特許第6526768号(P6526768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6526768水溶性N−(2ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマー又はコポリマーを含むコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526768
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】水溶性N−(2ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマー又はコポリマーを含むコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20190527BHJP
   C08F 20/58 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   G02C7/04
   C08F20/58
【請求項の数】31
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2017-218977(P2017-218977)
(22)【出願日】2017年11月14日
(62)【分割の表示】特願2015-514219(P2015-514219)の分割
【原出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-66997(P2018-66997A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年11月14日
(31)【優先権主張番号】61/651,767
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/771,961
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/771,959
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/840,919
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/899,694
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/899,676
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スケールズ・チャールズ・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】マッケイブ・ケビン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー・ブレント・マシュー
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−239981(JP,A)
【文献】 特表2008−532060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0275734(US,A1)
【文献】 特表2006−504990(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/040337(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/088758(WO,A2)
【文献】 特表2013−532196(JP,A)
【文献】 特表2010−531166(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0314767(US,A1)
【文献】 特開2005−314626(JP,A)
【文献】 特表2005−523981(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0203991(US,A1)
【文献】 特開2012−088525(JP,A)
【文献】 特開2008−208331(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0114123(US,A1)
【文献】 特表2006−513282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0116310(US,A1)
【文献】 特表2012−527509(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0296049(US,A1)
【文献】 特開2007−181691(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0155907(US,A1)
【文献】 特表2011−508059(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0168012(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0122540(US,A1)
【文献】 特表2015−526745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリマーマトリックス及び少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む医療用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが100モル%の式I:
【化1】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100〜100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、医療用デバイス。
【請求項2】
前記架橋ポリマーマトリックスが非荷電である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記医療用デバイスが、少なくとも1つの親水性成分を含むヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズである、請求項1又は2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記架橋ポリマーマトリックスが反応成分の混合物から形成され、前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、すべての反応成分及び親水性ポリマーの合計に基づき、1〜20重量パーセント、又は3〜15重量パーセント、又は5〜12重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、500〜10,000、又は500〜7,500、又は500〜2000の重合度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、線状又は分岐状であり、かつ/又は、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが架橋されておらず、かつ/又は、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、フリーラジカル重合条件下で架橋可能な反復単位を含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、生物活性リンカー基に由来する反復単位を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、ホモポリマー又はランダムコポリマーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
水溶性の非反応性親水性ポリマーが非イオン性である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
が、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチルからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、及び
【化2】
並びにこれらの混合物からなる群から選択されるか、又は、
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドからなる群から選択されるか、又は、
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記架橋ポリマーマトリックスが水素結合受容基を含み、
前記水素結合受容基が、アミド基、アミン基、エーテル、フッ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、又は、
前記水素結合受容基が、ピロリドン基、アミド基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記架橋ポリマーマトリックスがシリコーンヒドロゲルを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
前記医療用デバイスが眼科用デバイスであり、
前記眼科用デバイスが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、涙点プラグ、及び眼用インサートからなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
ヒドロゲルから形成される生物医学デバイスを少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む溶液と接触させることを含む方法であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが100モル%の式I:
【化3】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたCアルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたCアルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100〜100,000の重合度を有し、かつ前記生物医学デバイスに潤滑有効量の前記水溶性の非反応性親水性ポリマーを組み込むのに十分な条件下で末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、方法。
【請求項16】
前記生物医学デバイスが、少なくとも1つの親水性成分を含むヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、500〜10,000、又は500〜7,500、又は500〜2000の重合度を有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、線状又は分岐状であり、かつ/又は、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが架橋されておらず、かつ/又は、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、フリーラジカル重合条件下で架橋可能な反復単位を含まない、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、生物活性リンカー基に由来する反復単位を含まない、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、ホモポリマー又はランダムコポリマーである、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
水溶性の非反応性親水性ポリマーが非イオン性である、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
が、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチルからなる群から選択される、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、及び
【化4】
並びにこれらの混合物からなる群から選択されるか、又は、
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドからなる群から選択されるか、又は、
前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを含む、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロゲルが非荷電である、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記溶液が、前記溶液内のすべての成分に基づき、0.001%〜10%、又は0.005%〜2%のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマーを含む、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記接触させる工程が加熱工程を更に含み、かつ/又は、
前記加熱工程がオートクレーブ処理工程を含み、かつ/又は、
前記生物医学デバイスがコンタクトレンズであり、前記溶液が包装溶液であり、かつ/又は、
前記接触させる工程が、40℃〜100℃の温度での加熱工程を含む、請求項15〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液が、ホウ酸緩衝液及びリン酸緩衝液からなる群から選択された緩衝溶液を含む、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
10ppm〜10重量%の少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む眼科用溶液であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが100モル%の式I:
【化5】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100〜100,000の重合度を有し、かつ末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、眼科用溶液。
【請求項29】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、前記眼科用溶液内のすべての成分に基づき、50ppm及び2重量%の濃度で存在し、かつ/又は、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100ppm及び5,000ppmの濃度で存在する、請求項28に記載の眼科用溶液。
【請求項30】
前記眼科用溶液が、塩溶液、緩衝溶液、及び脱イオン水からなる群から選択され、又は、
前記眼科用溶液が、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びこれらの対応するカリウム塩からなる群から選択される塩を含む塩溶液である、請求項28又は29に記載の眼科用溶液。
【請求項31】
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100〜100,000の重合度を有する、請求項30に記載の眼科用溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年5月25日出願の「POLYMERS AND NANOGEL MATERIALS AND METHODS FOR MAKING AND USING THE SAME」という名称の米国特許仮出願第61/651767号、2013年3月15日出願の「POLYMERS AND NANOGEL MATERIALS AND METHODS FOR MAKING AND USING THE SAME」という名称の米国特許出願第13/840919号、2013年3月4日出願の「CONTACT LENSES COMPRISING WATER SOLUBLE N−(2 HYDROXYALKYL)(METH)ACRYLAMIDE POLYMERS OR COPOLYMERS」という名称の米国特許仮出願第61/771959号、2013年5月22日出願の「CONTACT LENSES COMPRISING WATER SOLUBLE N−(2 HYDROXYALKYL)(METH)ACRYLAMIDE POLYMERS OR COPOLYMERS」という名称の米国特許出願第13/899676号、2013年3月4日出願の「POLYMERS AND NANOGEL MATERIALS AND METHODS FOR MAKING AND USING THE SAME」という名称の米国特許仮出願第61/771961号、2013年5月22日出願の「POLYMERS AND NANOGEL MATERIALS AND METHODS FOR MAKING AND USING THE SAME」という名称の米国特許出願第13/899694号の優先権を主張し、その内容が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、少なくとも1950年代から視力を改善するために商業的に使用されている。最初のコンタクトレンズは、硬質材料からできており、したがって使用者にとって幾分不快であった。現代のソフトコンタクトレンズは、より軟質な材料、典型的にはヒドロゲルでできている。多くの着用者は、依然として、ヒドロゲルから形成されたソフトコンタクトレンズを着用している。
