(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムであって、前記可剥性犠牲層はエチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含み、かつ前記ポリエステルは下記:(i)1種以上のジオール;(ii)1種以上の芳香族ジカルボン酸;及び(iii)必要に応じて、式CnH2n(COOH)2(式中、nは2〜8である)の1種以上の脂肪族ジカルボン酸(ここで、前記芳香族ジカルボン酸は、前記ポリエステル中の前記ジカルボン酸の総量に基づいて前記ポリエステル中に80〜100モル%の量で存在する);から得られ、
a)前記片面又は両面が、可剥性犠牲層の除去後、フィルム表面の31×33cm面積当たり10以下の、約0.25μmより大きくて約30μm未満のピーク高さを有するゲル様欠陥の数(NGS)を示し、かつ/または
可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(NGS)の改善(Δ-NGS)が少なくとも2であり、Δ-NGSは、
[コントロールポリエステル基板のNGS]/[可剥性犠牲層の除去後のポリエステル基板層の表面の(NGS)]として定義される;あるいは
b)前記片面又は両面が、可剥性犠牲層の除去後、フィルム表面の31×33cm面積当たり1000以下の、平均表面の上及び/又は下の約0.25μmより大きくて約30μm未満の、フィルム平面に直交する垂直方向の大きさを有する欠陥数(NDT)を示し、かつ/または
可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(NDT)の改善(Δ-NDT)が少なくとも2であり、Δ-NDTは、
[コントロールポリエステル基板のNDT]/[可剥性犠牲層の除去後のポリエステル基板層の表面の(NDT)]として定義される;あるいは
c)前記片面又は両面が、可剥性犠牲層の除去後、フィルム表面の31×33cm面積当たり100以下の、約0.25μmより大きくて約30μm未満のピーク高さを有するピンチポイントピークの数(NPP)を示し、かつ/または
可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(NPP)の改善(Δ-NPP)が少なくとも2であり、Δ-Nppは、
[コントロールポリエステル基板のNpp]/[可剥性犠牲層の除去後のポリエステル基板層の表面の(NPP)]として定義される、
前記フィルム。
前記EMAAコポリマーは、エチレンと、金属カチオンで部分的又は完全に中和されたメタクリル酸とのコポリマーから選択されるイオノマーである、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
前記基板層の厚さは約5〜約500μmの範囲内であり、及び/又は前記可剥性層の厚さは約2〜約200μmの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
前記可剥性犠牲層の前記ポリエステル基板への接着強度は、剥離力が約0.20〜約2.45N(約20〜約250gF)の範囲内であるような強度である、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
前記基板は、15%以下の濁度及び/又は可視領域(400nm〜700nm)の光について少なくとも80%の全光線透過率(TLT)を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
前記ポリエステルを構成する前記ジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であり、かつ前記ジオールは脂肪族グリコール及び脂環式グリコールから選択される、請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム。
ポリエステル基板層を含んでなる請求項16に記載の電子若しくは光電子装置であって、前記ポリエステル基板層は、請求項1〜12のいずれかに従って、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出複合フィルムから得られ、前記可剥性犠牲層は、前記電子若しくは光電子装置への組み入れ又は前記電子若しくは光電子装置の製造の前又はその間に前記複合フィルムから除去されている、
前記電子若しくは光電子装置。
さらにバリア層又は導電層を含んでなる請求項16又は17に記載の電子若しくは光電子装置であって、前記バリア層又は導電層は、前記電子若しくは光電子装置の前記ポリエステル基板上に配置されている、前記電子若しくは光電子装置。
電子発光(EL)ディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、光起電力電池及び半導体装置から選択される、請求項16、17又は18に記載の電子若しくは光電子装置。
エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む層の、請求項1〜12のいずれかに記載のポリエステル基板層をさらに含む共押出二軸延伸複合フィルムにおける可剥性犠牲層としての使用(前記EMAA層は、前記ポリエステル基板層の片面又は両面に配置される)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「外因性」及び「内因性」粗さの観点から可剥性犠牲層の除去後の基板表面の清浄度及び平滑度を記述することができる。本明細書では、用語「外因性」粗さは、貯蔵及び/又は輸送中に基板が被り得る浮遊デブリ及び/又は取扱い損傷から生じる粗さを意味する。本明細書では、「内因性」粗さは、基板自体に存在するか又はフィルムのプロセス履歴の結果である粗さを意味する。基板の内因性粗さには、可剥性犠牲層の存在又はその除去によって誘発されるいずれの粗さも含まれる。
【0008】
本発明の複合フィルムは、下記利点を示す:
(i)本フィルムは共押出によって製造されるので、その製造プロセスは、犠牲層が完成基板に塗布される二工程プロセスより経済的かつ効率的である。このように、可剥性犠牲層は、ポリエステル基板から剥がせるのみならず、ポリエステル基板と共押出することもできる。
(ii)可剥性犠牲層は、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するために通常用いられる条件下で確実に押出可能かつ加工可能であり、均一な厚さで、かつMD線なしで押出可能である。その結果、複合フィルムは良い巻取り性(windability)を示し、フィルムの均一ロールの形成を可能にする(これは、従来の可剥性犠牲層では問題になることがある)。
(iii)可剥性犠牲層はポリエステル基板から容易に剥がすことができるが、複合フィルムの製造、貯蔵又は輸送中に基板から自発的に剥がれるほどには界面接着強度が低くない(これは、従来の可剥性犠牲層では問題になることがある)。さらに、基板と可剥性層との間の界面接着力の調整は、従来、それらの間の中間結合層(tie-layer)を用いて可能であったが、中間結合層が不要であり、製造プロセスの経済性及びプロセス効率を提供することが本発明の利点である。
(iv)可剥性犠牲層は、ポリエステル基板から特にロール・ツー・ロールプロセスで、それ自体のレムナント又は残渣をポリエステル基板の表面に残すことなく、或いは剥がすときにポリエステル基板の表面を引き裂くことなく容易に剥がれる(これは、従来の可剥性犠牲層では問題になることがある)。従って、本発明の可剥性犠牲層は、容易かつきれいな剥離を示す。
【0009】
(v)可剥性犠牲層は、ポリエステル基板を使用又はさらに加工する準備をするまで、貯蔵又は輸送中に損傷又は外因性デブリからポリエステル基板を保護するという所要機能を果たす。しかしながら、可剥性犠牲層は、下部のポリエステル基板の内因性表面平滑度のみならず、基板の他の特性(濁度など)を保持しなければならならず、或いは少なくとも有意には低下させてはならない。多くの可剥性犠牲層に関する問題は、可剥性層の非存在下では存在しなかったであろう、下部の基板の表面に重大な追加テクスチャー又は粗さその他の欠陥を付与することである。例えば、本発明者らは理論によって拘束されるつもりはないが、可剥性犠牲層のポリマーマトリックス内のゲル又は他の粒子の存在が、犠牲層の除去後に残る下部基板層に陥凹を生じさせ得ると考えられる。本発明の好ましい可剥性犠牲層は、このような問題を減少させる。
(vi)さらに、本発明の好ましい可剥性犠牲層は、有利にフィルムの内因性表面欠陥を減らすことができる。従って、同一条件下で製造した、可剥性層が存在しない同一のポリエステル基板と比較したとき、加工中に可剥性層が存在すると、ポリエステル基板の表面平滑度を改善することができる。このような表面欠陥については以下に詳細に検討するが、例えば、フィルムの製造中に生じ得る引っかき傷、ピンチポイント(Pinch-point)欠陥、滑らかな円形欠陥、ゲル、ストリーク、流線、MD線、ダイ線及び処理跡(例えばフィルム線上のローラー表面の不完全の結果として)がある。ピンチポイント欠陥は、引き続き塗布される層に対する破壊の主な原因であり、それらを減らすことが本発明の特定の目的である。ピンチポイント欠陥は、引き続き塗布される層に対して例えば、滑らかな円形欠陥よりもずっと大きい破壊的作用を有する。
