(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526811
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】III族窒化物結晶を加工する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20190527BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20190527BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20190527BHJP
C30B 7/10 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B33/00
C30B25/18
C30B7/10
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-529046(P2017-529046)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-536325(P2017-536325A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】US2015063528
(87)【国際公開番号】WO2016090045
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】62/086,699
(32)【優先日】2014年12月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510123264
【氏名又は名称】シックスポイント マテリアルズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507194969
【氏名又は名称】ソウル セミコンダクター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL SEMICONDUTOR CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】橋本 忠朗
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−129225(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103305909(CN,A)
【文献】
特表2005−506271(JP,A)
【文献】
特表2011−507797(JP,A)
【文献】
特開2010−089971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 7/10
C30B 25/18
C30B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物結晶を加工する方法であって、
(a)単結晶または高配向多結晶III族窒化物層を基板上に成長させるステップであって、前記層の暴露された表面は、III族極性c−面である、ステップと、
(b)前記結晶の暴露された表面が、III族極性c−面、多結晶相、または非結晶相になるように、徐々に劣化される結晶構造を有する単結晶または高配向多結晶III族窒化物をさらに成長させるステップと、
(c)前記基板を除去し、前記III族窒化物の第1の窒素極性c−面表面および第2のIII族極性c−面表面、多結晶相、または非結晶相を有する結晶を得るステップと、を含み、前記ステップ(b)は、ステップ(a)のものより低い温度で実施される、方法。
【請求項2】
ステップ(a)および(b)は、水素化物気相エピタキシを用いて実施される、請求項1に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項3】
前記基板は、異種基板である、請求項1または2に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、冷却に応じて、または冷却の後、前記基板の自己分離を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)は、前記基板の研削を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)は、前記基板のレーザリフトオフを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)における温度は、成長の間、徐々に低下される、請求項1に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)における温度は、成長の間、線形に低下される、請求項7に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)は、ステップ(a)のものより高い酸素濃度で実施される、請求項1から8のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)における酸素濃度は、成長の間、徐々に増加される、請求項9に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項11】
前記酸素濃度は、線形に増加される、請求項10に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項12】
(a)前記第2の表面を研削するステップと、
(b)前記第1の表面を研削するステップと、
(c)前記第1の表面をラップ仕上げするステップと、
をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【請求項13】
前記III族窒化物は、GaNである、請求項1から12のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国出願シリアル番号第62/086,699号、発明の名称“Group III Nitride Crystals, Their Fabrication Method, and Method of Fabricating Crystals in Supercritical Ammonia”、発明者Tadao Hashimoto、代理人管理番号SIXPOI−022USPRV1、出願日2014年12月2日に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容は、それらの全体が本明細書中に参照により援用される。
