特許第6527267号(P6527267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6527267
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】モーター制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20190527BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20190527BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20190527BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20190527BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20190527BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20190527BHJP
【FI】
   H01L27/04 T
   H01L27/04 L
   H01L27/04 E
   H01L27/06 102A
   H04L25/02 303B
   H02P29/024
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-78263(P2018-78263)
(22)【出願日】2018年4月16日
(62)【分割の表示】特願2014-136464(P2014-136464)の分割
【原出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2018-152571(P2018-152571A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 寛和
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−053365(JP,A)
【文献】 特開2009−094280(JP,A)
【文献】 特表2013−506290(JP,A)
【文献】 特開2014−022600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 27/06
H02P 29/024
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された送信データに基づき、交流送信信号を生成する送信回路と、
前記交流送信信号が供給される第1のコイルと、
前記第1のコイルと交流結合することにより、前記交流送信信号に応じる交流受信信号を生成する第2のコイルと、
前記交流受信信号を受信し、前記交流受信信号に基づく受信データを出力する受信回路と、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に配置される絶縁膜と、
前記絶縁膜のリーク電流を検出するリーク電流検出部と、
を備える第1の電子デバイスと、
前記受信データに基づき、モーターを制御する第2の電子デバイスと、
を備えるモーター制御システム。
【請求項2】
前記第1の電子デバイスは、前記第1のコイルまたは前記第2のコイルのインピーダンスを高くするように構成されたインピーダンス制御部を備える、
請求項1に記載のモーター制御システム。
【請求項3】
前記インピーダンス制御部は、前記第1のコイルと前記送信回路との間に接続されたスイッチ回路、または、前記第2のコイルと前記受信回路との間に接続されたスイッチ回路である、
請求項2に記載のモーター制御システム。
【請求項4】
前記リーク電流検出部は、所定期間、前記インピーダンスが制御された前記第1または第2のコイルに流れる電流に応じて、前記リーク電流の異常を検出する、
請求項2に記載のモーター制御システム。
【請求項5】
前記リーク電流検出部は、
前記所定期間、前記インピーダンスが制御された前記第1または第2のコイルに流れる電流をリーク電圧に変換する電流電圧変換回路と、
前記リーク電圧と所定のしきい値との比較結果に応じて前記リーク電流の異常を検出する比較回路と、を備える、
請求項4に記載のモーター制御システム。
【請求項6】
前記電流電圧変換回路は、前記所定期間、前記インピーダンスが制御された前記第1または第2のコイルに流れる電流を充電する容量素子である、
請求項5に記載のモーター制御システム。
【請求項7】
前記リーク電圧を記憶する記憶回路を備え、
前記比較回路は、前回、前記リーク電流検出部が前記リーク電流の検出を行ったときに前記記憶回路に記憶されたリーク電圧を前記しきい値として、今回、前記電流電圧変換回路が変換したリーク電圧と比較する、
請求項5に記載のモーター制御システム。
【請求項8】
前記しきい値は、前記リーク電圧及び電圧マージンを含んでいる、
請求項7に記載のモーター制御システム。
【請求項9】
前記インピーダンスの制御前に、前記第1または第2のコイルに初期電位を供給するバイアス回路を備える、
請求項2に記載のモーター制御システム。
【請求項10】
前記リーク電流検出部は、
前記初期電位が供給され、かつ、前記インピーダンスが制御された前記第1または第2のコイルに流れる電流に応じたリーク電圧と第1のしきい値との比較結果に応じて、前記リーク電流の異常を検出する第1の比較回路と、
前記リーク電圧と前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値との比較結果に応じて、前記リーク電流の異常を検出する第2の比較回路と、を備える、
請求項9に記載のモーター制御システム。
【請求項11】
前記第1の比較回路は、前記リーク電圧が前記第1のしきい値より大きい場合、前記リーク電流の異常を検出し、
前記第2の比較回路は、前記リーク電圧が前記第2のしきい値より小さい場合、前記リーク電流の異常を検出する、
請求項10に記載のモーター制御システム。
【請求項12】
前記リーク電流の検出結果に応じて、前記インピーダンスが制御された前記第1のコイルの電位を第1の基準電位とし、または、前記インピーダンスが制御された前記第2のコイルの電位を第2の基準電位とする基準電位供給回路を備える、
請求項2に記載のモーター制御システム。
【請求項13】
前記基準電位供給回路は、前記リーク電流の検出結果に応じて、前記第1のコイルの一端と前記第1の基準電位との間を接続し、または、前記第2のコイルの一端と前記第2の基準電位との間を接続するスイッチ回路である、
請求項12に記載のモーター制御システム。
【請求項14】
前記リーク電流検出部は、
前記インピーダンスが制御された前記第1または第2のコイルに流れる電流をリーク電圧に変換するとともに増幅する電流電圧変換増幅回路と、
前記増幅されたリーク電圧と所定のしきい値との比較結果に応じて、前記リーク電流の異常を検出する比較回路と、を備える、
請求項2に記載のモーター制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレータ、半導体装置及びアイソレータの制御方法に関し、例えば第1及び第2の絶縁素子を備えるアイソレータ、半導体装置及びアイソレータの制御方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
電源電圧が大きく異なる回路間で信号を伝達する場合、配線により直接信号を伝達すると、伝達する信号の直流電圧成分に生じた電圧差によって回路の破損や信号伝達の不具合が生じることがある。そのため、従来から電源電圧の異なる回路間を絶縁しつつ、信号を伝達する回路としてアイソレータが普及している。
【0003】
従来のアイソレータとしてフォトカプラを利用したアイソレータが知られており、近年、コイル(トランスフォーマ)やコンデンサなどの絶縁素子を利用したアイソレータの研究が進められている。絶縁素子を利用したアイソレータは、電源電圧の異なる半導体チップ間を絶縁膜を介した絶縁素子により接続し、絶縁素子間を交流結合(AC結合)することにより、交流信号のみを伝達している。
【0004】
なお、関連する技術として、特許文献1〜3や非特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−48746号公報
【特許文献2】特開2002−222477号公報
