特許第6526769号(P6526769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6526769金属の溶湯からの連続式不純物除去装置及び連続式不純物除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6526769
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】金属の溶湯からの連続式不純物除去装置及び連続式不純物除去方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20190527BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   B22D1/00 L
   B22D1/00 T
   B22D43/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-220376(P2017-220376)
(22)【出願日】2017年11月15日
【審査請求日】2019年1月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593059223
【氏名又は名称】高橋 謙三
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】高 橋 謙 三
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−346709(JP,A)
【文献】 特開平02−122011(JP,A)
【文献】 特開平06−047506(JP,A)
【文献】 特開平06−212312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00
B22D 33/00−47/02
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出する、金属の溶湯からの連続式不純物除去装置であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体と、
前記溶湯流動路体に設けられた、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成する、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板と、
前記不純物除去空間内に設けられ、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置と、
前記溶湯流動路体の外部に設けられ、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置と、
を備え、
前記電極装置と前記磁場装置とが、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させることが可能な、付力装置を構成しており、
前記出口側電極は、前記溶湯流動路体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、前記不純物除去空間に浮遊状態に設けられており前記第1の隙間及び前記第2の隙間を通過した溶湯を前記出口側閉塞端板からオーバーフローさせるようにした、
ことを特徴とする金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項2】
前記電極装置における前記一対の電極には、前記ローレンツ力を調節すべく電流量を調節可能な電源が接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項3】
前記出口側閉塞端板は、前記不純物除去空間の長さを調節すべく、前記溶湯流動路体内における取り付け位置を、前記長さ方向に調節可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項4】
前記出口側閉塞端板は、その高さを調節可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項5】
前記溶湯流動路体の前段には、前記溶湯流動路体に金属の溶湯を供給する、供給量を調節可能な、溶湯供給装置が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項6】
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出するに当たり、金属の溶湯から不純物を除去する連続式不純物除去方法であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体を準備し、
前記溶湯流動路体に、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板を設けて、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成し、
前記不純物除去空間内に、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置を設け、
前記溶湯流動路体の外部に、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置を設け、
