(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526677
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】ポリオール複合溶液でガス中のSOxを除去する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20190527BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20190527BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20190527BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/50 260
B01D53/78ZAB
B01D53/96
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-539118(P2016-539118)
(86)(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公表番号】特表2017-500197(P2017-500197A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】CN2014092857
(87)【国際公開番号】WO2015085879
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年6月10日
【審判番号】不服2017-16336(P2017-16336/J1)
【審判請求日】2017年11月2日
(31)【優先権主張番号】201310682382.6
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511199756
【氏名又は名称】北京博源恒升高科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOYUAN−HENGSHENG HIGH−TECHNOLOGY CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】316013932
【氏名又は名称】江西永豊県博源実業有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】魏雄輝
(72)【発明者】
【氏名】鄒美華
(72)【発明者】
【氏名】王▲くん▼
(72)【発明者】
【氏名】陳力
(72)【発明者】
【氏名】李礼芳
(72)【発明者】
【氏名】孫勇
(72)【発明者】
【氏名】劉家旭
(72)【発明者】
【氏名】戸春
(72)【発明者】
【氏名】李祥斌
【合議体】
【審判長】
大橋 賢一
【審判官】
豊永 茂弘
【審判官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−109873(JP,A)
【文献】
特開昭50−80287(JP,A)
【文献】
特開昭59−112824(JP,A)
【文献】
特開昭62−197127(JP,A)
【文献】
特開2006−247651(JP,A)
【文献】
特公昭47−11328(JP,B1)
【文献】
米国特許第2031802(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14
B01D 53/50
B01D 53/78
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、有機酸及び/または有機酸塩との混合液により形成されたエステル化物質を含むポリオール複合溶液をSOx含有ガスと接触させることで、ガス中のSOx(ただし、x=2及び/又は3)を吸収させる、ガス中のSOxを除去する方法であって、
前記エステル化物質は、同一の有機分子において同時に2個以上のヒドロキシ基を含有する有機化合物であり、SOxを吸収したポリオール複合溶液を、加熱法、又は加熱法と、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法から選ばれる1種又は複数種との組合せの方法で再生し、再生温度が0〜300℃であり、再生過程で二酸化硫黄および/又は三酸化硫黄を放出し、再生後のポリオール複合溶液を循環利用する、ガス中のSOxを除去する方法。
【請求項2】
前記ポリオールは、プロパントリオール、ブタントリオール、イソブタントリオール、ペンタントリオール、ペンタンテトラオール、イソペンタントリオール、イソペンタンテトラオール、ポリプロパノール及びポリブタノールからなる群より選択される一種または多種であることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項3】
前記ポリオール複合溶液中に、さらに、エチレングリコール、またはポリエチレングリコール、またはエチレングリコールとポリエチレングリコールとの混合物を、適量に含有し、該エチレングリコール、またはポリエチレングリコール、またはエチレングリコールとポリエチレングリコールとの混合物の、ポリオール複合溶液中の質量含量が30%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項4】
前記有機酸は、有機モノカルボン酸及び有機ポリカルボン酸を含み、前記有機酸塩は、有機モノカルボン酸塩及び有機ポリカルボン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項5】
前記有機モノカルボン酸は、ぎ酸、酢酸、酪酸及び各種のアミノ酸からなる群より選択される一種または多種であり、前記有機ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、EDTA、タンニン酸及びクエン酸からなる群より選択される一種または多種であり、前記有機モノカルボン酸塩は、前記有機モノカルボン酸のカルボキシル基がアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び/または遷移金属イオンと結合してなるカルボン酸塩類からなる群より選択される一種または多種であり、前記有機ポリカルボン酸塩は、前記有機ポリカルボン酸の少なくとも一個のカルボキシル基がアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び/または遷移金属イオンと結合してなるカルボン酸塩類からなる群より選択される一種または多種であることを特徴とする、請求項4に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項6】
前記ポリオール複合溶液中の、ポリオールと有機酸及び/または有機酸塩との合計質量含量が50%以上であり、水の質量含量が50%未満であり、且つ、有機酸及び/または有機酸塩の、ポリオール複合溶液中の質量含量が30%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項7】
前記ポリオール複合溶液は、所定量の添加剤を含み、該添加剤が、有機アミン類、アルコールアミン類、アミド類、スルホン類、スルホキシド類及び金属有機化合物系物質からなる群より選択される一種または多種であり、前記添加剤の、前記ポリオール複合溶液中の質量含量が10%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項8】
