(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド樹脂と(B)無機強化材を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記(A)ポリアミド樹脂が、環状構造を有するジカルボン酸及び/又は環状構造を有するジアミンを含むポリアミドの構成単位を含み、下記(a)〜(d)の条件を満たす、共重合ポリアミド及び/又はポリアミド混合物であり、下記(e)の条件を満たすポリアミド樹脂組成物である。
(a)炭素数/窒素数の比(C/N比)が7.0を超える。
(b)粘弾性測定から求められる乾燥時のガラス転移点が70(℃)以上。
(c)示差走査熱量測定により、20(℃/min)で冷却したときに得られる結晶化エンタルピー(ΔHc)が10(J/g)以上。
(d)示差走査熱量測定により、20(℃/min)で加熱冷却したときに得られる融点ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)が45(℃)以上。
(e)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.9以下。
【0013】
((A)成分:ポリアミド樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体である。
(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジアミンとジカルボン酸との縮合重合で得られるポリアミド樹脂、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、及びこれらのポリアミド樹脂を構成する2種類以上の単量体の共重合で得られる共重合物が挙げられる。
これらのポリアミド樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用したポリアミド混合物であってもよい。
【0014】
(A)ポリアミド樹脂は、炭素数/窒素数の比(C/N)比が7.0を超えるポリアミド樹脂である(上記(a))。
炭素数/窒素数の比(C/N比)が7.0を超える(A)ポリアミド樹脂とは、ポリアミド構成単位中の、炭素数と窒素数との比が7.0を超えるポリアミド樹脂である。
そのようなポリアミド(単位)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミド1010(ポリデカメチレンセバカミド)、ポリアミド1012(ポリデカメチレンドデカミド)、ポリアミド1210(ポリドデカメチレンセバカミド)、ポリアミド1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(Meはメチル基を示す。以下同様とする。))、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等のポリアミド(単位)が挙げられる。
(A)ポリアミド樹脂は、上記ポリアミドの1種のみであってもよく、2種以上を併用したポリアミド混合物であってもよく、また、前記ポリアミド単位を2種以上有する共重合ポリアミドであってもよい。
好ましくはポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド1010(ポリデカメチレンセバカミド)、ポリアミド1012(ポリデカメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)が挙げられる。
【0015】
(A)ポリアミド樹脂が、炭素数/窒素数の比(C/N)が7.0を超えることにより、低吸水性向上の効果が得られる。前記C/Nは、7.2以上であることが好ましく、7.3以上であることがより好ましい。
前記C/Nは、単量体選択により制御することがでる。
ポリアミド樹脂組成物から、前記C/Nを求めるには、
1H−NMRにより以下のように定量すればよい。
ポリアミド樹脂組成物のペレットを約5質量%の濃度になるように重ヘキサフルオロイソプロパノールで加熱して溶解し、
1H−NMR(例えば、日本電子製核磁気共鳴分析装置JNM ECA−500)の分析を行い、積分比を計算することによって、ポリアミド樹脂を構成するジアミン及びジカルボン酸の含有量を決定する。
ポリアミド樹脂において、アミド基1個あたりの炭素数の平均値(炭素数/アミド基数)を計算により求め、炭素数/窒素数の比(C/N)とする。
具体的には、分子主鎖中に含まれる炭素数を分子主鎖中に含まれるアミド基数で割り返すことにより炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を求め、炭素数/窒素数の比(C/N)とする。
【0016】
(A)ポリアミド樹脂は、環状構造を有するジカルボン酸及び/又は環状構造を有するジアミンを含むポリアミドの構成単位を含む。
環状構造を有するジカルボン酸及び/又は環状構造を有するジアミンを含むポリアミドの構成単位とは、ジカルボン酸及び/又はジアミンが環状構造を有しているポリアミドの構成単位を意味し、当該ポリアミドの構成単位としては、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の環状構造を有するジカルボン酸やジアミン等を含むポリアミド構成単位が好ましいものとして挙げられる。
そのような環状構造を有するジアミンや環状構造を有するジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
好ましくはメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
【0017】
環状構造を有するジカルボン酸及び/又は環状構造を有するジアミンを含むポリアミドの構成単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(Meはメチル基を示す。以下同様とする。))、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等が挙げられる。
これらのポリアミドの構成単位は、1種のみを用いてもよく、2種以上であってもよい。
好ましくはポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)である。
【0018】
(A)ポリアミド樹脂は、粘弾性測定から求められる乾燥時のガラス転移点が70℃以上である(上記(b))。
粘弾性測定から求められる乾燥時のガラス転移点は、以下に限定されるものではないが、例えば、GABO社製エプレクサー150Nを用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定することができ、α−分散に対応する損失弾性係数のピーク温度をガラス転移点とする。
(A)ポリアミド樹脂のガラス転移点は、吸水時物性の観点から、70℃以上であるものとし、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃以上である。
(A)ポリアミド樹脂の乾燥時のガラス転移点を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂が、(A−1)炭素数/窒素数の比(C/N比)が8.0以上の脂肪族ポリアミドの構成単位、(A−2)ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなる構成単位、(A−3)ヘキサンメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位からなるものとし、これらの構成単位の比率を、(A−1)を30〜50mоl%、(A−2)を20〜70mоl%、(A−3)を3〜25mоl%の範囲に制御する方法等が挙げられる。
【0019】
(A)ポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定により、20(℃/min)で冷却したときに得られる結晶化エンタルピー(ΔHc)は10(J/g)≧である(上記(c))。
示差走査熱量測定により、20(℃/min)で冷却したときに得られる結晶化エンタルピー(ΔHc)は、JIS−K7121に準じて、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
具体的には、以下のとおり測定することができる。
