(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「不燃認定の規格」および「建築基準法に規定する不燃性」は、「建築基準法第2条第9号、及び建築基準法施行令第108条の2の規定に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えず、総発熱量が8MJ/m
2以下であること」を意味する。
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、
(A)(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部、
(B)イソシアネート化合物をイソシアネート基の量に換算して0.10〜0.40質量部、および
(C)難燃剤 10〜50質量部
を含み、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、
(A−a)(メタ)アクリル酸エステル、
(A−b)カルボキシル基および炭素−炭素二重結合を有する重合性化合物、および
(A−c)グリシジル基および炭素−炭素二重結合を有する重合性化合物
を構成モノマーとして含む。
【0015】
成分(A)
モノマー(A−a)は、好ましくはエステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
モノマー(A−b)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
モノマー(A−c)の例としては、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
成分(A)は、成分(A)を構成するモノマーの全量を100質量%としたとき、モノマー(A−b)の配合量b(質量%)とモノマー(A−c)の配合量c(質量%)とが、下記式(1)を満たす。
10≦b+40c≦26 (但し、4≦b≦14、0.05≦c≦0.45)
【0019】
式(1)において、(b+40c)の値が10より小さいと、粘着力や耐熱性が不充分になり易い。また(b+40c)の値が26より大きいとタック性および施工性に問題が出易く、また(メタ)アクリル酸エステル共重合体の保存性が満足できないものになり易い。好ましくは、12≦b+40c≦22である。ここで、bは4〜14質量%、好ましくは5〜12質量%であり、cは0.05〜0.45質量%、好ましくは0.1〜0.35質量%である。bの値が上記範囲よりも小さいと、粘着力や耐熱性に劣るものになり易く、上記範囲より大きいと、耐水性や施工性に問題が出易い。また、cの値が上記範囲よりも小さいと、耐熱性に劣るものになり易く、上記範囲より大きいと、タック性や施工性に問題が出易い。本発明者は、カルボキシル基は粘着性に影響を及ぼすとともに、グリシジル基との反応により耐熱性にも影響を及ぼすとの知見から、bとcが上記式(1)を満たすことにより、良好な粘着性、タック性、施工性および耐熱性が得られることを見出した。
【0020】
成分(A)は、その構成モノマーとして、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(A−d)を更に含むことが好ましい。モノマー(A−d)は、その水酸基が、後述する成分(B)のイソシアネート基と反応して、粘着剤として適切な架橋度を付与することができる。
【0021】
モノマー(A−d)の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチルおよび(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
成分(A)の共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロックおよびグラフト共重合体のいずれか、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0023】
成分(A)は、各種公知の方法により製造することができ、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法等のラジカル重合法を適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化ラウロイル(LPO)、過酸化ベンゾイル(BPO)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の公知のものを使用することができる。重合条件としては、例えば、溶液重合の場合には、反応温度は通常50〜100℃であり、反応時間は通常3〜15時間程度である。重合に際して用いられる溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサンおよびアセトン等が用いられる。
【0024】
成分(A)は、質量平均分子量が30万〜120万であるものが好ましく、より好ましくは40万〜80万である。30万よりも小さいと凝集力が小さく耐熱性や耐久性・信頼性が不十分になり易い。120万を超えると、高粘度で取扱い難く、希釈溶剤量などの点からも不経済である。なお、本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0025】
