特許第6527654号(P6527654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6527654
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】アームの操作方法及び操作装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
   B25J3/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-62709(P2013-62709)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-184537(P2014-184537A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月10日
【審判番号】不服2017-9930(P2017-9930/J1)
【審判請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝光
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 中川 隆司
【審判官】 栗田 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−82185(JP,A)
【文献】 特開2010−264527(JP,A)
【文献】 特開平6−8168(JP,A)
【文献】 特開2011−104760(JP,A)
【文献】 特開2012−254522(JP,A)
【文献】 特開平7−276266(JP,A)
【文献】 特開2010−162626(JP,A)
【文献】 特開2004−303728(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/096322(WO,A2)
【文献】 特開平11−171025(JP,A)
【文献】 特開2003−323832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が操作装置に力を加えてロボットのアームを操作する方法であって、
前記操作装置は、
前記作業者の手で把持可能な棒状の本体と、
前記アームに取り付けられる被取付部と、
前記ロボットの制御装置に接続され、動かされていない状態の第1位置、中間位置まで動かされた状態の第2位置、及び前記中間位置を越えて動かされた状態の第3位置に移動可能な可動部材を有し、前記可動部材の位置が前記第1位置及び前記第3位置でオフとなり、前記第2位置でオンとなるイネーブルスイッチと、
を備え、
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部に設けられ、前記本体の内部方向へ押し込まれることにより前記第1位置から前記第3位置まで移動するものであり、
前記被取付部及び前記可動部材は、前記本体の長手方向において同じ側の端部に設けられており、
前記アームに前記被取付部を取り付け、前記イネーブルスイッチを前記制御装置に接続する取付工程と、
前記取付工程の後に、前記作業者が前記本体を手の親指以外の4本の指で把持し、前記可動部材を親指で前記第2位置まで押し込んで維持する動作許可工程と、
前記動作許可工程の後に、前記作業者が前記本体に力を加えて前記アームを操作する操作工程と、
を備えることを特徴とするアームの操作方法。
【請求項2】
前記本体において長手方向の少なくとも一端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部が設けられており、
前記操作工程は、前記作業者が手の人差し指側部分及び小指側部分の少なくとも一方を前記突出部に当てる工程を含む請求項1に記載のアームの操作方法。
【請求項3】
前記被取付部は、前記本体との連結部を中心として、前記本体に対して揺動可能であり、
前記本体に対して前記被取付部を揺動させて、前記アームと前記本体との角度を調節する工程を備える請求項1又は2に記載のアームの操作方法。
【請求項4】
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の底面に設けられており、
前記動作許可工程は、前記作業者が前記本体の長手方向から、前記可動部材を親指で押し込んで維持する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のアームの操作方法。
【請求項5】
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の側面に設けられており、
前記動作許可工程は、前記作業者が前記本体の側方から、前記可動部材を親指で押し込んで維持する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のアームの操作方法。