前記電極装置と前記磁場装置とによる付力装置によって、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて、溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させ、
前記出口側電極を、前記不純物除去空間に浮遊状態に設けて、前記溶湯流動路体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成前記第1の隙間及び前記第2の隙間を通過した溶湯を前記出口側閉塞端板からオーバーフローさせるようにした、
ことを特徴とする金属の溶湯からの連続式不純物除去方法。
【請求項7】
電源から、前記電極装置における前記一対の電極に加える電流量を調節して、前記ローレンツ力を調節する、ことを特徴とする請求項6に記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去方法。
【請求項8】
前記出口側閉塞端板の、前記溶湯流動路体内における取り付け位置を、前記長さ方向に調節することにより、前記不純物除去空間の長さを調節する、ことを特徴とする請求項6又7に記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去方法。
【請求項9】
前記出口側閉塞端板を、その高さを調節可能に構成し、ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1つに記載の金属の溶湯からの連続式不純物除去方法。
【請求項10】
前記溶湯流動路体の前段に設けた溶湯供給装置により、前記溶湯流動路体に金属の溶湯を供給する供給量を調節する、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1つに記載の連続式不純物除去方法。
【請求項11】
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出する、金属の溶湯からの連続式不純物除去装置であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体と、
前記溶湯流動路体に設けられた、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成する、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板と、
前記不純物除去空間内に設けられ、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置と、
前記溶湯流動路体の外部に設けられ、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置と、
を備え、
前記出口側電極は、前記溶湯流動路体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、前記不純物除去空間に浮遊状態に設け前記第1の隙間及び前記第2の隙間を通過した溶湯を前記出口側閉塞端板からオーバーフローさせるようにし、
前記電極装置と前記磁場装置とが、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させることが可能で、且つ、前記不純物除去空間において前記出口側電極よりも内側の溶湯を前記第1の隙間を通って前記第2の隙間へ圧送可能な、付力装置を構成している、
ことを特徴とする金属の溶湯からの連続式不純物除去装置。
【請求項12】
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出するに当たり、金属の溶湯から不純物を除去する連続式不純物除去方法であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体を準備し、
前記溶湯流動路体に、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板を設けて、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成し、
前記不純物除去空間内に、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置を設け、
前記溶湯流動路体の外部に、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置を設け、
前記出口側電極を、前記溶湯流動路体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、前記不純物除去空間に浮遊状態に設け前記第1の隙間及び前記第2の隙間を通過した溶湯を前記出口側閉塞端板からオーバーフローさせるようにし、
前記電極装置と前記磁場装置とによる付力装置によって、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて、溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させ、且つ、前記出口側電極よりも内側の溶湯を、前記第1の隙間を通って前記第2の隙間へ圧送する、
