(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6527072
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】プレートの固定構造及びプレートの固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
E04B5/40 G
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-228853(P2015-228853)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-95974(P2017-95974A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正行
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−3422(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0028762(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/40
E04B 1/16
E04B 1/76
E04B 9/22
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁にプレートを固定するプレートの固定構造であって、
前記プレートは、前記梁に固定する際に前記梁に対向する位置に形成された凹部を有しており、
前記凹部と前記梁で囲まれた空間内に、スペーサが設けられており、
前記スペーサと前記凹部との間に前記スペーサと前記プレートとを接着して固定する接着剤が注入され、前記スペーサと前記梁との間に前記スペーサと前記梁とを接着して固定する接着剤が注入されていることを特徴とするプレートの固定構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記プレートの端部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートの固定構造。
【請求項3】
前記凹部は、前記プレートの端部を介して外部に連通されていることを特徴とする請求項2に記載のプレートの固定構造。
【請求項4】
前記凹部における外部との連通口は、前記スペーサよりも幅が広く、前記スペーサよりも高さが高いことを特徴とする請求項3に記載のプレートの固定構造。
【請求項5】
前記プレートは、リブを有し、
前記凹部は、前記プレートにおける前記リブ以外の位置に形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のプレートの固定構造。
【請求項6】
梁にプレートを固定するプレートの固定方法であって、
前記プレートに凹部を形成する工程と、
前記凹部を前記梁に対向させて前記プレートを前記梁に載置する工程と、
スペーサにおける前記凹部との対向部に接着剤を塗布する工程と、
前記スペーサにおける前記梁との対向部に接着剤を塗布する工程と、
前記凹部と前記梁で囲まれた空間内に前記スペーサを挿入して、前記プレートと前記スペーサとを接着すると共に、前記梁と前記スペーサとを接着する工程と、
を有することを特徴とするプレートの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床等の構築に用いるプレートの梁への固定構造及びプレートの梁への固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物等の床材として、デッキプレートが広く用いられている。
デッキプレートは、所定間隔をあけて構築された梁間に掛け渡されるように配置され、デッキプレートの両端部がそれぞれ梁の上面に溶接されて固定されている。デッキプレートの設置後、デッキプレートの上にはコンクリートが打設される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−140750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなデッキプレートを梁に溶接によって接合する際には、溶接機を溶接作業現場まで運ばなければならず、高所での溶接作業時には溶接機の落下防止対策等の細心の注意が必要である。また、施工現場においては、デッキプレートの溶接作業と並行して他の作業も行っているため、溶接機のケーブル等の取り回しを考慮する必要がある。また、デッキプレートの溶接作業を行うためには、作業員に溶接に関する資格が必要であり、施工現場にいる作業員の誰もが溶接作業を行えるわけではない。さらにデッキプレートを梁に溶接する際には、作業時に発生する火花、その他の物が落下しないように、大型の布等でデッキプレートの下方を養生している。これは、施工時の安全を確保するために必要な作業となっている。