(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526978
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】レーザー式検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20190527BHJP
G01L 11/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
G01B11/24 M
G01L11/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-19987(P2015-19987)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142670(P2016-142670A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 太一
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/048781(WO,A1)
【文献】
特開昭63−298112(JP,A)
【文献】
特開平05−223569(JP,A)
【文献】
特開2001−318163(JP,A)
【文献】
特開2013−096709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー式変位センサーに対して密封容器を相対的に平行移動させつつ、前記レーザー式変位センサーから前記密封容器の蓋部に照射して反射したレーザー光を受光することにより、前記レーザー式変位センサーと前記蓋部との間の距離のデータを取得し、取得された距離データに基づいて前記密封容器を検査するレーザー式検査装置において、
前記蓋部から同一の距離の位置に前記相対的な移動方向に対して直交する方向に離隔するとともに前記蓋部の中心を通る直線を挟んだ両側で前記直線から同一幅離隔した位置に前記レーザー光を照射するように二基のレーザー式変位センサーが配置され、これらのレーザー式変位センサーによって得られた前記移動方向における同位置での距離データ同士を比較し、それらの比較された距離データの偏差が予め定めた基準値を超えている場合に、大きい値を示した距離データを補正データに置換するように構成されている
ことを特徴とするレーザー式検査装置。
【請求項2】
前記補正データは、前記比較された距離データのうち小さい値を示した距離データもしくは正常値として予め用意されている距離データであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー式検査装置。
【請求項3】
前記密封容器は、前記蓋部を上端部と下端部との少なくともいずれか一方に取り付けて閉じた胴部を有し、
前記距離データは、前記二つのレーザー式変位センサーによって計測された、前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の変位量であり、
前記補正データは、前記偏差が前記基準値より大きくなった計測点について、小さい値を示した変位量もしくは正常値として予め用意された変位量であり、
一方の前記レーザー式変位センサーによって得られた変位量と他方のレーザー式変位センサーによって得られた変位量との平均値を積分して得られた積分値、もしくは一方の前記レーザー式変位センサーによって得られた変位量の積分値と他方のレーザー式変位センサーによって得られた変位量の積分値との平均値に基づいて前記密封容器の内圧の良否を判定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザー式検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物にレーザー光を照射するとともに反射光を捕捉して、検査対象物の変形あるいは変位などを検査する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を使用して対象物までの距離を測定し、またその測定値を加工して変位量もしくは変形量を求め、さらには基準位置からの変位量を積算して面積を求めるなどのことが従来知られている。その一例として密封缶の内圧検査にレーザー光が用いられている。その検査対象物である密封容器は、例えば、水分が多い食品を内容物とする缶詰や、飲料が充填されている飲料缶などであり、これらの密封容器では、内容物を容器内に充填した後、容器内を気密状態にさせて封止することが知られている。しかしながら、金属製の密封容器であってもピンホールや巻締め不良などの容器異常が生じることにより容器内に外気が侵入する可能性がある。また、食品の腐敗・変敗などの内容物異常が生じることにより密封容器内でガスが発生することもある。それらの異常によって容器内の真空度が低下し、あるいは内部ガスの漏洩などによって容器内圧が低下するなどの事態が起こり得る。そのため、製造ラインからいわゆる不良品を排除するために、レーザー光を照射して密封容器の変形やその変形の要因となっている内圧などを検査している。
【0003】