測定装置としては、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いることができる。
測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温する条件とする。続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から30℃まで冷却する。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピー(ΔHc)とする。
【0020】
(A)ポリアミド樹脂の結晶化エンタルピーは、耐熱性、低ブロッキング性、離型性の観点から、10J/g以上であるものとし、好ましくは20J/g以上であり、より好ましくは30J/g以上である。
(A)ポリアミド樹脂の結晶化エンタルピーの上限は、特に限定されないが100J/g以下である。
(A)ポリアミド樹脂の結晶化エンタルピーを前記範囲内に制御する方法としては、例えば、上記(A−1)〜(A−3)成分を用い、配合比率を上述した範囲に制御する方法等が挙げられる。
【0021】
(A)ポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定により、20(℃/min)で加熱冷却したときに得られる融点ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)が45(℃)以上である(上記(d))。
示差走査熱量測定により、20(℃/min)で加熱冷却したときに得られる融点ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)は、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCにより測定することができる。
測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温する条件とする。
続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から30℃まで冷却する。
このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度を(Tc)とする。続いて、30℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温する。このときに現れるもっとも高温側に現れる吸熱ピークを融解ピーク温度(Tm)とする。
【0022】
(A)ポリアミド樹脂は、前記融解ピーク温度(Tm)と前記結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)が45℃以上であり、47℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
(A)ポリアミド樹脂において、融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)が前記範囲内であることにより、表面外観に優れるポリアミド樹脂が得られる。
(A)ポリアミド樹脂において、融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、上記(A−1)〜(A−3)成分を用い、配合比率を上述した範囲に制御する方法等が挙げられる。
【0023】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.9以下である(上記(e))。
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、(A)ポリアミド樹脂の分子量分布の指標として用いることができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、(A)ポリアミド樹脂の強度、高温強度、及びポリアミド樹脂組成物の流動性等の観点から、2.9以下であるものとし、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.7以下である。分子量分布の下限は2.0であることが好ましい。
【0024】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を2.9以下にすることによって、後述する(B)無機強化材を含有させたポリアミド樹脂組成物は、表面外観に優れたものとなる。
ポリアミド樹脂組成物のMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂の熱溶融重合時の添加物としてリン酸や次亜リン酸ナトリウムのような公知の重縮合触媒を加える方法、並びに及び加熱条件や減圧条件のような重合条件を制御する方法等が挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の測定は、後述する実施例に記載するように、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて行うことができる。
なお、ポリアミド樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、実質的には、(A)ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)として得られる。
【0025】
前記(A)ポリアミド樹脂においては、前記(A)ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸が、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を含有することが好ましい。
具体的には(A−1)ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなる構成単位、及び/又は(A−2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位を含有することが好ましい。これにより、耐熱性向上の効果が得られる。
(A−2)ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなる構成単位とは、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)単位のことである。
(A−3)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位とは、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位のことである。
【0026】
環状構造を有するジカルボン酸及び/又は環状構造を有するジアミンを含む(A)ポリアミド樹脂は、結晶性ポリアミドであっても、非晶性ポリアミドであってもよい。
結晶性ポリアミドとしては、ポリアミド6T等が挙げられる。(A−2)成分として結晶性ポリアミドを用いることにより、耐熱性向上の効果が得られる。
非晶性ポリアミドとしては、ポリアミド6I等が挙げられる。(A−3)成分として非晶性ポリアミドを用いることにより、流動性向上の効果が得られる。
【0027】
前記(A)ポリアミド樹脂においては、前記(A−1)炭素数/窒素数の比(C/N比)が8.0以上の脂肪族ポリアミドの構成単位の含有量を20〜80mol%とすることが好ましい。
(A−1)の構成単位の含有量が20mol%以上であると、耐熱性などに優れる(A)ポリアミド樹脂が得られる。(A−1)の構成単位の含有量が80mol%以下であると成形性に優れる(A)ポリアミド樹脂が得られる。より好ましくは24〜60mol%、さらに好ましくは28〜55mol%、さらにより好ましくは30〜50mоl%であり、よりさらに好ましくは31〜50mol%である。
【0028】
前記(A−1)炭素数/窒素数の比(C/N比)が8.0以上の脂肪族ポリアミドの構成単位は、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1010(ポリデカメチレンセバカミド)、及びPA1012(ポリデカメチレンドデカミド)からなる群より選ばれる1種以上の構成単位であることが好ましい。これにより、(A)ポリアミド樹脂において、吸水量低減の効果が得られる。
【0029】