【0002】
本願は、以下の米国特許出願にも関連している。
【0003】
PCT実用特許出願第US2005/024239号、出願日2005年7月8日、発明者Kenji Fujito, Tadao Hashimoto および Shuji Nakamura、発明の名称“METHOD FOR GROWING GROUP III−NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA USING AN AUTOCLAVE”、代理人管理番号30794.0129−WO−Ol(2005−339−1);
【0004】
米国特許出願シリアル番号第11/784,339号、出願日2007年4月6日、発明者Tadao Hashimoto, Makoto Saito, およびShuji Nakamura、発明の名称“METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS”、代理人管理番号30794.179−US−U1(2006−204)(この出願は、米国仮特許出願第60/790,310号、出願日2006年4月7日、発明者Tadao Hashimoto, Makoto Saito,およびShuji Nakamura、発明の名称“A METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS”、代理人管理番号30794.179−US−P1(2006−204)の35 U.S.C.§119(e)のもとでの利益を主張している);
【0005】
米国特許出願第60/973,602号、出願日2007年9月19日、発明者Tadao HashimotoおよびShuji Nakamura、発明の名称“GALLIUM NITRIDE BULK CRYSTALS AND THEIR GROWTH METHOD”、代理人管理番号30794.244−US−P1(2007−809−1);
【0006】
米国特許出願シリアル番号第11/977,661、出願日2007年10月25日、発明者Tadao Hashimoto、発明の名称“METHOD FOR GROWING GROUP III−NITRIDE CRYSTALS IN A MIXTURE OF SUPERCRITICAL AMMONIA AND NITROGEN, AND GROUP III−NITRIDE CRYSTALS GROWN THEREBY”、代理人管理番号30794.253−US−U1(2007−774−2);
【0007】
米国特許出願第61/067,117、出願日2008年2月25日、発明者Tadao Hashimoto, Edward Letts, Masanori Ikari、発明の名称“METHOD FOR PRODUCING GROUP III−NITRIDE WAFERS AND GROUP III−NITRIDE WAFERS”、代理人管理番号62158−30002.00またはSIXPOI−003;
【0008】
米国特許出願シリアル番号第61/058,900号、出願日2008年6月4日、発明者Edward Letts, Tadao Hashimoto, Masanori Ikari、発明の名称“METHODS FOR PRODUCING IMPROVED CRYSTALLINITY GROUP III−NITRIDE CRYSTALS FROM INITIAL GROUP III−NITRIDE SEED BY AMMONOTHERMAL GROWTH”、代理人管理番号第62158−30004.00またはSIXPOI−002;
【0009】
米国特許出願シリアル番号第61/058,910号、出願日2008年6月4日、発明者Tadao Hashimoto, Edward Letts, Masanori Ikari、発明の名称“HIGH−PRESSURE VESSEL FOR GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS AND METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS USING HIGH−PRESSURE VESSEL AND GROUP III NITRIDE CRYSTAL”、代理人管理番号62158−30005.00またはSIXPOI−005(米国特許第8,236,237号として発行);
【0010】
米国特許出願シリアル番号第61/131,917号、出願日2008年6月12日、発明者Tadao Hashimoto, Masanori Ikari, Edward Letts、発明の名称“METHOD FOR TESTING III−NITRIDE WAFERS AND III−NITRIDE WAFERS WITH TEST DATA”、代理人管理番号62158−30006.00またはSIXPOI−001;
【0011】
米国特許出願シリアル番号第61/106,110号、出願日2008年10月16日、発明者Tadao Hashimoto, Masanori Ikari, Edward Letts、発明の名称“REACTOR DESIGN FOR GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS AND METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS”、代理人管理番号SIXPOI−004;
【0012】
米国特許出願シリアル番号第61/694,119、出願日2012年8月28日、発明者Tadao Hashimoto, Edward Letts, Sierra Hoff,発明の名称“GROUP III NITRIDE WAFER AND PRODUCTION METHOD”、代理人管理番号SIXPOI−015;
【0013】
米国特許出願シリアル番号第61/705,540号、出願日2012年9月25日、発明者Tadao Hashimoto, Edward Letts, Sierra Hoff、発明の名称“METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS”、代理人管理番号SLXPOI−014;
【0014】
これらの出願は、以下に完全に示される場合と同様に、それらの全体が本明細書中に参照により援用される。
【0015】
(技術分野)
