(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526912
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】流体の貫流過程を測定するための、2つの側において流入可能な装置
(51)【国際特許分類】
G01F 3/10 20060101AFI20190527BHJP
G01F 15/02 20060101ALI20190527BHJP
F04C 2/10 20060101ALI20190527BHJP
F04C 2/344 20060101ALI20190527BHJP
F04C 15/06 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
G01F3/10 D
G01F15/02
F04C2/10 341E
F04C2/344 331J
F04C15/06 A
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-513588(P2018-513588)
(86)(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公表番号】特表2018-529097(P2018-529097A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】EP2016071769
(87)【国際公開番号】WO2017046209
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】A602/2015
(32)【優先日】2015年9月15日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】500461457
【氏名又は名称】アーファウエル リスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オトフリート デアシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヘリベアト カマーシュテッター
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4381415(JP,B2)
【文献】
米国特許第3273502(US,A)
【文献】
特許第6205431(JP,B2)
【文献】
英国特許出願公開第2185785(GB,A)
【文献】
特許第4183096(JP,B2)
【文献】
特公昭57−41592(JP,B2)
【文献】
特許第5562170(JP,B2)
【文献】
実開平2−43480(JP,U)
【文献】
特開2008−115773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1
G01F3
F04C2
F04C15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口(20)と、
出口(22)と、
駆動可能な容積式流量計(14)であって、該容積式流量計(14)がハウジング(10)内に配置されていて、該ハウジング(10)内に押退け室(36)が形成されていて、該押退け室(36)内に、少なくとも1つの駆動される押退け歯車(64)が回転可能に配置されており、前記押退け室(36)が第1の供給通路(32)を介して前記入口(20)に流体接続されていて、かつ第1の排出通路(48)を介して前記出口(22)に流体接続されている、容積式流量計(14)と、
該容積式流量計(14)を迂回することができる迂回管路(42)と、
該迂回管路(42)内に配置された圧力差検出器(18)と、
駆動可能な前記容積式流量計(14)を、前記圧力差検出器(18)に生じている圧力差に関連して調整することができる、評価兼制御ユニット(24)と、
を備えた、流体の貫流過程を測定するための装置において、
前記第1の供給通路(32)は、第1の入口開口(34)を介して前面側において前記押退け室(36)に開口しており、かつ前記入口(20)に流体接続された第2の供給通路(38)が、第2の入口開口(80)を介して背面側において前記押退け室(36)に開口していることを特徴とする、流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項2】
前記第1の排出通路(48)は、前面側において第1の出口開口(46)を介して前記押退け室(36)に開口しており、かつ第2の排出通路(52)が、背面側において第2の出口開口(82)を介して前記押退け室(36)に開口している、請求項1記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項3】
前記ハウジング(10)は、2部分から形成されており、第1のハウジング部分(12)内に、前記押退け室(36)が配置されており、該押退け室(36)は、第2のハウジング部分(16)によって閉鎖されていて、該第2のハウジング部分(16)内に、前面側の前記入口開口(34)および/または前記出口開口(46)が配置されており、かつ前記第2のハウジング部分(16)内に、前記圧力差検出器(18)の測定室(44)が配置されている、請求項1または2記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項4】