前記(A)ポリアミド樹脂においては、前記(A−2)ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなる構成単位の含有量は、0.1〜80mol%が好ましい。
(A−2)の構成単位の含有量が80mol%以下であると耐熱性に優れる(A)ポリアミド樹脂とすることができる。0.1mol以上であると耐熱性向上の効果が得られる。より好ましくは5〜75mol%、さらに好ましくは15〜70mol%、さらにより好ましくは20〜70mоl%、よりさらに好ましくは25〜65mol%である。
【0030】
前記(A)ポリアミド樹脂においては、前記(A−3)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位の含有量は、0.1〜50mol%が好ましい。
(A−3)の構成単位の含有量が50mol%以下であると流動性に優れる(A)ポリアミド樹脂とすることができる。0.1mol以上であると耐熱性向上の効果が得られる。より好ましくは1〜40mol%、さらに好ましくは2〜30mol%、さらにより好ましくは3〜25mol%である。
【0031】
(A)ポリアミド樹脂は、上述した(a)〜(d)の条件を満たすものであれば、共重合ポリアミドであっても、ポリアミド混合物であってもよい。
(A)ポリアミド樹脂が共重合ポリアミドである場合、ランダム共重合体であっても、ブロック(グラフト)共重合体であってもよい。
【0032】
ランダム共重合体の製造方法としては、以下のような製造方法が好適な例として挙げられる。
<ランダム共重合体の製造方法>
(A)ポリアミド樹脂が、ランダム共重合体である場合の、当該ポリアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の1)〜8)に示す方法を適用できる。
1)ジカルボン酸及びジアミンの水溶液又は水の懸濁液、又はジカルボン酸及びジアミン塩とラクタム及び/又はアミノカルボン酸等の他の成分との混合物(以下、これらを、「その混合物」と略称する場合がある。)の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」ともいう。);
2)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーと取り出す方法(「プレポリマー法」);
3)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(「熱溶融重合・固相重合法」);
4)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・押出重合法」);
5)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・固相重合法」);
6)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「モノマー・固相重合法」);
7)「ジカルボン酸及びジアミンの塩」又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「塩・固相重合法」);
8)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド及びジアミンを用いて重合させる方法(「溶液法」)。
上記の製造方法の中でも、生産性の観点から、熱溶融重合法が好ましい。
【0033】
ランダム共重合体の重合形態としては、特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよい。
また、重合装置についても、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。
【0034】
(A)ポリアミド樹脂の製造工程においては、ポリアミド樹脂のモノマーを重合させる際に、分子量調節のために末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
【0035】
前記末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物;モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、ポリアミド樹脂の熱安定性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミ等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
末端封止剤として使用できる酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
末端封止剤として使用できるモノイソシアネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
末端封止剤として使用できるモノ酸ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、ジフェニルメタンカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、ジフェニルスルホキシドカルボン酸、ジフェニルスルフィドカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ベンゾフェノンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸等のモノカルボン酸等のハロゲン置換モノカルボン酸が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
末端封止剤として使用できるモノエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールトリベヘネート、ソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
末端封止剤として使用できるモノアルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール(以上、直鎖状、分岐状)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、クレゾール(o−、m−、p−体)、ビフェノール(o−、m−、p−体)、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
ブロック(グラフト)共重合体の製造方法としては、以下のような製造方法が好適な例として挙げられる。
<ブロック(グラフト)共重合体の製造方法>
(A)ポリアミド樹脂がブロック(グラフト)共重合体である場合、当該ブロック(グラフト)共重合体の製造方法としては、例えば、上記(A−1)、(A−2)、及び(A−3)の構成単位を含むように、3種以上のポリアミドを適宜組み合わせてブロック共重合化すればよい。
なお、(A)ポリアミド樹脂は、2種以上のポリアミドを含む共重合ポリアミドであってもよく、異なる共重合ポリアミドが組み合わされたものであってもよい。
例えば、(A−1)成分からなるポリアミドと(A−2)成分及び(A−3)成分からなるポリアミドとのブロック(グラフト)共重合体や、(A−1)成分及び(A−2)成分からなるポリアミドと(A−3)成分とからなる共重合ポリアミドを2種以上含むブロック(グラフト)共重合体や、(A−1)成分及び(A−3)成分からなるポリアミドと、(A−2)成分とからなる共重合ポリアミドを2種以上含むブロック(グラフト)共重合体や、(A−1)成分及び(A−2)成分からなるポリアミド成分と(A−2)成分及び(A−3)成分とからなる共重合ポリアミドとを組み合わせたブロック(グラフト)共重合体が挙げられる。
【0044】
ブロック共重合化の方法としては特に限定されるものではなく、例えば、以下に記載するように種々の方法を採用できる。
例えば、原料として少なくとも2種以上のポリアミドを溶融混練する際に、亜リン酸金属塩、亜リン酸エステル化合物及び/又は分子量調整剤を配合して溶融押出することによりブロック共重合体を得る方法が挙げられる。詳しくは特許文献(特開2011−26396)に記載されている方法を採用でき、少なくとも2種以上のポリアミド成分を用いる場合は、ポリアミド−ポリアミド交換反応が促進する。
【0045】
ブロック共重合体を製造する工程においては、例えば、各種混練機(例えば、一軸または多軸混練機、ニーダー、ヘンシルミキサー、ボールミル、遊星ミル、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等)を用いることができる。
