特許第6526923号(P6526923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526923
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】伝熱材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20190527BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C09K5/14 E
   C09K5/10 E
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-541422(P2018-541422)
(86)(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公表番号】特表2019-510099(P2019-510099A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】IB2017001017
(87)【国際公開番号】WO2018042241
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2018年8月8日
(31)【優先権主張番号】62/380,764
(32)【優先日】2016年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/684,536
(32)【優先日】2017年8月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518277550
【氏名又は名称】クァンタム テクノロジー グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM TECHNOLOGY GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】チャン, キ
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/087809(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0185260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化コバルト(II、III)、酸化鉄(II、III)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素およびモリブデン酸亜鉛の不溶性微粒子を含むことを特徴とする伝熱材料。
【請求項2】
酸化亜鉛、リン酸銀、炭化チタン、二酸化チタン、窒化アルミニウム、および窒化ホウ素の微粒子からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項1に記載の伝熱材料。
【請求項3】
二酸化ケイ素、リン酸銀および炭化チタンの微粒子からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項1に記載の伝熱材料。
【請求項4】
以下の重量%の量の前記微粒子を含む、請求項1に記載の伝熱材料。
前記酸化コバルト(II、III):0.3〜0.6%
前記酸化鉄(II、III):12.0〜18.5%
前記酸化ジルコニウム(IV):32.1〜49.9%
前記酸化アルミニウム:11.7〜32.4%
前記モリブデン酸亜鉛:3.3〜5.8%
前記二酸化ケイ素:4.1〜9.3%
【請求項5】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.3〜0.6%
酸化鉄(II、III):12.0〜18.5%
酸化ジルコニウム(IV):32.1〜49.9%
酸化アルミニウム:11.7〜32.4%
モリブデン酸亜鉛:3.3〜5.8%
二酸化ケイ素:4.1〜9.3%
酸化亜鉛:0.8〜1.2%
リン酸銀:3.2〜4.6%
炭化チタン:3.4〜4.7%
二酸化チタン:4.0〜5.7%
窒化アルミニウム:11.7〜15.9%
窒化ホウ素:2.5〜3.4%
【請求項6】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
炭化チタン:3.42〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
窒化アルミニウム:11.72〜15.86%
窒化ホウ素:2.52〜3.40%