【請求項6】
作業者の手で把持可能な棒状の本体と、
ロボットのアームに取り付けられる被取付部と、
前記ロボットの制御装置に接続され、動かされていない状態の第1位置、中間位置まで動かされた状態の第2位置、及び前記中間位置を越えて動かされた状態の第3位置に移動可能な可動部材を有し、前記可動部材の位置が前記第1位置及び前記第3位置でオフとなり、前記第2位置でオンとなるイネーブルスイッチと、
を備え、
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部に設けられ、前記本体の内部方向へ押し込まれることにより前記第1位置から前記第3位置まで移動するものであり、
前記被取付部及び前記可動部材は、前記本体の長手方向において同じ側の端部に設けられていることを特徴とするアームの操作装置。
【請求項7】
前記本体において長手方向の少なくとも一端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部が設けられている請求項6に記載のアームの操作装置。
【請求項8】
前記本体において長手方向の両端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部がそれぞれ設けられており、
前記本体において前記突出部同士の間の部分が、作業者により把持される被把持部となっている請求項6又は7に記載のアームの操作装置。
【請求項9】
前記被取付部は、前記本体との連結部を中心として、前記本体に対して揺動可能である請求項6〜のいずれか1項に記載のアームの操作装置。
【請求項10】
前記被取付部は、前記イネーブルスイッチに接続されている出力部を有し、
前記アームに前記被取付部が取り付けられることにより、前記出力部が前記制御装置に接続される請求項6〜のいずれか1項に記載のアームの操作装置。
【請求項11】
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の底面に設けられている請求項6〜10のいずれか1項に記載のアームの操作装置。
【請求項12】
前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の側面に設けられている請求項6〜10のいずれか1項に記載のアームの操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのアームに取り付け、作業者が把持してアームを操作する操作装置、及びその操作装置を用いたアームの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の操作装置において、作業者が把持する操作ハンドルと、操作ハンドルと共に握り込まれるイネーブルスイッチとを備えるものがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、イネーブルスイッチは、オンとオフとの2位置に切り替えられる。そして、イネーブルスイッチがオン位置である場合にのみ、作業者の操作力に基づいてロボットのアームが動作させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−36964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より安全性を向上させるべく、特許文献1に記載のものに、オフとオンとオフとの3位置に切り替えられるイネーブルスイッチを適用しようとすると、以下のような問題が生じる。
【0005】
すなわち、3位置のイネーブルスイッチでは、作業者が軽い力でスイッチを押した場合にのみ、ロボットの動作が許可される。このため、作業者がアームを操作する際に把持した操作ハンドルに力を加えると、イネーブルスイッチが強く押し込まれたり開放されたりして、イネーブルスイッチがオフ位置に切り替わるおそれがある。その結果、アームの動作が意図せず停止して、アームの操作性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、3位置のイネーブルスイッチを備える操作装置及びその操作装置を用いたアームの操作方法において、アームの操作性が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