更に、成分(A)は、ガラス転移温度が−30℃以下であるものが好ましく、より好ましくは−40℃以下である。ガラス転移温度が−30℃より高いと、低温環境下ではタック性が不十分になり易い。なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、常法によって求められる計算値、すなわち下記式(Foxの式)から求めた値である。
1/(Tg+273)=W
1/(Tg
1+273)+W
2/(Tg
2+273)+W
3/
(Tg
3+273)+・・・+W
n/(Tg
n+273)
式中、Tgは、n種の単量体からなる重合体のガラス転移温度(℃)であり、W
1、W
2、W
3・・・W
nは、単量体組成物中の各単量体の質量%であり、Tg
1、Tg
2、Tg
3・・・Tg
nは、各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。各ホモポリマーのTgは、例えばポリマーハンドブックなどに記載されているものを使用することができる。
【0026】
成分(B)
成分(B)であるイソシアネート化合物は、分子内に−N=C=O構造を有する化合物であり、成分(A)を架橋して耐熱性や凝集力を向上させる。
【0027】
成分(B)の具体例としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート、あるいは上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤を挙げることができる。好ましくは、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネートが挙げられる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジエチルヘキソエート等の触媒を添加してもよい。
【0028】
成分(B)の量は、イソシアネート基の量に換算して、成分(A)100質量部に対して0.10〜0.40質量部、好ましくは0.15〜0.30質量部である。上記下限未満では、耐熱性(100℃での寸法安定性試験)が不十分である場合がある。上記上限を超えると、タック性が低下する場合がある。なお、成分(B)のイソシアネート基の量は、JIS−K−7301:1995に基づき、成分(B)のイソシアネート基をジノルマルブチルアミンと反応させた後、過剰のジノルマルブチルアミンを京都電子工業株式会社の電位差自動滴定装置AT−610型を使用して、塩酸水溶液で滴定する方法により決定される値である。
【0029】
成分(C)
成分(C)である難燃剤は、不燃性を付与できるものであれば特に制限はなく、公知の各種難燃剤を使用し得る。具体的には、1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ポリ(ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ジブロモプロピルエーテル)、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼンなどの臭素系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリネオペンチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ(ブチル化フェニル)ホスフェート、トリ(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、t-ブチルジフェニルホスフェートなどの有機燐酸エステル系難燃剤;1種又は2種以上の有機燐酸エステルの2分子又は3分子以上が縮合した化合物を主成分とする縮合有機燐酸エステル系難燃剤;有機燐酸エステル又は縮合有機燐酸エステルの1つ又は2つ以上の水素原子が臭素原子に置換された化合物、例えばトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素化有機燐酸エステル系難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム系難燃剤;赤燐などの無機燐系難燃剤;錫酸亜鉛系難燃剤;硼酸亜鉛系難燃剤;三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモンなどのアンチモン系難燃剤;および水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの水酸化物系難燃剤が挙げられる。
【0030】
上記難燃剤の中で、不燃性を付与し得る配合量で粘着剤に含ませたときに粘着剤層が白、赤、黒等に着色し難いもの、即ち、無色半透明乃至無色透明の粘着剤層を与えるものは、化粧シートの意匠性に影響を及ぼさないので好ましい。また、タック性への影響の少ない難燃剤が好ましい。そのような難燃剤の例として、臭素化有機燐酸エステル系難燃剤及びポリ燐酸アンモニウム系難燃剤が挙げられ、市販品の例としては、大八化学工業(株)の臭素化有機燐酸エステル系難燃剤CR900(商品名)および(株)鈴裕化学のポリ燐酸アンモニウム系難燃剤FCP−770(商品名)を挙げることができる。
【0031】
成分(C)の量としては、不燃認定の規格に安定的に合格できる必要十分な量が適宜選択され得る。具体的には、それぞれの不燃性付与力にもよるが、成分(A)100質量部に対して10〜50質量部程度である。上記下限未満であると、不燃認定を得ることが困難であり、上記上限を超えると、タック性が不十分になり易い。
【0032】