【請求項7】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.3〜0.6%
酸化鉄(II、III):12.0〜18.5%
酸化ジルコニウム(IV):32.1〜49.9%
酸化アルミニウム:11.7〜32.4%
モリブデン酸亜鉛:3.3〜5.8%
二酸化ケイ素:4.1〜9.3%
リン酸銀:3.2〜4.6%
炭化チタン:3.4〜4.7%
窒化アルミニウム:11.7〜15.9%
窒化ホウ素:2.5〜3.4%
【請求項8】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
リン酸銀:3.21〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【請求項9】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【請求項10】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
【請求項11】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【請求項12】
以下の重量%の量で前記微粒子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の伝熱材料。
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛:3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
炭化チタン:3.42〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
窒化アルミニウム:11.72〜15.86%
窒化ホウ素:2.52〜3.40%
【請求項13】
リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項1ないし12のいずれか一項に記載の伝熱材料。
【請求項14】
リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を0.8〜1.2重量%の量で含む請求項1ないし12のいずれか一項に記載の伝熱材料。
【請求項15】
前記伝熱材料のpHを4.5〜5.5に調整するための十分な量で、リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項1ないし12のいずれか一項に記載の伝熱材料。
【請求項16】
前記微粒子は、1ミクロン未満の平均サイズを有する請求項1ないし15のいずれか一項に記載の伝熱材料。
【請求項17】
鉄(II、III)、酸化ジルコニウムおよび窒化アルミニウムの前記微粒子は、10〜400ナノメートルの平均サイズを有する請求項16に記載の伝熱材料。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の伝熱材料と、脱イオン水とを含むことを特徴とする伝熱媒体。
【請求項19】
密閉容器と、
前記容器内の、大気圧以下の圧力のキャビティと、
前記キャビティ内に配置された請求項12に記載の伝熱材料と、を含むことを特徴とする伝熱システム。
【請求項20】
熱エネルギーを容器の外側に伝達するために、前記容器内の請求項18に記載の伝熱媒体をエネルギーにさらす工程を含むことを特徴とする熱を伝達する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2016年8月29日に出願された米国仮特許出願第62/380,764号および2017年8月23日に出願された米国特許出願第15/684,536号の優先権を主張する。それらの開示は、参考によってここに挿入される。
【0002】
世界のエネルギー投資は、エネルギー損失を減らし、CO排出量を低減するために、クリーンエネルギーの開発と、より効率的なエネルギーシステムの開発との需要性において大きく増加している。伝熱はエネルギー変換のキーであるため、何十年もの間、多くの研究者が、より効率的な熱・物質移動だけでなく、伝熱の向上のための研究開発に多くの努力を払ってきた。1960年代に発明されたヒートパイプは、熱産業における大きな進歩の1つである。このヒートパイプ技術は、伝熱モードおよび伝熱材料を介して、現在の熱技術および熱工学に新たな課題および機会をもたらす。これは、特にナノテクノロジーによってもたらされる。
【0003】
