(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネル坑内に設置され、トンネル軸方向に延びる第1のベルトコンベアと、前記第1のベルトコンベアのトンネル掘削方向の先端部を支持する台車とを含む掘削物の搬出システムであって、
前記第1のベルトコンベアの上部に前記トンネル軸方向に延びる水平部と該水平部に連続し、該トンネル軸方向に対して傾斜して延びる傾斜部とを有する第2のベルトコンベアと、
前記台車上に載置され、前記第2のベルトコンベアの前記水平部を前記トンネル軸方向に移動可能に支持する架台と、
前記架台に設置され、前記第2のベルトコンベアの前記水平部を前記トンネル軸方向に移動させる駆動手段とをさらに含む、搬出システム。
前記搬出システムは、前記第2のベルトコンベアの前記傾斜部を移動可能に支持する支持手段と、前記架台に設けられ、前記支持手段の掘削方向側を紐状物により吊り上げる吊り上げ手段とをさらに含み、
前記前進させる工程では、前記吊り上げ手段により前記支持手段の掘削方向側を吊り上げ、地盤を前記支持手段が移動可能な状態に養生した後、前記支持手段により前記第2のベルトコンベアの前記水平部を前記トンネル掘削方向へ移動させる、請求項5に記載の搬出方法。
前記掘削する工程と、前記前進させる工程と、前記掘削する工程で発生した掘削物を搬出する工程とを繰り返し、前記掘削する工程で発生した掘削物を搬出する工程後、前記傾斜部を前進させることができない場合に、前記第1のベルトコンベアを前記トンネル掘削方向へ延伸する工程と、前記第2のベルトコンベアの前記水平部を、前記トンネル掘削方向とは反対の方向へ移動させることにより前記第2のベルトコンベアの前記傾斜部を後退させる工程とを実施し、前記後退させる工程後に、前記掘削する工程を実施する、請求項5または6に記載の搬出方法。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する際、掘削により岩片や土砂等のズリと呼ばれる掘削物が発生し、そのズリをトンネル坑外へ搬出しなければならない。このズリを搬出する方法として、ダンプトラックによりトンネル坑外へ搬出する方法がある。しかしながら、この方法では、ダンプトラックによる排気ガスや粉塵が発生し、トンネル坑内の環境を悪化させるという問題や、車両災害による安全上の問題があった。また、トンネルの長さが数kmといった長い長大トンネルでは、その輸送コストが膨大なものになるという問題もあった。
【0003】
そこで、長大トンネルでは、ベルトコンベアが使用されることが多くなっている。ベルトコンベアを使用したズリの搬出では、トンネルの切羽において発生したズリを、ホイールローダ等の積込機にて自走式破砕機まで運搬する。自走式破砕機は、積込機により投入されたズリを破砕し、後方のベルトコンベアに破砕したズリを積み込む。ベルトコンベアは、トンネル坑外まで延び、積み込まれたズリをトンネル坑外へ搬出する。
【0004】
効率的にズリを搬送するためには、切羽の近くに自走式破砕機を配置し、その自走式破砕機まで延びるようにベルトコンベアの一端を配置することが望ましい。しかしながら、発破により掘削を行う場合、発破による飛石や衝撃等が発生するため、それらの影響が及ばない地点まで、自走式破砕機やベルトコンベアを退避する必要があった。
【0005】
このような退避を簡単に行える装置や方法として、複数のベルトコンベアで構成し、ズリを搬出する際はベルトコンベアを切羽へ向けて送り出し、発破時はベルトコンベアを切羽から後退させる装置や方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
道路や鉄道等の交通路、水道や電線等のライフラインの敷設を目的として、トンネルが地下、海底、山岳等に構築される。トンネルは、掘削機としてシールドマシンを使用したシールド工法、トンネルボーリングマシン(TBM)を使用したTBM工法、新オーストリアトンネル工法(NATM)、地表面を掘り下げてトンネル構造物を構築し、後で埋め戻すオープンカット工法等により構築される。山岳トンネルは、固い岩盤を掘削するために、NATMが数多く採用されている。
【0015】