本発明は、発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)等の光電子素子ならびにトランジスタ等の電子素子を含む、種々の素子のための半導体ウエハを生産するために使用される、半導体材料の基板またはバルク結晶に関する。より具体的には、本発明は、窒化ガリウム等のIII族窒化物の結晶を提供する。本発明はまた、これらの結晶を作製する種々の方法を提供する。
【背景技術】
【0016】
本書は、括弧内の数字、例えば、[x]を用いて示されるように、いくつかの刊行物および特許を参照する。以下は、これらの刊行物および特許の一覧である。
[1]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第6,656,615号)
[2]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第7,132,730号)
[3]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第7,160,388号)
[4]K. Fujito, T. Hashimoto, S. Nakamura(国際特許出願第PCT/US2005/024239号、第WO07008198号)
[5]T. Hashimoto, M. Saito, S. Nakamura(国際特許出願第PCT/US2007/008743号、第WO07117689号。また、第US20070234946号、米国出願第11/784,339号(2007年4月6日出願)も参照。)
[6]D' Evelyn(米国特許第7,078,731号)
【0017】
本書に列挙される参考文献はそれぞれ、本明細書に完全に記載される場合と同様に、特に、III族窒化物基板の作製および使用方法のその説明に関して、参照することによって全体として組み込まれる。
【0018】
窒化ガリウム(GaN)およびその関連III族窒化物合金は、LED、LD、マイクロ波電力トランジスタ、およびソーラー・ブラインド型光検出器等の種々の光電子および電子素子のための重要な材料である。現在、LEDは、ディスプレイ、インジケータ、汎用照明において広く使用されており、LDは、データ保管用ディスクドライブにおいて使用されている。しかしながら、これらの素子の大部分は、GaN基板が、これらのヘテロエピタキシャル基板と比較して、非常に高価であるため、サファイアおよび炭化ケイ素等の異種基板上にエピタキシャル成長される。III族窒化物のヘテロエピタキシャル成長は、著しく欠陥またはさらに亀裂がある膜を生じさせ、汎用電灯または高電力マイクロ波トランジスタのための高輝度LED等の高性能光学および電子素子の実現を妨害する。
【0019】
へテロエピタキシによって生じるあらゆる基本問題を解決するために、バルクIII族窒化物結晶インゴットからスライスされた結晶III族窒化物ウエハを利用することが不可欠である。素子の大部分に関して、結晶GaNウエハは、ウエハの伝導性を制御することが比較的に容易であって、GaNウエハが、素子層と最小格子/熱不整合を提供するであろうため、好ましい。しかしながら、高融点および高温における高窒素蒸気圧のため、GaN結晶インゴットを成長させることは困難である。現在、市販のGaN基板の大部分は、水素化物気相エピタキシ(HVPE)と呼ばれる方法によって生産される。HVPEは、気相法の1つであって、転位密度を10
5cm
−2未満に低減させることが困難である。
【0020】
転位密度が10
5cm
−2未満の高品質GaN基板を得るために、アモノサーマル成長、フラックス成長、高温溶液成長等の種々の成長法が、開発されている。アモノサーマル法は、III族窒化物結晶を超臨界アンモニア中で成長させる[1−6]。フラックス方法および高温溶液成長は、III族金属の溶融物を使用する。
【0021】
最近は、10
5cm
−2未満の転位密度を有する高品質GaN基板は、アモノサーマル成長によって得られることができる。アモノサーマル法は、真のバルク結晶を生産することができるため、1つまたはそれを上回る厚い結晶を成長させ、それらをスライスし、GaNウエハを生産することができる。アモノサーマル成長では、GaNのバルク結晶は、シード結晶上に成長される。しかしながら、GaNまたは他のIII族窒化物結晶は、事実上存在しないため、GaNシード結晶を他の方法を用いて加工しなければならない。
【0022】
アモノサーマルバルク成長において使用するために好適なシード結晶を迅速に成長させることは、困難である。今日の大部分の方法は、アモノサーマル成長によって形成される結晶から得られるシードに依拠する。例えば、気相エピタキシによって生産される、アモノサーマル成長において使用するために十分に厚いシードは、典型的には、特に、結晶の窒素極性面(c−面の面等)上で亀裂する。その結果、人々は、より高速の成長法においてシードを形成することによって、アモノサーマル結晶成長のためのシードを得ようとし得るが、人々は、結晶がアモノサーマルプロセスにおいてより高速に成長する方法を介してシードを生産する際、限定された成功率に直面することになる。
【0023】
本発明は、アモノサーマルバルク成長におけるシード結晶のために使用され得る、III族窒化物結晶を開示する。加えて、本発明は、アモノサーマルバルク成長におけるシード結晶のために使用され得る、III族窒化物結晶を加工する方法を開示する。また、本発明は、III族窒化物結晶をシードとして使用して、III族窒化物のバルク結晶を超臨界アンモニア中で成長させる方法を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
事例では、本発明は、第1の窒素極性c−面側と、第1の側と反対の第2の側とを有する、III族窒化物のウエハまたは他の基板を提供する。第1の側は、単結晶または高配向多結晶III族窒化物の暴露された窒素極性面を有する。第2の側は、III族窒化物の多結晶相または非結晶相のいずれかのIII族極性c−面の面を有する。III族窒化物の構造品質は、第1の側上で最高であって、第2の側に向かって徐々に劣化する。第1の側から第2の側への構造劣化は、したがって、徐々にかつ継続的であり得る。本構造を用いることで、第1の側は、結晶亀裂がなくなる。
【0025】
くつかの事例では、本明細書に開示されるようなウエハまたは結晶は、単結晶III族窒化物である、第1の窒素極性面と、配向多結晶III族窒化物、非配向多結晶III族窒化物、非結晶III族窒化物、またはこれらの混合物である、第2の面とを有する。ある他の事例では、本明細書に開示されるようなウエハまたは結晶は、配向多結晶III族窒化物である、第1の窒素極性面と、非配向多結晶III族窒化物、非結晶III族窒化物、またはこれらの混合物である、第2の面とを有する。いずれの場合も、第2の面は、ウエハまたは結晶が結果として生じるウエハまたは結晶がその第1の窒素極性面上で亀裂しないよう十分に低い応力をその中で有するように、ウエハまたは結晶の第1の面より劣る構造品質を有する。