【特許文献3】特開2010−130325号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Masayuki Hikita et al., "New Approach to Breakdown Study by Measuring Pre-Breakdown Current in Insulating Materials", Japanese Journal of Applied Physics(JJAP), vol.23, No.12, December, 1984, pp.L886-L888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、アイソレータは、様々なアプリケーション(応用システム)に利用され始めている。さらに、車載システムなどのアプリケーションへの利用が急増しているため、アイソレータの信頼性向上が強く望まれている。
【0008】
しかしながら、従来、絶縁素子を利用したアイソレータでは、信頼性について十分な考慮がなされていなかった。例えば、絶縁素子間の絶縁膜に絶縁破壊が生じると、過大な短絡電流が流れ、周辺回路の誤動作や破壊に至る恐れがある。従来のアイソレータでは、実使用時の絶縁破壊を未然に防ぐことは不可能であるため、システムを安全に利用することができない。
【0009】
このように、従来のアイソレータでは信頼性を向上させることが困難であるという問題がある。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態によれば、アイソレータは、送信回路、第1の絶縁素子、第2の絶縁素子、受信回路、インピーダンス制御部、及びリーク電流検出部を備えている。
【0012】
送信回路は、入力された送信データに基づき、第1の電位を基準電位とする交流送信信号を生成する。第1の絶縁素子は、生成された交流送信信号が供給される。第2の絶縁素子は、絶縁膜を介して第1の絶縁素子と交流結合することにより、前記交流送信信号に応じて第1の電位とは異なる第2の電位を基準電位とする交流受信信号を生成する。受信回路は、生成された交流受信信号に基づき受信データを再生する。インピーダンス制御部は、第1または第2の絶縁素子のインピーダンスを制御前よりも高いインピーダンスに制御する。リーク電流検出部は、第1及び第2の絶縁素子間に流れるリーク電流を、インピーダンスが制御された第1または第2の絶縁素子を介して検出する。
【発明の効果】
【0013】
前記一実施の形態によれば、アイソレータの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係るアイソレータを含む半導体装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態2に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図3A】実施の形態2に係るアイソレータの実装例を模式的に示す平面図である。
図3B】実施の形態2に係るアイソレータの実装例を模式的に示す平面図である。
図3C】実施の形態2に係るアイソレータの実装例を模式的に示す断面図である。
図4A】実施の形態2に係るアイソレータの実装例を模式的に示す平面図である。
図4B】実施の形態2に係るアイソレータの実装例を模式的に示す断面図である。
図5】実施の形態2に係るアイソレータの制御方法を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係るアイソレータの動作を示すタイミングチャートである。
図7】実施の形態3に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図8】実施の形態3に係るアイソレータの制御方法を示すフローチャートである。
図9】実施の形態3に係るアイソレータの動作を示す波形図である。
図10】実施の形態4に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図11】実施の形態4に係るアイソレータの制御方法を示すフローチャートである。
図12】実施の形態5に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図13】実施の形態6に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図14】実施の形態7に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図15】実施の形態7に係るアイソレータの制御方法を示すフローチャートである。
図16】実施の形態8に係るアイソレータを含む制御システムの構成を示す構成図である。
図17】実施の形態の前提例に係るモーター制御システムの構成を示す構成図である。
図18】実施の形態の前提例に係るアイソレータの実装例を模式的に示す斜視図である。
図19】非特許文献1に記載されたリーク電流と絶縁膜の破壊の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態の前提例)
実施の形態の説明をする前に、実施の形態を適用する前の前提例について説明する。図17は、実施の形態の前提例に係るモーター制御システムの構成を示している。
【0016】
図17に示すように、このモーター制御システム900は、複数のアイソレータ910a及び910b(いずれかを910とも称する)、MCU920、複数のゲートドライバ930a及び930b(いずれかを930とも称する)、複数のIGBT940a及び940b(いずれかを940とも称する)、モーター950を備えている。例えば、MCU920、複数のアイソレータ910a及び910b、複数のゲートドライバ930a及び930bが1パッケージの半導体装置901に実装されている。
【0017】
モーター950は、U相、V相及びW相のコイルを有する三相モーターである。U相、V相及びW相の相ごとに、ハイサイド側のモータードライバであるIGBT940aと、ローサイド側のモータードライバであるIGBT940bが接続されている。IGBT940a及び940b、モーター950には、各相のハイサイド側とローサイド側にそれぞれ、ゲートドライバ930a及び930bを介してアイソレータ910a及び910bが接続されている。
【0018】
MCU920は、アイソレータ910a及び910bに接続されており、制御信号をアイソレータ910a及び910b、ゲートドライバ930a及び930bを介して、IGBT940a及び940bへ送信し、IGBT940aとIGBT940bを交互にスイッチングする。ハイサイド側のIGBT940aはモーター950へ電流を流し、ローサイド側のIGBT940bはモーター950から電流を引き抜くことで、モーター950が回転駆動する。
【0019】
図17に示すように、MCU920側の電源電圧は3.3V〜5Vであり、IGBT940及びモーター950側の電源電圧は1kVである。したがって、MCU920側とIGBT940及びモーター950側の基準電位(GNDに相当)は電源電圧の違いにより数100〜数kV程度の差があるため、制御信号を直接送信することができない。そのため、MCU920からモーター950へ駆動信号を送信するために、異電位回路間をDC的に絶縁するアイソレータ910を仲介する。アイソレータ910の絶縁素子にはインダクタまたはキャパシタが用いられ、絶縁素子同士は絶縁膜を介してAC結合により信号を送受するため、送受信回路間の基準電位の差を吸収することができる。
【0020】
図18は、前提例に係るアイソレータ910の実装構造を模式的に示している。図18に示すように、半導体装置901に含まれるアイソレータ910は、外部端子912を備える実装基板911に、送信側チップ960と受信側チップ970が搭載されている。
【0021】
送信側チップ960には、送信回路961と、オンチップトランス962を構成する送信側コイル(一次側コイル)962a及び受信側コイル(二次側コイル)962b、受信側コイル962bに接続されたパッド964及び965が形成されている。受信側チップ970には、受信回路971と、受信回路971に接続されたパッド972及び973が形成されている。
【0022】
パッド964とパッド972とはボンディングワイヤ981を介して接続され、パッド965とパッド973とはボンディングワイヤ982を介して接続されている。すなわち、受信回路971と受信側コイル962bとは、パッド972、ボンディングワイヤ981及びパッド964を介して接続され、また、パッド973、ボンディングワイヤ982及びパッド965を介して接続されている。
【0023】
オンチップトランス962では、送信側コイル962aと受信側コイル962bとが、それぞれ半導体チップ内における第1の配線層と第2の配線層に形成され、送信側コイル962aと受信側コイル962bとの間に層間絶縁膜(単に絶縁膜とも称する)963が形成されている。
【0024】
