【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の第1の態様は、茶飲料を製造する方法であって、以下のステップ:
1)第1の抽出物を得るステップであって、好適な抽出方法を使用し、溶媒として水を使用することにより、茶煮出液の特徴的な味を呈する茶葉の水溶性成分を抽出して、第1の抽出物を得るステップと、
2)第2の抽出物を得るステップであって、好適な抽出溶媒又は媒体を用いた好適な抽出方法を使用することにより、茶煮出液の特徴的な香りを呈する茶葉又は他の原料の揮発性成分を抽出して、第2の抽出物を得るステップと、
3)上記ステップ1)及び2)で得られる第1及び第2の抽出物をそれぞれ好適な濃度に調整した後それらを清澄化し、又は第1及び第2の抽出物をそれぞれ清澄化した後それらを好適な濃度に調整し、
次いで、好適な割合で前記2つの抽出物をよく混合して、茶飲料を製造するための茶煮出液を得るステップと、
4)茶飲料を製造するための従来のプロセスを用いて、ステップ3)で得られた茶煮出液を混合し、殺菌し、缶詰めして、茶飲料を得るステップと
を含む方法を提供することである。
【0014】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、第1の抽出物を抽出するための茶葉及び第2の抽出物を抽出するための茶葉が、同一の種類で同一の供給源に由来する茶葉でもよく、同一の種類だが異なる供給源(異なる産地、異なる摘採時期、異なる柔らかさ及び異なる製造方法を有する異なる茶葉を含むが、これに限定されない)に由来する茶葉でもよく、異なる種類の茶葉でもよい。好ましくは、茶葉が緑茶、紅茶、ウーロン茶、センティッドティー、プーアル茶又は上記茶葉の製造中に生成される副原料(茶柱、傷んだ茶、黄変した茶など)、又は異なる供給源を有するが、同一又は異なる種類の上記茶葉からの茶葉を混合することにより得られる茶葉からなる群から選択されうる。
【0015】
本発明の上記第1の態様による茶飲料を製造する方法において、ステップ2)における前記他の原料が、各種食用可能若しくは飲用可能な生花、ドライフラワー、ハーブティー又はそれらの組み合わせ、例えばジャスミンの花、バラ、中国杭州産キク(ghrysanthemum morifolium)、ハニーサックル、玄米茶、麦茶などを含む。
【0016】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、第1の抽出物を得るための抽出温度は、40℃〜95℃であり、好ましくは50℃〜95℃、50℃〜85℃又は60℃〜85℃である。
【0017】
好ましい抽出時間は、1分〜1時間であり、最も好ましい抽出時間が5分〜45分、10分〜30分又は10分〜20分である。
【0018】
好ましくは茶と水との重量比は、1:20〜120であり、さらに好ましくは茶と水との重量比が1:30〜100、1:40〜90、1:55〜70又は1:50〜80である。
【0019】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、第2の抽出物を得るための抽出方法は、真空蒸留濃縮法、流下液膜式濃縮法、スピニングコーンカラム(SCC)法及び超臨界流体抽出法などの、揮発性物質の従来の抽出方法でありうる。
【0020】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、ステップ2)における前記好適な抽出溶媒又は媒体は、水、蒸気又は水よりもむしろ溶媒(例えば二酸化炭素)でありうる。
【0021】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、第1の抽出物を抽出するための茶葉及び第2の抽出物を抽出するための茶葉又は他の原料は、前記抽出方法に従って抽出される前に好適に粉砕されてよく、次いで、抽出にかけられる。好ましくは、茶葉又は他の材料は粒径1mm以下に粉砕される。
【0022】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、ステップ3)における清澄化は、が従来の低温冷却及び放置、遠心処理、膜濾過などを含むが、これに限定されない。
【0023】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、ステップ4)における混合は、従来の茶煮出液の希釈、抗酸化剤、酸度調整剤及び他の食品添加物の添加並びに食品成分の添加を含むが、これに限定されない。前記抗酸化剤は、ビタミンC、イソアスコルビン酸ナトリウムなどでありうる。前記酸度調整剤は、炭酸水素ナトリウム、ホスファートなどでありうる。酸度調整剤の用量は実際の状況によって決まり、茶飲料のpH値は、5.5〜6.5の範囲に調整されることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、ステップ4)における殺菌は、従来の超高温処理(UHT)及び低温殺菌を含むが、これに限定されない。
