特許第6526748号(P6526748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6526748マルチレベル外側要素を備える計時器を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526748
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】マルチレベル外側要素を備える計時器を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/00 20060101AFI20190527BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C25D1/00 341
   C25D1/00 371
   C25D1/00 321
   C25D1/00 381
   A44C27/00
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-130236(P2017-130236)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2018-3158(P2018-3158A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】16178118.2
(32)【優先日】2016年7月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアン・モステイロ・ヴァスケス
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・グロッセンバッハー
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/067419(WO,A1)
【文献】 特表2011−521098(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105705458(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00− 3/66
B81B 1/00− 7/04
B81C 1/00−99/00
A44C 1/00− 3/00
A44C 7/00−27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(PC)を製造する方法(Pr1)であって、前記物(PC)は、その本体上のレリーフにおける外側要素(EH1)を備え、前記方法は、
貫通した第1のオリフィス(OL1)がある電気的絶縁層(CL)と、前記第1のオリフィス(OL1)と同様な寸法の貫通した第1の開口(OS1)がある付加層(CS)と、貫通した第1の穴(OT1)がある中間層(CT)と、及び基礎モチーフ(MB1)が上にマウントされた基層(CB)とを重ねて、前記基礎モチーフ(MB1)を前記第1の穴(OT1)の内部に配置し、前記第1の穴(OT1)を前記第1の開口(OS1)でカバーし、前記第1の開口(OS1)と前記第1のオリフィス(OL1)を重ねるステップ(Pr1_sup)と、
金属又は金属合金の層(CM)を電着するステップであって、このステップの終わりにおいて、前記金属又は金属合金の層(CM)が、前記基礎モチーフ(MB1)と、前記第1のオリフィス(OL1)と、前記第1の開口(OS1)と、及び前記第1の穴(OT1)との導電性の壁をカバーする殻状体を形成し、前記絶縁層(CL)上に配置された側領域(EL)を有するようにする、ステップ(Pr1_gal)と、
前記絶縁層(CL)を溶かすステップと、
少なくとも部分的に前記物(PC)の基材によって形成された物体(VL)で、前記金属又は金属合金の層(CM)を被覆して、前記物体(VL)が前記金属又は金属合金の層(CM)の形に適合するようにするステップ(Pr1_rec)であって、前記側領域(EL)は、前記物体(VL)内に密封される、前記ステップ(Pr1_rec)と、
前記物体(VL)及び前記金属又は金属合金の層(CM)を取り除くステップ(Pr1_ext)と
を有することを特徴とする法(Pr1)。
【請求項2】
前記基礎モチーフ(MB1)、第1の開口(OS1)、第1の穴(OT1)及び/又は第1のオリフィス(OL1)の壁に導電性面(SC)を形成するステップを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法(Pr1)。
【請求項3】