1995年、Argonne National LaboratoryのChoiらは、新しいコンセプト、ナノ流体を提案した。このナノ流体は、塩基性液体と、ナノサイズの金属/金属酸化物粒子からなる粒子懸濁液である。また、ナノ流体は、そのナノスケール効果のために、伝熱を増大させる大きな可能性を有する。ナノ粒子の半径がホスト媒体の熱キャリヤ平均自由パスよりも小さいかまたは類似している場合、伝熱は非局所的で非線形である。したがって、粒子温度の上昇は、フーリエ伝導理論の予測よりもはるかに大きい。さらに、ナノ粒子のブラウン運動と、ナノ粒子の会合と、ナノ粒子表面と塩基性流体との間の界面における液体分子の規則的な配列とによって引き起こされるマイクロ対流は、ナノ流体の伝熱に寄与する。したがって、所望の伝熱性能を達成するために、ナノ流体を操作することに多くの努力がなされてきた。しかしながら、伝熱媒体としてのナノ流体は、高温高圧装置に適用することが困難であり、等温伝熱を達成することが困難である。これまでのレポートは、(1)国際環境基準に準拠していない大量の有害物質、(2)狭い作用温度範囲をもたらす低い融点、(3)伝熱装置の老化を引き起こし、伝熱効率を低下させる動的腐食抑制問題、(4)粒子凝集問題を解決するために、放射性有害物質を検討する試み、(5)伝熱流体の安定性(熱流体中の金属粒子は容易に酸化される)、(6)半径方向の伝熱能力が制限される、(7)高温高圧装置に適用することが困難、などのいくつかの知られた問題がある。
【0004】
従来の伝熱媒体は、Quの米国特許第6,132,823号に記載されているような成分の組み合わせを提供するための層を含む製品も含んでいた。米国特許公開第2005/0179001号は、金属イオンを含む1種以上の塩の水溶液を有する伝熱媒体を記載する。Mohaptraらの米国特許第7,919,184号は、金属層に封入された相変化材料(PCM)(例えば、ワックス)を含むハイブリッドナノ粒子で構成された伝熱材料を記載する。
【0005】
【0006】
従来の伝熱媒体は、しばしば、クロムまたはクロムを含む化合物などの環境に有害な物質も含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒートパイプは、民生用電子機器から発電プラントに至るまでの多くの用途において、冷却をもたらすための伝熱を提供するために広く使用されている。そのようなヒートパイプは、典型的には伝熱流体または伝熱媒体を含む。そのような伝熱流体/伝熱媒体の例として、水、アルコール、冷媒(例えば、フロン)、アンモニア、およびそれらの混合物が挙げられる。しかし、このような材料は、通常、広い動作温度範囲にわたって、有効な伝熱を提供しない。さらに、いくつかの伝熱媒体は、ヒートパイプに対して腐食性である。
【0008】
本発明は、従来の媒体の欠点も回避しつつ、優れた伝熱特性を提供する伝熱媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、様々な伝熱モードが可能な新しい伝熱材料に関する。本発明はさらに、伝熱媒体の使用と、その媒体を含む伝熱装置と、伝熱媒体(heat transfer medium)およびその媒体を含む装置の製造方法とに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、動的腐食抑制と、広い動作温度範囲と、非有害性と、媒体合成等のための固液分離技術とを含むいくつかの技術的なブレークスルーに基づいている。それによって、新しい伝熱媒体を提供する。この新しい媒体は、あらゆる種類の材料および成形されたキャビティを備えたデバイスで使用することができる。また、軸方向および半径方向の等温伝熱ならびに負の温度勾配を有する冷却を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明によるクァンタム(Quantum)チューブの概略図であり、伝熱媒体の試験用に準備されたチューブを示す。
【0012】
図1A図1Aは、図1の試験システムの左端の拡大図である。
【0013】
図1B図1Bは、図1の試験システムの右端の拡大図である。
【0014】
図2図2は、クァンタムチューブの伝熱特性を試験するためのシステムの概略図である。
【0015】
図3図3は、クァンタムチューブ内のQTG媒体の伝熱性能を示す。これは、等温伝熱を示している。
【0016】
図4図4は、負の温度勾配を有する冷却を示すグラフである。
【0017】
図5A図5Aは、QTG媒体で満たされた高温チューブと、脱イオン(DI)水で満たされた高温チューブとの間の伝熱性能の比較を示す。
図5B図5Bは、QTG媒体で満たされた高温チューブと、脱イオン(DI)水で満たされた高温チューブとの間の伝熱性能の比較を示す。
図5C図5Cは、QTG媒体で満たされた高温チューブと、脱イオン(DI)水で満たされた高温チューブとの間の伝熱性能の比較を示す。