【0025】
本発明の一実施形態における、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法において、原料として使用される茶葉が緑茶である場合、第1の抽出物におけるフェノール対アンモニア比は8未満であり、且つ第2の抽出物の香り指数(FI)値は淹れたての茶のFI値に近く、原料として使用される茶葉がジャスミン茶である場合、第2の抽出物のFI値は淹れたての茶のFI値よりも高く、原料として使用される茶葉がウーロン茶である場合、第2の抽出物のFI値は淹れたての茶のFI値よりも高い。
【0026】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による茶飲料を製造する方法により製造される茶飲料を提供する。
【0027】
茶飲料の従来の製造方法と比較して、本発明の製造方法は産地、気候、摘採時期及び製造方法による異なるバッチにおける、茶飲料の品質の違いを均一にすることが可能であり、得られる茶飲料は、淹れたての茶が有するものと同様の又はそれより良好な、味及び香りの調和並びに心地良い品質を有する。本発明は、茶煮出液の味を呈する水溶性成分及び茶煮出液の香りを呈する揮発性成分を、異なる抽出方法及び抽出条件を使用することにより、また同一又は異なる種類の茶葉を使用することにより茶葉からそれぞれ抽出し、次いで、2種類の成分を一定の割合で均一に混合して、茶飲料を製造するための茶煮出液が得られることを特徴とする。本発明の方法により製造される茶煮出液は茶飲料を製造するため使用され、前文で言及されたように、茶飲料の既存の製造方法の欠点を克服することが可能であり、本発明の方法の利点が以下の通り詳細に記載される。
【0028】
茶煮出液の味を呈する成分は大部分が水溶性化合物であり、茶葉中の含有量が高く、容易に溶出される。茶煮出液の香りを呈する成分は、大部分が低分子量で水への溶解性が低い揮発性化合物であり、茶葉中の含有量が低い。したがって、2種類の化合物を抽出するために水を溶媒として使用する場合、各化合物にとって必要な抽出条件は大きく異なる。本発明の方法は、2種類の化合物をそれぞれ抽出するためにそれぞれ最適な抽出方法及び条件を採用し、それにより2種類の化合物を同時に抽出することに起因する問題、例えば2種類の化合物の抽出がともに不完全となること、又はある種の化合物が過剰に抽出されることによって茶煮出液の味及び香りが調和しないことなどを回避することが可能となる。水溶性成分が抽出される場合、茶煮出液の特徴的な味を呈する成分が高含有量で得られるように、又は官能評価法で決定される良好な茶煮出液の味が得られるように抽出条件が最適化される。揮発性成分を抽出する場合、茶煮出液の特徴的な香りを呈する成分が高含有量で得られるように、且つ官能評価法で決定される良好な香りの種類が得られるように抽出方法及び条件が最適化される。
【0029】
本発明の方法の他の利点は、茶飲料の製造のための原料として使用される茶葉としてより多くの選択肢が存在することである。茶煮出液の特徴的な味を呈する化合物及び茶煮出液の特徴的な香りを呈する化合物が、同一の抽出条件で同一の茶葉から抽出される必要はないため、原料として使用される茶葉についての必要条件を低くすること、つまり、各種の茶葉の長所を選択して、それらの欠点を回避することが可能である。例えば、原料として使用される茶葉Aにおいて、良好な味を呈する水溶性成分の含有量は高いが、香りが不十分である又は香りの種類が劣る場合、この茶葉は本発明の茶葉の第1の抽出物を抽出するための原料としてのみ使用されうる。次いで、特徴的な香りを呈する揮発性成分を高含有量で有し、且つ良好な香りの種類を有する他の原料茶葉Bを本発明の第2の抽出物を抽出するために選択しうる。
【0030】
本発明の方法は、既存の方法を用いた茶飲料の製造中に茶煮出液の味及び香りが失われることにより、製品の品質が低下するという問題を克服することも可能である。それぞれ抽出される茶葉の第1及び第2の抽出物は、必要性に応じて自由に混合してよい。詳細には、簡単な従来の実験によって、茶飲料の製造中の、茶煮出液の味を呈する水溶性成分及び茶煮出液の香りを呈する揮発性成分の損失量を事前に知ることができ、評価及び算出後、完成した茶飲料製品の品質に製造工程中の香り成分の損失が及ぼす影響を排除するために、完成した茶飲料製品の最終的に求められる味及び香りに応じて2つの抽出物の混合比を正確に調整しうる。
【0031】
