特許第6527411号(P6527411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6527411
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】炭化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20190527BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C10B53/02
   B09B3/00 303Z
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-137324(P2015-137324)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-18873(P2017-18873A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】515188198
【氏名又は名称】岡部 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】岡部 敏弘
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−325921(JP,A)
【文献】 特表2008−514761(JP,A)
【文献】 特表2000−501138(JP,A)
【文献】 特開2002−060272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00−5/00
C01B53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材、紙、古紙、コットンリンター及びカシューナッツ殻からなる群から選ばれた少なくとも1種の植物系材料と、カシューナッツ殻油と、液化反応を促進するための酸触媒を、重量比で1:1.0〜20.0:0.1〜5.0の割合で混合し混合液を得る工程、
前記混合液を温度140℃〜200℃で1時間以上加熱し液状化して植物系液化物を得る工程、
前記植物系液化物を、木材、木質材料、カシューナッツ殻、コットンリンター、紙、及び古紙からなる群から選ばれた1種以上の植物系材料と混合する混合工程、及び
前記混合工程で得られた前記植物系液化物と前記植物系材料の混合物を無酸素雰囲気中、温度300〜2800℃で焼成する工程
からなる炭化物の製造方法において、
前記植物系材料と前記植物系液化物を混合するとき、ヘキサメチレンテトラミンを添加して、製造される炭化物のインピーダンスを減少させる効果を得る
ことを特徴とする炭化物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物の製造方法に関する。詳しくは、植物系原料及び/又はカシューナッツ殻油を用いて植物系液化物を製造し、この植物系液化物を利用して炭化物を製造する炭化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物、二酸化炭素等の排出抑制、資源の効率的活用、リサイクル等に代表されるように、地球環境保護の要求が高まっている。この中で、廃材、木皮、古紙、オガクズ等の木質系の廃棄物を液化処理して、プラスチックや樹脂の原料にする技術が開発され、普及している。液化処理としては、フェノール類、アルコール類等の汎用の有機溶剤に溶かす技術、いわゆる木材液化法がある。
【0003】
例えば、この木材液化法の液化溶媒として、具体的にはフェノール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ラクトン類、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が用いられる。木質系物質の成分はセルロースが多い。木質系物質は、フェノール類やエチレングリコール等の高沸点アルコール類と酸触媒存在下で、150℃程度で処理することにより、メタノール、ジオキサン、アセトン等の汎用の有機溶剤に完全に溶解するタール状の物質に変換できる。
【0004】
アルコール類を用いた液化処理では、木材等のセルロースは解重合し、対応するアルコールとのグルコシドを生成する。そして、長時間の反応でグルコシドは分解し、レブリン酸アルコールエステル類を生成する。しかし、フェノール類を用いた液化処理では、セルロースは、分解され、糖骨格が残存せず、完全に液化される。一般的に、フェノール類はアルコール類より分解処理速度が速い。
【0005】