上記のようにアイソレータ910では、送信側コイル962aと受信側コイル962bとが層間絶縁膜963を介してAC結合することで信号を送受信する。このため、送信側回路と受信側回路の数kVにも達する基準電位の差は絶縁素子間の層間絶縁膜963に印加されることから、アイソレータの使用に伴い絶縁膜が劣化していくことが問題となる。
【0025】
図19のグラフは、非特許文献1に記載された絶縁膜に流れるリーク電流の測定結果である。図19では、膜厚25umのポリイミドで形成された絶縁膜において、絶縁破壊に至るまでの時刻とそのときのリーク電流を観測している。
【0026】
図19では、印加電圧は30V/sで単調に増加させており、グラフの時間範囲ではほぼ一定とみなせる。印加電圧の絶対値は不明であるが、観測時間は100s以上であるため少なくとも3000V以上である。25um厚ポリイミドの耐圧は5000〜6000Vであるため、比較的高ストレス状態にあると予想される。
【0027】
図19の実験結果は、絶縁破壊前10us〜10nsまでのほぼ一定電圧下において、時間経過とともにリーク電流が増加する現象があることを示しており、リーク電流の増加と絶縁破壊(絶縁劣化の進行)とが関連することを示唆している。
【0028】
このように、定格電圧動作であっても、長期使用などにより絶縁膜の絶縁性が低下する。そうすると、アイソレータの送信側回路−受信側回路間で短絡が生じ、周辺機器の故障を招くことになる。自動車用モーター制御などでは、重大な事故に至る可能性があるため、信頼性の確保は特に重要視される。
【0029】
なお、このような短絡による誤動作・故障を防止するため、モーター制御システムにヒューズを備えることも考え得るが、絶縁破壊時にシステムを安全に停止する機能は実現されていない。また、アイソレータレベルでの絶縁破壊対策は施されていない。
【0030】
そこで、以下に説明する実施の形態では、リーク電流の増加と絶縁破壊とに関係があることを利用して、アイソレータが絶縁破壊となる直前の状態を検出する。すなわち、実施の形態では、アイソレータにおける絶縁膜のリーク電流を検出するリーク電流検出機能とその制御手段を設ける。実施の形態によれば、絶縁膜の劣化によって増大するリーク電流をチップ破壊に至る前に検出し、システムの動作を安全に停止させることができる。例えば、図19の例では絶縁破壊前に電流上昇が数us持続しているので、その間に電流増加を検知してシステムを安全に制御可能とする。
【0031】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態に係るアイソレータを含む半導体装置の構成を示している。図1に示すように、半導体装置1は、アイソレータ100と、MCU等であるコントローラ200を備えている。また、半導体装置1には、コントローラ200の制御対象である被制御機器300が接続される。
【0032】
アイソレータ100は、送信側チップ120、受信側チップ130、外部端子T1〜T4を備えている。アイソレータ100は、外部端子T1〜T3を介してコントローラ200に接続されており、外部端子T4を介して被制御機器300に接続されている。
【0033】
外部端子T1は、コントローラ200からインピーダンスを制御するためのインピーダンス制御信号S1を入力するための端子である。外部端子T2は、コントローラ200から送信データVINを入力するための端子である。外部端子T3は、リーク電流の検出結果であるエラー信号S2をコントローラ200へ出力するための端子である。外部端子T4は、絶縁素子を介して受信した受信データVOUTを被制御機器300へ出力するための端子である。
【0034】
送信側チップ120は、送信回路101、絶縁素子(送信側絶縁素子)102、絶縁素子(受信側絶縁素子)103、絶縁素子103に接続されたパッドP1及びP2、インピーダンス制御部105、リーク電流検出部106を備えている。受信側チップ130は、受信回路104、受信回路104に接続されたパッドP3及びP4を備えている。
【0035】
送信回路101は、コントローラ200から外部端子T2を介して送信データVINが入力され、入力された送信データVINに基づき交流送信信号を生成する。交流送信信号は基準電位GND1(第1の基準電位)を基準とした信号である。
【0036】
絶縁素子102及び103は、例えばコイルやキャパシタである。絶縁素子(第1の絶縁素子)102は、送信回路101からインピーダンス制御部105を介して交流送信信号が供給される。絶縁素子102と絶縁素子103との間に絶縁膜107が形成されている。
【0037】
絶縁素子(第2の絶縁素子)103は、絶縁膜107を介して絶縁素子102と交流結合することにより、交流受信信号を生成する。交流受信信号は、基準電位GNDとは異なる基準電位GND2(第2の基準電位)を基準とした信号である。
【0038】
絶縁素子103と受信回路104とは、送信側チップ120のパッドP1と受信側チップ130のパッドP3とを介して接続され、また、送信側チップ120のパッドP2と受信側チップのパッドP4とを介して接続される。受信回路104は、パッドP1及びP3、パッドP2及びP4を介して交流受信信号が入力される。受信回路104は、入力された交流受信信号に基づき受信データVOUTを再生し、受信データVOUTを外部端子T4を介して被制御機器300へ出力する。
【0039】
インピーダンス制御部105は、コントローラ200から外部端子T1を介してインピーダンス制御信号S1が入力され、入力されたインピーダンス制御信号S1に基づき絶縁素子102のインピーダンスを高インピーダンスに制御する。リーク電流検出部106は、絶縁素子間を流れるリーク電流を検出する。すなわち、リーク電流検出部106は、インピーダンスが制御された絶縁素子102を介してリーク電流を検出し、リーク電流に応じた検出結果であるエラー信号S2を外部端子T3を介してコントローラ200へ出力する。
【0040】
なお、図1の例では、送信側の絶縁素子102のインピーダンスを制御し、インピーダンス制御した絶縁素子102を介してリーク電流を検出しているが、受信側の絶縁素子103のインピーダンスを制御し、インピーダンス制御した絶縁素子103を介してリーク電流を検出してもよい。
【0041】
絶縁素子間のリーク電流をテストする際、コントローラ200は送信データVINとしてハイレベルを維持するテスト用プリセット信号を入力する。これにより、受信回路104の受信データVOUT及び被制御機器300を一定の状態に制御し、基準電位GND2が基準電位GND1よりも高電位となるため、リーク電流が発生する。コントローラ200はアイソレータ100の送信側絶縁素子102のインピーダンスを高インピーダンスに制御し、リーク電流検出部106で送信側絶縁素子102を介してリーク電流を検出する。リーク電流検出部106はリーク電流量に応じたエラー信号S2をコントローラ200へ送信する。コントローラ200は受信したエラー信号S2から絶縁性(絶縁膜の劣化状態)を判断し、アイソレータ100の動作を制御する。
【0042】
このように、本実施の形態では、アイソレータが、絶縁素子のインピーダンスを制御してリーク電流を検出し、検出したリーク電流に応じたエラー信号を出力するようにした。これにより、絶縁破壊前に絶縁膜の劣化を検出でき、アイソレータを安全に停止することが可能となるため、アイソレータの信頼性を向上させることができる。
【0043】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1で示したアイソレータのさらに具体的な構成及び動作について説明する。
【0044】
図2は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。モーター制御システムは、制御対象である被制御機器300の一例としてモーター301の回転動作を制御する。なお、被制御機器300は、モーターの他、電源回路、計測器、センサ等であってもよい。モーター及びIGBTのように、受信回路側(2次側)の基準電位を、送信回路側の基準電位よりも高い電位に維持することができるシステム(アプリケーション)であれば、その他のシステムでもよい。
例えば、モーター301は、三相モーターであり、図17と同様に、相ごとにハイサイド側のIGBT及びアイソレータ、ローサイド側のIGBT及びアイソレータを有しており、図2では、そのうち1相のハイサイド側のIGBT及びアイソレータとローサイド側のIGBTのみを図示している。なお、必要に応じて図17のようにゲートドライバを備えていてもよい。
【0045】
半導体装置1は、モーター301の回転動作を制御するため、モーター301とIGBT1及び2とに接続されている。IGBT1はハイサイド側のモータードライバであり、IGBT2はローサイド側のモータードライバである。IGBT1は、ゲートが外部端子T4に接続され、コレクタにIGBT用DC電源である電源VD3が供給され、エミッタが基準電位GND2とIGBT2のコレクタとコイルL3を介してモーター301とに接続されている。
