(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6526897
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】高粘度経腸栄養剤の吸引アダプター
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20190527BHJP
B65B 3/12 20060101ALI20190527BHJP
A61J 15/00 20060101ALN20190527BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
B65B3/12
!A61J15/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-212140(P2018-212140)
(22)【出願日】2018年11月12日
【審査請求日】2018年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507030737
【氏名又は名称】松本 昌樹
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌樹
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−024687(JP,A)
【文献】
特開昭63−033202(JP,A)
【文献】
特開2012−183298(JP,A)
【文献】
特開2015−066070(JP,A)
【文献】
特開2012−045444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
B65B 3/12
A61J 15/00
A61M 3/00 − 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿に盛り付けられた高粘度経腸栄養剤をシリンジへ吸入するためのアダプターであって、弾性体であるお椀状の吸入パッドの中央に、シリンジの筒先が嵌合する連結口を上端に備えた吸入筒が固設されたことを特徴とする高粘度経腸栄養剤の吸引アダプター。
【請求項2】
前記吸入筒は、吸入口側が小径でシリンジ連結口側へ漸次径が大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の高粘度経腸栄養剤の吸引アダプター。
【請求項3】
前記吸入パッドは、吸入パッドを皿から引き離すための引手が外周部に固設されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高粘度経腸栄養剤の吸引アダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミキサー食など高粘度経腸栄養剤を胃瘻へ注入するため、シリンジへの吸入に使用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摂食障害のある小児に、胃瘻カテーテルを介して、栄養剤を投与することが行われており、近年は自然食をミキサーにかけた、所謂ミキサー食など、高粘度経腸栄養剤の投与も行われている(例えば、特許文献1)。また、高齢者人口が急増している近年では、認知症や脳卒中後遺症など慢性疾患患者が増えており、嚥下障害や誤嚥性肺炎などを患っている人も増えており、胃瘻カテーテルの使用が増加している。
高粘度経腸栄養剤は、短時間で栄養を投与でき、また、胃本来の機能を活用できるメリットが大きい。
【0003】
胃瘻カテーテルは、幾つかの種類があるが、一例は、
図1に示すように、体内に置かれるバルーン2と、バルーン2が奥に行かないようにする固定板3と、チューブ4と、食物などの供給口であるファネル5と、その蓋であるファネルストッパー6と、バルーン2に水を供給するためのバルブ7とから構成されている。そして、経腸栄養剤を投与する場合は、
図2に示すシリンジ10に経腸栄養剤を充填させ、胃瘻カテーテル1のファネル5に接続し、押子12でシリンジ10内の経腸栄養剤を胃瘻へ押し出すことによっている。
なお、
図2において、11は外筒、13は筒先、14はフランジ、15はシール材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-065013号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリンジ10は経腸栄養剤が低粘度である場合は、押子12を引き上げることによりスムーズに外筒11内に吸入できるが、ミキサー食などある程度以上の粘度の場合、
あるいは、皿など底の浅い容器に盛り付けた場合は、吸入時に空気が取り込まれて十分に充填されず困難である。そこで、通常は、シリンジ10の外筒11から押子12を引き抜いて、外筒11のフランジ14側からスプーンでミキサー食を何回か掬って入れている。
しかし、このようなやり方は面倒である上、フランジ14の周辺にミキサー食が付着し、これが、垂れ落ちないように毎回拭き取らねばならないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑み、
皿に盛り付けたミキサー食など高粘度経腸栄養剤を簡便に胃瘻カテーテル用シリンジへ吸入できる経済的な吸引アダプターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の高粘度経腸栄養剤の吸引アダプターは、次のように構成した。すなわち、
皿に盛り付けられた高粘度経腸栄養剤をシリンジへ吸入するためのアダプターであって、弾性体であるお椀状の吸入パッドの中央に、シリンジの筒先が嵌合する連結口を上端に備えた吸入筒が固設されたことを特徴としている。
【0008】
この吸引アダプターは、胃瘻に高粘度経腸栄養剤を投与するため、
皿に盛り付けた高粘度経腸栄養剤を胃瘻カテーテル用シリンジへ簡便に吸入するための補助具で、吸入パッドを上から高粘度経腸栄養剤へ密着させ、シリンジの押子を引き上げることにより、該高粘度経腸栄養剤を取り込むようにしたものである。
【0009】
吸入パッドは、高粘度経腸栄養剤に密着するように合成樹脂製や合成ゴム製などの弾性体であることが望ましい。また、吸入パッドの大きさは、特に限定しない。
皿の大きさや、高粘度経腸栄養剤の性状から、適宜なものを選定すればよい。また、吸入パッドは、吸入筒と一体に成形したものでもよいし、別体にして、吸入筒に固着したもの、または、適宜脱着できるようにしたものでもよい。
【0010】