そのため、デッキプレートの梁への固定作業において、さらなる作業効率の改善が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プレートの梁への固定作業における作業効率を改善することができるプレートの固定構造及びプレートの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、梁にプレートを固定するプレートの固定構造であって、前記プレートは、前記梁に固定する際に前記梁に対向する位置に形成された凹部を有しており、前記凹部と前記梁で囲まれた空間内に、スペーサが設けられており、前記スペーサと前記凹部との間に前記スペーサと前記プレートとを接着して固定する接着剤が注入され、前記スペーサと前記梁との間に前記スペーサと前記梁とを接着して固定する接着剤が注入されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記凹部は、前記プレートの端部に形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記凹部は、前記プレートの端部を介して外部に連通されていることが好ましい。
【0009】
また、前記凹部における外部との連通口は、前記スペーサよりも幅が広く、前記スペーサよりも高さが高いことが好ましい。
【0010】
また、前記プレートは、リブを有し、前記凹部は、前記プレートにおける前記リブ以外の位置に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、梁にプレートを固定するプレートの固定方法であって、前記プレートに凹部を形成する工程と、前記凹部を前記梁に対向させて前記プレートを前記梁に載置する工程と、スペーサにおける前記凹部との対向部に接着剤を塗布する工程と、前記スペーサにおける前記梁との対向部に接着剤を塗布する工程と、前記凹部と前記梁で囲まれた空間内に前記スペーサを挿入して、前記プレートと前記スペーサとを接着すると共に、前記梁と前記スペーサとを接着する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレートの梁への固定作業における作業効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】梁にデッキプレートを固定した状態を示す斜視図である。
【
図2】デッキプレートを裏面側から見た斜視図である。
【
図4】梁にデッキプレートを固定した状態を示す側方からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0015】
<プレートの梁への固定構造>
図1は、建築構造物を構成する梁にデッキプレート(プレート)を固定した状態を示す上方からの斜視図である。
図1に示すように、建築構造物の躯体1は、基礎に立設される複数の柱2と、柱2に対して直交する方向、すなわち、基礎に対して平行な方向に柱2に架け渡される複数の梁3とを備えている。
柱2は、例えば、鋼製で中空状の角柱から形成されている。梁3は、例えば、鋼製のH形鋼から形成されている。梁3は、フランジ31の面が基礎に対して平行な方向となるように配置され、柱2に連結されている。
梁3の間には、デッキプレート4が架け渡されており、梁3のフランジ31の上面に固定されている。
【0016】
図2は、デッキプレート4を裏面側から見た斜視図であり、
図3は、デッキプレート4の側面図である。
図2、
図3に示すように、デッキプレート4は、平面視矩形状の薄い鋼板から形成されており、一方の主面(デッキプレート4を梁3の上面に載置したときにフランジ31の上面に対向する面)において、一方向に延びる複数のリブ41を有している。リブ41は、所定の間隔をあけて互いに平行に形成されており、デッキプレート4を形成する鋼板が複数の箇所で折り曲げられることにより形成されている。リブ41の両端部は、その高さ方向に押し潰されており、梁3のフランジ31の上面に載置できるように形成されている。
デッキプレート4の一方の主面におけるリブ41の間(リブ41以外の位置)には、他方の主面に向けて凹む凹部42が形成されている。凹部42は、デッキプレート4の両端部近傍にそれぞれ形成されており、各凹部42は、デッキプレート4の端部を介して外部に連通されている。凹部42における外部との連通口は、スペーサ5を挿入可能な大きさに形成されている。具体的には、連通口の幅がスペーサ5の幅よりも大きく、連通口の高さがスペーサ5の高さよりも高くなるように形成されている。
なお、デッキプレート4の表面には、エンボス加工が施されていてもよい。
【0017】
図4は、梁3のフランジ31の上面にデッキプレート4が固定された状態を示す図である。