【0026】
発明はまた、前述のIII族窒化物結晶を加工する方法を提供する。HVPE等のエピタキシャル成長法を使用することによって、III族窒化物結晶は、III族極性面が暴露された状態で、基板上に成長される。成長の間、温度および/または周囲酸素濃度等の成長条件を変化させることによって、構造品質は、徐々に、好ましくは、成長を通して継続的に劣化される。基板上に成長されたIII族窒化物結晶は、エピタキシャル成長反応器の内側での冷却に応じて、エピタキシャル成長反応器の内側での冷却後、またはエピタキシャル成長反応器の外側で、2つのウエハに分裂し得る。分裂されたウエハの一方は、窒素極性c−面を暴露させる第1の側と、III族窒化物のIII族極性c−面多結晶相または非結晶相を暴露させる第2の側とを有する。
【0027】
加えて、本発明は、前述のIII族窒化物結晶を使用して、窒化ガリウム等のIII族窒化物のバルク結晶を超臨界アンモニア中で成長させる方法を提供する。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
III族窒化物結晶であって、
(a)+/−5度未満のミスカット角度を伴う暴露された窒素極性c−面表面を有する、第1の側と、
(b)前記III族窒化物の暴露されたIII族極性c−面表面、多結晶相、または非結晶相を有する、前記第1の側と反対の第2の側と、
を備え、前記第1の側の結晶構造品質は、前記第2の側の結晶構造品質より優れている、III族窒化物結晶。
(項目2)
前記第1の側の表面は、亀裂がない、項目1に記載のIII族窒化物結晶。
(項目3)
結晶品質は、前記III族窒化物結晶の前記第1の側から前記第2の側に徐々に劣化する、項目1または項目2に記載のIII族窒化物結晶。
(項目4)
前記第1の側の酸素濃度は、前記第2の側の酸素濃度より低い、項目1から3のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目5)
前記第2の側の酸素濃度は、前記第1の側の酸素濃度より10倍以上高い、項目4に記載のIII族窒化物結晶。
(項目6)
前記第1の側からの002反射のX線ロッキングカーブの半値幅は、前記第2の側からの002反射のX線ロッキングカーブの半値幅より小さい、項目1から5のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目7)
前記第1の側からの002反射のX線ロッキングカーブのFWHMは、1000arcsec未満である、項目6に記載のIII族窒化物結晶。
(項目8)
前記第1の側からの002反射のX線ロッキングカーブのFWHMは、500arcsec未満である、項目7に記載のIII族窒化物結晶。
(項目9)
前記第2の側からの002反射のX線ロッキングカーブのFWHMは、500arcsecを上回る、項目8に記載のIII族窒化物結晶。
(項目10)
前記第2の側からの002反射のX線ロッキングカーブのFWHMは、1000arcsecを上回る、項目6−8のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目11)
前記結晶の厚さは、0.1mmを上回る、項目1から6のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目12)
前記結晶は、0.5mm厚を上回る、項目11に記載のIII族窒化物結晶。
(項目13)
前記結晶は、1mm厚を上回る、項目11に記載のIII族窒化物結晶。
(項目14)
前記第1の側は、前記第1の側がバルク結晶のアモノサーマル成長のために好適であるように十分に研磨される、項目1から13のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目15)
前記結晶は、水素化物気相エピタキシによって加工される、項目1から14のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目16)
前記第1の側から前記第2の側への結晶品質の遷移は、連続である、項目1から15のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目17)
前記III族窒化物は、GaNである、項目1から16のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目18)
前記結晶は、前記結晶全体を通して亀裂がない、項目1から17のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
(項目19)
項目1から18のいずれか1項に記載の結晶のIII族窒化物ウエハ。
(項目20)
前記ウエハは、単結晶III族窒化物ウエハである、項目19に記載のIII族窒化物ウエハ。
(項目21)
III族窒化物結晶を加工する方法であって、
(a)単結晶または高配向多結晶III族窒化物層を基板上に成長させるステップであって、前記層の暴露された表面は、III族極性c−面である、ステップと、
(b)前記結晶の暴露された表面が、III族極性c−面、多結晶相、または非結晶相になるように、徐々に劣化される結晶構造を有する単結晶または高配向多結晶III族窒化物をさらに成長させるステップと、
(c)前記基板を除去し、前記III族窒化物の第1の窒素極性c−面表面および第2のIII族極性c−面表面、多結晶相、または非結晶相を有する結晶を得るステップと、を含む、方法。
(項目22)
ステップ(a)および(b)は、水素化物気相エピタキシを用いて実施される、項目21に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目23)
前記基板は、異種基板である、項目21または22に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目24)
前記ステップ(c)は、冷却に応じて、またはその後、前記基板の自己分離を含む、項目21から23のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目25)
前記ステップ(c)は、前記基板の研削を含む、項目21から23のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目26)
前記ステップ(c)は、前記基板のレーザリフトオフを含む、項目21から23のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目27)