また、炭酸エチレンは、酸条件下で分解しアルコール類となる高誘電性物質である。液化処理に炭酸エチレンを用いると、セルロースは、約10分程度の短時間で完全に液化する。この処理速度は、エチレングリコールやPEG400(Polyethylene Glycol 400)/エチレングリコール等のアルコール類を用いた場合と比べ非常に速く、例えば10〜30倍の速さである。このように製造される木質系液化物は、ウレタン樹脂等の原料としても利用、また、プラスチックの原料としても広く利用されている。
【0006】
この中で、本発明者等は、紙製品、家具から家屋に至るまで多くの木質系資源を再利用する方法の一つとしては、植物係由来のフェノール化合物類を利用したウッドセラミックスを提案した(例えば、特許文献1を参照。)。ウッドセラミックスは、従来の金属、プラスチック、ファインセラミックス等に代わる新しい材料として注目されている(非特許文献1を参照)。
【0007】
ウッドセラミックスは、木質材料、オガクズ、古紙、パルプ原料等を成形したものを原料に、これに熱硬化性樹脂木質系液化物等のフェノール樹脂を含浸させた後、高温真空中で焼成して製造される多孔質炭素材料である。ウッドセラミックスは、伝統的炭素材料である木炭と、炭素繊維、カーボンナノチューブ等(等は複数の例示)に代表される機能性炭素材料の性質を取り入れ、両者の中間的性質をもつ機能性複合材料である。
【0008】
ウッドセラミックスは、用途として電波吸収体、ウッドセラミックスコークス、遠赤外線放射体(ウッドセラミックスレンガ)、湿度センサー、電極等としての利用が進んでいる(非特許文献1、2を参照)。特許文献1に記載のウッドセラミックスの製造方法によると、細片にした紙、古紙等の植物系材料とフェノール化合物を混合加熱して液状化して液化物を得る。この液化物を、木材、木質材料、古紙ボード等の植物系材料に含浸させて、無酸素雰囲気中で焼成してウッドセラミックスが製造される。
【0009】
液化物の製造に利用するフェノール化合物としては、フェノールをはじめとする石油由来の化合物、木酢油、パルプ廃液等から回収されるアルカリリグニン等が使用できる。地球環境の観点から有効利用が期待される材料としては、消費量が多く大量に廃棄されているカシューナッツ殻がある。カシューナッツ殻は種子のカシューナッツの殻であり、その中のカシューナッツを収穫した後、大量に廃棄されている。
【0010】
カシューはウルシ科の常緑高木であり、その花托が肥大したカシューアップルを実らせる。このカシューアップルの先端に位置し、殻に覆われた種子がカシューナッツである。カシューナッツは、ビタミンK、銅、鉄、マグネシウム等のミネラルを豊富に含んでいる。そのため、カシューナッツは、便秘解消、貧血予防、疲労回復等の生活習慣病の予防・改善効果があり、子供から年寄りまで幅広く食用に利用されている。
【0011】
カシューナッツはその堅い殻を取り除いて食用に使用される。カシューナッツを取り除いた後に残った殻を圧搾して得た油がカシューナッツ殻油である。カシューナッツ殻油は、産出量が多い天然資源でもある。また、カシューナッツ殻油は安価に製造されている。カシューナッツ殻油は塗料原料、樹脂原料を始め広く利用される。カシューナッツ殻油を重合するとカシュー樹脂になる。
【0012】
加熱処理されていないカシューナッツ殻油の主成分は、アナカルド酸が70%以上である。カシューナッツ殻油に熱処理を施すと、アナカルド酸が脱炭酸され、カルダノールが生成する。その結果、カシューナッツ殻油は、カルダノール(67.82%)、カルドール(18.20%)、2-メチルカルドール(3.32%)のような組成になる。
【0013】
更に、このカシューナッツ殻油を蒸留精製すると、カルダノールが95%以上含む精製品が得られる。カルダノールはフェノール誘導体である。このようにカシューナッツ殻油は、フェノールの含有率が高く、原料としてのフェノールの安価な天然原料である。このため、石油系や植物係由来のフェノール化合物類の代用品としての利用が期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−60272号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】岡部敏弘・柿下和彦・清水洋隆・西本右子・高崎明人・須田敏和・伏谷賢美・山本良一、「バイオコンポジットの現状と将来展望 4.バイオマスの炭化によるバイオコンポジット -ウッドセラミックスの現状と将来展望-」、日本材料学会論文誌 材料, Vol.60(2011), No.2, pp.175-181.
【非特許文献2】Takaki Kanbara, Keiichiro Nishimura and Takakazu Yamamoto, "Electronic double-layer capacitors using porous and electrically conducting clay-carbon composites as electrodes", Journal of Power Sources, 32(1990), p.165-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、本発明の発明者等は、ウッドセラミックスの製造方法を確立させた実績の上に、ウッドセラミックスを更に安価に製造することを検討し研究活動を続けてきた。従来のウッドセラミックスの製造に利用していた木酢油は、フェノール成分が77%以下である。この中で、安価な植物系原料であるカシューナッツ殻油は、フェノール含有率が95%以上と高く、植物由来のフェノールを含む原料として期待されている。