【0010】
本発明の二軸延伸ポリエステル基層及びEMAA可剥性層がこの組合せの特性を示すことは非常に驚くべきことである。
二軸延伸複合フィルムは自立フィルム又はシートであり、これは、支持ベースの非存在下で独立して存在できるフィルム又はシートを意味する。本発明によれば、ポリエステル基板も可剥性層も両方とも自立性である。
本明細書では、用語「ポリエステル」は、その最も単純な形態のポリエステルホモポリマー或いは化学的及び/又は物理的に改変されたポリエステルホモポリマーを包含する。用語「ポリエステル」にはさらにコポリエステルが含まれる。コポリエステルはランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。好ましい実施形態では、前記ポリエステルを構成するジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸である。好ましい実施形態では、ポリエステルは1種のみのジオールと1種のみのジカルボン酸(好ましくは芳香族ジカルボン酸)を含む。
芳香族ジカルボン酸は、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-、2,5-、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸から選択され、好ましくはテレフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸である。ジオールは、好ましくは脂肪族及び脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールから、好ましくは脂肪族グリコールから選択される。好ましくはポリエステルは1種のみのグリコール、好ましくはエチレングリコールを含む。脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸(azeleic acid)又はセバシン酸であってよい。好ましいホモポリエステルは、2,6-ナフタレンジカルボン酸又はテレフタル酸とエチレングリコールのポリエステルである。当業者には、本発明で使用するのに適したポリエステルは水不溶性であることが分かるであろう。
【0011】
ポリエステル樹脂は基板の主成分であり、基板の総質量の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%を構成する。
基板が製造されるポリエステルの固有粘度(IV)は、典型的に少なくとも約0.58、さらに典型的に少なくとも約0.60、典型的に約0.70以下である。好ましい実施形態では、PETポリエステルは、約0.6〜約0.65の範囲のIVを有し、PENポリエステルは、約0.58〜約0.68の範囲のIVを有する。代替実施形態では、より高い固有粘度、例えば、少なくとも約0.70、さらなる実施形態では少なくとも約0.8、典型的に0.90以下のIVを有するポリエステルから基板を製造することができる。
ポリエステルは、前記ジカルボン酸又はそれらの低級アルキル(6個までの炭素原子)ジエステルと1種以上のジオールから得られる。ポリエステルの形成は、一般的に約295℃までの温度で、縮合又はエステル交換による既知法で都合よく達成される。一実施形態では、例えば窒素流動床又は回転式真空乾燥機を用いる真空流動床等の流動床を用いて、技術上周知の従来法により、固体重合を利用して固有粘度を所望値まで高め得る。
【0012】
一実施形態では、基板はさらにUV吸収剤を含む。UV吸収剤は、ポリエステルよりずっと高い吸光係数を有するので、ほとんどの入射UV線はポリエステルによってではなくUV吸収剤によって吸収される。UV吸収剤は一般的に吸収エネルギーを熱として消散し、それによってポリマー鎖の分解を回避し、UV線に対するポリエステルの安定性を高める。典型的に、UV吸収剤は有機UV吸収剤であり、好適例には、Encyclopaedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, Volume 23, 615〜627ページに開示されているものがある。UV吸収剤の特定例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール(US-4684679、US-4812498及びUS-4681905)、ベンゾオキサジノン(US-4446262、US-5251064及びUS-5264539)及びトリアジン(US-3244708、US-3843371、US-4619956、US-5288778及びWO 94/05645)が挙げられる。本明細書に記載の方法の1つによればUV吸収剤をフィルムに組み入れることができる。一実施形態では、UV吸収剤をポリエステル鎖に化学的に組み入れ得る。例えば、EP-A-0006686、EP-A-0031202、EP-A-0031203及びEP-A-0076582は、ベンゾフェノンのポリエステルへの組み入れを記載している。UV吸収剤に関する上記文書の具体的教示を参照によって本明細書に援用する。特に好ましい実施形態では、本発明で改善されるUV安定性は、トリアジン、さらに好ましくはヒドロキシフェニルトリアジン、特に下記式(II)のヒドロキシフェニルトリアジン化合物によってもたらされる。
【0014】
式中、Rは、水素、C
1-C
18アルキル、ハロゲン若しくはC
1-C
12アルコキシで置換されたC
2-C
6アルキルであるか、又はベンジルであり、R
1は水素又はメチルである。Rは好ましくはC
1-C
12アルキル又はベンジル、さらに好ましくはC
3-C
6アルキル、特にヘキシルである。R
1は好ましくは水素である。特に好ましいUV吸収剤はCiba-AdditivesからTinuvin
TM 1577 FFとして市販されている2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシル)オキシフェノールである。
UV吸収剤の量は、好ましくは基板の総質量に対して、0.1質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.2質量%〜7質量%、さらに好ましくは0.6質量%〜4質量%、特に0.8質量%〜2質量%、特に0.9質量%〜1.2質量%の範囲内である。
【0015】
基板は、前記UV安定剤に加えて、又はその代わりに存在し得る酸化防止剤を含んでもよい。ラジカルを捕捉するか又は過酸化物を分解することによって働く酸化防止剤等の様々な酸化防止剤を使用することができる。適切なラジカル捕捉酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、二級芳香族アミン及びヒンダードアミン、例えばTinuvin
TM 770(Ciba-Geigy)がある。適切な過酸化物分解酸化防止剤には、三価のリン化合物、例えば亜ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル(例えばリン酸トリフェニル及び亜リン酸トリアルキル)及びチオ共働剤(thiosynergist)(例えばチオジプロピオン酸のエステル、例えばチオジプロピオン酸ジラウリル)がある。ヒンダードフェノール酸化防止剤が好ましい。好ましいヒンダードフェノールは、Irganox
TM 1010(Ciba-Geigy)として市販されているテトラキス-(メチレン3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニルプロピオナート)メタンである。他の好ましい市販のヒンダードフェノールとしては、Irganox
TM 1035、1076、1098及び1330(Ciba-Geigy)、Santanox
TM R(Monsanto)、Cyanox
TM酸化防止剤(American Cyanamid)並びにGoodrite
TM酸化防止剤(BF Goodrich)が挙げられる。基板中に存在する酸化防止剤の濃度は、好ましくはポリエステルの50ppm〜5000ppmの範囲内、さらに好ましくは300ppm〜1500ppmの範囲内、特に400ppm〜1200ppmの範囲内、特に450ppm〜600ppmの範囲内である。複数の酸化防止剤の混合物を使用してよく、この場合、その総濃度は好ましくは上記範囲内である。基板への酸化防止剤の組み入れは、通常の技術により、好ましくは特に直接エステル化又はエステル交換反応の最後、重縮合前に、ポリエステルを導くモノマー反応物と混合することによって達成し得る。
【0016】