前記第1のオリフィス(OL1)の周部に位置する前記絶縁層(CL)の上側面の一部上において導電性面(SCL)を形成するステップを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の方法(Pr1)。
【請求項4】
感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを伴って、前記基層(CB)上に前記基礎モチーフ(MB1)を形成するステップ(Pr1_fMB1)を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法(Pr1)。
【請求項5】
ケイ素ウェーハーから前記基層(CB)を形成するステップ(Pr1_fCB)を有し、
これには、導電性膜で前記ウェハーを被覆することを伴う
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法(Pr1)。
【請求項6】
(PC)を製造する方法(Pr2)であって、前記物(PC)は、その本体上のレリーフにおける外側要素(EH2)を備え、前記方法は、
貫通した第2のオリフィス(OL2)がある電気的絶縁層(CL)と、前記第2のオリフィス(OL2)と同様な寸法の貫通した第2の開口(OS2)がある付加層(CS)と、及び中間モチーフ(MT2)が上にマウントされた中間層(CT)とを重ねて、前記第2の開口(OS2)の内部に前記中間モチーフ(MT2)を配置し、前記第2の開口(OS2)及び前記第2のオリフィス(OL2)を重ねるステップ(Pr2_sup)と、
金属又は金属合金の層を電着させるステップであって、このステップの終わりにおいて、前記金属又は金属合金の層が、前記中間層(MT2)、第2のオリフィス(OL2)及び第2の開口(OS2)の導電性の壁をカバーする殻状体を形成し、前記絶縁層(CL)上に配置された側領域を有するようにする、ステップと、
前記絶縁層(CL)を溶かすステップと、
前記物(PC)の基材によって少なくとも部分的に形成された物体で、前記金属又は金属合金の層を被覆して、前記物体が前記金属又は金属合金の層の形に適合するようにする、ステップであって、前記側領域は、前記物体内に密封される、前記ステップと、
前記物体及び前記金属又は金属合金の層を取り除くステップ(Pr2_ext)と
を有することを特徴とする方法(Pr2)。
【請求項7】
前記中間モチーフ(MT2)、前記第2のオリフィス(OL2)及び/又は前記第2の開口(OS2)の壁上に導電性面を形成するステップを有する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法(Pr2)。
【請求項8】
前記第2のオリフィス(OL2)の周部に位置する前記絶縁層(CL)の上側面の一部上に導電性面を形成するステップを有する
ことを特徴とする請求項7に記載の方法(Pr2)。
【請求項9】
感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを行って、前記中間層(CT)上に前記中間モチーフ(MT2)を形成するステップ(Pr2_fMT2)を有する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の方法(Pr2)。
【請求項10】
プレートを切断することを伴って、前記中間層(CT)を形成するステップ(Pr12_fCT)を有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法(Pr1、Pr2)。
【請求項11】
プレートを切断することを伴って、前記付加層(CS)を形成するステップ(Pr12_fCS)を有する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法(Pr1、Pr2)。
【請求項12】
前記付加層(CS)を形成するステップ(Pr12_fCS)は、前記付加層(CS)に付加モチーフ(MS3)を形成するように前記付加層(CS)にスタンピングすることを含み、
前記電気的絶縁層(CL)には、第3のオリフィス(OL3)があり、
前記第3のオリフィス(OL3)は、前記絶縁層(CL)及び前記付加層(CS)が重なっているときに前記付加モチーフ(MS3)に対向するように配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の方法(Pr1、Pr2)。
【請求項13】
前記付加層(CS)を形成するステップ(Pr12_fCS)は、前記付加層(CS)にエッチングして、前記付加層(CS)の厚みを局所的に小さくすることを伴い、