第1の手段は、作業者が操作装置に力を加えてロボットのアームを操作する方法であって、前記操作装置は、前記作業者の手で把持可能な棒状の本体と、前記アームに取り付けられる被取付部と、前記ロボットの制御装置に接続され、動かされていない状態の第1位置、中間位置まで動かされた状態の第2位置、及び前記中間位置を越えて動かされた状態の第3位置に移動可能な可動部材を有し、前記可動部材の位置が前記第1位置及び前記第3位置でオフとなり、前記第2位置でオンとなるイネーブルスイッチと、を備え、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部に設けられ、前記本体の内部方向へ押し込まれることにより前記第1位置から前記第3位置まで移動するものであり、前記アームに前記被取付部を取り付け、前記イネーブルスイッチを前記制御装置に接続する取付工程と、前記取付工程の後に、前記作業者が前記本体を手の親指以外の4本の指で把持し、前記可動部材を親指で前記第2位置まで押し込んで維持する動作許可工程と、前記動作許可工程の後に、前記作業者が前記本体に力を加えて前記アームを操作する操作工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
取付工程では、ロボットのアームに操作装置の被取付部が取り付けられ、イネーブルスイッチがロボットの制御装置に接続される。イネーブルスイッチは、可動部材の位置が第1位置及び第3位置でオフとなり、第2位置でオンとなる。イネーブルスイッチはロボットの制御装置に接続されているため、ロボットの制御装置はイネーブルスイッチがオン位置である場合にのみ、ロボットのアームの動作を許可することができる。
【0010】
上記取付工程の後、作業者は、本体を手の親指以外の4本の指で把持し、可動部材を親指で第2位置まで押し込んで維持する。これにより、イネーブルスイッチがオン位置となり、ロボットの動作が許可される。ここで、可動部材は、本体の長手方向の一端部に設けられ、本体の内部方向へ押し込まれることにより第1位置から第3位置まで移動させられる。このため、作業者は、操作装置の本体を手の親指以外の4本の指で把持しつつ、可動部材を親指で第2位置まで容易に押し込むことができる。
【0011】
その後、作業者は、操作装置の本体に力を加えてアームを操作する。このとき、主に親指以外の4本の指により本体に力を加えてロボットのアームを操作し、親指により可動部材を第2位置で容易に維持することができる。詳しくは、親指以外の4本の指で本体を把持すれば、アームを操作力するのに十分な把持を行うことができる。このため、親指以外の4本の指により、上下左右の方向にアームを動かす応力を発生させることができ、親指は応力発生に貢献する必要がない。したがって、親指は本体の把持から開放され、イネーブルスイッチの可動部材を押し込むことに注力することができる。すなわち、本体を把持してアームを操作する力と、イネーブルスイッチの可動部材を押し込む力とを分離することができる。したがって、作業者が操作装置によりロボットのアームを操作する際に、イネーブルスイッチが意図せずオフに切り替わることを抑制することができ、アームの操作性が低下することを抑制することができる。
【0012】
第2の手段では、前記本体において長手方向の少なくとも一端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部が設けられており、前記操作工程は、前記作業者が手の人差し指側部分及び小指側部分の少なくとも一方を前記突出部に当てる工程を含む。
【0013】
本体において長手方向の少なくとも一端部には、長手方向に交差するように本体から突出する突出部が設けられている。そして、操作工程において、作業者は、本体に力を加えてアームを操作する際に、手の人差し指側部分及び小指側部分の少なくとも一方を突出部に当てる。したがって、操作装置を手の人差し指側又は小指側へ移動させる際に、手の一部を突出部に当てて力を加えることができる。その結果、本体を強く把持する必要がなくなり、作業者の身体的負担を軽減することができるとともに、アームの操作性を向上させることができる。さらに、突出部による支えがあることで本体を把持する指が安定し、親指は本体への応力発生から一層開放され、イネーブルスイッチの可動部材を押し込む力を安定させることができる。
【0014】
第3の手段では、前記被取付部は、前記本体との連結部を中心として、前記本体に対して揺動可能であり、前記本体に対して前記被取付部を揺動させて、前記アームと前記本体との角度を調節する工程を備える。
【0015】
取付部は、本体との連結部を中心として、本体に対して揺動可能となっている。そして、上記工程によれば、本体に対して被取付部を揺動させて、アームと本体との角度が調節される。したがって、アームの操作性を向上させることができる。
【0016】
第4の手段では、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の底面に設けられており、前記動作許可工程は、前記作業者が前記本体の長手方向から、前記可動部材を親指で押し込んで維持する工程を含む。
【0017】