前記ポリオール複合溶液が、常圧又は加圧の条件下でガス中のSOxを吸収し、吸収温度が−20〜80℃であることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【請求項9】
前記ガスが、煙道ガス、SOx含有廃ガス及び/又は工業用原料ガスであることを特徴とする、請求項1に記載のガス中のSOxを除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、煙道ガス、硫黄含有廃ガス及び/又は工業用原料ガスの浄化方法に関し、具体的に、煙道ガス、SOx含有廃ガス及び/又は工業用原料ガス中のSOx(x=2および/または3)を除去する方法に関する。
【0002】
背景技術
工業の迅速な発展によって、煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの消耗や排出量が日々増え続けている。硫黄含有廃ガスの排出は、深刻な環境汚染、例えば、酸性雨の形成、建築物の酸腐食、呼吸道疾患および皮膚病などを引き起こし、人々の健康に直接害を及ぼしている。数年来、世界中の科学者は、煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫技術に対して多くの研究を行い、たくさんの研究資料を蓄積してきた。環境意識の高まりにつれて、煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫問題が重視されつつある。しかしながら、今まで、煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫技術は、まだ飛躍的な進歩を遂げていない。煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫問題は、今でもチャレンジングな課題である。
【0003】
従来の煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫技術としては、主に湿式脱硫と乾式脱硫の二種類がある。具体的に、湿式脱硫としては、水洗浄法、石灰石と石灰水法、アルカリ金属溶液法、アルカリ溶液法、アンモニア法、およびアルコールアミン法などがあり、乾式脱硫としては、酸化鉄法、酸化亜鉛法、酸化マンガン法、酸化コバルト法、酸化クロム法、酸化モリブヂン法、および活性炭法などがある。中国では、主に水洗浄法、石灰石と石灰水法が用いられているが、先進国では、石灰石と石灰水法、アルカリ金属溶液法、アルカリ溶液法、アンモニア法、およびアルコールアミン法などがより多く用いられている。なかで、水洗浄法は、水の消費量が多く、かつ水を循環利用できず、硫黄含有廃水の排出が深刻な二次汚染を引き起こし、且つ脱硫効果にも劣っている。石灰石と石灰水法は、水洗浄法に比べ優れているが、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、および炭酸カルシウムなどの固形廃棄物が多く発生し、石灰石と酸化カルシウムの消費量が多く、設備が大型で、投資が多額であり、且つ、吸収プロセスにおいて既に固体沈殿物が発生するので、設備の詰まりを引き起こしやすい。更に、石灰石と水酸化カルシウムの水に対する溶解度が非常に小さいため、吸収の際に、水酸化カルシウムが、主に、二酸化炭素と優先的に反応し、その次に硫黄酸化物と反応するので、石灰水法は、脱硫効果も満足のいくものではなく、廃水排出量が多く、二次汚染が深刻である。アルカリ金属溶液法、アルカリ溶液法、アンモニア法およびアルコールアミン法などは、主に二酸化硫黄含有量が比較的に高い煙道ガス(例えば、製鋼、製銅などの精錬の排気ガスがあり、二酸化硫黄含有量が8%以上と高い)の脱硫に用いられ、そして二酸化硫黄を回収するが、これらの方法は、必要とする技術的な要求とヱネルギー消費が高く、設備材質への要求が厳しいので、一般の煙道ガスの脱硫に適さない。しかも、現在用いられている煙道ガス、硫黄含有工業用原料ガスおよびその他の廃ガスの脱硫方法は、何れも設備への腐食がかなりひどいものである。
【0004】
従来、各種のガスは大気に排出される前に、脱硫処理されることが少ないうえ、たとえ処理されたとしても、その含有量が比較的に高い。従来のHiPure法、Benfield法、G−V法、A.D.A法、水洗浄法、石灰石と石灰水法、アルカリ金属溶液法、アルカリ溶液法、アンモニア法、アルコールアミン法、タンニンエキス法、およびスルホラン法などの脱硫法や、乾式脱硫である酸化鉄法、酸化亜鉛法、酸化マンガン法、酸化コバルト法、酸化クロム法、酸化モリブデン法、および活性炭法などは、主に一次脱硫法として工業原料ガス中の硫化水素を除去するが、一般のガス中の硫化水素の除去には広く用いられていない。その主な原因というと、これらの脱硫方法は、脱硫効率が高くない上に、ランニングコストが高く、設備の投資が多額で、腐食がひどく、効果が満足のいくものではなく、有機硫黄の除去率に劣っているからである
〔1〜3〕。低温メタノール脱硫技術
〔4〕は、硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素および二酸化炭素を物理的に吸着する方法であり、現在、大手化学企業において原料ガスの脱炭素脱硫に用いられることはよくあるが、メタノールが、低沸点で、揮発しやすく、飽和蒸気圧が高いため、通常、高圧・低温下(−10℃以下)で扱う必要があり、エネルギー消費が高く、メタノールの消耗がひどく、プロセスフローが複雑で作業が煩雑で、総合ランニングコストが高くなる。常温メタノール法
〔5〕は、メタノール60%とジエタノールアミン40%を混合して得た溶液で、ガス中の硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素および二酸化炭素を吸収し、加熱・減圧して硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素および二酸化炭素を放出するが、メタノールは低沸点で揮発しやすく、飽和蒸気圧が高いため、放出したガスにメタノールが多く含まれていて、溶液の組成が不安定になり、メタノールの消耗がひどくなる。しかも、ジエタノールアミンは、光や空気にたいして酸化分解しやすく、溶液の化学安定性に劣るため、溶液の再生方式としては、加熱・減圧により再生して、硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素および二酸化炭素の混合ガスを放出させてから、さらに、放出した硫黄含有ガスをクラウス(Claus)法で硫黄に転換させることしかないが、そのエネルギー消費が高く、メタノールとジエタノールアミンのひどい消耗、複雑なプロセスフロー、煩雑な作業、そして膨大な総合ランニングコストが問題になる。以上の方法は、主にガス中の硫化水素、硫化カルボニルおよび二硫化炭素などの有機硫黄の除去に用いられるが、ガス中のSO
2および/またはSO
3の除去には用いられていなかった。
【0005】
また、従来、プロパントリオール(グリセリン)の水溶液の二酸化硫黄に対する吸収平衡曲線についてもテストされており
[6]、その水溶液の二酸化硫黄に対する吸収能力が比較的に低く、煙道ガス中の二酸化硫黄の吸収用の脱硫剤として直接に用いられないことが見出されている。Cl
−含有水溶液または水酸化ナトリウム含有水溶液にプロパントリオール(グリセリン)を添加して、ガス中の二酸化硫黄含量分析用の安定剤とすることも提案されているが