【0046】
図2の半導体装置1は、図1の半導体装置1と同様の構成であり、さらに、絶縁素子102及び103、インピーダンス制御部105、リーク電流検出部106の具体的な回路構成を備えている。
【0047】
すなわち、半導体装置1は、図1と同様に、アイソレータ100とコントローラ200を備えている。アイソレータ100は、外部端子T1〜T3を介してコントローラ200に接続されており、外部端子T4を介してIGBT1に接続されている。アイソレータ100は、送信側チップ120と受信側チップ130とを備えている。
【0048】
送信側チップ120は、送信回路101、絶縁素子102、絶縁素子103、パッドP1及びP2、インピーダンス制御部105、リーク電流検出部106を備えている。送信回路101には数Vの電源VD1が供給され、絶縁素子102から送信回路101側の基準電位GND1は0V程度となる。
【0049】
受信側チップ130は、受信回路104、パッドP3及びP4を備えている。受信回路104には数Vの電源VD2が供給され、さらに、受信回路104に接続されるIGBT1には数kVの電源VD3が供給され、絶縁素子103から受信回路104側の基準電位GND2は数kV程度となる。
【0050】
図2の例では、絶縁素子102及び103として、送信側のコイルL1と受信側のコイルL2を備えている。インピーダンス制御部105として、スイッチSW1及びSW2を備えている。リーク電流検出部106として、コンデンサC1(寄生容量)及びコンパレータCMP1を備えている。
【0051】
これらの構成の接続関係について説明する。送信回路101の交流送信信号を出力する第1の出力端子が、スイッチSW1を介してコイルL1の一端に接続され、送信回路101の交流送信信号を出力する第2の出力端子が、スイッチSW2を介してコイルL1の他端に接続される。
【0052】
スイッチSW1は、送信回路101の第1に出力端子とコイルL1の一端との間に接続されるとともに、制御端子が外部端子T1に接続される。スイッチSW1は、コントローラ200から制御端子に入力されるインピーダンス制御信号S1に応じてオン/オフし、送信回路101の第1の出力端子とコイルL1の一端との接続/切断を切り替える。
【0053】
スイッチSW2は、送信回路101の第2の出力端子とコイルL1の他端との間に接続されるとともに、制御端子が外部端子T1に接続される。スイッチSW2は、コントローラ200から制御端子に入力されるインピーダンス制御信号S1に応じてオン/オフし、送信回路101の第2の出力端子とコイルL1の他端との接続/切断を切り替える。
【0054】
コンデンサC1は、一端がコイルL1の他端に接続され、他端が基準電位GND1に接続されている。コンデンサC1は、コイルL1に流れるリーク電流を充電し、リーク電流に応じた電圧であるリーク電圧VLを生成する。
【0055】
コンパレータCMP1は、正入力端子がコンデンサC1の一端(コイルL1の他端)に接続され、負入力端子にしきい値(しきい値電圧)Vthが入力され、出力端子が外部端子T3に接続される。コンパレータCMP1は、コンデンサC1に充電されたリーク電圧VLとしきい値Vthとを比較し、比較結果をエラー信号S2としてコントローラ200へ出力する。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値Vthよりも大きい場合、エラー信号S2にハイレベルを出力する。
【0056】
図3Aは、図2のアイソレータ100に含まれる送信側チップ120のうち送信側コイルL1が形成される配線層の平面図の一例であり、図3Bは、送信側チップ120のうち受信側コイルL2が形成される配線層の平面図の一例であり、図3Cは、図3A及び図3Bの送信側チップ120のA−A’断面図の一例である。
【0057】
図3A図3Cに示すように、送信側チップ120は、シリコン基板SUB1上に、ゲート電極層GL10、配線層WL11〜18が順に積層形成されている。ゲート電極層GL10、配線層WL11〜18には、送信側チップ120の回路を構成するゲート電極及びメタル配線が所望のパターンで形成され、ゲート電極及びメタル配線を埋めるように層間絶縁膜107が形成されている。
【0058】
送信回路101は、ゲート電極層GL10、配線層WL11〜18に形成されている。送信データVINを入力する外部端子T2と送信回路101とを接続するように、配線層WL15に配線が形成されている。
【0059】
インピーダンス制御部105のスイッチSW2は、MOSトランジスタ105aから構成されている。MOSトランジスタ105aは、シリコン基板SUB1の表面に形成された2つの拡散層と、シリコン基板SUB1上のゲート電極層GL10に形成されたゲート電極とを有する。
【0060】
送信回路101とMOSトランジスタ105aの一方の拡散層とを接続するように、配線層WL13の配線と、配線層WL13からゲート電極層GL10まで貫通するコンタクトホールとが形成されている。MOSトランジスタ105aのゲートと、インピーダンス制御信号S1を入力する外部端子T1とを接続するように、配線層WL14からゲート電極層GL10まで貫通するコンタクトホールが形成されている。
【0061】
なお、断面図は省略するが、インピーダンス制御部105のスイッチSW1は、スイッチSW2と同様に、MOSトランジスタから構成されており、送信回路101とMOSトランジスタの一方の拡散層が接続され、MOSトランジスタのゲートが外部端子T1に接続され、MOSトランジスタの他方の拡散層が送信側コイルL1に接続されている。
【0062】
リーク電流検出部106のコンパレータCMP1は、MOSトランジスタ106a及び106bから構成されている。MOSトランジスタ106a及び106bは、シリコン基板SUB1の表面に形成された2つの拡散層と、シリコン基板SUB1上のゲート電極層GL10に形成されたゲート電極とを有する。
【0063】
MOSトランジスタ106aの一方の拡散層と、リーク電流を検出したエラー信号S2の出力する外部端子T3とを接続するように、配線層WL16からゲート電極層GL10まで貫通するコンタクトホールが形成されている。MOSトランジスタ106aのゲートとMOSトランジスタの一方の拡散層とを接続するように、配線層WL12の配線と、配線層WL12からゲート電極層GL10まで貫通する2つのコンタクトホールが形成されている。
【0064】
リーク電流検出部106のコンデンサC1は、配線層WL11及び配線層WL13に形成された配線と、配線間の絶縁膜107から構成されている。コンデンサC1の配線層WL11側の配線とシリコン基板SUB1とを接続するように、ゲート電極層GL10を貫通するコンタクトホールが形成されている。
【0065】
送信側コイルL1は、配線層WL14に渦巻状にパターニングされた配線から構成されている。送信側コイルL1と、MOSトランジスタ105aの他方の拡散層、MOSトランジスタ106bのゲート及びコンデンサC1の配線層WL13側の配線とを接続するように、配線層WL13からゲート電極層GL10まで貫通するコンタクトホール、配線層WL13の配線、配線層WL14からゲート電極層GL10まで貫通するコンタクトホール、配線層WL14の配線が形成されている。
【0066】
受信側コイルL2は、配線層WL18に渦巻状にパターニングされた配線から構成されている。送信側コイルL1と受信側コイルL2とは、配線層WL15〜WL17に形成された層間絶縁膜107を介して対向するように形成されている。受信側コイルL2は、配線層WL18に形成されたパッドP1及びP2に接続されている。
【0067】
図4Aは、図2のアイソレータ100に含まれる受信側チップ130の平面図の一例であり、図4Bは、図4Aの受信側チップ130のB−B’断面図の一例である。
【0068】
図4A及び図4Bに示すように、受信側チップ130は、送信側チップ120と同様に、シリコン基板SUB2上に、ゲート電極層GL20、配線層WL21〜28が順に積層形成され、各配線間に層間絶縁膜207が形成されている。
【0069】
受信回路104は、ゲート電極層GL20、配線層WL21〜28に形成されている。パッドP3が配線層WL28に形成されており、パッドP3と受信回路104とを接続するように、配線層WL28に配線が形成されている。なお、パッドP4の断面図は省略するが、パッドP3と同様に、配線層WL28にパッドP4が形成され、配線層WL28の配線により受信回路104と接続されている。また、受信データVOUTを出力する外部端子T4と受信回路104とを接続するように、配線層WL27に配線が形成されている。
