【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省「移動通信システムにおける三次元稠密セル構成及び階層セル構成技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図である。
本実施形態に係る通信システム10は、複数の無線基地局として、GPSなどにより互いに時刻同期している第一基地局110及び第二基地局120を備えている。これらの基地局110,120は、基地局間通信インターフェースとしての有線又は無線の通信回線を介して相互に通信することができる。各通信端末(以下「端末」という。)210,211,220,221へのデータ送信には、複数のアンテナを用いるMIMO(Multi Input Multi Output)伝送方式が用いられ、各端末210,211,220,221による通信時におけるスループットの向上、通信品質の向上および通信帯域の有効利用を実現できる。
【0014】
なお、本実施形態では、無線技術としてLTE(Long Term Evolution)/LTE−Advancedの標準規格に準拠した無線技術を用いた場合について説明するが、5Gの標準規格での採用が検討されている無線技術など、他の無線技術を用いた場合にも同様に適用することができる。また、本実施形態では、基地局との間で同一無線リソースを用いて通信可能な端末数が複数であるMU(Multi User)−MIMO伝送方式の例について説明するが、基地局との間で同一無線リソースを用いて通信可能な端末が1つであるSU(Single User)−MIMO伝送方式であっても同様に適用できる。なお、本実施形態では、MU−MIMO伝送方式により基地局との間で同一無線リソースを用いて通信可能な端末の数が2つである場合について説明するが、3つ以上であってもよい。
【0015】
また、本実施形態の通信システム10の基地局110,120は、基地局間通信インターフェースを介して互いに協調することにより、後述するように、各基地局110,120の無線通信エリア(以下「セル」ともいう。)が重複したセル境界エリアA(図中斜線で示すエリア)に在圏する端末に対し、協調送信対象のデータを協調送信することができる。
【0016】
セル境界エリアAに在圏する端末と無線通信可能な複数の基地局110,120のうちのいずれか1つの基地局は、複数の基地局110,120からデータを協調して送信する協調送信動作の開始および終了の判断および制御を行う機能を備える協調元の第一基地局である。協調元の第一基地局以外の他の基地局は、協調元の第一基地局によって協調動作させるように制御される被協調基地局としての協調先の第二基地局である。基地局110,120は、協調元基地局の機能と協調先基地局の機能の両方を持つことが可能であり、端末の状態に応じて端末毎に協調元基地局になったり、協調先基地局になったりすることができる。これらの基地局110,120は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の仕様においては「NodeB」と呼ばれたり、更に、LTEの仕様では発展型のNodeBとして「eNodeB(evolved Node B)」と呼ばれたりする場合がある。また、協調元の第一基地局はアンカー基地局やマスター基地局と呼ばれ、協調先の第二基地局はスレーブ基地局と呼ばれる場合もある。
【0017】
なお、本実施形態では、互いに協調する複数の基地局が2つである場合について説明するが、当該複数の基地局は3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、基地局110,120が互いに協調して無線通信する協調通信として、基地局110,120から端末210,211,220,221へデータ送信するダウンリンクの例で説明するが、端末210,211,220,221から基地局110,120へデータ送信するアップリンクの例においても適用可能である。
【0018】
本実施形態の通信システム10は、複数の基地局110,120に送信対象のデータを配信するコアノード装置(以下「コアノード」という。)130を含んでもよい。コアノード130は、例えばLTEにおけるEPC(Evolved Packet Core)であり、データ通信網141を介して外部のネットワークと通信することができる。コアノード130と複数の基地局110,120とは、パケット網などのデータ通信網140を介して接続されている。通信システム10は、データ通信網140を含んでもよい。また、通信システム10は、複数の基地局110,120から送信されるデータを受信可能な端末210,211,220,221を含んでもよい。また、端末210,211,220,221は、通信サービスの利用者によって使用されるためユーザー装置(UE:User Equipment)と呼ばれる場合があり、移動可能なものであるため移動局と呼ばれる場合もあり、また、無線機と呼ばれる場合もある。
【0019】
端末210,211,220,221は、携帯電話機等の移動通信端末であってもよく、基地局110,120及びデータ通信網140等で構築されるネットワークは、移動通信ネットワークのセルラーネットワーク(例えばコアネットワーク)であってもよい。データ通信網141は、インターネットやIMS(IP Multimedia Subsystem)などの外部ネットワークであってもよい。
【0020】
基地局110,120の無線通信エリアはそれぞれ、互いに大きさが異なるマクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル等の各種セルのいずれかであってもよい。本実施形態では、第二基地局120がマクロセル基地局であり、第二基地局120の無線管理エリアであるマクロセル120a内に、スモールセル基地局(「極小セル基地局」、「ピコセル基地局」、「フェムトセル基地局」などとも呼ばれる。)である第一基地局110が配置され、その無線管理エリアであるスモールセル110aの全体又は一部がマクロセル120aに含まれる異種セルサイズ混在型のヘテロジーニアスネットワーク(HetNet:Heterogeneous Network)が構成される。なお、この構成は、ホットスポットエリアを中心にマクロセル上に多数のスモールセルを重ねて配置されるもので、オーバレイセル構成とも呼ばれる。
【0021】
なお、本実施形態では、このようなHetNet構成を例に挙げて説明するが、
図2に示すように、第一基地局110及び第二基地局120のセル110a,120aが互いに部分的に重複して構成されるようなHetNet構成以外の構成(マクロセル同士が部分的に重複する構成、スモールセル同士が部分的に重複する構成など)にも、同様に適用することができる。
【0022】
本実施形態では、基地局110,120と端末210,211,220,221との間の無線通信方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式を用いた場合について説明する。
【0023】
図3は、OFDMA方式における無線リソースの概念を例示する説明図である。
基地局からのダウンリンクに採用されるOFDMA方式では、図示のように、所定周波数帯域を1単位とした周波数(F1,F2,F3,・・・)と、所定時間幅のサブフレームを1単位とした送信タイミングの時間(T1,T2,T3,・・・)とを指定することにより、無線リソースを割り当てる。例えば、図示の例では、ユーザーU1の端末に対して周波数F2,F3及び時間T2で指定される2ブロックの無線リソースが割り当てられ、ユーザーU2の端末に対して周波数F5及び時間T2で指定される1ブロックの無線リソースが割り当てられている。また、ユーザーU3の端末に対して周波数F4,F5及び時間T5,T6で指定される4ブロックの無線リソースが割り当てられ、ユーザーU4の端末に対して周波数F2及び時間T5で指定される1ブロックの無線リソースが割り当てられている。なお、本実施形態ではOFDMA方式を用いた通信システムについて説明するが、本発明はOFDMA方式以外の他の無線通信方式の用いた通信システムにも同様に適用することができる。
【0024】
また、本実施形態では一般的なLTEの実装に倣って、各基地局が、無線管理エリアであるセル内の無線リソースを管理する。