図5D図5Dは、QTG媒体で満たされた高温チューブと、脱イオン(DI)水で満たされた高温チューブとの間の伝熱性能の比較を示す。
【0018】
図6図6は、本発明によるクァンタムポットの概略図である。
図7図7は、QTG媒体の電位試験の概略図である。
【0019】
図8図8は、QTG媒体と脱イオン(DI)水/NaCl溶液との間の温度の比較を示す。
【0020】
図9A図9Aは、QTG媒体とDI水/NaCl溶液との間の電位の比較を示すグラフを示す。
図9B図9Bは、QTG媒体とDI水/NaCl溶液との間の電位の比較を示すグラフを示す。
図9C図9Cは、QTG媒体とDI水/NaCl溶液との間の電位の比較を示すグラフを示す。
図9D図9Dは、QTG媒体とDI水/NaCl溶液との間の電位の比較を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般に、本発明は、改良された優れた伝熱特性を有する伝熱材料および媒体(QTG媒体)を提供し、伝熱媒体の激しいポンピングを必要とせずに、かなりの長さにわたって、様々な形状の伝熱装置の任意の2点の密接な熱的結合を可能にする。
【0022】
ユニークな技術:
1.国際的な環境基準に準拠して、非有害である。
2.−25℃から800℃以上の広い動作温度範囲で適切である。
3.動的腐食抑制と等温伝熱。
4.高い媒体安定性(媒体が固液分離技術によって合成されるため)。
5.静的熱伝導率は、1.12〜1.14W/m・K(または特に1.13W/m・K)である。これは、DI水のそれ(0.598W/m・K)の約2倍である。
【0023】
したがって、本発明は、既知の媒体と比較して、少なくとも以下の利点を提供する。
1.伝熱装置の製造コストを最小限に抑える。
2.伝熱設備の熱効率を高める。
3.エネルギー損失の低減と、CO排出量の削減。
【0024】
本発明の媒体は、優れた熱伝導率を有する新しい伝熱材料である。それは、環境にやさしい、様々な構造および性質を有する多数の無機化学物質/化合物(例えば、5〜10種の無機化学物質)で構成される。このマルチスケールパワー(出力)は、動的腐食抑制を保証するために、および、輸送プロセス(質量輸送、運動量輸送、エネルギー輸送、電気輸送および磁気輸送のような)間の強い結合を誘発するために、特別に設計されている。約1%の体積分率(volume fraction)における脱イオン水中の懸濁液は、他の全てと著しく異なる、革新的な種類の伝熱流体媒体を形成する。約5〜10%の体積分率を有する伝熱装置の閉キャビティ内に充填すると、それは、軸方向および半径方向に等温伝熱と、負の温度勾配を有する冷却を提供する。
【0025】
この媒体は、様々な電気的および磁気的性質を有する、特別に設計されたマルチスケールの無機粒子を含む。それは、金属の熱装置および非金属の熱装置の両方で動的腐食抑制を提供し、等温に熱を伝達し、負の温度勾配(negative temperature gradient)を有する冷却を伝達する。
【0026】
本発明は、伝熱媒体(QTG媒体)を含む伝熱装置を提供する。その伝熱媒体は、伝熱媒体の激しいポンピングの必要性なしに、かなりの長さにわたってさえも、様々な形状の伝熱装置の任意の2点の密接な熱的結合を可能にする。伝熱装置は、キャビティを有し、導電性材料(例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウムまたはそれらの合金または混合物)で作られた長尺部材である。本発明の伝熱媒体は、長尺部材のキャビティ内に充填される。伝熱装置内のキャビティは、部分真空状態にあり、QTG媒体はキャビティ内に封止されている。
【0027】
QTG媒体は、様々なマイクロ/ナノ粒子粉末と、付随する気体/液体(例えば、水蒸気など)との実質的に均質な混合物を含む。QTG媒体は、金属(ナノ)粒子、金属酸化物(ナノ)粒子、遷移金属(ナノ)粒子および非金属(ナノ)粒子からなる。多くの材料((非)金属材料や遷移金属酸化物など)は、種々の物理的性質(例えば、強誘電性、強磁性、超伝導性、半導体性、熱電効果、光電効果、圧電効果、磁歪効果、磁気弾性効果、誘導結合効果、超流動体性など)を発揮する。また、金属‐絶縁転移は、温度または圧力を調整することによって得られる。QTGはこれらの性質を利用し、以下の規則に従ってQTG媒体を発明する。
【0028】
1.無害:QTG媒体は、国際環境基準に準拠した、有害物質を含まない。
2.マルチスケール:異なるサイズを有する種々の粒子が相互作用する。
3.電場および磁場の効果、ならびに、粒子電荷、pH電位、伝熱の伝導率および動的腐食抑制の効果。