【0070】
次に、図5及び図6を用いて、本実施の形態に係るアイソレータの制御方法について説明する。図5は、アイソレータ100の制御方法(リーク電流を検出するテスト、または、絶縁膜劣化をテストするテスト方法)を示すフローチャートであり、図6は、その制御方法の信号波形例を示すタイミングチャートである。
【0071】
図5に示すように、まず、コントローラ200は、ハイサイドの電圧を上げるように信号を送信する(S101)。絶縁素子間のリーク電流を検出するにあたり、はじめにアイソレータ100の外部に接続されたコントローラ200は、アイソレータ100へハイレベル(Hi)を保った送信データVIN(プリセット信号)を送信する(図6の401)。そうすると、送信回路101は送信データVINの立ち上りに応じて送信側コイルL1に電圧を印可し、送信側コイルL1に正方向の電流I1が一時的に流れる(図6の402)。このため、受信側コイルL2では、送信側コイルL1の電流I1の変化に応じた起電力が発生し、誘導電圧V2が一時的に上昇する(図6の403)。受信回路104は、誘導電圧V2が上昇したため受信データVOUTをハイレベルに立ち上げる(図6の404)。
【0072】
これにより、アイソレータ100の後段に接続されるIGBT1が常時オン状態となり、基準電位GND2がIGBT1の電源電圧程度(〜kV)に固定され(図6の405)、受信側コイルの電圧V21も、誘導電圧V2の変化の後、電源電圧程度(〜kV)に固定される(図6の406)。
【0073】
続いて、コントローラ200は、スイッチSW1及びSW2をオフする(S102)。コントローラ200は、インピーダンス制御信号S1をハイレベルに立ち上げる(図6の407)。これにより、アイソレータ100の送信側チップ120のスイッチSW1とスイッチSW2がオフとなり、送信側絶縁素子であるコイルL1と送信回路101が電気的に切り離れるため、送信側絶縁素子であるコイルL1の両端子が高インピーダンスとなる。
【0074】
続いて、アイソレータ100は、一定時間後のコイルL1のリーク電圧VLを検出する(S103)。スイッチSW1及びSW2をオフしたことにより、送信側絶縁素子であるコイルL1と送信回路101間の電流の出入りが阻止され、コイルL1及びL2の絶縁素子間のリーク電流の検出感度が向上する。スイッチSW1及びSW2をオフにしたとき、送信側絶縁素子であるコイルL1はスイッチオフ直前の電位状態にある。受信回路104の電位は送信回路101の電位より高い(数kV)ため、受信側絶縁素子であるコイルL2から送信側絶縁素子であるコイルL1へ絶縁膜107の劣化状態に応じたリーク電流が流れ込む。このリーク電流を送信側絶縁素子であるコイルL1に付加した電圧検出手段、例えば容量(寄生容量も含む)であるコンデンサC1に充電して電圧(リーク電圧VL)に変換する。リーク電圧VLは、リーク電流を積分した値となるため、時間とともに上昇する(図6の408)。
【0075】
続いて、アイソレータ100は、コイルL1のリーク電圧LVがしきい値Vth以下か否か判定する(S104)。コンデンサC1の電圧をコンパレータCMP1に入力し、絶縁膜の正常/異常の判定基準となるリーク電流値に相当する電圧値をコンパレータCMP1のしきい値(リファレンス電圧)Vthに設定しておくことで絶縁膜の劣化を検出する。コンパレータCMP1は、インピーダンス制御信号S1がハイレベルの間に流れるリーク電流を積分したリーク電圧VLとしきい値Vthとを比較する。このコンパレータCMP1の比較結果をエラー信号S2としてコントローラ200に出力し、コントローラ200がエラー信号S2に応じてアイソレータ100の動作を制御する。
【0076】
コイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vth以下の場合、コントローラ200は、通常動作を開始する(S105)。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値以下の場合、エラー信号S2をローレベルのままとする(図6の409)。コントローラ200は、所定期間(インピーダンス制御信号S1がハイレベルの期間)、規定値以下のリーク電流に相当するローレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100を正常と判断し、通常動作を開始する(図6の410)。コントローラ200は、モーター301を制御するための送信データVINをアイソレータ100に入力し、IGBT1を駆動してモーター301の回転を開始する。
【0077】
また、コイルL1のリーク電圧VLがしきい値よりも大きい場合、コントローラ200は、アラームを出力し(S106)、安全停止を行う(S107)。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値を超えると、エラー信号S2をハイレベルに立ち上げる(図6の411)。コントローラ200は、所定期間内に、規定値以上のリーク電流に相当するハイレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100の絶縁膜が異常であると判断し、アイソレータ100の動作を停止する(図6の412)。コントローラ200は、ローレベルの送信データVINをアイソレータ100に入力し、IGBT1をオフしてモーター301の回転を停止させる。これにより、システム全体の破壊を未然に防止する。
【0078】
このように、本実施の形態では、実施の形態1の具体例として、絶縁素子102及び103をコイルL1及びL2により構成し、インピーダンス制御部105をスイッチSW1及びSW2により構成し、リーク電流検出部106をコンデンサC1及びコンパレータCMP1で構成することとした。この構成において、絶縁素子であるコイルのインピーダンスを制御してリーク電流を検出し、検出したリーク電流に応じたエラー信号を送信するようにした。これにより、コイル間の絶縁破壊前に絶縁膜の劣化を検出でき、アイソレータを安全に停止することが可能となるため、アイソレータの信頼性を向上させることができる。
【0079】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態3について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示したアイソレータに対しリーク電流を検出する絶縁素子に初期電位を印可する手段を追加し、リーク電流の変動が第1のしきい値から第2のしきい値の範囲内か否かを判定する例である。
【0080】
図7は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図7では、実施の形態2の図2と比べて、アイソレータ100の送信側チップ120にスイッチSW0を備えている。また、リーク電流検出部106が、コンパレータCMP1及びCMP2、論理回路OR1を備えている。その他の構成については、図2と同様である。
【0081】
スイッチSW0は、送信回路101の第3の出力端子とコイルL1の一端との間に接続されるとともに、制御端子が外部端子T0に接続される。スイッチSW0は、コントローラ200から制御端子に入力されるバイアス制御信号S0に応じてオン/オフし、送信回路101の第3の出力端子とコイルL1との一端との接続/切断を切り替える。
【0082】
コンパレータCMP1は、正入力端子がコイルL1の他端と基準電位GND1の間に接続され、負入力端子に第1のしきい値Vth1が入力され、出力端子が論理回路OR1に接続される。コンパレータCMP1は、コイルL1のリーク電流に応じたリーク電圧VLとしきい値Vth1とを比較し、比較結果を論理回路OR1へ出力する。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値Vth1よりも大きい場合、ハイレベルを出力する。
【0083】
コンパレータCMP2は、正入力端子に第2のしきい値Vth2が入力され、負入力端子がコイルL1の他端と基準電位GND1の間に接続され、出力端子が論理回路OR1に接続される。コンパレータCMP2は、コイルL1のリーク電流に応じたリーク電圧VLとしきい値Vth2とを比較し、比較結果を論理回路OR1へ出力する。コンパレータCMP2は、リーク電圧VLがしきい値Vth2よりも小さい場合、ハイレベルを出力する。
【0084】
