(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526422
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】地熱発電装置及び地熱発電方法
(51)【国際特許分類】
F03G 4/00 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
F03G4/00 501
F03G4/00 511
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-8924(P2015-8924)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-133080(P2016-133080A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】514019671
【氏名又は名称】ジャパン・ニュー・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100167690
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 直
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀男
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052621(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/090307(WO,A1)
【文献】
特開昭60−108694(JP,A)
【文献】
特開2003−222435(JP,A)
【文献】
特開2008−244495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00−4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ポンプによって液体を地熱帯から蒸気発生器まで移送する経路を備え、
前記地熱帯まで移送し前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置であって、
前記地熱発電装置は、蒸気化するまでの間に前記加圧ポンプの圧力によって微小気泡を生成する微小気泡生成装置を備え、前記微小気泡を溶存させた前記液体を蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電装置。
【請求項2】
前記地熱帯に前記液体を移送する前記加圧ポンプは、前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の地熱発電装置。
【請求項3】
前記微小気泡生成装置は、前記液体を前記地熱帯へ移送する加圧水注入管の上部に設けられ、前記加圧水注入管の内周に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の地熱発電装置。
【請求項4】
加圧ポンプによって液体を地熱帯から蒸気発生器まで移送する経路を備え、
前記地熱帯まで移送し前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置であって、
前記地熱発電装置は、蒸気化した後に残った液体又は使用された蒸気を再び液体に戻した後の液体を貯留する貯留タンクを備え、前記貯留タンクに微小気泡を生成する微小気泡生成装置を備え、前記微小気泡を溶存させた前記液体を蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電装置。
【請求項5】
前記微小気泡生成装置は、使用された蒸気を再び液体に戻した後の前記液体を循環させ、かつ復水器と貯留タンクとの間に配置された循環ポンプの圧力によって生成することを特徴とする請求項4に記載の地熱発電装置。
【請求項6】
前記微小気泡生成装置は、前記液体を前記地熱帯へ移送する経路の前に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の地熱発電装置。
【請求項7】
加圧ポンプによって液体を地熱帯から蒸気発生器まで移送する経路を備え、
前記地熱帯まで移送し前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置であって、
前記地熱発電装置は、熱せられた前記液体を減圧沸騰させることで蒸気化する前記蒸気発生器に微小気泡を生成する微小気泡生成装置を備え、前記微小気泡を溶存させた前記液体を蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電装置。
【請求項8】
前記蒸気発生器は、蒸気を発生するノズルに前記微小気泡生成装置が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の地熱発電装置。
【請求項9】
加圧ポンプによって液体を地熱帯まで移送し、前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気発生器まで移送し、蒸気化するまでの間に前記加圧ポンプの圧力によって微小気泡を生成し、前記微小気泡を溶存させた前記液体を前記蒸気発生器で蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電方法。