本出願人は、レーザー光を使用して密封容器の内圧を検査する装置および方法を、特許文献1によって既に提案している。その発明は、蓋部にレーザー光を照射し、その反射光を変位センサーで受光して、蓋部の所定区間における容器軸方向の変位量を測定し、その変位量を積分して底蓋部の所定区間における容器軸方向の断面積を算出し、その断面積に基づいて内圧の良否を判定する密封容器の内圧検査装置および方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−96709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザー光を使用する上記の検査装置もしくは方法は、対象物で反射したレーザー光を受光することにより対象物までの距離や位置などを計測する。したがって、レーザー光が照射される面の色や清浄度などによって反射率が異なるので、その面の色や清浄度などによって検査精度が影響を受ける。これに対して、上述した密封容器などの検査対象物の表面には、文字や図柄などが付されることがある。このような検査対象物にあっては、レーザー光の照射点が文字や図柄などを横切ると、センサーでの受光量が変化し、これが誤差になり、あるいは検査結果に大きく影響することになる。
【0006】
例えば、上述した密封容器の底蓋などには、黒インキで製造番号や消費期限日や賞味期限日が、インクジェットプリンターなどにより、小さな点の集合として印字され、内圧検査工程は、その印字工程の後で実施されることが通例である。一方、レーザー光は、650nmの赤色半導体レーザーが主に使用され、このレーザー光は黒インキに吸収される性質を持ち、内圧検査工程中に照射されたレーザー光が黒インキの部分に照射されると、ここで吸収されてしまい、レーザー光の反射光量が減少する。
図3は、本発明者等が行った実験の結果を示しており、金属缶の底蓋に黒インキで文字を印刷し、その金属缶をレーザーセンサーの下方を一定速度で移動させ、その底蓋から反射したレーザー光を受光してその反射光量に応じた電圧を出力させた例である。
図3に符号「E」を付して示してある部分が黒インキによる文字の部分であり、測定結果を表すグラフ上では、あたかも深い谷のようになる。したがって、この部分は基準位置からの変位量が大きいことになるので、変形に伴って生じた空間部分の断面積としては大きい値となる。そのため、負圧容器の場合、密封容器内の内圧が実際よりも低いものと判定されることになり、レーザー光の部分的な吸収が誤検査の原因となる。
【0007】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、レーザー光が照射される面の光学的な性状のばらつきや振動などに起因する誤検査を回避もしくは抑制することのできる検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、レーザー式変位センサーに対し
て密封容器を相対的に平行移動させつつ、前記レーザー式変位センサーから前
記密封容器の蓋部に照射して反射したレーザー光を受光することにより、前記レーザー式変位センサーと前
記蓋部との間の距離のデータを取得し、取得された距離データに基づいて前
記密封容器を検査するレーザー式検査装置において、前
記蓋部から同一の距離の位置に前記相対的な移動方向に対して直交する方向
に離隔するとともに前記蓋部の中心を通る直線を挟んだ両側で前記直線から同一幅離隔した位置に前記レーザー光を照射するように二基のレーザー式変位センサーが配置され、これらのレーザー式変位センサーによって得られた前記移動方向における同位置での距離データ同士を比較し、それらの比較された距離データの偏差が予め定めた基準値を超えている場合に、大きい値を示した距離データを補正データに置換するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の検査装置においては、前記補正データは、前記比較された距離データのうち小さい値を示した距離データもしくは正常値として予め用意されている距離データであってよい。
【0010】
また、本発明の検査装置においては、前
記密封容器は、前記蓋部を上端部と下端部との少なくともいずれか一
方に取り付けて閉じた胴部を有し、前記距離データは、前記二つのレーザー式変位センサーによって計測された、前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の変位量であり、前記補正データは、前記偏差が前記基準値より大きくなった計測点について、小さい値を示した変位量もしくは正常値として予め用意された変位量であり、一方の前記レーザー式変位センサーによって得られた変位量と他方のレーザー式変位センサーによって得られた変位量との平均値を積分して得られた積分値、もしくは一方の前記レーザー式変位センサーによって得られた変位量の積分値と他方のレーザー式変位センサーによって得られた変位量の積分値との平均値に基づいて前記密封容器の内圧の良否を判定するように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の検査装置によれば、レーザー光を吸収するインキが付着しているなど、光学的な性状が部分的に変化している場合、二つの距離データを取得しており、かつそれらの距離データの偏差が基準値を超えるか否かを判断しているので、一方の距離データの異常を判定でき、その場合、その部分的なデータを採用せずに、補正データで置換するので、誤ったデータの取得やそれに基づく誤検査を回避もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を密封容器の内圧検査装置に適用した一例を模式的に示した側面図である。
