(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526432
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】廃熱回収装置
(51)【国際特許分類】
F01K 23/06 20060101AFI20190527BHJP
F02G 5/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
F01K23/06 P
F02G5/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-23460(P2015-23460)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-145560(P2016-145560A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】中村 正明
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−207806(JP,A)
【文献】
特開昭58−140409(JP,A)
【文献】
特開2008−309467(JP,A)
【文献】
特開2014−134309(JP,A)
【文献】
特開昭58−008210(JP,A)
【文献】
特開平11−002106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/06,23/10,25/10
F02G 5/00− 5/04
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が循環されるランキンサイクル装置を備える廃熱回収装置であって、
前記ランキンサイクル装置は、
前記作動流体が流入されて動力を出力する膨張機と、
前記膨張機の下流に設けられ、前記作動流体の気相と液相とを分離する気液分離機と、
前記膨張機の上流に設けられ、前記気液分離機で分離した前記作動流体の前記気相を前記膨張機の上流に導くエジェクタと、
前記作動流体を冷却する熱交換器と、を有し、
前記気液分離機は、前記膨張機と前記熱交換器との間に設けられている、廃熱回収装置。
【請求項2】
前記膨張機と前記気液分離機との間には、前記作動流体を冷却する熱交換器が設けられていない、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記ランキンサイクル装置は、前記作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器を有し、
前記エジェクタは、前記蒸発器の下流側において流路を介することなく前記蒸発器と一体に形成されている、請求項1又は2に記載の廃熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収装置に関し、特にランキンサイクル装置を備える廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランキンサイクル装置を備える廃熱回収装置に関する技術として、例えば特許文献1に記載された廃熱回収装置が知られている。特許文献1に記載された廃熱回収装置は、蒸発器及び膨張機を有するランキンサイクル装置と、蒸発器及び膨張機の間に設けられた気液分離機とを備えている。この廃熱回収装置では、気液分離機で作動流体の液相と気相とを分離し、当該液相の熱を利用して蒸発器に向かう作動流体を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2010/137360号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年の廃熱回収装置としては、例えばエンジンにおける燃費低減を図るため、膨張機から流出する作動流体が有するエネルギを有効に利用し、廃熱回収効率を更に向上させ得るものが求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、廃熱回収効率を向上できる廃熱回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る廃熱回収装置は、作動流体が循環されるランキンサイクル装置を備える廃熱回収装置であって、ランキンサイクル装置は、作動流体が流入されて動力を出力する膨張機と、膨張機の下流に設けられ、作動流体の気相と液相とを分離する気液分離機と、膨張機の上流に設けられ、気液分離機で分離した作動流体の気相を膨張機の上流に導くエジェクタと、を有する。
【0007】
この廃熱回収装置では、膨張機から流出した作動流体の気相は、気液分離機により分離されてエジェクタにより膨張機の上流に導かれ、再度膨張機に流入される。これにより、膨張機における作動流体の気相の流量を増すことができ、膨張機から流出する作動流体のエネルギを有効に利用することができる。よって、廃熱回収効率を向上することが可能となる。
【0008】
また、ランキンサイクル装置は、作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器を有し、気液分離機は、膨張機と凝縮器との間に設けられていてもよい。この場合、凝縮器には、気液分離機により分離された作動流体の液相が流入するため、凝縮器において凝縮に係る放熱量が低減される。その結果、凝縮器の小型化が見込まれる。
【0009】