【請求項10】
加圧ポンプによって液体を地熱帯まで移送し、前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気発生器まで移送し、蒸気化するまでの間に蒸気化した後に残った液体又は使用された蒸気を再び液体に戻した後の液体を貯留する貯留タンクを備え、前記貯留タンクに配置された微小気泡を生成する微小気泡生成装置で微小気泡を生成し、前記微小気泡を溶存させた前記液体を前記蒸気発生器で蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電方法。
【請求項11】
加圧ポンプによって液体を地熱帯まで移送し、前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気発生器まで移送し、熱せられた前記液体を減圧沸騰させることで蒸気化する前記蒸気発生器に設置された微小気泡生成装置によって微小気泡を生成し、前記微小気泡を溶存させた前記液体を前記蒸気発生器で蒸気化して発電することを特徴とする地熱発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱帯を熱源として熱交換を行う地熱交換装置を用いて発電を行う地熱発電装置及び地熱発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から地熱発電装置では、地熱帯に存在する自然の蒸気を自然の圧力を利用して取り出し、気水分離して使用する方法であるため、取り出された蒸気には地熱帯特有の硫黄やその他の不純物が多量に含まれている。この不純物はスケールとなって、熱井戸や配管類、あるいはタービンの羽根等に付着する。スケールが付着すると、経年的に発電出力が減少し、長期間の使用が困難となる。このスケールによる問題を解決するために、地上から水を送り、加熱させて取り出す方式を採用した技術が提案されている。
【0003】
その一例として特許文献1の地熱発電装置は、高圧給水ポンプによって加圧された処理水が供給される加圧水注入管と、加圧水注入管中を地熱帯まで下降する処理水に対して、地熱帯から熱が供給されて生成される熱水が上昇する熱水取出管とを有し、熱水取出管から取出された熱水が蒸気発生器に送られて生成される蒸気によって発電がなされる技術が提案されている。
【0004】
この技術は、加圧水注入管に対して、高圧給水ポンプによって加圧された処理水が供給され、この処理水が加圧水注入管中を下降して地熱帯に達することにより、地熱帯から処理水に熱が供給されて熱水が生成され、この熱水が熱水取出管中を上昇して取出されて発電に使用されるため、発電に使用される蒸気に不純物が含まれておらず、地熱帯に存在する自然の蒸気を直接使用する場合のように、タービンや配管等にスケールが付着しないため、スケールを除去する必要がなく、メンテナンスが容易であり、発電装置を長時間稼働させることが可能となる。
【0005】
また、特許文献2は、特許文献1の技術を利用し、高圧給水ポンプによって加圧された処理水が供給される加圧水注入管と、加圧水注入管中を地熱帯まで下降する処理水に対して、地熱帯から熱が供給されて生成される熱水が蒸気を含まない状態で上昇する熱水取出管とを有し、熱水取出管から取出された熱水が蒸気発生器に送られて、蒸気発生器内のみで蒸気として取り出し、その加圧水注入管が熱水取出管の外周側に配置されており、熱水は加圧水注水管の下部を通って熱水取出管に移る構造を有した地熱発電装置が提案されている。
【0006】
これら技術は、地中深部にある熱源から得られる熱エネルギーを単相流の媒体によって熱交換し、熱源の熱を媒体、例えば水によって移送する装置である。ここで、気液二相流の場合には、単相流に比べて、熱伝導率は10倍から数10倍と大きく、伝わる量が格段に大きい、すなわち熱を奪われやすいため、地下深部で受熱した地中熱を地上に運ぶ前に、地下熱交換器内あるいは地中に戻すことになり、熱効率が低下するかあるいは蒸気を取り出すことができなくなる可能性がある。
そのため、例えば単相流の水を採用し、地中で得られた熱を単相流の状態で蒸気発生器まで移送し、得られた熱水を効率よく蒸気化し、発電量を向上する更なる技術が望まれていた。
また、加圧した単相流の熱水を蒸気発生器まで移送する際に、圧力損出をできる限りなくすことで、加圧水を移送するポンプの出力を低減することができるため、ポンプのエネルギー消費を押さえる技術も望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−052621号公報
【特許文献2】特開2013−164062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みされたものであり、単相流の状態で運ばれた熱水を効率よく蒸気化して発電量を向上させる装置及び方法を提供すること、また加圧した単相流の熱水を蒸気発生器まで移送する際に、圧力損出をできる限り少なくする装置及び方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の主目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0010】