図1の例では、第一基地局110がスモールセル110aの無線リソースを管理し、第二基地局120がマクロセル120aの無線リソースを管理する。したがって、第一基地局110がスモールセル110aに在圏する端末210,211と
図3における無線リソースF1/T1を用いてMU−MIMO伝送方式により通信を行っている場合、第二基地局120が同じ無線リソースF1/T1を使ってマクロセル120aに在圏する端末220,221とMU−MIMO伝送方式により通信を行っているとき、例えば、スモールセル110a内の1つの端末210がセル境界エリアAに移動すると、干渉が発生して端末210の下り信号のスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれがある。
【0025】
第一基地局110と第二基地局120との協調によってセル境界エリアAに在圏する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制可能な基地局間協調方法としては、例えば、第一基地局110が端末210,211とF1/T1を用いて通信を行っている場合、第一基地局110からの協調要求に応じて、第二基地局120が同じ無線リソースF1/T1を使わずに(無線リソースF1/T1のデータ送信を停止する。)、異なる無線リソースF2/T2を使って端末220,221と通信するという第一の方法が挙げられる。この第一の方法は、例えば、ECO−LTE(Enhanced Cooperative−LTE)、eICIC(enhanced Inter−Cell Interference Coordination)などと呼ばれることがある。この第一の方法によれば、第二基地局120の無線リソースF1/T1による信号の干渉が無くなるため、セル境界エリアAに在圏する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制することができる。
【0026】
また、他の基地局間協調方法としては、例えば、第一基地局110が端末210,211と無線リソースF2/T1を用いて通信を行っており、これに干渉し得る別の無線リソースF1/T1を用いて第二基地局120が端末220,221と通信を行っている場合、第一基地局110からの協調要求に応じて、第二基地局120が端末220,221へ送信するデータと同じデータ(複製データ)を第一基地局110へ送信し、第一基地局110と第二基地局120から同じデータを同時送信するという第二の方法が挙げられる。この第二の方法では、第二基地局120が端末220,221と通信を行っている無線リソースF1/T1と同じ無線リソースF1/T1を用いて第一基地局110から複製データを送信することにより、第一基地局110と無線リソースF2/T1を用いて通信しているセル境界エリアAの端末210で干渉を発生させる第二基地局120からの信号(無線リソースF1/T1)を干渉信号から希望信号に変えることができる。よって、セル境界エリアAに在圏する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制できる。
【0027】
また、他の基地局間協調方法としては、例えば、第一基地局110が端末210,211と無線リソースF1/T1を用いて通信を行っている場合、第一基地局110からの協調要求に応じて、第二基地局120が第一基地局110から端末210,211へ送信されるデータと同じデータを同じ無線リソースF1/T1を用いて同時送信するという第三の方法が挙げられる。この第三の方法は、例えば、Coordinated Multiple Point(CoMP)と呼ばれ、CS/CB(Coordinated Scheduling/Coordinated Beamforming)、DPS(Dynamic Point Selection)、JT(Joint Transmission)などのタイプが知られている。この第三の方法でも、セル境界エリアAに在圏する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制できる。しかも、JTタイプであれば、第一基地局110から無線リソースF1/T1を用いて端末210がデータ受信する際に、第二基地局120から同時送信される同じデータの無線信号を受信することで、端末210の受信強度が高められ、端末210のスループットや通信品質等が第一基地局110のみと通信する場合(協調送信しない場合)よりも改善することが可能である。
【0028】
ところで、いずれの基地局間協調方法も、協調送信を行っている間、協調送信に用いる無線リソースF1/T1については、他の端末との通信には使用できない。例えば、上述した第一の方法や第三の方法において、協調先の第二基地局(対象基地局)120では、協調元の第一基地局110との協調送信に用いる無線リソースF1/T1を、自局のマクロセル120a内に在圏する他の端末との通信には使用できない。また、例えば、上述した第二の方法においては、協調元の第一基地局(対象基地局)110では、協調先の第二基地局120との協調送信に用いる無線リソースF1/T1(複製データの送信に用いる無線リソース)を、自局のスモールセル110a内に在圏する他の端末との通信には使用できない。
【0029】
ここで、従来の基地局間協調方法では、対象基地局において協調送信に用いる無線リソースF1/T1が利用できる状態であれば、対象基地局における通信負荷(通信トラフィック)の状況に関係なく、協調送信を行ってしまう。このとき、対象基地局の通信負荷が少なく、対象基地局の無線リソースに十分な余裕がある状況であれば、対象基地局のセル内における全体的なスループットの低下や通信品質の低下等を引き起こすことはない。しかしながら、対象基地局の通信負荷が高く、対象基地局の無線リソースに十分な余裕が無い状況では、対象基地局のセル内における全体的なスループットの低下や通信品質の低下等が発生してしまうおそれがある。その結果、協調送信によってセル境界エリアAに在圏する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制あるいは改善できても、第一基地局110と第二基地局120とを合わせた全体的なスループットの低下や通信品質の低下等が逆に発生してしまうという事態を引き起こすおそれがある。
【0030】
図4は、本実施形態に係る通信システム10における協調送信中における通信の一例を示す説明図である。
なお、以下の説明では、CoMPのJTタイプによる基地局間協調MU−MIMO伝送方式により協調送信する例について説明するが、上述した他の基地局間協調方法やそれ以外の基地局間協調方法により協調送信する場合にも適用することはできる。
【0031】
協調送信開始前においては、
図1に示したように、第一基地局110のスモールセル110a内には端末210,211が在圏しており、第一基地局110は、コアノード130から各端末210,211への送信対象データを受信すると、そのデータについて生成された無線電波の送信信号を、第一基地局110の無線リソースF1/T1を用いて、MU−MIMO伝送方式により、スモールセル110a内の各端末210,211へ送信する。また、第二基地局120のマクロセル120a内には端末220,221が在圏しており、第二基地局120は、コアノード130から各端末220,221への送信対象データを受信すると、そのデータについて生成された無線電波の送信信号を、第二基地局120の無線リソースF1/T1を用いて、マクロセル120a内の各端末220,221へ送信する。
【0032】
いずれの端末210,211,220,221も、スモールセル110aとマクロセル120aとのセル境界エリアAから十分離れていれば、基地局110と基地局120が互いに干渉し得る無線リソースを使って(例えば、前述したOFDMAの場合では、同一又は近い周波数帯域および同一又は近い時刻に)、端末210および端末220に信号を送信したとしても、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波)および端末220が基地局110から受信する信号(干渉波)は十分小さく無視することができ、干渉によるスループットの低下や通信品質の低下等を発生させずに、それぞれ通信を行うことができる。
【0033】