[7−10]、煙道ガス中の二酸化硫黄除去用の脱硫剤としては使用されておらず、さらに、当該プロパントリオール含有溶液は二酸化硫黄を吸収した後、二酸化硫黄を再生して放出することができず、当該溶液を煙道ガス脱硫用の溶剤とすることができない。また、プロパントリオール(グリセリン)を含有するウロトロピンの水溶液で、煙道ガス中のSO
2を吸収することが提案されている
〔11〕。しかし実際の実験において、ウロトロピンは、煙道ガスと接触後、その中の酸素ガスにより酸化分解されやすく、溶液の化学的な性質が不安定になってしまうことが分かった。かつ、ウロトロピンは高価で、易く入手できない化学工業・医薬製品である。そのため、そのランニングコストが非常の高く、脱硫性能が不安定のため、当該技術はまだ普及されていない。
【0006】
Fe
2+とFe
3+を含有する酢酸・アンモニア緩衝溶液
〔12−14〕は、既に半水性ガスの脱硫に用いられ、高い脱硫効率と低い腐食性を有するが、当該溶液はイオン効果と塩効果が発生し、溶液が不安定である。鉄‐アルカリ溶液触媒法によるガス脱炭素脱硫脱シアン方法は、鉄イオン含有アルカリ性物質の水溶液で、ガス中の硫黄を除去する方法であるが、さまざまな形態の硫黄を除去する力を持ち、かつ低硫黄分ガスに対する脱硫効果が伝統的なガス湿式脱硫方法よりも優れている。しかしながら、鉄イオンは、アルカリ性溶液での安定性が悪く、水酸化鉄または水酸化第一鉄の沈殿が大量に発生しうえ、当該鉄‐アルカリ溶液が硫化物含有ガスと接触した場合、更に硫化鉄または硫化第一鉄の沈殿が大量に発生して、溶液中の鉄イオン含有量が急減し、脱硫効果が激減するとともに、脱硫塔の詰まりなどの現象を引き起こしてしまい、高硫黄分ガスの脱硫に適さない
〔15〕。この状況を改善するために、本発明者らは、微生物を含有する「鉄‐アルカリ性溶液」を用いて、常圧または加圧下で脱硫することを試みたところ、良好な効果が得られた
〔16〕。同時に、ヱチレングリコール、またはエチレングリコールエステル、またはジエチレングリコールモノメチルエーテルの溶液を用いて硫化水素を吸収し、さらに、硫化水素を吸収した有機溶液に二酸化硫黄ガスを吹き込み、硫化水素と二酸化硫黄を反応させ、硫黄を生成させ、有機溶液を再生し循環利用することも提案されている
〔17〜19〕。二酸化硫黄で硫化水素含有エチレングリコール溶液を再生する方法は簡単であるが、二酸化硫黄の供給源が不足で、容易に入手できず、運送過程には特殊な道具や特別な安全措置が必要となり、ランニングコストが高く安全措置に厳しい。エチレングリコール溶液、或いはエチレングリコールとアルカノールアミン類との混合溶液、或いはエチレングリコールとアルカノールアミン類と炭酸ナトリウムとの混合溶液、或いはエチレングリコールジメチルエーテルまたはジエタノールジメチルエーテルの溶液、或いはジエチルアミンとジエチレングリコールとトリエチレングリコールとトリエチレングリコールメチルエーテルとの混合水溶液、或いはアミンとアセトアルデヒドとの混合溶液、或いはジエチレングリコールモノメチルエーテルとニトリロ三酢酸鉄(III)との混合水溶液を用いて、天然ガスまたはその他のガス中の硫化水素、有機硫黄および水を吸収することも研究されている
〔20〜28〕。しかしながら、現在、以上に述べた技術は、工業用原料ガスの脱硫分野のみに大規模に用いられて、ガス中の硫化水素、硫化カルボニルおよび二硫化炭素を除去しているが、まだ煙道ガスおよびその他の廃ガスの脱硫分野でSOx(二酸化硫黄および/または三酸化硫黄を含む)の除去には用いられていない。
【0007】
本発明者のこの前の特許技術である「ポリエチレングリコールでガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200910009058.1)」及び「エチレングリコールで煙道ガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200710110446.X」は、実際の工業化生産試験中の脱硫効果が比較的に良いが、加熱再生する際に、エチレングリコールの沸点がただ197℃であるので、エチレングリコールの一部が損失すると同時に、エチレングリコールとポリエチレングリコール溶液には溶液変質の現象が少量に発生し、ランニングコストが高くなり、脱硫効率に影響を及ぼすことがある。もっと深く理論的に追究したところ、エチレングリコール又はポリエチレングリコールと作用するときに、二酸化硫黄又は三酸化硫黄は主にその分子中のヒドロキシに作用するとともに、ポリエチレングリコール中のエーテル結合と弱結合の作用を発生することを見出した。作用機構は以下の通りである。
【0008】
単にエチレングリコール及びジエチレングリコールを例とする場合に、その化学反応式以下のとおりである。
【0010】
以上のような主反応の発生に加え、さらに以下の弱結合の作用も起こす。
【0012】
加熱再生するときに、さらに以下の副反応も発生する。
【0014】
現在の研究結果から見ると、これらの副反応は非可逆反応と考えられる。つまり、これらの副反応を逆転する方法はまだ見つけられておらず、生成したスルフィン酸エステルおよびスルホン酸エステル系物質は引き続き再生して二酸化硫黄や三酸化硫黄を放出することができず、溶液中のスルフィン酸エステルおよびスルホン酸エステルが増え続けると、溶液の硫黄吸収能力が低下され、溶液が変質し、システムに深刻な損害を与え、さらに運転し続くこともできなくなってしまうこともある。
【0015】
参考文献:
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2/H
2S. Hydrocarbon Processing, April.81-82.
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[3]F.C.Riesenfeld,A.L.Kohl,沈余生訳,《気体浄化》,北京,中国建築出版社,1982.
[4]戴文斌,唐宏青,《コンピューターと応用科学》,1994,11(1),P44-51.
[5]馬斌,《煤化工》,1994,総68期,P35-38
[6]Zhiqiang He, Jinrong Liu, Lijun Li, Dawei Lan, and Jianbin Zhang, Absorption Properties and Spectroscopic Studies of Dilute SulfurDioxide in Aqueous Glycerol Solutions, Ind. Eng. Chem. Res. 2012, 51, 13882−13890.
[7]B. L. Wedzicha & P. P. Webb, Vapour pressure of SO
2 above solutions of sulphur(IV) oxospecies: the effects of chloride ion and glycerol, Food Chemi.wy, 1996, 55( 4), 337-341.
[8]揮▲ソウ▼,張俊喜,季献武,徐群杰,張富, 張大全,グリセリン水溶液による湿度制御方法及びその溶融亜鉛めっき鋼のSO
2大气腐蝕に対する影響,腐蝕及び防護,2013,34(2),114〜116.
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[11]Zh.Prikl.Khim.(S.-Peterburg),1993, 66(10), 2383-2385(Russian).
