(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526464
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】回転式鳥害防止器
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20190527BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20190527BHJP
【FI】
H02G7/00
A01M29/32
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-77394(P2015-77394)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197967(P2016-197967A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000163408
【氏名又は名称】近畿電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】今関 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 睦
(72)【発明者】
【氏名】高川 智啓
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 賢一
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−186376(JP,U)
【文献】
特開2013−143899(JP,A)
【文献】
特開2006−020557(JP,A)
【文献】
実開平03−059507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
A01M 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐留防止用回転体と、前記駐留防止用回転体を回転自在に支持する支持用具とからなり、
前記支持用具は複数の環状支持部材の間に棒状体を設けることにより該環状支持部材が所定間隔で配設され、
前記各環状支持部材は外周縁に前記駐留防止用回転体が回転自在に支持されるレール部が形成されたプラスチック製の一対の半円弧状部材からなり、
一方の半円弧状部材の内周縁に開角度が90度のV字形受承部を一体に成形し、
他方の半円弧状部材には前記V字形受承部と相対する平面部と該平面部の両側に形成され該V字形受承部の各々の面と平行な斜面部とからなる凸形圧着部を設けると共に、前記凸形圧着部の両側に該半円弧状部材の両端部の内周縁と連なる湾曲腕状の高弾性部を設け、これら凸形圧着部と高弾性部を一体に成形すると共に、該半円弧状部材の内周面から前記凸形圧着部と前記高弾性部の背面に亘って一連に補強リブを一体成形し、
この一対の半円弧状部材を環状に合着することにより前記V字形受承部と前記凸形圧着部とにより横断面L字形のアングル材を弾性的に挟着して取り付けられるようにしたことを特徴とする回転式鳥害防止器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔、その他の建築物を構成する横断面L字形のアングル材に取り付けられ、カラスやムクドリ、その他の野鳥が駐留するのを防ぐ回転式鳥害防止器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、電線等の架空線に回転自在に設けることにより、野鳥が架空線に駐留できないようにし、野鳥の糞や営巣等の鳥害を防止しようとする回転式鳥害防止器を示すものである。
また、特許文献3に示された鳥類の駐留防止器は、内側支持体の外周に外側支持体が回転自在に設けられ、該内側支持体の内周に多数の切目が放射状に形成された薄板状の弾性係合片を形成し、該弾性係合片を係合させることで、該内側支持体を架空線の短い部分や曲線状に張られた部分にも取り付けられるように構成したものである。
また、特許文献4に示された架空ケーブル用回転式鳥害防止器は、架空ケーブルを包囲するように弾性プラスチック製のパイプを設け、該パイプの外周に回転体を回転自在に設けてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−77529号公報
【特許文献2】特公平5−68125号公報
【特許文献3】特許第4892325号公報
【特許文献4】特許第4241519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、野鳥の糞、或いは営巣等の鳥害は、電線等の架空線にとどまらず、鉄塔、その他の建築物の場合も同じであるが、例えば鉄塔を構成する横断面L字形のアングル材に上記引用文献1,2等に示された従来の回転式鳥害防止器を取着したとすると、アングル材との摩擦抵抗が大きくなるので、野鳥が止まってもスムーズに回転しないという問題があるとともに、斜めに張られたようなアングル材では回転式鳥害防止器が自重によって下方にずれてしまうので、所要位置に固定できないという問題がある。
【0005】
また、特許文献3に示された駐留防止器であっても、アングル材の表面に薄板状の弾性係合片が弾性で係合するだけであるので、該弾性係合片に対する負荷が大きく、該弾性係合片が短期間で変形し易いとともに、プラスチック材で成形された弾性係合片は紫外線によって短期間で弾性劣化することから、固定がルーズになり易いという問題がある。