【0003】
近年、シリコーンヒドロゲルから作製されるソフトコンタクトレンズが導入された。シリコーンヒドロゲルは、改善された酸素透過性を有する水膨潤ポリマー網目である。これらのレンズは、多くのレンズ着用者に良好なレベルの快適さを付与するが、一部の使用者は、これらのレンズを使用するときに不快感及び視力低下をもたらす眼への過剰な付着物を経験する。この不快感及び付着物は、レンズの表面の疎水性、及びこれらのレンズ表面とタンパク質、脂質、及びムチンとの相互作用、並びに眼の親水性表面に起因している。
【0004】
少なくとも1つのポリマー湿潤剤をコンタクトレンズマトリックス又は包装溶液の一方又は両方に組み込むことによって、快適さを改善し、コンタクトレンズ上の付着物を低減させる努力がなされている。
【0005】
ポリビニルピロリドンなどの環式ポリアミド、及び非環式ポリアミドが、従来のヒドロゲル配合物とシリコーン含有ヒドロゲル配合物の双方及びコンタクトレンズに組み込まれている。ポリ(メタ)アクリルアミド及びN−置換ポリ(メタ)アクリルアミドが、従来の(シリコーン非含有)ヒドロゲルに組み込まれ得る親水性IPN剤であると開示されている。
【0006】
物品を形成するために使用されるモノマー混合物に重合性界面活性剤を添加することによるポリマー物品の表面の改質も、同様に開示されている。しかしながら、生体内での湿潤性の改善、及び表面付着物の低減を持続させる可能性は低い。
【0007】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、低い表面摩擦度、低い脱水率、及び高い生体付着物抵抗度を示す一部相互貫入網目を形成するために、ヒドロゲル形成組成物に添加されている。PVPなどの高分子量親水性ポリマーが、内部湿潤剤としてシリコーンヒドロゲルレンズへ添加されているが、このようなポリマーは、シリコーンを含有する反応混合物に可溶化することが困難な場合がある。
【0008】
疎水性ブロック及び親水性ブロックを有するブロックコポリマーも同様に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをはじめとする、疎水性基材内への又は疎水性基材上への組み込みに好適であると開示されている。しかしながら、疎水性ブロックは、特別な重合工程を必要とし、親水性ポリマーの親水性を減少させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、表面処理なしにレンズの湿潤性を改善するためにレンズ配合物に組み込まれ得る、追加的な高分子量親水性ポリマーを見出すことが有利であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、架橋ポリマーマトリックス及び少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含み、これらからなり、及びこれらから主体的になる、医療用デバイス、詳細には、眼科用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化1】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、医療用デバイス、詳細には、眼科用デバイスに関する。
【0011】
本発明は更に、ヒドロゲルから形成される生物医学デバイスを少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む溶液と接触させることを含み、接触させることからなり、接触させることから主体的になる方法であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが、20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化2】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、かつ前記生物医学デバイスに潤滑有効量の前記非反応性親水性ポリマーを組み込むのに十分な条件下で末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、方法に関する。
【0012】
本発明は更に、約10ppmと約10重量%との間の少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含有する、これからなり、及びこれから主体的になる眼科用溶液であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化3】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーは、約100〜約100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、眼科用溶液に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用するとき、「会合された」は、親水性ポリマーが、共有結合せずに少なくとも部分的に疎水性ポリマーに保持されることを意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、「非反応性」は、ポリマーが反応、保存、及び使用条件下で共有結合を形成する官能基を欠くことを意味する。例えば、フリーラジカル重合によって重合する反応混合物に親水性ポリマーが添加されるときに、親水性ポリマー鎖はフリーラジカル反応基を含有しない。したがって、親水性ポリマーは、基材との共有結合を形成することが不可能である。親水性ポリマーが、オートクレーブ処理前のコンタクトレンズなどの基材と接触するとき、ほんの僅か(1重量%未満)の親水性ポリマー鎖が残留反応基を含有する。残留基が存在する場合であっても、接触条件は、フリーラジカル反応に触媒作用を及ぼすために必要な開始剤を欠く。したがって、親水性ポリマーは、基材との共有結合を形成することが不可能である。ポリマーと会合された湿潤剤を維持する主要な作用は、親水性ポリマーの少なくとも一部の会合及び捕捉である。本明細書によれば、親水性ポリマー又はポリマーセグメントは、ポリマーマトリックス内に物理的に保持されるときに、「捕捉される」。これは、ポリマーマトリックス内の互いの絡み合い、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、静電引力、水素結合、及びこれらの作用の組み合わせによって行われる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」は、ホモ及びコポリマーの双方を包含する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックス」は、疎水性モノマー、マクロマー、及びプレポリマーなどの、疎水性成分に由来する反復単位を含むマトリックスである。疎水性成分は、水溶性ではなく、重合するときに、約90度を超える接触角を有する成分である。少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスの例としては、PMMA、シリコーン、(被覆された及び被覆されない)シリコーンヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズ、ステント、カテーテルなどが挙げられる。疎水性モノマー、マクロマー、及びプレポリマーの例は、既知であり、シリコーン基、シロキサン基、非置換アルキル基、アリール基などを含有するモノマー、マクロマー、及びプレポリマーが挙げられる。疎水性成分の非限定的な例としては、TRIS、モノメタクリロキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量800〜1000)(「mPDMS」)、モノメタクリロキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、HO−mPDMS、SiMAAなどの、シリコーン含有モノマー、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどの、アルキル(メタ)アクリレート、及びC〜C12アルキル(メタ)アクリレート、C〜C12アルキル(メタ)アクリルアミドなどの、(メタ)アクリルアミドを包含するアルキル反応成分、並びにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用するとき、「セグメント」は、組成物又は親水性などの、類似の特性を有する反復単位を有したポリマーの一部分を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、「シリコーンセグメント」は、−[SiO]−を指す。それぞれの−[SiO]−反復単位のSi原子は、アルキル又はアリール置換され得、好ましくはC1〜4アルキルで置換され、一実施形態では、ジメチルシロキサン反復単位を形成するためにメチル基で置換される。
【0019】
本明細書で使用するとき、「会合性セグメント」は、基材の表面、領域、若しくはセグメントに、又は基材の表面、領域、若しくはセグメント上に、保持又は会合されるポリマーの一部を意味する。
【0020】
「親水性会合性セグメント」は、親水性であるが、水素、イオン結合により基材と会合され得る。例えば、DMA、ポリ(DMA)、NVP、又はPVPなどの、プロトン受容体を含む基材のために、親水性会合性セグメントはプロトン供与基を含む。好適なプロトン供与基を含有するコモノマーとしては、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)メタクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、4−アクリルアミドブタン酸(ACAII)、又はビニル安息香酸が挙げられる。共有結合は、親水性会合性セグメントと基材との間に形成されない。ポリマー自体が選択された基材と会合可能であるので、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーが別個の会合性セグメント、特に末端会合性セグメントを含まないことが本発明の利点である。
【0021】
親水性モノマーは、10重量%の濃度において、25℃の水と混合されるときに、透明な単相を生じるモノマーである。
【0022】
用語「架橋/架橋した(cross-linked)」は、共有、イオン、及び水素結合を包含する主結合によって鎖の特定の炭素原子に結合する元素、基、又は化合物で構成された橋又は複数の橋を介する、1つ以上のポリマー鎖への1つのポリマー鎖の連結を指す。
【0023】
1つ以上の実施形態では、溶液は透明である。一実施形態では、水溶液は、少なくとも約50重量%の、いくつかの実施形態では少なくとも約70重量%の、他の実施形態では少なくとも約90重量%の、他の実施形態では少なくとも約99重量%の、及び他の実施形態では少なくとも約99.5重量%の水又はレンズ包装溶液である。
【0024】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(HAMA)ポリマーは、非反応性で、眼科用溶液及び組成物を包含する水溶液に可溶である。
【0025】
本明細書で使用するとき、「安定した」とは、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマー(単数若しくは複数)又はN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマー(単数若しくは複数)とポリマー基材との組み合わせのいずれかの所望の特性に有害な影響を及ぼす121℃ 30分間の単一のオートクレーブ処理サイクルを通して、化合物が変化しないことを意味する。オートクレーブ処理は、乾燥状態、又は例えばホウ酸若しくはリン酸緩衝食塩水なとであるがこれらに限定されない眼科用に適合可能な塩溶液の存在下で実行され得る。
【0026】
本明細書で使用するとき、「基材」は、シート、フィルム、チューブ、又は生物医学デバイス等の更に複雑な形態などの、物品を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、「生物医学デバイス」は、哺乳動物の組織若しくは体液内で又は哺乳動物の組織若しくは体液上で、好ましくはヒトの組織若しくは体液内で又はヒトの組織若しくは体液上で使用されるように設計された、任意の物品である。これらのデバイスの例としては、カテーテル、インプラント、ステント、縫合糸、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい種類の生物医学デバイスは、眼科用デバイス、特にコンタクトレンズ、とりわけシリコーンヒドロゲルから作製されるコンタクトレンズである。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「レンズ」は、眼内又は眼上にある眼科用デバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、美容の強化又は効果、UV遮断及び可視光若しくはまぶしさ低減、創傷治癒、薬物若しくは栄養補助剤の送達を包含する治療効果、診断評価若しくは監視、又はこれらの任意の組み合わせを提供することができる。用語レンズとしては、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼用インサート、及び光学インサートが挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用するとき、「シリコーン含有ポリマー」は、シリコーン又はシロキサン反復単位を含有する任意のポリマーである。シリコーン含有ポリマーは、シリコーンエラストマなどのホモポリマー、又はフルオロシリコーン及びシリコーンヒドロゲルなどのコポリマーであり得る。本明細書で使用するとき、シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有反復単位、及び少なくとも約10%の、いくつかの実施形態では少なくとも約20%の水分含有量を含むポリマーを指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「RAFT」は、可逆的付加開裂連鎖移動重合を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、「反応成分」は、重合の際、ポリマーの構造の一部になる重合反応混合物の成分である。したがって、反応成分は、ポリマー網目に共有結合するモノマー及びマクロマー、並びにポリマー網目に共有結合しないが、ポリマーと永久に又は半永久に会合される成分を包含する。共有結合しない成分の例としては、非重合性湿潤剤、薬剤などが挙げられる。ポリマーの構造の一部にならない希釈剤及び加工助剤は、反応成分ではない。
【0032】
本明細書で使用するとき、「置換」は、ハロゲン、エステル、アリール、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、ヒドロキシル、アミド、アミン、及びこれらの組み合わせを含有するアルキル基又はアリール基を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、「フリーラジカル源」は、好適な化合物(単数又は複数)(ペルオキシド、ペルオキシ酸エステル、又はアゾ化合物などの熱反応開始剤)の熱的に誘導される均一の切断、モノマー(例えばスチレン)、レドックス開始系、光化学的開始系、又は電子ビーム、X線、若しくはガンマ線などの高エネルギー放射線からの自然発生等の、フリーラジカルを生成する任意の好適な方法を指す。「フリーラジカル源」として作用することが知られている化学種は、当業者に開始剤と一般に呼ばれ、本発明の目的のためにそのように称される。
【0034】