ポリエステル基板は、ポリエステルフィルムの製造で通常利用されるいずれの他の添加剤をもさらに含んでよい。従って、架橋剤、染料、フィラー、顔料、ボイド形成剤(voiding agent)、潤沢剤、ラジカルスカベンジャー、熱安定剤、難燃剤及びインヒビター、ブロッキング防止剤、表面活性剤、滑り助剤、光沢向上剤、分解促進剤(prodegradent)、粘度調整剤及び分散安定剤等の薬剤を必要に応じて組み入れてよい。通常の方法で該成分をポリマーに導入することができる。例えば、フィルム形成ポリマーを導くモノマー反応物と混合することによって、或いは該成分をタンブル若しくはドライブレンドすることによって又は押出機内でコンパウンドすることによってポリマーと混合した後、冷却し、通常は、顆粒又はチップに粉砕してよい。マスターバッチ化技術を利用してもよい。
【0017】
基板は、特に、製造中の取扱い及び巻取り性を改善し得る粒状フィラーを含んでよく、これを用いて光学特性を調節することができる。粒状フィラーは、例えば、粒状無機フィラー(例えば金属又は半金属酸化物、例えばアルミナ、チタニア、タルク及びシリカ(特に沈降又は珪藻土シリカ及びシリカゲル)、焼成チャイナクレー並びにアルカリ金属塩、例えばカルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩)であり得る。存在するいずれの無機フィラーも微細に分割すべきであり、その体積分布メジアン粒径(粒径に対する体積%に関する累積分布曲線で読み取られる、全ての粒子の体積の50%に相当する等価球径−「D(v,0.5)」値と称することが多い)は、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.05〜1.5μm、特に0.15〜1.2μmの範囲内である。無機フィラー粒子の好ましくは少なくとも90体積%、さらに好ましくは少なくとも95体積%は、体積分布メジアン粒径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内である。フィラー粒子の粒径は、電子顕微鏡、コールターカウンター、沈降分析及び静的又は動的光散乱によって測定可能である。レーザー光散乱に基づいた技法が好ましい。
典型的に、基板のエンドユーザーの大多数が良い美的外観を要求するので、ポリエステル基板は光学的に透明である。好ましくは基板は、15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に1.0%以下の散乱可視光の%(濁度)、及び/又は可視範囲(400nm〜700nm)の光について少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも約90%の全光線透過率(total luminous transmission)(TLT)を有する。この実施形態では、基板中のいずれのフィラーも典型的に少量だけ存在し、通常は層の0.5質量%を超えず、好ましくは0.2質量%未満であり、フィラーは好ましくはシリカである。この実施形態では、濁度その他の光学特性が許容できないほど低下することなく、フィルムの巻取り性が改善される(すなわち、フィルムを巻き上げてロールにするときにブロッキング又は粘着しない)。
【0018】
代替実施形態では、基板は不透明である。不透明フィルムは好ましくは少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、好ましくは少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5の透過光学密度(Transmission Optical Density)(TOD)を示し、一実施形態では、好ましくは少なくとも2.0、好ましくは少なくとも3.0、好ましくは少なくとも4.0のTODを示す。必要に応じて不透明フィルムを着色してよく、一実施形態では、基板は白色、灰色又は黒色である。適切な白色剤としては、上述したような粒状無機フィラー、不相溶性樹脂フィラー、又は2種以上の該フィラーの混合物がある。適切な不透明化剤としては、技術上周知なように、カーボンブラック、又は金属フィラー、例えばアルミニウム粉末等がある。
ポリエステル基板の固有粘度は、基板を製造するポリエステルの固有粘度より典型的に低く、ポリエステル原材料からの二軸延伸ポリエステルフィルムの調製中のIV降下は、特に相対的に高い初期IVを有するポリエステルでは0.15ほどであり得る。しかしながら、典型的にIV降下は約0.06未満である。一実施形態では、ポリエステル基板のIVは少なくとも約0.52、好ましくは少なくとも約0.60、典型的に約0.70以下である。典型的に、PET基板は、約0.57〜約0.65の範囲内、好ましくは少なくとも約0.60のIVを有する。PEN基板は、約0.52〜約0.68の範囲内、好ましくは少なくとも約0.60のIVを有する。代替実施形態では、ポリエステル基板は、より高い固有粘度を有し、例えば、少なくとも約0.70、好ましくは少なくとも約0.75、典型的に約0.80以下のIVを有する。
ポリエステル基板は特にフィルムの機械内(縦寸法)で、好ましくは基板の両寸法(すなわち、縦及び横の寸法)において好ましくは低収縮、好ましくは150℃で30分の間に3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1.0%以下を示す。基板は、例えば電子ディスプレイ装置の製造で使用され得るその後の加工条件、例えば高温を伴う加工(後続層を蒸着させるためのスパッタリング等)にさらしたときに、許容できない寸法歪み、例えばカールを受けてはならない。
【0019】
可剥性層は、エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む(好適にはEMAAコポリマーから成るか、又は本質的にEMAAコポリマーから成る)。好ましい実施形態では、メタクリル酸は、コポリマーの約2〜約15wt%の範囲内、さらに好ましくは約2〜約10wt%の範囲内、好ましくは約7〜約10wt%の範囲内でコポリマー中に存在する。代替実施形態では、メタクリル酸は、約2〜約7wt%未満の範囲内でコポリマー中に存在する。コポリマーは、好ましくは分岐しており、好ましくはランダムである。好適なEMAAコポリマーとしては、Nucrel(登録商標)樹脂(DuPont)、特にNucrel(登録商標)グレード0411HS及び0908HSが挙げられる。任意に、コポリマーは金属塩と部分的又は完全に反応していてもよく、鎖内の酸基間、又は隣接鎖間のイオン性架橋の形成を可能にする。該コポリマーはイオノマーとして知られ、本明細書では、主要な非極性反復単位と少比率(典型的に約15wt%以下)のメタクリル酸の金属塩含有単位とで構成されたポリマーと定義される。好ましいイオノマーは、エチレンと、アルカリ金属又は亜鉛で部分的又は完全に中和されたメタクリル酸とのコポリマーである。好適な市販化合物には、Surlyn(登録商標)樹脂(DuPont)、特にグレード1605及び1652がある。金属カチオンは典型的にリチウム及びナトリウム等のアルカリ金属から選択される。亜鉛又はマグネシウムを使用してもよい。典型的に、金属カチオンは約15モル%以下で存在する。好ましくは、EMAAコポリマーはイオノマーでなく、金属イオンを含まない。
好ましい実施形態では、EMAAコポリマーの融点は少なくとも約90℃、好ましくは約250℃以下、好ましくは約200℃以下、好ましくは約150℃以下、さらに好ましくは約120℃以下である。さらに好ましい実施形態では、EMAAコポリマーのVICAT軟化点は少なくとも約60℃、典型的に約60℃〜約110℃の範囲内、さらに典型的に約70℃〜約100℃の範囲内である。
【0020】
複合フィルムの形成は、技術上周知の通常の共押出法で達成される。一般用語では、この方法は約280〜約300℃の範囲内の温度で溶融ポリマーの層を押出す工程、この押出物を急冷する工程及び急冷押出物を配向させる工程を含む。配向は延伸フィルム製造の技術上周知のいずれの方法によっても、例えば管状又はフラットフィルム法で達成される。二軸配向は、フィルムの平面内で2つの相互に垂直な方向に引っ張って機械的及び物理的特性の満足できる組合せを得ることによって達成される。管状法では、熱可塑性ポリマー管を押出し、引き続き急冷、再加熱してから内部気圧で膨張させて横配向を引き起こし、縦配向を引き起こすであろう速度で引っ張り出すことによって同時に二軸配向を達成することができる。好ましいフラットフィルム法では、スロットダイを通してフィルム形成ポリマーを押出し、チルドキャスティングドラム上で迅速に急冷して基板ポリエステルを確実に急冷して非晶質状態にする。次に基板ポリエステルのガラス転移温度より高い温度で少なくとも一方向に急冷押出物を延伸することによって配向を達成する。フラットな急冷押出物をまず一方向、通常は縦方向、すなわちフィルム延伸機を通して前方向に延伸してから、縦方向に延伸することによって逐次配向を達成することができる。押出物の前方延伸は、通常は1セットの回転ロールにわたってか又は2対のニップロール間で達成され、次いで横方向延伸がテンター装置で達成される。延伸は一般的に、延伸の方向又は各方向における配向フィルムの寸法がその原寸の2〜5、さらに好ましくは2.5〜4.5倍になるように行なわれる。典型的に、延伸はポリエステルのT