ことを特徴とする金属の溶湯からの連続式不純物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属の溶湯からの連続式不純物除去装置及び連続式不純物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性(伝導性)を有する金属の溶湯、即ち、非鉄金属(例えば、Al,Cu,Zn又はSi、あるいはこれらのうちの少なくとも2つの合金、あるいはMg合金等)の溶湯又は前記非鉄金属以外のその他の金属の溶湯からの製品化するには、例えば、原材料を溶解し、成分調整を行った後、溶湯中に混入している不純物を除去し、成形する、という工程が採られる。不純物除去は一般に溶湯の浄化と言われ、例えばセラミックフィルターが用いられる。
【0003】
しかしながら、フィルターを用いた不純物除去方法は、当然ながら濾過法であるため、目詰まりが起こりやすい。このため、作業性が悪化し、ランニングコストが増大する等の難点がある。
【0004】
つまり、フィルター式の場合、網の目の大きさをどの程度に設定するかが実際上重要なポイントとなってくる。大きな不純物だけでなく、微細な不純物を除去しようとすると、目を細かくしなければならない。しかしながら、目を細かくすれば、目詰まりが発生しやす。例えば瞬時に目詰まりを起こしてしまい、生産がストップすることもある。
【0005】
そこで、従来、フィルターでの除去に先立ち、溶湯中に事前にフラックスを投入することも行われていた。この投入により、不純物は粒径の大きな物に変えられる。これにより、目をある程度大きく保ったままでも不純物を除去可能となり、フィルターでの除去効率(トラップ効率)を上げることができる。しかしながら、溶湯中にフラックスを投入すること自体が、製品の品質の観点から、好ましいと言えない場合も少なくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来の手法では、金属の溶湯から不純物を、細かい不純物も含めて、除去しつつ、製品の生産を停止させることなく連続して生産することは実際上できなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、不純物を含む非鉄金属やその他の金属の溶湯から高精度に不純物を除去しつつ、連続して製品を製造可能とするための、連続式不純物除去装置及び方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出する、金属の溶湯からの連続式不純物除去装置であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体と、
前記溶湯流動路体に設けられた、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成する、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板と、
前記不純物除去空間内に設けられ、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置と、
前記溶湯流動路形成体外部に設けられ、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路形成体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置と、
を備え、
前記電極装置と前記磁場装置とが、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させることが可能な、付力装置を構成している、
ものとして構成される。
【0009】
さらに、本発明の実施形態は、
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出するに当たり、金属の溶湯から不純物を除去する連続式不純物除去方法であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体を準備し、
前記溶湯流動路体に、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板を設けて、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成し、
前記不純物除去空間内に、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置を設け、
前記溶湯流動路形成体外部に、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路形成体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置を設け、
前記電極装置と前記磁場装置とによる付力装置によって、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて、溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させる、
ものとして構成される。
【0010】
さらに、本発明の実施形態は、
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出する、金属の溶湯からの連続式不純物除去装置であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体と、