本明細書で使用するとき、語句「表面処理なしに」は、本発明のデバイスの外面がデバイスの湿潤性を改善するために別途に処理されないことを意味する。本発明のために省略され得る処理としては、プラズマ処理、グラフト化、コーティングなどが挙げられる。しかしながら、抗菌コーティング及び着色剤の適用又は他の美容の強化などであるがこれらに限定されない、改善された湿潤性以外の特性を提供するコーティングは、本発明のデバイスに適用され得る。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「シリコーン含有相溶化成分」は、少なくとも1つのシリコーン及び少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する反応成分を意味する。このような成分は、国際公開第03/022321号及び同03/022322号に開示されている。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「生物活性リンカー基」は、親水性ポリマーに生物活性剤を結合させるために使用され得る40個以下の原子を有するリンカー基を意味する。リンカーとしては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(アルキレンオキシド)、C1〜C12短鎖アルキル、C1〜C12短鎖シクロアルキル、C1〜C12アリール、ペプチド、タンパク質、アミノ酸のオリゴマー、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。生物活性リンカーとしてはまた、グリシン−フェニルアラニン−ロイシン−グリシンなどのペプチド配列、並びにコハク酸無水物、グルタル酸無水物、ジメチルコハク酸無水物、メチルグルタル酸無水物、チオエステル、ジスルフィド結合、PLA−、PLGA−、PCL−、オリゴマー、並びに他のエステル及び無水物結合を包含した、不安定リンカーが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「プロトン受容体」又は「プロトン受容基」は、レンズ形成、オートクレーブ処理、又は保存条件下でプロトンを受容する能力を有する官能基を意味する。プロトン受容基としては、アミン、アミド、カルボニルなどが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「プロトン供与体」は、レンズ形成、オートクレーブ処理、又は保存条件下でプロトン受容セグメント又は基にプロトンを供与する能力を有する官能基を意味する。プロトン供与官能基としては、アルコール、酸、第一級アミドなどが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物は、少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含有し、該ポリマーから主体的になり、及び該ポリマーからなり、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが少なくとも1つのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する反復単位及び20モル%未満のアニオン性反復単位を含み、前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない。
【0040】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、以下の構造:
【化4】
を有したN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドから形成され、式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で任意に置換されてもよいC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルである。
【0041】
1〜4ヒドロキシ置換アルキル基の例としては、−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられる。
【0042】
例としては、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、及び
【化5】
が挙げられる。
【0043】
一実施形態では、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、及びこれらのコポリマーを含み、別の実施形態では、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド及びこのコポリマーを含む。
【0044】
本発明は更に、少なくとも1つのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する水溶性の非反応性親水性ポリマー(単数又は複数)を含んだ眼科用溶液及び眼科用デバイスに関する。
【0045】
本発明の眼科用デバイス及び眼科用溶液上に又は眼科用デバイス及び眼科用溶液内に組み込まれ得るN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得、コポリマーであるときは、2つ以上の非アニオン性の親水性ブロックを含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。水溶性の非反応性N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(HAMA)ポリマーが、コポリマーであるときは、末端アルキルブロック又はシリコーンブロックなどの、末端疎水性ブロックを含まない。
【0046】
本発明のHAMAポリマーは非反応性であり、これは、HAMAポリマーが、互いに架橋せず、基材ポリマーと共有結合を形成しないことを意味する。
【0047】
HAMAポリマーは、少なくとも約10モル%の、いくつかの実施形態では約20モル%〜約100モル%の、他の実施形態では約50モル%〜約100モル%の、他の実施形態では約70モル%〜約100モル%の、HAMAに由来する反復単位を含む。
【0048】
コモノマーが、HPMAポリマーを水不溶性にせず、又はアニオン性コモノマーの濃度を20モル%超、15モル%超、いくつかの実施形態では10モル%超まで上げない限り、HAMAポリマーは、親水性モノマー、疎水性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオンモノマー、刺激応答性モノマー、及びこれらの組み合わせから選択されるコモノマーを含むことができる。
【0049】
親水性モノマーの例としては、ビニルアミド、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、ビニル尿素、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
好適な親水性コモノマーの例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ビニルイミダゾール、N−N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルアセタート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルオキサゾリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、3−((3−(アクロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAPDAPS)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N,N’−ジメチル尿素など、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N,N−ジメチルアクリルアミドなど、及びこれらの混合物を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、親水性ポリマーはまた、荷電モノマーを含むことができる。荷電モノマーがアニオン性であるとき、アニオン性モノマーの濃度を20モル%未満、15モル%未満、いくつかの実施形態では約5モル%未満に保つことが好ましい場合がある。この実施形態では、ランダムコポリマーを形成することが好ましい場合がある。これは、選択されたN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーと類似の動力学的反応速度を有するアニオン性モノマーを選択するか、又はランダムコポリマーが形成されるように、速い反応速度のモノマーの供給速度を制御するなどの、任意の既知の手段によって行われ得る。これは、本発明の親水性ポリマーを含む眼科用デバイスに取り込まれるカチオン性防腐剤の量を最小化する。
【0052】
好適なアニオン性コモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、3−アクリルアミドプロピオン酸、4−アクリルアミドブタン酸、5−アクリルアミドペンタン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ナトリウム−2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二カリウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレートを包含する反応性スルホン酸塩、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。アニオン性コモノマーは、ビニルフェニルボロン酸などのボロン酸含有モノマーを実質的に含まないか、又は含まない。ボロン酸モノマーは、会合性モノマーとして有用であると開示されている。HAMAポリマーはプロトン供与により基材と会合し、したがって、ボロン酸モノマーは必要ではない。
【0053】
別の実施形態では、HAMAポリマーは、双性イオンモノマー及び刺激応答性モノマーから選択されたコモノマーを含む。
【0054】
特定の実施形態が、以下により詳細に記載される。
【0055】
HAMAポリマーは、線状であっても又は分岐状であってもよいが、架橋されない。線状ポリマーは、ポリマー鎖間の架橋又は「橋」がなく、主鎖に対するポリマー側鎖ペンダントのない単一のポリマー骨格を有する。分岐状ポリマーは、(星型ポリマー又はデンドリマーなどの)非架橋コアから、又は(ブラシ又は櫛型ポリマーなどの)中央骨格から放射した複数のポリマー鎖を含むポリマーである。
【0056】
この実施形態のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、先に記載したように、単一の親水性セグメントを有してもよく又は複数の親水性セグメントを有してもよい。これらのポリマーは、ヒドロゲル及びシリコーンヒドロゲル反応混合物などの、ポリマー反応混合物に対する、並びにコンタクトレンズと共に使用され得る、包装溶液、多用途溶液、眼科用溶液などの、眼科用デバイスのための溶液に対する添加剤として使用されてもよい。線状又は分岐状HAMAポリマーは、約100〜約100,000の、いくつかの実施形態では約500〜約10,000の、約500〜約7,500の、約500〜約2,000の重合度を有することができる。
【0057】
この実施形態のHAMAポリマーが、反応基又は基材会合性セグメントのない単一の親水性セグメントを含むときには、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの重合度は、ヒドロゲル又は眼科用デバイス内での所望の程度の滞留時間を提供するのに十分なものとなる必要がある。例えば、使用の全体にわたってヒドロゲルに持続的に捕捉されることになる湿潤剤に対しては、少なくとも約500、少なくとも約1,000、いくつかの実施形態では約1,000〜約10,000の重合度となる。レンズから溶出することになる湿潤剤に対して、又は成形型からのポリマーの取り外しを改善するか若しくはパッケージへの粘着を防止するために使用されるポリマーに対しては、約100〜約1000の重合度が望ましい。異なる重合度を有するHAMAポリマーの混合物が使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0058】
代替的に、線状又は分岐状N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、少なくとも1つの親水性の基材会合性セグメント又は反応基を含む。親水性基材会合性基は、医療用デバイスの少なくとも一部分に親和性を有する。例えば、基材は少なくとも1つのプロトン受容体を含有してもよく、プロトン受容体は、水素結合によりN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのプロトン供与基と会合する。この実施形態の基材会合性セグメントは、約5〜約200の反復単位を含む。
【0059】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドセグメントの基材会合性セグメント(存在する場合)に対する重合度(DP)の比率は、10:1〜500:1であり、他の実施形態では30:1〜200:1、50:1〜200:1の比率、他の実施形態では70:1〜200:1の比率である。
【0060】
本発明のHAMAポリマーは、多数の重合プロセスを介して形成されてもよい。一実施形態では、HAMAポリマーは、RAFT重合を使用して形成される。別の実施形態では、HAMAポリマーは、従来のフリーラジカル重合によって形成される。
【0061】
HAMAポリマーは、様々な方法によって基材に組み込まれ得る。例えば、基材ポリマーがHAMAポリマー「の周辺で」重合し、一部相互貫入網目を形成するように、HAMAポリマーが反応混合物に添加されてもよい。
【0062】
コンタクトレンズなどの基材が作製される反応混合物に添加されるときに、HAMAポリマーは、すべての反応成分の合計に基づき、約1〜約20重量パーセント、より好ましくは5〜約20パーセント、最も好ましくは約6〜約17パーセントの量で使用され得る。
【0063】
代替的に、HAMAポリマーが溶液に包含されてもよく、溶液が所望の基材と接触する。この実施形態では、HAMAポリマーは、基材の少なくとも一部に浸透するか又は吸収される。例えば、基材がヒドロゲルコンタクトレンズであるときに、HAMAポリマーはレンズが包装される溶液に組み込まれ得る。包装されたレンズは、レンズに浸透するHAMAポリマーの量を増加させるために熱処理され得る。好適な熱処理としては、約20分の時間に対して約120℃の温度を含む、従来の加熱滅菌サイクルが挙げられるがこれに限定されない。加熱滅菌が使用されない場合には、包装されたレンズは、別途に熱処理され得る。好適な温度としては、約40℃〜約100℃の温度が挙げられる。HPMAポリマーはまた、基材の加工時に導入され得る。例えば、基材がコンタクトレンズである場合、HPMAポリマーは、抽出溶媒及び水和溶液の一方又は両方に包含され得る。
【0064】
水又は任意の他の溶液などの、溶媒に添加されるときに、濃度は、所望の量のHAMAポリマーを基材に提供するように選択され得る。基材がコンタクトレンズであるときには、基材の約5重量%以下、約10ppm〜約1重量%の濃度が、使用され得る。他の基材に対する濃度は、所望の使用に基づいて算出され得る。一実施形態では、HAMAポリマーを含む溶液は、目に見える曇りがない(透明である)。
【0065】
好適な溶媒としては、基材を膨潤させる溶媒が挙げられる。一実施形態では、基材がヒドロゲルの場合には、溶液は、水などの水溶液、コンタクトレンズ包装溶液、コンタクトクリーニング及びケア溶液、又はコンタクトレンズの加工で使用される任意の水溶液又は非水溶液であり得る。他の基材のための溶媒は、当業者に明らかである。
【0066】
HAMAポリマーを所望の基材と会合させる工程が前処理、共有結合反応、又はタイ層のない単一の工程で実行され得ることが本発明の利点である。しかしながら、いくつかの実施形態では、積層コーティングを形成するために、基材/HAMAポリマー構成を追加的なポリマー又はナノゲルと接触させることが望ましい場合がある。追加的なポリマーは、線状、分岐状であっても、又は架橋されてもよく、ポリマーの端部に又はポリマーの全体に位置づけられた会合性基を有してもよい。それぞれの追加的なポリマーは、前述の層のポリマーに含有された基と会合又は反応することが可能な基を含む。したがって、(プロトン受容基を含む)少なくとも1つのHAMAポリマーで最初に処理された基材のために、付加ポリマーは、プロトン供与基を含むか、プロトン供与基からなるか、又はプロトン供与基から主体的になる。いくつかの交互層が適用されてもよい。プロトン受容基を含むポリマーの例としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−オキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖、これらの混合物並びに(ブロック若しくはランダム、分岐状、多鎖、櫛形、又は星形を包含する)コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)及びポリ−N−N−ジメチルアクリルアミドのポリマー及びコポリマーが使用されてもよい。