論理回路OR1は、一方の入力端子がコンパレータCMP1の出力端子に接続され、他方の入力端子がコンパレータCMP2の出力端子に接続され、出力端子が外部端子T3に接続される。論理回路OR1は、複数のコンパレータからの入力をOR論理演算し演算結果を出力する。論理回路OR1は、コンパレータCMP1の出力がハイレベル、または、コンパレータCMP2の出力がハイレベルの場合、エラー信号S2をハイレベルとする。すなわち、論理回路OR1は、リーク電圧VLがしきい値Vth1よりも大きい場合、または、リーク電圧VLがしきい値Vth2よりも小さい場合、エラー信号S2をハイレベルとする。
【0085】
次に、図8及び図9を用いて、本実施の形態に係るアイソレータの制御方法について説明する。図8は、アイソレータ100の制御方法(リーク電流を検出するテスト、または、絶縁膜劣化をテストするテスト方法)を示すフローチャートであり、図9は、その制御方法における送信側絶縁素子の電圧VLの信号波形例を示している。
【0086】
図8に示すように、まず、実施の形態2の図5と同様に、コントローラ200は、ハイサイドの電圧を上げるように信号を送信する(S101)。図6と同様に、コントローラ200は、アイソレータ100へハイレベルのプリセット信号を送信すると、コイルL1及びコイルL2を介して、IGBT1がオン状態となり、基準電位GND2が上昇する。
【0087】
続いて、コントローラ200は、スイッチSW0をオンし(S111)、その後、スイッチSW0、SW1及びSW2をオフする(S112)。
【0088】
実施の形態2では、S101の後、送信側絶縁素子と送信回路をスイッチSW1及びSW2で切り離している。このとき、送信側絶縁素子はスイッチをオフする前の電位状態にあるため、その電位は不定である。絶縁素子の初期電位はリーク電流の検出感度に大きく影響するため、本実施の形態では、スイッチSW0により初期電位を制御する。
【0089】
すなわち、本実施の形態では、絶縁素子のインピーダンスを制御する前に、コントローラ200は、バイアス制御信号S0をハイレベルとしてスイッチSW0をオンする(図9の501)。そうすると、送信側絶縁素子のコイルL1にスイッチSW0を介して接続された送信回路101及び電源Vbiasにより、あらかじめ任意の初期電圧(例えばVDD/2)が印可される。その後、コントローラ200は、バイアス制御信号S0をローレベル、インピーダンス制御信号S1をハイレベルとして、スイッチSW0、SW1、SW2をオフにする(図9の502)。
【0090】
続いて、アイソレータ100は、一定時間後のコイルL1のリーク電圧VLを検出し(S103)、コイルL1のリーク電圧VLが第1のしきい値Vth1より大きいか否か、または、第2のしきい値Vthより小さいか否か判定する(S113)。
【0091】
本実施の形態では、リーク電流の検出においては、2つの並列接続されたコンパレータCMP1及びCMP2を電圧検出器として用いる。これらのコンパレータCMP1及びCMP2にはそれぞれしきい値(リファレンス電圧)Vth1、Vth2が入力されている。第1のしきい値Vth1を一方のコンパレータCMP1のリファレンス側、第2のしきい値Vth2をもう一方のコンパレータCMP2の入力側に接続し、リーク電流により変動したリーク電圧VLがVth1〜Vth2の範囲か否かを判定し(図9の503)、判定結果が論理回路OR1からエラー信号S2としてコントローラ200へ出力される。
【0092】
コイルL1の電圧がしきい値Vth1〜Vth2の範囲内の場合、コントローラ200はアイソレータ100が正常(リーク電流無し)であると判断し、通常動作を開始させる(S105)。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値Vth1以下の場合、出力信号はローレベルであり、コンパレータCMP2は、リーク電圧VLがしきい値Vth2以上の場合、出力信号はローレベルであり、論理回路OR1は、エラー信号S2をローレベルのままとする。コントローラ200は、所定期間(インピーダンス制御信号S1がハイレベルの期間)、規定値範囲内のリーク電流に相当するローレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100を正常と判断し、通常動作を開始する。
【0093】
また、コイルL1のリーク電圧VLの電圧上昇がVth1より大きくなる場合、または電圧降下がVth2より低くなる場合、コントローラ200は異常(リーク電流有り)であると判断し、アラームを出力し(S106)、安全停止を行う(S107)。コンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値Vth1を超えると、出力信号をハイレベルとし、また、コンパレータCMP2は、リーク電圧VLがしきい値Vth2より低くなると、出力信号をハイレベルとするため、論理回路OR1は、エラー信号S2をハイレベルに立ち上げる。
【0094】
コントローラ200は、所定期間内に、規定値範囲外のリーク電流に相当するハイレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100の絶縁膜が異常であると判断し、アイソレータ100の動作を停止する。これにより、システム全体の破壊を未然に防止する。
【0095】
このように、本実施の形態では、実施の形態2に対して、さらに、絶縁素子の初期電位をスイッチSW0により一定とし、コンパレータCMP1及びCMP2によりしきい値Vth1としきい値Vth2の範囲内のリーク電流を検出するようにした。このような構成により、リーク電流検出部106へ電流が流入する場合に限らず、リーク電流検出部106から電流が流出する場合のいずれにおいてもリーク電流を検出可能である。すなわち、コイルL1とコイルL2との電位差によって、コイルL2からコイルL1へリーク電流が流れる場合と、コイルL1からコイルL2へリーク電流が流れる場合とがあり、本実施の形態では、いずれの場合でも精度よくリーク電流を検出することができる。
【0096】
(実施の形態4)
以下、図面を参照して実施の形態4について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示したアイソレータに対してリーク電圧を記憶する記憶手段を追加した例である。
【0097】
図10は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図10では、実施の形態2の図2と比べて、リーク電流検出部106が、コンデンサC1及びコンパレータCMP1に加えて、記憶回路M1を備えている。その他の構成については、図2と同様である。
【0098】
記憶回路M1は、コンパレータCMP1の正入力端子に接続されるとともに、コンパレータCMP1の負入力端子に接続される。記憶回路M1は、今回、コンパレータCMP1が比較を行ったリーク電圧VLが入力されて、入力された電圧VLを記憶する。また、記憶回路M1は、前回のコンパレータCMP1の比較で使用され記憶しているリーク電圧VL+ΔVを、今回のコンパレータCMP1のしきい値Vthとして出力する。
【0099】
図11は、本実施の形態に係るアイソレータ100の制御方法(リーク電流を検出するテスト、または、絶縁膜劣化をテストするテスト方法)を示すフローチャートである。
【0100】
図11に示すように、まず、実施の形態2の図5と同様に、コントローラ200は、ハイサイドの電圧を上げるように信号を送信し(S101)、スイッチSW1及びSW2をオフする(S102)。
【0101】
続いて、アイソレータ100は、一定時間後のコイルL1のリーク電圧VLを検出する(S103)。そして、アイソレータ100は、記憶回路M1からしきい値Vthを読み出し(S121)、コイルL1のリーク電圧VLが読み出したしきい値Vth以下か否か判定する(S104)。
【0102】
記憶回路M1は、前回のリーク電流のテストにおいて検出されたリーク電圧VLを記憶しており、この前回のリーク電圧VL+ΔVをしきい値Vthとして読み出し、コンパレータCMP1の負入力端子に入力する。そうすると、コンパレータCMP1は、現在のコイルL1のリーク電圧と、前回のリーク電圧VL+ΔVとを比較する。
【0103】
コイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vth以下の場合、記憶回路M1は、コイルL1のリーク電圧を記憶し(S122)、コントローラ200は、通常動作を開始する(S105)。コンパレータCMP1は、今回のリーク電圧VLが、前回のリーク電圧VL+ΔV以下の場合、エラー信号S2をローレベルのままとする。そうすると、記憶回路M1は、今回、コンパレータCMP1が比較したリーク電圧VLを記憶する。また、コントローラ200は、所定期間、ローレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100を正常と判断し、通常動作を開始する。
【0104】