しかしながら、例えば、端末210が移動してセル境界エリアAに入ると、端末210が第二基地局120から受信する信号(第二基地局120が端末221,220と通信している信号)が無視できなくなり、これが干渉波となって端末210における通信特性を劣化させる。特に、本実施形態では、第二基地局120が端末221,220と通信している無線リソースF1/T1は、第一基地局110が端末210と通信している無線リソースF1/T1と同じであるため、干渉が大きいものとなりやすい。
【0034】
そこで、本実施形態では、
図4に示すように、端末210が移動してセル境界エリアAに入ったら、基地局110と基地局120は、端末210に対し、基地局間協調MU−MIMO伝送方式を用いた協調送信を開始し、端末210における通信特性を改善する。
【0035】
ここで、本実施形態では、いずれの基地局110,120も最大4ストリームの通信経路を構築でき、端末210,211,220,221はいずれも最大2ストリームの通信経路を構築できる構成である。そのため、協調送信開始前においては、第一基地局110と端末210,211との間のMU−MIMO伝送方式による通信では、各端末210,211につき、第一基地局110との間でそれぞれ2ストリームずつの通信経路が構築される。同様に、第二基地局120と端末220,221との間のMU−MIMO伝送方式による通信では、各端末220,221につき、第二基地局120との間でそれぞれ2ストリームずつの通信経路が構築される。
【0036】
セル境界エリアAに入った端末210に対して基地局間協調MU−MIMO伝送方式による協調送信を行う場合、端末210は、第一基地局110及び第二基地局120との間でそれぞれ1ストリームずつの通信経路を構築する。したがって、第一基地局110と端末210との間の通信経路は1ストリーム分だけ減り、その分の無線リソースが空くことになる。そのため、例えば、
図4に示すように、その無線リソースを用いて他の端末212と通信することが可能となる。一方、第二基地局120との間の通信経路は1ストリーム分だけ増やす必要があるので、その分の無線リソースを確保する必要がある。そのため、例えば、
図4に示すように、第二基地局120と端末220との間の通信経路を1ストリーム分だけ減らし、その分の無線リソースを端末210の通信経路として用いる。
【0037】
このように、セル境界エリアAに入った端末210に対して基地局間協調MU−MIMO伝送方式による協調送信を行う場合、第二基地局120においては、その協調送信のために自局の無線リソースを用いる必要があり、その無線リソースは自局のセル120a内に在圏する他の端末には使用できない。そのため、協調送信を行う際に第二基地局120の通信負荷が高く、第二基地局120の無線リソースに十分な余裕が無い状況であった場合には、上述したように端末220との通信に用いていた無線リソースを減らして協調送信に用いたり、上述したように端末220との通信に用いていた無線リソースを減らして協調送信に用いたり、無線リソースの待ち時間が増えたりして、第二基地局120のマクロセル120a内における全体的なスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれがある。この場合、協調送信によってセル境界エリアAに在圏する端末210のスループットや通信品質等が改善されても、第一基地局110と第二基地局120とを合わせた全体的なスループットの低下や通信品質の低下等が逆に発生してしまうという結果を招くおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態においては、第一基地局110と第二基地局120の全体的なスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれのある協調送信を禁止し、協調送信によって当該全体的なスループットの低下や通信品質の低下等を抑制する。以下、協調送信の処理手順について、詳細を説明する。
【0039】
図5及び
図6は、第一基地局110のスモールセル110a内に在圏していた端末210がセル境界エリアAに移動して基地局110,120間の協調送信を開始するときの処理手順の一例を示すシーケンス図である。
なお、
図5及び
図6の例では、
図1の例と同様、第一基地局110のスモールセル110a内に2つの端末210,220が在圏し、第二基地局120のマクロセル120a内に2つの端末220,221が在圏する例を示しているが、各セルに在圏する端末の数は図示のものに限定されない。
【0040】
図5及び
図6において、コアノード130から第一基地局110を介して、その基地局110のスモールセル110aに在圏する各端末210,211へデータが送信される通常のデータ送信が行われると、各端末210,211は、第一基地局110及び第二基地局120を含む近隣の基地局からの電波の受信強度を計測し、その計測結果を無線通信の品質情報(以下、適宜「無線通信品質情報」という。LTEでは「Measurement Report」とも呼ばれる。)として、それぞれ第一基地局110へ送信する(S1)。
【0041】
同様に、コアノード130から第二基地局120を介して、その基地局120のマクロセル120aに在圏する各端末220,221へデータが送信される通常のデータ送信が行われると、各端末220,221が、第一基地局110及び第二基地局120を含む近隣の基地局の電波の受信強度を計測し、その計測結果を無線通信品質情報として第二基地局120へ送信する(S1)。
【0042】
第一基地局110は、例えば、端末210から受信した無線通信品質情報に基づいて、第一基地局110及びその近隣の第二基地局120の電波の受信強度の差が予め定められた閾値(協調送信開始閾値)以下(所定の品質基準)であるという協調通信条件を満たすか否かを判断する(S2)。そして、協調送信開始閾値以下であると判断した場合(協調通信条件を満たす場合)、第一基地局110は、各基地局110,120の双方のセル110a,120aが重複しているセル境界エリアA内に端末210が位置しているものと判断し、基地局間協調MU−MIMO伝送方式を用いた協調送信の処理を開始し、協調送信の開始を要求するための協調要求を第二基地局120へ送信する(S3)。このとき、端末210に対しては、第一基地局110が協調元の第一基地局として機能し、第二基地局120が協調先の第二基地局として機能する。
【0043】
なお、協調元基地局や協調先基地局の機能は基地局毎にあらかじめ決められているものではない。例えば、第二基地局120のマクロセル120a内に在圏する端末220がセル境界エリアAに移動して協調送信を開始する場合、この端末220に対しては、第二基地局120が協調開始を判断する協調元基地局となり、第一基地局110が協調先基地局となる。このように、各基地局は、端末毎に協調元基地局の機能と協調先基地局の機能の両方を有することができる。
【0044】
第二基地局120は、第一基地局110から協調要求を受信すると、本実施形態では、まず、自局が通信負荷の高い状態であるか否かを判断する(S4)。第二基地局120は、自局の無線管理エリアであるマクロセル120a内の無線リソースを自ら管理しているため、その無線リソースの空き状況が所定の規定値を下回っているという高通信負荷条件を満たす場合には、自局が通信負荷の高い高通信負荷状態であると判断し、この高通信負荷条件を満たさない場合には、高通信負荷状態ではないと判断する。無線リソースの空き状況は、例えば、第二基地局120のマクロセル120a内に在圏する端末の数や、第二基地局120と第二基地局120のマクロセル120aに在圏する端末との通信量などから判断することができる。
【0045】
なお、第二基地局120が通信負荷の高い状態であることを示す高通信負荷条件の判断は、これらの端末の数や通信量に限らず、第二基地局120の通信負荷と相関のある他の情報(時間帯、日にち、曜日、季節など)を用いてもよい。例えば、
図7(a)及び(b)はそれぞれ、HetNet構成における日中及び深夜のユーザー(端末)の2次元分布の一例を示す説明図である。なお、
図7で表される濃淡パターンは、濃い地点ほど端末の受信強度(SINR[dB])が低く、薄い地点ほど端末の受信強度が高いことを示している。
図7(a)に示す日中の時間帯では、ユーザーの多くが外出しており、駅などのホットスポットエリアにユーザーが集中しやすい。そのため、日中の時間帯には、