【0017】
また、上述のように、圧搾処理したカシューナッツ殻も大量に廃棄されており、廃棄物を資源として有効に利用するという意味からもその有効利用が求められている。
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
【0018】
本発明の目的は、カシューナッツ殻油を用いた植物系液化物及び植物系材料を用いて炭化物を製造する炭化物の製造方法を提供する。
本発明の他目的は、カシューナッツ殻油と、カシューナッツ殻を用いて安価な炭化物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の炭化物の製造方法は、
木材、紙、古紙、コットンリンター及びカシューナッツ殻からなる群から選ばれた少なくとも1種の植物系材料と、カシューナッツ殻油と、液化反応を促進するための酸触媒を、重量比で1:1.0〜20.0:0.1〜5.0の割合で混合し混合液を得る工程、
前記混合液を温度140℃〜200℃で1時間以上加熱し液状化して植物系液化物を得る工程、
前記植物系液化物を、木材、木質材料、カシューナッツ殻、コットンリンター、紙、及び古紙からなる群から選ばれた1種以上の植物系材料と混合する混合工程、及び
前記混合工程で得られた前記植物系液化物と前記植物系材料の混合物を無酸素雰囲気中、温度300〜2800℃で焼成する工程
からなる炭化物の製造方法において、
前記植物系材料と前記植物系液化物を混合するとき、ヘキサメチレンテトラミンを添加して、製造される炭化物のインピーダンスを減少させる効果を得る
ことを特徴とする
【0020】
前記温度は、好ましくは150℃〜160℃であることが好ましい。
【0024】
上記の定義した発明の各要素の詳細について、ここで詳しく説明する。
上記の発明から理解されるように、本発明は、カシューナッツ殻油とカシューナッツ殻の利活用にそれらの問題の解決の一助になるよう、カシューナッツ殻油を用いて、植物系液化物及び、この植物系液化物を利用した炭化物を製造する。
【0025】
[植物系材料]
本発明でいう植物系材料は、木屑、オガクズ等の木材、米糠、アシ、エスパルト、ジュート、ドイツリンター、タケ、麻、わら、ケナフ、ササ、バガス、リンゴ、米、大豆等の植物、紙、古紙、コットンリンター、カシューナッツ殻、パルプ原料等である。古紙としては、廃棄されている広告紙、コピー用紙、新聞紙、ダンボール紙、包装紙をはじめ一度利用された任意の紙が利用できる。
【0026】
[カシューナッツ殻油]
本発明でいうカシューナッツ殻油は、カシューナッツ殻を圧搾処理した油を熱処理及び/又は蒸留精製処理したものである。詳しくは、本発明でいうカシューナッツ殻油は、カシューナッツの実の殻、言い換えるとカシューナッツ殻を圧搾し油分を抽出し、それを加熱処理し蒸留精製したものである。
【0027】
この加熱処理及び蒸留精製により、カシューナッツ殻油は、フェノールの一種であるカルダノールを95%以上含む精製品になる。カシューナッツ殻油と植物系材料を用いて、植物系液化物を製造する。その手順は以下に詳しく説明する。カシューナッツ殻油は、カシューナッツの収穫した後の廃棄物を利用したものであり、安価な植物系の材料であり、これを利用して製造される、植物系液化物、炭化物は、原料のコスト削減ができる。
【0028】
[触媒、縮合剤]
本発明でいう触媒又は酸触媒は、硫酸、塩酸、シュウ酸、アミン等の触媒である。この中で硫酸は安価且つ入手が容易であることから触媒として好ましい。植物系液化物を加熱する温度が200℃以上である場合、触媒を添加する必要がない。触媒は一般的に物質を活性化する働きがあり、反応の温度を上げなくても反応を進行させ、反応速度を大きくする。本例では、硫酸を触媒として用い、140〜200℃の低温で植物系材料の液化反応を促進している。
【0030】
[植物系液化物]
本発明の植物系液化物とは、植物系材料とカシューナッツ殻油を混合し、触媒の存在下で加熱して得られた液状物であり、熱可塑性の樹脂である。これを冷却すると硬化する。植物系液化物の製造には、フェノール類を含有する木酢油、パルプ廃液から回収されるアルカリリグニンを、カシューナッツ殻油と混合して利用する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明の炭化物の製造方法によると、大量に廃棄されているカシューナッツ殻の有効利用になり、地球環境保全に貢献できる。カシューナッツ殻は安価な天然素材であり、安価な炭化物が製造できる。