NATMでは、ドリルジャンボを使用し、爆薬を挿入するための穴を削孔する。その削孔した穴に爆薬を入れ、発破し、トンネルを掘削する。発破することにより発生した掘削物、例えば岩塊や土砂等をズリとして、トンネル坑外へ搬出する。必要に応じて、掘削したトンネルが崩れないように、支保工と呼ばれる鋼材による支えを設置する。その後、トンネル壁面にコンクリートを吹き付け、その壁面を固める。吹き付けが終了した後、ロックボルトと呼ばれる補強部材を、トンネル断面の径方向の地山に向けて打ち込み、トンネル坑内への漏水を防ぐために防水シートを壁面に貼付する。その後、セントルと呼ばれる半円筒形の型枠を使用し、コンクリートの壁面を構築する。このような作業をトンネル軸方向に向けて繰り返し行うことで、トンネルを構築する。
【0016】
このような工程において、ズリをトンネル坑外へ搬出する際、ベルトコンベアを使用したズリを搬出するシステムが使用される。ズリは、ズリを積み込むための積み込み機械により、自走式破砕機へ搬送され、自走式破砕機から搬出システムへ送られる。積み込み機械は、例えば、ホイールローダやバックホウ等であり、自走式破砕機は、自走式クラッシャ等である。自走式クラッシャは、ベルトコンベアのベルト上に均一に載せるために、例えば200mm以下の径になるように破砕する。このため、自走式クラッシャは、ベルトコンベアよりトンネル掘削方向の側に設置される。
【0017】
ズリを搬出する際は、ズリが存在する掘削面である切羽に近い地点に搬出システムがある方が望ましい。これは、積み込み機械による搬送距離を出来るだけ短くし、排気ガスや粉塵の発生を抑制し、効率良く搬送するためである。一方、発破時は、搬出システムが切羽に近い位置にあると、発破による飛石や衝撃を受け、破損するおそれがあるため、その影響が及ばない地点まで退避する必要がある。
【0018】
本発明の搬出システムは、ズリ搬出時は切羽に近い地点にまでベルトコンベアを延ばし、発破時はその影響が及ばない地点までベルトコンベアを退避させることができるシステムである。
図1は、この搬出システムの全体構成を示した図である。なお、
図1には、トンネルを側部方向から見た断面図のほか、トンネル軸方向から見た正面図も示されている。
【0019】
この搬出システムは、トンネル坑内に設置され、トンネル軸方向に延びる第1のベルトコンベアである連続ベルトコンベア10と、連続ベルトコンベア10のトンネル掘削方向の先端部を支持する台車であるテールピース台車11とを含む。トンネル軸方向は、トンネルが延びる方向で、トンネル掘削方向のほか、トンネルの坑口へ向く方向も含む概念である。
【0020】
連続ベルトコンベア10は、例えば複数のベルトコンベアを連結して、トンネルの坑口からトンネル坑内の所定位置にまで延び、トンネル坑内の地盤1上に設置される。テールピース台車11は、連続ベルトコンベア10のトンネル掘削方向側(切羽側)のベルトの折り返しとなるテールプーリーを搭載し、ベルトの蛇行調整機能を備えている。テールプーリーは、連続ベルトコンベア10の端部に設置される滑車である。
【0021】
図1に示す実施形態では、テールピース台車11は、テールピース台車11が移動しないように停止するための停止装置としての複数のストッパー12を備えている。ストッパー12は、トンネル坑内の地盤1に隣接する面を有し、地盤1とその面との間に摩擦抵抗を与えることにより停止させてもよいし、地盤1にその一部を挿入し、係止する形で停止させてもよい。また、複数のストッパー12は、個々の長さを調整することができ、第2のベルトコンベアの水平部分を略水平に固定することができる。
【0022】
この搬出システムは、さらに、連続ベルトコンベア10の上部に、連続ベルトコンベア10から離間して、トンネル軸方向に延びる上記の水平部分である水平部と、その水平部に連続し、トンネル軸方向に対して傾斜して延びる角度調整が可能な可動する傾斜部とを有する第2のベルトコンベアを含む。第2のベルトコンベアは、移動式のベルトコンベアで、
図2ではスライドベルトコンベア13とされている。また、搬出システムは、テールピース台車11上に載置され、スライドベルトコンベア13の水平部13aをトンネル軸方向に移動可能に支持する支持部材としてのレール、すなわちガイドレール14を備える架台15を含む。さらに、搬出システムは、その水平部13aをトンネル軸方向に移動させる駆動手段としての駆動装置16も備えている。
【0023】
図1に示す実施形態では、架台15は、H形鋼や山形鋼等の形鋼を用いて形成されている。スライドベルトコンベア13の傾斜部13bは、テールピース台車11から切羽側に傾斜して延びている。自走式破砕機は、この傾斜部13b上に配置され、破砕されたズリを、スライドベルトコンベア13の傾斜部13b上に落下させて載せる。ズリは、スライドベルトコンベア13の傾斜部13bから水平部13aへと搬送され、水平部13aの端部から下部にある連続ベルトコンベア10のベルト上に落下される。ズリは、連続ベルトコンベア10によりトンネル坑内を搬送され、トンネル坑外へ搬出される。