図7(a)に示すように、ホットスポットエリアに設置されるスモールセル基地局(第一基地局110)のスモールセル内に端末が集中的に分布する傾向が見られる。一方、
図7(b)に示す深夜の時間帯では、ユーザーの多くが自宅に滞在しており、ユーザーが分散しやすい。そのため、深夜の時間帯には、
図7(b)に示すように、スモールセル基地局(第一基地局110)のスモールセル内には端末が集中せず、マクロセル基地局(第二基地局120)のマクロセル内に端末が多く分布する傾向が見られる。このように、時間帯の情報は、各基地局110,120の通信負荷の判断情報として用いることができる。
【0046】
ここで行われる高通信負荷条件の判断は、従来の基地局間協調MU−MIMO伝送方式において協調要求を受信したときに行う空きリソースのチェック処理(協調用リソースとして使用可能な空きリソースを確認する処理)とは異なる。すなわち、本実施形態における高通信負荷条件の判断は、従来の空きリソースのチェック処理において空きリソースがあることを確認できた場合でも、無線リソースの空き状況が所定の規定値を下回っていれば、高通信負荷条件を満たすと判断する。この高通信負荷条件(所定の規定値)は、第二基地局120において、基地局間協調MU−MIMO伝送方式での協調通信を行うための空きリソースは有るが、この協調通信を行ってしまうと自局のマクロセル120a内における全体的なスループットの低下や通信品質の低下等を引き起こしてしまうおそれのある状態(高通信負荷状態)であることを特定できる条件に設定される。この観点で設定される限り、高通信負荷条件(所定の規定値)は、任意に設定できる。
【0047】
第二基地局120は、自局が高通信負荷状態ではないと判断した場合(高通信負荷条件を満たさない場合)には(S4のNo)、
図5に示すように、データ協調送信に使用可能な無線リソース(空きリソース)を協調用リソースの候補として決定して、空きリソースに関する空きリソース情報とともに、前記協調要求に応答する協調応答を第一基地局110へ返信する(S5)。
【0048】
第一基地局110は、第二基地局120から受信した空きリソース情報に基づいて、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に用いる協調用リソースを決定し、その協調用リソースをデータ協調送信時に用いるためのリソース制御を行う(S6)。その後、第一基地局110は、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信の開始を決定し、協調送信の開始を第二基地局120に伝えるために、前記決定した協調送信に用いる協調用リソースの情報とともに、協調送信開始通知を第二基地局120へ送信する(S7)。協調送信開始通知を受信した第二基地局120は、自局の協調用リソースを端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に使用するようにリソース制御を行う(S8)。
【0049】
このリソース制御では、協調先の第二基地局120は、協調元の第一基地局110が協調用リソースとして割り当てる無線リソースF1/T1と同じ無線リソースF1/T1を協調用リソースとして割り当てる。このリソース制御により決定された同一の無線リソースF1/T1を用いることで、協調元の第一基地局110及び協調先の第二基地局120は、同一の時刻に同じデータを基地局間協調MU−MIMO伝送方式により送信する協調送信を行う。
【0050】
一方、第二基地局120が高通信負荷状態であると判断した場合(高通信負荷条件を満たす場合)には(S4のYes)、第二基地局120は、
図6に示すように、前記協調要求に対応する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を禁止することを決定し、協調送信の禁止を第一基地局110に伝えるために協調送信禁止通知を第一基地局110へ送信する(S9)。この協調送信禁止通知を受信した第一基地局110は、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を禁止する決定を行う(S10)。これにより、第一基地局110は、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行わず、それまでどおり、端末210へのデータ送信を、第二基地局120と協調せずに、MU−MIMO伝送方式により端末210へ送信する。
【0051】
この場合、セル境界エリアAに位置する端末210は、第二基地局120からのデータ送信によって干渉を受けて第一基地局110からの下り信号のスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれがあり、干渉は抑制されない。しかしながら、その干渉を抑制するために基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行った場合に生じ得る、第一基地局110及び第二基地局120を合わせた全体的なスループットの低下や通信品質の低下等を防止することができる。
【0052】
本実施形態によれば、第二基地局120が高通信負荷状態でない場合には、第一基地局110からの協調要求に応じてセル境界エリアAに位置する端末210の干渉を抑制するために基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信が行われ、干渉による端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制できる。この場合、第二基地局120の無線リソースには十分な余裕があるため、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信が行っても、自局のマクロセル120a内の端末に対するスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれはない。そして、端末210のスループットの低下や通信品質の低下等が抑制されたことで、第一基地局110及び第二基地局120を合わせた全体的なスループットの低下や通信品質の低下等は抑制される。
【0053】
一方、第二基地局120が高通信負荷状態にある場合、この状態で基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行うと、第二基地局120のマクロセル120a内の端末に対するスループットの低下や通信品質の低下等が発生するおそれがある。この場合、本実施形態によれば、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信が禁止されるため、セル境界エリアAに位置する端末210のスループットの低下や通信品質の低下等を抑制できないが、第二基地局120のマクロセル120a内の端末に対するスループットの低下や通信品質の低下等は抑制される。したがって、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行った場合(端末210のスループットの低下や通信品質の低下等が抑制され、第二基地局120のマクロセル120a内のスループットの低下や通信品質の低下等が発生した場合)よりも、第一基地局110及び第二基地局120を合わせた全体的なスループットや通信品質等を改善することが可能である。
【0054】
〔シミュレーション評価〕
基地局間協調MU−MIMO伝送方式による協調送信(ダウンリング)において、対象基地局が高通信負荷条件を満たす場合に協調送信を禁止することの効果について評価するシミュレーションを行った。詳しくは、基地局間の協調送信を行わないSU−MIMO伝送方式と、対象基地局における通信負荷(通信トラフィック)の状況に関係なく協調送信を行う基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調送信の禁止なし)と、本実施形態のように対象基地局が高通信負荷条件を満たす場合に協調送信を禁止する基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調送信の禁止あり)との3方式において、通信システム全体のスループットを比較する評価を行った。