【0067】
第2の溶液は、基材をHAMAポリマーと接触させるための前述した溶液のいずれかであってもよい。少なくとも1つの第2のポリマーは、約50,000ppm以下、約10〜5000ppm、又は約10〜約2000ppmの濃度で溶液に存在することができる。両方のポリマーが非イオン性であるので、追加的な処理工程は、約6〜8の、いくつかの実施形態では約7のpHで行われ得る。
【0068】
基材
本明細書で開示されるHAMAポリマーは、ポリシロキサン、シリコーンヒドロゲル、従来のヒドロゲル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、並びにこれらの混合物及びコポリマーなどから形成されるポリマー物品などの、様々な疎水性、部分的に疎水性、親水性、又は両親媒性基材と非共有結合で会合され得る。HAMAポリマー上に、HAMAポリマー内に、若しくはHAMAポリマー全体にわたって含有されるか、又は任意の親水性会合性セグメント内に含有される官能基と、所与の基材上に若しくは所与の基材内に見出される官能基との間に十分な親和性がある場合に、会合が生じる。本発明のHAMAポリマーを会合するように処理され得る基材の例としては、埋め込み可能デバイス、縫合糸、グラフト基材、涙点プラグ、カテーテル、ステント、創傷包帯、外科用器具、眼科用デバイス、上記のいずれかのためのコーティングなどのために使用される、ポリマー及び金属が挙げられる。
【0069】
少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスの追加的な例としては、高度に架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられ、UHMWPEは、関節置換体などの埋め込み可能デバイスのために使用され、本質的に0のメルトインデックス(ASTM D−1238)、及び8を超える比重低減、いくつかの実施形態では約25〜30の比重低減によって定められるような、少なくとも約400,000の分子量、いくつかの実施形態では約1,000,000〜約10,000,000の分子量を典型的に有する。
【0070】
縫合糸及び創傷包帯を作製する際の糸としての使用に好適な吸収性ポリマーとしては、ラクチド(乳酸d−、l−、及びメソラクチドを包含する)、グリコリド(グリコール酸を包含する)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バテロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを包含する)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマーブレンドのホモポリマー及びコポリマーを非限定的に包含する脂肪族ポリエステルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
非吸収性ポリマー材料は、ポリアミド(ポリヘキサメチレンアジポアミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバクアミド(ナイロン610)、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、及びポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン61)、これらのコポリマー及びブレンド)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、これらのコポリマー及びブレンド)、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン)ポリオレフィン(例えば、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレン及びこれらのブレンド、並びに(参照により本明細書に組み込まれる、1985年12月10日出願の、Ethicon,Inc.に譲渡された米国特許第4,557,264号に記載されるような)ヘテロタクチックポリプロピレン及び(1985年12月10日出願の、Ethicon,Inc.に譲渡された米国特許第4,557,264号に記載されるような)ポリエチレンとブレンドされたアイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンから主に構成されるブレンドを包含するポリプロピレン)、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない。
【0072】
涙点プラグの本体は、シリコーン、シリコーンブレンド、例えばpHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びグリセロールの親水性モノマーなどの、シリコーンコポリマーを包含するがこれらに限定されない、任意の好適な生体適合性ポリマー製であり得る。他の好適な生体適合性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、及びテフロンなどの、フッ素化ポリマー;ポリプロピレン;ポリエチレン;ナイロン;並びにエチレンビニルアルコール(「EVA」)が挙げられる。
【0073】
超音波外科用器具のポリマー部品は、ポリイミド、フルオラエチレンプロパン(FEPテフロン)、PTFEテフロン、シリコーンゴム、EPDMゴムから作製され得、これらのいずれかが、テフロン又はグラファイトなどの材料で充填されても、充填されなくてもよい。例は、米国特許出願公開第20050192610号及び米国特許第6458142号に開示される。これらの実施形態のために、ブロックコポリマーは、少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスを膨潤させる溶媒と混合され、次いでポリマーマトリックスと接触させられ得る。
【0074】
眼科用デバイス
一実施形態では、HAMAポリマーは、レンズ又は涙点プラグなどの、シリコーン眼科用デバイス、シリコーンヒドロゲルレンズなどのシリコーンヒドロゲル物品を包含する予め形成された物品と会合する。HAMAポリマーが眼科用デバイスにどのように組み込まれるか又は会合するかに応じて、本発明のHAMAポリマー及びコポリマーのいずれかが、ポリマー成分、湿潤剤、剥離剤、及びコーティングポリマーとして眼科用デバイスと共に使用され得る。例えば、一実施形態では、HAMAポリマーのプロトン供与基が、眼科用デバイスが形成されるポリマーのプロトン受容体と会合すると考えられる。この実施形態では、HAMAポリマーは、基材を同様に膨潤させる溶媒に溶解される。ポリマー基材は、HAMAポリマーを含む溶液と接触する。基材が、コンタクトレンズなどのシリコーンヒドロゲル物品であるとき、好適な溶媒としては、包装溶液、保存溶液、及びクリーニング溶液が挙げられる。一例としてこの実施形態を使用して、シリコーンヒドロゲルレンズが、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーを含む包装溶液内に配置される。N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、溶液内のすべての成分に基づき、約0.001%〜約10%の、いくつかの実施形態では約0.005%〜約2%の、他の実施形態では約0.01重量%〜約0.5重量%の量で溶液内に存在する。
【0075】
包装溶液は、コンタクトレンズの保存のために使用される水をベースにした任意の溶液であり得る。典型的な溶液としては、塩溶液、他の緩衝溶液、及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶液は、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、又は同酸の対応するカリウム塩を包含するがこれらに限定されない、塩を含有する塩溶液である。これらの成分は、酸及びその共役塩基を包含する緩衝溶液を形成するように一般に組み合わされ、結果として、酸や塩基の添加によりpHの比較的小さな変化のみが引き起こされる。これらの緩衝溶液はまた、コンタクトレンズをクリーニングするか又は処理するために使用され得る。本発明の溶液は、コンタクトレンズのクリーニング、処理、又はケアのために使用されるときに、粘度調整剤、抗菌剤、湿潤剤、粘着防止剤、防腐剤、高分子電解質、安定剤、キレート剤、酸化防止剤、及びこれらの組み合わせなどを包含するこのような溶液に有用な追加的な成分を包含することができる。追加的な成分の例としては、2−(N−モルホリン)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロ三エタノール、n−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、溶液は、ホウ酸緩衝又はリン酸緩衝塩溶液である。
【0076】
HAMAポリマーはまた、(共溶媒としての水と共に又は水なしで)有機溶媒を使用して、レンズと会合され得る。一実施形態では、有機溶媒は、例えばコンタクトレンズ医療用デバイスなどの、医療用デバイスを膨潤させるために、且つHAMAポリマーが吸収され得るようにHAMAポリマーを溶解するために、使用される。好適な溶媒は、医療用デバイスを膨潤させるために、HAMAポリマーを溶解するために、又は両者のために選択され得る。別の実施形態では、溶媒はまた、製造を簡素化するために生体適合性であり得る。基材は、HAMAポリマーの潤滑及び表面湿潤有効量を組み込むのに十分な条件下で、HAMAポリマーと接触する。本明細書で使用するとき、潤滑有効量は、(例えば指の間でデバイスをこすることによって)手で又はデバイスが使用されるときに感知され得るレベルの潤滑性を付与するために必要な量である。加えて、本明細書で使用するとき、表面湿潤有効量は、既知の接触角測定技術(すなわち液滴法、キャプティブバブル法、又は動的接触角測定法)によって決定されるようなレベルの増大した湿潤性をレンズに付与するために必要な量である。デバイスがソフトコンタクトレンズである、一実施形態では、僅か50ppmの量のHAMAポリマーが、改善されたレンズの「感触」、及び液滴法によって測定されるような、減少された表面接触角を提供することが見出された。加工包装、保存、又はクリーニング溶液内の約50ppmを超える量の、より好ましくは約100ppmを超える量のHAMAポリマーが、より顕著な感触の改善を付与する。したがって、この実施形態では、HAMAポリマーは、約50,000ppm以下、いくつかの実施形態では約10ppm〜5000ppm、いくつかの実施形態では約10ppm〜約2000ppmの濃度で溶液中に含有され得る。包装されたレンズは、レンズ内に浸透し互いに絡み合うHAMAポリマーの量を増加させるために熱処理され得る。好適な熱処理としては、約20分の時間に対して約120℃の温度を含む、従来の加熱滅菌サイクルが挙げられるが、これに限定されず、オートクレーブ内で実行されてもよい。加熱滅菌が使用されない場合には、包装されたレンズは、別途に熱処理され得る。別途の熱処理に好適な温度としては、少なくとも約40℃、好ましくは約50℃と溶液の沸点との間が挙げられる。好適な熱処理時間としては、少なくとも約10分が挙げられる。温度が高いほど、より少ない処理時間で済むことが認識されるであろう。
【0077】
プロセスは、HAMAポリマーを含むレンズをプロトン受容基を含む第2のポリマーで処理する追加的な工程を更に含んでもよい。HAMA及と第2のポリマーのいくつかの交互層が適用されてもよい。プロトン受容基を含むポリマーの例としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−オキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖、これらの混合物並びに(ブロック若しくはランダム、分岐状、多鎖、櫛形、又は星形を包含する)コポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)及びポリ−N−N−ジメチルアクリルアミドのポリマー及びコポリマーが使用されてもよい。
【0078】
第2の溶液は、基材をHAMAポリマーと接触させるための前述した溶液のいずれかであってもよい。少なくとも1つの第2のポリマーは、約50,000ppm以下、約10〜5000ppm、又は約10〜約2000ppmの濃度で溶液に存在することができる。両方のポリマーが非イオン性であるので、追加的な処理工程は、約6〜8、いくつかの実施形態では約7のpHで行われ得る。
【0079】
セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコンA及びロトラフィルコンB、デレフィルコン、バラフィルコン、コムフィルコン、オスモフィルコン(osmofilcon)、ステンフィルコン(stenfilcon)、エンフィルコン、フィルコンII、フィルコンIVなどを包含するがこれらに限定されない多くのシリコーンヒドロゲル材料が既知であり、使用され得る。ほとんどあらゆるシリコーンヒドロゲルポリマーが、米国特許第6,637,929号、国際公開第03/022321号、同第03/022322号、米国特許第5,260,000号、同第5,034,461号、同第6,867,245号、国際公開第2008/061992号、米国特許第5,760,100号、同第7,553,880号、米国特許出願公開20100048847号、同2006/0063852号に開示されるものを包含するがこれらに限定されない、本明細書に提供されるHAMAポリマーを使用して処理され得る。
【0080】
類似のプロセスが、シリコーンヒドロゲル以外のポリマーから作製される基材のために使用され得る。主要な変化は溶媒の選択にあり、溶媒は、ポリマーを可溶化し基材を膨潤させなければならない。溶媒の混合物が使用されてもよく、界面活性剤などの追加的な成分が、必要に応じて含まれてもよい。例えば、物品がシリコーンコンタクトレンズ又はシリコーン涙点プラグなどの、シリコーン物品である場合、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、脂肪族アルコール、水、及びこれらの混合物などの溶媒に溶解され得る。特定の例としては、前述した濃度のイソプロパノール、n−プロパノールなどが挙げられる。
【0081】
別の実施形態では、HAMAポリマーは、ポリマー物品が作製される反応混合物中に含まれ得る。このような実施形態では、HAMAポリマーの有効量としては、約1%〜20%の量、いくつかの実施形態では約2%〜15%の量が挙げられる。例えば、物品がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである場合には、HAMAポリマーは、1つ以上のシリコーン含有成分及び1つ以上の親水性成分を有するコンタクトレンズ反応混合物中に約20重量%以下の量で含まれ得る。本明細書で開示されるポリマーを作製するために使用されるシリコーン含有成分及び親水性成分は、シリコーンヒドロゲルを作製するために先行技術で使用される既知の成分のいずれかであり得る。これらの用語、具体的には、シリコーン含有成分及び親水性成分は、シリコーン含有成分が親水性基を有することができ、親水性成分がシリコーン基を有することができるため、シリコーン含有成分が幾分親水性であり得、親水性成分がいくらかのシリコーンを含むことができるという点で、互いに排他的ではない。
【0082】
有用なシリコーン含有成分は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、及びスチリル官能基などの、重合性官能基を含む。有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同5,760,100号、同4,139,513号、同5,998,498号、米国特許出願公開2006/0063852号、及び米国特許第5,070,215号、並びに欧州特許第080539号に見出され得る。本明細書に引用される特許のすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの参照文献は、オレフィン系シリコーン含有成分の多くの例を開示する。
【0083】
好適なシリコーン含有成分としては、以下の式:
【化6】
の化合物が挙げられ、式中、Rは、独立して、一価反応基、一価アルキル基、又は一価アリール基から選択され、前述のいずれかが、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能性を更に含むことができ;及びアルキル、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能性を更に含むことができる1〜100個のSi−Oの反復単位を含んだ一価シロキサン鎖であり、