可動部材は、本体の長手方向の一端部において、本体の底面に設けられており、作業者は本体の長手方向から、可動部材を親指で押し込んで維持する。このため、親指の自然な動きにより可動部材を押し込むことができ、アームの操作性を向上させることができる。さらに、本体を把持する4本の指から発生する把持力ベクトルの方向と、可動部材を押圧する親指から発生する押圧力ベクトルの方向とが略直交する。このため、本体へ加えられる移動の応力が4本の指による把持力ベクトルに沿って伝わることに鑑みれば、それに略直交する方向である親指による押圧力ベクトルにその影響が及びにくくなる。したがって、本体を把持してアームを操作する力と、イネーブルスイッチの可動部材を押し込む力とを、より明確に分離することができる。
【0018】
第5の手段では、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の側面に設けられており、前記動作許可工程は、前記作業者が前記本体の側方から、前記可動部材を親指で押し込んで維持する工程を含む。
【0019】
第6の手段は、アームの操作装置であって、作業者の手で把持可能な棒状の本体と、ロボットのアームに取り付けられる被取付部と、前記ロボットの制御装置に接続され、動かされていない状態の第1位置、中間位置まで動かされた状態の第2位置、及び前記中間位置を越えて動かされた状態の第3位置に移動可能な可動部材を有し、前記可動部材の位置が前記第1位置及び前記第3位置でオフとなり、前記第2位置でオンとなるイネーブルスイッチと、を備え、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部に設けられ、前記本体の内部方向へ押し込まれることにより前記第1位置から前記第3位置まで移動することを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、操作装置の被取付部がロボットのアームに取り付けられ、操作装置の本体が作業者の手で把持される。操作装置は、可動部材の位置が第1位置及び第3位置でオフとなり、第2位置でオンとなるイネーブルスイッチを備えている。イネーブルスイッチはロボットの制御装置に接続されているため、ロボットの制御装置はイネーブルスイッチがオン位置である場合にのみ、ロボットのアームの動作を許可することができる。このため、作業者は、可動部材の位置を第2位置に維持しつつ、把持した本体に力を加えてロボットのアームを操作する。
【0021】
ここで、可動部材は、本体の長手方向の一端部に設けられ、本体の内部方向へ押し込まれることにより第1位置から第3位置まで移動させられる。このため、作業者は、操作装置の本体を手の親指以外の4本の指で把持しつつ、可動部材を親指で第2位置まで容易に押し込むことができる。そして、主に親指以外の4本の指により本体に力を加えてロボットのアームを操作し、親指により可動部材を第2位置で容易に維持することができる。すなわち、本体を把持してアームを操作する力と、イネーブルスイッチの可動部材を押し込む力とを分離することができる。したがって、作業者が操作装置によりロボットのアームを操作する際に、イネーブルスイッチが意図せずオフに切り替わることを抑制することができ、アームの操作性が低下することを抑制することができる。
【0022】
第7の手段では、前記被取付部及び前記可動部材は、前記本体の長手方向において同じ側の端部に設けられている。
【0023】
上記構成によれば、被取付部及び可動部材は、本体の長手方向において同じ側の端部に設けられている。このため、被取付部がロボットのアームに取り付けられた状態で、アーム側に親指を位置させて本体を把持することができる。したがって、アーム側に小指を位置させて本体を把持する場合と比較して、アームの操作性を向上させることができる。
【0024】
第8の手段では、前記本体において長手方向の少なくとも一端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部が設けられている。
【0025】
上記構成によれば、本体において長手方向の少なくとも一端部には、長手方向に交差するように本体から突出する突出部が設けられている。このため、作業者が本体を把持した場合に、手の人差し指側部分及び小指側部分の少なくとも一方を突出部に当てることができる。したがって、操作装置を手の人差し指側又は小指側へ移動させる際に、手の一部を突出部に当てて力を加えることができる。その結果、本体を強く把持する必要がなくなり、作業者の身体的負担を軽減することができるとともに、アームの操作性を向上させることができる。
【0026】
第9の手段では、前記本体において長手方向の両端部には、前記長手方向に交差するように前記本体から突出する突出部がそれぞれ設けられており、前記本体において前記突出部同士の間の部分が、作業者により把持される被把持部となっている。
【0027】