本発明の炭化物の製造方法によると、硬化剤のヘキサメチレンテトラミンの添加は、ウッドセラミックスのインピーダンスを低下させる等の効果を得ることができる。
【0032】
本発明によると、カシューナッツ殻は安価な天然資源で、フェノールが95%以上含有されているので、従来のウッドセラミックス製造に用いていた木酢油より、炭化物を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、ウッドセラミックスの製造工程の例を示す概念図である。
図2図2は、本発明の実施例1において、植物系液化物を製造する各工程の成果物を示す写真であり、図2(a)は紙片を示す写真で、図2(b)は紙片を細かく切った様子を示す写真で、図2(c)は、ビーカーに入れた混合物を示す写真で、及び、図2(d)は製造された黒色の植物系液化物を示す写真である。
図3図3は、実施例3において、ウッドセラミックスの製造時の乾燥及び焼成の温度を制御する様子を示したグラフである。
図4図4は、実施例3において、ウッドセラミックスのインピーダンスの温度依存性を示すグラフである。
図5図5は、実施例3において、ウッドセラミックスのインピーダンスの湿度依存性を示すグラフである。
図6図6は本発明の実施例4において、植物系液化物を製造する各工程の成果物を示す写真であり、図6(a)は紙片をキムワイプの上に放置して乾燥させる様子を示す写真で、図6(b)は混合物を3時間加熱した後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態の概要を説明し、その後、具体的な実施例を説明する。
[植物系液化物の製造方法]
カシューナッツ殻油による植物系液化物の製造方法を説明する。植物系材料を木材チッパー等の切断手段で細かく切断する。この細かく切断した植物系材料を、必要であれば、漂白及び/又は洗浄する。この漂白と洗浄は、アセトンとメタノールの混合液を利用する方法等の公知の汎用の方法で行う。
【0035】
そして、植物系材料と、カシューナッツ殻油及び硫酸を容器に入れて混合し混合物を得る。混合物の混合比率は、植物系材料:カシューナッツ殻油:硫酸は重量比で1:1.0〜20.0:0.1〜5.0にする。混合物の混合比率の具体的な一例は、植物系材料:カシューナッツ殻油:硫酸は重量比で1:2.34:0.4又は1:3:0.4である。植物系材料の種類によってカシューナッツ殻油の量が足りないことがあるので、その場合、混合物中のカシューナッツ殻油の量を増やし、それに応じて硫酸の量も増やす。
【0036】
この混合した混合物を局所排気装置内で常圧で140℃〜200℃、好ましくは150℃〜160℃で加熱する。加熱中は、混合物を定期的に撹拌手段でかき混ぜる。混合物の量が少ない場合は、ガラス棒等で混合する。加熱によって混合物の反応が進むと、粘性がある液体に変化し、植物系液化物になる。得られた植物系液化物は、植物系材料の種類によって色が異なるが、基本的に、濃い茶色又は黒色になる。
【0037】
混合物の加熱時間は、植物系材料の種類に調整するが、1時間以上が好ましい。混合物の加熱時間の上限は植物系液化物のでき具合で決められるが、実用的には10時間以内であることが殆どである。通常、混合物を3時間程度加熱すると植物系液化物ができる。混合物の加熱終了後、植物系液化物の粘土が高く、その粘土を調整する場合、希釈溶液を加えて粘度を調整する。
【0038】
この粘土調整のために、希釈溶液を加えるとき、植物系液化物を常温より少し温めながら、例えば40℃前後に、行うと良い。希釈溶液としては、アルコールを用いるが、本例ではエタノールを使用した。ここで、硫酸は触媒の一例として利用しているが、他の触媒として塩酸、シュウ酸、アミン等を触媒として使用しても良い。硫酸を利用した場合は、植物系液化物が均一の液体になり、どろどろと流れるようなペースト状の液化物が得られる。
【0039】
硫酸は、均一で使いやすい粘土状の植物系液化物ができ上がることと、安価であるために、硫酸を触媒として使用することが好ましい。得られた植物系液化物は、その製造後、室温までに冷却すると硬化する。このようにして得られた植物系液化物は、フェノール系の熱硬化性樹脂として利用する。
【0040】
この植物系液化物は、後述するように、ウッドセラミックスの原料にすることができる。また、この植物系液化物はフェノールを含有する木酢油の代替物として利用することができる。植物系材料とカシューナッツ殻油を混合して、200℃以上に加熱する場合、触媒が必要ない。
【0041】
[植物系フェノール粉体の製造方法]
カシューナッツ殻油を利用して植物系フェノール粉体を製造する手順は、次の通りである。塩酸等の触媒とホルマリン等の縮合剤を容器で混合し、その上、カシューナッツ殻油を添加して混合し混合溶液を得る。そして、この混合溶液を、濾紙等の濾過手段で濾過し、濾過手段で得られた残渣に中和剤をかけ、中和しながら再度濾過手段で濾過する。このとき、得られた残渣を乾燥させ、さらに、メタノール等で洗浄し、液体分を蒸発させる。