上記の中でも、工業的コストの観点から、溶融混練法が好ましい。
溶融混練においては、単軸押出機や二軸押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましい。
【0046】
<ポリアミド混合物の製造方法>
(A)ポリアミド樹脂が、ポリアミド混合物である場合、当該ポリアミド混合物の製造方法としては、以下のような製造方法が挙げられる。
ポリアミド混合物は、前記(A−1)の構成単位、前記(A−2)の構成単位及び前記(A−3)の構成単位を含むように、3種以上のポリアミドを適宜組み合わせて混合することにより得られる。
例えば、(A−1)成分からなるポリアミドと(A−2)成分及び(A−3)成分からなるポリアミドとの混合物や、(A−1)成分及び(A−2)成分からなるポリアミドと(A−3)成分とからなる共重合ポリアミドを2種以上含む混合物や、(A−1)成分及び(A−3)成分からなるポリアミドと、(A−2)成分とからなる共重合ポリアミドを2種以上含む混合物や、(A−1)成分及び(A−2)成分からなるポリアミド成分と(A−2)成分及び(A−3)成分とからなる共重合ポリアミドとを組み合わせた共重合体を、適宜組み合わせることができる。
混合の方法としては特に限定されるものではなく、例えば、以下に記載するように種々の方法を採用できる。
【0047】
(A)ポリアミド樹脂がポリアミド混合物である場合、当該ポリアミド混合物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、原料として少なくとも2種以上のポリアミド(共重合ポリアミドである場合を含む)を溶融混練する方法が挙げられる。
例えば各種混練機(例えば、一軸または多軸混練機、ニーダー、ヘンシルミキサー、ボールミル、遊星ミル、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等)を用いることができる。
上記の中でも、工業的コストの観点から、溶融混練法が好ましい。溶融混練においては、単軸押出機や二軸押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましい。
【0048】
((B)成分:無機強化材)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(B)無機強化材(以下、強化材、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)を含有する。
(B)無機強化材とは、材料の強度及び/又は剛性を向上させるものであれば、よく、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイトが挙げられる。
これらの中でも、強度及び剛性を増大させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイトが好ましい。
また、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素が挙げられる。
上記した(B)無機強化材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつポリアミド樹脂組成物中において、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものが好ましい。
【0050】
また、前記ウォラストナイトのうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつポリアミド樹脂組成物中において、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比が3〜100であるものが好ましい。
【0051】
また、前記タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものが好ましい。
【0052】
ここで、前記数平均繊維径及び重量平均繊維長に関しては、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の(B)無機強化材を任意に選択し、SEMで観察して、これらの(B)無機強化材の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定することができ、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求めることができる。
【0053】
前記(B)無機強化材は、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。シランカップリング剤としては、特に、アミノシラン類が好ましい。
【0054】
また、前記ガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤を含んでいてもよい。
集束剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。
これらの集束剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
【0055】
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、特に無水マレイン酸が好ましい。
一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいい、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。これらの中でも、特にスチレンやブタジエンが好ましい。
【0056】
これらの集束剤としての材料組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上がより好ましい。
【0057】
また、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜1,000,000である。前記重量平均分子量は、GPCにより測定することができる。
【0058】
前記エポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0059】
前記ポリカルボジイミド化合物は、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物を縮合することにより得られる。
【0060】
ポリカルボジイミド化合物の縮合度は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。ポリカルボジイミド化合物の縮合度が1〜20の範囲内にある場合、良好な集束剤の水溶液又は水分散液が得られる。さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、一層良好な水溶液又は水分散液が得られる。
【0061】
また、前記ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
ポリオールセグメントを持つことにより、ポリカルボジイミド化合物が水溶化し易くなり、ガラス繊維や炭素繊維の集束剤として一層好適に使用可能となる。
【0062】
これらポリカルボジイミド化合物は、ジイソシアネート化合物を3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることによって得られる。
ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにそれらの混合物を用いることが可能である。
ジイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。そして、これらのジイソシアネート系化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物が得られる。これらのうち、反応性向上の観点からジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好適に使用可能である。
【0063】