加圧ポンプによって液体を地熱帯から蒸気発生器まで移送する経路を備え、前記地熱帯まで移送され前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置であって、前記地熱発電装置は、蒸気化するまでの間に微小気泡を生成する微小気泡生成装置を備え、前記微小気泡を溶存させた前記液体を蒸気化して発電することを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0011】
前記加圧ポンプ(加圧給水ポンプ)の圧力によって前記微小気泡を生成する前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより、壁面の摩擦抵抗を低減する事も可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプの負担を少なくすることができる。
【0012】
蒸気化した後に残った液体又は使用された蒸気を再び液体に戻した後の液体を貯留する貯留タンクを備え、前記貯留タンクに前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減する事も可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプの負担を少なくすることができる。
【0013】
熱せられた前記液体を減圧沸騰させることで蒸気化する前記蒸気発生器は、前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、更に蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0014】
前記蒸気発生器は、蒸気を発生するノズルに前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0015】
地熱帯に前記液体を移送する前記加圧ポンプは、前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減する事が可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0016】
使用された蒸気を再び液体に戻した後の前記液体を、前記貯留タンクに移送する循環ポンプの圧力によって前記微小気泡を生成する前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減する事が可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0017】
前記微小気泡生成装置は、地熱帯へ移送する経路の前に設けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減する事が可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0018】
前記微小気泡生成装置は、地熱帯へ移送する加圧水注入管の上部に設けられ、前記加圧水注入管の内周に沿って設けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、前記加圧水注入管の内周に沿って前記液体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0019】
加圧ポンプによって液体を地熱帯まで移送し、前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気発生器まで移送し、蒸気化するまでの間に微小気泡を生成し、前記微小気泡を溶存させた前記液体を前記蒸気発生器で蒸気化して発電する方法を特徴とする。
このような方法を使用することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる本発明の地熱発電装置10の構成を示す概要図である。
【
図3】
図3(A)は、第1実施形態及び第2実施形態にかかる微小気泡生成ノズル21aの構成を表す概要図である。
図3(B)は、第3実施形態及び第4実施形態にかかる微小気泡生成ノズル21bの構成を表す概要図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態にかかる本発明の地熱発電装置110の構成を示す概要図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態にかかる本発明の地熱発電装置210の構成を示す概要図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態にかかる熱交換器50の上方部分における液体取出管52と微小気泡生成ノズル21bを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態にかかる本発明の地熱発電装置310の構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる地熱発電装置10、110、210、310の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
図に示される白矢印は、媒体(温水、熱水及び還元水)が流れる方向を示している。ここで、本発明では使用される単相流の液体を水を例にとって説明しているが、特に限定されることはなく、アンモニア等のバイナリー発電等で使用される低沸点の媒体であっても良い。各白矢印の液体の流れる箇所は、配管が設けられている。また、各装置又はタンクの手前に減圧弁等が設けられており、流量の調整が可能なようになっている。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる地熱発電装置10が