【0055】
図8(a)は、マクロセル基地局(第二基地局120)に通信トラフィックが集中した場合における通信システム全体のスループットについて計算したシミュレーション評価結果の一例を示すグラフである。
図8(b)は、スモールセル基地局(第一基地局110)に通信トラフィックが集中した場合における通信システム全体のスループットについて計算したシミュレーション評価結果の一例を示すグラフである。
これらのグラフの横軸は通信システム全体の単位周波数あたりのスループット[bit/s/Hz]であり、縦軸は端末のスループットの累積確率分布(CDF:Cumulative Distribution Function)[%]である。
【0056】
表1は、本シミュレーションで用いた主なシミュレーション諸元の一覧表である。
【表1】
【0057】
SU−MIMO伝送方式では、セル境界エリアAの位置する端末210が隣接基地局からのデータ送信による干渉を受けてスループットが低下し、これにより通信システム全体のスループットも低下する。これに対し、基地局間協調MU−MIMO伝送方式によれば、セル境界エリアAの位置する端末210が受ける干渉が小さくなり又は無くなり、当該端末210の当該干渉によるスループットの低下が抑制される結果、
図8(a)及び(b)のいずれの場合でも、通信システム全体のスループットが改善されている。
【0058】
また、本実施形態のように対象基地局が高通信負荷条件を満たす場合には協調送信を禁止する制御を実行した基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止あり)では、この制御を実行しない基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止なし)よりも、更に通信システム全体のスループットが改善されている。具体的には、基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止あり)では、基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止なし)に対し、通信システム全体のスループットが平均で約10[%]〜20[%]の改善が確認された。
【0059】
これは、基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止なし)の場合、例えば、マクロセル基地局(第二基地局120)に通信トラフィックが集中した状況でも、マクロセル基地局(第二基地局120)は、協調先の基地局となる協調送信の際に自局の無線リソースを割り当てることになる。協調送信に割り当てる無線リソースは、自局のマクロセル120a内に在圏する他の端末との通信(MU−MIMO伝送方式による通常の通信)には使用できない。そのため、マクロセル基地局(第二基地局120)に通信トラフィックが集中した状況だと、マクロセル120aにおける全体的なスループットが低下してしまい、通信システム全体のスループットを押し下げることになる。
【0060】
これに対し、基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止あり)の場合、例えば、マクロセル基地局(第二基地局120)に通信トラフィックが集中した状況では、マクロセル基地局(第二基地局120)は、協調先の基地局となる協調送信の際に自局の無線リソースを割り当てない。この場合、協調送信により端末210のスループットの低下が抑制される効果は得られないが、協調送信を行うことによるマクロセル120aの全体的なスループットの低下は抑制される。その結果として、通信システム全体のスループットが押し下げることがなく、基地局間協調MU−MIMO伝送方式(協調禁止なし)に比べて通信システム全体のスループットの改善効果が得られる。
【0061】
図9は、協調送信中の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
以降、FDD(Frequency Division Duplex)システムを例に記載するが、一部の処理を除いてはTDD(Time Division Duplex)システムも同じ制御を行うことで実現可能である。FDDシステムとTDDシステムにおける大きな違いは、基地局側でのダウンリンクのチャネル状態の取得方法である。FDDシステムにおいては端末からフィードバックされるチャネル状態を用いる。一方、TDDシステムにおいては上下リンクの伝搬チャネルの可逆性を利用して、アップリンクの信号からダウンリンクの伝搬チャネルの状態を推定することも可能である。
【0062】
図9において、協調元の第一基地局110から協調先の第二基地局120へ協調送信開始通知が送信された後、協調元の第一基地局110は、セル境界エリアAの端末210に協調開始コマンドを送信する(S11)。端末210は、協調元の第一基地局110から協調送信開始コマンドを受信すると、第一基地局110から協調送信されてくるデータを処理するための所定の協調送信用プログラムを起動して協調送信処理を開始し、協調送信データを処理可能な状態になる。そして、端末210は、協調元の第一基地局110および協調先の第二基地局120からのダウンリンクの伝搬チャネルの状態(CSI:Channel State Information)を含むフィードバック情報(LTEではCSIフィードバックとも呼ばれる。)を第一基地局110に送信する(S12)。
【0063】
協調元の第一基地局110は、フィードバック情報を端末210から受信すると、そのフィードバック情報を複製して、複製したフィードバック情報を協調先の第二基地局120へ送信する(S13)。また、第一基地局110は、受信したフィードバック情報に基づいて、基地局間協調MU−MIMO伝送方式で端末210に協調送信するデータに適用する送信ウェイト(3GPPの仕様では「Precoding Matrix」とも呼ばれる。)の値を計算する(S14)。一方、協調先の第二基地局120でも、第一基地局110から送信されてくるフィードバック情報に基づいて、基地局間協調MU−MIMO伝送方式で端末210に協調送信するデータに適用する送信ウェイトの値を同様に計算する(S14)。
【0064】
この送信ウェイトは、MIMO伝送方式における複数の送信アンテナそれぞれから送信する送信信号に乗算される複素数からなる重み係数である。例えば、この送信ウェイトの値は、協調元の第一基地局110からセル境界エリアAの端末210へ送信される送信信号が、セル境界エリアAの端末210において協調先の第二基地局120から端末210へ送信されるデータの送信信号と同位相になるように計算される。この送信ウェイトを用いることで、端末210において、第一基地局110から受信するデータ信号と第二基地局120から受信するデータ信号とが互いに強め合って受信され、基地局110,120から端末210へ送信されるデータの通信品質が改善される。
【0065】
図9の例では、端末210からの伝搬チャネル状態のフィードバック情報をもとに、送信ウェイトの計算を各基地局110,120で行う例であるが、端末210が伝搬チャネル状態をもとに送信ウェイトを計算し、計算した送信ウェイトを基地局110へ送信するフィードバック情報に含めてもよい。
【0066】
協調元の第一基地局110は、協調送信対象の端末210に対する送信データをコアノード130から受信すると、受信した送信データを複製し、所定の協調送信の制御情報(協調送信制御情報)とともに、その複製データを協調先の第二基地局120へ送信する(S15)。第一基地局110から第二基地局120への複製データの送信には、LTEの基地局間接続の標準インターフェースであるX2インターフェース等の基地局間通信インターフェースを介して、GTPv2(GPRS Tunneling Protocol Version2)などのトンネリングプロトコルを用いることができる。
【0067】