前記入口開口(34,80)および/または前記出口開口(46,82)は、前記押退け室(36)を画定する前記ハウジング(10)の前面側及び背面側において腎臓形に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項5】
前記容積式流量計(14)は、歯車ポンプとして形成されていて、腎臓形の前記入口開口(34,80)および/または前記出口開口(46,82)は、半径方向外側に向かって前記押退け歯車(64)の歯元にまで延びている、請求項4記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項6】
前記押退け室(36)の前面側における前記入口開口(34)および/または前記出口開口(46)は、前記押退け室(36)の背面側における前記入口開口(80)および/または前記出口開口(82)に対して鏡像的に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項7】
前記第1の供給通路(32)および前記第2の供給通路(38)および/または前記第1の排出通路(48)および第2の排出通路(52)は、前記ハウジング(10)に配置された接続通路(28,50)を介して互いに流体接続されており、かつ前記両方の供給通路(32,38)および/または前記両方の排出通路(48,52)は、前記接続通路(28,50)を介して、前記ハウジング(10)に形成された共通の前記入口(20)および/または前記出口(22)に流体接続されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項8】
前記入口開口(34,80)および/または前記出口開口(46,82)は、前記押退け室(36)に、前面側および背面側において前記押退け室(36)を画定する壁(30,68)においてフライス加工されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項9】
前記第1のハウジング部分(12)内にブシュ(62)が配置されており、該ブシュ(62)は、前記押退け室(36)を形成していて、かつ前記第1のハウジング部分(12)の相応の収容開口(58)内に挿入されている、請求項3から8までのいずれか1項記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項10】
前記ブシュ(62)は、前記押退け室(36)を背面側において画定する壁(68)を有していて、該壁(68)に、前記第2の入口開口(80)および/または前記第2の出口開口(82)が形成されている、請求項9記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項11】
前記第2の供給通路(38)および前記第2の排出通路(52)は、少なくとも部分的に、前記ブシュ(62)の、前記押退け室(36)を背面側において画定する壁(68)において、かつ前記ブシュ(62)の、半径方向において画定する外壁(72)に形成されている、請求項9または10記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【請求項12】
前記ブシュ(62)の、半径方向において画定する前記外壁(72)の半径方向外側に、溝(74)が形成されており、該溝(74)は、前記第2の供給通路(38)の一部および前記第2の排出通路(52)の一部を形成しており、前記溝(74)は、半径方向外側に向かって前記第1のハウジング部分(12)によって閉鎖されている、請求項11記載の流体の貫流過程を測定するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口と、出口と、駆動可能な容積式流量計であって、該容積式流量計がハウジング内に配置されていて、該ハウジング内に押退け室が形成されていて、該押退け室内に、少なくとも1つの駆動される押退け歯車が回転可能に配置されており、このとき押退け室が第1の供給通路を介して入口に流体接続されていて、かつ第1の排出通路を介して出口に流体接続されている、容積式流量計と、該容積式流量計を迂回することができる迂回管路と、該迂回管路内に配置された圧力差検出器と、駆動可能な容積式流量計を、圧力差検出器に生じている圧力差に関連して調整することができる、評価兼制御ユニットと、を備えた、流体の貫流過程を測定するための装置に関する。
【0002】
このような装置は、何年も前から公知であり、例えば内燃機関における噴射量測定のために使用される。
【0003】
貫流測定のためのこのような装置の本来のバージョンは、独国特許出願公告第1798080号明細書(DE-AS 1798080)に記載されている。この電子制御された貫流測定器は、入口および出口を備えた主管路を有しており、この主管路内には、歯車ポンプとして形成された回転式の容積式流量計が配置されている。主管路に対して並列に、迂回管路が延びており、この迂回管路を介して、回転式の容積式流量計は迂回可能であり、かつ迂回管路には、圧力差検出器として働くピストンが、測定室内に配置されている。貫流量を確定するために、測定室内におけるピストンの変位が、光学式センサを用いて測定される。歯車ポンプの回転数は、この信号に基づいて、評価兼制御ユニットを介して連続的に補正され、つまりピストンは可能な限り常に、その出発位置に戻され、これによって迂回管路内には単に僅かな流れだけが発生するようになっている。エンコーダを介して測定された、歯車ポンプの回転数または部分回転数と、1回転時における歯車ポンプの公知の搬送容積とから、予め設定された時間インターバル内における貫流量が計算される。