本発明の粘着剤組成物は、熱可塑性樹脂シートの片面に施与して粘着剤層を形成することにより、建築基準法に規定する不燃性を有し、かつタック性、施工性、耐熱性および粘着性に優れた化粧シートを提供することができる。粘着剤層の形成方法としては特に制限はなく、公知の方法で形成することができる。具体的には、成分(A)〜(C)の混合物を適切な希釈溶剤により適切な粘度に調節した粘着剤希釈液をロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコートおよびダイコートなどの公知のウェブ塗布方法により熱可塑性樹脂シートの片面に塗布し、乾燥させる方法を挙げることができる。上記希釈溶剤としては、成分(A)および(B)を良く溶かし、成分(C)を良く分散させ、かつ、成分(A)〜(C)と反応したりこれらの成分の自己反応を触媒したりしないものを選択する。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸nブチル、イソプロパノール、1-メトキシ2−プロパノールなどの公知のものを使用できる。
【0033】
上記熱可塑性樹脂シートとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、非結晶性、低結晶性又は結晶性のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)やスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体及びその水素添加物などのスチレン系樹脂、ポリアミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、及びこれらの1種又は2種以上を主成分とする熱可塑性樹脂組成物のシートが挙げられる。これらの中で、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする硬質、半硬質および軟質の樹脂組成物や非結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物のシートが好ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂シートを製造する方法に特に制限はなく、カレンダー製膜法、Tダイ製膜法など公知の方法で製造することができる。カレンダー製膜機としては、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、Z型ロールなどの公知のものを任意に使用することができる。Tダイ製膜機としては、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機などの公知の押出機と、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイなどの公知のTダイを任意に組み合わせて使用することができる。
【0035】
熱可塑性樹脂シートは単層および多層のいずれであってもよく、多層シートの場合には、各層を構成する材料が互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂シートの厚みは、通常20〜1000μmであり、好ましくは100〜500μmである。薄過ぎると、合板等に化粧シートを貼り付ける際に、合板等の凹凸が化粧シートの表面に現れて外観性を損ねる場合がある。厚過ぎると、化粧シートの合板等への貼合作業性が低下し易く、また、得られる化粧シートが不燃認定の規格を満たさない場合がある。
【0037】
熱可塑性樹脂シートは、粘着剤層が貼合される面に予めアンカーコート層を設けておくこともできる。アンカーコート剤としては、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリエステルウレタン等の公知のものを使用することができる。アンカーコート剤を塗工する方法には特に制限はなく、例えば、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコートおよびダイコートなどが挙げられる。
【0038】
上記化粧シートは、熱可塑性樹脂シートの、粘着剤層が積層された面とは反対の面にトップコート層を設けてもよい。トップコート層の厚みは通常、0.5〜30μmと薄いので、トップコート層を有する化粧シートも、建築基準法に規定する不燃性を有する。また、所望により塗膜厚みを30μm〜500μmとすることもできる。この場合には、建築基準法に規定する不燃性を満足することができるように、トップコート層は難燃化されたものが好ましい。
【0039】
トップコート層の形成は、例えば、硬化性樹脂組成物を含む塗膜形成材料を、熱可塑性樹脂シートの上記反対の面に直接又はアンカーコート層を介して塗布・乾燥・硬化することにより行うことができる。あるいは、耐溶剤性に優れる基材、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗膜形成材料を塗布・乾燥・硬化して塗膜を形成した後、上記塗膜面を熱ラミネートやドライラミネートなどにより熱可塑性樹脂シートの上記反対の面に直接又はアンカーコート層を介して貼合する方法を挙げることができる。
【0040】
上記塗膜形成材料としては、多官能アクリレート及び/又は多官能ウレタンアクリレートとポリイソシアネートとを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、梯子型のシロキサン結合を有する高分子とアクリルポリオール樹脂とを含む組成物、およびポリジメチルシロキサン部分を有する共重合体などの公知のものを挙げることができる。