gより高い温度、好ましくはT
gより約15℃高い温度で行なわれる。一方向のみの配向が必要な場合、より大きい延伸比(例えば、約8倍まで)を利用してよい。好ましくはあるもののバランスのとれた特性が望ましい場合、機械方向と横方向に等しく延伸する必要はない。
【0021】
ポリエステルの所望の結晶化を引き起すため、寸法支持下で基板ポリエステルのガラス転移温度より高いが、その融点未満の温度で熱処理することによって、延伸フィルムを寸法安定性にしてよく、好ましくは寸法安定性にする。熱処理中、「トーイン(toe-in)」として知られる手順で横方向(TD)に少量の寸法緩和を行なってよい。トーインは2〜4%程度の寸法収縮を伴い得るが、プロセス方向又は機械方向(MD)の類似の寸法緩和は、低い線張力が必要であり、かつフィルム制御及び巻取りが問題となることから達成するのが困難である。実際の熱処理温度及び時間はフィルムの組成及びその所望の最終熱収縮によって異なるであろうが、引き裂き抵抗等のフィルムの靭性特性を実質的に低下させないように選択しなければならない。これらの制約内では、一般的に約180〜245℃の熱処理温度が望ましい。典型的に、基板ポリエステルの所望の結晶化度を生じさせるため、熱処理後にフィルムを迅速に急冷する。
一実施形態では、オンライン緩和段階の使用を通じてフィルムをさらに安定化し得る。或いは緩和処理をオフラインで行なうことができる。この追加工程では、フィルムを熱処理段階の温度より低い温度で、かつずっと低いMD及びTD張力で加熱する。フィルムが経験する張力は低い張力であり、典型的にフィルム幅の5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満、さらに好ましくは1〜約2.5kg/mの範囲内、典型的に1.5〜2kg/mの範囲内である。フィルム速度を制御する緩和法では、フィルム速度の低減(ひいては歪み緩和)は典型的に0〜2.5%、好ましくは0.5〜2.0%の範囲内である。熱安定化工程中にはフィルムの横寸法増加はない。熱安定化工程で使用すべき温度は、最終フィルムの特性の所望の組合せに応じて異なり得るが、温度が高いほど良い、すなわち低い残留収縮特性を与える。135〜250℃の温度が一般的に望ましく、好ましくは150〜230℃、さらに好ましくは170〜200℃である。加熱の持続時間は使用する温度によって決まるであろうが、典型的に10〜40秒の範囲内であり、20〜30秒の持続時間が好ましい。この熱安定化プロセスは、フラット構成及び垂直構成並びにフィルム製造プロセスの分離プロセス工程として「オフライン」又はフィルム製造プロセスの継続として「インライン」を含めた種々の方法で遂行可能できる。このようして加工されたフィルムは、このような後熱処理緩和なしで作製されたフィルムより小さい熱収縮を示すであろう。
共押出は、マルチオリフィスダイの独立オリフィスを介したそれぞれのフィルム形成層の同時共押出後にまだ溶融状態の層を合体させるか、或いは、好ましくは、単チャネル共押出(それぞれのポリマーの溶融ストリームが、ダイのマニホールドにつながるチャネル内でまず合体され、その後に、混ざらないストリームライン流の条件下で一緒にダイオリフィスから押し出される)によって達成されて多層フィルムが生成され、前述したように配向及び熱処理される。従って、当業者には、可剥性犠牲層が前記ポリエステル基板の片面又は両面に直接、すなわち、いずれの中間層もなく配置されることが分かるであろう。
【0022】
複合フィルムの厚さは好ましくは約5〜約750μmの範囲内、さらに好ましくは約500μm以下、典型的に約12μm〜250μmである。基板層の厚さは好ましくは約5〜約500μmの範囲内、典型的に約12μm〜300μmである。可剥性層の厚さは好ましくは約2〜約200μmの範囲内、典型的に約100μ以下、典型的に約5μm〜50μmであり、好ましい実施形態では約5〜25μmである。基板層が複合フィルムの全厚の50%より大きく、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%を構成すると好ましいが、典型的には全厚の約95%以下である。一実施形態では、基板層は複合フィルムの全厚の約75〜約95%を構成する。可剥性層は典型的に廃棄フィルムとして終わり、厚すぎると非経済的になるが、可剥性層は容易かつきれいな剥離を可能にするのに十分な厚さと機械的強度を有していなければならない。
可剥性犠牲層のポリエステル基板への接着強度は、剥離力が本明細書に記載どおりに測定して、好ましくは約0.049〜約2.45N(約5〜約250gF(グラム重))の範囲、好ましくは少なくとも約0.098N(約10gF)、好ましくは少なくとも約0.20N(約20gF)、好ましくは少なくとも約0.34N(約35gF)、典型的に少なくとも約0.49N(約50gF)、典型的に約1.96N(約200gF)以下であるような強度である。
【0023】
本発明では、可剥性層除去後のポリエステル基板の内因性表面粗さを主に2つの方法で分析する。
第1の方法は、内因性「ミクロ粗さ」、すなわち主表面欠陥間のバックグラウンド表面粗さを分析し、これは本明細書に記載どおりに測定され、好ましくは通常のパラメーターRa及び/又はRqで特徴づけられる。好ましくは、ポリエステル基板は10nm未満、好ましくは7nm未満、好ましくは5nm未満、好ましくは2nm未満、好ましくは1nm未満のRa値を示す。
第2の方法は、主内因性表面欠陥を分析する大面積計測学(LAM)を利用して内因性「マクロ粗さ」を分析する。ポリエステル基板の主内因性表面欠陥は以下のように欠陥(1)〜(3)として分類できる:
(1)
ポリエステル基板内の含有物に起因する欠陥:例えば、バルクポリマーマトリックスとは異なる分子量又はレオロジーを有するフィラー、結晶子、分解物及びゲル(典型的には扱いにくいポリマー(例えば、架橋、分岐又は分解したポリマー)の領域)の存在によって生じ得る、また「ピンチポイント」欠陥及び「滑らかな円形」欠陥として分類できる:(a)
ピンチポイント欠陥は、中心ピークの両側のクレーターによって特徴づけられる(
図1A参照)。該欠陥は基板表面の比較的近くに存在する含有物によって引き起こされ、フィルム製造の延伸工程中に、より大きい局在化した応力/歪み領域を作り出すと考えられる。
(b)
滑らかな円形欠陥は、クレーターのない中心ピークによって特徴づけられる(
図1B参照)。該欠陥は、基板内の比較的深いところに存在する含有物によって引き起こされると考えられる。
(2)
陥凹(depression)は、中心クレーターによって特徴づけられ、クレーターの周りに隆起部を伴うことがある(
図2参照)。発明者らは、該欠陥は主に可剥性犠牲層の不完全性(ゲル又はゲル様フィーチャー)によって引き起こされると考える。
(3)
ゲル様フィーチャー又はストリークは、隆起頭部の球状表面フィーチャー又は伸長部(隆起頭部の両側に浅い谷を伴うことがある)によって特徴づけられる(
図3参照)。発明者らは、該欠陥はダイ・リップ縁流れ撹乱及び押出分解ポリマー等の押出事象から生じると考える。
【0024】
可剥性犠牲層を除去すると、ポリエステル基板は好ましくは下記内因性表面粗さ特性の1つ以上を示す。特に、(1a)、(1b)、(2)及び(3)として上記で定義した主内因性表面欠陥に関して内因性表面粗さを評価し、本明細書で定義するRpパラメーターとしてピーク高さの値を表し、本明細書で定義するRvパラメーターとしてクレーター深さの値を表し、後述するようにLAM技術で位相シフト干渉法(phase shift interferometry)(PSI)又は垂直走査白色干渉法(vertical scanning interferometry)(VSI)により測定する:
(i)平均表面(本明細書の定義どおり)の上及び/又は下の約0.25μmより大きくて約30μm未満の、フィルム平面に直交する垂直方向の大きさ(すなわち、ピーク及びトラフ)を有する全欠陥数(N
DT)は、フィルム表面の31×33cm面積当たり1000以下、好ましくは750以下、好ましくは500以下、好ましくは約400以下、好ましくは約300以下、好ましくは200以下、好ましくは100以下、好ましくは75以下、好ましくは50以下、好ましくは25以下である。
(ii)約0.25μmより大きくて約30μm未満のピーク高さを有するピンチポイントピーク(1a)の数(N
PP)は、フィルム表面の31×33cm面積当たり100以下、好ましくは80以下、好ましくは70以下、好ましくは60以下、好ましくは50以下、好ましくは40以下、好ましくは30以下、好ましくは20以下である。
(iii)約0.25μmより大きくて約30μmのピーク高さを有するゲル様フィーチャー又はストリーク(3)の数(N