次に、協調元の第一基地局110は、コアノード130から受信した送信データにステップS14で計算した送信ウェイトを乗算して送信信号を生成する(S16)。そして、第一基地局110は、生成した送信信号を、予め設定した協調用リソースを用い、予め設定したデータ協調送信タイミングで、セル境界エリアAの端末210へ送信する(S17)。一方、協調先の第二基地局120は、第一基地局110から受信した複製データにステップS14で計算した送信ウェイトを乗算して送信信号を生成する(S16)。そして、第二基地局120は、生成した送信信号を、予め設定した協調用リソースを用い、予め設定したデータ協調送信タイミングで、セル境界エリアAの端末210へ送信する(S18)。
【0068】
図9の協調送信では、協調元の第一基地局110と協調先の第二基地局120とがGPSなどにより時刻同期されていれば、両基地局110,120から、協調送信制御情報に含まれるデータ協調送信タイミングで協調送信を行うことができる。しかも、協調元の第一基地局110からセル境界エリアAの端末210へ送信される送信データの信号を、協調先の第二基地局120から端末210へ送信される複製データの信号によって強めることができるので、セル境界エリアAの端末210の受信強度を高め、送信データの通信品質を改善することができる。
【0069】
端末210において、協調元の第一基地局110および協調先の第二基地局120からの伝搬チャネルの状態は刻一刻と変化する情報である。したがって、端末210からのフィードバック情報は比較的短い周期で送信される。例えば、LTEでは、CSIフィードバックは最短1ミリ秒ごとに端末から基地局へ送信される。したがって、
図9に示す協調送信中の処理手順は、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行っている間は、端末210からフィードバック情報が受信されるたびに繰り返し実施される。以上により、刻一刻と変化する伝搬チャネルの状態に合わせて最適なMCS情報や送信ウェイトを計算することで、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を実行することができる。
【0070】
図10は、本実施形態における協調送信中の協調元の第一基地局110及び協調先の第二基地局120の通信レイヤ構造の一例を示す機能ブロック図である。
各基地局110,120は、データ収斂プロトコル層(PDCP層)111,121、無線リンク制御層(RLC層)112,122、メディアアクセス制御層(MAC層)113,123、及び物理層(PHY層)114,124からなる、多層の通信レイヤ構造を有している。
【0071】
PDCP層111,121では、データの圧縮及び暗号化並び伸張及び復号化等の処理を行う。RLC層112,122では、データの分割、結合、順序制御及び再送(ARQ:Automatic Repeat Request)等の処理を行う。MAC層113,123では、データの送信のスケジューリング、多重化、再送(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)等の処理を行う。
【0072】
PHY層114,124では、端末210,211,220,221との間で送受信される高周波の送受信信号の変調、復調、符号化等の処理を行う。また、協調元の第一基地局110の場合、PHY層114は、セル境界エリアAに在圏する端末210に対する送信データに、フィードバック情報に基づいて予め計算した送信ウェイトを適用して送信信号を生成する。協調先の第二基地局120の場合、PHY層124は、セル境界エリアAに在圏する端末210に対する送信データの複製データに、フィードバック情報に基づいて予め計算した送信ウェイトを適用して送信信号を生成する。また、このPHY層114,124は、端末210,211,220,221と無線通信する無線通信部として機能する。
【0073】
協調元の第一基地局110の制御部117は、協調開始時に、協調元の第一基地局110および協調先の第二基地局120それぞれにおいてデータの協調送信に用いる協調用リソース(例えば周波数)を決定する。
【0074】
また、複数の基地局110,120はそれぞれ、基地局間通信部115,125とスケジューラ116,126と協調用リソース制御部118,128とを備えている。基地局間通信部115,125は、有線又は無線の通信回線を用いたX2インターフェース等の基地局間通信インターフェースを介して、自局以外の他の基地局と通信するものである。
【0075】
スケジューラ116,126はそれぞれ、各基地局110,120における処理・動作を制御する制御部117,127の一部を構成し、どの無線リソースを使用して送信するか、どの変調方式を用いて送信するか、どの符号化方式を用いて送信するかなどを決定し、前述のRLC層112,122、MAC層113,123及びPHY層114,124を制御して、データの送信を行う。例えば、協調元の第一基地局110のスケジューラ116は、どの協調用リソースを使用して送信するかを決定し、協調送信中において、協調元の第一基地局110のRLC層112、MAC層113、PHY層114を制御する。また、協調先の第二基地局120のスケジューラ126は、協調送信中において、第二基地局120のRLC層122、MAC層123、PHY層124を制御する。
【0076】
協調元の第一基地局110は、協調先の第二基地局120からの協調応答を受信したときに、協調送信対象の送信データの協調用リソースを制御するための協調用リソース制御部118を備えている。また、協調先の第二基地局120は、協調元の第一基地局110から送信される協調用リソース情報等に基づいて、協調送信対象の複製データの協調用リソースを制御するための協調用リソース制御部128を備えている。
【0077】
図10において、協調元の第一基地局110は、コアノード130から端末210への送信データを受信すると、PDCP層121、RLC層122、MAC層123の処理を施してMAC−PDUと呼ばれるデータを生成する。また、協調元の第一基地局110のスケジューラ116は、端末210からのフィードバック情報より、MAC−PDUに適用する変調方式や符号化方式の情報(MCS情報)などを計算する。そして、協調元の第一基地局110の協調用リソース制御部118は、協調先の第二基地局120のMAC層123から通信回線を介して、協調送信対象のMAC−PDUを送信する。このMAC−PDUは、協調先の第二基地局120のPHY層124へ送られる。
【0078】
また、協調先の第二基地局120の協調用リソース制御部128は、協調元の第一基地局110のスケジューラ116から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信制御情報(データ協調送信タイミングの情報、MCS情報等)を受信する。このとき、協調送信制御情報は、MAC−PDUのヘッダ情報などに含まれていてもよい。第二基地局120の協調用リソース制御部128は、協調元の第一基地局110から受信した協調送信制御情報に基づいて、協調先の第二基地局120内のPHY層124におけるMAC−PDUの処理をする。具体的には、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層124における変調処理および符号化処理をMAC−PDUに実施する。さらに、協調先の第二基地局120のPHY層124では、前記の変調処理および符号化処理を施したMAC−PDUに、前記計算した送信ウェイトを乗算し、データ協調送信タイミング情報に指定された時間にPHY層124からセル境界エリアA内の端末210に対する送信処理を行う。
【0079】
一方、
図10において、協調元の第一基地局110の協調用リソース制御部118は、前述のスケジューラ116が計算したMCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層114における変調処理および符号化処理をMAC−PDUに実施するとともに、データ協調送信タイミング情報に指定された時間にPHY層114からセル境界エリアA内の端末210に対する送信処理を行う。
【0080】
なお、協調用リソース制御部118を独立に設けずに、協調用リソース制御部118の機能を、協調元の第一基地局110内の制御部117に組み込むように構成してもよい。同様に、協調用リソース制御部128を独立に設けずに、協調用リソース制御部128の機能を、協調先の第二基地局120内の制御部127に組み込むように構成してもよい。
【0081】