【0004】
このように構成された貫流量測定器は、独国特許発明第10331228号明細書(DE 10331228 B3)においても開示されている。正確な噴射量変化を確定するために、歯車ポンプはそれぞれの噴射の開始前にその都度、一定の回転数に調節され、これによって次いでピストンの運動が測定され、かつこの変位が噴射変化を確定するために使用される。測定室内には追加的に、圧力センサおよび温度センサが配置されており、この圧力センサおよび温度センサの測定値が、噴射量変化を計算および修正するために同様に計算ユニットに供給される。
【0005】
さらに、ピストンの変位を光学式センサではなく、磁気抵抗式センサを介して測定することが公知であり、この磁気抵抗式センサは、ピストン内に配置された永久磁石と対応する。このような貫流測定器は、オーストリア国特許発明第512619号明細書(AT 512619 B1)に記載されている。
【0006】
これらすべての貫流量測定器では、互いに噛み合っていて互いに並んで配置された2つの歯車を備えた歯車ポンプが使用され、これらの歯車は、ポンプ室内に配置されていて、このポンプ室には入口開口を介して流体が供給され、この流体は、出口開口を介してポンプ室から再び流出する。貫流測定器における使用時において必要な、搬送される量の正確な確定のためには、しかしながら、歯車の各回転に、正確な搬送される容積流を対応させることができることが必要である。入口側の領域における発生するキャビテーションおよび出口側の領域における歯の領域における局部的な圧力ピーク、ならびにこれに起因して生じる摩耗によって、したがって比較的長い運転時には、測定エラーが発生することがある。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、貫流経過を長い耐用寿命にわたって等しいまま正確に確定することができる、流体の貫流過程を測定するための装置を提供することである。特に、押退け歯車におけるキャビテーションおよびこれに起因する摩耗を減じることが望ましい。
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えた、流体の貫流過程を測定するための装置によって解決される。
【0009】
第1の供給通路が、第1の入口開口を介して前面側において押退け室に開口しており、かつ入口に流体接続された第2の供給通路が、第2の入口開口を介して背面側において押退け室に開口していることによって、入口開口とは反対側に位置している押退け歯車の領域において発生する摩耗を、大幅に低減することができる。それというのは、押退け歯車に対する著しく均一な荷重が、押退け歯車の軸方向長さにわたって得られるからである。押退け室の充填は、相応に両方の軸方向側から行われ、これによって、押退け体の等しい固定の表面において発生する圧力衝撃の数および強度が減じられる。
【0010】
好ましくは、第1の排出通路は、前面側において第1の出口開口を介して押退け室に開口しており、かつ第2の排出通路が、背面側において第2の出口開口を介して押退け室に開口している。相応に、比較的高い搬送圧に基づいて比較的高い荷重が存在する、容積式流量計の圧力側においても、キャビテーションによる押退け歯車に対する片側における荷重が阻止され、相応に、軸方向において片側における荷重による、キャビテーションによって進行する損傷が回避される。
【0011】
特に好適な実施形態では、ハウジングは、2部分から形成されており、このとき第1のハウジング部分内に、押退け室が配置されており、該押退け室は、第2のハウジング部分によって閉鎖されていて、該第2のハウジング部分内に、前面側の入口開口および/または出口開口が配置されており、かつ第2のハウジング部分内に、圧力差検出器の測定室が配置されている。ハウジング部分のこのような分離によって、組立てが簡単になり、かつ良好な接近可能性が可能になる。必要なシール平面は、最小に減じられる。それというのは、測定室と押退け室との間における接続を、第2のハウジング部分に形成された通路によって行うことができ、これによって追加的な管路が省かれるからである。
【0012】
本発明の好適な発展形態では、入口開口および/または出口開口は、押退け室を画定するハウジングの前面側及び背面側において腎臓形に形成されており、これによって、発生する圧力衝撃を大幅に減じながら、ポンプ室の均一な充填が可能になる。
【0013】
これに続く好適な実施形態では、容積式流量計は、歯車ポンプとして形成されていて、腎臓形の入口開口および/または出口開口は、半径方向外側に向かって押退け歯車の歯元にまで延びており、これによって圧力衝撃、およびこれによって発生するキャビテーションが、追加的に減じられ、かつ押退け室の充填が改善される。
【0014】