また、ランキンサイクル装置は、作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器を有し、エジェクタは、蒸発器の下流側において蒸発器と一体に形成されていてもよい。蒸発器とエジェクタとが別体の場合、蒸発器の下流側とエジェクタとのそれぞれが作動流体の圧力損失箇所となり得るが、蒸発器の下流側でエジェクタが一体に形成されていると、当該圧力損失箇所が減ることになるため、作動流体の圧力損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃熱回収効率を向上できる廃熱回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る廃熱回収装置を示す概略ブロック図である。
【
図2】第2の実施形態に係る廃熱回収装置を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一側面に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る廃熱回収装置を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る廃熱回収装置1は、ランキンサイクル装置10を備え、例えば車両に搭載される。適用される車両としては、例えばトラックやバス等の商用車が挙げられる。なお、車両としては、特に限定されるものではなく、例えば大型車両や中型車両、普通乗用車、小型車両又は軽車両等の何れであってもよい。
【0014】
ランキンサイクル装置10は、例えばエンジン20の廃熱を入熱として、当該廃熱に係る熱エネルギを動力に変換して出力する。ランキンサイクル装置10は、その流路17において、作動流体ポンプ11と、蒸発器12と、膨張機14と、凝縮器16と、を有している。ランキンサイクル装置10の流路17は、第1流路17a〜第7流路17gを含み、流路17には、作動流体Mが循環される。作動流体Mとしては、種々のものを用いることができ、ここでは、低沸点媒体であるR134aが用いられる。
【0015】
作動流体ポンプ11は、流路17上において作動流体Mを送出(圧送)して循環させるポンプである。作動流体ポンプ11は、作動流体Mを圧縮すると共に、当該作動流体Mを流路17における下流側の第1流路17aに送出する。
【0016】
蒸発器12は、第1流路17aの下流側に設けられ、作動流体ポンプ11で圧縮された作動流体Mを加熱して蒸発させる熱交換器である。蒸発器12には、エンジン20の冷却水Wが流通される。蒸発器12は、冷却水Wを介して入熱されたエンジン20の廃熱により作動流体Mを加熱する。蒸発器12は、蒸発させた作動流体Mを流路17における下流側の第2流路17bに流出する。
【0017】
エジェクタ13は、第2流路17bの下流側に設けられ、膨張機14の上流に設けられている。エジェクタ13は、絞り部13aと、吸引部13bと、膨張部13cと、を有する。絞り部13aは、第2流路17bの下流側と接続されており、流路17における下流側に向かって先細りとなるノズル状部材である。吸引部13bは、絞り部13a及び膨張部13cの境界部に配置されており、膨張部13cと気液分離機15とを第5流路17eを介して接続する。膨張部13cは、流路17の下流側に向かって末広がりとされた略円錐形状を呈している。膨張部13cは、第3流路17cの上流側と接続されている。エジェクタ13は、蒸発器12で蒸発した作動流体Mの気相と、気液分離機15から導かれた作動流体Mの気相とを、流路17における下流側の第3流路17cに流出する(詳しくは後述)。
【0018】
膨張機14は、第3流路17cの下流側に設けられている。膨張機14は、流入された作動流体Mが膨張することで回転され、動力を出力する。膨張機14としては、例えばタービン等が用いられる。膨張機14は、例えば機械出力を出力してもよく、例えば発電機が接続されて電気出力を出力してもよい。膨張機14は、膨張した作動流体Mを流路17における下流側の第4流路17dに流出する。
【0019】
気液分離機15は、第4流路17dの下流(膨張機14の下流)に設けられ、膨張機14から流出した作動流体Mが流入される。気液分離機15は、膨張機14を流出した作動流体Mの気相と液相とを分離する。気液分離機15としては、例えば、遠心力で作動流体Mの液相が分離される遠心式のものを採用することができる。気液分離機15は、分離した作動流体Mの気相を第5流路17eに流出する。また、気液分離機15は、膨張機14と凝縮器16との間に設けられており、分離した作動流体Mの液相を第6流路17fに流出する。
【0020】
凝縮器16は、第6流路17fの下流側に設けられ、作動流体Mを冷却して凝縮(液化)させる熱交換器である。凝縮器16は、低温熱源(図示せず)により冷却される。低温熱源は、例えばサブラジエータが含まれ、車両が走行する際の走行風により凝縮器16を冷却する。凝縮器16は、凝縮させた作動流体Mを流路17における下流側の第7流路17gに流出する。
【0021】
エンジン20は、例えば水冷式ディーゼルエンジン等の内燃機関であり、EGRクーラ21と、冷却水流路22と、ラジエータ23と、を有している。EGRクーラ21は、EGR[Exhaust Gas Recirculation]ガスを冷却するための熱交換器である。冷却水流路22は、エンジン20の冷却水Wが流通される流路である。冷却水流路22では、例えば、エンジン20のシリンダヘッド内部及びシリンダブロック等に冷却水Wが流通されてエンジン20が冷却されると共に、EGRクーラ21に冷却水Wが流通されてEGRクーラ21が冷却される。冷却水流路22は、ラジエータ23に接続されている。ラジエータ23は、エンジン20及びEGRクーラ21を冷却した冷却水Wを、例えば走行風との熱交換により冷却する。