前記構成の通信システムに用いる基地局110,120のハードウェアは、例えば、アンテナのほか、送信増幅器、受信増幅器、無線信号処理部、ベースバンド信号処理部、有線伝送路インターフェース部、コンピュータ装置などで構成される。また、これらのハードウェア構成のうち、アンテナ、送信増幅器及び受信増幅器は前述の無線通信部に対応し、有線伝送路インターフェース部は前述の基地局間通信部に対応する。コンピュータ装置は、例えばマイクロコンピュータで構成され、前述の制御部117,127や協調用リソース制御部118,128として機能し、予め組み込まれた所定の制御プログラムに基づいて各部を制御する。特に、コンピュータ装置は、所定の制御プログラムに基づいて無線信号処理部やベースバンド信号処理部を制御することにより、例えば前述のPDCP層、RLC層、MAC層及びPHY層などの複数の通信レイヤ構造を介して、送受信のデータや信号を処理する。
【0082】
図11は、セル境界エリアA内で協調送信していた端末210が第二基地局120のマクロセル120aへ移動した際の協調終了時の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図11において、端末210が第一基地局110へ無線通信品質情報を送信すると(S21)、協調元の第一基地局110は、その無線通信品質情報に基づいて、例えば、第二基地局120の電波受信強度が、第一基地局110の電波受信強度より、予め定められた閾値(協調終了閾値)だけ大きくなったときに、端末210がセル境界エリアAから出て協調先の第二基地局120のマクロセル120aに在圏するようになったと判断し、基地局間協調MU−MIMO伝送方式による協調送信の終了を決定する(S22)。そして、協調元の第一基地局110は、協調終了要求を協調先の第二基地局120へ送信する(S23)。
【0083】
協調先の第二基地局120は、協調元の第一基地局110から協調終了要求を受信すると、協調送信終了処理を実行し(S24)、協調用リソースを開放したり、協調元の第一基地局110へ協調終了応答を送信したりする処理を行う。協調元の第一基地局110は、協調先の第二基地局120から協調終了応答を受信すると、協調送信終了処理を実行し(S25)、協調終了コマンドを端末210へ送信する処理を行う(S25)。端末210は、協調終了コマンドを受信すると、前記起動していた協調送信用プログラムを停止して協調送信終了処理を実行し(S26)、通常のデータ通信が可能な状態になると、協調終了成功応答を第一基地局110へ送信する。その後、端末210の基地局110から基地局120へのハンドオーバ処理を実行し、その後は、コアノード130から第二基地局120を介して端末210へデータが送信される通常のデータ送信(MU−MIMO伝送方式によるデータ通信)が行われる。
【0084】
なお、本実施形態では、互いに協調する第一基地局110及び第二基地局120からセル境界エリアAに位置する端末210へ同じデータ信号を同時に送信することで端末210の受信強度を高める協調方法を例に挙げたが、これに限らない。例えば、互いに協調する第一基地局110及び第二基地局120からセル境界エリアAに位置する端末210へ異なるデータ信号(端末210へのデータ信号を各基地局110,120へ分配したもの)を送信することで端末210のスループットを高める協調方法であっても、本実施形態は同様に適用可能である。
【0085】
また、本実施形態では、第一基地局110のスモールセル110a内に在圏していた端末210がセル境界エリアAに移動して基地局110,120間の協調送信を開始し、その後、端末210が第二基地局120のマクロセル120aへ移動して第二基地局120との間の通常のデータ通信に戻る例について説明したが、これに限らない。例えば、基地局110,120間の協調送信を開始した後の端末210が、再び第一基地局110のスモールセル110aへ移動したり、これらの基地局110,120以外の基地局のセルへ移動したりして、通常のデータ通信に戻る場合も、同様に適用可能である。また、基地局110,120間の協調送信を開始した後の端末210が、これらの基地局110,120とは異なる組み合わせからなる複数の基地局間のセル重複エリアに移動して、その複数の基地局間の協調送信へ移行する場合も、同様に適用可能である。
【0086】
また、例えば、第二基地局120のマクロセル120a内に在圏していた端末220がセル境界エリアAに移動して基地局110,120間の協調送信を開始する場合も、同様に適用可能である。
【0087】
ここで、本実施形態で例示したHetNet構成においては、一般に、マクロセル120aを管理する第二基地局120の通信負荷の一部がスモールセル110aを管理する基地局に分散されるため、マクロセル120aを管理する第二基地局120が通信負荷の高い状況(第二基地局120の無線リソースに十分な余裕が無い状況)に陥る事態は生じにくい。一方で、スモールセル110aを管理する第一基地局110は、ホットスポットエリアに配置され、通常は通信容量の小さい基地局装置で構成されるため、ホットスポットエリアに端末が集中する時間帯、日にち、曜日、季節などには、通信負荷の高い状況(第一基地局110の無線リソースに十分な余裕が無い状況)に陥る事態が比較的生じやすい。
【0088】
よって、本実施形態においては、簡易的には、マクロセル120aを管理する第二基地局120が協調先の基地局(対象基地局)となる場合には、第二基地局120の高通信負荷状態を判断せず、協調送信禁止通知を送信しないようにする一方、スモールセル110aを管理する第一基地局110が協調先の基地局(対象基地局)となる場合には、第一基地局110の高通信負荷状態を判断し、その判断結果に応じて協調送信禁止通知を送信するようにしてもよい。すなわち、マクロセル120aを管理する第二基地局120が協調先の基地局(対象基地局)となる場合には、従来の基地局間協調方法と同様に、第二基地局120において協調送信に用いる無線リソースが利用できる状態であれば、対象基地局における通信負荷(通信トラフィック)の状況に関係なく、協調送信を行うようにしてもよい。これによれば、マクロセル120aを管理する第二基地局120が協調先の基地局(対象基地局)となる場合における協調送信開始処理を省略できる。
【0089】
また、本実施形態における協調送信では、協調元の第一基地局110から協調要求を対象基地局である第二基地局120へ送信し、第二基地局120は、その協調要求を受信したときに自局が高通信負荷条件を満たすか否かを判断し、高通信負荷条件を満たさない場合は協調通信を行うための応答を第一基地局110へ返信し、高通信負荷条件を満たす場合は協調送信禁止通知を第一基地局110へ送信することにより、協調通信を禁止する協調通信調整制御を実行する例であった。この例は、協調送信を基地局間通信インターフェースにより自律分散的に制御することができ、いわゆるアンカー方式のメリットを享受できる。なお、例えば、高通信負荷条件を満たす場合に、協調送信禁止通知を第一基地局110へ送信する代わりに、協調要求に対する応答を送信しないという協調通信調整制御を実行することも可能である。
【0090】
また、本実施形態における協調送信では、対象基地局である第二基地局120が自ら高通信負荷条件を満たすか否かを判断しているが、対象基地局以外の基地局、例えば第一基地局110が、第二基地局120についての高通信負荷条件を満たすか否かを判断するようにしてもよい。この場合、第一基地局110は、例えば基地局間通信インターフェースを介して、対象基地局である第二基地局120が高通信負荷条件を満たすか否かを判断するための判断情報を取得する。なお、判断情報としては、第二基地局120のマクロセル120a内に在圏する端末の数や、第二基地局120と第二基地局120のマクロセル120aに在圏する端末との通信量などの情報を用いることができる。そして、第一基地局110は、協調送信を開始するにあたり、取得した判断情報に基づいて第二基地局120が高通信負荷条件を満たすか否かを判断し、高通信負荷条件を満たさない場合は協調送信を行うための協調送信処理を実施し、高通信負荷条件を満たす場合は協調送信処理を実施しないという協調通信調整制御を実行することが可能である。この例も、協調送信を基地局間通信インターフェースにより自律分散的に制御することができ、いわゆるアンカー方式のメリットを享受できる。
【0091】
図12及び