【0041】
好ましくは、上記塗膜形成材料が、
(T−1)下記式(1):
【化1】
(ここで、R1およびR2は各々、1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリエーテル(メタ)アクリレート残基であり、R1における(メタ)アクリロイルオキシ基の数とR2における(メタ)アクリロイルオキシ基の数の合計が3以上、好ましくは3〜9、より好ましくは4である)を有するエタノールアミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート、
(T−2)1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、および
(T−3)光重合開始剤
を含み、成分(T−1)の水酸基の個数(Ta)と成分(T−2)のイソシアネート基の個数(Tb)との比(Ta/Tb)が0.5〜1.2、好ましくは0.7〜1.1の範囲にあるところの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる塗料である。この塗料は、化粧シートに優れた耐傷付き性、耐摩耗性、耐汚染性および耐折り曲げ性を付与することができる点で好ましい。また、この塗料は硬化速度が速いので製造ラインの速度を高めることができ、従ってコスト低下という点でも好ましい。
【0042】
上記式(1)におけるR1とR2は互いに同じでも異なっていてもよいが、R1とR2が同じであるのが好ましい。
【0043】
成分(T−1)は、酸素ラジカルを捕捉する働きをする。一般に、(メタ)アクリロイルオキシ官能基含有化合物はラジカル重合により硬化するところ、ラジカル重合性化合物は、空気中の酸素ラジカルにより重合阻害を受け易く、特に塗膜の表面では、酸素ラジカルにより硬化反応が遅くなる。表面が十分に硬化するように活性エネルギー線の照射時間を長くすると、製造ラインの速度が低下するとともに、塗膜内部では酸素ラジカルの影響が比較的少ないために、硬化反応が進み過ぎて塗膜が脆いものになり、したがって、耐折り曲げ性に劣るものになる。成分(T−1)は、上記式(1)の特定の構造を有するので、酸素ラジカルによる阻害を受けず、したがって、成分(T−1)を含有する塗膜形成材料は硬化反応速度が速く、かつ耐傷付き性、耐摩耗性、耐汚染性および耐折り曲げ性に優れた塗膜を形成することができる。成分(T−1)は、エタノールアミン残基を有し、エタノールアミン残基における窒素原子の隣のメチレン基の水素が引き抜かれてラジカルが発生し、そこに酸素ラジカルが結合して捕捉されると考えられる。
【0044】
成分(T−1)は、例えば、下記式(3)で示される化合物および下記式(4)で示される化合物をエタノールアミンとともに室温で反応させることにより製造することができる
。この反応は常温で高活性であり、触媒を必要としない。またゲル化を防止するために、溶剤等を加えて見かけの濃度を低くすることが好ましい。
R1−O−C(=O)−CH=CH
2 (3)
R2−O−C(=O)−CH=CH
2 (4)
ここで、R1およびR2は上記で定義した通りである。
【0045】
上記式(3)および(4)で示される化合物としては、例えば、ダイセル・サイテック株式会社製のTPGDA(商品名)(トリプロピレングリコールジアクリレート)およびOTA480(商品名)(グリセリンプロポキシトリアクリレート)、ならびに日本化薬株式会社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0046】
上記OTA480は、下記式(5)を有する化合物である。
【化2】
【0047】
成分(T−1)として特に好ましいのは、下記式(2)を有する化合物である。
【化3】
【0048】
成分(A)が上記式(2)を有する化合物であるとき、得られる組成物は保存安定性が良く、また、得られる塗膜は、耐折り曲げ性、三次元成形性、耐傷付性、耐磨耗性および耐汚染性のバランスが非常に良い。また、一般に、基材フィルムに塗料を塗布して得られる積層体を製造する製造ラインでは、積層体をロールに巻き取るときに積層体同士がブロッキングするのを防ぐために、塗膜の上にセパレータを置くのが通常であるが、成分(T−1)が上記式(2)の化合物である場合には、硬化反応が非常に速いので、セパレータを使用する必要がないという利点がある。
【0049】
成分(T−2)は、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物であり、例えば、上記成分(B)のために例示したものを使用することができる。塗膜の耐折り曲げ性および三次元成形性ならびに塗料の保存安定性の観点から、1分子中にイソシアネート基を3個以上有するものが好ましく、特に、下記式(6)で表される、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体でありかつイソシアネート環構造をもつものや、下記式(7)で表される、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体でありかつトリメチロールプロパンアダクト体であるものが好適に使用され得る。これらはヘキサメチレン鎖の先の互いに離れた位置にイソシアネート基が存在するという構造上の特徴があり、そのため、得られる塗膜は弾性、耐傷付性および耐磨耗性に優れる。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、成分(T−1)における水酸基と成分(B)におけるイソシアネート基との反応により硬化を生じる。硬化が十分に生じるように、上記組成物は、成分(T−1)の水酸基の個数(Ta)と成分(T−2)のイソシアネート基の個数(Tb)との比(Ta/Tb)が0.5〜1.2、好ましくは0.7〜1.1の範囲にある。上記比が上記下限未満であると、即ち成分(T−1)が成分(T−2)に対して少な過ぎるときは、得られる塗膜の伸び性、三次元成形性に劣る。また、上記上限を超えると、即ち成分(T−1)が成分(T−2)に対して多過ぎるときは、得られる塗膜が水性汚染物、例えば水性マジックに対する耐汚染性に劣る。