前記溶湯流動路体に設けられた、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成する、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板と、
前記不純物除去空間内に設けられ、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置と、
前記溶湯流動路形成体外部に設けられ、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路形成体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置と、
を備え、
前記出口側電極は、前記溶湯流動路形成体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、前記不純物除去空間に浮遊状態に設けられており、
前記電極装置と前記磁場装置とが、前記電極装置と前記磁場装置とが、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させることが可能で、且つ、前記不純物除去空間において前記出口側電極よりも内側の溶湯を前記第1の隙間を通って前記第2の隙間へ圧送可能な、付力装置を構成している、
ものとして構成される。
【0011】
さらに、本発明の実施形態は、
導電性金属の溶湯を次段の金属製品製造装置へ送出するに当たり、金属の溶湯から不純物を除去する連続式不純物除去方法であって、
外部から流入させられた導電性金属の溶湯を金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体を準備し、
前記溶湯流動路体に、入口側閉塞端板及び出口側閉塞端板を設けて、前記溶湯流動路の前後を仕切って、不純物除去空間を形成し、
前記不純物除去空間内に、溶湯の流れる方向である長さ方向に対向する、前記不純物除去空間内の溶湯と電気的に接触可能な、入口側電極及び出口側電極による電極装置を設け、
前記溶湯流動路形成体外部に、前記長さ方向と交叉する幅方向に対向し、前記溶湯流動路形成体の前記不純物除去空間を前記幅方向に挟む、互いに異極を対向させ、前記不純物除去空間内の溶湯中に磁場を形成可能な、一対の永久磁石による磁場装置を設け、
前記出口側電極を、前記溶湯流動路形成体の底面との間に上下に開口した第1の隙間を形成し、前記出口側閉塞端板との間に前記長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、前記不純物除去空間に浮遊状態に設け、
前記電極装置と前記磁場装置とによる付力装置によって、前記不純物除去空間における溶湯に下向きにローレンツ力を印加して溶湯の密度を増大させて、溶湯中の不純物を溶湯の表面に浮上させ、且つ、前記出口側電極よりも内側の溶湯を、前記第1の隙間を通って前記第2の隙間へ圧送する、
ものとして構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置の全体構成平面説明図。
図2図1のII−II線に沿った断面説明図。
図3図2のIII−III線に沿った断面説明図。
図4図2のIV-IV線に沿った断面説明図。
図5図2の一部に対応する使用状態説明図。
図6】ローレンツ力の発生を説明する説明図。
図7】(a)、(b)は溶湯中の圧力状態を説明する説明図。
図8図5に対応する変形例を示す部分説明図。
図9】(a)、(b)は出口側閉塞端板の具体例を示す縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の金属の溶湯からの連続式不純物除去装置100の実施形態の全体構成を示す平面説明図である。金属は、導電性を有する非鉄金属又はその他の金属である。前記非鉄金属又はその他の金属は、Al,Cu,Zn又はこれらのうちの少なくとも2つの合金、あるいはMg合金等の伝導体(導電体)の非鉄金属、あるいは、前記非鉄金属以外のその他の金属である。
【0015】
図1には、実線の矢印AR1で溶湯Mの流れを、破線の矢印AR2で不純物IMの移動を、それぞれ示している。つまり、溶湯Mが矢印AR1に沿って流れる途中で不純物IMを横向きに除去することを示している。
【0016】
より詳しくは、図1に一例として傾動式溶解炉を用いた場合を示す。この図1から分かるように、不純物除去装置100は、前段の溶解炉200からの金属の溶湯Mを受けて自己の内部を流動させ、流動する間に溶湯M中の不純物を液面近傍に積極的に浮かび上がらせて、その不純物を任意の手段で除去可能とし、不純物除去後の溶湯Mを後段のモールド300に流入させて、高品質の溶湯Mから例えばビレットやスラブ等の製品(インゴット)を製造可能とするように構成されたものである。前記溶解炉200及び前記モールド300は、汎用のものを採用可能である。よって、例えば、本発明の不純物除去装置100は、既設の溶解炉200及びモールド300に後から追加的に付設可能である。
【0017】
前記溶解炉200は、上述のように、汎用の傾動式溶解炉である。つまり、溶解炉200は、上方が開口2となった容器状の溶解炉本体1を備える。傾動式溶解炉本体1の前方側(図中左側)の側壁には、溶湯Mの注ぎ口3が形成されている。後方の側壁には、汎用のガスバーナー4が取り付けられている。前記開口2から投入された導電性金属の原料は前記ガスバーナー4によって加熱されて溶湯Mとなって溶解炉本体1内に収納される。