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[13]魏雄輝,(1994)半水煤気脱硫脱▲ヤン▼新方法,中国特許CN1087110.
[14]魏雄輝,(1996)加圧鉄−アルカリ溶液脱▲炭▼素脱硫,中国特許CN1133817.
[15]魏雄輝,▲鄒▼美華,魏風輝,(1999)鉄−アルカリ溶液触媒法気体脱炭素脱硫脱シアン方法,中国発明特許,特許番号ZL99100596.1.
[16]魏雄輝,(2002)生化鉄―アルカリ溶液催化法気体脱硫方法,中国発明特許,特許番号 ZL02130605.2.
[17]Galeeva R.G.,Kamalov Kh.S.,Aminov M.Kh.,Gafiatullin R.R.,Mitina A.P.,Bakhshijan D. Ts.,Safin G.R.,Levanov V.V.,Installation for Complete purification of Petroleum and Nattural Gases,RU2070423C1.
[18]Biedermann,Jean-Michel,Process for Eliminating Hydrogen Sulphide Contained in Gas Mixture,PCT/FR83/00174.
[19]Biedermann,Jean-Michel,etc.,Process for Eliminating Hydrogen Sulphide Contained in Gas Mixture,FR2532190-A1.
[20]村岡,寛允,エチレングリコールによる脱水方法,JP62-95118A。
[21]ドイツ特許,エチレングリコールによる脱水方法,DT2333708A1。
[22]前ソ連特許,SU1611411A1。
[23]小室,武勇,JP6-228573A。
[24]前ソ連特許,SU655410A。
[25]WYSCHOFSKY Michael, HOBERG Dirk,Method for the Separation of Gaseous Components from Technical Gases by Means of Ethylene Glycol Dimethyl Ethers at Low Temperatures, WO03011432A1(PCT/EP02/07915).
[26]前ソ連特許,SU927282B.
[27]DILLON Edward Thomas,Composition and Method for Sweetening Hydrocarbons, WO9007467A1(PCT/US89/05742).
[28]Zaida Diaz,Process for the Removal of H
2S and CO
2 from Gaseous Streams,US4368178.
発明内容
本発明者のこの前の特許「ポリエチレングリコールでガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200910009058.1)」及び「エチレングリコールで煙道ガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200710110446.X」における上記不足を解決し、溶液の沸点を向上させ、溶剤の損失を減少させると共に溶液の脱硫能力を向上させ、スルフィン酸エステルおよびスルホン酸エステル系物質の生成を避ける又は大幅に減少させるために、本発明は、ポリオールと有機酸及び/または有機酸塩からなる溶液を採用してガス中のSO
Xを吸収している。その中、前記ポリオールとは、エチレングリコールとポリエチレングリコール以外の、同一の有機分子において同時に2個または2個以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、例えば、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ブタントリオール、イソブタンジオール、イソブタントリオール、ペンタンジオール、ペンタントリオール、ペンタンテトラオール、イソペンタンジオール、イソペンタントリオール、イソペンタンテトラオール、ポリプロパノール、ポリブタノール等を指す。前記ポリオールは、その沸点が高いが、例えば、プロパントリオールその自身の沸点が290℃と高く、さらに、ポリオールは有機酸及び/または有機酸塩と安定した水素結合会合物を形成すると共に、安定したポリオールエステール系物質を形成して、ポリオール複合溶液の安定性を顕著に増加でき、ポリオール複合溶液の耐アルカリ破壊能力、耐酸破壊能力を顕著に向上させるだけではなく、さらに、ポリオール複合溶液の沸点を顕著に向上できる。
【0016】
以下、プロパントリオール、クエン酸、ニトリロ三酢酸及びそれらの塩を例として本発明のポリオール複合溶液のエステル化メカニズムを説明するが、本発明のポリオール複合溶液が、ポリオールとクエン酸及び/またはニトリロ三酢酸及びそれらの塩類のみからなることを限定するのではなく、本発明はポリオールと、有機酸及び/または有機酸塩からなるポリオール複合溶液に関するものである。
【0018】
(前記式において、Mはアンモニアイオンまた金属イオンである。以下同じ。)
本発明のポリオール複合溶液脱硫法において、まず、ポリオール複合溶液を用いてガス中のSOx(x=2および/または3)を吸収し、そして、SOxを吸収したポリオール複合溶液を、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法中の1種または複数種の方法で再生して、再生後のポリオール複合溶液を循環利用する。また、再生後のポリオール複合溶液中の水の含有量が多くて脱硫効果に影響を及ぼす場合、ポリオール複合溶液中の一部の水を除去する必要がある。水の除去方法として、加熱精留法、吸水剤吸収法があり、これらの方法を併用してもよく、そして一部の水除去後のポリオール複合溶液を循環利用する。
【0019】
本発明のポリオール複合溶液脱硫法では、脱硫前の硫黄含有ガス中のSOx合計含有量を特に要求しないが、より優れた脱硫効果を達成するために、硫黄含有ガスにおけるSOx合計含有量が99.9%(体積比)未満であることが好ましい。
【0020】
本発明のポリオール複合溶液脱硫法において、プロセス条件が厳しく制限されないが、常圧吸収または加圧吸収を用いることが好ましく、吸収温度が−20〜80℃であることが好ましい。そして、SOxを吸収したポリオール複合溶液を、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法中の1種または複数種の方法で再生する際に再生温度が0〜300℃であることが好ましい。
【0021】
前記ポリオール複合溶液は、ポリオールと有機酸及び/または有機酸塩とからなるものであり、その中、ポリオールと有機酸及び/または有機酸塩との合計質量含量は50%以上、水の質量含量は50%未満である。
【0022】