また、コイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vthよりも大きい場合、コントローラ200は、アラームを出力し(S106)、安全停止を行う(S107)。コンパレータCMP1は、今回のリーク電圧VLが、前回のリーク電圧VL+ΔVを超えると、エラー信号S2をハイレベルに立ち上げる。コントローラ200は、所定期間内に、ハイレベルのエラー信号S2が入力されたため、アイソレータ100の絶縁膜が異常であると判断し、アイソレータ100の動作を停止する。これにより、システム全体の破壊を未然に防止する。
【0105】
絶縁膜の異常判定基準を一定のリーク電流値で規定する方法は、種々のばらつきやノイズの影響から十分な検出精度が得られない場合もある。そこで、本実施の形態では、前回のテスト時の絶縁膜の状態を判定基準とし、この状態からのリーク電流の差分を観測することで異常を判定する。リーク電流を充電することで生成するコンパレータCMP1のリーク電圧VLがしきい値(リファレンス電圧)Vthを上回ると絶縁膜劣化としてエラー信号S2がコントローラ200へ送信される。絶縁素子間に印加される電圧はほぼIGBT1の電源電圧で決まるので、絶縁膜に劣化がない限り毎回のテストにおいてリーク電流値はほぼ等しくなる。
【0106】
そこで、テスト時にリーク電流測定結果(VL)をレジスタ等の記憶回路M1に保持しておき、次回のテスト時に、読み出した前回のリーク電圧VL+ΔVをしきい値Vthに設定する。ここでΔVは任意の電圧マージンであり、ばらつきやノイズの影響を排除するために導入しても良い。
【0107】
このように、本実施の形態では、実施の形態2に対して、さらに、リーク電流に応じたリーク電圧を記憶する記憶回路M1を備え、前回のテストで使用したリーク電圧を、次回のリーク電圧を判定するためのしきい値に使用することとした。これにより、リーク電流の変動を検出することができるため、精度よく絶縁膜の劣化状態を検出することができる。
【0108】
(実施の形態5)
以下、図面を参照して実施の形態5について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示したアイソレータに対し、リーク電流の検出に応じてアイソレータを停止させる手段を追加した例である。
【0109】
図12は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図12では、実施の形態2の図2と比べて、アイソレータ100の送信側チップ120にスイッチSW4を備えている。その他の構成については、図2と同様である。
【0110】
スイッチSW4は、コイルL1の他端と基準電位GND1との間に接続されるとともに、制御端子がコンパレータCMP1の出力端子に接続される。スイッチSW4は、コンパレータCMP1から制御端子に入力されるエラー信号S2に応じてオン/オフし、コイルL1の他端と基準電位GND1との接続/切断を切り替える。スイッチSW4は、エラー信号S2に応じて、コイルL1を基準電位GN1とする基準電位供給回路ともいえる。
【0111】
上記各実施の形態では絶縁劣化の検出精度と、検知結果のフィードバック時間を確保することが重要である。例えば、非特許文献1の実測結果では、絶縁膜劣化の影響が現れはじめる時刻は破壊前の数us〜数nsであり、破壊に近づくほどリーク電流が増加する。
【0112】
このように絶縁劣化の検出精度を向上するために大きなリーク電流をエラー判定基準に設定するほど、検出結果をコントローラ200にフィードバックしてシステムを制御するまでの時間余裕が短くなっていくトレードオフがある。例えば、回路/システムの規模が大きい場合などはコントローラ200を介したシステム制御時間が十分に確保できず問題となる可能性がある。
【0113】
そこで、本実施の形態では、コンパレータCMP1からの出力信号をコントローラ200に送信するだけでなく、アイソレータ100を直接停止させる。
【0114】
図12の例では、送信側絶縁素子であるコイルL1にスイッチSW4を介して基準電位GND1(〜0V)を接続する。スイッチSW4は、コンパレータCMP1の出力がハイレベル(Hi)、すなわち絶縁劣化エラーが出力された場合のみオフとなり、送信側絶縁素子の電位レベルを強制的にローレベル(Low)に落とす。この結果、IGBT1がオフに戻り、絶縁素子間の高電圧印加状態が解除される。
【0115】
このように、本実施の形態では、実施の形態2に対して、さらに、リーク電流の検出に応じてコイルの電位を制御するスイッチSW4を備えることとした。これにより、絶縁破壊前のリーク電流を検出した場合に、アイソレータ本体を緊急停止させた後で、コントローラ200により全体を停止させることが可能である。したがって、確実に、絶縁素子間の短絡を起こすことなくシステムを停止させることができる。
【0116】
(実施の形態6)
以下、図面を参照して実施の形態6について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示したアイソレータに対して、コンデンサの代わりにアンプを用いてリーク電流を電圧に変換する例である。
【0117】
図13は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図13では、実施の形態2の図2と比べて、リーク電流検出部106は、コンパレータCMP1とアンプAMP1とを備えている。その他の構成については、図2と同様である。
【0118】
アンプAMP1は、リーク電流を電圧に変換し増幅する、電流電圧変換増幅回路である。アンプAMP1は、正入力端子が参照電圧Vth1に接続され、負入力端子がコイルL1の他端に接続され、出力端子が抵抗R1を介して負入力端子へフィードバック接続されるとともに、コンパレータCMP1の負入力端子に接続される。
【0119】
上記の実施の形態のようにリーク電流の検出には必ずしも容量を用いなくても良い。本実施の形態では、図13に示すように、リーク電流を直接アンプAMP1で増幅した後、エラー検出用コンパレータCMP1へ入力する。リーク電流をIL、帰還抵抗をR1とすると、アンプAMP1の出力電圧の、参照電圧Vth1との差電圧ΔVLは以下の(式1)となる。
[数1]
ΔVL=IL×R1 ・・・(式1)
アンプAMP1の増幅により、リーク電流ILに応じたリーク電圧VLが得られる程度にリーク電流ILが大きいことが好ましい。そして、絶縁膜劣化のないリーク電流値に対応する電圧をコンパレータCMP1のしきい値Vth2に設定しておけば、リーク電流の異常増加が生じたときにエラーを検出できる。
【0120】
このように、本実施の形態では、実施の形態2に対し、リーク電流検出部の電流電圧変換手段として、コンデンサの代わりにアンプを使用することとした。アンプを使用した場合でも、上記実施の形態と同様に、リーク電流を検出することができる。したがって、リーク電流に応じてエラー信号を生成し、絶縁膜破壊の前にアイソレータを停止することが可能となるため、アイソレータの信頼性を向上させることができる。
【0121】
(実施の形態7)
以下、図面を参照して実施の形態7について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示した複数のアイソレータの検出結果に応じて全アイソレータの動作を制御する例である。
【0122】
図14は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図14に示すように、半導体装置1は、コントローラ200と複数のアイソレータ100(100a〜100c)を備えており、複数のIGBT(IGBT1〜IGBT3)が接続されている。さらに半導体装置1は、コントローラ200と複数のアイソレータ100の間に論理回路OR2を備えている。
【0123】
論理回路OR2は、複数の入力端子が各アイソレータ100のエラー信号(個別エラー信号)S2を出力する外部端子T3に接続され、出力端子がコントローラ200のエラー信号(全体エラー信号)SEの入力端子に接続される。論理回路OR2は、複数のアイソレータからの入力をOR論理演算し演算結果を出力する。論理回路OR2は、複数のアイソレータ100のいずれかのエラー信号S2がハイレベルの場合、エラー信号SEをハイレベルとしてコントローラ200へ出力する。
【0124】
図15は、本実施の形態に係るアイソレータ100の制御方法(リーク電流を検出するテスト、または、絶縁膜劣化をテストするテスト方法)を示すフローチャートである。
【0125】
図15に示すように、まず、コントローラ200は、テストを行うアイソレータ100を選択する(S131)。例えば、コントローラ200は、アイソレータ100a〜100cのうち、アイソレータ100aから順番に選択する。なお、ここでは、アイソレータを順次選択してテストを行うが、複数のアイソレータを同時にテストしてもよい。この場合、S101〜S104を全アイソレータに対し同時に行う。