また、特許文献4に示された架空ケーブル用回転式鳥害防止器は、架空ケーブルに回転式鳥害防止器を取り付けられるよう構成されているものの、架空ケーブルとは断面形状が全く異なる横断面L字形のアングル材に回転式鳥害防止器を取り付けることはできないものであった。
さらに、鉄塔等を構成する横断面L字形のアングル材の幅寸法や厚さ等は一定ではないので、しっかり固定できるようにするために従来ではその幅寸法や厚さに合わせて個々に弾性係合片を設計する必要があり、このために製造コストが高くなるという問題がある。
そこで本発明は、横断面L字形のアングル材からなる鉄塔等の建築物にも簡単にして強固に取り付けられる回転式鳥害防止器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明に係る回転式鳥害防止器は、駐留防止用回転体と、該駐留防止用回転体を回転自在に支持する支持用具とからなり、該支持用具は複数の環状支持部材の間に棒状体を設けることにより該環状支持部材が所定間隔で配設され、該各環状支持部材は外周縁に前記駐留防止用回転体が回転自在に支持されるレール部が形成された一対の半円弧状部材からなり、一方の半円弧状部材の内周縁に開角度が90度のV字形受承部を一体に成形し、他方の半円弧状部材には前記V字形受承部と相対する凸形圧着部を両側に該半円弧状部材の両端部の内周縁と連なる湾曲腕状の高弾性部を設けることにより一体に成形し、この一対の半円弧状部材を環状に合着することにより前記V字形受承部と前記凸形圧着部とにより横断面L字形のアングル材を弾性的に挟着して取り付けられるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る回転式鳥害防止器は、横断面L字形のアングル材からなる鉄塔等の建築物に簡単に取り付けられるとともに、長期に亘りずれないように取り付けられる。また、アングル材の幅寸法や厚さ等に多少の差異があっても問題なく取り付けられるので、コストが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る回転式鳥害防止器の支持用具の斜視図。
【
図2】本発明に係る回転式鳥害防止器の支持用具の側面図。
【
図4】本発明に係る回転式鳥害防止器の駐留防止用回転体の斜視図。
【
図5】本発明に係る回転式鳥害防止器の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る回転式鳥害防止器は、
図1に示した支持用具1に
図4に示した駐留防止用回転体40を回転自在に支持することにより構成されるが、先ずこの支持用具1の構造を説明する。支持用具1は、環状支持部材1aと環状支持部材1bとが所定間隔離れるように、該環状支持部材1a,1bの間に棒状体3a,3bを設けてなる。該各環状支持部材1a,1bは、一対のプラスチック製の半円弧状部材10と半円弧状部材20とを、
図3に2点鎖線で示したように、開閉自在に連結してなり、該半円弧状部材10および半円弧状部材20の外周縁に駐留防止用回転体40を回転自在に支持するための凹溝状のレール部11,21が一体に成形される。半円弧状部材10と半円弧状部材20の連結構造は、半円弧状部材10の一端部の両側面に連結片12を一体に成形し、該連結片12の先端部に透孔13を開設するとともに、半円弧状部材20の一端部の両側面に突起22を突設し、該突起22を前記透孔13に遊嵌し、半円弧状部材10と半円弧状部材20とを該突起22を支点として開閉可能に連結している。一方、半円弧状部材10の他端部の一側面に係合片14を成形し、該係合片14に係合孔15を形成し、半円弧状部材20の他端部の一側面に突起23を突設し、該突起23が前記係合孔15に遊嵌し得るようにするとともに、該半円弧状部材10の他端部の他側面に突設した支軸16にフック状摘子部材18を回転操作可能なるように設け、半円弧状部材20の他端部の一側面に突起24を突設し、該突起24に前記フック状摘子部材18を係合し得るようにしている。
【0010】
また、一方の半円弧状部材10の内周縁に一対の斜片材17a,17bを隣接状に一体に成形することにより、
図3における下方に向けての開角度αが90度なるようなV字形受承部17を一体に成形する。また、他方の半円弧状部材20に前記V字形受承部17と相対する斜面部25a,25bを有した凸形圧着部25を一体に成形する。なお、両斜面部25a,25bの間は平面部25cが形成される。該凸形圧着部25は両側に該半円弧状部材20の両端部の内周縁と連なる湾曲腕状の高弾性部26a,26bを設けることにより該半円弧状部材20に一体に成形される。なお、半円弧状部材10の内周面から前記V字形受承部17の背面に亘って一体に一連に補強リブ19が成形され、半円弧状部材20の内周面から前記凸形圧着部25および高弾性部26a,26bの背面に亘って一体に一連に補強リブ27が成形され、これらの補強リブ19,27を成形することで、V字形受承部17および高弾性部26a,26bの剛性および強度を強くしている。
【0011】
また、半円弧状部材10の内周面に位置する該補強リブ27の一部に一体に中空筒状の軸受部28aを形成するとともに、前記凸形圧着部25の内周面に位置する該補強リブ27の一部にも中空筒状の軸受部28bを一体に形成している。そして該軸受部28a,28bに前記棒状体3a,3bの両端部を嵌合し、該嵌合部に適宜接着材を塗布することにより、該棒状体3a,3bの両端部を該軸受部28a,28bに固着する。このように環状支持部材1aと環状支持部材1bとの間に2本の棒状体3a,3bを介在させることにより、該環状支持部材1aと環状支持部材1bとは所定間隔離れて配置される。なお、該棒状体3a,3bは、複数本のグラスファイバーからなる棒材の外周に樹脂被覆を施すことにより、軽量で高剛性なるように形成したものであるが、この棒状体としては、金属棒等、他の材料で成形したものでもよい。