4.運動エネルギー、電位エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギー等の効果:高熱伝導率、高融点&沸点、および低誘電率。
5.マルチフェーズ輸送プロセス間のクロスカップリング。
6.低生産と物流コスト。
【0029】
伝熱装置の熱効率に関する主要要因
【0030】
多くの理由が、伝熱装置の熱効率に影響する。これらは、伝熱媒体と装置(ヒートパイプを含む)との不適合に起因する。これは、非凝縮性ガス、熱流体性の劣化、および装置(ヒートパイプを含む)の腐食の3つの側面で説明される。
【0031】
(1)非凝縮性ガス:伝熱媒体と装置(ヒートパイプを含む)との間の化学反応または電気化学反応は、非凝縮性ガスを生成する。装置が動作しているとき、この非凝縮性ガスは、空気流によって常に押され、凝集(濃縮)セクターに閉じ込められて、空隙を形成する。これは、有効凝集面積を減少させ、熱抵抗を増加させる。それにより、熱性能の悪化、または伝熱(heat transfer)の不具合にさえつながる。
(2)熱流体性の劣化:多くの熱流体は有機物であり、その性質は不安定(特に、高温で)である。それらは、徐々に分解し、伝熱装置(ヒートパイプを含む)と化学的に反応する。それにより、流体の性質の劣化につながっている。例えば、トルエン、アルカン、炭化水素などの例である。
(3)装置の腐食(ヒートパイプを含む):装置が動作しているとき、熱流体は、常に伝熱装置(例えば、パイプ)内を流れる。温度勾配や不純物のような要因は、装置上の腐食を引き起こす。したがって、流体の流れ抵抗は増大し、装置の熱性能は低下し、貫通腐食(corrosion perforation)による装置の故障さえも生じる。これは、アルカリ金属製の高温ヒートパイプでよく発生する。
【0032】
QTG媒体は、新しい伝熱材料であり、驚くべき性質(不揮発性、高融点および沸点、広い温度範囲、強い静電界、低い導電率、高い安定性、無害、環境に優しいなど)を発揮する。成分を加熱(冷却)するためにQTG媒体を利用する場合、わずかな温度変化であっても、等温伝熱を軸方向および半径方向に提供し、均質な温度分布をもたらす。
【0033】
本発明による伝熱材料
【0034】
本発明による伝熱材料および媒体は、実質的に均質な混合物として、微粒子として物理的に混合された、無機化合物の混合物を含む。本発明の無機化合物は、以下の化合物から選択される。
【0035】
【0036】
本発明の伝熱材料は、上記リストされた複数の化学物質を、特定の用途の使用に応じて変化し得る量で含有する。混合物は、上記の化学物質の5〜10個、または少なくとも5,6,7,8,9または10個またはそれ以上を含有する。
【0037】
これらの化合物のうち、本発明の伝熱材料は、酸化コバルト(II、III)、酸化鉄(II、III)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウムおよびモリブデン酸亜鉛の少なくとも不溶性微粒子と、リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含む。
【0038】
本発明の伝熱材料は、酸化マンガン(II、III)、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、リン酸銀、モリブデン酸銀、炭化チタン、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、二酸化チタン、ケイ素、チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および酸化クロム(III)の微粒子から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む。これらの中でも、本発明の伝熱材料は、特に、二酸化ケイ素、リン酸銀および炭化チタンの微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、または、酸化マンガン(II、III)、酸化亜鉛、モリブデン酸銀、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、ケイ素、チタンおよび酸化クロム(III)の微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の化合物さらにを含む。
【0039】
本発明の伝熱材料は、以下の重量%の量(リン酸および/または硫酸と混合する前の微粒子の総量に基づいて計算された)を含む量の範囲の粒子を含有する。
【0040】
酸化コバルト(II、III):0.3〜0.6%
酸化鉄(II、III):12.0〜18.5%
酸化ジルコニウム(IV):32.1〜49.9%