【0024】
スライドベルトコンベア13の水平部13aは、複数の車輪を備えることができる。複数の車輪がガイドレール14上を回転することで、ガイドレール14上を移動可能に支持されるため、切羽側へ前進し、その反対側であるトンネルの坑口側へ後退させることができる。これらの前進および後退は、駆動装置16により上記の車輪を回転させることで、自動で行うことができる。駆動装置16としては、歯車(ピンギア)とピンギアと噛み合う直線状の、一定間隔でローラが配列したピンホイールとを備えるピンギアドライブユニットを用いることができる。この場合、上記車輪は、ピンホイールのローラとすることができる。
【0025】
このように、架台15にガイドレール14を設け、スライドベルトコンベア13を支持しつつ移動させることにより、地盤1やトンネルの天端にレールを敷設する必要がなくなり、牽引用機械も不要となる。また、簡単に前進および後退させることができるため、それらに要する時間を短縮することができ、その結果、全体の施工期間を短縮することができる。
【0026】
搬出システムは、上記の構成のみであってもよいが、そのほか、スライドベルトコンベア13の傾斜部13bを支持する支持手段としてスライドベルトコンベア台車17を備えることができる。スライドベルトコンベア台車17は、架台15と同様、形鋼を用いて形成することができる。このスライドベルトコンベア台車17は、この台車の移動を可能にするための車輪18と、車輪18による移動を停止させるための停止装置としてストッパー19とを備えることができる。
【0027】
スライドベルトコンベア13の傾斜部13bは、テールピース台車11の切羽側の先端部から突出するように延びており、その傾斜部13bにはズリが載置されるので、かなりの重量になる。その重量を支えるべく、上記のスライドベルトコンベア台車17を備えることができる。そして、テールピース台車11が移動可能とされているため、スライドベルトコンベア台車17も、テールピース台車11の移動に伴って移動させるべく、車輪18を備えている。また、テールピース台車11の停止に伴って停止させるべく、ストッパー19も備えている。
【0028】
トンネル坑内の地盤1は、必ずしも平坦な地盤ではなく、凹凸のある不陸であることが多い。また、地山は地下水を含み、地盤1は、ぬかるみ(泥濘)がある場合もある。このような場合、車輪18での移動は困難である。そこで、そのような箇所において車輪18が動かなくなる場合は、傾斜部13bを載置したスライドベルトコンベア台車17の切羽側を吊り上げ、地盤1を養生することにより、その移動が不能になることを防止することができる。地盤1の養生は、鉄板を敷くことや良質材に置き換えること等により行う。
【0029】
スライドベルトコンベア台車17の切羽側を吊り上げるために、
図1に示すように、例えば架台15の切羽側の端部の2本の形鋼を鉛直方向に延ばし、ガイドレール14の高さより高い位置に、橋渡すように、吊り上げ手段としてのウィンチ20を設けることができる。橋渡すように設けた形鋼等の上にウィンチ20を設置してもよい。なお、鉛直方向に延ばした形鋼を補強するために、その形鋼を斜めに支える形鋼を設けることができる。
【0030】
ウィンチ20は、スライドベルトコンベア13の水平部13aに該水平部13aから突出するように設けられた滑車21を通り、一端がスライドベルトコンベア台車17に連結された紐状物である吊り上げワイヤ22を巻き取り、吊り上げワイヤ22に張力を与えて、スライドベルトコンベア台車17の切羽側を吊り上げる。ウィンチ20を設置する高さは、トンネルの天端までの距離を考慮し、適切にスライドベルトコンベア台車17の切羽側を吊り上げることができる高さとして決定することができる。吊り上げを容易にするためには、ウィンチ20の設置高さは、高い方が望ましい。
【0031】
搬出システムは、スライドベルトコンベア13の坑口側に、ズリを下部の連続ベルトコンベア10のベルト上に適切に落下させて載置することを可能にする漏斗形状のホッパー23を備えることができる。このホッパー23により、スライドベルトコンベア13から連続ベルトコンベア10にズリを移動させる際に、連続ベルトコンベア10からこぼれ落ちるズリの量を少なくすることができる。
【0032】
発破後のズリ搬出時は、
図2の矢線で示すように、スライドベルトコンベア13の水平部13aを切羽側へ移動させ、架台15からスライドベルトコンベア台車17を離間させる。これにより、切羽に近い地点へスライドベルトコンベア13を移動させ、積み込み機械による搬送距離を短くすることができる。
