことができる。要求される粘度は、溶媒の添加又は除去によってもたらされ得る。好ましい(硬化状態での)コート厚は0.01〜1μmである。塗布量は、所望の屈折率及び塗布範囲に応じて、50〜200nm、好ましくは100〜150nmの範囲のコート厚が達成されるように選択されるのが好ましい。
【0061】
コーティングに選択される基板は、熱処理に好適である限りにおいて、例えばガラス、セラミック、シリコン、金属、半導体材料、又はPET、PE及びPP等の(好ましくは透明の)プラスチックといった光学用途に適したものであるのが好ましい。
【0062】
結晶性材料も可能である。この場合、特定の目的に適した任意の既知の結晶性材料が可能である。好ましい結晶性基板の例は、シリコン、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英、サファイア、他の宝石又は半宝石、及び他の光学結晶、例えばPbS又はセレン等の電磁放射線の結晶検波器(crystalline detectors)、並びに光学フィルター(UV、IR、NIR及びVIS)の基板であり、結晶性基板にはサファイアが特に好ましい。結晶性基板は透明な基板であるのが好ましい。基板は例えば、異なる材料から作製された支持体上に表面層の形態で存在していてもよい。
【0063】
基板は任意の所望の形状を有していてもよい。例えば基板は、平板であるか、又は例えば凹凸型(concave or convex)のようなドーム型であってもよい。光学マルチコート系を基板の片側又は両側に設けることができる。基板は例えば方形(right-angled)若しくは円形のプレート若しくはレンズの形態又は任意の他の形態で存在していてもよい。1つの好ましい実施の形態において、基板は、結晶性材料から作製された、ウエハ、スクリーン、計器カバーガラス、結晶検波器、光学フィルター、又は時計皿である。或る特定の適用分野では、「ガラス」という呼称は、実際のガラスもこの用途に使用することができるように、商業的に又は当該技術分野において使用される結晶性基板で慣用されるものである。
【0064】
続く工程では、塗布組成物を熱処理する。この処理では、コーティングを、好ましくは400〜800℃、より好ましくは400〜600℃、特には400〜500℃の温度に加熱し、例えば1分間〜1時間この温度に保持する。この間に、有機(炭素含有)構成要素が完全に焼失する。このようにして無機反射防止コートが得られる。
【0065】
この方法によって、僅か一工程で、特に換言すると、単層コーティングのみを用いて、透過率が94%を超える、好ましくは98%を超える有効な反射防止コートを得ることが可能となる。
【0066】
この方法によって作製されたコートの厚さは、0.01〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲、より好ましくは100〜150nmである。
【0067】
これらのコートは、本組成物において指定された比率に従って、二酸化ケイ素と少なくとも1つの金属酸化物とを更に含む。金属酸化物は本組成物において記載されている化合物の金属酸化物である。
【0068】
二酸化ケイ素中のSiと、金属酸化物中の金属イオンとのモル比に関しては、得られるコーティングは、反射防止特性を維持しながら、特に高い金属酸化物画分を有する。モル比は、好ましくは100:1〜1:2、より好ましくは100:1〜1:1、非常に好ましくは50:1〜1:1である。モル比は、30:1〜1:1又は20:1〜1:1とすることもできる。
【0069】
得られるコートは、特にその均質な気孔率が特徴である。これは記載のように有機化合物の選択によって制御することができる。結果として、屈折率が僅かしか変動しないコーティングが得られる。
【0070】
この表面は更に、そのBET表面積を特徴とし得る。
【0071】
本発明の光学コーティングは例えば、下記用途の干渉系及び反射防止系として好適である:
光学フィルター:眼鏡(eyewear)業界の反射防止フィルター及び反射フィルター、ディスプレイ、スクリーン、半導体レーザー、マイクロレンズコーティング、太陽電池、「耐損傷」レーザー層、帯域通過フィルター、反射防止フィルター、吸収フィルター、並びにビーム分割器。
ホログラフィー層:導光系、情報記憶、レーザーカプラー、導波管、デコレーション及びアーキテクチャ。
エンボス加工(Embossable)層:検波器分野で注目を集める反射防止系、フラットディスプレイの照明、コピー機の結像、ファイバーオプティクス(光結合)。
リソグラフィー:導波管、グリッド、ピンホール、回折格子(点格子)等の微小光学素子の作製、並びにディスプレイ技術分野での、ファイバーチップカップリング及び結像光学系。
【0072】
しかしながら、太陽熱収集器又は太陽電池等のソーラー用途でのコーティングも可能である。
【0073】
更なる詳細及び特徴が、従属請求項と併せて好ましい例示的な実施形態の下記記載から明らかとなる。本明細書では、各特徴はそれ自体で又は互いに組み合わされた2つ以上の特徴として実現することができる。この目的を達成する実現性は、この例示的な実施形態に限定されるものではない。このため数値範囲は例えば、全ての、すなわち述べられていない中間値、更には全ての想定される部分区間を常に含む。
【実施例】
【0074】
材料及び方法
化学物質
ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸1,2:4,5−二無水物;Merck Suchardt OHG);塩化チタン(IV)(TICl
4)(Fluka Analytical、Sigma-Aldrich Chemie GmbH);テトラエトキシシラン(TEOS、ABCR GmbH & Co. KG);テトラヒドロフラン(THF、Alfa-Aesar GmbH & Co KG);イソプロパノール(iPrOH、CWR International S.A.S.);n−ブタノール(n−BuOH、Merck Schuchardt OHG)。使用する水は超純水(Millipore)とした。