本発明のポリオール複合溶液脱硫法において、SOxを吸収したポリオール複合溶液を、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波、マイクロ波および放射法なかの1種または複数種の方法で再生する際に、二酸化硫黄および/または三酸化硫黄を副生する。
【0023】
本発明の基本原理は以下のとおりである。
【0024】
以下、プロパントリオールとクエン酸塩及び/またはニトリロ三酢酸塩を例として、ポリオール複合溶液による煙道ガス中のSO
Xの除去原理をさらに述べるが、本発明のポリオール複合溶液が、プロパントリオールとクエン酸塩及び/またはニトリロ三酢酸塩のみからなる溶液に限定されるわけではなく、本発明の特許請求の範囲を制限するものと解してはならない。
【0025】
煙道ガス、またはその他のSOx含有ガスを、ポリオール複合溶液に接触させると、下記の吸収反応が起こる。
【0027】
二酸化硫黄、三酸化硫黄を吸収したポリオール複合溶液がリッチ液(rich liquor)となり、脱硫塔底部から流出し、再生器に入って、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法なかの1種または複数種の方法で再生され、高純度の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄を放出する。リッチ液は再生器にて以下の再生反応を起こす。
【0029】
試験研究によって、当該ポリオール複合溶液中の水含量が50%(質量含量)を超える場合、ポリオール溶液の硫黄吸収能力が顕著に低下することを見出した。したがって、ポリオール複合溶液中の必要量以上の水をできるだけ除去する。
【0030】
再生後のポリオール複合溶液(以下、単に「脱硫液」と略す)を循環利用する。
【0031】
上記基本原理を実現するために、本発明者らは2つのプロセスを設計した。第1のプロセスが、脱硫吸収プロセスであり、第2のプロセスが、脱硫液再生プロセスであるが、脱硫液再生プロセスに用いられる再生方式として、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法がある。
【0032】
第1のプロセス:脱硫吸収プロセスは、常圧吸収プロセスであってもよく、加圧吸収プロセスであってもよい。その脱硫吸収フローは、
図1に示すようなものである。脱硫吸収プロセスは、脱硫塔の中で行っている。通常、SOx含有ガスは脱硫塔底部から脱硫塔に入り、再生された脱硫液(通常、「貧液」と呼ばれる)は脱硫塔頂部から脱硫塔に流れ込み、脱硫塔の中で、SOx含有ガスと脱硫液とが向流接触し、ガス中のSOxが脱硫液に吸収された後、SOxが除去されたガスは脱硫塔頂部から出る。ガス中のSOxを吸収した脱硫液は「リッチ液」となり、脱硫塔底部から出て、再生プロセスに入る。吸収プロセスでは、ガスと脱硫液とがともに脱硫塔頂部から入り、脱硫塔の中で並流吸収の形で吸収プロセスを完成することも可能である。
【0033】
第2のプロセス:脱硫液再生プロセスであり、用いられる再生方法として、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法がある。
【0034】
加熱再生フローの概略図は、
図2に示すようなものである。その再生方式では、SOxを吸収した脱硫「リッチ液」を加熱再生器に入れ、加熱下で再生して、SO
2および/またはSO
3を放出する。加熱再生された後の脱硫液は、通常、脱硫「半貧液」または「貧液」と呼ばれる。当該「半貧液」または「貧液」は、脱硫吸収プロセスに直接供されて再利用してもよく、続いてその他の再生方式に供されて更に再生された後、脱硫吸収プロセスに供されて再利用してもよい。
【0035】
真空再生フローの概略図は、
図3に示すようなものである。その再生方式では、SOxを吸収した脱硫「リッチ液」を真空再生器に入れ、真空排気して再生する。その時、SO
2および/またはSO
3を放出する。真空再生された後の脱硫液は、通常、脱硫「半貧液」または「貧液」と呼ばれる。当該「半貧液」または「貧液」は、脱硫吸収プロセスに直接供されて再利用してもよく、続いてその他の再生方式に供されて更に再生された後、脱硫吸収プロセスに供されて再利用してもよい。
【0036】
ストリッピング法再生フローの概略図は、
図4に示すようなものである。その再生方式では、SOxを吸収した脱硫「リッチ液」をストリッピング再生器に入れ、ストリッピング再生器の底部から不活性ガス(例えば、窒素ガス、二酸化炭素、アルゴンガス、水蒸気など)が供給される。その時、不活性ガスは、SO
2および/またはSO
3を脱硫「リッチ液」から追い出し、脱硫液が再生される。ストリッピング再生された後の脱硫液は、通常、脱硫「半貧液」または「貧液」と呼ばれる。当該「半貧液」または「貧液」は、脱硫吸収プロセスに直接供されて再利用してもよく、続いてその他の再生方式に供されて更に再生された後、脱硫吸収プロセスに供されて再利用してもよい。
【0037】
超音波法および/またはマイクロ波法または放射法による再生フローの概略図は、
図5に示すようなものである。その再生方式では、SOxを吸収した脱硫「リッチ液」を超音波および/またはマイクロ波または放射再生器に入れ、超音波および/またはマイクロ波または放射線の照射下で、SO
2および/またはSO
3を放出する。超音波および/またはマイクロ波または放射再生された後の脱硫液は、通常、脱硫「半貧液」または「貧液」と呼ばれる。当該「半貧液」または「貧液」は、脱硫吸収プロセスに直接供されて再利用してもよく、続いてその他の再生方式に供されて更に再生された後、脱硫吸収プロセスに供されて再利用してもよい。
【0038】
以上に述べた加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法などの再生方式は2種または2種以上の方式が1つの再生器に複合された方式であってもよい。
【0039】
再生後のポリオール複合溶液中の水含量が50%(質量含量)を超えて、脱硫効果に影響を及ぼす場合、ポリオール複合溶液中の必要以上の水を除去する必要があり、除去方法として、加熱精留法、吸水剤吸収法があるが、これらの方法を併用してもよく、水除去後のポリオール複合溶液を循環利用する。
【0040】