本発明の茶飲料を製造する方法は、既存の茶飲料製造技術及び茶の香りの抽出又は回復技術、並びに装置を組み合わせることで実施可能であり、茶飲料の大規模な製造を容易に実現することができる。
【0032】
本発明の茶飲料を製造する方法に従って、茶の味を呈する第1の抽出物を既存の茶葉抽出装置、例えば一般的な密閉抽出タンク及び可逆式かご型抽出装置を使用して抽出することができ、第1の抽出物が茶葉の良好な味を呈することができるように、つまり茶葉の1つ又は複数の水溶性成分の含有量が増大する又は好適な割合になるように、好ましい茶葉に基づいて、抽出パラメータ、例えば水の温度、含浸時間、撹拌速度及び他の関連する従来のパラメータを最適化しうる。例えば、茶煮出液における茶ポリフェノールとアミノ酸との含有比(フェノール対アンモニア比と短縮)が、緑茶煮出液の味を特徴づけるために通常使用され、一般的に緑茶煮出液のフェノール対アンモニア比が8未満である場合に、緑茶煮出液は淹れたての茶の味、例えば爽やかですっきりとし、まろやかで濃く、且つ甘い特徴的な味を有するとみなされる。この種類の茶葉に関して、茶煮出液中のフェノール対アンモニア比が低いほど茶煮出液の味がより良好になる。以下の表1は、本発明の方法(例1)により製造された緑茶飲料、及び従来の方法(製品1’−1、製品1’−2及び製品1’−3に対応する比較例1−1、1−2、1−3)により製造された緑茶飲料における測定されたフェノール対アンモニア比を示す。
【表1】
【0033】
本発明の茶飲料を製造する方法に従って、第2の抽出物は、ある揮発性成分を抽出するための従来の装置、例えば真空蒸留濃縮装置、流下液膜式濃縮装置、及びスピニングコーンカラム(SCC)、超臨界流体抽出装置などを使用して抽出することができ、茶葉における茶煮出液の特徴的な香りを呈する揮発性成分が十分に抽出されうるように、良好な香りの種類を有する好ましい原料茶葉に基づいて、抽出パラメータを調整しうる。さらに、抽出パラメータは、各種揮発性成分の割合が良好な香りの種類を呈する、例えば揮発性成分が高い香り指数という特徴を有するのに好適なように最適化され、それにより淹れたての茶の香りの質を実現しうる。
【0034】
本発明において記載される「香り指数」という用語はFIと略され、香り成分中の、高沸点成分の総量と低沸点成分の総量との割合を表す。香り成分の分析において、リナロールよりも短い保持時間を有する香り成分は低沸点香り成分と判断され、リナロールよりも長い保持時間を有する香り成分は高沸点香り成分と判断される。FI指数は茶葉の香りを定性分析するために使用することができ、同一の種類の茶葉について、高いFIを有する茶葉は低いFIを有する茶葉よりも良好な香りの種類を有する。
【0035】
以下の表2は、本発明の方法(緑茶製品1、ジャスミン茶製品2、ウーロン茶製品3及び紅茶製品4に対応する例1、2、3及び4)により製造された各種茶飲料製品、従来の方法(緑茶製品1’−1、緑茶製品1’−2、緑茶製品1’−3、ジャスミン茶製品2’、ウーロン茶製品3’及び紅茶製品4’に対応する比較例1−1、1−2、1−3、2、3、4)により製造された各種茶飲料製品並びに各種淹れたての茶の測定されたFI値を示す。表2に示すデータから分かるように、従来の方法により製造された茶飲料と比較して、本発明の方法により製造された茶飲料はより良好な香りの種類を有する。
【表2】
【0036】
上記表2における淹れたての茶1を作るために使用された
茶葉は特級緑茶葉であり、例1において原料として使用された緑茶葉
Bと同一の香りの種類を
有する。淹れたての茶2を作るために使用された
茶葉は特級ジャスミン茶葉であり、例2において原料として使用されたジャスミン
茶葉Aと同一の香りの種類を
有する。淹れたての茶3を作るために使用された
茶葉は等級Aのウーロン茶葉であり、例3において原料として使用されたウーロン
茶葉Bと同一の香りの種類を
有する。淹れたての茶4を作るために使用された
茶葉は等級Aの紅茶葉であり、例4において原料として使用された
紅茶葉Bと同一の香りの種類を
有する。
【0037】
本発明の茶飲料を製造する方法により製造された茶飲料製品及び従来の茶飲料を製造する方法により作られた茶飲料製品の間の、茶煮出液の味及び香りの違いは、表3に示す官能評価得点結果より決定されうる。本発明の方法により製造された茶飲料製品が淹れたての茶と9.0超の類似性を有し、それらの味が淹れたての茶に近いことが分かる。
【0038】
製品1、2、3、4は本発明の方法により製造された茶飲料製品であり、それぞれ例1、2、3及び4に由来する。
【0039】
製品1’−1、1’−2、1’−3、2’、3’、4’は従来の茶飲料を製造する方法により製造された茶飲料製品であり、それぞれ比較例1−1、1−2、1−3、2、3、4に由来する。
【表3】