【0052】
なお、塗料において、成分(T−1)や成分(T−2)が多数の種類の副反応物を含んだままの状態で使用されることは当業者には常識であって、言うまでもない。したがって、上記水酸基の個数(Ta)およびイソシアネート基の個数(Tb)は、実測値が使用される。上記水酸基の個数(Ta)は、JIS−K−1557−1:2007に基づき、成分(T−1)の水酸基をアセチル化試薬(無水酢酸を含むピリジン溶液)によりアセチル化した後、過剰のアセチル化試薬を水により加水分解し、生成した酢酸を京都電子工業株式会社の電位差自動滴定装置AT−610型を使用して、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定する方法により決定される値である。上記イソシアネート基の個数(Tb)は、JIS−K−7301:1995に基づき、成分(T−2)のイソシアネート基をジノルマルブチルアミンと反応させた後、過剰のジノルマルブチルアミンを京都電子工業株式会社の電位差自動滴定装置AT−610型を使用して、塩酸水溶液で滴定する方法により決定される値である。
【0053】
成分(T−3)はラジカル重合型の光重合開始剤であり、公知のものを使用することができる。例えば、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アントラセン系化合物、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、オキシムフェニル酢酸エステル系化合物、ヒドロキシケトン系化合物およびアミノベンゾエート系化合物などの光重合開始剤が挙げられる。これらをそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中ではベンゾフェノン系化合物が、その反応機構が水素引抜によるラジカル発生型であるため好ましく、具体的には、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0054】
成分(T−3)の量は、他の成分の種類や所望の塗膜厚みにより適宜選択することができ、一般的には成分(T−1)100質量部に対して0.5〜10質量部程度である。例えば、成分(T−1)が上記式(2)の化合物であり、成分(T−2)が上記式(6)の化合物であり、成分(T−3)がベンゾフェノンであるとき、塗膜厚みが0.5〜30μmである場合には、成分(T−1)100質量部に対して成分(T−3)の量は4〜10質量部であり、塗膜厚みが30μm〜500μmである場合には、成分(T−1)100質量部に対して0.5〜8質量部である。塗膜厚みが薄いときの方が、概して成分(T−3)の量が多いのは、薄いほど酸素ラジカルによる硬化阻害の影響が起こり易いためである。
【0055】
成分(T−1)〜(T−3)を含む組成物は希釈のために必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、成分(T−1)、(T−2)および(T−3)と相溶性であり、かつこれらの成分と反応したりこれらの成分の自己反応を触媒したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエンおよびメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、ダイアセトンアルコールなどの公知のものを使用することができる。中でも、1−メトキシ−2−プロパノールを40質量%以上、より好ましくは80質量%以上含む溶剤が好ましい。
【0056】
上記溶剤の量は、塗工装置や塗膜厚みに応じて好適な粘度になるように適宜調節することができる。通常は、成分(T−1)100質量部に対して150〜250質量部である。
【0057】
上記塗膜形成材料は、所望により、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、赤外線遮蔽剤、レべリング剤、チクソ性付与剤、フィラー等の添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
実施例1
成分(A)の製造
表1に示す量(質量%)のアクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを反応器に入れ、希釈溶剤としての酢酸エチルおよび触媒としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリルと共に、窒素雰囲気下、温度70〜80℃で約10時間反応させて(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を得た。
【0060】
粘着剤層用塗工液の製造