式中、b=0〜500であり、bが0以外であるときに、bは、表示値と同等のモードを有する分布であると理解され、
少なくとも1つのRが一価反応基を含み、いくつかの実施形態では1〜3個のRが一価反応基を含む。
【0084】
本明細書で使用するとき、「一価反応基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、置換又は非置換のC1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、C2〜12アルケニル、C2〜12アルケニルフェニル、C2〜12アルケニルナフチル、C2〜6アルケニルフェニルC1〜6アルキル、O−ビニルカルバメート、及びO−ビニルカーボネートが挙げられる。前記C1〜6アルキル上の好適な置換基としては、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。カチオン反応基の非限定的な例としては、ビニルエーテル又はエポキシド基及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、フリーラジカル反応基は、(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。
【0085】
好適な一価アルキル基及びアリール基としては、置換及び非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシプロピル、プロポキシプロピル、ポリエチレンオキシプロピル、これらの組み合わせなどの、非置換の一価C〜C16アルキル基、C〜C14アリール基が挙げられる。
【0086】
一実施形態では、1個のRが、C1〜6アルキル(メタ)アクリレート及びC1〜6アルキル(メタ)アクリルアミドから選択され、これらは、非置換であっても、又はヒドロキシル、アルキレンエーテル若しくはこれらの組み合わせで置換されてもよい。別の実施形態では、1個のRが、プロピル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリルアミドから選択され、前記プロピルは、任意に、ヒドロキシル、アルキレンエーテル又はこれらの組み合わせで置換されてもよい。
【0087】
一実施形態では、bはゼロであり、1個のRが一価反応基であり、少なくとも3個のRが、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から、別の実施形態では1〜4個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。この実施形態のシリコーン成分の非限定的な例としては、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(「SiGMA」)、
2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(「TRIS」)、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、及び
3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0088】
別の実施形態では、bは、2〜20、3〜15、又はいくつかの実施形態では3〜10であり、少なくとも1つの末端Rが、一価反応基を含み、残りのRが、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から、別の実施形態では1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。更に別の実施形態では、bは3〜15であり、1つの末端Rが、置換又は非置換C1〜6アルキル(メタ)アクリレート、置換又は非置換C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミドから選択された一価反応基を含み、他の末端Rが、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基を含み、残りのRが、1〜3個の炭素原子を有する一価アルキル基を含む。この実施形態のシリコーン成分の非限定的な例としては、(モノ−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)−プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(分子量400〜1000)(「OH−mPDMS」)、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量800〜1000)、(「mPDMS」)、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、及び以下の式(s4)〜(s9):
【化7】
のメタクリルアミドシリコーンが挙げられる。
【0089】
別の実施形態では、bは、5〜400、又は10〜300であり、両方の末端Rが、一価反応基を含み、残りのRが、炭素原子間のエーテル結合を有してもよくまたハロゲンを更に含んでもよい1〜18個の炭素原子を有する一価アルキル基から独立して選択される。
【0090】
別の実施形態では、1〜4個のRが、以下の式:
【化8】
のビニルカーボネート又はカルバメートを含み、式中、YはO−、S−又はNH−を意味し、
Rは、水素又はメチルを意味し、qは、0又は1である。
【0091】
シリコーン含有ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマーとしては、具体的には、1,3−ビス[4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネート、及び
【化9】
が挙げられ、約200未満の弾性率を有する生物医学デバイスが所望される場合、単一のRが一価反応基を含むものとし、残りのR基のうちの2個以下が、一価シロキサン基を含む。
【0092】
シリコーンヒドロゲルレンズが所望される一実施形態では、レンズはポリマーが作製される反応性モノマー成分の総重量に基づき、少なくとも約20重量%、いくつかの実施形態では約20重量%〜70重量%のシリコーン含有成分を含む反応混合物から作製される。
【0093】
別の種類のシリコーン含有成分としては、以下の式:
G)
E(A) 又は;
E(G)
式IV〜VI
のポリウレタンマクロマーが挙げられ、式中、
Dは、炭素原子6〜30個を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを意味し、
Gは、炭素原子1〜40個を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを意味し、これは、主鎖中にエーテル、チオ又はアミン結合を含有してもよい。
はウレタン又はウレイド結合を意味し、
aは、少なくとも1であり、
Aは、以下の式:
【化10】
の二価重合ラジカルを意味する。R17は独立して、炭素原子間にエーテル結合を含有してもよい1〜10個の炭素原子を有するアルキル又はフルオロ置換アルキル基を意味し、vは少なくとも1であり、nは400〜10,000の部分重量を提供し、E及びEのそれぞれは独立して、以下の式:
【化11】
に表される重合性不飽和有機ラジカルを意味し、式中、R12は水素又はメチルであり:R13は水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカル、又はa−CO−Y−R11ラジカルで、Yは−O−、−S−、又は−NH−であり:R11はC1〜6一価アルキル、いくつかの実施形態では非置換C1〜3アルキルであり;R14は1〜12個の炭素原子を有する二価ラジカルであり;Xは−CO−又は−OCO−を意味し;Zは−O−又は−NH−を意味し;Arは6〜30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味し;wは0〜6であり、xは0又は1であり;yは0又は1であり;そしてzは0又は1である。
【0094】
一実施形態では、シリコーン含有成分は、以下の式で表されるポリウレタンマクロマーを含み、
【化12】
式中、R16は、イソホロンジイソシアネートのジラジカルなどの、イソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジラジカルであり、aは1〜5であり、dは3〜4であり、cは10〜200又は10〜100である。別の好適なシリコーン含有マクロマーは、フルオロエーテル、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネート、及びイソシアネートエチルメタクリレートの反応によって形成される式X(f+gは10〜30の範囲内の数であり、hは、20〜30、22〜26、又は25の範囲内の数である)の化合物である。
【化13】
【0095】
使用に好適な他のシリコーン含有成分としては、ポリシロキサン、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアネート、ポリフッ化炭化水素、ポリフッ化エーテル、及びポリサッカライド基を含有するマクロマーなどの、国際公開第96/31792号に記載されているものが挙げられる。別の種類の好適なシリコーン含有成分としては、米国特許第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,244,981号、同第5,371,147号、及び同第6,367,929号に開示されるような、GTPを経て作製されるシリコーン含有マクロマーが挙げられる。米国特許第5,321,108号、同第5,387,662号、及び同第5,539,016号は、末端ジフルオロ置換炭素原子に結合した水素原子を有する極性フッ化グラフト又は側基を有するポリシロキサンについて記載する。米国特許出願公開第2002/0016383号は、エーテル及びシロキサニル結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート、並びにポリエーテル及びポリシロキサニル基を含有する架橋可能なモノマーを記載する。上記のポリシロキサンのいずれかもまた、シリコーン含有成分として使用され得る。
【0096】
約827.4kPa(120psi)未満の弾性率が所望される本発明の一実施形態では、レンズ配合物で使用されるシリコーン含有成分の質量分率の大部分は、単一の重合性官能基を含むべきである(「一官能性シリコーン含有成分」)。この実施形態では、酸素透過率及び弾性率の所望のバランスを保証するために、2つ以上の重合性官能基を有する(「多官能性成分」)すべての成分が、10mmol/100g反応成分以下を占めることが好ましく、好ましくは7mmol/100g以下の反応成分を占める。
【0097】
別の実施形態では、反応混合物は、トリメチルシロキシ基を含むシリコーン含有成分を実質的に含まない。
【0098】
シリコーン含有成分は、すべての反応成分に基づき、最大約85重量%の量で存在してもよく、いくつかの実施形態では約10〜約80重量%、別の実施形態では約20〜約70重量%の量で存在してもよい。
【0099】
親水性成分としては、残りの反応成分と混合する場合、得られたレンズに対して、少なくとも約20%、及びいくつかの実施形態では少なくとも約25%の水分含有量を提供することができるものが挙げられる。好適な親水性成分は、親水性モノマー、プレポリマー、及びポリマーを含み、すべての反応成分の重量に基づき、約10〜約60重量%、いくつかの実施形態では約15〜約50重量%、他の実施形態では約20〜約40重量%の量で存在してよい。ポリマーを作製するために使用され得る親水性モノマーは、少なくとも1つの重合可能な二重結合及び少なくとも1つの親水性官能基を有する。重合可能な二重結合の例としては、アクリル、メタクリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、フマル酸、マレイン酸、スチリル、イソプロペニルフェニル、O−ビニルカーボネート、O−ビニルカルバメート、アリル、O−ビニルアセチル及びN−ビニルラクタム及びN−ビニルアミドの二重結合が挙げられる。このような親水性モノマーは、それ自体、架橋剤として使用され得る。「アクリル型」又は「アクリル含有」モノマーは、アクリル基を含有するモノマーである。
【化14】
式中、RはH又はCHであり、RはH、C1〜3非置換アルキル又はカルボニルであり、XはO又はNであり、これらはまた、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、
【化15】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの混合物などで、容易に重合することでも知られている。
【0100】
ヒドロゲルに組み込まれ得る親水性ビニル含有モノマーとしては、N−ビニルラクタム(例えば、N−ビニルピロリドン(NVP))、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン);N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル、ビニルイミダゾールなどの、モノマーが挙げられ、一実施形態ではNVPが好ましい。
【0101】
使用され得る追加的な親水性モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルアセタート、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2エチルオキサゾリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、3−((3−(アクロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAPDAPS)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N,N’−ジメチル尿素など、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、好適な親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、モノ−グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビスヒドロキシエチルアクリルアミド、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなど、並びにこれらの混合物を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、親水性モノマーはまた、メタクリル酸、アクリル酸、3−アクリルアミドプロピオン酸(ACA1)、4−アクリルアミドブタン酸、5−アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ナトリウム−2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二カリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレートを含む反応性スルホン酸塩、及びこれらの組み合わせなどを包含するがこれらに限定されない、荷電モノマーを含むことができる。
【0103】
利用され得る他の親水性モノマーとしては、重合可能な二重結合を含有する官能基で置換された末端ヒドロキシル基1個以上を有するポリオキシエチレンポリオールが挙げられる。例としては、重合可能な二重結合を含有する官能基で置換された末端ヒドロキシル基1個以上を有するポリエチレングリコールが挙げられる。例としては、イソシアナトエチルメタクリレート(「IEM」)、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイル、塩化ビニルベンゾイル等のエンドキャッピング基1モル当量以上と反応した、カルバメート又はエステル基等の結合部分によってポリエチレンポリオールに結合した1個以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを生成する、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0104】
更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示される親水性ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマー、及び米国特許第4,910,277号に開示される親水性オキサゾロンモノマーである。他の好適な親水性モノマーは、当業者に明らかである。
【0105】
