特許第6526515号(P6526515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526515
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】堆肥製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/00 20060101AFI20190527BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20190527BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20190527BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20190527BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20190527BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20190527BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C05F17/00ZAB
   C05F11/00
   C05F3/00
   C05F7/00
   C02F11/00 C
   C02F11/02
   B09B3/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-153933(P2015-153933)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-31017(P2017-31017A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507342401
【氏名又は名称】共 放鳴
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】共 放鳴
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−342093(JP,A)
【文献】 特開平11−314987(JP,A)
【文献】 特開昭57−081893(JP,A)
【文献】 特開2002−060290(JP,A)
【文献】 特開2006−198566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
C09K 17/00− 17/52
C02F 11/00− 11/20
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物、下水汚泥、産業廃棄物汚泥のうち少なくとも1種類を含んだ原材料に、澱粉を主成分とする所定比率の土壌改良材を混入して攪拌する工程と、
下部に空気流入口、頂部に空気流出口を備え、ほぼ垂直方向に延び、少なくとも上端と下端が開放した少なくとも1本のパイプが内部に配置された容器に、前記攪拌された原材料を投入して発酵させる工程とを含み、
前記発酵させる工程において、前記空気流入口から流入した空気が、前記原材料の発酵による発熱により温められて前記容器内を上昇するとともに、前記パイプを通して前記容器内を上昇することにより、前記容器内において底部から頂部への空気流を形成して前記原材料の発酵を促進させることを特徴とする堆肥製造方法。
【請求項2】
家畜排泄物、下水汚泥、産業廃棄物汚泥のうち少なくとも1種類を含んだ原材料に、澱粉を主成分とする所定比率の土壌改良材を混入して攪拌する工程と、
底部においてほぼ水平方向に延び、周面に複数の孔を有する少なくとも1本の第1パイプと、ほぼ垂直方向に延び、少なくとも上端と下端が開放した少なくとも1本の第2パイプとが内部に配置された発酵室に、前記攪拌された原材料を投入して発酵させる工程とを含み、
前記発酵させる工程において、前記第1パイプを通して流入した空気が、前記原材料の発酵による発熱により温められて前記発酵室内を上昇するとともに、前記第2パイプを通して前記発酵室内を上昇することにより、前記発酵室内において底部から頂部への空気流を形成して前記原材料の発酵を促進させることを特徴とする堆肥製造方法。
【請求項3】
土壌改良材中の澱粉の含有量が、8重量%〜20重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載された堆肥製造方法。
【請求項4】
前記所定比率が、前記原材料に対して0.05重量%〜0.2重量%であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された堆肥製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、堆肥を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、二次汚染の防止を可能にする等の新規な特徴を備えた堆肥を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