別の利点が得られる実施形態では、押退け室の前面側における入口開口および/または出口開口は、押退け室の背面側における入口開口および/または出口開口に対して鏡像的に形成されている。流入方向の変化、または第1または第2の入口開口または出口開口を介して流入または流出する流量配分の変化が、流れの供給ジオメトリまたは排出ジオメトリに対して影響を及ぼさないので、これによって前面側または背面側に対する不均一な荷重による摩耗が回避される。
【0015】
別の接続部のない特に単純な供給管路が得られる実施形態では、第1の供給通路および第2の供給通路および/または第1の排出通路および第2の排出通路は、ハウジングに配置された接続通路を介して互いに流体接続されており、かつ両方の供給通路および/または両方の排出通路は、ハウジングに形成された共通の入口および/または出口に流体接続されている。これによって外側の管路の数は、必要な最小値に制限されたままであり、これにより組立ては簡単になる。
【0016】
好ましくは、入口開口および/または出口開口は、押退け室に、前面側および背面側において押退け室を画定する壁においてフライス加工されている。これらの壁は、簡単に接近可能であるので、フライス加工による開口の安価な製造が可能である。
【0017】
本発明の特に好適な実施形態では、第1のハウジング部分内にブシュが配置されており、該ブシュは、押退け室を形成していて、かつ第1のハウジング部分の相応の収容開口内に挿入されている。このように構成されていると、必要な接続通路の製造および背面側に形成された入口開口および出口開口の製造が簡単になる。追加的に、第1のハウジング部分全体を交換する必要なしに、故障時にブシュを交換することができる。さらに、製造コストをさほど高騰させることなしに、比較的小さなブシュのために、改善された滑り特性を有する比較的高価な材料を使用することができる。また、相応の材料の使用によって強度を高めることができる。
【0018】
特に簡単な製造を可能にする実施形態では、ブシュは、押退け室を背面側において画定する壁を有していて、該壁に、第2の入口開口および/または第2の出口開口が形成されている。このように構成されていると、ブシュの相応の加工を、すべての表面への良好な到達可能性に基づいて、大幅に僅かな手間で実施することができる。
【0019】
これに続く実施形態では、第2の供給通路および第2の排出通路は、少なくとも部分的に、ブシュの、押退け室を背面側において画定する壁において、かつブシュの、半径方向において画定する外壁に形成されている。これらの通路は、壁において簡単に形成することができる孔によって製造されることができる。第1のハウジング部分における通路の形成との比較において、追加的な栓体またはこれに類した部材による閉鎖は不要である。その代わりに、これらの通路のシールを、ハウジング部分とブシュとの間に軸方向シールリングを簡単に介在させることによって行うことができ、これによって組立ては大幅に簡単になる。
【0020】
本発明の特に好適な発展形態では、ブシュの、半径方向において画定する外壁の半径方向外側に、溝が形成されており、該溝は、第2の供給通路の一部および第2の排出通路の一部を形成しており、溝は、半径方向外側に向かって第1のハウジング部分によって閉鎖されている。これらの溝は、フライス加工することができ、かつ押退け室の前面側と背面側との間における特に簡単な流体接続部を、押退け室の両側への流体の供給のために形成する。
【0021】
これによって、押退け歯車において発生する高い圧力荷重に基づいて生じるキャビテーション、およびこのキャビテーションに起因する摩耗を、大幅に低減することができる、流体の貫流過程を測定するための装置が提供される。これによって、装置の比較的長い耐用寿命が得られ、かつ特に全耐用寿命にわたって極めて正確な測定結果が得られ、その結果また長い時間にわたって、時間分解された貫流過程を高い精度で測定することができる。このとき装置は、簡単に製造可能および組立て可能であるので、耐用寿命の延長にもかかわらず、さほどの追加コストは掛からない。
【0022】
次に、本発明に係る、流体の貫流過程を測定するための装置を、図面に示された実施形態を参照しながら説明する。なお本発明は、図示の実施形態に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された本発明に係る装置の、押退け室の一方の前面を形成するハウジング部分を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示された本発明に係る装置の、押退け室を形成するもしくは収容するハウジング部分を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示されたハウジング部分を容積式流量計と共に示す斜視図である。
【0024】
図1には、時間分解された貫流過程を測定するための本発明に係る装置の外観が示されている。本発明に係る装置は、ハウジング10を有していて、このハウジング10は2部分から製造されており、このとき第1のハウジング部分12内には、容積式流量計14が配置されており、かつ第2のハウジング部分16内には、圧力差検出器18、ならびに入口20および出口22が形成されている。容積式流量計14の駆動モータおよび評価兼制御ユニット24が、フード26の内部に配置されており、このフード26は、第2のハウジング部分16と同様に第1のハウジング部分12に固定されている。