【0126】
続いて、選択されたアイソレータ100に対し、実施の形態2の図5と同様に、コントローラ200は、ハイサイドの電圧を上げるように信号を送信し(S101)、スイッチSW1及びSW2をオフする(S102)。さらに、選択されたアイソレータ100は、一定時間後のコイルL1のリーク電圧VLを検出し(S103)、コイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vth以下か否か判定する(S104)。
【0127】
選択されたアイソレータ100のコイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vth以下の場合、コントローラ200は、全てのアイソレータ100のテストが終了したか否か判定する(S132)。コントローラ200は、残りのアイソレータのテストを行う場合にはS131へ戻って、次のアイソレータ100を選択し、また、全てのアイソレータのテストが終了した場合、通常動作を開始する(S105)。
【0128】
アイソレータ100のコンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値Vth以下の場合、ローレベルのままのエラー信号S2を出力する。論理回路OR2は、入力されるエラー信号S2がローレベルのため、ローレベルのままのエラー信号SEをコントローラ200へ出力する。
【0129】
コントローラ200は、所定期間、ローレベルのエラー信号SEが入力されたため、選択しているアイソレータ100を正常と判断し、次のアイソレータのテストを繰り返し、全てのアイソレータのテストが正常に終了すると、通常動作を開始する。
【0130】
また、選択されたアイソレータ100のコイルL1のリーク電圧VLがしきい値Vthよりも大きい場合、コントローラ200は、アラームを出力し(S106)、全てのアイソレータを安全停止させる(S133)。
【0131】
アイソレータ100のコンパレータCMP1は、リーク電圧VLがしきい値を超えると、エラー信号S2をハイレベルに立ち上げる。論理回路OR2は、入力されるエラー信号S2がハイレベルのため、エラー信号SEを立ち上げる。コントローラ200は、所定期間内に、ハイレベルのエラー信号SEが入力されたため、選択されたアイソレータ100の絶縁膜が異常であると判断する。そうすると、コントローラ200は、全てのアイソレータ100の動作を停止する。これにより、システム全体の破壊を未然に防止する。
【0132】
モーター制御では3相分のアイソレータが必要でそのどれか一つでも短絡してしまうと誤動作やシステム損傷が起こる。そのため、本実施の形態では、全アイソレータを監視し、いずれか絶縁性が劣化した場合は全IC(アイソレータ)の動作を停止することとした。これにより、アイソレータの信頼性をさらに向上することができる。
【0133】
(実施の形態8)
以下、図面を参照して実施の形態8について説明する。本実施の形態は、実施の形態2で示したアイソレータに加えて、受信側絶縁素子のリーク電流を検出するアイソレータを備える例である。
【0134】
図16は、本実施の形態に係るアイソレータを含むモーター制御システムの構成を示している。図16に示すように、半導体装置1は、コントローラ200、アイソレータ100、アイソレータ100−2、論理回路OR3を備えている。
【0135】
アイソレータ100は、コントローラ200からモーター301へ信号を伝達する。アイソレータ100−2は、モーター301からコントローラ200へ信号を伝達する。
【0136】
アイソレータ100−2は、送信側チップ120−2、受信側チップ130−2を備えている。送信側チップ120−2は、送信回路101−2を備えている。受信側チップ130−2は、絶縁素子102、絶縁素子103、受信回路104−2、インピーダンス制御部105、リーク電流検出部106を備えている。
【0137】
送信回路101−2は、エラー検知回路302から外部端子T4を介して送信データVINが入力され、入力された送信データVINに基づき交流送信信号を生成する。この交流送信信号は基準電位GND2(第2の基準電位)を基準とした信号である。
【0138】
絶縁素子103は、送信回路101から交流送信信号が供給される。絶縁素子102と絶縁素子103との間に絶縁膜107が形成されている。絶縁素子102は、絶縁膜107を介して絶縁素子103と交流結合することにより、交流受信信号を生成する。この交流受信信号は、基準電位GNDとは異なる基準電位GND1(第1の基準電位)を基準とした信号である。
【0139】
受信回路104は、絶縁素子102からインピーダンス制御部105を介して交流受信信号が入力される。受信回路104は、入力された交流受信信号に基づき受信データVOUTを再生し、受信データVOUTを外部端子T2を介してコントローラ200へ出力する。
【0140】
インピーダンス制御部105は、アイソレータ100と同様に、コントローラ200から外部端子T1を介してインピーダンス制御信号S1が入力され、入力されたインピーダンス制御信号S1に基づき絶縁素子102のインピーダンスを高インピーダンスに制御する。リーク電流検出部106は、アイソレータ100と同様に、インピーダンスが制御された絶縁素子102を介してリーク電流を検出し、リーク電流に応じた検出結果であるエラー信号S2を外部端子T3を介してコントローラ200へ出力する。
【0141】
論理回路OR3は、複数の入力端子が各アイソレータのエラー信号S2を出力する外部端子T3に接続され、出力端子がコントローラ200のエラー信号SEの入力端子に接続される。論理回路OR3は、複数のアイソレータからの入力をOR論理演算し演算結果を出力する。論理回路OR3は、複数のアイソレータ100のいずれかのエラー信号S2がハイレベルの場合、エラー信号SEをハイレベルとしてコントローラ200へ出力する。
【0142】
信頼性が重要視される車載用モーター制御などの用途では、アイソレータの状態だけでなくIGBTやモーターの状態も監視される。例えば、図16のように、アイソレータ不通検知、IGBT過電流検知、過熱検知等を監視し出力するエラー検知回路302を備える。本実施の形態では、この監視結果の信号を1次側に返すためにもう1つのアイソレータ100−2を備える。そして、フィードバック用アイソレータの受信側にもリーク電流検出部を設ける。
【0143】
このように、受信側にリーク電流検出部を設けた場合でも、上記実施の形態と同様に、リーク電流を検出することができる。したがって、リーク電流に応じてエラー信号を生成し、絶縁膜破壊の前にアイソレータを停止することが可能となるため、アイソレータの信頼性を向上させることができる。
【0144】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0145】
なお、アイソレータとは、異電位回路間を非接触に信号を伝達できる回路である。アイソレータの信号伝達方式には、コイル(L)による磁場(磁気結合),コンデンサ(C)による電場(容量結合)、カプラによる光、アンテナによる電波等を介する方式を含み、どの方式でも、非接触に信号を伝達し受信回路側(2次側)の電位を上記実施の形態のように制御することができる。少なくとも絶縁膜を介した絶縁素子を有するアイソレータであれば、上記実施の形態を適用することにより、絶縁膜破壊前の状態を検出し、信頼性向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0146】
1 半導体装置
100 アイソレータ
101 送信回路
102 絶縁素子(送信側絶縁素子)
103 絶縁素子(受信側絶縁素子)
104 受信回路
105 インピーダンス制御部
105a MOSトランジスタ
106 リーク電流検出部
106a、106b MOSトランジスタ
107 絶縁膜(層間絶縁膜)
120 送信側チップ
130 受信側チップ
200 コントローラ
207 層間絶縁膜
300 被制御機器
301 モーター
302 エラー検知回路
P1〜P4 パッド
T0〜T4 外部端子
L1 コイル(送信側コイル)
L2 コイル(受信側コイル)
L3 コイル
SW0〜SW4 スイッチ
C1 コンデンサ
CMP1、CMP2 コンパレータ
OR1〜OR3 論理回路
M1 記憶回路
AMP1 アンプ
R1 抵抗
SUB1、SUB2 シリコン基板
GL10、GL20 ゲート電極層
WL11〜WL18 配線層
WL21〜WL28 配線層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19