【0025】
鱗片状炭素フィラーとして、平均粒子径40μmのグラファイトを用い、繊維状炭素フィラーとして、平均繊維径150nm及び平均繊維長10μmのカーボンナノファイバー(製品名:VGCF−H(昭和電工株式会社製))を用いて、エポキシ樹脂をベース樹脂とした熱伝導性樹脂組成物を用いた成形品の熱伝導率を実測した結果を
図1に示す。グラファイト(図中でGrと表示)は充填量を0〜70体積%まで変化させ、カーボンナノファイバー(図中でVGCFと表示)は2体積%に固定した。
図2には、鱗片状炭素フィラーと繊維状炭素フィラーを添加した樹脂成形品の断面構造を模式的示している。
図2(a)は層構造に平行な面の断面、
図2(b)は層構造に直交する面の断面を示し、図中符号1はベース樹脂、2は鱗片状炭素フィラー、3は繊維状炭素フィラーを示している。
図3は、本発明の熱伝導性樹脂組成物による樹脂成形品の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した画像である。
【実施例1】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1〜10及び比較例1〜11>
各実施例及び各比較例に用いる熱伝導性樹脂組成物は、以下の各成分を表1に示す混合比となるようにして後述する方法により得られたものである。
尚、樹脂、鱗片状炭素フィラー及び繊維状炭素フィラー(ナノ繊維)を熱伝導性樹脂組成物の構成成分として混合するにあたっては、樹脂をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた溶液に繊維状炭素フィラーを予め混合し、超音波にて繊維状炭素フィラーを分散させた後、鱗片状炭素フィラーを投入し遊星回転の攪拌機にて混合した。実施例10のポリプロピレン樹脂ベースについては、樹脂、鱗片状炭素フィラー及び繊維状炭素フィラー(ナノ繊維)をドライブレンドした後、二軸混練押出機で溶融混練しペレット形状とした。
【0034】
(1)樹脂
(1−1)実施例1〜9、比較例1〜11;
エポキシ樹脂:製品名:エピクロン850(DIC株式会社製)。
硬化剤:酸無水物 EPICLON B−570H(DIC株式会社製)。
樹脂と硬化剤を当量で添加した。
(1−2)実施例10;
ポリプロピレン:プライムポリプロ BJS−MU(プライムポリマー株式会社製)。
(2)鱗片状炭素フィラー
グラファイト:CB150、平均粒子径40μm(日本黒鉛株式会社製)。
(3)繊維状炭素フィラー
(3−1)ナノ繊維
CNF:平均繊維径150nm及び平均繊維長10μmのカーボンナノファイバー(製品名:VGCF−H(昭和電工株式会社製))。
(3−2)炭素繊維
炭素繊維:平均繊維径11μm及び平均繊維長6mmのピッチ系炭素繊維(製品名:ダイアリードK6371T(三菱樹脂株式会社製))。
(4)球状フィラー
球状化黒鉛:CGC−50 平均粒子径50μm(日本黒鉛株式会社製)。
【0035】
これらを用いて表1に記載の配合比で超音波による分散、遊星回転撹拌機または、二軸混練押出機による混合を行なうことにより熱伝導性樹脂組成物を作製し、それを用いて各実施例及び各比較例に記載の熱伝導性樹脂成形品を成形した。具体的には、各熱伝導性樹脂組成物を面板温度180℃で所定の圧力にてプレス成形することにより、シート状物を得た。尚、得られた該シート状物の平面方向に切り出した断面に存在する鱗片状炭素フィラーの投影面積は、グラファイトを用いた実施例及び比較例においていずれも鱗片状炭素フィラーの表面積に対して35%以上であった。
【0036】
(特性評価)
上記で得られた各実施例及び各比較例の熱伝導性樹脂成形品の熱伝導率を評価するために、シート状物を切削加工し、10.0mm×10.0mm×厚み1mmの試験片を準備した。この試験片の密度、比熱、熱拡散率及び熱伝導率をそれぞれ、下記の方法によって測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0037】
(密度)
室温(25℃)で水中置換法によって測定した。
【0038】
(比熱)
測定方法:示差走査熱量測定法(DSC:Differential scanning calorimetry)。
測定装置:入力補償型示差走査熱量測定装置(装置名:DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー))。
昇温速度:10℃/min。