本発明の前記ポリオール複合溶液は、ポリオールと、有機酸及び/または有機酸塩とからなる溶液であり、その中、ポリオールと有機酸及び/または有機酸塩との合計質量含量が50%以上であり、水の質量含量が50%未満である。前記のポリオールとは、エチレングリコールとポリエチレングリコール以外の、同一の有機分子において同時に2個または2個以上のヒドロキシ基を含む有機化合物、例えばプロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ブタントリオール、イソブタンジオール、イソブタントリオール、ペンタンジオール、ペンタントリオール、ペンタンテトラオール、イソペンタンジオール、イソペンタントリオール、イソペンタンテトラオール、ポリプロパノール、ポリブタノール等を指す。本発明の前記ポリオール複合溶液では、上記ポリオール類化合物中のいずれか一種、または任意の2種或いは任意の2種以上のポリオール類化合物を含むことができる。ポリオール複合溶液の粘度を低下させるために、ポリオール複合溶液中へ適量のエチレングリコール、またはポリエチレングリコール、またはエチレングリコールとポリエチレングリコールとの混合物を添加してもよく、添加されるエチレングリコール、またはポリエチレングリコール、またはエチレングリコールとポリエチレングリコールとの混合物の、ポリオール複合溶液における質量含量を30%未満にする必要がある。前記の有機酸及び/または有機酸塩とは、有機モノカルボン酸、有機モノカルボン酸塩、有機ポリカルボン酸、有機ポリカルボン酸塩を指し、その中、有機モノカルボン酸とは、分子中にただ一個のカルボキシル基を有する有機化合物、例えば、各種のアミノ酸、ぎ酸、酢酸、酪酸等を指す。有機モノカルボン酸塩とは、分子中にただ一個のカルボキシル基を含み、且つ当該カルボキシル基がアンモニウムイオン及び/またはナトリウムイオン及び/またはカリウムイオン及び/またはマグネシウムイオン及び/またはカルシウムイオン及び/または遷移金属イオン等とイオン結合してなるカルボン酸塩類、例えば、各種のアミノ酸塩、ぎ酸塩、酢酸塩、酪酸塩等を指す。ポリオール複合溶液の調製に際して、これらの有機モノカルボン酸塩は、有機モノカルボン酸と金属(及び/またはアンモニウムイオン)の水酸化物及び/または金属(及び/またはアンモニウムイオン)の炭酸塩とを溶液中へ直接添加して反応させることによって獲得してもよい。有機ポリカルボン酸とは、分子中に2個または2個以上のカルボキシル基を有する有機酸系物質、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アミノ基シュウ酸、ニトリロ三酢酸、EDTA、タンニン酸、ポリ没食子酸とクエン酸等を指す。前記の有機ポリカルボン酸塩とは同一の分子中に2個または2個以上のカルボキシル基を含み、その中、少なくとも一個のカルボキシル基がアンモニウムイオン及び/またはナトリウムイオン及び/またはカリウムイオン及び/またはマグネシウムイオン及び/またはカルシウムイオン及び/または遷移金属イオン等とイオン結合してなるカルボン酸塩類、例えば、シュウ酸ナトリウム塩、マロン酸カリウム塩、コハク酸カリウム塩、アミノ基シュウ酸カリウム塩、ニトリロ三酢酸カリウム塩、EDTAカリウム塩、タンニン酸カリウム塩、ポリ没食子酸カリウム塩とクエン酸カリウム塩等を指す。ポリオール複合溶液の調製に際して、これらの有機ポリカルボン酸塩は、有機ポリカルボン酸と金属(及び/またはアンモニウムイオン)の水酸化物及び/または金属(及び/またはアンモニウムイオン)の炭酸塩とを溶液中へ直接添加して反応させることによって獲得することができる。本発明の前記ポリオール複合溶液では、有機モノカルボン酸、有機モノカルボン酸塩、有機ポリカルボン酸と有機ポリカルボン酸塩からなる群より選択される任意の一種、または任意の2種または任意の2種以上の物質を含んでもよく、且つ、有機酸及び/または有機酸塩のポリオール複合溶液中の質量含量が30%未満である。
【0041】
ポリオール複合溶液の硫黄吸収能力を向上させるために、本発明に記載のポリオール複合溶液中へ一定の割合の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、有機アミン類、アルコールアミン類、アミド類、スルホン類、スルホキシド類及び金属有機化合物類が挙げられる。有機アミン類としては、アルキルアミン類(例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンポリアミンなどの各種の脂肪アミン類)、及び芳香族アミン類(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、ハロゲン化アニリン、ニトロアニリン、スルホン酸基アニリン等)が挙げられる。アルコールアミン類としては、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N’−ジヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、3−ジエチルアミノフェノール、2−アミノ−5ニトロフェノール、セフォタキシム酸(2−(2−Aminothiazole−4−yl)−2−methoxyiminoacetic acid)、N−メチルピロリジノール、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、シアヌル酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、γ酸、J酸、フェニルJ酸、シカゴ酸及びその塩、H酸及びその塩、ダブルJ酸、スカーレット酸及びその塩などが挙げられる。アミド類としては、ホルムアミド、アセトアミド、DMF、MDEA、ホルムアニリド、アセトアニリド、プロピオンアニリド、ブチルアニリド、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン、ベンジルジメチルプロピルアミン、ベンジルジブチルアミンがあげられ、スルホン類及びスルホキシド類としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ビスヒドロキシエチルスルホン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシドなどが挙げられる。金属有機化合物類としては、遷移金属有機化合物類が挙げられる。ポリオール複合溶液中の添加剤としては、上記挙げられた化合物中の何れか1種化合物からなることができ、その中の何れか2種の化合物からなることもでき、その中の何れか2種以上の化合物からなることもできる。添加剤のポリオール複合溶液における質量含量は10%未満である。
【0042】
本発明は、伝統的な湿式脱硫技術(例えば、カルシウム法脱硫技術、アンモニア法脱硫技術など)と比べて、以下のような利点がある。[1]伝統的な湿式脱硫技術は、硫黄分が比較的に低いガスの脱硫のみに適用するが、本発明にかかるポリオール複合溶液脱硫法は、低硫黄分ガスの脱硫にも高硫黄分ガスの脱硫にも使用できる。[2]伝統的な湿式脱硫技術は、脱硫・再生の全過程で不溶性カルシウム塩またはアンモニウム塩の沈殿が生じ、設備やパイプの詰まりを引き起こすおそれがあるが、本発明にかかるポリオール複合溶液脱硫法は、不溶性カルシウム塩またはアンモニウム塩の沈殿がほとんど生じない。[3]伝統的な湿式脱硫技術は、煙道ガスの脱硫に用いられると、副生物が、硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウム、または硫酸アンモニウムと亜硫酸アンモニウムであるが、本発明にかかるポリオール複合溶液脱硫法は、副生物が高純度の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄であり、これらの副生物は重要な化学工業原料で、幅広い市場と重要な応用価値を持つ。[4]我々のこの前の特許「ポリエチレングリコールでガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200910009058.1)」及び「エチレングリコールで煙道ガス中のSOxを除去する方法(中国特許番号ZL200710110446.X」は、ランニング過程に部分的にスルフィン酸エステルとスルホン酸エステル系物質を生成することで、溶液の硫黄吸収能力が低下し、溶液が変質し、システムに深刻に損害し、さらにシステムが連続に運転できないこともある。一方、本発明にかかるポリオール複合溶液脱硫法は、ランニング過程にスルフィン酸エステルとスルホン酸エステル系物質をほとんど生成せず、溶液が変質することがなく、安定性が比較的強いで、ランニングが安定であり、ポリオール複合溶液脱硫法は、浄化度が高く、ガス中の全硫黄分を50mg/m