前記末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物に対し、さらにモノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法等によって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物が得られる。
前記モノイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートやシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルやポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0064】
前記ポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0065】
前記アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0066】
前記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する、前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。なお、前記その他の共重合性モノマーは、上記モノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0067】
アクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーのいずれも含む。)は、塩の形態であってもよい。
アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、第1級、第2級、及び第3級のアミン塩が挙げられる。アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩が挙げられる。
中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0068】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、ポリアミド樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
【0069】
集束剤を含むガラス繊維や炭素繊維は、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に上述した集束剤を付与して繊維ストランドを製造し、これを乾燥し、連続的に反応させることにより得られる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのままガラス繊維や炭素繊維として使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドストランドとして使用してもよい。
かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0070】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と、(B)無機強化材を含有する。本実施形態のポリアミド樹脂組成物における(B)無機強化材の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)無機強化材10〜250質量部であることが好ましい。
(B)無機強化材の含有量を10質量部以上とすることにより、強度の向上効果が一層十分に得られる。また、250質量部以下とすることにより、押出工程で良好な製造性が得られる。
(A)ポリアミド樹脂及び(B)無機強化材を溶融混練する場合、一般的に、(A)ポリアミド樹脂と(B)無機強化材がせん断により発熱し樹脂温度が上昇する傾向にある。(B)無機強化材の含有量が多いほどせん断による発熱量は増加し樹脂温度もさらに上昇する傾向にある。前記(A−2)の構成単位を含有するポリアミド樹脂は、樹脂温度の上昇に伴いゲル化が進行する傾向にある。ゲル化により溶融粘度が上昇し、成形時の流動性が低下するため表面外観が悪くなる傾向にある。しかしながら、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂が上述した(a)〜(d)の条件を満たし、かつ上述した(e)の条件を満たしているため、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)無機強化材を250質量部含んだ場合でも、溶融混練時の樹脂温度上昇によるゲル化を抑制し、表面外観が良好な成形品を得ることができる点に特徴を有している。
(B)無機強化材の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、より好ましくは20〜150質量部であり、さらに好ましくは25〜100質量部であり、さらにより好ましくは30〜60質量部である。
【0071】
((C)成分:熱安定剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(C)熱安定剤(以下、熱安定剤、(C)成分、(C)と記載する場合がある。)を、さらに含有することができる。
【0072】
(C)熱安定剤とは、材料の熱劣化抑制、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上させるものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸銅やヨウ化銅等の銅化合物の銅系安定剤、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
また、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル等の前記酸化防止剤、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤も挙げられる。
【0073】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(C)熱安定剤を添加する場合の、当該(C)熱安定剤の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して(C)熱安定剤0.005〜10質量部であることが好ましい。
(C)熱安定剤の含有量を0.005質量部以上とすることにより、熱安定性の向上効果が十分に得られる。また、10質量部以下とすることにより、押出工程で良好な製造性が得られる。
【0074】
((D)成分:成形性改良剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(D)成形性改良剤(以下、成形性改良剤、(D)成分、(D)と記載する場合がある。)をさらに含有してもよい。
【0075】
前記(D)成形性改良剤(滑剤、可塑剤とも言われる)としては、成形時の可塑化性や離型性を向上させるものであれば、以下に限定されるものではないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ワックス等が挙げられる。
【0076】
前記高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8〜40の飽和または不飽和の、直鎖または分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、ステアリン酸、モンタン酸が好ましい。
【0077】
前記高級脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩を構成する金属元素としては、元素周期律表の第1、第2、第3族元素、亜鉛、およびアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等がより好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、モンタン酸の金属塩、及びステアリン酸の金属塩が好ましい。
【0078】
前記高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と、炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
ここで、高級脂肪酸としては、上述したものを使用できる。