上記構成によれば、本体において長手方向の両端部には、長手方向に交差するように本体から突出する突出部がそれぞれ設けられている。そして、本体において突出部同士の間の部分が、作業者により把持される被把持部となっている。このため、作業者が被把持部を把持した場合に、手の人差し指側部分及び小指側部分を突出部にそれぞれ当てることができる。したがって、操作装置を手の人差し指側及び小指側のいずれに移動させる際にも、手の一部を突出部に当てて力を加えることができる。その結果、本体を強く把持する必要がなくなり、作業者の身体的負担を軽減することができるとともに、アームの操作性を向上させることができる。
【0028】
第10の手段では、前記被取付部は、前記本体との連結部を中心として、前記本体に対して揺動可能である。
【0029】
上記構成によれば、取付部は、本体との連結部を中心として、本体に対して揺動可能となっている。このため、ロボットのアームと本体との角度を調節することができ、アームの操作性を向上させることができる。
【0030】
第11の手段では、前記被取付部は、前記イネーブルスイッチに接続されている出力部を有し、前記アームに前記被取付部が取り付けられることにより、前記出力部が前記制御装置に接続される。
【0031】
上記構成によれば、被取付部はイネーブルスイッチに接続されている出力部を有しており、アームに被取付部が取り付けられることにより、出力部が制御装置に接続される。このため、制御装置は、被取付部の出力部を介して、イネーブルスイッチの状態を把握することができる。したがって、操作装置のアームへの取付と、イネーブルスイッチの制御装置への接続とを一度に行うことができ、作業の効率を向上させることができる。
【0032】
第12の手段では、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の底面に設けられている。
【0033】
第13の手段では、前記可動部材は、前記本体の長手方向の一端部において、前記本体の側面に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ロボットのアーム及び操作装置を示す斜視図。
図2】ロボットの制御装置とイネーブルスイッチとの接続を示す模式図。
図3】操作装置の本体を把持する作業者の手を示す斜視図。
図4】操作装置の変更例を示す斜視図。
図5】操作装置の本体を把持する作業者の手を示す斜視図。
図6】操作装置の他の変更例を示す斜視図。
図7】操作装置の他の変更例を示す斜視図。
図8】操作装置の他の変更例を示す斜視図。
図9】操作装置の他の変更例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、ロボットのダイレクトティーチングにおいて、アームに取り付けて用いる操作装置に具体化している。
【0036】
図1は、ロボット10のアーム11及び操作装置30を示す斜視図である。
【0037】
ロボット10は、垂直多関節型のロボットであり、6つ(複数)の関節を有するアーム11を備えている。アーム11の各関節には、それぞれモータが設けられており、これらのモータの回転によりアーム11が駆動される。各モータには、その出力軸を制動する電磁ブレーキと、出力軸の回転角度に応じたパルス信号を出力するエンコーダとがそれぞれ設けられている。ロボット10は、アーム11を動作させることにより、ワークに対する部品の組付けやワークの搬送等の作業を行う。
【0038】
アーム11は、回転部11a及びハンド部11bを有している。回転部11aの先端部には、ハンド部11bが設けられている。ハンド部11bは、軸線J1を回転中心として、回転部11aに対して回転可能になっている。
【0039】
回転部11aには、軸線J1と同軸状に挿入孔12aが形成されている。ハンド部11bには、中心軸に垂直な軸線J2と同軸状に挿入孔12bが形成されている。なお、挿入孔12a及び挿入孔12bの一方を省略することもできる。
【0040】
操作装置30は、本体31、ボタン34、挿入部37を備えている。
【0041】
本体31は、円柱状(棒状)に形成されており、作業者の手で把持可能な大きさとなっている。本体31の表面には、長手方向に所定の間隔をおいて周方向に延びる凹部31aが形成されている。この所定の間隔は、作業者の標準的な指の間隔に対応している。これらの凹部31aによって、作業者の手で把持される被把持部が構成されている。
【0042】
本体31の長手方向の一端部31b、詳しくは上底面(底面)31cには、円板状のボタン34が設けられている。ボタン34(可動部材)は、本体31の長手方向から内部方向へ押し込むことが可能となっている。ボタン34は、作業者の手の親指で押し込まれることにより、動かされていない状態の第1位置、中間位置まで動かされた状態の第2位置、及び中間位置を越えて動かされた状態の第3位置に切替可能(移動可能)となっている。
【0043】