【0018】
図2図1のII−II線に沿った縦断面説明図である。この図2から分かるように、前記溶解炉本体1の外側の底部には起伏回動可能とするためのヒンジ機構6設けられている。これにより、直立状態から傾いた注ぎ状態へと、水平な軸6aの回りに、起伏回動可能に構成されている。この溶解炉本体1は樋本体10への溶湯の供給量を調節可能である。溶湯Mは、溶解炉本体1を傾けることにより、溶湯Mが前記注ぎ口3から次段の不純物除去装置100に注がれる。この状態は、図5に示される。溶解炉本体1を傾ける角度の調整により、図2に示すヘッドhが変わり、溶解炉本体1から樋本体10への、溶湯Mの流入速度を変えることができる。なお、樋本体10内の溶湯Mのレベルは出口側閉塞端板11の高さを変えることにより行われる。また、図8に示すように、後述する一方の電極13bは、入口側閉塞端板8から離して設けることもできる。このときの溶湯Mの流れは図8中に示す通りである。
【0019】
前記溶解炉200からの溶湯Mを受ける不純物除去装置100は、受けた溶湯Mを、図1中右から左に流動させて次段のモールド300に渡すいわゆる樋としての機能と、流動する過程で溶湯M中の不純物を液面近傍に浮上させる不純物を選択的に集積させる選択集積機能と、を有するものとして構成されている。
【0020】
即ち、不純物除去装置100は、特に図2から分かるように、樋本体(選別槽)(溶湯流動路体)10と、それを幅方向に挟む磁場装置12と、を有する。さらに、不純物除去装置100は、特に図1から分かるように、前記樋本体10の内部(溶湯流動路)に収納され、互いに対向する一対の電極13a、13bからなる電極装置13を有する。磁場装置12と電極装置13は、追って詳しく説明するように、溶湯Mに下向きにローレンツ力fを加える付力装置30を構成する。
【0021】
前記樋本体10は、図1から分かるように、溶解炉200からの溶湯Mをモールド300に導くもので、図3から分かるように、耐火材で、横断面がほぼU字型のものとして、構成されている。樋本体10は、溶湯Mの流れをスムーズにするため、図2おいて、左側を右側よりも低くなるように、勾配を持たせて設置することもできる。
【0022】
前記樋本体10は、図2から分かるように、溶解炉200からの溶湯Mを受ける流入補助板7Aと、それに続く、入口側閉塞端板8、主流路底板9,出口側閉塞端板11を有する。さらにこれらを幅方向に挟む左右の側板15a、15bを有する。前記左右の側板15a、15bと入口側閉塞端板8、出口側閉塞端板11とにより、不純物除去部としての主流路(不純物除去空間)14が形成される。
【0023】
前記出口側閉塞端板11は、その高さを調節可能に構成することもできる。その高さを調節可能な構成としては任意のものを採用できる。例えば、図9(a)、(b)から分かるように、出口側閉塞端板11を、互いにボルト締めした本体11aと補助板11bとにより構成し、補助板11bを本体11aに対して上下にずらすようにしてもよい。
【0024】
前記電極装置13における入口側の電極13aは前記入口側閉塞端板8に密着状態に設けられており、出口側の電極13bは、長さ方向には、前記出口側閉塞端板11から隙間(第2の隙間)G2を隔てた状態に設けられ、深さ方向には、隙間(第1の隙間)G1だけ浮かした状態に、して浮遊状態に設けられている。これにより、溶湯Mは、後述するように、隙間G1、G2を通って流れ、前記出口側閉塞端板11を越え、いわゆるオーバーフローして、主流路8から流出補助板7Bを介して前記モールド300に向けて、流れ出ることになる。
【0025】
前記電極装置13における一対の電極13a、13b間には電源16が接続されている。この電源16は、直流電流の他、交流電流も流し得るものとして構成されている。さらに、直流電流は、極性を切り替え得るように構成されている。
【0026】
前記樋本体10の左右両側には、図1図4から分かるように、前記磁場装置12が設けられている。この磁場装置12は、左右一対の永久磁石12a、12bを備え、これらの一対の永久磁石12a、12bで前記樋本体10を挟んでいる。一対の永久磁石12a、12bは、互いに異極を向かい合わせており、この実施形態では、一対の永久磁石12a、12bの内側がそれぞれS極、N極に磁化されている。これにより、図4中、上側の永久磁石12bからの磁力線MLが樋本体10中の溶湯Mを貫通して下側の永久磁石12aに達する。而して、実際の使用時には、図4から分かるように、一対の電極13a、13b間に電流Iが流れている。よって、前記磁力線MLと電流Iとが交叉することになる。これにより、図6に示すように、溶湯Mにはこれを下向きに押し下げるローレンツ力fが発生する。なお、前記磁場装置12は、電磁石によって構成することもできる。
【0027】
次に、本発明の実施形態の動作について説明する。
【0028】
図1図2から分かるように、導電性金属を溶解炉200に投入し、加熱、溶解すると、溶湯Mの増加、及び、図5のように傾けることにより、溶湯Mは溶解炉200から主流路14に流入する。
【0029】
この主流路14においては、図4からわかるように、磁力線MLと電流Iとが交叉している。この概念が前述の図6に示される。これにより、ローレンツ力fが発生し、溶湯Mにこれを下向きに押し下げる向きに力として加わる。これにより、溶湯M内部の圧力は、表面より底部にいくほど大きなものとなる。この場合の圧力分布の状態は図7(a)に示される。つまり、溶湯Mの密度は、前記ローレンツ力fの他重力により、底部ほど大きなものとなる。この密度は、溶湯M内部に含まれる不純物IMの浮力に大きな影響を及ぼす。つまり、密度が大きいと不純物IMには大きな浮力が作用することになる。