GS)は、フィルム表面の31×33cm面積当たり10以下、好ましくは5以下、好ましくは2以下、好ましくはゼロである。
【0025】
(iv)可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(N
DT)の改善(Δ-N
DT)(Δ-N
DTは、
[コントロール基板のN
DT]/[剥離された本発明の基板のN
DT]
として定義される)
は、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも10である。
(v)可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(N
PP)の改善(Δ-N
PP)(Δ-N
PPは、
[コントロール基板のN
PP]/[剥離された本発明の基板のN
PP]
として定義される)
は、少なくとも2、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも10である。
(vi)可剥性犠牲層なしで製造したコントロールポリエステル基板と比べて、パラメーター(N
GS)の改善(Δ-N
GS)(Δ-N
GSは、
[コントロール基板のN
GS]/[剥離された本発明の基板のN
GS]
として定義される)
は、少なくとも2、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも10である。
【0026】
所望により、内因性マクロ粗さを測定するための本明細書に記載の技術を用いて、外因性粗さに起因する欠陥の横寸法を測定することもできる。このような外因性欠陥は、本明細書では、正のトポグラフィー(すなわち、フィルム平均表面レベルの上にあるフィーチャー)を有し、負のトポグラフィー(すなわち、フィルム平均表面レベルの下にあるフィーチャー)を実質的に持たない不規則な形状のフィーチャーとして定義される。所望により、フィルム表面の31×33cm面積当たり、7.14μmより大きい最小横寸法を有する外因性欠陥(上記定義どおり)の数(N
E)についてフィルムを特徴づけることができ、後述するようにLAM技術で単フレーム干渉法(single frame interferometry)(SFI)により測定することができる。
【0027】
本発明の複合フィルムは、高い清浄度及び高い平滑度を示す高品質の無欠陥ポリエステル基板表面を必要とするいずれの用途でも有利に使用し得る。従って、有利には、本複合フィルムを用いて、電子又は光電子装置、例えば電子発光(EL)ディスプレイ装置(特に有機発光ディスプレイ(OLED)装置)、電気泳動ディスプレイ(電子新聞)、光起電力(PV)電池及び半導体装置(一般的に有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ及び集積回路等)、特に可撓性の該装置の製造で使用するのに適した清浄なポリエステル基板を提供することができる。他の用途としては、光学フィルム、医療装置及び装飾フィルムの提供がある。
引き続き塗布される層はバリア層、すなわち、ガス及び溶媒の浸透への高い耐性を与える層であってよく、典型的に高温でのスパッタリングプロセスで塗布される。バリア層は有機又は無機であってよく、その上に蒸着される層に対して良い親和性を示すべきであり、平滑表面を形成できなければならない。バリア層の形成に使用するのに適した材料は、例えば、US-6198217に開示されている。
引き続き塗布される層は半導体層であってよく、高温でのスパッタリングプロセスで塗布されることが多い。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、可剥性犠牲層としてエチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む層の、さらに本明細書に記載のポリエステル基板層を含む共押出二軸延伸複合フィルムにおける使用(ここで、前記EMAA層は、前記ポリエステル基板層の片面又は両面に配置される)が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、可剥性犠牲層としてエチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む層の、さらに本明細書に記載のポリエステル基板層を含む共押出二軸延伸複合フィルムにおける使用(ここで、前記EMAA層は、下記目的:
(i)前記ポリエステル基板層の表面を輸送及び/又は貯蔵中の損傷及び/又は汚染及び/又はデブリから保護すること;及び/又は
(ii)前記ポリエステル基板の内因性表面欠陥を、前記可剥性犠牲層の非存在下、同一条件下で製造された同一ポリエステル基板と比べて減らすこと
のために前記ポリエステル基板層の片面又は両面に配置される)が提供される。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、基板の表面を輸送及び/又は貯蔵中の損傷及び/又は汚染及び/又はデブリから保護する方法であって、下記工程:
(i)本明細書の定義どおりに、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される、エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムを用意する工程;及び
(ii)前記基板を使用又はさらに加工する前に前記可剥性犠牲層を前記基板から除去する工程
を含む方法が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、基板に塗布される機能層(特に導電層又はバリア層)内の欠陥を減少させる方法であって、下記工程:
(i)本明細書の定義どおりに、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される、エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムを用意する工程;
(ii)前記可剥性犠牲層を前記基板から除去する工程;及び
(iii)前記機能層を前記基板に塗布する工程
を含む方法が提供される。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、前記可剥性犠牲層を除去した、本明細書で定義した共押出二軸延伸複合フィルムから得られた電子若しくは光電子装置、光学フィルム、医療装置又は装飾フィルムが提供される。
本発明のさらなる態様によれば、ポリエステル基板層を含んでなる電子若しくは光電子装置であって、前記ポリエステル基板層は、本明細書の定義どおりに、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される、エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムとから得られ、かつ前記可剥性犠牲層は、前記電子若しくは光電子装置への組み入れ又は前記電子若しくは光電子装置の製造の前又はその間に前記複合フィルムから除去されている、
電子又は光電子装置が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、電子若しくは光電子装置、光学フィルム、医療装置又は装飾フィルムの製造方法であって、下記工程:
(i)本明細書の定義どおりに、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される、エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムを用意する工程;及び
(ii)前記基板を前記電子若しくは光電子装置又は医療装置で使用するか、或いは光学フィルム若しくは装飾フィルムで使用するか又は光学フィルム若しくは装飾フィルムとして使用する前に前記可剥性犠牲層を前記基板から除去する工程
を含む方法が提供される。
電子若しくは光電子装置は、さらに前記ポリエステル基板上に配置されるバリア層又は導電層を含んでよい。電子発光(EL)ディスプレイ装置(特に有機発光ディスプレイ(OLED)装置)、電気泳動ディスプレイ(電子新聞)、光起電力(PV)電池及び半導体装置(一般的に有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ及び集積回路等)、特に可撓性の該装置から選択される電子又は光電子装置は特に興味深い。
【0032】
特性測定
下記分析を利用して、本明細書に記載のフィルムを特徴づけた。
(i)透明性は、標準試験方法ASTM D1003に従い、M57D球状ヘイズメーター(spherical hazemeter)(Diffusion Systems)を用いてフィルムの全厚を通して全光線透過率(TLT)及び濁度(散乱透過可視光の%)を測定することによって評価される。
(ii)透過光学密度(TOD)は、透過モードでMacbeth Densitometer TR 927(Dent and Woods Ltd, Basingstoke, UKから得た)を用いて測定される。