前記絶縁層(CL)には、重ねられた前記付加層(CS)及び前記絶縁層(CL)を有するアセンブリーの厚みが一定となるように、厚みが厚い領域がある
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法(Pr1、Pr2)。
【請求項14】
感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを行って第3のオリフィス(OL3)を形成するように、付加層(CS)上に前記絶縁層(CL)を形成するステップ(Pr12_fCL)を有し、
前記第3のオリフィス(OL3)は、前記絶縁層(CL)及び前記付加層(CS)が重なっているときに前記付加モチーフ(MS3)に対向するように配置される
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の方法(Pr1、Pr2)。
【請求項15】
前記物体(VL)は、前記第2の材料が前記金属又は金属合金の殻状体の内部の空間を充填するように、前記基材とは異なる第2の材料によって部分的に作られる
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法(Pr1、Pr2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計の表盤、ベゼル、竜頭、腕輪リンク、クラスプのような計時器又は装飾品、又はパンチング工具、型のような工具片のような物を製造する方法に関する。具体的には、本方法によって、物の本体と、及びこの物の本体上のレリーフにおけるマルチレベル外側要素とを有する物を製造することが可能になり、この外側要素は、時間インジケータ、装飾要素、文字などである。「マルチレベル」とは、要素に、物の本体と平行に延在している互いと平行な少なくとも2つの可視の平坦な面があることを意味している。
【背景技術】
【0002】
時計と装飾品の分野において、従来から、フォトリソグラフィと電着の技術を用いてマルチレベル外側要素を製造することが行われている。欧州特許EP2316056B1は、特に、UV−LIGA技術を用いる金属又は金属合金によって作られたマルチレベル要素を製造する方法について記載している。この方法は、
− 導電性面を有する基材を用意するステップと、
− 第1の感光性樹脂層で前記基材の前記導電性面を被覆するステップと、
− 所望のパターンに対応するマスクを通して第1の感光性樹脂層に照射するステップと、
− 前記基材の前記導電性面を露出させる開口が形成されるように第1の感光性樹脂層に堆積して、第1のレベルの樹脂型を得るステップと、
− 堆積した樹脂層に別の感光性樹脂層を堆積させて、前記堆積した樹脂層を被覆し、好ましくは、その樹脂層に形成されている前記開口を充填するステップと、
− 所望のパターンに対応するマスクを通して新しい感光性樹脂層に照射するステップと、
− 前記基材の前記導電性面を露出させる開口を形成するように新しい感光性樹脂層を堆積させて、マルチレベル樹脂型を得るステップと、
− 電着によって前記マルチレベル樹脂型に形成された前記開口を金属又は合金で充填するステップと、
− 前記樹脂層を取り除いて、前記開口に堆積した前記金属又は合金によって形成されたマルチレベル金属又は合金要素を露出させるステップと
を有する。
【0003】
このようにして製造したマルチレベル要素は、次に、基材から分離され、計時器又は装飾品の本体にマウントされる。
【0004】
このマルチレベル外側要素を備える物を製造する方法には、特に、実施時間が長いという課題がある。なぜなら、電着時に型の開口を完全に充填することが必要であるからである。第2の課題は、物の本体上に外側要素を組み立てる必要があることであり、これによって、衝撃を受けたときなどに分離してしまうリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、第1の実施形態によると、本発明は、外側要素を備える物を製造する方法に関し、貫通した第1のオリフィスがある電気的絶縁層と、前記第1のオリフィスと同様な寸法の貫通した第1の開口がある付加層と、貫通した第1の穴がある中間層と、及び基礎モチーフが上にマウントされた基層とを重ねて、前記基礎モチーフを前記第1の穴の内部に配置し、前記第1の穴を前記第1の開口でカバーし、前記第1の開口と前記第1のオリフィスを重ねるステップと、金属又は金属合金の層を電着するステップであって、このステップの終わりにおいて、前記金属又は金属合金の層が、前記基礎モチーフと、前記第1のオリフィスと、前記第1の開口と、及び前記第1の穴との導電性の壁をカバーする殻状体を形成し、前記絶縁層上に配置された側領域を有するようにする、ステップと、前記絶縁層を溶かすステップと、少なくとも部分的に前記物の基材によって形成された体積物で、前記金属又は金属合金の層を被覆して、前記体積物が前記金属又は金属合金の層の形に適合するようにするステップと、前記体積物及び前記金属又は金属合金の層を取り除くステップとを有する。