【0075】
コーティングの作製
作製したコーティング組成物をガラス基板(Marienfeld)に塗布した。これはディップコーティング機を用いて行った。コーティングは、1mm/s、2mm/s、3mm/s及び4mm/sの速度で作製した。その後コーティングを全て、500℃で2時間熱処理した。
【0076】
実施例1
6.67mlのTiCl
4を25mlの水に添加して、30分間撹拌した。
【0077】
実施例2
2.73g(12.5mmol)のピロメリット酸二無水物及び225mg(12.5mmol)の水を50.0mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v);体積基準)に添加して、48時間撹拌した。
【0078】
実施例3
2.18g(0.01mol)のピロメリット酸二無水物及び0.36g(0.02mol)の水を22.5mlのTHFに添加して、48時間撹拌した。
【0079】
実施例4
2.73g(12.5mmol)のピロメリット酸二無水物及び0.90mg(0.05mol)の水を50.0mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))に添加して、48時間撹拌した。
【0080】
実施例5
25.0mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を、撹拌しながら5.0mlの実施例2の溶液、1.30g(6.25mmol)のTEOS、及び0.16mlの実施例1の溶液と混ぜ合わせ、混合物を6時間撹拌した。
【0081】
実施例6
25.0mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を、撹拌しながら2.82gの実施例3の溶液、1.30g(6.25mmol)のTEOS、及び0.16mlの実施例1の溶液と混ぜ合わせ、混合物を6時間撹拌した。
【0082】
実施例7
実施例4の溶液に、撹拌しながら、6.50g(31.3mmol)のTEOS及び0.8mlの実施例1の溶液を添加(滴下)して、混合物を6時間撹拌した。
【0083】
実施例8
50mlの実施例4の溶液に、撹拌しながら、3.12g(14.98mmol)のTEOS、5.26mlの実施例1の溶液(滴下によって)、及び9.00mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を添加して、得られた溶液を6時間撹拌した。
【0084】
実施例9
50mlの実施例4の溶液に、撹拌しながら、3.73g(17.90mmol)のTEOS、4.10mlの実施例1の溶液(滴下によって)、及び9.00mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を添加して、得られた溶液を6時間撹拌した。
【0085】
実施例10
50mlの実施例4の溶液に、撹拌しながら、4.36g(20.93mmol)のTEOS、3.15mlの実施例1の溶液(滴下によって)、及び7.00mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を添加して、得られた溶液を6時間撹拌した。
【0086】
実施例11
50mlの実施例4の溶液に、撹拌しながら、4.98g(23.90mmol)のTEOS、2.10mlの実施例1の溶液(滴下によって)、及び7.00mlのiPrOH/n−BuOH混合物(1:1(v/v))を添加して、得られた溶液を6時間撹拌した。
【0087】
全ての実施例の溶液は、希釈する前に0.2μmのフィルターを用いて濾過した。
【0088】
コーティングの特性
光学特性
作製される全てのコーティングにおいて、反射防止効果は既に、直接的な目視による観察により明らかであった。
【0089】
反射スペクトル及び透過スペクトルをともに、Cary 5000分光計を用いて記録した。実施例5〜7の透過スペクトル及び反射スペクトルを
図1及び2に示す。
【0090】
機械的安定性の測定
コーティングの引っ掻き抵抗性を、ASTM D3363鉛筆引っ掻き試験を用いて調べて、光学顕微鏡を用いて確認した。引っ掻き抵抗性を調べるのに、様々な鉛筆硬度を用いた。結果を
図4〜6に示す。
【0091】
接着試験
コーティングの接着品質を、クロスカット試験及びASTM D3359粘着テープ試験によって調べた。測定される接着値は、実施例6及び7では5/5(これはクロスカット試験における100%の接着、及び切断試験域での粘着テープ試験後の100%の接着を意味する)、実施例5では4/4である。さらに試験結果を
図7〜9に示し、表1にまとめる。
【0092】
コーティングの屈折率(n)及び厚さ
コーティングの屈折率及び厚さを偏光解析法(J. A. Woollan Co, Inc.、M−2000 DI、Spectroscopic Ellipsometer)によって測定した。結果を表2で報告する。
【0093】
モルフォロジー及び微小構造の研究
構造のモルフォロジー及び微小構造を、走査型電子顕微鏡検査(SEM)を用いて調べた。実施例5、6及び7のコーティングの画像を
図10〜15に示す。
【0094】
光触媒活性
図16に、実施例11のコーティングの光触媒活性の測定結果を示す。
【0095】
測定は、キセノンエミッタ(xenon emitter)を備えるHeraeus Suntest CPSにおいて、コーティングスライドを、10mg/lのメチルバイオレットの水溶液150gで被覆し、10時間曝露することで行った。蒸発水を一定間隔で(30分毎に)作製した。測定は10時間の実験終了後に行った。
【0096】
比較実験
金属化合物なしでは、すなわち実施例1では、有用なコートは得られなかった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】