本体31の長手方向においてボタン34が設けられた側の一端部31bには、挿入部37が取り付けられている。すなわち、ボタン34及び挿入部37は、本体31の長手方向において同じ側の一端部31bに設けられている。挿入部37(被取付部)は、円柱状に形成されており、その一端部が本体31の一端部31bに固定されている。挿入部37は、本体31に対して所定の角度をなしている。挿入部37は、挿入孔12a,12bに挿入可能に形成されている。
【0044】
図2は、ロボット10の制御装置20とイネーブルスイッチ40との接続を示す模式図である。
【0045】
ロボット10は、制御装置20に接続されている。制御装置20は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、駆動回路、位置検出回路等を備えている。ROMは、ロボット10のシステムプログラムや動作プログラム等を記憶している。RAMは、これらのプログラムを実行する際にパラメータの値等を記憶する。位置検出回路には、各エンコーダの検出信号がそれぞれ入力される。位置検出回路は、各エンコーダの検出信号に基づいて、各関節に設けられたモータの回転角度を検出する。CPUは、予め設定された動作プログラム(プログラム)を実行することにより、位置検出回路から入力される位置情報に基づいて、アーム11の各関節の回転角度(アーム11の姿勢)を目標回転角度(目標姿勢)にフィードバック制御する。
【0046】
制御装置20には、ティーチングペンダント70が接続されている。ティーチングペンダント70(操作機)は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピュータ、各種の手動操作キー、ディスプレイ等を備えている。作業者は、このペンダント70を手動操作して、ロボット10の動作プログラムの作成、修正、登録、各種パラメータの設定を行うことができる。動作プログラムの修正等を行うティーチングでは、作業においてアーム11のハンド部11bが通過する教示点(位置座標)を、作業者が操作装置30を用いて直接教示する。そして、作業者は、制御装置20を通じて、ティーチングされた動作プログラムに基づきロボット10を動作させることができる。
【0047】
本体31には、イネーブルスイッチ40及び非常停止スイッチ44が組み込まれている。イネーブルスイッチ40は、オフとオンとオフとの3位置に切り替えられるものである。イネーブルスイッチ40は、上記ボタン34の位置が第1位置及び第3位置でオフとなり、ボタン34の位置が第2位置でオンとなる。非常停止スイッチ44は、常閉式のスイッチであり、非常停止ボタン35が押されることにより開状態となる。非常停止ボタン35は、本体31に設けられている(図1では図示せず)。イネーブルスイッチ40の回路38、及び非常停止スイッチ44の回路39は、挿入部37の出力部37a(端子)に接続されている。
【0048】
制御装置20から挿入孔12a,12bまで、ロボット10のアーム11を介して回路14が接続されている。そして、挿入孔12a又は挿入孔12bに挿入部37が挿入されることにより、出力部37aがアーム11内の回路14に接続される。すなわち、アーム11に挿入部37(操作装置30)が取り付けられることにより、スイッチ40,44の回路38,39が制御装置20に接続される。このため、制御装置20は、挿入部37の出力部37aを介して、イネーブルスイッチ40の状態を把握することができる。制御装置20は、イネーブルスイッチ40がオン位置である場合にのみ、ロボット10のアーム11の動作を許可する。なお、アーム11には、挿入孔12a,12bに挿入された挿入部37をロックするロック機構(図示せず)が設けられている。
【0049】
次に、ロボット10のダイレクトティーチングにおいて、操作装置30を用いてロボット10のアーム11を操作する方法について説明する。
【0050】
まず、作業者は、アーム11の挿入孔12a又は挿入孔12bに操作装置30の挿入部37を挿入して、ロック機構により挿入部37をロックする。これにより、アーム11に挿入部37(操作装置30)が取り付けられる。このとき、挿入孔12a又は挿入孔12bに挿入部37が挿入されることにより、イネーブルスイッチ40及び非常停止スイッチ44が制御装置20に接続される(取付工程)。なお、スイッチ40,44と制御装置20との接続は、ティーチングペンダント70の操作キーが「Auto Mode」から「Manual Mode」に切り替えられている場合に有効となる。
【0051】
上記取付工程の後、図1,3に示すように、作業者は、本体31を手の親指以外の4本の指で把持し、ボタン34を親指で第2位置まで押し込んで維持する(動作許可工程)。詳しくは、作業者は、小指から人差し指で本体31の各凹部31aを握るとともに、本体31の長手方向からボタン34を親指で押し込んで維持する。なお、アーム11側には、手の小指側ではなく親指側が位置することとなる。これにより、イネーブルスイッチ40がオン位置となり、制御装置20によりロボット10のアーム11の動作が許可される。この動作許可状態では、制御装置20は、アーム11に重力に抗するだけの駆動力を付与し、アーム11に作用するその他の力によりアーム11が自由に移動されるようにする。