【0025】
図2には、第2のハウジング部分16が示されている。入口20を介して燃料が、供給部として働く第1の接続通路28に流入し、この接続通路28は、第2のハウジング部分16を貫いて、該ハウジング部分16の前面側を画定する壁30まで延びている。この壁30には、複数の別の通路がフライス加工されている。半径方向内側の領域内に通じる第1の通路が、第1の供給通路32として働き、第1の入口開口34に開口し、この第1の入口開口34は、腎臓形に形成されていて、容積式流量計14の、
図3および
図4において認識することができる押退け室36に通じている。接続通路28に対して軸方向で反対側に位置するように、第1のハウジング部分12には第2の供給通路38が形成されている。
図2に示されているように、迂回管路42の、圧力差検出器18の測定室44内に通じる第1部分が、接続通路28の端部からまず半径方向外側に向かって、次いで下方に向かって、次に第2のハウジング部分16内に軸方向に延びている。第2のハウジング部分16の、半径方向で反対に位置する側においては、迂回管路42の、第1部分に相当する第2部分が、測定室44内に配置されたピストンの、迂回管路42の第1部分と比較して反対の側から、測定室44を起点として出口22に向かって延びている。ピストンは、燃料のような測定流体と同じ比重を有しており、かつ測定室44のように円筒形に成形されている。したがって測定室44は、ピストンの外径にほぼ相当する内径を有している。
【0026】
押退け室36から燃料は、第1の腎臓形の出口開口46に流れることができ、この第1の出口開口46は、さらに第1の排出通路48に開口し、この第1の排出通路48は、第2のハウジング部分16を貫いて延びる第2の接続通路50を介して、出口22に流体接続されている。排出部として働くこの接続通路50もまた、第1のハウジング部分12に形成されていて接続通路50とは反対側に位置する第2の排出通路52に流体接続されている。追加的に前面側の壁30には、軸方向溝54が形成されており、この軸方向溝54は、第2のハウジング部分16に形成された通路を取り囲んでいて、かつ図示されていないシール部材を収容するために働き、このシール部材は、取付け後に第1のハウジング部分12に接触しているので、これによって両方のハウジング部分12,16の密な結合部が形成される。
【0027】
図3において、第1のハウジング部分12は、接触面56の側から見た図で示されており、この接触面56で第1のハウジング部分12は、第2のハウジング部分16の、押退け室36を前面側において画定する壁30に接触している。第1のハウジング部分12内には、収容開口58が形成されており、この収容開口58内に、容積式流量計14の駆動モータの駆動軸60が進入する。この収容開口58内にはブシュ62が挿入され、このブシュ62は、押退け室36として働き、かつ相応に、容積式流量計14の、駆動可能な押退け歯車64として働く内歯車と、外歯車66とを収容している。ほぼポット形に形成されたブシュ62は、相応に、背面側において押退け室36を画定するその壁68に、貫通孔70を有しており、この貫通孔70を通って駆動軸60は、押退け室36内に進入する。
【0028】
ブシュ62の、半径方向において画定する外壁72において、外周部には2つの溝74が形成されており、これらの溝74は、第2の供給通路38および第2の排出通路52の一部として働き、かつ前面側において接続通路28,50に、もしくは第2のハウジング部分16の供給通路32および第1の排出通路48に開口している。これらの溝74は、半径方向において収容開口58の内壁76によって閉鎖される。第2のハウジング部分16とは反対の側において、両方の溝74はそれぞれ、横孔78に開口しており、この横孔78は、ブシュ62の、背面側において画定する壁68に形成されており、かつ横孔78の、それぞれの溝74とは反対側の端部において、第2の入口開口80に、もしくは押退け室36に通じる第2の出口開口82に開口している。この第2の入口開口80は、第2の出口開口82と同様に腎臓形に形成されており、このとき第2の入口開口80は、歯車64,66の回転軸線に対して垂直な横断面に関して、前面側の第1の入口開口34に対して鏡像的に配置されていて、かつ第2の出口開口82は、第1の出口開口46に対して鏡像的に配置されている。
【0029】
図4において、ブシュ62は、駆動可能な押退け歯車として働く内歯車64と、ブシュ62内において半径方向に支持された外歯車66と共に示されている。腎臓形の第1および第2の入口開口34,80ならびに腎臓形の第1および第2の出口開口46,82は、その外周部が、ブシュ62の、半径方向において画定する外壁72に向かって、これらの開口が可能な限り正確に外歯車66の歯元84において開口するように延びている。
【0030】
貫流過程を測定する装置の運転中に、いまや、燃料が、高圧ポンプと1つまたは複数の噴射弁とを介して、入口20に達し、さらに両方の供給通路32,38に通じる、供給部として働く接続通路28を介して、かつ入口開口34,80を介して押退け室36内に流入し、これによって押退け室36は前面側からも背面側からも満たされる。駆動される押退け歯車64の回転による搬送後に、燃料は再び両方の出口開口46,82を介して押退け室36から流出し、かつ排出通路48,52を介して、排出部として働く接続通路50に戻り流れ、これによって燃料は次いで再び出口22を介して装置から流出することができる。