【0042】
液体分が蒸発した後に粉体が得られる。この液体分の蒸発は、室温又は室温をより少し高い温度環境(例えば40℃前後)で放置することで行うことができる。このとき、メタノール等の液体分が気化し蒸発する。室温で放置し蒸発させることは、追加エネルギーが必要なく、安価な製造工程である。このように得られた粉体は、カシューナッツ殻油由来の植物系フェノール粉体である。
【0043】
この植物系フェノール粉体の製造は、常温より若干高い温度環境、例えば、40℃前後で行うと良い。得られた植物系フェノール粉体は、ウッドセラミックスの原料にすることができる。例えば、植物系材料と混合して焼成することで、ウッドセラミックスを製造することができる。特に、粉末にした植物系材料と、得られた植物系フェノール粉体を混合し、成形して焼成することで、ウッドセラミックスを製造する。
【0044】
触媒は塩酸や硫酸等の酸触媒を使用する。縮合剤は、ホルマリン等の汎用の縮合剤を使用する。触媒と縮合剤の混合に、カシューナッツ殻油は、単独で、または他の木酢油と混合して添加して混合溶液を得ることができる。
[炭化物の製造方法]
上述の植物系液化物を用いて、炭化物を製造する例をウッドセラミックスを例に説明する。その手順は次の通りである。
【0045】
[ウッドセラミックスについて]
一般的には、ウッドセラミックスとは、植物係材料とフェノール系液化物との複合材料を炭化することにより得られる多孔質炭素材料である。「セラミックス」は広義の定義では「イオン結合及び共有結合を有する無機質材料」と定義される。
【0046】
ウッドセラミックスは「木材を主原料(主材料)としたフェノール樹脂複合材料を炭素化することにより得られる多孔質炭素材料」であり、上述の定義の「セラミックス」に含まれる。ウッドセラミックスは、木質系材料由来の難黒鉛化炭素を、熱硬化性樹脂から製造する。ウッドセラミックスは、機械的にも化学的にも優れ、耐久性を有するガラス状炭素で補強した多孔質の炭素/炭素複合材料である。
【0047】
[ウッドセラミックスの製造工程]
図1には、本実施の形態のウッドセラミックスの製造工程の概要を示す例である。ウッドセラミックスの原料は、植物系材料とフェノール系原料からなる。図1の工程1に示すように、植物系材料を確保する材料確保工程の工程1、植物系材料にフェノール系原料を浸漬又は混合する工程2、成形加工の工程3、焼成工程4等からなる。
【0048】
焼成工程4の後は、ウッドセラミックスを得る。また、得られたウッドセラミックスを加工することができる(工程5)。よって、ウッドセラミックスの最終製品が製造される。
以下、各工程について説明する。
【0049】
[材料確保工程]
植物系材料は、木材及び木質材料と、微細化又は粉末化した植物系材料とに大別される(工程1)。木材及び木質材料と、材料の木材そのもの、及び/又は、木材を大小の構成要素に分解し再構成した木質材料である。木材と木質材料は、そのまま次の工程(工程2)に使うことができるが、旋削や切削等の加工を行い所定の形状に加工することができる(工程1a)。
【0050】
木材と木質材料以外の材料は、例えば、木材と木質材料を細かく切断したモノ、木くず、オガクズ、木繊維、紙、古紙を例示することができる。また、その他には、植物、植物の実や種を利用する際、廃棄物又は副産物として出るカシューナッツ殻、コットンリンター等も植物系材料になる。ここで例示した、カシューナッツ殻とコットンリンターは、産出量が多く、安価な天然資源である。
【0051】
カシューナッツ殻は、上述の通り、カシューナッツを取り除いた後に残った殻であり、又は、その殻から油分を圧搾抽出した後の残った殻である。コットンリンターはワタの種子に付いている短くて細い繊維であり、紙やセルロースの製造に原料として利用されている。コットンリンターはワタの種子の周りに付いている木綿を採取した後に残る繊維であり、一般に3mm未満の繊維である。
【0052】
また、建築用廃材の内の木質系材料や植物系材料等を、本発明に植物系材料として利用することができる。このように植物系材料は、そのまま次の工程2に利用することができるが、細かく切断、又は粉末化する処理を施して利用することが好ましい(工程1c)。植物系材料を細かく切断又は粉末化することで、その表面積を増やすことができるとともに、後段の成形等の加工処理も容易になる。
【0053】
[フェノール系原料を浸漬又は混合する工程]
この工程では、植物系材料に、フェノール系熱硬化性樹脂等のフェノール系原料を浸漬又は混合する(工程2)。本実施の形態おいて、フェノール系原料は、カシューナッツ殻油を用いて製造した植物系液化物である。木材又は木質材料の場合は、木材又は木質材料に、上述の本発明の植物系液化物、言い換えると、カシューナッツ殻油由来の液化物を含浸させる(工程2a)。