(iii)固有粘度(dL/gの単位で)は、ASTM D5225-98(2003)に従って、Viscotek
TM Y-501C Relative Viscometer(例えば、Hitchcock, Hammons & Yau in American Laboratory (August 1994) “The dual-capillary method for modern-day viscometry”参照)でo-クロロフェノール中0.5質量%のポリエステル溶液を25℃で用いて溶液粘度測定によって測定され、
Billmeyer単一点法を用いて固有粘度を計算する:
η=0.25η
red+0.75(lnη
rel)/c
式中:
η=固有粘度(dL/gで)、
η
rel=相対粘度、
c=濃度(g/dLで)、及び
η
red=低減濃度(dL/gで)、(η
rel-1)/cに相当(η
sp/cとも表され、η
spは比粘度である)。
【0033】
(iv)熱収縮は、機械に対して特定方向及びフィルムの横方向でカットし、目測用に印を付けた寸法200mm×10mmのフィルムサンプルについて評価される。サンプルの長寸(すなわち200mmの寸法)はフィルム方向に対応し、これについて収縮を調べる。すなわち、機械方向の収縮の評価では、試験サンプルの200mmの寸法をフィルムの機械方向に沿って配向させる。試験片を150℃の所定温度に加熱し(当該温度で加熱したオーブンに入れることによって)、30分の間隔保持した後、試験片を室温に冷ましてその寸法を手作業で再測定した。
熱収縮を計算し、原長の百分率として表した。
(v)メルトフローインデックス(MFI)は、本明細書では使用ポリマーに応じて、ASTM D1238又はISO-1133に従って測定される。本発明で用いるEMAAコポリマーは、ASTM D1238に従って190℃の温度及び2.16kgの質量で分析される。本発明で使用するEMAAコポリマーに適したMFI範囲は、約0.5〜約50g/10分、好ましくは約1〜約25g/10分、典型的に約2〜約20g/10分、さらに典型的には約2〜約15g/10分の範囲である。
(vi)層厚は、Mercer 122Dゲージで測定される。
(vii)MD線は、不十分なフィルム厚プロファイル及び/又はリールバックリングによって生じたリール上に局在化した高スポット又は周囲バンドである。ダイ線は、フィルム形成中に融成物上の同位置に残る、機械方向の直線である。流線は、フィルム形成中に融成物上の同位置に残らない、機械方向又は横方向の線であり;それらは、ポリマーカーテン内で撹乱を引き起こす、ポリマーの球状ゲル(架橋した)の一過性又は遊走性存在に起因すると考えられる。フィルム内におけるこれらの各欠陥の存在は、肉眼による目視検査によって(すなわち顕微鏡ではなく)定性的に評価された。
(viii)引っかき傷は、フィルム内の低振幅(典型的に約1000nmまでの深さと約1000nmの幅)の細長い陥凹である。それらはフィルム製造で用いるダイ及びローラーの不完全性、又はフィルム取扱いに起因すると考えられる。本明細書では引っかき傷を内因性表面欠陥として分類し、フィルム内におけるそれらの存在を光学顕微鏡(倍率2.5×)で定性的に評価した。当然に、貯蔵又は輸送中の取扱い損傷から生じる外因性表面粗さは、フィルム表面の引っかきをも包含しうるが、該欠陥は本明細書では測定されない。
【0034】
(ix)剥離性能は、最初に、剥離可能フィルムをハサミでカットして層間剥離を助けてから、剥離可能層を基板から手で引く、手剥離試験を用いて評価される。この粗試験は、さらなる分析及び調査に対するフィルム適性の低コストの予備指標を与える。フィルムの等級付けは以下のとおりだった:
等級1:基板上に残る、可剥性層由来の残渣の兆候がなく、全体が除去可能な可剥性層。
等級2:基板上に目視できる残渣のスポットがある、全体が除去可能な可剥性層。
等級3:剥がすときに可剥性層が破れる。
等級4:基板から除去できない可剥性層。
(x)剥離力は、SST-3 Seal Strength Tester (RDM Test Equipment)で以下のように測定される。厚膜ツールを用いてウェブからフィルムの10mm幅のストリップをカットする。剥離可能層がよく接着している場合、1枚の接着テープ(Tesa 4104)を用いてPET基板から剥離可能層を持ち上げる。次に剥離可能層を機器の上顎の両面テープに付着させ、PET基板を下顎の両面テープに付着させる。示度をゼロにしてから両顎を動かして、240mm/分で離した。記録された、層を分離するための力のピーク値を記録する(グラム重)。3回の測定から結果を平均する。サンプル間では器具をリセットしてピークをリセットする。
(xi)いずれの主表面欠陥からも離れるように選ばれた視界(以下に定義する)内の基板表面の「ミクロ粗さ」は、技術上周知である通常の非接触白色位相シフト干渉法を利用して、Wyko NT3300表面プロファイラーで波長604nmの光源を用いて特徴づけられる。WYKO Surface Profiler Technical Reference Manual (Veeco Process Metrology, Arizona, US; June 1998;開示内容を参照によって本明細書に援用する)を参照して、該方法を利用して得られる特徴づけデータには以下のものがある:
パラメーター−粗さ平均(Ra)の平均化:評価領域内で平均表面から測定された高さ変位の絶対値の算術平均。
パラメーター−二乗平均平方根粗さ(Rq)の平均化:評価領域内で平均表面から測定された高さ変位の二乗平均平方根平均。
ピーク対谷値(PV
95):このパラメーターは、正と負の表面高さの頻度分布から、平均表面の平面を基準とした表面高さの関数として得られる。値PV
95は、データ点の最高2.5%と最低2.5%を省くことによって、分布曲線内のピーク対谷の表面高さデータの95%を包含する、ピーク対谷の高さの差である。
【0035】
粗さパラメーター及びピーク高さは、サンプル表面領域、又は「平均表面」の平均レベルに対して、従来技術に従って測定される。(ポリマーフィルム表面は完全には平坦でないことがあり、その表面を横切る穏やかな凹凸を有することが多い。平均表面は、凹凸及び表面高さ逸脱を貫いて中心的に広がって、平均表面の上と下の体積が等しくなるようにプロファイルを分割する平面である。)表面プロファイル分析は、単一測定でスキャンされる領域である、表面プロファイラー機器の「視界」内のフィルム表面の個別領域(主欠陥の間かつ主欠陥から離れた)をスキャンすることによって行なわれる。フィルムサンプルは、個別視界を用いて、或いは連続視界をスキャンしてアレイを形成することによって分析され得る。ここで行なわれた分析はWyko NT3300表面プロファイラー(各視界は480×736ピクセルを構成する)の最大解像度を利用した。Ra及びRqの測定では、50倍の倍率を有する対物レンズを用いて解像度を高めた。結果として生じた視界は90μm×120μmの寸法を有し、ピクセルサイズは0.163μmであった。表面領域の同一部分にわたる5回の連続スキャンの結果を組み合わせて平均値を得る。10%の調節閾値(許容できる最小限のシグナル・ノイズ比に基づいてユーザーが決定したパラメーター)を用いて測定を行なった。すなわち、閾値未満のデータ点は信頼できないと認定される。
(xii)基板表面のマクロ粗さは、平均表面から測定した場合に、評価領域内の最高ピーク(又はクレーター/トラフ)の高さ(深さ)として定義される、最大プロファイルピーク高さ(Maximum Profile Peak Height)(Rp)及び最大プロファイルクレーター深さ(Maximum Profile Crater Depth)(Rv)のパラメーターの値に到達するため、PSI及びVSIの両能力をも備えたWyko SSP9910単フレーム干渉計を用いて大面積計測学(LAM)により分析された。フィルムの測定領域は31×33cmであった。
【0036】
この技術の第1工程は、研究するフィルム領域内の主表面欠陥の位置を決定するためSFI(単フレーム干渉法)モードで測定を行なって低倍率(×2.5)マップを作ることである。SFIモードでは、調節閾値を1%に設定し、カットオフ閾値(主表面欠陥を構成する最小の垂直方向の大きさを定義するために選ばれた、ユーザーが決めた別のパラメーター)を平均表面の上0.25μmに設定した。当業者は、横方向に小さい欠陥では、ピクセルサイズがSFIモードのピークエリアと比較して大きいので、この低倍率では測定されるピーク高さ(該ピクセルにわたって平均される)が、より大きいピクセル領域の結果として下方に較量され得ることが分かるであろう。従って、SFIモードにおける内因性欠陥は、少なくとも0.25μmのピーク高さを有し、かつ2より多くの隣接ピクセル(1ピクセル=3.57μm)をスキャンする欠陥として定義され;外因性欠陥は、隣接するが、必ずしも共線的でない少なくとも3つのピクセルをスキャンする欠陥とみなされた(少なくとも1つの横寸法が7.14μm)。内因性欠陥と外因性欠陥は、本明細書では反射率プロファイルに従って区別された(外因性欠陥は、ポリエステルマトリックスとは異なる反射率プロファイルを示し、典型的により低い反射率を示す)。内因性欠陥及び外因性欠陥は、欠陥の横方向プロファイルによっても区別し得る。この技術の第1工程は、フィルム表面内の全てのユーザー定義欠陥の(x,y)-座標を作製する。