脂肪族アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0079】
前記高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミドがより好ましい。
【0080】
前記ワックスとしては、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコーン系ワックス等が挙げられる。
【0081】
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド及びワックスは、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における、(D)成形性改良剤を添加する場合の当該(D)成形性改良剤の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して(D)成形性改良剤0.005〜3質量部であることが好ましい。
(D)成形性改良剤の含有量を0.005質量部以上とすることにより、可塑化性や離型性などの向上効果が十分に得られる。また、3質量部以下とすることにより、押出工程で良好な製造性が得られる。
【0083】
((E)成分:難燃剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、(E)難燃剤(以下、難燃剤、(E)成分、(E)と記載する場合がある。)をさらに含んでいてもよい。
【0084】
前記(E)難燃剤としては、難燃性を向上させるものであれば、以下に限定されるものではないが、非ハロゲン系難燃剤やハロゲン系が挙げられる。
【0085】
前記(E)難燃剤としては、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、非ハロゲン系難燃剤、臭素系難燃剤が好ましい。
【0086】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、赤リン、リン酸アンモニウム、あるいはポリリン酸アンモニウム等のリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の金属水酸化物あるいは無機金属化合物の水和物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸化合物等の無機化合物系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン(300℃以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂等のトリアジン系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリカ等のシリコーン系難燃剤等が挙げられる。
【0087】
前記臭素系難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体及び臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤が挙げられる。三酸化アンチモン等の難燃助剤も併用できる。
【0088】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における、(E)難燃剤を添加する場合の当該(E)難燃剤の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して(E)難燃剤1〜30質量部であることが好ましい。
(E)難燃剤の含有量を1質量部以上とすることにより、難燃性の向上効果が十分に得られる。また、30質量部以下とすることにより、押出工程で良好な製造性が得られ、機械物性の大きな低下も抑制できる。
【0089】
(ポリアミド樹脂組成物に含まれうるその他の成分)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じ、本実施形態の目的を損なわない範囲で、上述した(A)〜(E)成分以外のその他の成分を含有することができる。
当該その他の成分としては、他のポリマーや(A)ポリアミド樹脂に用いられる通常の添加剤、例えば、着色剤、結晶核剤等が挙げられる。
【0090】
前記他のポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、(変性)ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0091】
前記着色剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等が挙げられる。
【0092】
前記結晶核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、窒化ホウ素やタルクなどが挙げられる。
【0093】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、(A)ポリアミド樹脂と、(B)無機強化材を混合する方法であれば、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適用できる。
好ましくは、(A−1)炭素数/窒素数の比(C/N比)が8.0以上の脂肪族ポリアミドの構成単位と、(A−2)ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなる構成単位と、(A−3)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位とを含有する(A)ポリアミドと、(B)無機強化材とを、押出機により溶融混練する方法が挙げられる。
【0094】
〔成形品〕
ポリアミド樹脂組成物の成形品は、上述した本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む。
本実施形態の成形品は、公知の成形方法により成形することにより製造できる。
本実施形態の成形品は、吸水時においても引張強度及び表面外観等の機械物性に優れているため、自動車部品、電気部品、電子部品、携帯電子機器部品、機械・工業部品、事務機器部品、航空・宇宙部品等といった幅広い用途に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例に適用した原料及び評価方法は、以下の通りである。
【0096】
〔原料〕
(A)ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂組成物の原料として、ポリアミド樹脂を、後述する製造例1〜製造例13に従い、製造した。
【0097】
(B)強化材
GF(ガラス繊維) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
【0098】
〔評価方法〕
(試験片の製造方法)
後述する実施例で製造したポリアミド樹脂組成物を用いて試験片を製造した。
ISO 37に準拠したType3のダンベル成形体を製造し、試験片とした。
具体的には、以下の方法に準拠して、ダンベル成形体を製造した。
まず、上記したラボ用小型混練機のストランド出口に、小型射出成形機ジャケット(DSM社製、「Xplore」)を接続した。そして、小型射出成形機ジャケット内に溶融状態の上記樹脂組成物(ポリアミド樹脂組成物)を注入した。小型射出成形機ジャケットにポリアミド樹脂組成物を注入した場合は、ジャケット温度を310℃に設定した。
次に、ラボ用小型混練機から小型射出成形機ジャケットを取り外し、この小型射出成形機ジャケットをISO 37に準拠したType3のダンベルの金型にセットした。
そして、小型射出成形機ジャケット後部に接続された圧力シリンダーを用いて、小型射出成形機ジャケットの内部にあるポリアミド樹脂組成物を金型内に押し出した。
射出条件は、以下の通りとした。
・混練時間2分間、射出圧力11bar、射出時間30秒間
・ポリアミド樹脂組成物の金型温度:80℃
【0099】
(引張強度)
ISO37 Type3(ダンベルのチャック間の中央部の平行部の長さ16mm×幅4mm×厚み2mm)のダンベル試験片を用意した。
引張試験機(島津製作所社製、「オートグラフAG−5000D」)を用いて、23℃にてチャック間距離25mm、引張速度50mm/分で、ダンベルの引張強度を測定した。
なお、引張強度は、23℃での吸水試験片について行った。