3以下に安定して低減させることができると共に、溶液の沸点が高く、損失が少ない。そして、脱硫のガス/液体比が大きく、エネルギー消費が少なく、ランニングコストが低く、ショートプロセスになり、投資が小額で、作業が簡単である。
【0043】
本発明にかかるポリオール複合溶液脱硫法は、幅広い工業用途があり、煙道ガス、焼却ガス、コークス炉ガス、染料工場の合成廃ガス、化学繊維工場の汚染排出ガス、およびSOxを含有する他の工業用原料ガスまたは廃ガスの脱硫に用いることができる。なお、上記硫黄含有ガスおける全硫黄分が全て99.9%(体積比)未満である。
【0044】
図面の説明
〔
図1〕
図1は、脱硫吸収プロセスの概略図である。
〔
図2〕
図2は、脱硫液の加熱再生方式の概略図である。
〔
図3〕
図3は、脱硫液の真空再生方式の概略図である。
〔
図4〕
図4は、脱硫液のストリッピング再生方式の概略図である。
〔
図5〕
図5は、脱硫液の超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式の概略図である。
〔
図6〕
図6は、小型の脱硫吸収装置の構造概略図である。
〔
図7〕
図7は、小型の加熱ストリッピング(stripping)再生装置の構造概略図である。
【0045】
具体的な実施形態
以下、具体的な実施形態を併せて、本発明のポリオール複合溶液脱硫法を説明する。本実施形態は、本発明をよりよく説明するためのものであり、本発明の特許請求の範囲を制限するものと解してはならない。
【0046】
第1のプロセスが脱硫吸収プロセスであり、その実施形態は
図1に示すようなものである。
図1において、SOx含有ガス(2)は、脱硫塔(1)の底部から入り、脱硫貧液(4)と向流接触する。SOx含有ガス(2)中のSOxが貧液(4)に吸収され、SOx含有ガス(2)は、浄化ガス(3)となり、脱硫塔(1)の頂部から出る。SOxを吸収した脱硫貧液(4)は、脱硫塔(1)の底部で脱硫リッチ液(5)となる。脱硫リッチ液(5)は、脱硫塔(1)の底部から流出し、脱硫液再生プロセスに供され、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法なかの1種または複数種の方法で再生される。
【0047】
第2のプロセスが脱硫液再生プロセスであるが、脱硫液再生プロセスに用いられる再生方式として、加熱法、真空法、ストリッピング法、超音波法、マイクロ波法および放射法がある。
【0048】
加熱再生方式の実施形態は、
図2に示すようなものである。脱硫リッチ液(5)は、加熱再生器(6)に供され、加熱されて、ガス状二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)を放出する。ガス状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)を、いくつかの加工方法によって、高純度の液状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄の副産物に転換することができる。更に、硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)が発生または蓄積し、脱硫液の主体との分離を実現する。分離した硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)を、更に硫黄副生物に加工することができる。更に、灰分も僅かに排出される。脱硫リッチ液(5)は、加熱再生器(6)によって再生された後、脱硫貧液(4)となる。脱硫貧液(4)は、脱硫吸収プロセスに直接供し循環利用してもよく、真空再生および/またはストリッピング法再生および/または超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式に供し更に再生してもよい。
【0049】
真空再生方式の実施形態は、
図3に示すようなものである。
図3において、脱硫リッチ液(5)は、真空再生器(9)に供され、真空機(10)の作用で真空化され、ガス状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)放出する。ガス状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)を、いくつかの加工方法によって、高純度の液状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄の副産物に転換することができる。更に、硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)が発生または蓄積し、脱硫液の主体との分離を実現する。分離した硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)を、更に硫黄副生物に加工することができる。更に、灰分も僅かに排出される。脱硫リッチ液(5)は、真空再生器(9)によって再生された後、脱硫貧液(4)となる。脱硫貧液(4)は、脱硫吸収プロセスに直接供し循環利用してもよく、加熱再生および/またはストリッピング法再生および/または超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式に供し更に再生してもよい。
【0050】
ストリッピング法再生方式の実施形態は、
図4に示すようなものである。
図4において、脱硫リッチ液(5)は、ストリッピング再生器(11)に供され、ストリッピング再生器(11)の底部から供給された不活性ガス(12)(例えば、窒素ガス、二酸化炭素、アルゴンガス、水蒸気など)と向流接触され、脱硫リッチ液(5)中の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄が不活性ガスに供されて、高濃度の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄の混合ガス(13)に形成し、ストリッピング再生器(11)の頂部から流出する。流出した不活性ガス中の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄を、いくつかの加工方法によって、高純度の液状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄の副産物に転換することができる。脱硫リッチ液(5)は、ストリッピング再生器(11)によって再生された後、脱硫貧液(4)となる。脱硫貧液(4)は、脱硫吸収プロセスに直接供し循環利用してもよく、加熱再生および/または真空再生および/または超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式に供し更に再生してもよい。