【0054】
含浸する方法は、超音波含浸装置、真空ポンプ装置等の公知の方法や装置を利用する。他の植物系材料に関しては、フェノール系原料と混合する。詳しくは、木材と木質材料を細かく切断したモノ、木くず、オガクズ、木繊維、紙、古紙、コットンリンター、カシューナッツ殻等の植物系材料を、上述の本発明の植物系液化物又は上述の本発明の植物系フェノール粉体と混合又は混練する(工程2b、工程2c)。
【0055】
[成形加工]
工程3の成形加工は、主に上述の工程2b、工程2cで得られた混合物を、成形し特定の形に加工する工程である。特に、この混合物を熱圧成形すると良い。このように、ウッドセラミックスは、焼成前の段階特定の形状に加工することが可能である。言い換えると、植物系材料にフェノール系原料を含浸又は混合させた後、これを特定の形状になるように成形加工することができる。
【0056】
[焼成工程]
焼成工程は、工程2a、工程3から得られたモノを、焼成炉で、無酸素状態で焼成する工程である。これによって、ウッドセラミックスが得られる。焼成炉は、無酸素状態で焼成する装置あれば公知の任意の装置を利用することができる。焼成温度は、300℃〜2800℃である。特に、500℃以上の温度で焼成すると、得られたウッドセラミックスの曲げ強度、曲げヤング率等の機械的特性が向上する。この工程で、焼成時に発生する熱分解物である木タールから抽出される木酢油は、抗菌剤、薬品、木材液化物への利用ができる。
【0057】
[ウッドセラミックスの加工]
得られたウッドセラミックスは、焼成後においても、その形状を加工することができる(工程5)。また、ウッドセラミックスは、焼成前の成形加工であっても、焼成後に微細加工もできる。木材や木質材料を利用したウッドセラミックスはその焼成後、切断等の加工、微細加工等ができる。
【0058】
このように、ウッドセラミックスは、焼成前の段階でも、焼成後の段階でも特定の形状に加工することが可能である。そのため、大量生産型商品にも少量多品種型商品にも対応が可能である。また、得られたウッドセラミックスは、特定の用途向けに加工することができる。例えば、ウッドセラミックスを放電加工する。
【0059】
[ウッドセラミックス]
本発明のウッドセラミックスは、その原料として木材、木質材料、古紙、建築用廃材、オガクズ、コットンリンター、カシューナッツ殻等を用いることができ、使用後には活性炭や燃料として再利用することができる。ウッドセラミックスは、導電性、摺動性、耐熱性、耐食性に優れ、電磁シールド材、摺動部材、発熱体、耐熱材、耐食材、クラフト素材等の用途がある。
【0060】
具体的に、ウッドセラミックスは、遠赤外線発熱体、温湿度センサー、電磁シールド材、クラフト、燃料電池電極、電気二重層コンデンサー、遠赤外線ウッドセラミックス乾燥機、融雪用骨材等へ応用できる。また、製造時に触媒として硫酸を利用した植物系液化物をウッドセラミックスの製造に用いると、製造されたウッドセラミックスの中に硫黄が微量に残る。硫黄は水銀と反応するので、ウッドセラミックスを水銀除去に利用することができる。
【0061】
ウッドセラミックスは、木材由来の無定形炭素と熱硬化樹脂(フェノール系原料)由来のガラス状炭素からなる複合材料である。汎用の木材と比べ、コットンリンターはワタの種子についているので、土壌の中の重金属が一番届きにくいものである。よって、コットンリンターは、重金属が無いか極端に少ない。
【0062】
そのため、コットンリンターを用いたウッドセラミックは、重金属が含有しては問題のあるものの用途に向いている。例えば、この素材は、電気二重層コンデンサー等に利用することができる。ウッドセラミックスの特性を制御するために、特定の化合物を、植物系液化物と植物系材料の混合物に添加することができる。この添加物とは、例えば、硬化剤のヘキサメチレンテトラミンであり、ウッドセラミックスのインピーダンスを低下させる等の効果を得ることができる。また、焼成時に水蒸気賦活処理を行い、活性化することもできる。
【0063】
[ウッドセラミックスの製造の具体な例]
ここで、ウッドセラミックスの製造の具体な例を示す。植物系液化物を、コットンリンター紙と混合し混合物を得る。植物系液化物はカシューナッツ殻油由来のものであり、フェノールが95%以上含有される。植物系液化物の粘性が高い場合は、植物系液化物をエタノール等で希釈する。混合物を、50℃で90分間真空乾燥する。その後、580℃で真空焼成する。よって、ウッドセラミックスが得られる。
【0064】
真空焼成は真空焼成炉で行われる。真空焼成炉内の温度上昇は室温から焼成温度までに上昇させる。例えば、1分間当たり1℃の速度で上昇されると良い。また、焼成温度は複数段階で設定することができる。例えば、真空焼成炉内の温度は、最初300℃で数分間保持して焼成し、その再度温度上昇して580℃で4時間焼成する。コットンリンター紙の替わりに、植物系材料としては、木材、紙、古紙、木くず、オガクズ、コットンリンター、カシューナッツ殻等の任意の植物、植物系材料が利用できる。