吸水試験片は、上記ダンベル片を80℃の水の入った容器に浸け、直ぐ80℃に設定したオーブンにて96時間加熱することにより得た。
【0100】
(吸水率)
ISO37 Type3(ダンベルのチャック間の中央部の平行部の長さ16mm×幅4mm×厚み2mm)のダンベル試験片をそれぞれ3本ずつ80℃の水の入った容器に浸け、80℃に設定したオーブンにて加熱した。
24時間後にダンベル試験片を容器から取り出して、水気を拭き取り15分かけて自然冷却した。
浸漬前後のダンベル試験片の質量を求め、吸水率を求めた。
【0101】
(炭素数/窒素数の比(C/N)
(A)ポリアミド樹脂において、アミド基1個あたりの炭素数の平均値(炭素数/アミド基数)を計算により求め、炭素数/窒素数の比(C/N)とした。具体的には、分子主鎖中に含まれる炭素数を分子主鎖中に含まれるアミド基数で割り返すことにより炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を求め、炭素数/窒素数の比(C/N)とした。
【0102】
(粘弾性測定から求められる乾燥時のガラス転移点)
ISO37 Type3(ダンベルのチャック間の中央部の平行部の長さ15mm×幅4mm×厚み2mm)のダンベル試験片を用意した。
粘弾性測定解析装置(GABO社製:EPLEXOR)を用いて、動的粘弾性の温度分散スペクトルを以下の条件で測定した。
測定モード:引張、波形:正弦波、周波数:8Hz、温度範囲:−100℃〜300℃、昇温ステップ:3℃/min、静荷重:140Nとした。
上記測定方法によって得られる試験片の損失正接のα緩和のピーク値であるtanδをガラス転移点とした。
【0103】
(示差走査熱量測定により、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化エンタルピー)
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂の結晶化エンタルピーを、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定は、窒素雰囲気下で行った。
先ず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温する条件とした。
続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から30℃まで冷却した。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピーとした。
【0104】
(示差走査熱量測定により、20℃/minで加熱冷却したときに得られる融点ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc))
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂の結晶化エンタルピーを、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定は、窒素雰囲気下で行った。
先ず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温する条件とした。
続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から30℃まで冷却した。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度(Tc)とした。
続いて、30℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで30℃から350℃まで昇温した。このときに現れるもっとも高温側に現れたピークを融解ピーク温度Tmとし、融点ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)とした。
【0105】
(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製、HLC−8020、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒、PMMA(ポリメチルメタクリレート)標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算)で測定したMw(重量平均分子量)と数平均分子量(Mn)を用いて計算した。
サンプルはポリアミド及びポリアミド組成物3.0mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)3mLに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件は以下の条件で実施した。
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
流速:0.5mL/分
試料注入量:0.1mL
温度:30℃
【0106】
(表面外観(60°グロス))
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットから平板プレート成形片を以下のとおり作製した。
射出成形機[PS40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、冷却時間15秒、スクリュー回転数200rpm、金型温度をTg+20℃、シリンダー温度=(Tm+10)℃〜(Tm+30)℃に設定し、充填時間が0.5±0.1秒の範囲となるように、射出圧力及び射出速度を適宜調整し、ポリアミド組成物ペレットから平板プレート成形片(80mm×80mm、厚さ3mm)を作製した。
このようにして作製した平板プレート成形片の中央部を、光沢計(HORIBA製IG320)を用いてJIS−K7150に準じて60°グロスを測定した。
該測定値が大きいほど表面外観に優れると判断した。
【0107】
下記にポリアミド樹脂の製造例を示す。
〔製造例1:ポリアミド共重合体(A1)の製造〕
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との等モル塩1600kgを蒸留水に添加し、原料モノマーの50質量%水溶液を得た。得られた水溶液を、下部に放出ノズルを有する約4,000リットル容のオートクレーブ中に仕込み、50℃で混合しつつオートクレーブ内を窒素で置換した。続いて、温度を50℃から約150℃まで約1時間かけて昇温した。
その際、オートクレーブ内の圧力を0.15MPa程度(ゲージ圧)に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けた。
その後、オートクレーブを密閉状態にし、温度を150℃から約220℃まで約1時間かけて昇温して圧力を1.77MPa程度(ゲージ圧)まで上昇させた。
続いて、温度を約220℃から約270℃まで約1時間かけて昇温する一方、圧力は約1.77MPaに維持させつつ水を系外に除去していくことで加熱を行った。
その後、約1時間かけて圧力を大気圧まで減圧し、大気圧になった後、下部ノズルからストランド状に排出して、水冷、カッティングを行い、ペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中、90℃で4時間乾燥した。
【0108】
〔製造例2:ポリアミド共重合体(A2)の製造〕
ヘキサメチレンテレフタルアミド単位70モル%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位30モル%となるように調製したヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレート(6I塩)の水溶液(固形原料濃度50質量%)を500mLのオートクレーブの中に仕込み、十分オートクレーブ内を窒素置換した後、温度を約250℃、圧力が約3.5MPaの条件で1時間反応させた。
その後圧力を約1.0MPa低く設定した受器に抜出し、乾燥させた後、2軸押出機を用いて溶融重合した。
【0109】
〔製造例3:ポリアミド共重合体(A3)の製造〕
表1に示す共重合比率となるように原料を調製し、その他の条件は製造例2と同様にして重合を行い、ポリアミド共重合体を製造した。
【0110】
〔製造例4:ポリアミド共重合体(A4)の製造〕