酸化アルミニウム:11.7〜32.4%
モリブデン酸亜鉛: 3.3〜5.8%
二酸化ケイ素:4.1〜9.3%
酸化亜鉛:0.8〜1.2%
リン酸銀:3.2〜4.6%
炭化チタン:3.4〜4.7%
二酸化チタン:4.0〜5.7%
窒化アルミニウム:11.7〜15.9%
窒化ホウ素:2.5〜3.4%
【0041】
本発明による伝熱材料は、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0042】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
炭化チタン:3.42〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
窒化アルミニウム:11.72〜15.86%
窒化ホウ素:2.52〜3.40%
【0043】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0044】
酸化コバルト(II、III):0.3〜0.6%
酸化鉄(II、III):12.0〜18.5%
酸化ジルコニウム(IV):32.1〜49.9%
酸化アルミニウム:11.7〜32.4%
モリブデン酸亜鉛: 3.3〜5.8%
二酸化ケイ素:4.1〜9.3%
リン酸銀:3.2〜4.6%
炭化チタン:3.4〜4.7%
窒化アルミニウム:11.7〜15.9%
窒化ホウ素:2.5〜3.4%
【0045】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0046】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
リン酸銀:3.21〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【0047】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0048】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【0049】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0050】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
【0051】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0052】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
酸化亜鉛:0.83〜1.15%
リン酸銀:3.21〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
【0053】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0054】
酸化コバルト(II、III):0.32〜0.58%
酸化鉄(II、III):12.01〜18.49%
酸化ジルコニウム(IV):32.16〜49.90%
酸化アルミニウム:11.72〜32.36%
モリブデン酸亜鉛: 3.35〜5.78%
二酸化ケイ素:4.19〜9.25%
炭化チタン:3.42〜4.62%
二酸化チタン:4.02〜5.67%
窒化アルミニウム:11.72〜15.86%
窒化ホウ素:2.52〜3.40%
【0055】
本発明による伝熱材料はまた、以下の重量%の量の微粒子を含む。
【0056】
【0057】
上記のように、微粒子に加えて、本発明の伝熱材料は、リン酸または硫酸をさらに含む。それらは、0.8〜1.2重量%、具体的には1.0重量%の量で含まれ、混合物を4.5〜5.5、または4.8〜5.2(または特に約5.0)の所望のpHに調整するために十分な量で添加される。
【0058】
本発明の伝熱材料を含む粒子は、1ミクロン未満(例えば、0.1〜1ミクロン、または0.5〜1ミクロン)の平均サイズを有する。これらのうち、鉄(II、III)、酸化ジルコニウムおよび窒化アルミニウムの粒子は、20〜400ナノメートル(例えば10〜400ナノメートルまたは0.1〜1.5ミクロン)の平均サイズを有する。
【0059】
本発明の伝熱材料は、脱イオン水と組み合わされて、伝熱媒体を形成する。その量は、一般に、110部の脱イオン水に対して約1部の伝熱材料、または一般に、0.5〜1.5:100の範囲である。
【0060】
QTG媒体を作成し、伝熱装置を充填する手順
【0061】
QTG媒体の充填プロセスは、伝熱装置の準備において重要な工程である。手順は、以下のようである。