図1乃至
図3に示されている。主に
図1を参照して説明すると、
図1は、第1実施形態にかかる本発明の地熱発電装置10の構成を示す概要図である。
図2は、微小気泡13を表す作用図である。
図3(A)は、第1実施形態にかかる微小気泡生成ノズル21aの構成を表す概要図である。
【0023】
第1実施形態にかかる地熱発電装置10は、大別すると微小気泡生成装置20、貯留タンクとしての循環サービスタンク30、熱交換器50、蒸気発生器60、フラッシャー70、蒸気タービン80、復水器90、加圧給水ポンプ41、低圧循環ポンプ42で構成されている。
【0024】
地熱発電装置10は、蒸気タービン80に蒸気を供給することで発電モータ81を回転させて発電を行い、受電設備82に電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。蒸気タービン80は、タービン形式だけでなくスクリュー形式のもの等であってもよく、蒸気によって発電可能なものであればよい。
蒸気タービン80に供給される蒸気は、熱水を減圧沸騰させて蒸気発生器60で生成する。生成した蒸気は、配管61によって蒸気タービン80の高圧部に直接供給される。蒸気量が足りない場合は、蒸気発生器60で余った高温水をフラッシャー70で再度減圧沸騰させ、蒸気を発生させる。発生した蒸気は、配管71によって低圧部の蒸気タービン80へ供給される。熱水は、すべて蒸気とされることがないため、フラッシャー70からの還元水は、循環サービスタンク30に貯められる。また、復水器90は、蒸気タービン80で使用された蒸気を冷却水91で再び水へ凝縮させる装置である。凝縮された温水は低圧循環ポンプ42で循環サービスタンク30へ移送される。
【0025】
循環サービスタンク30は、フラッシャー70からの還元水と復水器90から低圧循環ポンプ42で移送された温水を貯めている。貯められた水は、再度地熱帯Sで熱水として熱交換されるように加圧水注入管51へ加圧給水ポンプ41で移送される。
循環サービスタンク30は、微小気泡生成装置20を含んでおり、循環サービスタンク30の水の一部を液体搬送管31を介して微小気泡生成装置20に移送される。微小気泡生成装置20は、
図1及び
図3(A)に示すように、動力部24と、微小気泡13を排出するノズル部としての微小気泡生成ノズル21aとに分離されて設けられている。
【0026】
微小気泡生成装置20に設けられた動力部24の図示しないポンプで加圧した水を圧力注入管23aにより微小気泡生成ノズル21aに供給する。微小気泡生成装置20は、動力部24の図示しないエアコンプレッサー等で気体注入管22aを介して空気を微小気泡生成ノズル21aに供給し、微小気泡生成ノズル21aは空気と共に温水を排出するためのノズル25aが設けられている。微小気泡生成ノズル21aは、微小気泡生成ノズル21aの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル21aの中に挿入された球状体27が嵌め込まれている。微小気泡生成ノズル21aは、その球状体27の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル21aの周上に穿設された小孔29が設けられている。微小気泡生成ノズル21aは、小孔29の外側に大気又はエアコンプレッサーと連通している空気室26が設けられている。
そして、加圧した高圧水流を流すことで、自吸又はエアコンプレッサーで加圧した空気を伴って
図2に示すように微小気泡13が生成される。微小気泡生成ノズル21aは、耐熱性のものが良く、少なくとも200℃程度耐えるような樹脂や金属等を使用するとよい。
【0027】
本発明で生成した微小気泡13は、マイクロバブルやナノバブルであり、粒径が20マイクロ以下のマイクロバブルはナノバブルへと縮小し、最終的には消滅することが知られている。ヘンリーの法則によると、気体は圧力に比例して水の中に溶解する。そのため、小さな気泡ほど気体の溶解能力が高いことを意味している。そして、マイクロバブルやナノバブルを溶解した水は、以下のような効果を奏している。
微小気泡13を含んだ熱水をノズルでスプレー状に散布した場合に、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、何も含んでいない水と比較すれば、粒子数で換算すると2倍から3倍の粒子数が確認されている。微小気泡13を含んだ熱水は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器60で熱水が蒸気となる場合に、少なくとも蒸気量が1割から2割増大することが確認されている。
【0028】
マイクロバブルを乱流境界層中に注入することにより、壁面の摩擦抵抗を低減する事も可能である。このため、管内の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そして、加圧給水ポンプ41や低圧循環ポンプ42の負担が少なくなる。
また、微小気泡13は、空気と水の気液界面14では静電摩擦が起こることにより、静電気により気液界面14を境にして水側に正の電位16が、空気側には負の電位15が発生し気液界面14に生じた負の電位15による静電摩擦の力により、液体中の不純物を集めながら移送される。これにより、移送路内の浄化効果もあり、更に圧力損出の低減を行うことが可能である。