【0007】
第2の実施形態によると、本発明は、外側要素を備える物を製造する方法に関し、貫通した第2のオリフィスがある電気的絶縁層と、前記第2のオリフィスと同様な寸法の貫通した第2の開口がある付加層と、及び中間モチーフが上にマウントされた中間層とを重ねて、前記第2の開口の内部に前記中間モチーフを配置し、前記第2の開口及び前記第2のオリフィスを重ねるステップと、金属又は金属合金の層を電着させるステップであって、このステップの終わりにおいて、前記金属又は金属合金の層が、前記中間層、第2のオリフィス及び第2の開口の導電性の壁をカバーする殻状体を形成し、前記絶縁層上に配置された側領域を有するようにする、ステップと、前記絶縁層を溶かすステップと、前記物の基材によって少なくとも部分的に形成された体積物で、前記金属又は金属合金の層を被覆して、前記体積物が前記金属又は金属合金の層の形に適合するようにする、ステップと、前記体積物及び前記金属又は金属合金の層を取り除くステップとを有する。
【0008】
第1及び第2の実施形態に係る方法によって、物の本体(物の基材の体積物によって形成される)及び外側要素(金属又は合金の層によって形成される)を同時に製造することができる。外側要素は、アセンブリーステップを必要とせずに、物の本体に直接固定される。実際に、堆積段階の終わりにおいて絶縁層上に配置された金属又は合金の層の側領域は、被覆段階の終わりにおいて体積物内に密封される。
【0009】
また、第1又は第2の実施形態に係る方法は、上記の従来技術の方法よりも迅速に実施することができる。実際に、電着時間は、より短い。なぜなら、金属又は合金の層が(型を形成している)オリフィス、開口及び穴を充填する必要はなく、それらの壁とモチーフを単に被覆すればいいからである。すなわち、金属又は金属合金の構造は中実ではなく、中空の殻状体を形成している。したがって、電着によって堆積する厚みは小さくなる。
【0010】
物の本体と外側要素の間の界面は、バリなしできれいである。また、製造方法に関わる様々なモチーフ又はパターンの開口、オリフィス又は穴の適切な形及び寸法を選ぶことによって、様々な形及び寸法の外側要素を製造することができる。また、付加層にあるテキスチャーは、物の本体(物の基材の体積物)に対するインプリントの効果によって、エッチングされる。
【0011】
また、第1の実施形態(第1の方法)に係る製造方法は、独立して又は技術的に可能なすべての組み合わせで選択される以下の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0012】
一実施形態(これに限定されない)によると、第1の方法は、前記基礎モチーフ、第1の開口、第1の穴及び/又は第1のオリフィスの壁に導電性面を形成するステップを有する。
【0013】
一実施形態(これに限定されない)によると、第1の方法は、前記第1のオリフィスの周部に位置する前記絶縁層の上側面の一部上において導電性面を形成するステップを有する。
【0014】
一実施形態(これに限定されない)によると、第1の方法は、SU−8樹脂のような感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを伴って、前記基層上に前記基礎モチーフを形成するステップを有する。
【0015】
一実施形態(これに限定されない)によると、第1の方法は、ケイ素ウェーハーから前記基層を形成するステップを有し、これには、導電性膜で前記ウェハーを被覆することを伴う。
【0016】
また、第1の実施形態及び/又は第2の実施形態に係る方法は、すべての技術的に可能な組み合わせで選択される以下の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0017】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、前記中間モチーフ、前記第2のオリフィス及び/又は前記第2の開口の壁上に導電性面を形成するステップを有する。
【0018】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、前記第2のオリフィスの周部に位置する前記絶縁層の上側面の一部上に導電性面を形成するステップを有する。