堆肥は、化学肥料にない種々の特徴を持っているため、農作物の栽培に広く用いられており、堆肥を用いた有機栽培の農作物は、消費者にも人気がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、堆肥を用いて農作物を栽培すると、堆肥が水に溶解しやすいため、降雨時などに堆肥が流され、周囲の水質環境が汚染されたり施肥効果が減少したりする等の被害を生ずることがある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、水に溶解しにくく、水質環境を汚染するおそれの少なく、肥料の流出が少ない等の新規な特徴を備えた堆肥を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載された堆肥製造方法は、家畜排泄物、下水汚泥、産業廃棄物汚泥のうち少なくとも1種類を含んだ原材料に、澱粉を主成分とする所定比率の土壌改良材を混入して攪拌する工程と、下部に空気流入口、頂部に空気流出口を備え、ほぼ垂直方向に延び、少なくとも上端と下端が開放した少なくとも1本のパイプが内部に配置された容器に、前記攪拌された原材料を投入して発酵させる工程とを含み、前記発酵させる工程において、前記空気流入口から流入した空気が、前記原材料の発酵による発熱により温められて前記容器内を上昇するとともに、前記パイプを通して前記容器内を上昇することにより、前記容器内において底部から頂部への空気流を形成して前記原材料の発酵を促進させることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載された堆肥製造方法は、家畜排泄物、下水汚泥、産業廃棄物汚泥のうち少なくとも1種類を含んだ原材料に、澱粉を主成分とする所定比率の土壌改良材を混入して攪拌する工程と、底部においてほぼ水平方向に延び、周面に複数の孔を有する少なくとも1本の第1パイプと、ほぼ垂直方向に延び、少なくとも上端と下端が開放した少なくとも1本の第2パイプとが内部に配置された発酵室に、前記攪拌された原材料を投入して発酵させる工程とを含み、前記発酵させる工程において、前記第1パイプを通して流入した空気が、前記原材料の発酵による発熱により温められて前記発酵室内を上昇するとともに、前記第2パイプを通して前記発酵室内を上昇することにより、前記発酵室内において底部から頂部への空気流を形成して前記原材料の発酵を促進させることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載された堆肥製造方法は、前記請求項1又は2の方法において、土壌改良材中の澱粉の含有量が、8重量%〜20重量%であることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載された堆肥製造方法は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項の方法において、前記所定比率が、前記原材料に対して0.05重量%〜0.2重量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、水に溶けにくく、水質環境を汚染するおそれが少なく施肥効果も長期間維持できるとともに、ほぼ無臭の堆肥を製造することができる。また、本発明の方法では、原材料の通気性が高められるため、発酵工程において原材料を攪拌して曝気することなしに、比較的短期間(従来の製造方法と比較して1/6〜1/4の時間)で堆肥を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る堆肥製造方法の手順を示した模式図である。
図2】発酵に用いられる容器の一例を示した図である。
図3図2に示した容器内における発酵工程を説明するための模式図である。
図4】発酵に用いられる容器の別の例を示した図である。
図5図4の発酵容器に配置される通気用パイプの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る堆肥製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る堆肥製造方法の手順を示した模式図である。まず最初に、原材料を用意する。原材料としては、家畜排泄物(牛糞、豚糞、鶏糞など)、下水汚泥、産業廃棄物汚泥のうち少なくとも1種類が用いられる。したがって、たとえば、原材料として、牛糞のみを用いてもよい。
【0012】
次いで、原材料に、澱粉を主成分とする土壌改良材を混入して攪拌する。土壌改良材の混入量は好ましくは、原材料に対して0.05重量%〜0.2重量%である。なお、澱粉を主成分とする土壌改良材には、澱粉を直接混入したものの他、澱粉を加工したもの(たとえば、澱粉を変性してポリ化したもの)を混入したものも含まれる。
【0013】
土壌改良材中の澱粉の含有量は好ましくは、土壌改良材全体に対して8重量%〜20重量%である。土壌改良材の澱粉以外の成分としては、例えば石炭灰、ゼオライト等があげられる。また、原材料として家畜排泄物を使用する場合には、家畜排泄物の含水率が高い場合が多い。したがって、このような場合には、おが屑、廃キノコの菌床、稲罠の粉などの水分調整材を原材料に混入するのが好ましい。これにより、有機物が増量されるとともに、通気性と発酵性が高められる。