前記ステップ(b)は、ステップ(a)のものより低い温度で実施される、項目21から26のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目28)
前記ステップ(b)における温度は、成長の間、徐々に低下される、項目27に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目29)
前記ステップ(b)における温度は、成長の間、線形に低下される、項目28に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目30)
前記ステップ(b)は、ステップ(a)のものより高い酸素濃度で実施される、項目21から29のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目31)
前記ステップ(b)における酸素濃度は、成長の間、徐々に増加される、項目30に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目32)
前記酸素濃度は、線形に増加される、項目31に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目33)
(a)前記第2の表面を研削するステップと、
(b)前記第1の表面を研削するステップと、
(c)前記第1の表面をラップ仕上げするステップと、
をさらに含む、項目21から32のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目34)
前記III族窒化物は、GaNである、項目21から33のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を加工する方法。
(項目35)
項目21から34のいずれかに記載の方法によって形成される、III族窒化物結晶。
(項目36)
項目1から19および35のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶をシード結晶として前記超臨界アンモニア中で使用して、III族窒化物のバルク結晶を超臨界アンモニア中で加工する方法。
(項目37)
前記III族窒化物は、GaNである、項目21から34および36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
窒化ガリウムのバルク結晶を高圧反応器内で加工する方法であって、
(a)少なくとも1つの窒化ガリウムシード結晶を前記高圧反応器内に設置するステップと、
(b)少なくとも1つの種類の鉱化剤を前記高圧反応器内に設置するステップと、
(c)少なくとも1つの流量制限プレートを前記高圧反応器内に設置するステップと、
(d)ガリウム含有栄養剤を前記高圧反応器内に設置するステップと、
(e)アンモニアを前記高圧反応器内に設置するステップと、
(f)前記高圧反応器を密閉するステップと、
(g)前記高圧反応器を前記シード結晶のための領域と前記栄養剤のための領域との間に適切な温度差を伴って加熱するステップと、
を含み、前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面の結晶構造品質は、前記シード結晶のガリウム極性表面の結晶構造品質より優れている、方法。
(項目39)
前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面は、亀裂がない、項目38に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目40)
前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面の酸素濃度は、前記ガリウム極性表面の酸素濃度未満である、項目38または項目39に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目41)
前記ガリウム極性表面の酸素濃度は、反対側の酸素濃度より10倍以上高い、項目40に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目42)
前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面からの002反射のX線ロッキングカーブの半値幅は、前記反対側からの002反射のX線ロッキングカーブの半値幅より小さい、項目38または39に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目43)
前記窒化ガリウムシード結晶の厚さは、0.1mmを上回る、項目38から42のいずれか1項に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目44)
前記窒化ガリウムシード結晶の厚さは、少なくとも0.5mmである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面は、バルク結晶のアモノサーマル成長のために好適な表面を得るために研磨される、項目38から43のいずれか1項に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目46)
前記窒化ガリウムシード結晶は、水素化物気相エピタキシによって加工される、項目38から45のいずれか1項に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
(項目47)
前記窒化ガリウムシード結晶の窒素極性表面から反対側への結晶品質の遷移は、徐々にである、項目38から46のいずれか1項に記載の窒化ガリウムのバルク結晶を加工する方法。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで、類似参照番号が全体を通して対応する部品を表す図面を参照する。
【0029】
【
図1】
図1は、III族窒化物結晶の概略図である。
【0030】
図中、各番号は、以下を表す。
1.III族窒化物結晶
1A.窒素極性c−面表面を暴露させる結晶の第1の側
1B.第1の側と反対の第2の側
【0031】
【
図2】
図2は、III族窒化物結晶の加工中のステップA−Eにおいて描写されるIII族窒化物および基板の概略図である。
【0032】
図中、各番号は、以下を表す。
2.基板
3.基板上に成長されるIII族窒化物
4.構造品質が成長方向に沿って徐々にかつ継続的に劣化するように、変化する成長パラメータに伴って成長されるIII族窒化物
5.冷却に応じて、またはその後、生じ得る分離の場所