一実施形態では、本明細書で開示されるポリマーに組み込まれ得る親水性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニルメタクリルアミド、HEMA、及びポリエチレングリコールモノメタアクリレートなどの親水性モノマーが挙げられる。
【0106】
別の実施形態では、親水性モノマーとしては、DMA、NVP、HEMA、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドポリマーが、コンタクトレンズなどの眼科用デバイスと接触する眼科用溶液に包含される実施形態のために、眼科用デバイスを形成するために使用される反応混合物はまた、親水性成分として1つ以上のポリマー湿潤剤を含むことができる。本明細書で使用するとき、反応混合物で使用されるこのようなポリマー湿潤剤は、約5,000ダルトン以上の重量平均分子量を有する物質を指し、シリコーンヒドロゲル配合物に組み込まれた際に、前記物質は、硬化されたシリコーンヒドロゲルの湿潤性を増大させる。一実施形態では、これらのポリマー湿潤剤の重量平均分子量は、約30,000ダルトンを超え、別の実施形態では約150,000〜約2,000,000ダルトンであり、更に別の実施形態では約300,000〜約1,800,000ダルトンであり、更に別の実施形態では約500,000〜約1,500,000ダルトンである。これらの湿潤剤は、本発明のHAMAポリマーに加えて用いられてもよい。
【0108】
代替的に、ポリマー湿潤剤の分子量はまた、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,N−Vinyl Amide Polymers,Second edition,Vol 17,pgs.198〜257,John Wiley & Sons Inc.に記載されているように、運動粘度測定に基づいてK値で表示され得る。この様式で表示されるとき、親水性モノマーは、約46を超える、一実施形態では約46〜約150のK値を有する。反応混合物内のポリマー湿潤剤の好適な量としては、すべての反応成分の合計に基づき、約1〜約20重量パーセント、いくつかの実施形態では約5〜約20重量パーセント、他の実施形態では約6〜約17重量パーセントが挙げられる。
【0109】
好適な追加的なポリマー湿潤剤の例としては、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタムが、及びHEMAなどの低分子量のヒドロキシル官能性ポリマーとDMAを共重合させた後に、得られたコポリマーのヒドロキシル基を、イソシアナトエチルメタクリレート若しくはメタクリロイルクロライドなどの、ラジカル重合性基を含有する材料と反応させることによって官能化されたDMAなどの、官能化ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。メタクリル酸グリシジルを有するDMA又はN−ビニルピロリドンから作製されるポリマー湿潤剤もまた使用され得る。メタクリル酸グリシジル環は、反応混合物の成分の適合性を増加させるために混合系で他の親水性プレポリマーと共に使用され得るジオールを得るために開環され得る。一実施形態では、ポリマー湿潤剤は、その骨格中に、環状アミド又は環状イミドなどであるがこれらに限定されない少なくとも1つの環状部分を含有する。ポリマー湿潤剤としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類、これらの混合物及び(ブロック若しくはランダム、分岐状、多鎖、櫛形、又は星形を包含する)コポリマーが挙げられるが、これらに限定されず、一実施形態では、ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)及びポリ−N−N−ジメチルアクリルアミドが特に好ましい。PVP又はDMAのグラフトコポリマーなどの、コポリマーもまた使用され得る。
【0110】
反応混合物で使用されるポリマー湿潤剤はまた、改善された湿潤性、特に医療用デバイスに対して改善されたインビボ湿潤性を提供する。何らかの理論に束縛されることなく、ポリマー湿潤剤は、水性の環境内で水に対して水素結合する水素結合受容体であり、したがって効果的により親水性となると考えられる。水の不在は、反応混合物でのポリマー湿潤剤の組み込みを容易にする。特定の名前を持つポリマー湿潤剤は別として、ポリマーが配合物に添加されるときにポリマーが(a)反応混合物から実質的に相分離せず(b)得られた硬化したポリマー網目に湿潤性を付与する限り、あらゆるポリマーが有用であることが予測される。いくつかの実施形態では、ポリマー湿潤剤が反応温度で希釈剤に可溶であることが好ましい。
【0111】
相溶化剤もまた、使用され得る。いくつかの実施形態では、相溶化成分は、重合されるか及び/又は最終物品に形成されるときに選択された親水性成分と混合可能な、任意の官能化されたシリコーン含有モノマー、マクロマー、又はプレポリマーであり得る。国際公開第03/022321号に開示される適合性試験を使用して、好適な相溶化剤を選択することができる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基も含むシリコーンモノマー、プレポリマー、又はマクロマーが、反応混合物中に包含される。例としては、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、モノ−(3−メタクリリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量1100)、ヒドロキシル官能化シリコーン含有GTPマクロマー、ポリジメチルシロキサンを含むヒドロキシル官能化マクロマー、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。別の実施形態では、ポリマー湿潤が相溶化成分として使用され得る。
【0112】
ヒドロキシル含有成分はまた、コンタクトレンズなどの基材の形成時に架橋剤として作用してもよい。
【0113】
コンタクトレンズなどの基材の作製に対して、架橋モノマーとも称される1個以上の架橋剤を、エチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(好ましくはポリエチレングリコールは、例えば約5000以下の分子量を有する)、並びに2個以上の末端メタクリレート部分を含有する前述したエンドキャップ化ポリオキシエチレンポリオール等の他のポリ(メタ)アクリレートエステルなどの、反応混合物に添加することが、一般に必要である。架橋剤は、通常の量、例えば、100グラムの反応混合物当たり約0.000415〜約0.0156モルで反応混合物中に使用される。代替的に、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有モノマーが架橋剤として作用する場合には、反応混合物への架橋剤の追加は任意である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応混合物への追加的な架橋剤の添加を必要としない親水性モノマーの例としては、2つ以上の末端メタクリレート部分を含有する前述したポリオキシエチレンポリオールが挙げられる。
【0114】
架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコーン含有モノマーの例としては、α,ω−ビスメタクリルオキシプロピル・ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0115】
反応混合物は、紫外線吸収剤、フォトクロミック化合物、薬学的及び栄養補助化合物、抗菌化合物、反応性着色剤、色素、共重合性及び非重合性染料、離型剤、並びにこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない添加成分を含有することができる。
【0116】
一般に、反応成分は、希釈剤中で混合されて、反応混合物を形成する。好適な希釈剤は、当該技術分野で既知である。シリコーンヒドロゲルに対して、好適な希釈剤が国際公開第03/022321号、米国特許第6,020,445号に開示され、これらの開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
シリコーンヒドロゲル反応混合物のために好適な希釈剤の種類としては、2〜20個の炭素を有するアルコール、一級アミン由来の10〜20個の炭素原子を有するアミド、及び8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。いくつかの実施態様では、一級及び三級アルコールが好ましい。好ましい種類としては、5〜20個の炭素を有するアルコール及び10〜20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。
【0118】
使用され得る具体的な希釈剤としては、1−エトキシ−2−プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、2−エチル−1−ブタノール、(3−アセトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1−tert−ブトキシ−2−プロパノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、tert−ブトキシエタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0119】
好ましい希釈剤としては、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、エタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0120】
更に好ましい希釈剤としては、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、1−ドデカノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0121】
非シリコーン含有反応混合物のための好適な希釈剤としては、グリセリン、エチレングリコール、エタノール、メタノール、エチルアセタート、塩化メチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、二価アルコールのホウ酸エステルを包含するがこれに限定されない米国特許第4,018,853号、同第4,680,336号、及び同第5,039,459号に開示されるような低分子量PVP、並びにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0122】
希釈剤の混合物が使用されてもよい。希釈剤は反応混合物中のすべての成分の合計の約55重量%までの量で使用され得る。更に好ましくは、反応混合物中のすべての成分の合計の約45重量%未満の量、更に好ましくは、約15〜約40重量%の量で使用される。
【0123】
好ましくは、重合開始剤が、コンタクトレンズなどの基材を形成するために使用される反応混合物中に包含される。重合開始剤としては、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させる化合物、及び、芳香族アルファ−ヒドロキシケトンや、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、酸化アシルフォスフィン、酸化ビスアシルフォスフィン、三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの、光開始剤系が挙げられる。光開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。市販の可視光開始剤系としては、イルガキュア819、イルガキュア1700、イルガキュア1800、イルガキュア819、イルガキュア1850(すべてCiba Specialty Chemicals社より)及びLucirin TPO開始剤(BASF社より入手可能)が挙げられる。市販の紫外光開始剤としては、Darocur 1173及びDarocur 2959(Ciba Specialty Chemicals社)が挙げられる。使用され得るこれらの及び他の光開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello & K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。開始剤は、反応混合物の光重合を開始させるのに有効な量、例えば反応性モノマー100重量部に対して、約0.1〜約2重量部で反応混合物中で使用される。反応混合物の重合は、使用される重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光、又は他の手段を適宜選択して、開始され得る。代替的に、例えば電子線を使用して、光開始剤なしで反応を開始させることができる。しかしながら、光開始剤を使用するとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))などの酸化ビスアシルホスフィン、又は1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせであり、重合の開始の好ましい方法は可視光である。最も好ましいのは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819(登録商標))である。
【0124】
反応混合物中に存在するシリコーン含有モノマーの好ましい範囲は、反応混合物中の反応成分の、約5〜95重量パーセント、より好ましくは約30〜85重量パーセント、最も好ましくは約45〜75重量パーセントである。存在する親水性モノマーの好ましい範囲は、反応混合物中の反応成分の約5〜80重量パーセント、より好ましくは約10〜60重量パーセント、最も好ましくは約20〜50重量パーセントである。存在する希釈剤の好ましい範囲は、全反応混合物(反応及び非反応成分を包含する)の約2〜70重量パーセント、より好ましくは約5〜50重量パーセント、最も好ましくは約15〜40重量パーセントである。
【0125】
反応混合物は、振盪又は攪拌などの当業者に既知の方法のいずれかによって形成され、既知の方法によりポリマー物品又はデバイスを形成するために使用され得る。
【0126】
例えば、反応成分及び希釈剤(単数又は複数)を重合開始剤と混合し、生成物を形成するように適切な条件により硬化させることによって、生物医学デバイスを調製することができ、この生成物を形成した後、旋削、切削加工などによって適切な形状に形成することができる。代替的に、反応混合物を成形型に配置した後に硬化させて、適切な物品にすることができる。
【0127】
コンタクトレンズの生成における反応混合物の加工には、スピンキャスティング及び静的鋳造法(static casting)を包含する様々なプロセスが既知である。スピンキャスティング法は米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的鋳造法は米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示される。コンタクトレンズを生成する好ましい方法は、シリコーンハイドロゲルの成形によるものであり、成形は、経済的で、水和したレンズの最終形状を正確に制御することを可能にする。この方法では、最終の所望のシリコーンヒドロゲル、すなわち水膨潤ポリマー、の形状を有する成形型に反応混合物を入れ、モノマーが重合する条件に当該反応混合物を供することによって、ポリマー/希釈剤混合物を所望の最終製品の形状にする。次いで、このポリマー/希釈剤混合物を、溶媒で処理して、希釈剤を除去し、最終的には、希釈剤を水で置き換え、原型の成形されたポリマー/希釈剤物品の寸法及び形状と全く同様の最終寸法及び形状を有したシリコーンヒドロゲルを生成する。この方法は、コンタクトレンズを形成するために使用され得、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,495,313号、同第4,680,336号、同第4,889,664号、及び同第5,039,459号に更に記載される。
【0128】
生物医学デバイス、特に眼科用レンズは、これらを特に有用にする特性のバランスを有する。このような特性としては、透明性、含水率、酸素透過度、及び接触角が挙げられる。本発明の実施形態による少なくとも1つのブロックコポリマーの組み込みは、非常に望ましい溶液との湿潤性/接触角を有し、並びに低減したリポカリン、脂質、及びムチンの取り込みレベルによって証明されるように、改善した生体測定性能を有する物品を提供する。ブロックコポリマーを組み込んだシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約60°未満、いくつかの実施形態では約40°未満の接触角を、及び40%、いくつかの実施形態では50%以上の接触角の減少を示す。脂質取り込みは50%以上低下し得、約12μg、10μg、又は5μg以下を有したシリコーンヒドロゲルレンズが生成され得る。一実施形態では、生物医学デバイスは、含水率が約17%を超える、好ましくは、約20%を超える、更に好ましくは、約25%を超えるコンタクトレンズである。