この技術の第2工程は、同機器を用いて、位相シフト干渉(PSI)モード又は垂直走査干渉モード(VSI)のどちらかでフィルム表面を再検査して、高倍率(X25)マップを作製することである。当業者は、隣接ピクセル間の高さの差がデータ損失をもたらさない、より平滑な表面ではPSIモードが一般的に適していることが分かるであろう。対照的に、相対的に粗い表面には、該データ損失を避けるためにVSIモードの方が適している。第2工程では、主表面欠陥があった、フィルムサンプルの当該領域についてのより正確な情報を得るため、器具は、第1工程で決定された(x,y)-座標によって同定された欠陥を再考し、ここで主に興味があるのは主内因性表面欠陥である。PSIモードでは、カットオフ閾値を平均表面の上0.25μmに設定し、調節閾値を10%に設定した。VSIモードでは、カットオフ閾値を同様に平均表面の上0.25μmに設定し、調節閾値を0.2%に設定した。PSIモードで、相対的に高い調節閾値は、外因性欠陥が「データ損失」領域から推測され得ることを意味する。内因性欠陥は、隣接するが必ずしも共線的でない少なくとも9つのピクセル(1ピクセル=0.35μm)及び少なくとも0.25μmのピーク高さをカバーする欠陥とみなされた。N
DT、N
PP及びN
GSについてここに記載の値は、必要に応じて、PSIスキャン又はVSIスキャン、特にPSIスキャンから導かれる。
(xiii)さらなる表面分析は、XPS及び静的SIMS分光法を利用して、それぞれKratos “Axis Ultra”機器及びIon-Tof “ToFSIMS IV”機器を用いて行なわれた。分析の目的は、可剥性層の剥離後にポリエステル基板層上に可剥性犠牲層由来のいずれの残渣の存在をも決定することだった。
【0037】
X線光電子分光法(XPS)は、ある物質内に存在する元素の元素組成、実験式、化学的状態及び電子的状態を測定する定量的分光技術である。XPSスペクトルは、X線を用いて物質に照射しながら、物質の最上部1〜10ナノメートルから放出される電子の運動エネルギーと数を測定することによって得られる。検出限界は、1000中約1原子(Hを除いて、すなわち、0.1原子パーセント又は1000ppm)である。
二次イオン質量分析(SIMS)は、物質表面を一次イオンビームでスパッタリングし、放出された二次イオンを収集して分析する工程を含む技術である。質量分析計を用いて二次イオンを測定して物質表面の元素及び/又は分子組成を決定する。静的SIMSは、物質表面の原子単層分析で用いる方法であり、約1nmの典型的サンプリング深さを有する。SSIMSは、一般的に個体分析用の定量法としては適さないが、当該表面に存在する同定された種の相対量の尺度としてのピーク面積比の分析によって一連の同様のサンプル表面を比較するために有効に使用することができる。
被覆ポリエステル基板をカット及び引き裂くことによって、剥離されたばかりの表面を作り出した。この皮の両面を分析した。きれいなステンレススチール製ハサミを用いて分析用主サンプル(約10cm×15cm)から小片(約1cm×1cm)をカットした。無シリコーン両面テープの小片を用いて分析用サンプルを適切なサンプルホルダーに取り付けた。常にきれいなステンレススチール製ピンセットを用いて分析用サンプルを取り扱った。
【0038】
XPS分析では、単色光発生型(monochromated)Al kα X線を用いて約300μm×700μmの楕円形領域からデータを記録した。サーベイスキャン(survey scan)を160eVのパスエネルギーで記録して表面に存在する全ての元素を同定した;これらは表面組成を定量するためにも使用した。20eVのパスエネルギーでも高解像度スペクトルを記録して特定元素の化学的環境を同定した。結果は相対的原子百分率組成として表される。測定された原子百分率組成(X)と関連する原子百分率単位の不確実性増大は、サーベイスキャン条件を用いて分析したポリマー及び有機物質については、式Y=mX+c(式中、m=0.027、c=0.14)から計算された。記録された不確実性増大は、k=2の被覆率(coverage factor)を乗じた標準的不確実性に基づき、約95%の信頼性レベルを与える。
SSIMS分析では、全ての場合に高質量分解能(m/Δm約6000)でm/z2000まで陽イオン及び陰イオンスペクトルを各サンプルの新鮮表面から記録した。
(xiv)融点は、示差走査熱量測定(DSC)によりASTM D3418に従って決定される。
(xv)VICAT軟化点は、ASTM D1525により決定される。
本発明を以下の実施例でさらに実証する。実施例は、上述した本発明の範囲を限定する意図ではない。本発明の範囲を逸脱することなく、細部に修正を加えることができる。
【実施例】
【0039】
実施例1〜23
AB層構造を有する一連の共押出フィルムの製造を試みた。無フィラーPETを含むポリマー組成物を一連のポリマー(表1参照)と共押出し、冷却回転ドラム上に流し込み、必要に応じて80〜81℃の温度に予熱し、押出方向にその原寸の約3.4倍に延伸した。可能な場合、フィルムを約95℃の温度に加熱し、110℃の温度でテンターオーブン内を通し(ここで、フィルムは横方向にその原寸の約3.6倍に延伸された)、次にこの二軸延伸フィルムを規定温度(225、225及び190℃)の3つのゾーン内で10.8m/分のフィルムウェブ速度で通常手段により連続加熱で熱処理した;3つの各ゾーン内における近似滞留時間は40秒であった。表1は、製造プロセス及び結果として生じたフィルムを特徴づける。
【0040】
表1
【0041】
(表1続き)
【0042】
(表1続き)
† 層Aのポリマーのメルトフローインデックスのために用いた試験法は以下のとおりだった:
(a)ASTM D1238;190℃の温度と2.16kgの質量を使用
(b)ISO 1133;230℃の温度と2.16kgの質量を使用
(c)ISO 1133;200℃の温度と5kgの質量を使用
(d)ASTM D1238;200℃の温度と5kgの質量を使用
【0043】
製造中に十分な機械的強度を示し、かつほとんど又は全く層間剥離を示さない二軸延伸複合フィルムを製造できた場合、本明細書に記載の手剥離試験を用いてフィルムを分析した。この試験では、実施例1〜4及び9は等級1を満たし;実施例5は等級2を満たしたが、残りの実施例は等級3又は4として分類されたか或いは二軸延伸複合フィルムとして製造できなかった。次に本明細書に記載の方法により実施例1〜5及び9の剥離力を測定した。その結果を下表2に示す。
実施例1〜5及び9について剥離直後のポリエステル基板の濁度、TLT及びRaを調べた。その結果を該実施例の基板に対応する単層PETフィルムから成るコントロールフィルムと共に下表2で報告する。実施例1〜5の濁度値は優れたが、実施例9の濁度はかなり悪かった。同様に、実施例1〜5の表面ミクロ粗さのRa値はすべて実施例9の値よりずっと低く、ポリプロピレン可剥性層は、複合フィルムの製造若しくは貯蔵中、又は剥離行為中に不都合なほどにいくらかの追加テクスチャー若しくは粗さ又は他の欠陥を付与したことを示唆している。
本明細書で述べたように、フィルム表面の引っかき傷の存在を光学顕微鏡で評価した。コントロールフィルムの表面はかなりの数の引っかき傷を示したが、実施例1〜5及び9の剥離されたばかりの表面は引っかき傷を示さなかった。
【0044】
表2
【0045】
実験は、EMAA可剥性層が独特かつ予想外に特性の所要の組合せを示すことを実証する。
実施例1及び2のフィルムは、可剥性層を剥離した直後に基板上のいずれの化学的残渣の存在をも判定するため上記XPS及びSSIMS技法によっても分析した。両分析では、実施例1又は実施例2のどちらもPET基板上に可剥性層のいずれの化学的残渣の形跡も見い出されなかった。
XPS分析では、剥離されたばかりのPET基板の表面の化学組成(相対原子百分率組成として測定)及び高解像度スペクトルは、PETフィルムについて典型的に観察されるものに相当した。従って、剥離されたばかりの表面の炭素の相対原子百分率の測定レベルは、72.0〜76.4原子%というPET表面に典型的な範囲に含まれた。剥離されたばかりのPET基板の表面のC1及びO1高解像度スペクトルもきれいなPETの典型であり、予測された比率のC-C、C-O、O-C=Oを示している。
SSIMS分析では、剥離されたばかりのPET基板の表面から記録されたスペクトルは、元の状態のPET層の存在と一致した。
【0046】
実施例24〜26