【0012】
そして、上記半円弧状部材10と半円弧状部材20とは、前記係合孔15に突起23を係合し、フック状摘子部材18を突起24に係合することにより環状に合着される。この合着時に前記V字形受承部17と前記凸形圧着部25とにより、
図5,
図6に示し、
図2に2点鎖線で示したように、鉄塔等の建築物を構成する横断面L字形のアングル材30を弾性的に挟着する。これによって本発明に係る支持用具1はアングル材30に対し不動に固定することができる。
【0013】
こうしてアングル材30に固定した支持用具1の外周に、
図4に示した駐留防止用回転体40が回転自在に設けられる。この駐留防止用回転体40は、複数本の棒状体41の両端部に半円弧状の分割リング42,43が設けられ、該分割リング42,43は開閉可能なるように一端の連結部44にて連結され、一方の分割リング42の一端部に設けられたフック状摘子部材45を他端部に形成された突起46に係合し得るようにしている。該分割リング42,43は内周縁が前記レール部11,21に遊嵌し得るように内径寸法が設定され、
図5,
図6に示したように、予めアングル材30に固定した支持用具1のレール部11,21に該分割リング42,43の内周縁を遊嵌させ、フック状摘子部材45を突起46に係合することにより該分割リング42,43をリング状に合着させる。これにより、該駐留防止用回転体40が支持用具1の外周に回転自在に支持される。そこで、前記棒状体41に野鳥が止まると、その野鳥の重みによって該駐留防止用回転体40が回転する。このため野鳥が駐留することが防止される。
なお、
図4中、47は分割リング42,43の内周部の両面に形成された半球状突起で、該駐留防止用回転体40が回転する際に該半球状突起47がレール部11,21の内面に摺接し得ることにより摩擦が軽減され、該駐留防止用回転体40が野鳥の重みによって常に軽く回転し得るようにしている。
【0014】
この実施形態では、半円弧状部材10と半円弧状部材20の外周に凹溝状のレール部11,21を形成したが、半円弧状部材10と半円弧状部材20の外周を凹溝状にしなくても単なる板状の外周縁からなるレール部とする一方、駐留防止用回転体の内周縁を凹溝状に形成し、該半円弧状部材10,20の外周縁を駐留防止用回転体の凹溝状内周縁に遊嵌させるようにしてもよい。
またこの実施形態では、棒状体41に野鳥を止まらせる構成の駐留防止用回転体40を示したが、棒状体41に代えてワイヤを張設した駐留防止用回転体であってもよい。即ち、適宜間隔を離して設けた一対のリング間にワイヤを張設し、該ワイヤに野鳥を止まらせるように構成してもよい。
【0015】
また、この実施形態に示した支持用具1では、2つの環状支持部材1a,1bを棒状体3a,3bにより連結した例を示したが、必要に応じてさらに多数の環状支持部材を連結させてもよい。即ち、棒状体を間に設けることにより2コ以上の環状支持部材をアングル材の長手方向に連結させ、該支持用具上に回転自在に駐留防止用回転体を設けることもできる。
なお、この実施形態に示した支持用具1では、半円弧状部材20とは別体の棒状体3a,3bを一対の該半円弧状部材20間に設けたが、一対の半円弧状部材20と棒状体とをプラスチックにより一体に成形してもよい。
いずれにしてもこの支持用具では、棒状体を設けたことで両環状支持部材間の距離が一定に保持されるので、この支持用具の上記両レール部11,21に上記駐留防止用回転体40の両分割リング42,43を遊嵌させ易くなる。支持用具に対する駐留防止用回転体の取付が容易になり、鉄塔上など作業環境が厳しい高所作業であっても短時間で取付作業を終わらせることができる。
【0016】
また、本発明に係る回転式鳥害防止器の支持用具1は、開角度が90度のV字形受承部17と凸形圧着部25とにより横断面L字形のアングル材30を挟着し、該凸形圧着部25は両側の湾曲腕状の高弾性部26a,26bによって他方の半円弧状部材20の内周縁と連なっているので、半円弧状部材10と半円弧状部材20とを合着したとき、該凸形圧着部25は該高弾性部26a,26bの弾性によって強い力でしかも金属製の板バネのような優れた弾力性をもって該アングル材30を挟着し得る。このような作用は特に高弾性部26a,26bが湾曲腕状に形成されていることに起因する。このため、該アングル材30の厚さや幅などに若干の差異があったとしても該アングル材30を常に強固に挟着し、長期間に亘りずれたりすることなく固定し得る。例えば、アングル材を構成する鋼材の厚さには4mm〜6mmのものが一般に多用されているが、本発明に係る支持用具はこれらいずれのアングル材にも強固に固定し得る。また、鉄塔を構成するアングル材のように斜めに張られたアングル材に対し該支持用具を固定した場合でも自重等によりずれることなく長期間に亘って不動に固定され、鳥害を防止し得る。
【符号の説明】
【0017】
1 支持用具
1a,1b 環状支持部材
3a,3b 棒状体
10 半円弧状部材
11 レール部
17 V字形受承部
20 半円弧状部材
21 レール部
25 凸形圧着部
26a,26b 高弾性部
27 補強リブ
28a,28b 軸受部
30 アングル材
40 駐留防止用回転体
α 開角度