【0030】
よって、前記ローレンツ力fが発生した状態においては、溶湯M中の不純物IMは溶湯M中を上昇し、液面に至る。つまり、不純物IMには自重により、溶湯M中を沈下しようとする。また、不純物IMには溶湯Mによって浮力が作用する。而して、溶湯Mの密度が上がると、溶湯M中の不純物IMには大きな浮力が作用することになる。よって、この浮力と前記沈下力との差に応じて不純物IMは上下する。而して、前記ローレンツ力fを所期のものに設定することにより、前記浮力が前記沈下力よりも大きくなり、不純物IMは溶湯M中を上昇し、液面近傍に至る。この動作は、溶湯Mが主流路14を流れる過程において連続的に行われる。
【0031】
このようにして、溶湯Mの表面近傍に不純物IMが浮かび上がる。浮かび上がった不純物IMを、自動的に或いは人為的に、任意の手段で、図3から分かるように、不純物除去板7Cを介して不純物受40に排出する。不純物除去板7Cは、図3に示すように、横断面が山形をしている。
【0032】
また、前記したように、樋本体10において、溶湯Mは、図7(b)に示すように圧力の付加により押し下げられ液面が下がる。これに伴い、溶湯Mは、図2から分かるように、隙間G1を通って隙間G2に至る。これにより、図2に示すように、ヘッドhが生じ、この分だけの圧力が樋本体10内の溶湯Mに掛かることになる。ここで、不純物IMは溶湯M中で上昇して液面近傍に集まるため、前記隙間G1を通る溶湯M中には不純物IMが実質的に含まれていない。つまり、隙間G2には、不純物IMが実質的に含まれていない溶湯Mが存することになる。而して、隙間G2においては溶湯Mの液面が上がる。このため、実質的に浄化された溶湯Mが、前記出口側閉塞端板11を乗り越えて、流出補助板7Bを介して前記モールド30に流入する。これにより、不純物IMの少ない高品質の製品が得られる。図2のhが、2つの液面のヘッドを示す。
【0033】
上述した、溶湯M中の不純物IMが、前記ローレンツ力fを加えることにより、溶湯M中で上昇させることができることを、以下に詳しく説明する。
【0034】
図4における、溶湯M中の磁場強度をBとする。ここで、図7(a)、(b)から分かるように、ローレンツ力fが下向きに発生したとする。この際、樋本体10の底部に作用する力Fは、重力による力fgと、ローレンツ力fによる力fmとの和となり、
F=fg+fm
となる。
【0035】
ここで、樋本体10の水平面積Aは、A=l×a (l:樋本体10の長さ、a:樋本体10の幅)であるから、樋本体10の底部における圧力Pは、
P=F/A
となる。さらに、ここで、一対の電極13a、13b間の電流密度が一定であるとすれば、ローレンツ力fは、溶湯表面で0、底部でI×B×l(N)となる。よって、圧力は底部が最も高くなる。この状態は図7(a)、(b)に示される。
【0036】
さらに、ローレンツ力fと重力による2つの影響を受けた溶湯Mの見かけの密度をρmとし、混入不純物粒子の密度をρs、粒子の大きさをVとする。不純物粒子には、溶湯Mから受ける浮力faと、重力による力fgが同時に作用する。この時に、不純物粒子が受ける力をFsとすれば、
Fs=fa−fg
=ρm×V−ρs×V
=(ρm−ρs)×V
となる。従って、不純物粒子は溶湯M中で下記のような動きを採る。
(a)ρm−ρs>0 浮上
(b)ρm−ρs<0 沈下
(c)ρm−ρs=0 浮遊
【0037】
以上に説明した本発明の実施形態によれば以下の利点が得られる。
【0038】
(1)産業界で標準技術となっている連続鋳造法に合致した、溶湯Mの連続浄化が可能である。
(2)不純物の浮上速度は、不純物の粒径、密度等により変わるが、浮上速度の小さい対象物(小粒径物)の分離の場合は、流速を遅くするとか樋本体を長くする等によって、樋本体(選別槽)における溶湯Mの滞留時間を長くすれば良い。
(3)物理的、機械的な浄化ではないため、フィルターの交換の必要性がなく、作業効率が良いだけでなく、コストも安く抑えられる。
(4)溶湯の比重は、磁場強度や電流値を変えることで容易に変えることができ、不純物除去対象の溶湯Mの種類に応じた不純物除去作業を行うことができる。
【要約】      (修正有)
【課題】不純物を含む金属の溶湯から高精度に不純物を除去しつつ、連続して製品を製造可能とするための、連続式不純物除去装置及び方法の提供。
【解決手段】外導電性金属の溶湯Mを金属製品製造装置へ向けて流動させる溶湯流動路を有する、溶湯流動路体に、不純物除去空間14を形成し、不純物除去空間14内に、溶湯と電気的に接触可能な電極装置13a,bと溶湯M中に磁場を形成可能な一対の永久磁石による磁場装置を設け、電極と溶湯流動路形成体の底面9との間に上下に開口した第1の隙間及び長さ方向に開口した第2の隙間を形成するように、不純物除去空間14に浮遊状態に設け、電極装置13a,bと前記磁場装置とによる付力装置によって、不純物除去空間14における溶湯Mに下向きにローレンツ力を印加して溶湯Mの密度を増大させて、溶湯M中の不純物を溶湯Mの表面に浮上させ、溶湯Mを前記第1の隙間を通って前記第2の隙間へ圧送する方法。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9