図13は、第一基地局110が第二基地局120についての高通信負荷条件を満たすか否かを判断する処理手順の一例を示すシーケンス図である。
なお、
図5及び
図6に示した例と同じ処理手順については説明を省略する。
第一基地局110は、セル境界エリアA内の端末210に対して基地局間協調MU−MIMO伝送方式を用いた協調送信の処理を開始する際、協調要求を第二基地局120へ送信する(S2,S3)。第二基地局120は、第一基地局110から協調要求を受信すると、従来の基地局間協調MU−MIMO伝送方式において協調要求を受信したときに行う空きリソースのチェック処理(協調用リソースとして使用可能な空きリソースを確認する処理)と同様の処理に従って、空きリソースに関する空きリソース情報とともに、前記協調要求に応答する協調応答を第一基地局110へ返信する(S5’)。このとき、協調応答には、対象基地局である第二基地局120が高通信負荷条件を満たすか否かを判断するための判断情報(第二基地局120の接続端末数や通信量などの情報)を含める。
【0092】
この協調応答を受信した第一基地局110は、受信した判断情報に基づき、第二基地局120が通信負荷の高い状態であるか否かを判断する(S4’)。この判断は、
図5及び
図6の例において第二基地局120で行われる判断と同様である。そして、第一基地局110は、第二基地局120が高通信負荷状態ではないと判断した場合(高通信負荷条件を満たさない場合)には(S4’のNo)、
図12に示すように、第二基地局120から受信した空きリソース情報に基づいて、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に用いる協調用リソースを決定し、その協調用リソースをデータ協調送信時に用いるためのリソース制御を行うとともに(S6)、協調送信開始通知を第二基地局120へ送信する(S7)。協調送信開始通知を受信した第二基地局120は、自局の協調用リソースを端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に使用するようにリソース制御を行う(S8)。
【0093】
一方、第一基地局110は、第二基地局120が高通信負荷状態であると判断した場合(高通信負荷条件を満たす場合)には(S4’のYes)、
図13に示すように、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を禁止することを決定する(S10)。これにより、第一基地局110は、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行わず、それまでどおり、端末210へのデータ送信を、第二基地局120と協調せずに、MU−MIMO伝送方式により端末210へ送信する。なお、第二基地局120は、協調応答の送信後の一定期間内に協調送信開始通知が受信されないため、これにより協調送信の処理を終了する。
【0094】
また、本実施形態は、協調送信を自律分散的に制御するアンカー方式に限られるものではない。例えば、第一基地局110及び第二基地局120を制御して協調通信を行うための協調制御を実行する管理装置が設け、その管理装置において、対象基地局である第二基地局120が高通信負荷条件を満たすか否かを判断するための判断情報を取得する。そして、管理装置は、協調制御を実行するにあたり、取得した判断情報に基づいて第二基地局120が高通信負荷条件を満たすか否かを判断し、高通信負荷条件を満たさない場合は協調制御を実行し、高通信負荷条件を満たす場合は協調制御を実行しないという協調通信調整制御を実行することが可能である。この管理装置としての機能は、例えば、コアノード130に設けることができる。
【0095】
図14及び
図15は、管理装置であるコアノード130が第一基地局110及び第二基地局120を制御して協調通信を行うための協調制御を行う場合の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
なお、
図5及び
図6に示した例と同じ処理手順については説明を省略する。
図14及び
図15の例においては、各基地局110,120から所定のタイミングでそれぞれの基地局における通信負荷に関する通信負荷情報がコアノード130へ送信される(S1’’)。この通信負荷情報には、空きリソースに関する空きリソース情報なども含まれている。そのため、各基地局110,120の通信負荷の状況(空きリソースの状況等)は、コアノード130において集約されている。セル境界エリアA内の端末210から第一基地局110へ無線通信品質情報が送信されると(S1)、第一基地局110は、端末210に対して基地局間協調MU−MIMO伝送方式を用いた協調送信の処理を開始するための協調要求を管理装置であるコアノード130へ送信する(S2,S3’’)。この協調要求には、協調先の基地局(第二基地局120)を特定するための協調先情報も含まれる。
【0096】
コアノード130は、第一基地局110から協調要求を受信すると、この協調要求に含まれる協調先情報に基づき、第二基地局120を協調先の基地局として特定し、その第二基地局120から受信した通信負荷情報を判断情報として用いて、第二基地局120が通信負荷の高い状態であるか否かを判断する(S4’’)。この判断は、
図5及び
図6の例において第二基地局120で行われる判断と同様である。
【0097】
コアノード130は、第二基地局120が高通信負荷状態ではないと判断した場合(高通信負荷条件を満たさない場合)には(S4’’のNo)、
図14に示すように、第一基地局110及び第二基地局120からそれぞれ受信した空きリソース情報に基づいて、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に用いる協調用リソースを決定し、協調送信の開始を各基地局110,120に伝えるために、決定した協調用リソースの情報とともに、協調送信開始通知を各基地局110,120へ送信する(S7’’)。そして、協調送信開始通知を受信した各基地局110,120は、自局の協調用リソースを端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信に使用するようにリソース制御を行う(S6,S8)。
【0098】
一方、コアノード130は、第二基地局120が高通信負荷状態であると判断した場合(高通信負荷条件を満たす場合)には(S4’’のYes)、
図15に示すように、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を禁止することを決定し、協調送信の禁止を協調元の第一基地局110に伝えるために協調送信禁止通知を第一基地局110へ送信する(S9’’)。この協調送信禁止通知を受信した第一基地局110は、基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を禁止する決定を行う(S10)。これにより、第一基地局110は、端末210に対する基地局間協調MU−MIMO伝送方式の協調送信を行わず、それまでどおり、端末210へのデータ送信を、第二基地局120と協調せずに、MU−MIMO伝送方式により端末210へ送信する。
【0099】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システム、基地局及び通信端末装置(端末、ユーザ端末装置、移動局)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0100】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、通信端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0101】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる各部は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置や記憶装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0102】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。