【0031】
容積式流量計14を用いた燃料の搬送によって、および入口20内への燃料の噴射によって、ならびにピストンの第1の側への入口の流体接続によって、および迂回管路を介したピストンの、反対側に位置する側への出口の流体接続によって、ピストンの前面側と背面側との間における圧力差を発生させることができ、この圧力差によって、ピストンはその休止位置から変位する。相応に、ピストンの変位は、存在する圧力差の尺度である。したがって測定室44には距離センサが配置されており、この距離センサは、ピストンに作用結合されていて、かつ距離センサにおいては、ピストンの変位によって、この変位の大きさに関連した電圧が生ぜしめられる。測定室44に固定されたこの距離センサは、特に磁気抵抗式センサであり、このセンサを介して、磁石の、このセンサに作用する磁界強度が、電圧に変換される。距離センサとしては、光センサを使用することも可能である。
【0032】
距離センサは、評価兼制御ユニット24に接続されており、この評価兼制御ユニット24は、この距離センサの値を検出して、相応の制御信号を駆動モータに伝達し、この駆動モータは、可能な限り、ピストンが常に確定された出発位置にあるように駆動制御される。つまり回転式の容積式流量計14は、この容積式流量計14が、噴射された流体に基づいてピストンにおいて発生する圧力差を、搬送によって常にほぼ均衡させるように駆動される。測定室44内には、さらに圧力センサおよび温度センサが配置されており、この圧力センサおよび温度センサは、この領域において発生する圧力および温度を連続的に測定し、かつさらに評価兼制御ユニット24に供給し、これによって密度の変化を計算時に考慮することができる。
【0033】
測定の順序は、次のように行われる。すなわちこの場合、評価兼制御ユニット24において算出すべき全貫流量の計算時に、ピストンの移動もしくは位置およびこれによって押し退けられる測定室44内における容積によって生じる、迂回管路42内における貫流量と、歯車ポンプ14の実際の貫流量とが、決定された時間インターバルにおいて考慮され、かつ両方の貫流量が、全貫流量を算出するために、互いに加算される。
【0034】
ピストンにおける貫流量の算出は、例えば次のように行われる。すなわちこの場合、距離センサに接続されている評価兼制御ユニットにおいて、ピストンの変位が微分され、次いでピストンの底面積と乗算され、これによって、この時間インターバルにおける迂回管路42における容積流が得られる。
【0035】
容積式流量計14を通る貫流量は、算出された制御データから確定することができ、または回転数によって計算することができ、後者の場合、回転数は直接、例えば容積式流量計14または駆動モータにおいて、例えば光学式のエンコーダまたは磁気抵抗式センサを介して測定される。
【0036】
この本発明に係る装置では、約30l/時の貫流量の場合、燃料流が幾分異なった流れ抵抗に基づいて、主として流入および搬送が前面側の領域において行われるように分配されることが確認された。しかしながらまた、この搬送量における比較的小さな圧力差に基づいて、発生するキャビテーションのリスクも比較的僅かしか発生しない。いまや、容積式流量計14の貫流量が比較的大きな噴射量に基づいて、例えば約70l/時に高められると、増大する充填および搬送が容積式流量計14の背面側を介しても発生し、このときこの背面側を介して貫流量の約40%が流れる。相応に、キャビテーションを発生させる、燃料中におけるベーパキャビティ(蒸気泡)も同様に比較的均一に、押退け歯車64の軸方向長さにわたって分配され、前面側の領域においては成長しない。これによって、発生するキャビテーションが、押退け室36にわたって比較的均一に分配され、キャビテーションを発生させる傾向も低下する。
【0037】
相応に、本発明に係る貫流過程を測定するための装置では、押退け室36内におけるおよび押退け歯車64におけるキャビテーションによって生じる損傷が大幅に低減し、これにより容積式流量計14は、大幅に長い耐久性を有する。これによって測定結果の正確性も高まる。それというのは、容積式流量計14の各回転に、運転の経過において生じる追加的な凹みに基づく極めて強い摩耗時に変化するおそれがある、容積流が対応されねばならないからである。別の利点としては、ブシュの交換可能性および自由な材料選択が挙げられる。
【0038】
明らかにすべく付言すると、本発明は記載された実施形態に制限されるものではなく、独立請求項の保護範囲内において種々様々な変更が可能である。例えば通路およびハウジング部分の配置形態は、例えばダブル歯車ポンプまたはベーンポンプとして構成されていてよい容積式流量計の構成同様に、変更することができる。またブシュの代わりに、容積式流量計は凹部内に直接配置されても、またはブシュが固有の背壁なしに形成されてもよい。特に、押退け室内への供給流の改善された分配は、既に、単に2つの供給開口が押退け室の、軸方向において画定する両方の側において、形成されることによっても達成される。