【0051】
超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式の実施形態は、
図5に示すようなものである。
図5において、脱硫リッチ液(5)は、超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生器(14)に供され、超音波および/またはマイクロ波および/または放射線の照射下で、ガス状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)を放出する。ガス状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄(7)を、いくつかの加工方法によって、高純度の液状の二酸化硫黄および/または三酸化硫黄の副産物に転換することができる。更に、硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)が発生または蓄積し、脱硫液の主体との分離を実現する。分離した硫黄含有泡沫および/またはダスト(8)を、更に硫黄副生物に加工することができる。更に、灰分も僅かに排出される。脱硫リッチ液(5)は、超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生器(14)により再生された後、脱硫貧液(4)となる。脱硫貧液(4)は、脱硫吸収プロセスに直接供し循環利用してもよく、加熱再生および/または真空再生方式および/またはストリッピング再生方式に供し更に再生してもよい。
【0052】
以上の具体的な実施形態の思考によって、我々は
図6に示された小型の吸収装置及び
図7に示された小型の加熱ストリッピング再生装置をそれぞれ設計・装着した。
【0053】
図6に示された小型の吸収装置において、15が吸収ボトル(再生時に再生ボトルとなる)で、16がポリオール複合溶液で、17が二酸化硫黄を含有しているガスで、18が排出ガスである。
【0054】
図7に示された小型の加熱ストリッピング再生装置において、15が再生ボトル(吸収時に吸収ボトルとなる)、16が二酸化硫黄を吸収したポリオール複合溶液で、19がストリッピング用ガスで(本試験で用いられたのはN
2である)、20が二酸化硫黄を含有しているストリッピングガスであり、21がオイルバス用のシリコーンオイルで、22が加熱恒温ボットである。
【0055】
試験時に、
図6に示されたように、まず、約100mlの新鮮なポリオール複合溶液16を吸収ボトル15に装入し、室温下で、ポリオール複合溶液16を含んでいる吸収ボトル15に一定量(L、リットル)の二酸化硫黄含有ガス17を吹き込み、該ガスがポリオール複合溶液16を通過し、該ガス中の二酸化硫黄がポリオール複合溶液16により吸収されており、二酸化硫黄を吸収された後のガスが排出ガス18となって、室外へ排出されると共に、ヨウ素滴定法でポリオール複合溶液16中の二酸化硫黄の含量(C
*SO2、g/L)を測定する。それから、この二酸化硫黄を含有しているポリオール複合溶液の吸収ボルトをオイルバスの加熱恒温ボットに放置する。この場合、吸収ボルト15が再生ボルト15とされ、ポリオール複合溶液16中の二酸化硫黄の含量を測定し、再生すべき、二酸化硫黄を吸収したポリオール複合溶液とすることができる。
図7に示されたように、加熱恒温ボット22の恒定必要な温度を調節する。オイルバス用シリコーンオイルを加熱し、システム温度が必要とする温度(t、℃)で恒定になると、ストリッピング用ガス19(本試験で用いられたのはN
2である)を再生ボトル15中へ吹き込み、ストリッピング用ガス19(本試験で用いられたのはN
2である)と、二酸化硫黄を含有しているポリオール複合溶液16とを十分に接触させる。この時、ポリオール複合溶液16中の二酸化硫黄が、ストリッピング用ガス19(本試験で用いられたのはN
2である)中に入り、二酸化硫黄を含有している物質のストリッピング用ガス19(本試験で用いられたのはN
2である)が二酸化硫黄を含有しているストリッピング用ガス20となり、室外へ排出される。一定時間(T、min)の加熱ストリッピング再生して、再生ボルト15を取り出し、水で常温までに冷却し、ヨウ素滴定法で再生されたポリオール複合溶液16中の二酸化硫黄の含量(C
SO2、g/L)を測定する。再生されたポリオール複合溶液16を用いて、以上のステップにて吸収及び再生を複数回繰り返して、ポリオール複合溶液の変化情況を観察する。
【0056】
以上の実験方法によって、我々は、60%グリセリン(プロパントリオール)+3.3%クエン酸+4%クエン酸一ナトリウム+32.7%H
2O反応系、60%グリセリン+3%クエン酸+8%クエン酸一ナトリウム+29%H
2O反応系、60%グリセリン+8%クエン酸一ナトリウム+32%H
2O反応系、50%グリセリン+43.5%水+6.5%EDTA二ナトリウム塩反応系、50%グリセリン+40%水+10%EDTA二ナトリウム塩反応系、65%グリセリン+20%酢酸+13%水+2%酢酸カリウム反応系、60%グリセリン+30%水+7.8%シュウ酸一カリウム+2.2%シュウ酸反応系及び70%グリセリン+30%水反応系を用いて、ガス中のSO
2の吸収と解離情況に対して、試験を繰り返し行った。実験データは、表一乃至表八に示す。
【0065】
表八の《70%グリセリン+30%H
2O(100mL)がSO
2に対する吸収と解離情況》から分かるように、純粋なグリセリンと水からなる溶液で二酸化硫黄を吸収する場合、再生効果に優れているが、二酸化硫黄に対する吸収能力が悪く、ガス中の二酸化硫黄の脱硫剤として使用できない。
【0066】
前記表一乃至表七の実験データから分かるように、これらのポリオール複合溶液は、SO
2に対する吸収と再生効果がいずれも比較的良い。これは、これらの溶液系が比較的良い煙道ガス脱硫溶剤であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図2】
図2は、脱硫液の加熱再生方式の概略図である。
【
図3】
図3は、脱硫液の真空再生方式の概略図である。
【
図4】
図4は、脱硫液のストリッピング再生方式の概略図である。
【
図5】
図5は、脱硫液の超音波および/またはマイクロ波および/または放射再生方式の概略図である。
【
図6】
図6は、小型の脱硫吸収装置の構造概略図である。
【
図7】
図7は、小型の加熱ストリッピング(stripping)再生装置の構造概略図である。