試料量:10mg。
【0039】
(熱拡散率)
測定方法:レーザーフラッシュ法。
測定装置:熱物性測定装置(製品名:TC−7000(アルバック理工))。
測定方向:面内方向の熱拡散率を測定。
【0040】
(熱伝導率)
上記で得られた密度、比熱、及び熱拡散率の各値をそれぞれ、下記の式に代入することにより熱伝導率を算出した。なお、この熱伝導率の値が高いほど、放熱性に優れる。
熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m
3)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m
2/s)×1000(kJ/J)
【0041】
【表1】
【0042】
(評価結果及び考察)
表1において、例えば実施例1〜4と比較例1〜4とを対比すると、グラファイトの充填量が同じでも、高々1体積%の僅かの量のカーボンナノファイバー(CNF)を添加することによって、熱伝導性樹脂成形品の面内方向の熱伝導率が大幅に増加することがわかる。例えば、実施例3(グラファイト35体積%、VGCF0.5体積%)の熱伝導率は、31W/m・Kであるのに対し、比較例3(グラファイト35体積%)の熱伝導率は18W/m・Kである。つまり、鱗片状炭素フィラーに少量の繊維状炭素フィラーを添加することの効果は歴然である。
【0043】
この理由としては、実施例1〜4においては、鱗片状炭素フィラーと繊維状炭素フィラーを併用することによって、鱗片状炭素フィラーが作る層構造の間を繊維状炭素フィラーで熱伝導パスを効率良く形成することで熱伝導率を高めることができたのに対し、比較例2においては、鱗片状炭素フィラーによる層構造のみが形成され、層間はベース樹脂層が存在して熱伝達パスが充分に形成されず、熱伝導率を高められなかったものと考えられる。
【0044】
実施例1〜3に対比し比較例6〜9では、鱗片状炭素フィラーのグラファイトに対して形状の異なる繊維状のフィラーを配合した場合、実施例4(グラファイト50体積%、VGCF0.5体積%)の熱伝導率が53W/m・Kであるのに対し、比較例9(CF50体積%、VGCF0.5体積%)では25.4W/m・Kであり、30%も少ない充填量の鱗片状炭素フィラーを用いた実施例3(グラファイト35体積%、VGCF0.5体積%)の熱伝導性樹脂成形品の方が優れた熱伝導性を示すことが明らかとなった。
【0045】
これは、比較例9の炭素繊維(CF)が線でナノ繊維と接触するのに対し、実施例4では鱗片状炭素フィラーを用いることで、樹脂中に層を効率よく形成し、かつナノ繊維と面で接触することにより熱伝導パスを形成しやすくなることで、熱伝導率を高めることができたものと考えられる。
【0046】
また、実施例8と実施例9とを比較すると、グラファイトの充填量は20体積%と同じで、カーボンナノファイバー(CNF)の充填量が実施例8で5体積%、実施例9で15体積%と3倍に増やしているにも係わらず、熱伝導率は実施例8が25W/m・K、実施例9が28W/m・Kとあまり増加していないことが分かる。このことから、熱伝導率を高めるには、カーボンナノファイバー(CNF)の充填量を増やすよりも、グラファイトの充填量を増やした上で、カーボンナノファイバー(CNF)を少量添加することが最も効果的である。
【0047】
また、実施例3と実施例10とを比較すれば、ベース樹脂がエポキシ樹脂であってもポリプロピレン樹脂であっても、グラファイトとカーボンナノファイバー(CNF)の充填量が同じであれば、略同じ熱伝導率が得られることを示している。
【0048】
また、実施例3と比較例11とを比較すると、鱗片状のグラファイトが球状化黒鉛であった場合は充填量が同じであってもカーボンナノファイバーによる熱伝導率の増加効果が得られないことを示している。
【0049】
以上の結果から、本発明の熱伝導性樹脂成形品は、熱伝導性を示す材料として、鱗片状炭素フィラー及び繊維状炭素フィラー(ナノ繊維)を併用することにより、グラファイトのみを使用した場合あるいは炭素繊維とナノ繊維とを併用した場合と比べて、非常に高い熱伝導性を示すことが明らかとなった。
【0050】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態及び実施例の構成を適宜組み合わせることもできる。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。