【0029】
また、微小気泡13の生成方法には他にも考えられ、衝撃波や超音波やベンチュリー管を使用して圧壊を起こす方法、キャビテーションによる方法、剪断、電気分解や加圧溶解による方法等が考えられる。
【0030】
次に、熱交換器50を説明すると、地表Fから地中深部にある熱源となる地熱帯Sまで熱交換器50が埋設されている。熱交換器50は、外側に円筒状の加圧水注入管51が設けられ、その加圧水注入管51の周囲は地表Fから地熱帯S付近までは地熱セメントによって固められている。加圧水注入管51の内側には地熱帯Sで熱せられた水を移送する円筒状の液体取出管52が設けられている。加圧水注入管51は、スチールやステンレス等の素材で形成されており、温度の高い地熱帯Sの領域では、外周は地熱帯Sの熱が伝わりやすいように、フィン等が取り付けられている。
また、加圧水注入管51の外周は、耐腐食性や伝熱性を向上させるためにアルミやアルミと鉛を混合した材料で溶射加工が施されている。加圧水注入管51は、地表Fに近い温度の低い領域では、循環サービスタンク30から加圧された温水の熱が奪われないように断熱材や空気層を設けた断熱構造がとられている。
図1に示すように加圧水注入管51の最深部は、圧力損失が生じないように断面弧状に形成され、加圧された水がスムーズに液体取出管52へ移送される。
【0031】
液体取出管52は、地熱帯Sで熱せられた熱水を地上まで移送するために円筒状の管が、加圧水注入管51の内部に設けられている。液体取出管52は、ステンレス等の素材で形成されており最深部は、圧力損失が生じないように図示しない一部分が欠き切られた形状に形成され、加圧された水がスムーズに上昇する。
【0032】
液体取出管52から取り出された熱水は、加圧された状態で蒸気発生器60まで到達する。蒸気発生器60では、加圧された熱水が減圧沸騰され、蒸気が発生する。通常、蒸気発生器60で熱水から蒸気として取得できる蒸気の重量割合は30%であり、70%は温水として戻される。しかしながら、微小気泡13を含んだ状態では、付加的な発泡核数及び気液界面の増大により蒸気の重量割合は40%まで向上している。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかる地熱発電装置110が
図4に示されている。
図4は、第2実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置110の構成を示す概要図である。第1実施形態と同様の構成を示す箇所は、第1実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第1実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0034】
第2実施形態にかかる地熱発電装置110は、大別すると微小気泡生成装置120、循環サービスタンク30、熱交換器50、蒸気発生器160、フラッシャー70、蒸気タービン80、復水器90、加圧給水ポンプ41、低圧循環ポンプ42で構成されている。
【0035】
第1実施形態と異なる点のみ説明すると、蒸気発生器160に微小気泡生成装置120が設けられている。微小気泡生成装置120は、
図3(A)及び
図4に示すように、動力部24と、微小気泡13を排出するノズル部としての微小気泡生成ノズル21aとに分離されて設けられている。
【0036】
微小気泡生成装置120は、加圧給水ポンプ41で加圧した熱水を圧力注入管23aで微小気泡生成ノズル21aに供給し、動力部24の図示しないエアコンプレッサーで気体注入管22aを介して空気を微小気泡生成ノズル21aに供給している。微小気泡生成ノズル21aは、空気と共に熱水を排出するためのノズル25aが設けられている。微小気泡生成ノズル21aの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル21aの中に挿入された球状体27が嵌め込まれている。その球状体27の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル21aの周上に穿設された小孔29が設けられている。小孔29の外側には、エアコンプレッサーと連通している空気室26が設けられている。
【0037】
そして、蒸気発生器160は、熱水を減圧沸騰させて蒸気を生成するが、蒸気を発生させるノズルが微小気泡生成ノズル21aで構成されており、微小気泡13を発生させながら蒸気としているため、微小気泡13を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器160で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかる地熱発電装置210が
図3(B)、
図5及び
図6に示されている。
図3(B)は、第3実施形態にかかる微小気泡生成ノズル21bの構成を表す概要図である。
図5は、第3実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置210の構成を示す概要図である。
図6は、第3実施形態にかかる熱交換器50の上方部分における液体取出管52と微小気泡生成ノズル21bを示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成を示す箇所は、第1実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第1実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0039】