【
図2】
図1における内圧検査装置を模式的に示した平面図である。
【
図3】横軸の計測点における反射光量(変位量)を電圧で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、レーザー光を利用して距離データを取得し、その距離データによって対象物を検査する装置であり、その検査対象物は特には限定されない。また、距離データに基づく検査の仕方は任意であり、例えばいずれかの距離データを基準値とし、その基準値と他の距離データとの比較によって変位量を求め、その変位量の絶対値の大小に基づいて検査もしくは判定を行うように構成されていてもよく、さらには距離データに積分などの数的処理を施し、その処理した結果に基づいて検査もしくは判定を行うように構成されていてもよい。
【0014】
本発明は、密封容器の内圧検査に適用することができ、その具体例を説明すると、対象とする密封容器は、内容物を充填する胴部を蓋部によって気密状態に封止した容器であってよい。より具体的には、胴部の上端部に天蓋を取り付けるとともに下端部に底蓋を取り付けたいわゆるスリーピースタイプの容器、底部を一体に形成した胴部の上端部に天蓋を取り付けたいわゆるツーピースタイプの容器、胴部の下端部に底蓋を取り付け、かつ上端部にネジ部を有する口頸部を一体に形成するとともにその口頸部にキャップを螺合させたボトル型の容器などであってよい。また、容器の素材は特に限定されないのであり、アルミニウムやその合金、もしくはスチールなどであってよい。本発明は、これらの金属を素材とした金属缶を対象とする内圧検査に適用することができる。さらに、密封容器は、内圧が大気圧より低い負圧容器であってもよく、あるいは大気圧より高い陽圧容器であってもよい。
【0015】
図1には、ボトル型缶1の内圧を検査するように構成した例を示してあり、ここに示す例では、内容物を充填したボトル型缶1を、そのキャップ2が下側となる倒立状態でコンベヤ3上に設置し、その状態で搬送しつつ内圧検査を行うように構成されている。そのボトル型缶1について更に具体的に説明すると、金属製の胴部4の一方の端部(
図1では上端部)に底蓋5が取り付けられている。その底蓋5はほぼ円板状に形成され、その外周部のフランジ部6を胴部4の開口端に巻締めて胴部4に取り付けられている。この巻締め部分が胴部4と底蓋5との結合部である。底蓋5における上記のフランジ部6の内周側にはカウンタシンクと称される環状溝部7が形成されており、その環状溝部7の内周縁すなわち環状溝部7における内周側傾斜壁8の突出端(ボトル型缶1の底部側への突出端)9から内周側に続く部分がパネル部10となっている。
図1に示す例では、このパネル部10は、前記突出端9を起点としてボトル型缶1の内部に向けてドーム状に撓んでいる。なお、
図1に示す例におけるボトル型缶1は内圧が大気圧より低圧の負圧容器として構成されている。また、胴部4の他方の端部(
図1では下端部)には、ネジ部を外周面に設けた口頸部11が形成され、その口頸部11にキャップ2が螺合させられている。
【0016】
コンベヤ3は上記のボトル型缶1を倒立状態で連続的に搬送するものであって、例えばベルトコンベヤを採用することができる。その搬送速度は、適宜に設定でき、例えば70m/min程度であってよい。このコンベヤ3における駆動側あるいは従動側のローラもしくは駆動モータ軸にはロータリーエンコーダ(それぞれ図示せず)が取り付けられ、このロータリーエンコーダによってコンベヤ3の走行速度や走行位置を検出できるように構成されている。したがって、コンベヤ3上のボトル型缶1を、その走行位置情報に基づいて特定できるように構成されている。
【0017】
コンベヤ3の上方で、そのコンベヤ3に倒立状態で載せられて搬送されるボトル型缶1における底蓋5のパスライン(通過位置)より上側、より具体的には底蓋5と平行な平面上に、二基のレーザー式変位センサー(以下、単に変位センサーと記す)13a,13bが配置されている。この変位センサー13a,13bは、コンベヤ3によって搬送されているボトル型缶1の底蓋5に向けてレーザー光を照射し、その反射光を捕捉して距離を計測するように構成された公知の構成のものである。そのレーザー光の照射面での径すなわちスポット径は30μmもしくはこれに近い径であることが好ましい。また、そのレーザー光は高速で繰り返し照射される。したがって各レーザー変位センサー13a,13bは、底蓋5における多数の箇所(多数の点)の位置までの距離を連続的に計測するように構成されている。すなわち、上記の変位センサー13a,13bは、レーザーパルスを出力するように構成され、その繰り返し速度(パルス間隔)は、底蓋5が変位センサー13a,13bの下方を通過する間に500回もしくはそれ以上、底蓋5に対してレーザー光を照射できる速度に設定されている。さらに、