【0062】
1.QTG媒体の粉末は、1%の体積分率で脱イオン水中に懸濁され、伝熱流体を形成する。
2.この伝熱流体は、10%の充填率で、伝熱装置の内部キャビティに充填される。
3.QTG媒体を充填した後、装置を115℃に加熱して、脱気操作を開始する。脱気操作を数回繰り返してから、温度を等温的に125℃に上昇させる。125℃に達すると、最後の脱気が行われ、装置は密閉される。
4.加熱は成熟した技術であり、工業規格である一方、脱気は既知であり、伝熱装置の製造に使用される。消費者は、デバイスの特定の形状および構造に従って、QTG媒体の充填プロセスを変更する。
5.加熱中の脱気の主な目的は、QTG媒体が固体、液体および気体の多相形態(multiphase foam)のままであることを保証することである。
【0063】
本発明による伝熱システムは、一般に、密閉容器と、容器内のキャビティとを含み、キャビティは大気圧より低い圧力であり、本発明による伝熱材料はキャビティ内に配置される。
【0064】
本発明による熱を伝達する方法は、容器内の本発明による伝熱材料をエネルギーにさらし、それによって熱エネルギーを前記容器の外部に伝達する工程を含む。
【0065】
QTG媒体の伝熱のための方法論
【0066】
ヒートパイプ試験は、熱性能を調べる最も効果的な方法である。伝熱と熱抵抗は、ヒートパイプが定常状態にあるときに計算される。例として、水冷却システムを使用した詳細な計算を以下に示す。
【0067】
1.伝熱計算
ヒートパイプの伝熱は、冷却水によって吸収される熱エネルギーによって表される。
【0068】

ここで、Qは、入熱(W)であり、
は、熱損失(W)であり、良好な断熱で無視でき、
Gは、冷却水の質量流量(kg/s)であり、
は、冷却水の熱容量(kJ/kg)であり、
outは、冷却水の出口温度(℃)であり、
inは、冷却水の入口温度(℃)である。
【0069】
2.熱抵抗の計算
ヒートパイプの全熱抵抗は次のように計算される。
ここで、Rtは全熱抵抗(℃/W)であり、Tweは蒸発セクターにおける温度の平均値(℃)であり、Twcは、凝縮セクターにおける温度の平均値(℃)である。
【実施例1】
【0070】
【実施例2】
【0071】
【実施例3】
【0072】
【実施例4】
【0073】
【実施例5】
【0074】
【実施例6】
【0075】
【実施例7】
【0076】
【実施例8】
【0077】
【実施例9】
【0078】
【実施例10】
【0079】
【実施例11】
【0080】
【実施例12】
【0081】
【実施例13】
【0082】
【実施例14】
【0083】
【0084】
本発明の伝熱媒体の評価
【0085】
ヒートパイプの伝熱性能試験は、本発明による媒体の固有の伝熱性質を実証する最も直接的かつ有効な方法である。
【0086】
材料と方法:
本発明の熱媒体を試験するために、ヒートパイプ(クァンタムチューブ)を本発明の5〜10%の伝熱媒体(ヒートパイプの内部キャビティの体積分率)で充填する。図1は、本発明によるクァンタムチューブ1の概略図である。これは、QTG媒体でチューブキャビティ容積の約10%まで充填されたヒートパイプ1である。QTG媒体は、脱気のために125℃に加熱され、続いて密封された。充填、加熱および脱気プロセスの間、QTG媒体のいくつかの粒子は、内壁にコーティングまたは吸着される。一方、他の粒子は、チューブのキャビティ内に懸濁されるか、流体中に分散され、多相状態を形成する。
【0087】
5つの熱電対T1〜T5は、クァンタムチューブに沿って配置されている。熱電対T5をカートリッジヒーター3の中心に置き、その温度を測定する。
【0088】
室温が22℃のとき、クァンタムチューブ内のカートリッジヒーター3は、オンになって、加熱を開始する。温度プローブ10は、温度の上昇を測定するために各熱電対の温度計4を接続し、等温伝熱を発揮するために瞬間的または同時の上昇を示す。T1〜T4における温度計4の温度は、同時に、ほぼ瞬間的に上昇し、全てが均質な温度状態で上昇し続ける。
【0089】
本発明の伝熱媒体は、伝熱特性を測定するために、試験によって評価される。
【0090】
実施例1‐軸方向および半径方向の等温伝熱
上述したように、図1は、試験のためにQTG媒体で満たされたクァンタムチューブ1を示す。図2は、電源11と、熱電対加熱システム12と、コンピュータデータシステム13と、循環水システム14とを示す試験システムの概略図である。
【0091】
パイプキャビティ容積の約10%の量のQTG媒体で満たされたヒートパイプは、等温伝熱を同時に発揮することができる。これは、たとえパイプキャビティ容積の85%まで充填されたとしても、脱イオン水で満たされたヒートパイプでは不可能である。