【実施例1】
【0065】
[植物系液化物の作製方法]
ここで、カシューナッツ殻油による植物系液化物の作製方法を説明する。図2(a)の写真に示したコットンリンター紙の紙片を、図2(b)の写真のように、幅が数mm、長さが数mm〜数cmになるように、細かく切った状態にした。この細かく切った紙片を、アセトン:メタノール=1:1の割合で混ぜて混合物にして、漂白・洗浄した。
【0066】
そして、漂白・洗浄した細かく切った紙片の紙と、カシューナッツ殻油、硫酸をビーカーに入れ混合した(図2(c)の写真を参照。)。混合の比率は、紙:カシューナッツ殻油:硫酸は重量比で1:3.12:0.5にした。この混合した混合物は、ドラフトチャンバー内で常圧、加熱温度150℃で3時間加熱した。この間、定期的にガラス棒等でかき混ぜた。ビーカー内に混合物の反応が進むと、図2(d)の写真に示すように、黒色の粘性がある液体に変化した。これは、植物系液化物である。加熱終了後、エタノールを30ml加えて攪拌し、植物系液化物の粘度を調整した。
【実施例2】
【0067】
[植物系フェノール粉体の製造方法]
本実施例2の実験は、40℃で行った。塩酸(36%)10mlとホルマリン(ホルムアルデヒドの37%水溶液)10mlをビーカーに入れて混合した。塩酸とホルマリンを混合したビーカーにカシューナッツ殻油を4ml加えて混合した。ビーカーの溶液が分離したら上澄みをろ紙で吸い取った。残った溶液をろ紙で濾過した。そのままの状態で、0.05%のアンモニア水溶液をろ紙の上からかけ中和させた。
【0068】
そして、ろ紙の上に残った残渣を水洗いし、その溶液をろ紙で濾過した。そして、このろ紙を乾燥させ、メタノールでろ紙を洗浄した。この洗浄液を一晩放置し、メタノールを気化させた。よって、メタノールの気化後、フェノール粉体を得られた。このフェノール粉体は天然の植物系フェノール粉体である。ここで利用したろ紙は、日本工業規格JIS P 3801に規定されている定量分析用ろ紙5種Aであった。
【実施例3】
【0069】
[植物系液化物を利用したウッドセラミックスの製造方法]
実施例1で製造した植物系液化物:コットンリンター:ヘキサメチレンテトラミンを1.5ml:0.06g:0.37gで混合し、テフロン(登録商標)容器に入れ攪拌し、冷蔵庫乾燥を一晩行った。コットンリンターは細かく切断したものである。ヘキサメチレンテトラミン(以下、テトラミンという。)は熱硬化性の性質を持っている。乾燥させた混合物を冷蔵庫から取り出して、蒸留水で水洗いした。
【0070】
そして、混合物の表面をキムタオルで軽くふき、水気をふき取った。そして、混合物を再度テフロン容器に入れ、真空乾燥炉内で温度50℃で3時間乾燥させた。その後、真空焼成炉で焼成温度580℃で4時間焼成した。焼成後、真空焼成炉を冷却し、焼成した混合物を取り出した。この焼成した混合物は、植物系液化物を利用したウッドセラミックスである。本実施例3の植物系液化物はカシューナッツ殻油を用いて製造した植物系液化物である。
【0071】
真空乾燥炉及び真空焼成炉内の温度制御を図3にグラフで図示している。図3にグラフは、横軸が時間と、縦軸が真空乾燥炉又は真空焼成炉内の温度(℃)を示す。真空乾燥炉と真空焼成炉は、内部温度を上昇するとき、図3の中の点A−B間、点C−D間のように、温度上昇速度が1℃/分で制御した。真空乾燥炉で加熱するときと、真空焼成炉で焼成するときは、図3の中の点B−C間、点D−E間のように、装置内部の温度を一定にした。
【0072】
焼成後、真空焼成炉の冷却は装置のファンを回しながら空冷した。本実施例で得られたウッドセラミックスのインピーダンスの温度依存性を測定した。この測定結果は図4のグラフの中でグラフEの「テトラミン5:1」グラフで示している。図4のグラフの横軸は温度を、縦軸はインピーダンスを示す。図4のグラフの中では、グラフFの「テトラミン5:3」と、グラフDのテトラミンを添加しないで、製造したウッドセラミックスの測定結果も図示している。
【0073】
図4のグラフの中では、グラフAの「CP−WCMs」は、コットンリンター紙に熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を混合し、焼成して作製したウッドセラミックスである。図4のグラフの中では、グラフBの「CP+L−WCMs(100%)」は、コットンリンター紙に植物系液化物を混合し、焼成して作製したウッドセラミックスである。図4のグラフの中では、グラフCの「CP+L−WCMs(50%)」は、コットンリンター紙にフェノール樹脂と植物系液化物を50%ずつ混合し、焼成して作製したウッドセラミックスである。
【0074】