図2に模式的な平面図を示したように、変位センサー13a,13bは、その下方をボトル型缶1が通過することにより、その底蓋5の中心を通る直線から幅Bを隔てた直線16a,16bに沿って、それぞれ平行にレーザー光を照射する位置Da,Db(
図2参照)に配置されている。底蓋5の一部の印刷に使用されているインキはごく微小な点であるために、この幅Bは、本例の場合、0.5mmに設定されている。
【0018】
上記のコンベヤ3の上方には、ボトル型缶1が内圧の検査開始位置に到達したことを検出するセンサーが配置されている。
図1および
図2に示す例では、非接触でボトル型缶1を検出する二組の光電センサー14a,14bが、上記の胴部4が通過する領域の側方に配置され、それぞれが照射した光をボトル型缶1が遮ることにより、ボトル型缶1が内圧検査開始位置に到達したことを検出し、その検出信号を出力するように構成されている。この光電センサー14a,14bと上述した変位センサー13a,13bとのそれぞれの相対位置は、胴部4が光電センサー14a,14bの照射光を最初に遮った位置で、ボトル型缶1における巻締部の搬送方向での前端部もしくはそれより僅か外側にレーザー光が照射される位置に設定されている。すなわち、光電センサー14a,14bがボトル型缶1を検出すると同時にボトル型缶1の搬送方向での前端側の部分の位置で、変位センサー13a,13bからの距離を計測し始めるように構成されている。変位センサー13a,13bから照射されたレーザー光の反射光がそれぞれの変位センサー13a,13bに入光してしまわないように、二基の変位センサー13a,13bは搬送方向において幅Cだけずらせて設置されている。本例の場合、この幅Cは、2.6mmに設定されており、それに伴って、光電センサー14a,14bも搬送方向において互いに2.6mmだけずらせて設置されている。なお、この光電センサー14a,14bの検出信号と、前記ロータリーエンコーダの検出信号とによって、コンベヤ3上のボトル型缶1を特定できる。
【0019】
上記のロータリーエンコーダおよび変位センサー13a,13bならびに光電センサー14a,14bは、コントローラ15に接続されている。このコントローラ15は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、これらロータリーエンコーダおよび変位センサー13a,13bならびに光電センサー14a,14bに制御信号を出力するとともに、検出信号を受信し、その検出信号に基づいて所定の演算を行い、各ボトル型缶1の内圧の良否の判定や、内圧不良と判定されたボトル型缶1の特定などの制御を行うように構成されている。その制御の一例を以下に説明する。
【0020】
検査の対象であるボトル型缶1は、
図1に示す倒立状態でコンベヤ3上に連続して載せられ、各ボトル型缶1同士の間に所定の間隔を空けてコンベヤ3によって搬送される。所定のボトル型缶1が前述した光電センサー14aの設置位置にまで進行すると、変位センサー13aで検出された底蓋5までの距離が取り込まれる。さらに、そのボトル型缶1が二組目の光電センサー14bの設置位置にまで進行すると、変位センサー13bで検出された底蓋5までの距離が同様に取り込まれる。以降、ボトル型缶1が一定速度で搬送されるとともに、各変位センサー13a,13bが断続的にレーザーパルスを出力して距離の計測を行って底蓋5における二列の多数箇所(各500箇所以上)の距離が計測される。そして、これらの計測値のうち、所定の基準箇所と他の箇所との距離の偏差(相対変位量)が演算される。
【0021】
その基準箇所は、ここで説明している実施例では、前述したパネル部10の変形の基点となる前記突出端9とされており、その突出端9の計測値とそれよりも中心側の各点の計測値との偏差が演算される。このような基準箇所は、例えば前記光電センサー14a,14bを感応させる胴部4における搬送方向での前進端と突出端9との搬送方向での距離を予め求めておき、光電センサー14a,14bが検出信号を出力した時点から、突出端9が変位センサー13a,13bにより計測される位置に至るまでの時間を求め、その時間が経過した時点の計測値を生じさせる箇所とすればよい。あるいは、前述した環状溝部7についての計測値が極大となり、その後、計測値が小さくなって突出端9で極小となるから、このようにして極小値を生じさせる箇所を基準箇所としてもよい。
【0022】
なお、計測の終了は、パネル部10の前後の突出端9間の距離とコンベヤ3による搬送速度とから求められる時間の経過によって決定してもよく、あるいは上記の突出端9でのデータが極小値として現れるので、この極小値を検出することにより計測あるいはデータの取り込みを終了することとしてもよい。
【0023】
上記のように測定して得られたグラフの一例を
図3に示した。
図3は、横軸が500個の計測点を示しており、縦軸にその計測点における測定結果である反射光量(変位量)を20目盛りが1Vを表示する電圧で示したグラフである。このグラフは二列の波形を解り易くするために上下にずらせて表示している。
【0024】