ヘキサメチレンテレフタルアミド単位55モル%、ヘキサメチレンセバカミド単位45モル%となるように調製したヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムセバカノエート(610塩)の水溶液(固形原料濃度50質量%)を500mLのオートクレーブの中に仕込み、十分オートクレーブ内を窒素置換した後、温度を約140℃まで昇温した。
この際槽内の圧力をゲージ圧にして約0.2MPaに保つため水を系外に除去しながら加熱を続け約80%まで濃縮した。
その後、一旦水の除去を止め、温度を約260℃に昇温し、そして、圧力が約3.5MPaになったところで、再度圧力を一定に保つように水を除去しながら加熱を続けた。
その後、温度が300℃まで上昇してから、加熱は続けながら最後に30分ほどかけながら圧力を大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)までゆっくり降圧しポリアミド共重合体を得た。
この時重合の最終内部温度は約340℃であった。
得られたポリアミド共重合体を5mm以下の大きさまで粉砕し、80℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。
【0111】
〔製造例5、6:ポリアミド共重合体(A5)、(A6)の製造〕
それぞれ下記表1、表2に示す共重合比率となるように原料を調製し、その他の条件は製造例4と同様にして重合を行い、ポリアミド共重合体を製造した。
【0112】
〔製造例7:ポリアミド共重合体(A7)の製造〕
ヘキサメチレンテレフタルアミド単位65モル%、ヘキサメチレンセバカミド単位20モル%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位15モル%となるように調製したヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムセバカノエート(610塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレート(6I塩)の水溶液(固形原料濃度50質量%)を500mLのオートクレーブの中に仕込み、十分オートクレーブ内を窒素置換した後、温度を約140℃まで昇温した。
この際槽内の圧力をゲージ圧にして約0.2MPaに保つため水を系外に除去しながら加熱を続け約80%まで濃縮した。
その後、一旦水の除去を止め、温度を約260℃に昇温し、そして、圧力が約3.5MPaになったところで、再度圧力を一定に保つように水を除去しながら加熱を続けた。その後圧力を約1.0MPa低く設定した受器に抜出し、乾燥させた後、2軸押出機を用いて溶融重合した。
【0113】
〔製造例8:ポリアミド共重合体(A8)の製造〕
ヘキサメチレンテレフタルアミド単位60モル%、ヘキサメチレンセバカミド単位30モル%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位10モル%となるように調製したヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムセバカノエート(610塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレート(6I塩)の水溶液(固形原料濃度50質量%)を500mLのオートクレーブの中に仕込み、十分オートクレーブ内を窒素置換した後、約2時間で温度を約200℃まで昇温した。
この際槽内の圧力をゲージ圧にして約1.0MPaに保ちながら加熱を続け3〜5時間で温度を約280℃まで上昇させる。その後、約2時間かけて圧力を大気圧まで戻し、系内に窒素ガスを注入しながら温度を285℃にし、約1〜2時間かけて反応を完了させた。圧力を約1.0MPa加圧し、反応物をストランド状に排出し冷却バスにて冷却後ペレット状に切断して得た。
【0114】
〔製造例9〜13:ポリアミド共重合体(A9)〜(A13)の製造〕
下記表2に示す共重合比率となるように原料を調製し、その他の条件は製造例8と同様にして重合を行い、ポリアミド共重合体を製造した。
【0115】
〔実施例1〕
ポリアミド共重合体(A4)66.7質量部、ポリアミド共重合体(A2)33.3質量部からなるポリアミド成分100質量部に対し、(B)無機強化材53.8質量部を配合した。
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表3に示す。
【0116】
〔実施例2〜11〕
表2に示す組成比率となるように原料を配合し、その他の条件は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表3、表4に示す。
【0117】
〔比較例1〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A1)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0118】
〔比較例2〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A2)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0119】
〔比較例3〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A3)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0120】
〔比較例4〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A4)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0121】
〔比較例5〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A5)100質量部と、(B)強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0122】
〔比較例6〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A6)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0123】
〔比較例7〕
ポリアミド共重合体(A1)70質量部、ポリアミド共重合体(A2)30質量部からなるポリアミド成分100質量部に対し、(B)無機強化材53.8質量部を配合した。
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0124】
〔比較例8〕
ポリアミド共重合体(A1)25質量部、ポリアミド共重合体(A3)75質量部からなるポリアミド成分100質量部に対し、(B)無機強化材53.8質量部を配合した。
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0125】
〔比較例9〕
ポリアミド共重合体(A1)70質量部、ポリアミド共重合体(A3)30質量部からなるポリアミド成分100質量部に対し、(B)無機強化材53.8質量部を配合した。
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0126】
〔比較例10〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A7)100質量部と、(B)無機強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0127】
〔比較例11〕
上述したラボ用小型混練機を用いた方法に準拠して、ポリアミド共重合体(A8)100質量部と、(B)強化材53.8質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造した。
当該ポリアミド樹脂組成物を用いて、23℃での吸水試験片の引張強度及び乾燥平板プレート成形片の60°グロスを求めた。
また、上述した方法により吸水率を求めた。
評価結果を下記表5に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
表5中、「−」は融点Tmを持たない非晶性のポリアミドであり、測定不可であることを意味する。
【0134】
前記表3、4に示すように、各実施例のポリアミド樹脂組成物は、吸水時の物性及び表面外観に優れていることが確認された。