【0129】
シリコーン含有レンズの好適な酸素透過度は、好ましくは約40バーラーを超え、より好ましくは約60バーラーを超える。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の物品は上記の酸素透過度、含水率、及び接触角の組み合わせを有する。上記の範囲のすべての組み合わせが、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0131】
以下の非限定的な例は、本発明を更に説明する。
【0132】
試験方法
レンズの湿潤性は、液滴技術を使用して決定され、室温でKRUSS DSA−100 TM機器を使用し、かつプローブ溶液として脱イオン水を使用して測定され得る。試験されるレンズ(3〜5/試料)を、脱イオン水中ですすぎ、包装溶液からキャリーオーバ(残留物)を取り除いた。それぞれの試験レンズを包装溶液で湿らせた糸くずの出ない拭き取り繊維上に置いた。レンズの両面を繊維と接触させて、レンズを乾燥させずに、表面の水を除去した。適切な平坦化を確保するために、レンズを、コンタクトレンズのプラスチック製の成形型の凸面上に「窪み側を下にして(bowl side down)」置いた。プラスチック製の成形型及びレンズを液滴機器のホルダ内に置き、中央へのシリンジの適切な整合を確保し及びシリンジが割り当てられた液体に対応することを確実にした。液滴がレンズから離れて垂れ続けるように、3〜4マイクロリットルの脱イオン水の滴を、DSA 100−Drop Shape Analysisソフトウェアを使用してシリンジチップ上に形成した。ニードルを下に移動させることによって、液滴を、レンズの表面上に円滑に投下した。滴を分注した後、ニードルを直ちに引き戻した。液滴は、5〜10秒間レンズ上で平衡を保たれ、滴画像とレンズの表面との間で測定された接触角に基づいて、接触角を計算した。
【0133】
含水率は、次のように測定され得る:試験されるレンズを24時間包装溶液内に静置した。先端がスポンジ状のスワブを使用して、3枚の試験レンズのそれぞれを包装溶液から取り出し、包装溶液で湿らせておいた拭き取り繊維上に置いた。レンズの両面をこの繊維と接触させた。ピンセットを使用して試験レンズを秤量皿に置き、秤量した。更に他の2個の試料セットを準備し、前述のように秤量した。秤量皿を3回秤量し、その平均値が湿潤重量である。
【0134】
乾燥重量は、60℃で30分間予熱した真空オーブンに試料皿を置くことによって測定された。少なくとも1.4kPa(0.4インチHg)が達成されるまで真空を適用した。真空バルブ及びポンプをオフにし、レンズを4時間乾燥した。パージ弁を開け、オーブンを大気圧に戻した。秤量皿を取り出し、秤量した。含量率は次のように計算した。
湿潤重量=皿とレンズの合計湿潤重量−秤量皿の重量
乾燥重量=皿とレンズの合計乾燥重量−秤量皿の重量
【数1】
【0135】
含水率の平均値及び標準偏差が、試料について計算され、報告される。
【0136】
酸素透過度(DK)は、以下の変更を除いて、ISO 18369−4:2006(E)に一般に記載されるポーラログラフィー法によって決定され得る。測定は、2.1%酸素含有環境で実行される。この環境は、窒素及び空気の注入が適切な比率、例えば窒素1800mL/分及び空気200mL/分、に設定された試験チャンバーを配備することによって、作り出される。調整されたpO2を使用して、t/Dkを算出する。ホウ酸緩衝食塩水を使用した。MMAレンズを適用せずに、純粋加湿窒素環境を使用して暗電流を測定した。レンズを、測定前に拭き取らなかった。様々な厚さのレンズを使用する代わりに、測定エリアでは均一な厚さの4枚のレンズを積み重ねた。厚さの値が大きく異なる4個の試料のL/Dkを測定し、厚さに対してプロットする。回帰直線勾配の逆数が、試料の予備Dkである。試料の予備Dkが90バーラー未満である場合、(1+(5.88(cmのCT)))の輪郭補正が、予備L/Dk値に適用される。試料の予備Dkが90バーラーを超える場合、(1+(3.56(cmのCT)))の輪郭補正が、予備L/Dk値に適用される。4個の試料の輪郭補正されたL/Dkを、厚さに対してプロットする。回帰直線勾配の逆数が試料のDkである。フラットセンサーの代わりにカーブセンサーを使用した。得られたDK値をバーラーで報告する。
【0137】
リポカリンの取り込みは、以下の溶液及び方法を使用して測定され得る。リポカリン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったリン酸食塩水緩衝液(Sigma、D8662)に、2mg/mLの濃度で可溶化したウシのミルク(Sigma、L3908)由来のBラクトグロブリン(リポカリン)を含有した。
【0138】
各実施例について、3枚のレンズがリポカリン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼ上で、包装溶液を除去するために拭き取り、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリポカリン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動させた。各レンズを溶液中に完全に浸漬した。対照レンズを、リポカリンの代わりに、加温浸漬液としてPBSを使用して準備した。リポカリン溶液中に浸漬したレンズを含むプレート及びPBS中に浸漬した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムでシールし、軌道振とう器上に配置し、35℃で、100rpmで攪拌しながら、72時間培養した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸漬することにより、3〜5回洗浄した。レンズを、紙タオルの上で拭き取り、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動させた。
【0139】
リポカリンの取り込みは、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用したオンレンズ・ビシンコニン酸法を使用して、製造業者が記載する手順により決定され得(標準前処理はキットに記載される)、リポカリン溶液に浸漬したレンズについて決定された光学密度から、PBSに浸漬したレンズについて測定された光学密度(バックグラウンド)を減じて算出される。光学密度は、562nmの光学密度を読み取ることが可能な、SynergyIIマイクロプレートリーダを使用して測定された。
【0140】
ムチンの取り込みは、以下の溶液及び方法を使用して測定され得る。ムチン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったリン酸食塩水緩衝液(Sigma、D8662)に、2mg/mLの濃度で可溶化したウシの顎下腺(Sigma、M3895−type 1−S)由来のムチンを含有した。
【0141】
各実施例について、3枚のレンズがムチン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼ上で、包装溶液を除去するために拭き取り、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのムチン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動させた。各レンズを溶液中に完全に浸漬した。対照レンズは、リポカリンの代わりに、加温浸漬液としてPBSを使用して準備した。
【0142】
ムチン溶液中に浸漬したレンズを含むプレート及びPBS中に浸漬した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムでシールし、軌道振とう器上に配置し、35℃で、100rpmで攪拌しながら、72時間培養した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸漬することにより、3〜5回洗浄した。レンズを、紙タオルの上で拭き取り、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動させた。
【0143】
ムチンの取り込みは、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用したオンレンズ・ビシンコニン酸法を使用して、製造業者が記載する手順により決定され得(標準前処理はキットに記載される)、ムチン溶液に浸漬したレンズについて決定された光学密度から、PBSに浸漬したレンズについて測定された光学密度(バックグラウンド)を減じて算出される。光学密度は、562nmの光学密度を読み取ることが可能な、SynergyIIマイクロプレートリーダを使用して測定された。
【0144】
細胞の生存率は、再構成された角膜上皮組織構成物を使用してインビトロで評価され得る。組織構成物は、再構成された全層角膜上皮(Skinethicsからの角膜上皮組織)であり、完全に層を成す上皮構成物を形成するように、ポリカーボネートインサート上の気液界面で、インビトロで成長させた。
【0145】
レンズの評価のために、レンズのパンチ生検(0.5cm)を組織上の局所に適用し、続いて、37℃、5%のCOで24−時間培養した。レンズの生検材料を除去し、組織をPBSで洗浄した。次いで、細胞の生存率をMTT比色分析アッセイ(Mosman,T.Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival:application to proliferation and cytotoxicity assays.J.Immunol.Methods,65;55〜63(1983))を使用して測定した。組織を、MTTの存在下、37℃、5%のCOで3時間培養し、続いて、イソプロピルアルコール中に組織を抽出した。次いで、イソプロピルアルコール抽出物の吸光度を、マイクロプレートリーダを使用して、550nmで測定した。結果は、PBS対照の割合(PBSで処理された組織対レンズ処理された組織)として表した。
【0146】
溶液の評価のために、30μgの溶液を、組織上の局所的に適用した。細胞の生存率は、レンズに対して記載される通りであった。各評価は、三重に行われた。
【0147】
脂質の取り込みは次のように測定された。
標準曲線は、調査中で、各レンズタイプについて設定された。標識コレステロール(NBD([7−ニトロベンζ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル]、CH−NBD;Avanti,Alabaster,AL)で標識化されたコレステロール)が、35℃で、メタノール中の1mg/mLの脂質の原液中に可溶化された。アリコートは、0〜100micg/mLの濃度範囲内で、pH 7.4で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で標準曲線を作成するように、本原液から得られた。
【0148】
各濃度における標準の1ミリリットルを24ウェル細胞培養プレートのウェル内に置いた。各タイプの10個のレンズを、別の24ウェルプレートに置き、20micg/mLの濃度のCH−NBD中の1mLに標準曲線試料と並べて浸漬した。別のレンズのセット(5個のレンズ)を、脂質の入っていないPBS中に浸漬して、レンズ自体が生成するあらゆる自己蛍光を補正した。全ての濃度は、pH 7.4においてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に作り出された。標準曲線プレート、試験プレート(CH−NBD中に浸漬したレンズを含む)、及び対照プレート(PBS中に浸漬したレンズを含む)は全て、アルミホイルで覆い、暗さを維持し、35℃で攪拌しながら、24時間処理した。24時間後、標準曲線プレート、試験プレート、及び対照プレートをインキュベーターから取り出した。標準曲線プレートは、マイクロプレート蛍光リーダ(Synergy HT)上で直ちに読み取った。
【0149】
試験プレート及び対照プレートからのレンズは、それぞれの別々のレンズを浸漬することにより約100mLのPBSを含む3つの連続したバイアル瓶中で3〜5回すすいで、結合した脂質のみが、脂質のキャリーオーバーなしで測定することができるようにした。次いで、レンズは、各ウェル中に1mLのPBSを含む、未使用の24ウェルプレート中に置き、蛍光リーダ上で読み取った。試験試料を読み取った後、PBSを除去し、前述されるように、1mLの未使用のCH−NBDの溶液を、同一の濃度でレンズを置き、次の期間まで振動させながら、35℃でインキュベーター中に戻した。この手順を、レンズ上で脂質が完全に飽和されるまで、15日間繰り返した。飽和で得られた脂質量のみが報告された。
【0150】
リゾチームの取り込みは、以下のように測定され得る。リゾチームの取り込み試験に使用されたリゾチーム溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート生理食塩水緩衝液に、2mg/mLの濃度で溶解させたニワトリの卵白(Sigma,L7651)からのリゾチームを含んでいた。
【0151】
リポカリン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート生理食塩水緩衝液に、2mg/mLの濃度で溶解させたウシのミルク(Sigma,L3908)からのBラクトグロブリン(リポカリン)を含んでいた。
【0152】
各実施例について3枚のレンズが、それぞれのタンパク質溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBSを使用して試験された。包装溶液を除去するために試験レンズを滅菌ガーゼの上で拭いて、滅菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリゾチーム溶液を含む、滅菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル1つ当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸漬した。対照として、コンタクトレンズを含まない1つのウェルに、2mLのリゾチーム溶液を入れた。
【0153】
レンズを含むプレート及びタンパク質溶液のみを含む対照用プレート及びPBS中のレンズは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に載せ、35℃、100rpmで72時間かき混ぜた。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸漬することにより、3〜5回洗浄した。レンズを紙タオルの上で拭いて、過剰なPBS溶液を除去し、滅菌した円錐形のチューブに移した(チューブ1つ当たり1枚のレンズ)。各チューブは、各レンズの組成から予想されるリゾチーム取り込み量の推定に基づいて決められる量のPBSを含んでいた。試験される各チューブのリゾチーム濃度は、製造業者が述べているアルブミン標準レンジ内(0.05マイクログラム〜30マイクログラム)であることが必要である。レンズ当たり100μg未満のリゾチームレベルを取り込むことが分かっているサンプルは、5倍に希釈した。レンズ(etafilcon Aレンズなど)当たり500μgを超えるリゾチームレベルを取り込むことが分かっているサンプルは、20倍に希釈した。
【0154】
etafilcon以外の全てのサンプルに対して、1mLのアリコートのPBSを使用した。etafilcon Aレンズに対しては、20mLを使用した。各対照レンズについては、ウェルプレートがリゾチームまたはリポカリンの代わりにPBSを含むこと以外は、同じように処理した。
【0155】
リゾチーム及びリポカリンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定し(標準前処理はキットに記載されている)、リゾチーム溶液に浸漬したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸漬したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算した。
【0156】
光学密度は、562nmの光学密度を読み取ることが可能な、SynergyIIマイクロプレートリーダを使用して測定され得る。
【0157】
以下の略語は、調整及び実施例を通して使用され、以下の意味を有する。
ACA1 3−アクリルアミドプロピオン酸
ACA2 5−アクリルアミドペンタン酸
4−BBB 4−(ブロモメチル)ベンゾイルブロミド(シグマアルドリッチ社)
DMA N,N−ジメチルアクリルアミド