図4に示すように、デッキプレート4は、凹部42が形成されている面を下にして梁3のフランジ31の上面に載置されている。このフランジ31の上面と凹部42とに囲まれた空間内にスペーサ5が挿入され、固定されている。スペーサ5は、平面視四角形状の板材であり、デッキプレート4や梁3と同様の鋼材から形成されている。スペーサ5は、その主面が凹部42の底部よりも小さく形成されており、凹部42内に完全に挿入することができるようになっている。スペーサ5の寸法は、接着剤61,62の接着強度にもよるが、例えば、縦横の長さがそれぞれ40mmで、板厚が0.8mmである。スペーサ5の上面は、デッキプレート4の凹部42に対向しており、スペーサ5の下面は、梁3のフランジ31の上面に対向している。スペーサ5の上面と凹部42との間の隙間には、接着剤61が注入されており、接着剤61の固化により、スペーサ5がデッキプレート4に固定される。スペーサ5の下面と梁3のフランジ31の上面との間の隙間には、接着剤62が注入されており、接着剤62の固化により、スペーサ5が梁3に固定される。そして、スペーサ5が梁3及びデッキプレート4にそれぞれ固定されることで、デッキプレート4はスペーサ5を介して梁3に固定されている。
接着剤61,62は、鋼材同士を接着することができるものであり、例えば、二液混合タイプのアクリル系接着剤であることが好ましい。ここで、接着剤61,62は、同じ材料からなるものを用いてもよく、梁3及びデッキプレート4の材質が異なる場合には、異なる材料からなるものを用いてもよい。
【0018】
<デッキプレートの梁への固定方法>
次に、デッキプレート4を梁3に固定する方法について説明する。
予め、デッキプレート4に凹部42を形成しておく。ここで、凹部42は、デッキプレート4の端部を介して外部に連通するように形成する。
次に、凹部42を梁3のフランジ31の上面に対向させるようにデッキプレート4を梁3に載置する。
次に、スペーサ5における凹部42との対向部(一方の主面)に接着剤61を塗布し、スペーサ5における梁3との対向部(他方の主面)に接着剤62を塗布する。
次に、凹部42と梁3で囲まれた空間内に、両主面に接着剤61,62を塗布したスペーサ5を挿入して、デッキプレート4とスペーサ5とを接着すると共に、梁3とスペーサ5とを接着する。
接着剤61が固化することにより、スペーサ5はデッキプレート4に固定され、接着剤62が固化することにより、スペーサ5は梁3に固定される。これにより、デッキプレート4は、スペーサ5を介して間接的に梁3に固定され、デッキプレート4の設置が完了する。
なお、梁3のフランジ31の上面との対向部に接着剤62を塗布したスペーサ5を、予め梁3のフランジ31の上面の凹部42に対応する位置に設置し、スペーサ5の凹部42の下面との対向面部に接着剤61を塗布した後に、デッキプレート4を設置してもよい。
【0019】
<作用、効果>
以上のようなデッキプレート4の梁3への固定構造によれば、デッキプレート4の梁3への固定を、スペーサ5と接着剤61,62とで行うことができるので、従来のように、溶接作業を必要としない。
これにより、溶接機を溶接作業現場まで運ぶ必要がなくなるので、溶接機の落下防止対策やケーブル等の取り回しについても考慮する必要がなくなる。また、接着剤61,62を扱うことに資格は必要ないため、施工現場にいる作業員の誰もがデッキプレート4の固定作業を行うことができ、作業効率を改善することができる。
また、溶接作業を必要としないので、作業時に発生する火花、その他の物が落下しないように、大型の布等でデッキプレートの下方を養生する必要がなくなるため、作業効率を改善することができる。
スペーサ5を用いることにより、凹部42の内部全域を接着剤で充填する必要がなくなるので、使用する接着剤の量を減らすことができ、施工コストの低減を図ることができる。
スペーサ5を梁3とデッキプレート4との間に挟むことで、梁3とデッキプレート4との接続箇所の強度を向上することができる。
凹部42は、デッキプレート4の端部を介して外部に連通されているので、スペーサ5を凹部42に挿入固定する作業を簡単に行うことができ、作業効率を改善することができる。
【0020】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、スペーサ5の両主面に接着剤61,62を塗布した後に、スペーサ5を凹部42内に挿入しているが、スペーサ5を保持した状態で凹部42に挿入し、スペーサ5の周囲に接着剤61,62を注入するような手順を採ってもよい。
また、凹部42は、デッキプレート4の端部を介して外部に連通されている場合に限らず、デッキプレート4の端部から離れた位置に凹部42が形成されている構成でもよい。この場合には、デッキプレート4を梁3に載置する前に凹部42に対向する位置に接着剤61,62を塗布したスペーサ5を設けておく必要がある。
また、デッキプレート4における梁3との接着部位にスペーサ5と接着剤61,62が充填された袋体(例えば、風船状のもの)を設けておき、梁3に載置して固定する際に袋体を破裂させて内部の接着剤61,62を流出させ、流出した接着剤61,62でデッキプレート4を梁3に固定するようにしてもよい。ここで、袋体を破裂させる方法としては、デッキプレート4の上方から荷重をかけてもよいし、袋体に針等で孔をあけてもよい。
【符号の説明】
【0021】
3 梁
4 デッキプレート
5 スペーサ
41 リブ
42 凹部
61 接着剤
62 接着剤