上記で得た成分(A)100質量部を、表1に示す量(質量部)の成分(B)および(C)ならびに希釈溶剤としての酢酸エチルとともに混合して固形分45質量%の粘着剤層用塗工液を製造した。使用した成分(B)および(C)は以下の通りである。
成分(B):日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートL-55E(商品名)(下記式(8)で示されるトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3付加物(分子量656)が主成分、固形分55質量%、イソシアネート基の量9.7質量%)
成分(C):大八化学工業株式会社製のCR900(商品名)(臭素化有機燐酸エステル系難燃剤)
【0061】
【化6】
【0062】
成分(B)のイソシアネート基の量
実施例1で使用した成分(B)は、9.7質量%のイソシアネート基を含有するので、実施例1で使用した2.2質量部の成分(B)中のイソシアネート基の量は、2.2×9.7/100=0.21質量部である。
【0063】
化粧シートの製造
上記で得た塗工液を、乾燥後の厚みが45μmとなるように東レフィルム加工株式会社製の剥離フィルム(セラピールWZ(商品名)、厚み38μm)に塗布し、90℃で乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層が、熱可塑性樹脂シートとしてのリケンテクノス株式会社製のポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム(S4970FC25382(商品名)、厚み100μm)に接するように貼り合せて化粧シートを製造した。得られた化粧シートについて、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
【0064】
試験
(1)発熱性試験
上記で得られた化粧シートの剥離フィルムをはがし、厚さ0.27mmの鋼板(亜鉛メッキ鋼板)上に、鋼板と粘着剤層とが接するようにして貼り合わせて建築材料を得た。この建築材料に対し、建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を行なった。評価基準は以下の通りである。
【0065】
(イ)最大発熱速度
○:220kW/m
2未満
△:220kW/m
2以上、230kW/m
2未満
×:230kW/m
2以上
【0066】
(ロ)200kW超過時間
○:7sec未満
△:7sec以上、10sec未満
×:10sec以上
【0067】
(ハ)総発熱量
○:6MJ/m
2未満
△:6MJ/m
2以上、8MJ/m
2未満
×:8MJ/m
2以上
【0068】
(2)タック性(プローブタック)
上記で得られた化粧シートを23℃で7日間放置した後、粘着剤層のタック性を、JIS Z0237に従い、常温(23℃)、荷重100gf/cm
2、速度10mm/minおよび接触時間1secの条件で試験した。評価基準は以下の通りである。
○:7(N/Φ5mm面積)以上
△:4(N/Φ5mm面積)以上、7(N/Φ5mm面積)未満
×:4(N/Φ5mm面積)未満
【0069】
(3)施工性
上記で得られた化粧シートを23℃で7日間放置した後、プラスチック製スキージーを用いて化粧シートをパーティクルボードに貼り付ける際の施工性を評価した。シートのタック性が弱いと、仮止め時にシートが落下することがあり、施工性が劣る。また逆にタック性が強すぎると、仮止め後貼り付け位置を調整する際に剥れ難いため施工性が劣る。評価基準は以下の通りである。
○:良好な施工性を有する
△:やや施工性に劣る
×:施工性に劣る
【0070】
(4)粘着性
上記で得られた化粧シートを23℃で7日間放置した後、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に従い、SUS板を被着体として貼り付け、常温(23℃)で24時間放置後の180°ピール強度を速度300mm/minにて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:20(N/25mm)以上
△:15(N/25mm)以上20(N/25mm)未満
×:15(N/25mm)未満
【0071】
(5)耐熱性(寸法安定性)
上記で得られた化粧シートを23℃で7日間放置した後、12cm×12cmの大きさに切り取ってアルミ板に貼合せ、常温(23℃)で24時間放置した後、熱可塑性樹脂シート(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム)の表面中央部にカッターナイフで10cm×10cmの十字の切り込みを、その深さが粘着剤層に達するまで入れた。次いで、100℃に設定された熱風循環式オーブンで30分加熱し、取り出した。ナイフで入れた切込みの交差部分の広がり度合い(対角線の距離)を測定し、以下の基準で評価した。切込みの交差部分が広がることは、粘着剤層が熱により収縮して熱可塑性樹脂シートを引張ることによる結果である。
○:0.4mm未満
△:0.4mm以上0.6mm未満
×:0.6mm以上
【0072】
実施例2〜17および比較例1〜9
実施例1において成分(A)を構成するモノマーの量を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを製造し、評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から明らかなように、実施例1〜16の化粧シートは、不燃認定の規格を十分に満足し、かつ、タック性、施工性、耐熱性および粘着性に優れる。一方、成分(A−b)と成分(A−c)の量が本発明で規定する範囲外である比較例1〜8の化粧シートは、タック性、施工性、耐熱性および粘着性のいずれかに劣った。