第3実施形態にかかる地熱発電装置210は、大別すると微小気泡生成装置220、循環サービスタンク30、熱交換器250、蒸気発生器60、フラッシャー70、蒸気タービン80、復水器90、加圧給水ポンプ41、低圧循環ポンプ42で構成されている。
【0040】
第1実施形態と異なる点のみ説明すると、微小気泡生成装置220が熱交換器250に設けられている。熱交換器250は、地表F近くに微小気泡生成装置220を設けている。微小気泡生成装置220は、加圧給水ポンプ41に接続される圧力注入管23bを、液体取出管52と加圧水注入管51の間にあって、加圧水注入管51の内周に沿って反時計回りの螺旋状に設けている。これは、加圧された水を加圧水注入管51の内周に沿って注入することで螺旋を描きながら圧力損失を低減しながらスムーズに水が降下するように設けられている。
【0041】
微小気泡生成装置220は、
図5及び
図3(B)に示すように、気体注入管22bを介して空気を供給する動力部24に図示しないエアコンプレッサー等を備えている。また、加圧給水ポンプ41で加圧した水を圧力注入管23bで供給し、空気と共に排出するためのノズル25bが設けられている。
微小気泡生成ノズル21bは、微小気泡生成ノズル21bの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル21bの中に挿入された螺旋状の気泡カッター28が内蔵されている。その気泡カッター28の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル21bの周上に穿設された小孔29が設けられている。小孔29の外側には、空気室26が設けられている。そして、加圧した高圧水流を流すことで、動力部24の図示しないエアコンプレッサーで加圧された空気を伴って
図2に示すように微小気泡13が生成される。
【0042】
生成された微小気泡13は、加圧給水ポンプ41により、温水の中に溶存しながら熱交換器250の深部に移送された後、熱水となって蒸気発生器60に移送される。微小気泡13は、管内の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そのため、加圧給水ポンプ41や低圧循環ポンプ42の負担が少なくなる。微小気泡13を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器60で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0043】
(第4実施形態)
第4実施形態にかかる地熱発電装置310が
図7に示されている。
図7は、第4実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置310の構成を示す概要図である。第1実施形態と同様の構成を示す箇所は、第1実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第1実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0044】
第4実施形態にかかる地熱発電装置310は、大別すると微小気泡生成装置320、循環サービスタンク30、熱交換器50、蒸気発生器60、フラッシャー70、蒸気タービン80、復水器90、加圧給水ポンプ341、低圧循環ポンプ42で構成されている。
【0045】
第1実施形態と異なる点のみ説明すると、微小気泡生成装置320が加圧給水ポンプ341に接続されている。加圧給水ポンプ341は、空気を取り入れながら攪拌して
図2の微小気泡13を生成する構造となっている。
微小気泡生成装置320は、動力部24に図示しないエアコンプレッサーを搭載し、コンプレッサーで圧縮した空気を気体注入管22bを介して加圧給水ポンプ341に供給する。供給された空気は、加圧給水ポンプ341内の図示しない気泡カッターによって微小に形成される。加圧給水ポンプ341は、循環サービスタンク30からの水を加圧し、微小気泡13を溶存させて、熱水を熱交換器50に移送する。生成された微小気泡13は、加圧給水ポンプ341により、水の中に溶存しながら熱交換器50に移送された後、熱水となって蒸気発生器60に移送される。
【0046】
微小気泡13は、経路内の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能である。そのため、加圧給水ポンプ341や低圧循環ポンプ42の負担が少なくなる。微小気泡13を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器60で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0047】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図1及び