【0019】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、SU−8樹脂のような感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを行って、前記中間層上に前記中間モチーフを形成するステップを有する。
【0020】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、黄銅などで作られたプレートをレーザー切断などで切断することを伴って、前記中間層を形成するステップを有する。
【0021】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、黄銅などで作られたプレートをレーザー切断などで切断することを伴って、前記付加層を形成するステップを有する。
【0022】
一実施形態(これに限定されない)によると、前記付加層を形成するステップは、前記付加層に付加モチーフを形成するように前記付加層にスタンピングすることを含み、前記電気的絶縁層には、第3のオリフィスがあり、前記第3のオリフィスは、前記絶縁層及び前記付加層が重なっているときに前記付加モチーフに対向するように配置される。
【0023】
一実施形態(これに限定されない)によると、前記付加層を形成するステップは、前記付加層にエッチングして、前記付加層の厚みを局所的に小さくすることを伴い、前記絶縁層には、重ねられた前記付加層及び前記絶縁層を有するアセンブリーの厚みが一定となるように、厚みが厚い領域がある。
【0024】
一実施形態(これに限定されない)によると、当該方法は、SU−8樹脂のような感光性樹脂の付着、照射及びデベロップを行って第3のオリフィスを形成するように、付加層上に前記絶縁層を形成するステップを有し、前記第3のオリフィスは、前記絶縁層及び前記付加層が重なっているときに前記付加モチーフに対向するように配置される。
【0025】
一実施形態(これに限定されない)によると、前記体積物は、前記第2の材料が前記金属又は金属合金の殻状体の内部の空間を充填するように、前記基材とは異なる第2の材料によって部分的に作られる。
【0026】
一実施形態(これに限定されない)によれば、当該方法は、前記被覆するステップの前に行われる、側領域を切断するステップを有する。
【0027】
図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点も明確になるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】少なくとも1つのマルチレベル外側要素を備える物を製造することを可能にする本発明の一実施形態(これに限定されない)に係る方法において用いられる基層の概略斜視図である。
図2】本方法において用いられる中間層の概略斜視図である。
図3】本方法に用いられる付加層及び電気的絶縁層の概略斜視図である。
図4】本方法に係る図1、2及び3の層を重ねるステップを示す概略斜視図である。
図5】本方法に係る金属又は合金の層を電着させるステップを示す断面図である。
図6】本方法に係る物の基材の体積物で金属又は合金の層を被覆ないしはめ込むステップを示す断面図である。
図7】2つのマルチレベル外側要素を備えている本方法によって得られた最終的な物を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここにおける説明には、2つの製造方法Pr1、Pr2が関わる。これらを組み合わせて実行することによって、図7に示すような2つのマルチレベル外側要素EH1、EH2を備える計時器PCを製造することができる。具体的には、第1の外側要素EH1が第1の方法Pr1によって得られ、第2の外側要素EH2が第2の方法Pr2によって得られる。これらの2つの方法Pr1、Pr2には共通のステップがあり、共通の要素を用いるので、これらの2つの方法Pr1、Pr2を組み合わせて実行することによって、これらの2つの外側要素を備える物を製造することができる。しかし、これらの方法Pr1、Pr2を互いに独立に行って、2つの外側要素を備える1つの物を作るのではなく、それぞれ1つの外側要素を備える2つの物を作ることができる。また、これらの方法Pr1、Pr2を、装飾品や工具片のようなすべての種類の物及びすべての種類のマルチレベル外側要素に適用することができる。最後に、当然、当該物は、各タイプの外側要素を複数有することができる。
【0030】