6.基板を含有する、分裂されたウエハの一方
7.III族窒化物ウエハ6が基板から分離した後、基板2上に残っているIII族窒化物層
【発明を実施するための形態】
【0033】
(概要)
発明のIII族窒化物結晶は、典型的には、アモノサーマルバルク成長のためのシード結晶として使用される。III族窒化物は、典型的には、GaNであるが、Ga
xAl
yIn
1−x−yN(0≦x≦l、0≦x+y≦l)として表されるIII族窒化物の任意の固溶体であることができる。III族窒化物結晶は、c−面の窒素極性表面を暴露させる第1の側と、III族窒化物のc−面、多結晶相、または非結晶相のいずれかのIII族極性(例えば、GaNの場合、Ga極性)表面を暴露させる第2の側とを有する。III族窒化物結晶は、高構造品質の窒素極性の第1の面と、より劣る構造品質の第2の面とを有する。本構造を用いることで、結晶の第1の側上に暴露された亀裂を排除することができる。
【0034】
第1の側の構造品質は、第2の側のものより高い。「構造品質」とは、バルク結晶内の原子配列の完璧性(バルク結晶の面を横断する結晶格子の単位胞の全体的均一性であって、面は、バルク結晶が成長される基板の表面と平行である)を意味し、これは、X線ロッキングカーブまたは他の分析方法を用いて評価されることができる。X線ロッキングカーブを用いて評価される場合、002反射のロッキングカーブのFWHMは、第2の側より第1の側に対してより小さい。本明細書に説明されるIII族窒化物結晶の特性は、アモノサーマルバルク成長におけるシード結晶としての使用のために好適であり得る。
【0035】
前述のIII族窒化物結晶を加工するために、HVPE等のエピタキシャル成長法を使用することができる。金属有機化学蒸着(MOCVD)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)、フラックス方法、高圧溶液成長、スパッタリングのような他の方法もまた、方法が、サファイア、炭化ケイ素、シリコンおよびガリウムヒ素等の異種基板と互換性がある限り、使用されることができる。
【0036】
構造品質は、より多くのIII族窒化物が基板上に堆積されるにつれて成長条件を変化させることによって、成長方向に沿って劣化される。成長条件は、III族窒化物が、基板の表面と平行な面において高品質を有するが、基板からより離れた面ではより劣る品質を有するように、構造品質を徐々に劣化させるように変化される(すなわち、単位胞は、例えば、XRD結果によって示されるように、成長が進むにつれて、新しい成長においてあまり均一または完璧ではなくなる)。構造品質は、高品質面から基板からより離れた面へと継続的に劣化されてもよい。変化は、例えば、線形、指数関数、または他の連続関数であってもよい。構造品質は、代替として、段階的に、好ましくは、小量ずつ、漸次的に変化されてもよい。III族窒化物の十分な量が、ウエハを使用した後続アモノサーマル成長において使用され得る、III族窒化物のウエハを形成するために基板上に堆積される。品質は、基板(分離されたウエハの第1の面が来るであろう)からの分離点またはその近傍では高品質III族窒化物であるが、第2の面においてウエハのバルクIII族窒化物が低応力を有するように十分に低品質を提供するような率で劣化される。低応力量は、ウエハが、ウエハが成長された基板から分離されるとき、第1の窒素極性面が亀裂することを防止するが、依然として、高品質III族窒化物をその第1の窒素極性面上に成長させるアモノサーマル法において使用するために好適なウエハを提供する。得られたIII族窒化物結晶は、したがって、高構造品質の窒素極性の第1の面と、結晶成長の間、結晶成長条件を一定に維持する、または条件を調節し、新しい成長の構造品質を改良することによって、形成される比較結晶より低い応力を伴う、より劣る構造品質の第2の面とを有するものとなる。得られた結晶はまた、その第1の窒素極性面上でのIII族窒化物の後続アモノサーマル成長におけるシードとして使用するために十分に厚い。成長温度および/または周囲ガス中の酸素等の不純物の濃度は、成長の間、変化され、結晶品質を劣化させることができる。例えば、成長温度は、III族窒化物成長の間、低下され、III族極性面の結晶品質を低減させることができる。代替として、または加えて、成長の間、周囲中の酸素濃度は、増加され、III族極性面の結晶品質を低減させてもよい。成長条件は、継続的に変化され、基板から遠くなるほど結晶品質を劣化させることができる。変化は、例えば、温度を線形に低下させる、または周囲中の酸素濃度を線形に増加させること等によって、線形、指数関数、または他の連続関数であってもよい。成長条件における変化は、代替として、段階的に、好ましくは、小量ずつ、漸次的に変化されてもよい。結果として生じるIII族窒化物基板は、したがって、基板の窒素極性面上では良好な結晶品質を、III族窒化物中ではより低い応力を、III族極性面ではより劣った結晶品質を有することができる。
【0037】
異種基板上での成長が終了した後、冷却に応じて、またはその後、基板上で成長されたIII族窒化物結晶は、時として、可能性として、段階的構造、基板とIII族窒化物との間の熱膨張差、および/または基板とIII族窒化物との間の格子定数差に起因して、2つの断片に分裂し得る(自己分離と呼ぶ)。自己分離は、多くの場合、III族窒化物層7が基板2上でIII族窒化物層3より厚くなるように、異種基板が結晶またはウエハを作製するために使用されるとき、
図2のIII族窒化物層7上に堆積された新しいIII族窒化物中で生じる。本事例における層7は、基板2上に元々堆積されたIII族窒化物層3と、層3上に成長された新しいIII族窒化物の一部とを含み得る。自己分離が生じない場合、研削またはレーザリフトオフ等の従来の除去方法を使用して、基板を除去することができる。
【0038】
前述のIII族結晶は、アモノサーマルバルクGaN成長のためのシードとして好適である。米国特許出願第61/058,910号(現米国特許第8,236,237号)に開示されるもの等のアモノサーマル法を使用することによって、III族窒化物のバルク結晶は、III族結晶上に成長されてもよい。第1の側上の亀裂のない表面およびより高い構造品質に起因して、そのようなシード上に成長されるバルク結晶は、良好な結晶品質を示す。
(本発明の技術的説明)
【0039】
本発明におけるIII族窒化物結晶の概略は、
図1に提示される。III族窒化物結晶は、+/−5度の未満のミスカット角度を伴う、III族窒化物の窒素極性c−面を暴露させる第1の側(1A)を有する。結晶は、III族窒化物のIII族極性c−面、多結晶相、または非結晶相のいずれかを暴露させる、第1の側と反対の第2の側(IB)も有する。