さらに、特に上記LAM技法で内因性表面粗さを測定することによって、第1セットの実験からEMAA被覆例を調査した。実施例25(Nucrel(登録商標)0908HS)及び実施例26(Nucrel(登録商標)0411HS)は、実施例1及び2に従って製造した共押出フィルムである。実施例24は、共押出二層PETフィルム(両層は実施例1の基板層と同一組成を有し、その他の点では実施例1と同様に加工した)から成るコントロール例である。加工条件の同一性を与えるため、実施例24の総厚、及び各層厚は実施例25及び26の共押出フィルムと同一だった。従って、実施例24は薄いPET層Aと厚いPET層Bで構成される。手で犠牲EMAA層を剥がした直後に実施例25及び26のポリエステル基板の表面を分析した。コントロール例24のポリエステル基板の薄いPET層Aの表面は製造直後に分析した。結果を下表3に示す。N
DT、N
PP及びN
GSの値はPSIスキャンから導かれる。Δ-N
DT、Δ-N
PP及びΔ-N
GSの値は、コントロールフィルムとして実施例24を用いて実施例25及び26について計算される。標準的フィルム形成ラインで3つ全ての実施例を製造し、きれいな環境を与えるため又は浮遊ダスト及びデブリの量を減らすために何も特別な工程を行なわなかった。
【0047】
表3
【0048】
表3のデータは、可剥性層が外因性デブリ(及び該外因性デブリに起因する損傷)からポリエステル基板を保護するのみならず、予想外に基板の内因性表面粗さをも改善(すなわち低減)することを実証する。
【0049】
実施例27及び28
さらにLAM技法を用いてEMAA被覆例を調査した。実施例27はさらなるコントロール例であり、(コントロール)実施例24の共押出二層フィルムのPET層と同一組成の無フィラーPETの単層から成る。実施例28は、実施例26に対応する共押出フィルムであり、実施例27の同一の無フィラーPETの基板層と、Nucrel(登録商標)0411HSの可剥性犠牲層とを含む。実施例27及び28のそれぞれのPET層は同厚であり、同一の(主)押出機から導かれる。前述したように犠牲層を手で剥がした直後に実施例28のPET基板の表面を分析してから、製造直後に分析した実施例27のPET単層フィルムのコントロール表面と比較した。結果を下表4に示す。フィルム製造中にきれいな環境を与えるために追加工程を行なったので、表4中の絶対欠陥数は表3中の欠陥数より少ない。それにもかかわらず、データは、実施例24及び26の比較から観察された予想外の結果を確証する。
【0050】
表4
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出二軸延伸複合フィルムであって、前記可剥性犠牲層はエチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含み、かつ前記ポリエステルは下記:(i)1種以上のジオール;(ii)1種以上の芳香族ジカルボン酸;及び(iii)必要に応じて、式C
nH
2n(COOH)
2(式中、nは2〜8である)の1種以上の脂肪族ジカルボン酸(ここで、前記芳香族ジカルボン酸は、前記ポリエステル中の前記ジカルボン酸の総量に基づいて前記ポリエステル中に80〜100モル%の量で存在する);から得られる、前記フィルム。
〔2〕前記メタクリル酸は、前記EMAAコポリマー中に該コポリマーの約2〜約15wt%の範囲で存在する、前記〔1〕に記載のフィルム。
〔3〕前記EMAAコポリマーは、少比率の、メタクリル酸の金属塩含有単位を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のフィルム。
〔4〕前記EMAAコポリマーは、エチレンと、金属カチオンで部分的又は完全に中和されたメタクリル酸とのコポリマーから選択されるイオノマーである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフィルム。
〔5〕前記金属は、アルカリ金属、マグネシウム及び亜鉛から選択される、前記〔3〕又は〔4〕に記載のフィルム。
〔6〕前記基板層の厚さは約5〜約500μmの範囲内であり、及び/又は前記可剥性層の厚さは約2〜約200μmの範囲内である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のフィルム。
〔7〕前記可剥性犠牲層の前記ポリエステル基板への接着強度は、剥離力が約0.20〜約2.45N(約20〜約250gF)の範囲内であるような強度である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のフィルム。
〔8〕前記基板は、15%以下の濁度及び/又は可視領域(400nm〜700nm)の光について少なくとも80%の全光線透過率(TLT)を有する、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のフィルム。
〔9〕前記ポリエステル基板は、150℃で30分の間に3%以下の収縮を示す、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のフィルム。
〔10〕前記ポリエステルを構成する前記ジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であり、かつ前記ジオールは脂肪族グリコール及び脂環式グリコールから選択される、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のフィルム。
〔11〕前記基板のポリエステルはポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンナフタラートから選択される、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のフィルム。
〔12〕前記ポリエステル基板は10nm未満のRaを示す、前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のフィルム。
〔13〕基板の表面を輸送及び/又は貯蔵中の損傷及び/又は汚染及び/又はデブリから保護する方法であって、下記工程:
(i)前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに従って、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出複合フィルムを用意する工程;及び
(ii)前記基板を使用又はさらに加工する前に前記可剥性犠牲層を前記基板から除去する工程
を含む方法。
〔14〕基板に塗布される機能層内の欠陥を減少させる方法であって、下記工程:
(i)前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに従って、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出複合フィルムを用意する工程;
(ii)前記可剥性犠牲層を前記基板から除去する工程;及び
(iii)前記機能層を前記基板に塗布する工程
を含む方法。
〔15〕前記機能層は導電層又はバリア層である、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の共押出二軸延伸複合フィルムであって、前記可剥性犠牲層が除去されたフィルムから得られた電子若しくは光電子装置、光学フィルム、医療装置又は装飾フィルム。
〔17〕ポリエステル基板層を含んでなる前記〔16〕に記載の電子若しくは光電子装置であって、前記ポリエステル基板層は、前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに従って、ポリエステル基板層と、その片面又は両面に配置される可剥性犠牲層とを含んでなる共押出複合フィルムから得られ、前記可剥性犠牲層は、前記電子若しくは光電子装置への組み入れ又は前記電子若しくは光電子装置の製造の前又はその間に前記複合フィルムから除去されている、
前記電子若しくは光電子装置。
〔18〕さらにバリア層又は導電層を含んでなる前記〔16〕又は〔17〕に記載の電子若しくは光電子装置であって、前記バリア層又は導電層は、前記電子若しくは光電子装置の前記ポリエステル基板上に配置されている、前記電子若しくは光電子装置。
〔19〕電子発光(EL)ディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、光起電力電池及び半導体装置から選択される、前記〔16〕、〔17〕又は〔18〕に記載の電子若しくは光電子装置。
〔20〕エチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマーを含む層の、前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載のポリエステル基板層をさらに含む共押出二軸延伸複合フィルムにおける可剥性犠牲層としての使用(前記EMAA層は、前記ポリエステル基板層の片面又は両面に配置される)。