図1〜3は、4つの層CB、CT、CS及びCLを示しており、これらは、本製造方法の重ねるステップにおいて一方が他方の上に重ねられる。それぞれの層CB、CT、CS及びCLは、金属性であり、又は金属合金で作られ、又は鉱物で作られている。しかし、1つの層が鉱物である場合、そのいくらかの領域は、下で説明するように、例えば、物理的蒸着技術(PVD)によって、導電性にしなければならない。
【0031】
図1は、基礎モチーフMB1が上にマウントされた基層CBを示している。このCB/MB1アセンブリーは、第1の方法Pr1によって、基層CBを形成するステップPr1_fCBと、その後に続く、基礎モチーフMB1を形成するステップPr1_fMB1とによって得られたものである。ステップPr1_fCBの一実施形態(これに限定されない)では、基層CBは、ケイ素ウェーハーのような基材で作られている。一実施形態(これに限定されない)において、基材は、PVDによって導電性膜で被覆される。このステップは必須ではなく、下の文章で説明するように、基層CBのいくらかの部分は、本方法に係る後のステップにおいて、PVD又は導電層と接触させるような方法によって、導電性にされる。ステップPr1_fMB1の一実施形態(これに限定されない)では、基礎モチーフMB1は、
− SU−8タイプの樹脂のような感光性樹脂を基層CBに付着させ、
− SU−8樹脂の場合には紫外線で、基礎モチーフMB1の所望形状に対応するフォトマスクを通して前記樹脂に照射して、基礎モチーフMB1に対応する樹脂の領域を硬化させ、
− 前記樹脂をデベロップして、硬化していない領域を溶かし、基礎モチーフMB1を露出させて、
作られる。
【0032】
ステップPr1_fMB1の別の実施形態(これに限定されない)では、基礎モチーフMB1は、均質な層(ラッカーなど)を堆積させて、この均質な層を選択的にレーザー削磨することによって形成される。
【0033】
図2は、中間モチーフMT2が上にマウントされ第1の貫通穴OT1がある中間層CTを示している。このCT/MT2アセンブリーは、第1及び第2の方法Pr1、Pr2によって、中間層CTを形成するステップPr12_fCTと、その後に続く、中間モチーフMT2を形成するステップPr12_fMT2とによって得られた。ステップPr12_fCTの一実施形態(これに限定されない)では、中間層CTは、黄銅などによって作られた金属合金プレートで作られ、第1の穴OT1を得るようにレーザーなどによって切断されている。なお、第1の穴OT1は、図3の第1の開口OS1よりも小さな寸法である。ステップPr12_fMT2の一実施形態(これに限定されない)では、中間モチーフMT2は、
− SU−8タイプの樹脂のような感光性樹脂を中間層CTに付着させ、
− SU−8樹脂の場合には紫外線で、中間モチーフMT2の所望形状に対応するフォトマスクを通して前記樹脂に照射して、中間モチーフMT2に対応する樹脂の領域を硬化させ、
− 樹脂をデベロップして、硬化されていない領域を溶かして中間モチーフMT2を露出させて、
作られる。
【0034】
図3は、第1の貫通開口OS1、第2の貫通開口OS2、付加的モチーフMS3、及び厚みが薄い領域ZSがある付加層CSを示している。付加層CSには、第1のオリフィスOL1、第2のオリフィスOL2、第3のオリフィスOL3、及び厚みが厚い領域ZLがある電気的絶縁層CLが重ねられている。なお、付加層CSの厚みが薄い領域ZSは、代わりに、厚みが厚い領域であることができる。この場合、厚みが厚い領域ZLは、厚みが薄い領域になる。
【0035】
付加層CSは、第1及び第2の方法Pr1、Pr2によって、前記層を形成するステップPr12_fCSによって得られた。ステップPr12_fCSの一実施形態(これに限定されない)において、付加層CSは、黄銅などで作られた金属合金プレートで作られ、これは、第1の開口OS1及び第2の開口OS2を得るようにレーザーなどによって切断される。ステップPr12_fCSの一実施形態(これに限定されない)において、プレートに、ロゼット模様、ブラシングなどによって、あらかじめテキスチャー形成される。また、ステップPr12_fCSの一実施形態(これに限定されない)において、付加層CSは、図3に示すような第3のモチーフMS3を形成するインプリントを作るようにスタンピングされる。また、ステップPr12_fCSの一実施形態(これに限定されない)において、付加層CSの領域ZSがエッチングされ、図3に示すように、その厚みを小さくさせる。当然、ステップPr12_fCSのこれらのサブステップのすべてが必須という訳ではなく、それらのうちのいくらかのみを行うことができる。