【0075】
実施例18〜21および比較例10〜11
実施例1において成分(B)の量を表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを製造し、評価試験を行った。結果を、実施例1とともに表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例22〜24および比較例12〜13
実施例1において成分(C)のための化合物および/または量を表3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを製造し、評価試験を行った。結果を、実施例1とともに表3に示す。なお、表3中、「SAYTEX8010」は、アルベマール社製の臭素系難燃剤を示す商品名である。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例25
熱可塑性樹脂シートの、粘着剤層が積層された面とは反対の面にトップコート層を有する化粧シートを以下のように製造した。実施例1で使用した熱可塑性樹脂シートの片面に、下記で製造したトップコート層用塗料を、メイヤーバー方式の塗工装置を用い、乾燥後の塗膜厚みが11μmとなるように塗布し、乾燥および紫外線照射による硬化を行ってトップコート層を形成した。このときの製造ライン速度は、50m/分であった。なお、上記ライン速度は、上記トップコート層の形成を安定的に行うことができる最も速い速度である。次に、熱可塑性樹脂シートのトップコート層側と反対の面に、実施例1と同様の粘着剤層用塗工液を用いて実施例1と同様の方法で粘着剤層を形成して、トップコート層を有する化粧シートを製造した。得られた化粧シートを用いて上記試験(1)〜(5)および下記試験(6)〜(12)を行った。結果を表4に示す。
【0080】
成分(T−1)の合成
ダイセル・サイテック株式会社のOTA480(製品名、上記式(5)のグリセリンプロポキシトリアクリレート)と2−アミノエタノールとを前者2モルに対し後者1モルの比でガラス製のビーカーに仕込み、温度23℃で72時間反応させて、上記式(2)の構造を有する、4個のアクリロイルオキシ基を有するエタノールアミン変性ポリエーテルアクリレート(T−1−1)を得た。この単位量当たりの水酸基の個数は1.09モル/kgであった。
【0081】
比較成分(T−1)の合成
上記合成において、OTA480(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名)に替えてトリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック社製)を使用したこと以外は上記合成と同様にして、2個のアクリロイルオキシ基を有するエタノールアミン変性ポリエーテルアクリレート(T−1−2)を合成したこの単位量当たりの水酸基の個数は、1.51モル/kgであった。
【0082】
トップコート層用塗料の製造
成分(T−1)としての上記で合成した成分(T−1−1)100質量部、成分(T−2)としての日本ポリウレタン工業株式会社のコロネートHX(商品名、上記式(6)のポリイソシアネート、単位量当たりのイソシアネート基の個数:5.12モル/kg)(T−2−1)25質量部、成分(T−3)としてのベンゾフェノン(T−3−1)7質量部および希釈溶剤としての1−メトキシ2−プロパノール200質量部を共栄社株式会社のはじき防止剤(ポリフロー75(商品名))0.3質量部とともに混合してトップコート層用塗料を得た。なお、成分(T−1−1)100質量部における水酸基の個数(Ta)と成分(T−2−1)25質量部におけるイソシアネート基の個数(Tb)の比(Ta/Tb)は、1.09×100/(5.12×25)=109/128=0.85である。
【0083】
試験
(6)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4に従い、200g荷重の条件で、鉛筆{三菱鉛筆株式会社の「ユニ」(商品名)}を用いて、トップコート層表面の硬度を評価した。
【0084】
(7)耐傷付き性―1
上記で得られた化粧シートから長さ200mm×幅25mmの大きさの試験片を切り出し、これをトップコート層面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、荷重1Kgを載せて、試験片の表面を5往復擦った。上記表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:傷つかない
○:1〜3本の傷がある
△:4〜10本の傷がある
×:11本以上の傷がある
【0085】
(8)耐傷付き性―2
上記で得られた化粧シートから長さ150mm×幅75mmの大きさの試験片を切り出し、これをトップコート層面が表面になるように硝子板上に置いた。仲屋ブラシ工業製の4行真鍮ブラシ(荷重500gf)を用いて、試験片の表面を片道100mmの距離で10往復擦った。上記表面を目視観察し、上記(7)と同じ基準で評価した。
【0086】
(9)耐汚染性−1