【0033】
スライドベルトコンベア台車17の車輪18が、不陸や泥濘により動かなくなる場合は、
図3の矢線で示すように、ウィンチ20により吊り上げワイヤ22を適宜巻き取ってスライドベルトコンベア台車17の切羽側を吊り上げ、スライドベルトコンベア13の水平部13aを坑口側へ移動させる。これにより、スライドベルトコンベア台車17を移動可能な状態に戻すことができる。その後、不陸部や泥濘部を敷き鉄板や良質材に置き換えて養生することで、スライドベルトコンベア13を切羽に近い地点へ簡単に移動させることができる。
【0034】
トンネルを掘削する際の発破時は、
図1に示すように、スライドベルトコンベア13の水平部13aを坑口側へ移動させ、架台15とスライドベルトコンベア台車17とを近隣させる。これにより、発破位置からスライドベルトコンベア13までに一定の距離を確保し、発破の影響が及ばない地点までそのスライドベルトコンベア13を退避させることができる。
【0035】
図4〜
図7を参照して、この搬出システムを使用したズリの搬出手順について説明する。
図4は、搬出システムの初期状態を示した図である。
図4(a)は、トンネルを側部方向から見た断面図で、
図4(b)は、トンネルを上部から見た断面図である。初期状態では、自走式破砕機31が、ズリ33がある場所から一定の距離だけ離間した地点に配置される。この一定の距離は、積み込み機械32によりズリ33を搬送する積み込み距離であり、ズリ33を搬出した後の切羽からスライドベルトコンベア13までの距離が、その切羽からその後の発破により影響が及ばない地点までの発破退避距離となるように決定される。
【0036】
初期状態では、
図4(a)に示すように、スライドベルトコンベア13を坑口側へ移動させた状態で搬出システム30が設置される。また、
図4(b)に示すように、一方の側部壁面に沿って配置され、積み込み機械32等を退避させることができるスペースが確保される。
【0037】
積み込み機械32は、堆積するズリ33を搬送して自走式破砕機31に投入する。自走式破砕機31は、投入されたズリ33を破砕して、スライドベルトコンベア13の傾斜部13b上に落下させ、載せる。スライドベルトコンベア13は、ベルトの移動によってズリ33を傾斜部13bから水平部13aへ搬送し、ホッパー23を介して連続ベルトコンベア10のベルト上に載せる。連続ベルトコンベア10は、ベルト上のズリ33をトンネル坑外へ搬出する。
【0038】
トンネル坑内のズリ33を全て搬出した後、スライドベルトコンベア13は、発破時の影響が及ばない発破退避距離だけ切羽から離間している。このため、搬出システム30は、そのままの状態とし、自走式破砕機31および積み込み機械32を上記の確保したスペースに移動し、退避させる。退避後、
図5(a)、(b)に示すように、切羽に孔を形成し、爆薬を挿入して発破を行う。
【0039】
発破を行うと、
図6(a)に示すように、ズリ33が発生する。この時掘削されたズリ33の体積分だけ切羽が掘削側に前進し、同時に堆積するズリ33の位置も掘削側に前進することで、ズリ33と搬出システム30の離間距離が長くなる。このズリ33をトンネル坑外に搬出するために搬出システム30のスライドベルトコンベア13をズリ33がある場所へと近づける。すなわち、駆動装置16によりスライドベルトコンベア13の水平部13aを切羽側へ移動させ、スライドベルトコンベア13の傾斜部13b上に自走式破砕機31からの破砕されたズリ33が落下して載せることができる位置に、自走式破砕機31を配置する。このとき、
図6(b)に示すように、ズリ33がある場所から自走式破砕機31までの距離が積み込み距離となるように、スライドベルトコンベア13の水平部13aを移動させる。
【0040】
自走式破砕機31を所定の位置に移動した後、上記の初期状態のときと同様に、積み込み機械32によりズリ33を搬送し、自走式破砕機31内へ投入する。自走式破砕機31は、投入されたズリ33を破砕し、破砕したズリ33をスライドベルトコンベア13のベルト上に載せる。
【0041】
全てのズリ33を搬出した後、
図7(a)、(b)に示すように、積み込み機械32および自走式破砕機31を、確保されたスペースに移動し、発破退避距離を確保する。切羽からスライドベルトコンベア13および自走式破砕機31等までの距離は、発破による影響が及ばない発破退避距離であるため、上記と同様に、切羽に孔を形成し、爆薬を挿入して発破を行うことができる。