得られたグラフはコントローラ15内で、変位センサー13a,13b同士の間のずれである幅Cの距離の2.6mmだけ移動させて重ねられ、前後の突出端9の間で、それら二列の変位量を対応する各計測点で比較し、それらの変位量(本発明の距離データ)が相互に異なっており、かつ変位量の偏差が予め定めた判断基準値(例えば0.1V)を超える場合は、その大きい変位量を削除して、小さい値を示した方の変位量もしくは正常値として予め設定しておいた変位量(本発明における補正データ)をその計測点の変位量とするとともに、二列の変位量の平均値を積分し、もしくはそれぞれの列の変位量の積分値を平均した積分値を求め、その積分値を予め設定していた積分値(判定基準値)と比較してボトル型容器1の内圧の良否を判定する。なお、補正データは、予め用意した距離データ以外に、他方の変位センサーで得られた距離データもしくはこれを加工したデータであってもよい。
【0025】
前述したように、変位センサー13a,13bによる距離(変位量)の計測箇所は、底蓋5の中心を通る直線に平行な直線16a,16bに沿う多数箇所であり、したがってその計測値の偏差の積分値もしくは積算値は、前記突出端9のうち中心を通る直線(直径)と幅Bを隔てて対向する二点を結んだ直線16a,16bと、ボトル型缶1の内側に窪んでいるパネル部10の表面とによって囲まれた部分の面積を実質的に意味することになる。このようにして求められる面積の値は、ボトル型缶1の内圧が正常な範囲内にあれば、内圧に応じた所定の範囲内に入る。これに対して、ピンホールや内容物の変敗によるガスの発生などによって内圧が高くなっていれば(負圧が不足していれば)、パネル部10の変形量が少なくなるので、計測された面積の値が、正常範囲を規定している下限値より小さくなる。また反対にボトル型缶1の内圧が過度に低圧であれば、パネル部10の変形量が大きくなって計測された面積の値が正常範囲を規定している上限値より大きくなる。
【0026】
したがって、本発明では、上述のようにして求められた面積を予め定めた上下限の各値と比較し、正常範囲を超えている場合には、内圧が不良であるとの判定を行う。前述したように、コンベヤ3上のボトル型缶1は、ロータリーエンコーダの検出値と光電センサー14a,14bの検出信号とによって特定されるから、上記のようにして内圧不良と判定されたボトル型缶1を特定することができ、したがって内圧不良のボトル型缶1はコンベヤ3での搬送方向での下流側で、所定の排除機構(図示せず)によって搬送ラインから取り除かれる。
【0027】
本発明によれば、上述したように、蓋部の変形量の積分値もしくは積算値と内圧とが強い相関関係を示すので、その積分値もしくは積算値を予め用意した基準値と比較することにより、内圧の良否を正確に判定することができる。特に、多数箇所の変位量を積分もしくは積算するので、各計測箇所での正常値からのズレが僅かであっても、積分もしくは積算した場合のズレ量が大きくなるので、正確なズレ量の計測もしくは正確な内圧の判定が可能になる。また、上記の装置では、スポット径が小さいレーザー光を使用して変位量を計測するから、蓋部の多数の箇所の変位量を正確に測定することができ、この点においても正確な内圧判定を行うことができる。さらに、変位量の測定基準箇所を前述した突出端9としているので、搬送中のボトル型缶1が傾くなど、その姿勢にズレが生じても、内圧で変形するパネル部10のうち被計測点と基準箇所とが接近していることにより、姿勢のズレによる計測誤差が小さくなる。そして、本発明では、二列の変位量の平均値を積分してその積分値、もしくはそれぞれの変位量の積分値の平均値でボトル型缶1の内圧の良否を判定するので、判定精度が向上している。さらに、二列の変位量を対応する各計測点で比較できるので、レーザー光がインキに吸収されて、片方の変位量が過大に大きい場合は、その大きい変位量を削除して、小さい値を示した変位量もしくは正常値として予め用意しておいた変位量をその計測点の変位量とすることができ、判定精度がさらに向上している。
【0028】
なお、本発明は上述した具体例に限定されないのであって、検査対象である密封容器はボトル型缶以外の缶詰容器や合成樹脂容器であってもよく、また内圧によって窪み変形が生じる負圧容器に限らず、内圧によって膨張変形が生じる正圧(陽圧)容器であってもよい。正圧容器を対象とする場合、蓋部の中心部が最も膨出し、その膨張に伴う変位量を求めることになるから、基準箇所は蓋部のうち変位センサーから最も遠い箇所とすることになる。さらに、変位センサーと検査対象である密封容器とは変位の計測の際に相対的に移動すればよいので、密封容器を固定し、変位センサーを移動させることとしてもよい。そして、本発明に係る検査装置おける相対変位量を測定もしくは算出するための基準箇所は、上記の突出端9に限られず、前記パネル部10内の適宜な箇所であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…ボトル型缶、 2…キャップ、 3…コンベヤ、 4…胴部、 5…底蓋、 6…フランジ部、 9…突出端、 10…パネル部、 13a,13b…変位センサー、 14a,14b…光電センサー、 15…コントローラ、 16a,16b…直線、 B…幅、 C…幅、 Da,Db…位置。