【0052】
上記動作許可工程の後、作業者は本体31に力を加えてアーム11を操作する(操作工程)。このとき、作業者は、主に親指以外の4本の指により本体31に力を加えてアーム11を操作し、親指によりボタン34を第2位置に維持する。
【0053】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0054】
・動作許可工程において、作業者は、本体31の各凹部31aを手の親指以外の4本の指で把持し、ボタン34を親指で第2位置まで押し込んで維持する。これにより、イネーブルスイッチ40がオン位置となり、ロボット10の動作が許可される。ここで、ボタン34は、本体31の長手方向の一端部31bに設けられ、本体31の内部方向へ押し込まれることにより第1位置から第3位置まで移動させられる。このため、作業者は、本体31の各凹部31aを手の親指以外の4本の指で把持しつつ、ボタン34を親指で第2位置まで容易に押し込むことができる。
【0055】
・操作工程において、作業者は、操作装置30の本体31に力を加えてアーム11を操作する。このとき、主に親指以外の4本の指により本体31に力を加えてロボット10のアーム11を操作し、親指によりボタン34を第2位置で容易に維持することができる。すなわち、本体31を把持してアーム11を操作する力と、イネーブルスイッチ40のボタン34を押し込む力とを分離することができる。したがって、作業者が操作装置30によりロボット10のアーム11を操作する際に、イネーブルスイッチ40が意図せずオフに切り替わることを抑制することができ、アーム11の操作性が低下することを抑制することができる。
【0056】
・ボタン34は、本体31の長手方向の一端部31bにおいて、本体31の底面31cに設けられている。このため、動作許可工程において、作業者が本体31の長手方向から、ボタン34を親指で押し込んで維持することができる。したがって、親指の自然な動きによりボタン34を押し込むことができ、アーム11の操作性を向上させることができる。また、右手と左手のいずれでも、操作装置30を操作することができる。
【0057】
・挿入部37及びボタン34は、本体31の長手方向において同じ側の一端部31bに設けられている。このため、挿入部37がロボット10のアーム11に取り付けられた状態で、アーム11側に親指を位置させて本体31を把持することができる。したがって、アーム11側に小指を位置させて本体31を把持する場合と比較して、アーム11の操作性を向上させることができる。
【0058】
・挿入部37はイネーブルスイッチ40に接続されている出力部37aを有しており、アーム11に挿入部37が取り付けられることにより、出力部37aが制御装置20に接続される。このため、制御装置20は、挿入部37の出力部37aを介して、イネーブルスイッチ40の状態を把握することができる。したがって、操作装置30のアーム11への取付と、イネーブルスイッチ40の制御装置20への接続とを一度に行うことができ、作業の効率を向上させることができる。
【0059】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0060】
図4に示すように、ボタン134(可動部材)が、本体131の長手方向の一端部131bにおいて、本体131の側面131cに設けられていてもよい。この場合、図5に示すように、動作許可工程において作業者は、本体131の側方から、ボタン134を親指で押し込んで維持すればよい。なお、本体131は四角柱状となっているが、それに限らず本体は任意の柱状にすることができる。ボタン134の形状は矩形板状となっているが、それに限らずボタンの形状は任意である。
【0061】
また、図4に示すように、挿入部137(被取付部)は、本体131との連結部137aを中心として、本体131に対して揺動可能としてもよい。そして、作業者は、本体131に対して挿入部137を揺動させて、アーム11と本体131との角度を調節してもよい。その結果、アーム11の操作性を向上させることができる。
【0062】
図6に示すように、本体231において長手方向の両端部231a,231bに、長手方向に直交(交差)するように本体231から突出する突出部231c,231dをそれぞれ設けてもよい。この場合、本体231において突出部231c,231d同士の間の部分が、作業者により把持される被把持部231eとなっている。
【0063】