【0036】
第1及び第2の方法Pr1、Pr2に係る前記層を形成するステップPr12_fCLによって、絶縁層CLが得られた。ステップPr12_fCLの一実施形態(これに限定されない)では、絶縁層CLは、以下によって得られる。
− SU−8タイプの樹脂のような感光性樹脂を付加層CSに付着させる。なお、付加層CSが厚みが厚い領域を有する場合に、樹脂には、付加層CSの厚みが薄い領域において厚みが厚い領域ZLがある。これは、逆も成り立つ。
【0037】
− SU−8樹脂の場合には紫外線で、フォトマスクを通して樹脂に照射して、第1の開口OS1、第2の開口OS2及び付加的モチーフMS3に対向する領域を例外として、樹脂を硬化させ、
− 樹脂をデベロップして、硬化していない領域を溶かし、第1の開口OS1に重ねられた第1のオリフィスOL1、第2の開口OS2に重ねられた第2のオリフィスOL2及び付加的モチーフMS3に対向している第3のオリフィスOL3を露出させる。
【0038】
図4は、第1の方法Pr1及び第2の方法Pr2の重ねるステップPr1_sup、Pr2_supの終わりにおける4つの重なった層を示している。具体的には、絶縁層CLは、付加層CSに重なり、この付加層CSは、中間層CTに重なり、これは、基層CBに重なる。様々なオリフィス、開口、穴及びモチーフは、以下の特徴を有する。
− 基礎モチーフMB1は、第1の穴OT1内に位置し、第1の穴OT1は、第1の開口OS1によってカバーされ、第1のオリフィスOL1は、第1の開口OS1に重なる。
− 中間モチーフMT2は、第2の開口OS2内に位置し、第2のオリフィスOL2は、第2の開口OS2に重なる。
− 付加的モチーフMS3は、第3のオリフィスOL3に対向するように位置する。
【0039】
そして、図示していない1つのステップにおいて、基礎モチーフMB1、第1のオリフィスOL1、第1の開口OS1、第1の穴OT1の壁SC(図5に示した)及び基層CBの露出した壁が、PVDによる導電性膜の堆積などによって、導電性にされる。当然、このPVDによる導電性膜の堆積は、初期に導電性でない面に対してのみ必要である。したがって、代替実施形態において、上記壁のうちのいくらかのみが、PVD堆積又は他の同様な処理を経て、導電性にされる。したがって、代替実施形態において、前記壁のうちの選択された壁のみが、PVD堆積又は他の同様な処理を経て、導電性にされる。このステップの間、第1のオリフィスOL1の周部における絶縁層CLの上側面(すなわち、上側層CSと接していない面)の一部SCLも導電性にすることができる。
【0040】
同様に、中間モチーフMT2、第2のオリフィスOL2、第2の開口OS2及び中間層CTの露出した壁の壁も、導電性にすることができる。同じことが、付加的モチーフMS3、第3のオリフィスOL3及び付加層CSの露出した壁の壁にも当てはまる。同様に、第2のオリフィスOL2及び/又は第3のオリフィスOL3の周部における、絶縁層CLの上側面の一部も、導電性とすることができる。
【0041】
図5は、第1の方法Pr1に係る、第1のオリフィスOL1、第1の開口OS1、第1の穴OT1の内側面、基礎モチーフMBの面、及び基層CBの露出面上に、金属又は合金の層CMを電着させるステップPr1_galの概略図である。したがって、4つの重なった層CB、CT、CS及びCLは、金、銀、ニッケル又は比較的厚い層に堆積させることができる他の金属又は金属合金のような金属の堆積に適している直流電気槽に浸され、電鋳を経る。前記壁が金属又は合金の層CMで完全に被覆されると電鋳が完了し、得られた殻状体の厚みが十分であると考えられる。そして、金属又は合金の層CMには、側領域ELがあり、これは、絶縁層CL上に配置されている。第1のオリフィスOL1の周部における絶縁層CLの上側面の部分SCLが導電性にされる場合に、側領域ELは、前記部分SCL上にて少なくとも部分的に延在している。
【0042】
図示していないが、同様な形態で、第2のオリフィスOL2、第2の開口OS2、中間モチーフMT2の壁及び中間層CTの露出した壁上に、金属又は合金の層を堆積する。また、同様な形態で、第3のオリフィスOL3、付加的モチーフMS3の壁及び付加層CSの露出した壁上に、金属又は合金の層を堆積する。第2のオリフィスOL2及び/又は第3のオリフィスOL3の周部における絶縁層CLの上側面の1つの部分が導電性にされる場合に、側領域ELが前記部分の少なくとも一部にわたって延在する。
【0043】