【0014】
澱粉を主成分とする土壌改良材を原材料に混入することにより、原材料の粒子が澱粉でコーティングされ、原材料の疎水性を高められる。これにより、製造される堆肥が水に溶けにくくなり、雨などによる堆肥の流出が少なくなるため、堆肥による二次汚染が少なくなるとともに、原材料からの臭気が遮断されるため、ほぼ無臭の堆肥が得られる。
【0015】
また、澱粉を主成分とする土壌改良材を原材料に混入することにより、原材料がいわゆる団粒構造になるため、原材料の空隙率が多くなって通気性が高められ、これにより好気性発酵がし易くなり、発酵期間が短縮される。
【0016】
次いで、以上のようにして得られた原材料を所定の容器に入れて発酵させる。
【0017】
図2は、発酵に用いられる容器の一例を示した図である。すなわち、図2に示される発酵容器10は、全体として円錐形の形状を有しており、下縁周囲に少なくとも1個の空気流入口12が設けられ、頂部に空気流出口14が設けられている。発酵容器10は、保温性材料(例えば、毛布、厚手の帆布)で形成されている。
【0018】
また、発酵容器10の内部には、ほぼ垂直方向に延びた少なくとも1本(図2では2本のパイプが図示されている)のパイプ16が配置されている。パイプ16は、少なくとも上端16aと下端16bが開放しており、好ましくは途中に貫通穴16cが設けられている。
【0019】
図3は、発酵容器10内における原材料の発酵状態を模式的に示した図である。空気流入口12から容器10内に空気が流入する。そして、発酵容器10内に入れられた原材料が発酵すると発熱し、発酵容器10内の空気が温められる。この際、発酵容器10が保温性材料で形成されているため、発酵容器10内の空気が冷えにくくなっている。温められた空気は体積が膨張して発酵容器10内を上昇し、流出口14から発酵容器10外に流出する。また、発酵容器10の底部よりも頂部の方が気圧が僅かに高いため、発酵容器10の底部から頂部に向けての空気の上昇が促される。さらに、パイプ16を通しても空気の上昇が促進される。このようにして、図3に示されるように、発酵容器10内において底部から頂部への空気流が形成されることにより、通気性の高い原材料の発酵が促進され、原材料を攪拌して曝気することなしに嫌気性発酵と好気性発酵の両方を行うので、比較的短期間で堆肥を製造することができる。
【0020】
図4は、発酵に用いられる容器の別の例を示した図である。図4に示される発酵容器20は、一方の側が開放した矩形の発酵室20aが隣接して複数基(図4では、3基)配列された形状を有しており、発酵室20aを構成する三方の壁20b、20cはコンクリートで形成されている(図4(a)参照)。
【0021】
各発酵室20aの内部には、図5(a)に示されるように、底部にほぼ水平方向に延びた少なくとも1本(図5(a)では2本が図示)の第1パイプ22aが配置され、第1パイプ22aの周面には複数の孔22a1が設けられている。また、1点に収斂するように上方に延びた第2パイプ22b(図5(a)では6本が図示)が配置されており、第2パイプ22bの上端22b1が発酵室20aの上方に開放している。以上の構成により、第1パイプ22aを介して原材料中に導入された空気は発酵に使用され、第2パイプ22bを介して発酵室20aの外部に排出される。すなわち、発酵容器20では、第1パイプ22aが容器10の空気流入口に相当し、第2パイプ22bの上端22b1が容器10の空気流出口に相当する。なお、通気用パイプ22a、22bの形状や本数は、例示的なものにすぎず、発酵室20aの下部から上部に向かう通気路が確保できるものであれば、他の形態を採用してもよい。たとえば、第2パイプ22bを1点に収斂するように配置するのではなく、図5(b)に示されるように、垂直に配置してもよい。或いは、原材料中に第2パイプ22bを配置する代わりに、原材料中に第2パイプ22bを突き刺した後に引き抜くことによって形成される空洞(図示せず)を通気路として使用してもよい。
【0022】
発酵容器20は、発酵容器10に比較して、大量の堆肥を製造するのに適している。発酵容器20を用いて堆肥を製造する際には、澱粉を主成分とする土壌改良材が混入された原材料を発酵室20aの開放した側から投入し(図4(b)参照)、発酵させる。その際、原材料の露出面を毛布などで被覆する(図4(c)参照)のがよい。
【0023】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0024】
例えば、前記実施形態では、円錐形の容器10や矩形の発酵室20aを備えた容器20が使用されているが、他の形状、例えば円筒形の容器を使用してもよい。また、容器10、20内に通気用パイプが配置されているが、原材料の量が少ない場合(例えば、数トン以下)には、これらのパイプを配置しなくともよい。
【0025】
さらに、容器10、20を準備する代わりに、山形に堆積させた原材料の表面を毛布などで被覆してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 発酵容器
12 空気流入口
14 空気流出口
16 パイプ
16a 上端
16b 下端
16c 貫通穴
20 発酵容器
22a、22b 通気用(第1、第2)パイプ
図1
図2
図3
図4
図5