図4のグラフの中では、グラフDはテトラミンを添加しないで製造したウッドセラミックスである。図4のグラフの中では、グラフEの「テトラミン5:1」とグラフFの「テトラミン5:3」は、テトラミンを液化物の量に対して5:1と5:3の割合で混合して製造したウッドセラミックスである。
【0075】
テトラミンを添加することで、ウッドセラミックスのインピーダンスが低下することがわかった。また、本実施例で得られたウッドセラミックスのインピーダンスの湿度依存性(R/Ro)を測定した。この測定結果は図5のグラフAの「テトラミン5:1」グラフで示している。図5のグラフの中では、グラフAの「テトラミン5:1」とグラフBの「テトラミン5:3」は、テトラミンを液化物の量に対して5:1と5:3の割合で混合して製造したウッドセラミックスである。
【0076】
図5のグラフの中では、グラフCの「100%」グラフは、コットンリンター紙に植物系液化物を混合し、焼成して作製したウッドセラミックスである。図5のグラフの中では、グラフDの「50%」は、コットンリンター紙にフェノール樹脂と植物系液化物を50%ずつ混合し、焼成して作製したウッドセラミックスである。図5のグラフの中では、グラフEはテトラミンを添加しないで製造したウッドセラミックスである。図5のグラフの横軸は湿度を、縦軸はインピーダンスの依存性を示す。測定は、基準となる湿度が20%RH、温度40℃一定にして行われた。
【0077】
図5のグラフBの「テトラミン5:3」グラフと、グラフEのテトラミンを添加しないで、製造したウッドセラミックスの測定結果も図示している。テトラミンを添加することで、ウッドセラミックスのインピーダンスが低下することがわかり、さらに、本実施例のテトラミンの添加量が、植物系液化物の体積に対して20%前後であるとき、インピーダンスの湿度依存性が線形に近い線になることがわかった。
【0078】
これと同じ手順で、焼成温度のみを600℃、620℃と変えて、植物系液化物を利用したウッドセラミックスを製造した。その他に、水酸化カルシウムを植物系液化物100部に対して5.6部、ステアリン酸亜鉛を同様に2.6部を加えている。
【実施例4】
【0079】
[植物系液化物の作製方法]
ここで、カシューナッツ殻油による植物系液化物の作製方法を説明する。コットンリンター紙の紙片を、図2(b)の写真のように、幅が数mm、長さが数mm〜数cmになるように、細かく切った状態にした。この紙片は約8gであった。この細かく切った紙片を、アセトン:メタノール=1:1の割合で混ぜて混合物にして、漂白・洗浄した。
【0080】
このとき、細かく切った紙片をビーカーに入れ、アセトンとメタノールの混合液体を紙片が浸かるくらいにビーカーに入れた。混合物は、超音波洗浄器を使用して30分間攪拌しながら紙片の漂白・洗浄を行った。その後、ビーカーの中の液体を捨てて、漂白・洗浄した紙片はキムワイプの上に丸一日放置して乾燥させた(図6(a)を参照。)。
【0081】
そして、漂白・洗浄した紙片と、カシューナッツ殻油、硫酸をビーカーに入れ混合した。混合の比率は、紙片:カシューナッツ殻油:硫酸は重量比で1:4:0.5にした。カシューナッツ殻油は32ml、硫酸は4mlであった。この混合した混合物は、ホットプレートの上で加熱温度150℃で3時間加熱した。加熱は、ドラフトチャンバー内で常圧で行った。
【0082】
加熱時、反応が均一に進むように30分毎にかき混ぜた。ビーカー内に混合物は、反応が進むと、黒色で粘性のある液体に変化した。これは、植物系液化物である。加熱終了後、エタノールを30ml加えて攪拌し、植物系液化物の粘度を調整した。図6(b)には、3時間加熱した混合物の写真である。
【実施例5】
【0083】
[熱圧成形物の製造方法]
ここで、カシューナッツ殻油による植物系液化物を用いて熱圧成形物を製造する例を説明する。実施例1で製造した植物系液化物と木粉とヘキサメチレンテトラミンを混合混練して混合物にし、乾燥させ、熱圧処理して、熱圧成形物を製造した。木粉は、廃木材を1〜2mmメッシュ以下に破砕したものであった。ヘキサメチレンテトラミンは硬化剤として添加した。この混合物の混合率は、植物系液化物を100部とした場合、木粉が128部、ヘキサメチレンテトラミンが20部であった。
【0084】
また、この混合には、水酸化カルシウムを植物系液化物100部に対して5.6部、ステアリン酸亜鉛を同様に2.6部を加えている。選られた混合物を、混練した後、温度70℃の環境で60分間乾燥させた。その後、150mm×150mmのアルミ製型枠の中に入れて成形し、温度が170〜200℃、圧力が30Mpaで、2〜5分間プレスし、熱圧処理した。このように製造された成形ボードは厚さ約9mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、木材、紙、古紙、カシューナッツ殻、コットンリンター等の植物係の産業廃棄物の再利用分野に利用すると良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6