【0040】
第1の側は、単結晶または高配向多結晶III族窒化物であって、第2の側は、単結晶、多結晶、または非結晶III族窒化物である。第1の側上の構造品質は、第2の側上のものより高い。ここでは、構造品質とは、結晶中の原子配列の完璧性を意味し、典型的には、X線回折または他の分析方法を用いて特性評価される。X線回折の場合、002反射からのX線ロッキングカーブのFWHMは、両側から記録される。第1の側からのFWHMは、第2の側からのものより小さい。第1の側からのFWHMは、典型的には、1000arcsecより小さい、好ましくは、500arcsec未満、より好ましくは、200arcsec未満である。第2の側からのFWHMは、典型的には、500arcsecを上回る、好ましくは、1000arcsecである。第2の表面が、多結晶相または非結晶相のいずれかである場合、X線中の002ピークを検出することができない。これは、構造品質が劣っていることを意味する。他の分析方法が使用される場合でも、第1の側上の結晶品質は、第2の側上のものより高いことを示す。第1の側から第2の側への構造品質における変化は、好ましくは、徐々にであって、また、漸次的または継続的であってもよい。
【0041】
c−軸方向に沿った非均一構造品質は、第1の側真下の低品質結晶が結晶中の残留応力を低減させる緩衝材として作用するため、第1の側上の亀裂を排除することに役立つ。
【0042】
III族窒化物結晶の厚さは、典型的には、その形状を維持するために、0.1mmを上回り、好ましくは、0.3mmを上回り、より好ましくは、0.4〜1mmである。
【0043】
後述されるように、III族窒化物結晶は、HVPEのようなエピタキシャル成長法を用いて加工されることができる。MOCVD、MBE、フラックス方法、高圧溶液成長、またはスパッタリング等の他の方法も、これらの方法が、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、およびガリウムヒ素等の異種基板と互換性がある限り、使用されることができる。
【0044】
第1の側(すなわち、窒素極性c−面表面)上の高構造品質および亀裂のない特性は、バルクIII族窒化物結晶が、典型的には、本方法では、窒素極性c−面上に成長されるため、アモノサーマルバルク成長に有益である。本発明におけるIII族窒化物結晶が、アモノサーマル成長においてシード結晶として使用されるとき、第1の表面は、好ましくは、表面上の高レベルの平坦性および適切な原子配列のためにラッピングおよび研磨される。第1の側は、随意に、化学機械的研磨を用いて研磨され、原子的に平坦表面を得て、前のプロセスによって生じた表面下損傷を除去する。結晶の第2の側を別のシード(第2の側は、劣った結晶品質を伴う側が相互に面するようにともに付着される)または他のマスキング材料(銀箔、ニッケル箔、バナジウム箔、または他の金属箔等)で被覆することによって、III族窒化物の高品質バルク結晶が、III族窒化物結晶の第1の側上で得られることができる。
【0045】
前述のIII族窒化物結晶を加工するために、III族窒化物のエピタキシャル成長は、好ましくは、HVPEを用いて、基板上で実施される。基板は、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、もしくはガリウムヒ素等の異種基板、またはGaN、A1N、InN、またはその固溶体等の同質基板であってもよい。MOCVD、MBE、フラックス方法、高圧溶液成長、またはスパッタリング等の他のエピタキシャル成長法も、これらの方法が、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、およびガリウムヒ素等の異種基板と互換性がある限り、使用されることができる。
【0046】
図2は、本発明による方法におけるプロセスステップの特定のシーケンスを示す。
図2Aは、III族窒化物を成長させる前の基板2を示す。HVPE反応器等のエピタキシャル成長反応器内において、単結晶または高配向多結晶III族窒化物層3が、成長される。成長温度は、典型的には、950〜1150℃である。本ステップ後、温度等の成長条件は、徐々に低下される、および/または周囲ガス中の不純物の濃度は、徐々に増加され、構造品質を徐々に悪化させ、III族窒化物結晶層4を形成する。構造品質における徐変は、成長方向における結晶色暗化によって描写される。成長が終了後、基板上のIII族窒化物結晶は、冷却される。冷却プロセスの間またはその後、III族窒化物結晶は、水平線5に沿って亀裂し、2つのウエハに分裂する結果となり得る。一方のウエハ6は、基板を含有し、他方のウエハは、本発明におけるIII族窒化物結晶である。我々は、本分裂を自己分離と呼ぶ。
【0047】
自己分離が生じない場合、機械的研削およびレーザリフトオフ等の従来の方法を用いて基板を除去することができる。基板の除去後、本発明におけるIII族窒化物結晶を得る。
【0048】
本III族窒化物結晶は、バルクGaNのアモノサーマル成長におけるシード結晶として使用されることができる。米国特許出願第61/058,910号(現米国特許第8,236,237号)に開示されるように、例えば、シード結晶、ナトリウム金属等の鉱化剤、バッフル等の流量制限デバイス、多結晶GaN等のガリウム含有栄養剤、およびアンモニアが、高圧反応器内に装填される。高圧反応器の内側は、少なくとも2つの領域、すなわち、シード領域および栄養剤領域に分割される。アンモノ塩基性条件(すなわち、鉱化剤等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を使用する)場合、シード領域は、栄養剤領域の下方に位置する。バッフルは、これらの2つの領域を分離する。高圧反応器は、適切な温度差がもたらされ、III族窒化物を成長させるように、加熱される。
【0049】
GaNのアンモノ塩基性成長の場合、バルクGaN結晶は、典型的には、ガリウム面上より優れた品質を窒素面上に示す。したがって、本発明におけるIII族窒化物結晶は、アモノサーマル成長に有益である。結晶のIII族極性側を被覆することによって、窒素極性側上に高品質GaN結晶を選択的に成長させることができる。III族極性面をマスキングする、いくつかの方法がある。1つの方法は、2つのシードをともにIII族極性側上で付着させ、窒素極性表面を両側上で暴露させる、1つのハイブリッドシードを作製することである。他の方法は、窒素極性面を上にした状態で、シード結晶をバナジウム、ニッケル、銀、およびニッケル−クロム合金等の金属プレート上に搭載することである。アモノサーマル成長後、バルクGaN結晶が、III族窒化物結晶の窒素側上で得られる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)(成長番号0858)