吸入筒の内部は高粘度経腸栄養剤が通る空洞であり、下端に吸入口が、上端にシリンジが嵌合する連結口が設けられている。長さは特に限定しない。シリンジとの脱着のし易さを考えて決めればよい。高粘度経腸栄養剤は、請求項2に記載のように、吸入筒の吸入口側が小径でシリンジ連結口側へ漸次大きくなるように形成されたものを使用すれば、高粘度経腸栄養剤は速やかにシリンジへ流入する。
【0011】
シリンジに高粘度経腸栄養剤が充填されたときは、シリンジを吸引アダプターから取り外して、胃瘻用カテーテルのファネルへ接続すればよい。シリンジを吸引アダプターから取り外せば、吸入筒から外気が流入するので、吸入パッドを
皿から容易に離すことができる。吸入量が少ない場合など、シリンジが吸引アダプターに接続された状態のまま、
皿から引き離すことが必要な場合には、請求項3に記載のように、吸入パッドの外周部に引手が固設されたものを使用するとよい。吸入パッドは
皿に強力に吸着しているので、引手の掴む部分は、手に力が入りやすい形状にするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高粘度経腸栄養剤の吸引アダプターは、シリンジに簡便に脱着でき、空気がシリンジに流入しないので、
皿に盛り付けられた高粘度経腸栄養剤をシリンジへ確実に吸入でき、しかも、構造が簡素で動力を必要としないので、簡単に誰でも使用でき、故障することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】吸引アダプターの実施の形態を示す全体斜視図である。
【
図5】同、吸入パッドの他の実施例を示す正面図である。
【
図7】同、吸引アダプターの使用状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のシリンジへの吸引アダプターの実施の形態を、
図3および
図4に基づいて説明する。
図3は、本発明の吸引アダプター20の実施の形態を示す斜視図で、
図4は、
図3のA−A断面図である。
【0015】
吸引アダプター20は、合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)製で、先端に弾性体の吸入パッド21が固設され、その中心部に吸入筒22が固着されている。吸入筒22の中央部には連通する孔が形成されており、吸入パッド21側には吸入口22aが、他端側にはシリンジ10の筒先13が嵌入連結される連結口22bが設けられている。この連通する孔は、吸入口22aからシリンジ連結口22bへ、漸次径が大きくなるように形成されている。
【0016】
次に、このように構成された吸引アダプター20の使い方を説明する。
例えば、高粘度経腸栄養剤であるミキサー食を胃瘻へ投与する場合は、まず、ミキサーから
皿へ、ミキサー食を直接流し込むかスプーンなどで取り出す。
次に、
図7に示すように、吸引アダプター20の吸入筒22の上端である連結口22bに、シリンジ10の筒先13を挿入連結する。そして、シリンジ10の押子12を外筒11の底まで押込み、吸入パッド21を下側にして、ほぼ、垂直に持って、
皿30上のミキサー食35に対して、上面から軽く押し付ける。
この状態で、シリンジ10の押子12を引き上げると、ミキサー食35が吸引されてシリンジ10の押子12を引き上げた空間に吸入される。
【0017】
次に、シリンジ10の筒先13を吸引アダプター20の連結口22bから外し、
図1に示す胃瘻カテーテル1のファネル5にシリンジ10の筒先13を挿入連結し、押子12を押込んで、ミキサー食35を胃瘻へ送り込む。なお、シリンジ10が取り外された吸引アダプター20は、吸入筒22から外気が流入するので、
皿30から簡単に離すことができる。
引き続き、ミキサー食35を胃瘻へ送り込むには、シリンジ10をファネル5から外し、吸引アダプター20に付け替えて、上記と同じ作業を繰り返せばよい。
【0018】
次に、吸引アダプター20の別の実施の形態を
図5に基いて説明する。
図5は、吸引アダプターの種々の実施の形態を示すもので、吸引アダプター20Aは、吸引パッドの径が大きなものを示し、吸引アダプター20Bは、吸引パッドの径の小さいものを示している。また、吸引アダプター20Cは、吸入筒が長いものを示している。
どれを使用するかは、高粘度経腸栄養剤の性状や、使用する
皿30などによって、決めればよい。
【0019】
次に、請求項3に記載の実施の形態について
図6に基いて説明する。
吸引アダプター20は、シリンジ10を連結して高粘度経腸栄養剤を吸入した状態では、吸入パッド21が皿30に吸着しており、吸入パッド21を
皿30から引き離すことはできない。
図6に示す吸引アダプターは、このような場合に
皿30から引き離せるように、引手23を吸入パッド21の外周部に固設したものである。
引手23としては、
図6(a)〜(c)に示すように、種々のものが考えられる。(a)は、吸入パッド21の外周部に立設した棒状で上端に指がかかる凸状の掴み部が形成されたもの、また、(b)は、上端にリング状の持手を付設したもの、(c)は上端をフック状にしたものである。
【0020】
このような引手を備えた吸引アダプター20Hを使用すれば、例えば、シリンジ10にあるミキサー食35を所定量吸入したら、吸引アダプター20Hの引手23を引き込んで、吸引パッド21を
皿30から引き剥がし、別に用意したミキサー食あるいは、残りのミキサー食をシリンジ10に追加吸入することが容易にできる。
【符号の説明】
【0021】
1 胃瘻カテーテル
2 バルーン
3 固定板
4 チューブ
5 ファネル
6 ファネルストッパー
7 バルブ
10 シリンジ
11 外筒
12 押子
13 筒先
14 フランジ
15 シール材
20 吸引アダプター
20A,20B,20C,20H 吸引アダプター
21 吸入パッド
22 吸入筒
22a 吸入口
22b 連結口
23、23a、23b 引手
30
皿
35 ミキサー食
【要約】
【課題】
皿に盛り付けられた高粘度経腸栄養剤を空気を取り込まずに胃瘻カテーテル用シリンジへ吸入できる経済的な吸引アダプターを提供する。
【解決手段】高齢者の多い近年は、胃瘻カテーテル1で食事を採る人が増えているが、
皿30に盛り付けられたミキサー食など高粘度経腸栄養剤は、シリンジ10への吸入が空気が取り込まれて困難である。本発明の吸引アダプター20は、お椀状の吸入パッド21の中央に、シリンジ10の筒先13が嵌合する連結口22bを上端に備えた吸入筒22が固設されている。この吸入筒22は、吸入口22a側が小径でシリンジ連結口22b側へ漸次径が大きくなるように形成されている。
【選択図】
図7