金属又は合金の層CMは、特定の厚みの殻状体を形成する。そして、図示していないステップにおいて、適切な槽に浸すことによって絶縁層CLが溶かされる。そして、製造する物のタイプに依存して、側領域ELを切断することができる。製造する物が、例えば、ポンチタイプの工具である場合には、側領域ELを切断することは有利である。
【0044】
図6は、第1の方法Pr1によって製造される物の基材の体積物VLで、付加層CS及び金属又は合金の層CMを被覆ないしはめ込むステップPr1_recを概略的に示している。1つの実施形態において、基材は、アモルファス又は部分的にアモルファスな金属であり、このことは、その機械的性質のために有利である。別の実施形態において、基材は、高分子又は合成物(セラミックス高分子、複合炭素繊維など)である。これらの両方の場合に、金属又は金属合金又はアモルファス又は部分的にアモルファスな合金又は高分子又は複合材のブロックが、ペースト状のコンシステンシーを有する温度で、付加層CSに、そして、金属又は合金の層CMに対して押される。このことによって、金属又は合金の層CMの形に、そして、特に、金属又は合金の層CMがあらかじめ切断されていなければ金属又は合金の層CMの側領域ELの形に、適合するように変形することができる。代わりに、基材を成型することができる。別の実施形態において、基材は、他の金属又は金属合金、例えば、ニッケルや金、であることができ、被覆は、前記金属の電着によって行う。なお、側領域ELがあらかじめ切断されていない場合、ステップPr1_recの終わりにおいて、金属又は合金の層CMが、基材の体積物VLと一体化されている。なぜなら、側領域ELは、基材の体積物VL内に密封されるからである。図示していないが、(中間層MT2及び付加的モチーフMS3における)金属又は合金の層は、同様な形態で被覆され体積物VL内に密封される。
【0045】
被覆/はめ込むステップPr1_recの代替実施形態において、体積物VLの全体が当該物の基材によって作られているとは限らない。このような場合、体積物の一部のみが当該物の基材で作られ、他方で、他の部分が、好ましいことに基材よりも低コストである第2の材料によって作られている。このようにして、第2の材料によって作られた体積物VLの部分は、好ましいことに、前記金属又は合金の殻状体の内部の空間を充填し、他方で、基材によって作られた体積物VLの部分は、当該物上の可視の外側の部分に位置する。
【0046】
図7は、第1の方法Pr1及び第2の方法Pr2によって、体積物VL及び金属又は合金の層CMを取り除くステップPr1_ext、Pr2_extの概略図を示している。すなわち、体積物VL及び金属又は合金の層CMは、付加層CS、中間層CT及び基層CBから分離される。これを達成するために、当該アセンブリーは、例えば、付加層CS、中間層CT及び基層CBが溶かされる選択的な酸の槽に浸される。代わりに、強制型抜きによって分離を行う。なお、付加層CSに対して前置表面処理を行うと、型抜きを促進させる。この処理は、例えば、型抜き剤の付着や不動態化処理である。
【0047】
そして、体積物VLは、物の本体PCを形成し、金属又は合金の層CMは、外側要素EH1、EH2を形成している(第3のモチーフMS3の複製に起因する第3の外側要素は図7に示していない)。したがって、外側要素の形及び寸法は、本方法において実装されるモチーフの形及び寸法、様々なオリフィス、開口及び穴の形及び寸法に直接依存する。
【0048】
説明した方法によって、当該物を破壊せずに、基材の体積物から外側要素を解放することはできない。また、当該物の本体と外側要素の間の界面はきれいである。また、被覆ステップで発生する体積物に対する付加層のテキスチャーのインプリントの影響によって、当該物の本体にテキスチャーが形成される。
【0049】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が思い浮かぶ様々な変種及び改変を行うことができる。具体的には、重なった層の数、様々なオリフィス、開口、穴、モチーフなどの形及び寸法について、様々な変種及び改変を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
CB 基層
CL 絶縁層
CM 金属又は金属合金の層
CS 付加層
CT 中間層
EH1、EH2 外側要素
EL 側領域
MB1 基礎モチーフ
MS3 付加モチーフ
MT2 中間モチーフ
OL1 第1のオリフィス
OL2 第2のオリフィス
OL3 第3のオリフィス
OS1 第1の開口
OS2 第2の開口
OT1 第1の穴
PC 物
SC 導電性面
VL 体積物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7