上記で得られた化粧シートのトップコート層面を油性赤マジックによりスポット汚染した後、汚染部分を時計皿で被覆し、室温で24時間放置した。次いで、汚染部分を、イソプロピルアルコールを十分含ませたキムワイプ(商品名)を用いて、キムワイパに新たに汚れが付かなくなるまで拭いて洗浄した後、上記部分を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:汚染無し
○:汚染が僅かに残っている
△:汚染がかなり残っている
×:汚染が著しく残っている
【0087】
(10)耐汚染性−2
上記で得られた化粧シートのトップコート層面を水性赤マジックによりスポット汚染した後、汚染部分を時計皿で被覆し、室温で24時間放置した。次いで、汚染部分を、流水で十分洗浄した後、水道水を十分含ませたキムワイプ(商品名)を用いて、キムワイパに新たに汚れが付かなくなるまで拭いて洗浄した後、上記部分を目視観察し、上記(9)と同じ基準で評価した。
【0088】
(11)耐折り曲げ性
上記で得られた化粧シートから100mm×50mmの大きさに切り出したものを、日東電工製の両面テープNo.500Aを用いて厚さ0.3mmのアルミ板にトップコート層面が表面になるように貼り付けて試験片とした。この試験片を、直径2mmのマンドレルを取り付けたJIS K 5600−5−1タイプ1の折り曲げ試験装置を用いて、トップコート層面が外側になる様に2秒をかけて均等な速度で180°に折り曲げた。折り曲げ終了後、折り曲げた箇所の中央30mm部分についてトップコート層の割れの有無を確認し、以下の基準で評価した。
◎:クラック無し
○:クラックが1本ある
△:クラックが2〜3本ある
×:クラックが4本以上ある
【0089】
(12)外観性
上記で得られた化粧シートから100mm×100mmの大きさの試験片を切り出し、これを、トップコート層面が上側になるように、水平に配置した平滑なガラス板上に載せた。試験片の四隅のカールをガラス平面からの垂直な距離で測定し、その平均値を求め、以下の基準で評価した。
◎:2mm未満
○:2mm以上5mm未満
△:5mm以上10mm未満
×:10mm以上
【0090】
実施例26
成分(T−2)として住化バイエルウレタン株式会社のスミジュールHT(商品名、上記式(7)のポリイソシアネート、単位量当たりのイソシアネート基の個数:3.10モル/kg)(T−2−2)を42質量部の量で使用したこと以外は、実施例25と同様にして化粧シートを製造した。結果を表4に示す。
【0091】
実施例27〜30および参考例1〜2
成分(T−2)の配合量を表4のように変更したこと以外は実施例25と同様にして化粧シートを製造した。結果を表4に示す。
【0092】
参考例3
実施例30において、成分(T-1)として、上記で合成した比較成分(T−1−2)を使用したこと以外は実施例30と同様にして化粧シートを製造した。結果を表4に示す。
【0093】
参考例4
実施例25において、成分(T−1)として、トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック社製、単位量当たりの水酸基の個数:0モル/kg)(T−1−3)を使用し、成分(T−3)として、アルキルフェノン系光重合開始剤(チバ・ジャパン株式会社のダロキュア1173(商品名)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)(T−3−2)を5質量部の量で使用したこと以外は、実施例25と同様にして化粧シートを製造した。成分(T−3)としてベンゾフェノン(T−3−1)を使用しなかったのは、成分(T−1)が上記(T−1−3)であるとき、ベンゾフェノンでは硬化しないためである。結果を表4に示す。
【0094】
参考例5
実施例25において、成分(T−1)として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、水酸基の個数:0.63モル/kg)(T−1−4)を14質量部の量で使用し、成分(T−3)として、アルキルフェノン系光重合開始剤(チバ・ジャパン株式会社のダロキュア1173(商品名)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)(T−3−2)を5質量部の量で使用したこと以外は、実施例25と同様にして化粧シートを製造した。成分(T−3)としてベンゾフェノン(T−3−1)を使用しなかったのは、成分(T−1)が上記(T−1−4)であるとき、ベンゾフェノンでは硬化しないためである。結果を表4に示す。なお、上記(T−1−4)は、構造上は水酸基を有しないがアクリオリルオキシ基の一部が加水分解された成分を含むために水酸基が存在する。
【0095】
【表4】
【0096】
表4から分かるように、実施例25〜30の化粧シートは、不燃認定の規格を十分に満足し、かつ、タック性、施工性、耐熱性および粘着性に優れる。また、トップコート層を高いライン速度で形成することができ、上記トップコート層は、耐傷付き性、耐汚染性、耐折り曲げ性および外観性に優れる。一方、参考例1および2の化粧シートは、トップコート層における比(a/b)が0.5〜1.2の範囲外であり、耐傷付き性、耐汚染性および耐折り曲げ性のいずれかに劣った。参考例3の化粧シートは、成分(T−1)における(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3未満であり、耐傷付き性および耐汚染性に劣った。参考例4および5の化粧シートは、成分(T−1)がエタノールアミン残基を有さず、硬化速度が遅く、したがってライン速度が遅かった。また、耐傷付き性、耐汚染性、耐折り曲げ性および外観性のいずれかに劣った。