図2を参照して発電方法を説明すると、温度200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度まで達している。循環サービスタンク30の微小気泡13を含んだ水は、加圧給水ポンプ41により1.65Mpaに加圧され熱交換器50の加圧水注入管51に流量35.8t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。例えば、230℃の地熱帯Sまで移送された水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導性の良い加圧水注入管51から伝わり、最終的に200℃の熱水となる。そして、液体取出管52から取り出された温度190℃の熱水は、加圧給水ポンプ41により1.25Mpaに加圧され蒸気発生器60に移送される。
【0048】
蒸気発生器60で生成した蒸気は、配管61によって蒸気タービン80の高圧部に直接供給される。蒸気量が足りない場合は、蒸気発生器60で余った高温水をフラッシャー70で再度減圧沸騰させ、蒸気を発生させる。発生した蒸気は、配管71によって低圧部の蒸気タービン80へ供給される。
フラッシャー70に移送された温度162℃の熱水を、圧力0.65Mpaに減圧膨張させて蒸気流量2.14t/hの蒸気として蒸気タービン80に送り、蒸気タービン80の回転により発電される。この蒸気量により発電される発電量は102KWの出力が得られる。
【0049】
また、フラッシャー70から得られる温度157℃の還元水は、圧力0.57Mpaで循環サービスタンク30に移送され貯留される。蒸気タービン80からの温度103℃の蒸気は、復水器90で冷却水91によって再び温度80℃の温水へ凝縮される。この温水は、低圧循環ポンプ42によって圧力0.47Mpaで循環サービスタンク30へ移送される。
そして、循環サービスタンク30に貯留された温水は、微小気泡生成装置20で生成され微小気泡13を含み再び熱交換器50に加圧給水ポンプ41で送られる。これらシステムでは水を循環利用し、経路が閉塞型のシステムである。そのため、温泉水を汲み上げることなく発電が行われる環境に良いシステムである。
尚、この深度は地熱帯Sの熱源の温度に左右され、特に限定されるものではない。また、発電量も移送する熱水の量や温度を調整することで、1MW等やそれ以上の出力を得ることも可能である。
【0050】
(上記実施の形態から考えられるその他の技術的特徴)
微小気泡生成装置(220)は、螺旋状に形成し、液体を地熱帯へ移送する加圧水注入管(23b)を備えたことを特徴とする。このように構成することによって、加圧水注入管の内周に沿って液体(熱水)が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ(41)等の負担を少なくすることができる。
【0051】
微小気泡生成装置(220)は、加圧水注入管(23b)の螺旋に沿って微小気泡(13)を伴った液体(熱水)を排出するノズル(21b)を備えたことを特徴とする。このように構成することによって、加圧水注入管51の内周に沿って液体(熱水)が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、液体(熱水)が圧力損失なく移送され加圧給水ポンプ(41)等の負担を少なくすることができる。
【0052】
地熱発電装置(10・110・210・310)は、蒸気化するまでの間に微小気泡(13)を生成する微小気泡生成装置(20、120、220、320)を備え、前記微小気泡を溶存させた液体を蒸気化して発電することを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0053】
尚、上記実施の形態の中の微小気泡は、空気又は不活性ガス(窒素等)としても良く、窒素を使用することで安価であり、経路内の配管等の金属の酸化を防ぐことも可能である。また窒素は物性的に液体の流動抵抗を更に低減することが可能である。以上のことから、経路内の抵抗が少なくなり圧力損出の低減を行うことが可能であるため、加圧給水ポンプ341や低圧循環ポンプ42の負担が少なくなる。
【0054】
これら微小気泡13を生成する微小気泡生成装置(20、120、220、320)は、様々な個所に設置することが考えられる。また、必ずしもエアコンプレッサー等の別の動力を使用しなければならないわけではなく、加圧給水ポンプ41や低圧循環ポンプ42の圧力を利用し温水や熱水を送り込み、各装置間の配管内やバイパス経路の配管の途中にベンチュリー管等を設置して、空気を自吸により送り込んで温水や熱水の中に微小気泡13を生成することも可能である。
【0055】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上述した実施の形態で示すように、バイナリー発電や火力発電及び熱交換器等にも利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10・110・210・310…地熱発電装置、13…微小気泡、14…気液界面、
15…負の電荷、16…正の電荷、20・120・220・320…微小気泡生成装置、
21a・21b…微小気泡生成ノズル、22a・22b…気体注入管、
23a・23b…圧力注入管、24…動力部、25a・25b…ノズル、26…空気室、27…球状体、28…気泡カッター、29…小穴、
30・130・230…循環サービスタンク、31…液体搬送管、
41・341…加圧給水ポンプ、42…低圧循環ポンプ、50・250…熱交換器、
51…加圧水注入管、52…液体取出管、61・71…配管、
60・160…蒸気発生器、70…フラッシャー、80…蒸気タービン、
81…発電モータ、82…受電設備、90…復水器、91…冷却水、F…表面、S…地熱帯。