イルガキュア(Irgacure)−819 ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty Chemicals社)
KX カリウムO−エチルキサントゲン酸塩
mPDMS モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量800〜1000)
NaHTTC ナトリウムヘキシルトリチオカーボネート
HBTTC S−ヘキシル−S’−ベンジル−トリチオカーボネート
XG1996TTC S−ヘキシル−S’−4−(2−(n−ブチルポリジメチルシロキシジメチルシリル)エチル)ベンジルカルボノトリチオエート
nBPDMS−H 3−(n−ブチルテトラメチルシロキシジメチルシリル)プロパノール
MBA N,N’−メチレンビスアクリルアミド
MBMA N,N’−メチレンビスメタクリルアミド(TCI社)
NVP N−ビニルピロリドン(Acros Chemical社)、真空蒸留によって更に精製
NRPTHP 調製3で得られたポリシロキサン末端ブロックコポリマー比較例
PTHPWCL 調製3で得られた架橋を有するポリシロキサン末端ブロックコポリマー
HO−mPDMS モノ−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)−プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(分子量400〜1000)
SBX 3−(n−ブチルテトラメチルシロキシジメチルシリル)プロピル4−((エトキシカルボノチオイルチオ)メチル)ベンゾエート
SiGMA 2−メチル−,2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル
TRIS−VC トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート
25 米国特許第5,260,000号の第4欄33〜42行目に記載されるシリコーン含有ビニルカルボネート
XG−1996 4−(2−(n−ブチルポリジメチルシロキシジメチルシリル)エチル)ベンジルクロリド、分子量〜1000
XG1996HTTC S−ヘキシル−S’−4−(2−(n−ブチルポリジメチルシロキシシリル)エチル)ベンジルカルボノトリチオエート(調製1)
D3O 3,7−ジメチル−3−オクタノール
HPMA N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(Polysciences社)
(VA−044) 2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Wako Specialty Chemicals社)
V−501 4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(Wako Specialty Chemical社)
DPBS ダルベッコリン酸緩衝食塩水1x(Cellgro社)
BBPSは、以下の成分を含有した眼科用溶液である。
【0158】
【表1】
【0159】
調製1
調製1.線状PHPMAホモポリマーの合成
HPMA及びV−501を入手状態のまま使用した。
650gのHPMA及び4875gの脱イオン水を、吹き込みチューブ、オーバーヘッドスターラ、及び温度プローブを備えた12Lフラスコに加えた。得られた溶液にNを吹き込み、溶液の温度が65℃になるように、250rpmで2時間撹拌した。
【0160】
反応混合物が65℃に到達したら、0.85gのV−501を加え、溶液の温度を70℃まで上昇させて、24時間その温度で保持した。熱を除去し、反応混合物を40℃まで冷却させた。
【0161】
得られたポリマー溶液を600mLずつに分割し、それぞれを2Lのアセトンに沈殿させた。分離した固体ポリマーを濾過し、フード内で一晩乾燥させて、次いで破砕してから24〜48時間乾燥させた。ポリマーがまだ湿っていたため、2Lのアセトンと共にワーリングブレンダに入れ(5分割)、2分間ブレンドして更に水を除去した。粉砕された固体ポリマーを、もう一度分離し、50〜55℃で24〜48時間乾燥させた。次いで、ポリマーを、4500gのメタノールに溶解させ、ワーリングブレンダ内でアセトンに(分割して)沈殿させた。高剪断沈殿により、微粉がもたらされ、この微粉は、濾過によって容易に分離され、48時間一定の重量まで乾燥させられた。最終ポリマーの収率は、84.9%であった。ポリマーから、SEC−MALLSによって、MW及びMWDを分析した。
【実施例】
【0162】
実施例1及び比較例1。
セノフィルコンAレンズを包装から除去し、3mLのBBPS(比較例1)、又は調製1によるPHPMAポリマーを5000ppm含有した3mLのBBPS(実施例1)を収容したガラス製バイアル瓶へ移動させた。レンズにキャップをし、クリンプ密封してから、続いて124℃で30分間滅菌した。以下の生体測定データが、HPMAポリマーで処理されたレンズに対して、及び未処理のセノフィルコンAレンズ(比較例1)に対して獲得された。結果を下記の表1に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
HPMAポリマーは、比較例1の未処理の対照レンズと比較して、脂質取り込みを劇的に低減させた。本発明のレンズのムチン及びリポカリンの取り込みもまた、対照と比較して低減した。
【0165】
〔実施の態様〕
(1) 架橋ポリマーマトリックス及び少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む医療用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化16】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、デバイス。
(2) 前記架橋ポリマーマトリックスが非荷電である、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 前記デバイスが、少なくとも1つの親水性成分を含むヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズである、実施態様1又は2に記載のデバイス。
(4) 前記架橋ポリマーマトリックスが反応成分の混合物から形成され、前記非反応性親水性ポリマーが、すべての反応成分及び親水性ポリマーの合計に基づき、約1〜約20重量パーセントの量で存在する、実施態様1に記載のデバイス。
(5) 前記非反応性親水性ポリマーが、すべての反応成分及び前記非反応性親水性ポリマーの合計に基づき、約3〜約15パーセントの量で存在する、実施態様4に記載のデバイス。
【0166】
(6) 前記親水性ポリマーが、すべての反応成分及び前記非反応性親水性ポリマーの合計に基づき、約5〜約12重量パーセントの量で存在する、実施態様4又は5に記載のデバイス。
(7) 前記の重合度が、約500〜約10,000である、実施態様1〜6のいずれかに記載のデバイス。
(8) 前記非反応性親水性ポリマーが、線状又は分岐状である、実施態様1〜7のいずれかに記載のデバイス。
(9) 前記非反応性親水性ポリマーが、約500〜約7,500の重合度を有する、実施態様1〜8のいずれかに記載のデバイス。
(10) 前記非反応性親水性ポリマーが、約500〜約2000の重合度を有する、実施態様1〜9のいずれかに記載のデバイス。
【0167】
(11) 前記非反応性親水性ポリマーが架橋されない、実施態様1〜10のいずれかに記載のデバイス。
(12) 前記非反応性親水性ポリマーが、フリーラジカル重合条件下で架橋可能な反復単位を含まない、実施態様1〜11のいずれかに記載のデバイス。
(13) 前記非反応性親水性ポリマーが、生物活性リンカー基に由来する反復単位を含まない、実施態様1〜12のいずれかに記載のデバイス。
(14) 前記非反応性親水性ポリマーが、ホモポリマー又はランダムコポリマーである、実施態様1〜13のいずれかに記載のデバイス。
(15) 前記非反応性親水性ポリマーが、約10モル%未満のアニオン性反復単位を含む、実施態様1〜14のいずれかに記載のデバイス。
【0168】
(16) 前記非反応性親水性ポリマーが非イオン性である、実施態様1〜15のいずれかに記載のデバイス。
(17) Rが、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチルからなる群から選択される、実施態様1〜16のいずれかに記載のデバイス。
(18) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、及び
【化17】
並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1〜17のいずれかに記載のデバイス。
(19) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドからなる群から選択される、実施態様1〜18のいずれかに記載のデバイス。
(20) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを含む、実施態様1〜19のいずれかに記載のデバイス。
【0169】
(21) 前記架橋ポリマーマトリックスが水素結合受容基を含む、実施態様1〜20のいずれかに記載のデバイス。
(22) 前記水素結合受容基が、アミド基、アミン基、エーテル、フッ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様21に記載のデバイス。
(23) 前記水素結合受容基が、ピロリドン基、アミド基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様21又は22に記載のデバイス。
(24) 前記ポリマーマトリックスがシリコーンヒドロゲルを含む、実施態様1〜23のいずれかに記載のデバイス。
(25) 前記デバイスが眼科用デバイスである、実施態様1〜24のいずれかに記載のデバイス。
【0170】
(26) 前記眼科用デバイスが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、涙点プラグ、及び眼用インサートからなる群から選択される、実施態様25に記載のデバイス。
(27) ヒドロゲルから形成される生物医学デバイスを少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む溶液と接触させることを含む方法であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが、20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化18】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、かつ前記生物医学デバイスに潤滑有効量(lubricious effective amount)の前記非反応性親水性ポリマーを組み込むのに十分な条件下で末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、方法。
(28) 前記ヒドロゲルが非荷電である、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記デバイスがコンタクトレンズであり、前記ヒドロゲルが少なくとも1つの親水性成分を含む、実施態様27又は28に記載の方法。
(30) 前記非反応性親水性ポリマーが、約500〜約10,000の重合度を有する、実施態様27〜29のいずれかに記載の方法。
【0171】
(31) 前記非反応性親水性ポリマーが、線状又は分岐状である、実施態様27〜30のいずれかに記載の方法。
(32) 前記非反応性親水性ポリマーが、約500〜約7,500の重合度を有する、実施態様27〜31のいずれかに記載の方法。
(33) 前記非反応性親水性ポリマーが、約500〜約2000の重合度を有する、実施態様27〜32のいずれかに記載の方法。
(34) 前記非反応性親水性ポリマーが架橋されない、実施態様27〜33のいずれかに記載の方法。
(35) 前記非反応性親水性ポリマーが、フリーラジカル重合条件下で架橋可能な反復単位を含まない、実施態様27〜34のいずれかに記載の方法。
【0172】
(36) 前記非反応性親水性ポリマーが、生物活性リンカー基に由来する反復単位を含まない、実施態様27〜35のいずれかに記載の方法。
(37) 前記非反応性親水性ポリマーが、ホモポリマー又はランダムコポリマーである、実施態様27に記載の方法。
(38) 前記非反応性親水性ポリマーが、約10モル%未満のアニオン性反復単位を含む、実施態様27〜36のいずれかに記載の方法。
(39) 前記非反応性親水性ポリマーが非イオン性である、実施態様27に記載の方法。
(40) Rが、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチルからなる群から選択される、実施態様27〜29のいずれかに記載の方法。
【0173】
(41) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、及び
【化19】
並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様27〜40のいずれかに記載の方法。
(42) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドからなる群から選択される、実施態様27〜41のいずれかに記載の方法。
(43) 前記N−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを含む、実施態様27〜42のいずれかに記載の方法。
(44) 前記溶液が、前記溶液内のすべての成分に基づき、約0.001%〜約10%のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマーを含む、実施態様27〜43のいずれかに記載の方法。
(45) 前記溶液が、前記溶液内のすべての成分に基づき、約0.005%〜約2%のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマーを含む、実施態様27〜44のいずれかに記載の方法。
【0174】
(46) 前記接触工程が加熱工程を更に含む、実施態様27〜45のいずれかに記載の方法。
(47) 前記加熱工程がオートクレーブ処理工程を含む、実施態様46に記載の方法。
(48) 前記デバイスがコンタクトレンズであり、前記溶液が包装溶液である、実施態様46又は47に記載の方法。
(49) 前記接触工程が、約40℃〜約100℃の温度での加熱工程を含む、実施態様46〜48のいずれかに記載の方法。
(50) 前記溶液が、ホウ酸緩衝液及びリン酸緩衝液からなる群から選択された緩衝溶液を含む、実施態様27〜49のいずれかに記載の方法。
【0175】
(51) 約10ppm〜約10重量%の少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む眼科用溶液であって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び式I:
【化20】
のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、Rは水素又はメチルであり、
は、H、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC1〜4アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有し、かつ末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、溶液。
(52) 前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、前記溶液内のすべての成分に基づき、約50ppm及び約2重量%の濃度で存在する、実施態様51に記載の溶液。
(53) 前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100ppm及び約5,000ppmの濃度で存在する、実施態様51又は52に記載の溶液。
(54) 前記溶液が、塩溶液(saline solutions)、緩衝溶液、及び脱イオン水からなる群から選択される、実施態様51〜53のいずれかに記載の溶液。
(55) 前記溶液が、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びこれらの対応するカリウム塩からなる群から選択される塩を含む塩溶液である、実施態様54に記載の溶液。
【0176】
(56) 前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、約100〜約100,000の重合度を有する、実施態様54又は55に記載の溶液。