【0092】
図3は、クァンタムチューブ内のQTG媒体の伝熱性能の結果を示し、軸方向および半径方向の等温伝熱を実証している。
【0093】
実施例2‐負の温度勾配を有する冷却
試験管および熱電対を上記の実施例1に記載のように設定する。試験管を140℃以上に加熱する。氷水に浸した冷却タオルは、タオルの冷たい温度を維持するために、タオルの下を流れる氷水とともに、T6に近いパイプの端部付近に巻き付けられる。すべての部分(T1〜T6で測定されるような)でパイプの温度は低下し始め、T1の温度は、冷却タオルに近いT2〜T6のいずれかより低い温度を素早く示す。また、冷却濡れタオルがT1とT2、またはT2とT3、またはT3とT4、またはT4とT5、またはT5とT6の間のパイプの周りに巻かれると、すべての温度が低下し、T6はT5〜T1および加熱カートリッジの温度よりも高くなる。
【0094】
図4は、負の温度勾配を有する冷却を示す測定結果を示す。
【0095】
高温チューブにおけるQTG媒体の伝熱
図5は、QTG媒体で充填された高温チューブと、脱イオン(DI)水で充填された高温チューブとの間の伝熱性能の比較を示す。図5(a)は、QTG媒体で充填された高温チューブの加熱処理中の典型的な温度上昇を示す。T_hはカートリッジヒーターの温度であり、T1〜T9は高温チューブに沿った表面温度である。1500Wの電力入力が印加されると、チューブの表面温度は瞬間的に上昇し、すぐにチューブ表面は等温になる。電力入力が増加すると、チューブの表面温度は等温に上昇し、カートリッジヒーター温度と、チューブの表面温度との間の283℃の温度差で、最終的に約300℃に達する。DI水で満たされた高温チューブの典型的な伝熱性能は、比較として図5(b)に示される。安定性調査は、図5(c)および(d)において実行される。DI水チューブの等温温度は、図5(c)に示すように、稼動日によって低下するが、QTG媒体チューブの等温温度は安定したままである。図5(d)に示されるように、高温の範囲でのQTG媒体チューブの温度差は約283℃であり、DI水チューブの温度差は約317℃である。
【0096】
様々な形状の伝熱コンポーネントにおけるQTG媒体の伝熱
図6は、本発明によるクァンタムポットの概略図である。これは、QTG媒体で満たされた特殊な形状の伝熱コンポーネントである。QTG媒体は、脱気のために125℃に加熱され、続いて密封される。充填、加熱および脱気プロセス中、QTG媒体のいくつかの粒子は、内壁にコーティングまたは吸着される。一方、他の粒子は、ポットのキャビティに懸濁されるか、または流体中に分散され、多相状態を形成する。室温が22℃の場合、電熱板のスイッチをオンにすると、T1〜T6は、瞬時にまたは同時に上昇して、等温伝熱を発揮する。これは、様々な形状の伝熱コンポーネントにおけるQTG媒体の等温伝熱として知られている。
【0097】
伝熱プロセス中、QTG媒体の電位試験
図7は、QTG媒体の電位試験の概略図である。
【0098】
図8は、QTG媒体と脱イオン水(DI)/NaCl溶液との間の温度の比較を示す。QTG媒体では、T2はT1より高い。一方、DI水と0.001MのNaCl溶液では、T2はT1の296よりも低い。
【0099】
図9は、QTG媒体とDI水/NaCl溶液との間の電位の比較を示す。QTG媒体は、ガラスチューブに沿って様々な位置で電流の差を示す。上部が、高い電流値を示す。電圧の上昇は、電流の差のより明白な変化をもたらす。0.001MのNaClガスの蒸気は、このような電流差を示さない。
【0100】
静的熱伝導と抵抗の評価
本発明による媒体の熱伝導特性は、ASTM E1530−11(ガード熱流量計技術による材料の伝熱に対する抵抗を評価するための標準試験方法)による方法によって、測定される。この試験方法によって評価されると、本発明の製品は、(a)静的熱伝導率1.12〜1.14、または特に、1.13W/m・K(DI水の静的熱伝導率(0.598W/m・K)の約2倍)と、(b)7.46〜7.56、または約7.53E−3 mK/Wの熱抵抗とを示す。
【0101】
表面張力の評価
本発明による媒体の表面張力特性は、液体サンプルをベース表面に分注することによって、FTA 188ビデオ接触角アナライザーを使用して測定される(すなわち、ペンダントドロップ法)。
【0102】
72.80mN/M(72.80dyn/cm)のDI水表面張力を使用して機械を較正するこの方法に従って評価すると、本発明の製品は、約72.88〜73.27、または典型的には約73.08dyn/cm(mNm)の表面張力値を示す。
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D