【0022】
以上のように構成された廃熱回収装置1では、エジェクタ13において、蒸発器12からの作動流体Mが絞り部13aを通過することで生じる当該作動流体Mの圧力低下を利用して、気液分離機15で分離された作動流体Mの気相が膨張機14の上流に導かれる。
【0023】
具体的には、蒸発器12で蒸発した作動流体M(作動流体Mの気相)は、絞り部13aに流入し通過する。絞り部13aを通過した作動流体Mは、膨張部13cにおいて膨張するため、膨張部13cにおける作動流体Mの圧力が低下する。よって、膨張部13cにおける作動流体Mの圧力は、気液分離機15側(第5流路17e側)の作動流体Mの圧力よりも低くなる。その結果、気液分離機15で分離された作動流体Mの気相は、第5流路17eを介して当該圧力差でもって吸引部13bに導かれ、エジェクタ13の膨張部13cに導入される。
【0024】
膨張機14には、蒸発器12で蒸発した作動流体Mと、エジェクタ13により気液分離機15から導かれた作動流体Mの気相とが流入される。その結果、膨張機14における作動流体Mの流量が増加されると共に、膨張機14から流出後の作動流体Mのうち、液相よりもエネルギが高い気相が膨張機14に再度流入する。
【0025】
他方、凝縮器16には、気液分離機15で分離された作動流体Mの液相が流入する。具体的には、気液分離機15が膨張機14と凝縮器16との間に設けられているため、凝縮器16には、膨張機14から流出後の作動流体Mのうち、気相よりもエネルギが低い液相が流入する。その結果、凝縮器16において凝縮に係る放熱量(必要放熱量)が低減されると共に、作動流体Mの気相と液相とが混在している場合と比較して凝縮器16における作動流体Mの熱容量が増大し、凝縮器16の熱交換効率が向上する。
【0026】
以上、第1の実施形態に係る廃熱回収装置1によれば、膨張機14から流出した作動流体Mは、気液分離機15により液相と気相とに分離される。分離された作動流体Mの気相は、エジェクタ13により膨張機14の上流に導かれ、再度膨張機14に流入される。これにより、膨張機14における作動流体Mの流量を増すことができ、膨張機14から流出する作動流体Mの廃熱をそのまま利用することができる。このように、膨張機14から流出する作動流体Mが有するエネルギを有効に利用でき、廃熱回収効率(システム効率)を向上することが可能となる。
【0027】
また、ランキンサイクル装置10は、作動流体Mを冷却して凝縮させる凝縮器16を有し、気液分離機15は、膨張機14と凝縮器16との間に設けられている。この場合、凝縮器16には、気液分離機15により分離された作動流体Mの液相が流入するため、凝縮器16において凝縮に係る放熱量が低減される。その結果、凝縮器16の小型化が見込まれる。
(第2の実施形態)
【0028】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る廃熱回収装置1Aは、エジェクタ13が蒸発器12の下流側において蒸発器12と一体に形成されている点以外は、基本的に第1の実施形態と同様である。以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみを説明し、第1の実施形態と同様の説明を省略する。
【0029】
図2は、第2の実施形態に係る廃熱回収装置を示す概略ブロック図である。
図2に示すように、エジェクタ13は、蒸発器12の下流側において蒸発器12と一体に形成されている。エジェクタ13は、絞り部13dと、吸引部13bと、膨張部13cと、を有する。吸引部13b及び膨張部13cは、第1の実施形態と同様に構成されている。
【0030】
絞り部13dは、流路17における下流側に向かって先細りとなるノズル状部材であり、第2流路17bを介することなく蒸発器12の下流側の出口部と接続されている。絞り部13dは、例えば蒸発器12の下流側の出口部を流路17における下流側に向かって先細りとなるように形成することにより、蒸発器12と一体に形成することができる。
【0031】
ところで、一般的に、蒸発器12とエジェクタ13とが別体で設けられる場合、蒸発器12の下流側の出口部で絞られると共に、エジェクタ13の絞り部13aで絞られ、すなわち、蒸発器12の下流側及びエジェクタ13の両方において、作動流体Mの流路17に断面積変化が生じる。よって、蒸発器12の下流側及びエジェクタ13の絞り部13aは、作動流体Mの圧力損失が大きい圧力損失箇所となり得る。この点、第2の実施形態では、エジェクタ13が蒸発器12の下流側で蒸発器12と一体に形成されていることから、作動流体Mの流路17に断面積変化が生じる当該圧力損失箇所を一箇所にまとめることができる。よって、当該圧力損失箇所が減ることになるため、作動流体Mの圧力損失を抑制することができる。
【0032】
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0033】
例えば、上記実施形態では、エンジン20の一例としてディーゼルエンジンを用いて説明したが、ガソリンエンジン等のエンジンでもよい。
【0034】
また、絞り部13a(13d)と、吸引部13bと、膨張部13cと、を有するエジェクタ13を例示したが、エジェクタ13は、これに限定されるものではない。膨張機14の上流に設けられ、気液分離機15で分離した作動流体Mの気相を膨張機14の上流に導くものであれば、種々のエジェクタを用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1,1A…廃熱回収装置、10…ランキンサイクル装置、12…蒸発器、13…エジェクタ、14…膨張機、15…気液分離機、16…凝縮器、M…作動流体。