【0042】
スライドベルトコンベア13を切羽側へそれ以上移動させることができない最大延伸長まで延伸している場合、連続ベルトコンベア10に追加のベルトコンベアを追加し、切羽側へ連続ベルトコンベア10を延伸する。追加のベルトコンベアは、例えば、テールピース台車11上に載置しているベルトコンベアと連結しているベルトコンベアとの間に追加することができる。そして、スライドベルトコンベア13の水平部13aを、トンネルの坑口側へ移動させて、スライドベルトコンベア13の傾斜部13bを後退させる。その後、発破により発生したズリ33を、このスライドベルトコンベア13および連続ベルトコンベア10によりトンネル坑外へ搬出する。このような工程を繰り返して行うことで、トンネルを掘削し、構築することができる。
【0043】
この搬出システムを使用して行うズリ33の搬出処理を、
図8にまとめる。ステップ800から開始し、ステップ805で、スライドベルトコンベア13を坑口側へ移動させ、後退させた状態で搬出システム30を所定位置に設置する。ステップ810では、発破を行う。そして、ステップ815では、自走式破砕機31を、スライドベルトコンベア13の切羽側の所定位置に配置し、積み込み機械32を、ズリ33を積み込むことができる位置に配置する。ステップ820で、積み込み機械32、自走式破砕機31、搬出システム30を使用してズリ33を搬出する。その搬出が終了した後、ステップ825において積み込み機械32、自走式破砕機31を退避させる。退避後、ステップ830で、発破を行う。
【0044】
ステップ835では、スライドベルトコンベア13を切羽側に前進させる。前進させた後、ステップ840において自走式破砕機31を所定位置に配置し、積み込み機械32を、ズリ33を積み込むことができる位置に配置する。ステップ845では、積み込み機械32、自走式破砕機31、搬出システム30を使用してズリ33を搬出する。ステップ850では、搬出システム30を使用した掘削を終了するかを判断する。ステップ850で掘削を終了しないと判断した場合、ステップ855へ進み、掘削を終了すると判断した場合、ステップ865へ進み、搬出システム30を使用した全処理工程を終了する。
【0045】
ステップ855では、連続ベルトコンベア10を延伸する必要があるかどうかを判断する。スライドベルトコンベア13を延ばして対応が可能である場合、延伸する必要なしと判断し、対応が不可である場合、延伸する必要ありと判断する。具体的には、スライドベルトコンベア13を、予め決められた長さ以上延ばすことが可能である場合、延伸する必要なしと判断し、その長さ未満である場合、延伸する必要ありと判断することができる。それは、スライドベルトコンベア13を延ばすことができる場合、連続ベルトコンベア10を延伸する必要がないからである。
【0046】
連続ベルトコンベア10を延伸する必要があると判断した場合、ステップ860へ進み、連続ベルトコンベア10を延伸し、スライドベルトコンベア13を後退させた状態で搬出システム30を配置した後、ステップ715へ戻る。延伸する必要がないと判断した場合、直接ステップ825へ戻る。
【0047】
これまでの例では、ズリ33を破砕するための自走式破砕機31を用いる構成を示してきたが、破砕しなくても、搬出システム30によりズリ33を適切に搬出することができれば、自走式破砕機31は使用しなくてもよい。重機の使用が少ないほど、重機の退避にかかる時間を短くすることができ、排気ガスの排出量も少なくて済むので望ましい。
【0048】
以上のように、架台15にスライドベルトコンベア13を移動させるための駆動装置16を設置することで、自走式破砕機31等の牽引用重機が不要となる。自走式破砕機31がスライドベルトコンベア13を牽引していないので、自走式破砕機31をスライドベルトコンベア13の切羽側に配置する必要がなく、切羽側に配置しない場合、自走式破砕機31を退避させる際の移動距離が短くなる。また、他の重機と独立して延伸・退避が可能であるため、移動時間の短縮が可能となる。
【0049】
このシステムでは、スライドベルトコンベア13を移動するためのレールをトンネル坑内に設置する必要がないため、その設置作業や撤去作業が不要となる。また、ズリ33の積み込み距離を短くし、その距離を一定に保つことで、その積み込み時間の短縮を図ることができる。
【0050】
これまで本発明の掘削物の搬出システムおよびその搬出方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。