GaN結晶が、HVPEによって成長された。MOCVDによって成長されたGaN層を有する、2インチc−面サファイア基板が、HVPE反応器内に装填された。アンモニアおよび窒素の一定流下で基板温度を約1000℃まで漸増させた後、塩化ガリウムガスが、導入され、単結晶GaNを成長させた。3時間の成長後、成長温度は、13時間にわたって徐々に低下された。温度は、13時間にわたって100℃ずつ線形に低下され、13時間あたり100℃の温度低下率をもたらした。合計16時間(一定温度の3時間および段階的温度の13時間)の成長後、塩化ガリウムの供給が、停止され、炉が、オフにされた。約800℃において、アンモニア供給が、停止された。GaN結晶は、温度が約300℃に到達するまで、反応器内で冷却された。結晶が反応器から取り出されると、GaN結晶は、基板部分から自己分離された。
【0051】
基板部分は、GaNの層を有するため、自己分離は、GaN結晶の内側のある場所で生じた。c−面サファイアの厚さは、0.45mmであって、サファイアを含有する部分の厚さは、0.89mmであって、基板から分離されたGaN結晶の厚さは、1.78mmであった。GaN結晶の第1の側は、クリアな色を示した一方、GaN結晶の第2の側は、灰色がかった/黒色がかった色を示した。クリアなGaN結晶は、約10
17cm
−3未満の酸素を含有する一方、灰色がかった/黒色がかったGaNは、約10
19cm
−3を上回る酸素を含有する。X線測定は、第1の側(窒素極性側)からの002ピークを示したが、第2の側からのピークを示さなかった。これは、第2の側表面が、多結晶または非結晶GaNのいずれかで被覆されていることを意味する。第1の側は、亀裂がなかった。X線ロッキングカーブを用いて測定されるミスカット角度は、+/−5度以内であった。
(実施例2)(結晶の研削/ラッピング)
【0052】
GaN結晶の両側は、ダイヤモンド研削機を用いて研削され、厚さ1.1mmを有するGaNウエハを得た。第1の側からのX線ロッキングカーブのFWHMは、1382arcsecであった一方、第2の側は、002ピークを示さなかった。次いで、GaN結晶ウエハの両側はさらに、ダイヤモンドスラリーを用いて研削およびラッピングされた。総厚は、0.85mmとなり、窒素側上のRa粗度は、0.5〜0.8nm、ガリウム側上のRa粗度は、0.8〜1.2nmであった。第1の側からのX線ロッキングカーブのFWHMは、1253arcsecまで改善した。第1の側は、いかなる亀裂も有していなかった。
(実施例3)(得られたGaN結晶を使用したアモノサーマル成長)
【0053】
実施例2において得られたGaN結晶ウエハが、アモノサーマルバルク成長のためのシード結晶として使用された。高圧反応器が、シード、ナトリウム金属、バッフル、多結晶GaN栄養剤、およびアンモニアで充填された。次いで、高圧反応器は、緊密に密閉され、約550℃まで加熱された。11日の成長後、厚さ約2.07mmを有するバルクGaN結晶が、得られた。第1の側からのX線ロッキングカーブのFWHMは、1048arcsecまで改善した。結晶はまた、亀裂を有していなかった。
(実施例4)(成長番号0895)
【0054】
実施例1と同様に、GaN結晶が、HVPEによって成長された。MOCVDによって成長されたGaN層を有する、2インチc−面サファイア基板が、HVPE反応器内に装填された。成長条件および持続時間は、実施例1と同一であったが、基板および新しい結晶は、完全に分離しなかった。サファイア基板部分を除く厚さは、2.63mmであった。第1の側上の002反射からのX線ロッキングカーブのFWHMは、約925arcsecであった一方、第2の側上のFWHMは、1580arcsecであった。この場合、Ga極性側は、低品質結晶GaN(すなわち、高配向多結晶)を暴露された第2の面上に有していた。残留サファイア基板は、ダイヤモンド研削機を用いて除去され、次いで、GaN結晶の両側もまた、研削され、0.44mm厚さのウエハを得た。
利点および改良点
【0055】
本発明のIII族窒化物結晶は、窒素極性表面上により高い構造品質を有し、亀裂がない。そのような結晶は、アモノサーマルバルク成長におけるシード結晶のために好適である。本発明におけるIII族窒化物結晶を加工する方法は、基板上でのIII族窒化物のエピタキシャル成長を使用後、基板の自己分離または除去が続く。結晶成長の間、成長条件を徐々に変化させることによって、構造品質は、徐々に悪化され、したがって、結晶の第1の側上の亀裂発生を回避する。アモノサーマルバルク成長のためのそのような結晶を使用することによって、GaN等の高品質III族窒化物のバルク結晶を得ることができる。
可能性として考えられる修正
【0056】
実施例は、GaNの結晶を説明するが、本発明の類似利点は、AlN、AlGaN、InN、InGaN、またはGaAlInN等の種々の組成物の他のIII族窒化物合金のためにも予期され得る。
【0057】
好ましい実施形態は、HVPEをエピタキシャル成長法として説明するが、MOCVD、MBE、フラックス方法、高圧溶液成長、またはスパッタリング等の他の方法も、異種基板と互換性がある限り、使用されることができる。
【0058】
好ましい実施形態は、直径2インチを有するシード結晶を説明するが、本発明の類似利点は、4インチ、6インチ、およびそれを上回る等のより大きい直径のためにも予期される。
【0059】
好ましい実施形態は、構造品質のX線特性評価を説明するが、ラザフォード後方散乱(RBS)、反射高エネルギー電子回折(RHEED)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の他の方法も、表面の構造品質を評価するために使用されることができる。
【0060】
実施例は、サファイア基板を除去するためのダイヤモンド研削を説明するが、レーザリフトオフまたは他の方法も、基板を除去するために使用されることができる。
【0061】
III族窒化物材料をその上に堆積させる異種基板を使用して、方法を開始することは必須ではない。基板から開始し、高構造品質III族窒化物を生産し、次いで、堆積条件を調節し、さらなるIII族窒化物堆積が生じるにつれて、より劣った構造品質III族窒化物を徐々に形成する条件下、III族窒化物をその基板上に直に形成し始めることもできる。さらに、異種基板を用いて開始することも必須ではない。III族窒化物基板を利用し、基板のIII族極性面上に成長させ、高品質III族窒化物を形成し、次いで、成長条件を変化させ、後続成長においてより劣った品質のIII族窒化物を徐々に形成してもよい。