こうした構成によれば、作業者が被把持部231eを把持した場合に、手の人差し指側部分及び小指側部分を突出部231c,231dにそれぞれ当てることができる。したがって、操作装置230を手の人差し指側及び小指側のいずれに移動させる際にも、手の一部を突出部231c,231dに当てて力を加えることができる。その結果、本体231を強く把持する必要がなくなり、作業者の身体的負担を軽減することができるとともに、アーム11の操作性を向上させることができる。
【0064】
また、本体231の長手方向において、挿入部237及びボタン234を異なる端部に設けることもできる。この場合、アーム11側には、手の親指側ではなく小指側が位置することとなる。なお、挿入部237は四角柱状となっているが、それに限らず挿入部は任意の柱状にすることができる。
【0065】
図7に示すように、本体331において長手方向の両端部331a,331bから長手方向に直交(交差)するようにそれぞれ突出し、互いにつながったガード部331cが設けられていてもよい。この場合も、作業者が本体331を把持した場合に、手の人差し指側部分及び小指側部分をガード部331cにそれぞれ当てることができる。したがって、操作装置330を手の人差し指側及び小指側のいずれに移動させる際にも、手の一部をガード部331cに当てて力を加えることができる。さらに、本体331を把持してアーム11を操作する力と、イネーブルスイッチ40のボタン34を押し込む力とを、物理的にも意識的にも分離し易くなる。
【0066】
また、本体331において長手方向の中間部に挿入部337(被取付部)を設けることもできる。ここでは、ガード部331cの中間部に挿入部337が設けられている。
【0067】
図8に示すように、本体431において長手方向の両端部431a,431bから突出する突出部431c,431dが、それぞれ異なる方向へ突出していてもよい。また、突出部431c,431dの一方を省略することもできる。この場合も、作業者は、本体431に力を加えてアーム11を操作する際に、手の人差し指側部分及び小指側部分の少なくとも一方を突出部431c又は突出部431dに当てることができる。
【0068】
また、操作装置430は、アーム11に取り付けられる吸盤437(被取付部)を備えている。そして、コード438により、イネーブルスイッチ40が制御装置20に接続されている。この場合に、イネーブルスイッチ40は、オン又はオフであることを示す信号を制御装置20へ送信してもよい。また、イネーブルスイッチ40は、オン又はオフであることを示す信号を、無線により制御装置20へ送信することもできる。すなわち、イネーブルスイッチ40と制御装置20とは、無線接続されていてもよい。
【0069】
図9に示すように、操作装置530は、アーム11に取り付けられるフランジ537(被取付部)を備えている。フランジ537には、ねじ孔537bが形成されており、このねじ孔537bにねじを挿通してフランジ537をアーム11に締結することができる。
【0070】
また、イネーブルスイッチ40に接続されたピン537a(出力部)が、フランジ537に設けられている。そして、アーム11にフランジ537に締結することにより、ピン537aが制御装置20に接続される。こうした構成によれば、操作装置530をより確実にアーム11に取り付けることができるとともに、イネーブルスイッチ40と制御装置20との接続を安定させることができる。
【0071】
・上記実施形態では、ロボット10のダイレクトティーチングにおいて操作装置30を用いたが、ロボット10の作業中にアーム11のハンド部11bをガイドするハンドガイドにおいて操作装置30を用いることもできる。この場合、挿入部37等(被取付部)に作業者による操作力の大きさ及び方向を検知する操作力センサを取り付け、操作力センサの出力に基づいてアーム11を動作させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…ロボット、11…アーム、20…制御装置、30…操作装置、31…本体、31b…一端部、31c…上底面(底面)、34…ボタン(可動部材)、37…挿入部(被取付部)、37a…出力部、40…イネーブルスイッチ、131…本体、131b…一端部、131c…側面、134…ボタン(可動部材)、137…挿入部(被取付部)、137a…連結部、230…操作装置、231…本体、231a…端部、231b…端部、231c…突出部、231d…突出部、231e…被把持部、234…ボタン(可動部材)、237…挿入部(被取付部)、330…操作装置、331…本体、331a…端部、331b…端部、331c…ガード部(突出部)、337…挿入部(被取付部)、430…操作装置、431…本体、431a…端部、431b…端部、431c…突出部、431d…突出部、437…吸盤(被取付部)、530…操作装置、537…フランジ(被取付部)、537a…ピン(出力部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9