(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る残液除去装置では、第1の液切り手段が、ガラス基板に対して、搬送方向の上流側に向けてカーテン状のエアを吹き付けている。この場合、剥離液が液切りされる位置が、第1の液切り手段の位置よりも上流側に設定されてしまう。また、第1の液切り手段と、新液供給手段の位置をできるだけ接近させたとしても、剥離液が液切りされる位置から新液が供給される位置までの距離が長くなってしまう。このため、ガラス基板が部分的に乾燥する虞れがあり、新液で均一に処理できない虞れがあった。この問題を避けるためには、例えば、第1の液切り手段が、ガラス基板に対して、カーテン状のエアを真下あるいは搬送方向の下流側に向けて吹き付けるように構成することが考えられる。しかしながら、これらの場合には、当該エアによって、基板の幅方向に延びる新液の液面を乱してしまう虞れがある。すると、新液が均一に供給されないために、基板を新液で均一に処理できない虞れがある。
【0006】
そこで、本発明は、前処理液が付着した基板を処理液で均一に処理する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、基板処理装置であって、前処理液が付着した基板を搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって前記下流側に向けて搬送される基板の表面に、カーテン状のエアを供給することによって、前記基板に付着した前記前処理液を除去するエアノズルと、前記エアノズルの前記下流側に配置されており、下面に形成された前記搬送方向に直交する直交方向に延びる細隙の第一吐出口から、前記基板に処理液を吐出する第一吐出部と、前記第一吐出部の下流側に配置され、前記直交方向に延びる細隙の第二吐出口から処理液を吐出して、前記基板に薄膜状の前記処理液を供給する第二吐出部とを備え、前記基板の上流側において前記エアノズルにより前記前処理液が除去されるとともに前記第二吐出部により前記基板の下流側に処理液が供給されているときに、前記第一吐出部から前記基板の前記表面に向けて吐出された前記処理液は、前記基板及び前記第一吐出部の前記下面に接触しつつ、前記基板の前記表面及び前記第一吐出部の前記下面の隙間で広がり、前記基板の前記表面及び前記第一吐出部の前記下面の間に液密が形成され、前記第一吐出口の前記基板からの高さが、前記基板に盛られる処理液の上面の高さと同一か、それよりも低い高さとなるように前記第一吐出部が配置され
、前記第一吐出口の幅が、前記第二吐出口の幅よりも大きい。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記第二吐出部が、前記処理液を前記下流側に向けて吐出する。
【0009】
また、第3の態様は、第2の態様に係る基板処理装置であって、前記第二吐出部は、前記第二吐出口の下方の位置において、前記下流側に向けて下向きに傾斜する傾斜面を有している。
【0010】
また、第4の態様は、第3の態様に係る基板処理装置であって、前記第二吐出部は、前記第二吐出口を形成する本体部と、前記傾斜面を形成し、前記本体部に取り付けられている傾斜部材とを含む。
【0011】
また、第5の態様は、第4の態様に係る基板処理装置であって、前記傾斜部材は、前記本体部に対して取り外し可能に設けられている。
【0012】
また、第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか1態様に係る基板処理装置であって、前記第一吐出部は、互いに連結されることによって、前記第一吐出口及び前記第一吐出口に連通する空洞部を形成する第一部材及び第二部材によって構成されており、前記第二吐出部は、互いに連結されることによって、前記第二吐出口及び前記第二吐出口に連通する空洞部を形成する前記第二部材及び第三部材によって構成されている。
【0013】
また、第7の態様は、第1から第4の態様のいずれか1態様に係る基板処理装置であって、前記エアノズルの前記下流側に配置されており、前記第一吐出部を構成する第一処理液ノズルと、前記第一処理液ノズルの前記下流側に配置され、前記第二吐出部を構成する第二処理液ノズルとを備える。
【0014】
また、第8の態様は、第1から第7の態様のいずれか1態様に係る基板処理装置であって、前記第一吐出部が前記処理液を吐出する単位時間あたりの量は、前記第二吐出部が前記処理液を吐出する単位時間あたりの量よりも小さい。
【0016】
また、第
9の態様は、第1から第
8の態様のいずれか1態様に係る基板処理装置であって、前記前処理液がアルカリ性であり、前記基板処理装置は、前記第一吐出部に、炭酸水を供給する炭酸水供給部、をさらに備える。
【0017】
また、第
10の態様は、搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送される前処理液が付着した基板に処理液を吐出するノズルであって、一方向に延びる平滑な第一下面を有し、前記第一下面において、前記一方向に延びる細隙の第一吐出口が形成されている第一吐出部と、前記第一吐出口に対して間隔をあけて、前記一方向に延びる細隙の第二吐出口から処理液を吐出して、カーテン状の処理液を供給する第二吐出部とを有し、第一吐出部により前記基板
の表面と前記第一下面との間に前記処理液により液密を形成し、当該液密の下流側に第二吐出部から前記処理液を供給し、前記第一吐出口の前記基板からの高さが、前記基板に盛られる処理液の上面の高さと同一か、それよりも低い高さとなるように前記第一吐出部が配置され
、前記第一吐出口の幅が、前記第二吐出口の幅よりも大きい。
【0018】
また、第
11の態様は、基板処理方法であって、(a)前処理液が付着した基板を、搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送する搬送工程と、(b)前記搬送工程にて搬送されている前記基板の表面にカーテン状のエアを供給することによって、前記基板に付着した前記前処理液を除去する除去工程と、(c)前記除去工程の後、前記搬送工程にて搬送されている前記基板に向けて、第一吐出部の下面に形成された前記搬送方向に直交する
直交方向に延びる細隙の第一吐出口から、処理液を吐出する第一処理液吐出工程と、(d)前記第一処理液吐出工程の後、前記搬送工程にて搬送されている前記基板に向けて、
前記直交方向に延びる細隙の第二吐出口から薄膜状の処理液を吐出する第二処理液吐出工程とを含み、前記除去工程および前記第二処理液吐出工程が実行されているときに、前記第一処理液吐出工程において、前記第一吐出口から前記基板の前記表面に向けて吐出された前記処理液が、前記基板の前記表面および前記第一吐出部の前記下面に接触しつつ、前記基板の表面および前記第一吐出部の前記下面の隙間で広がり、前記基板の前記表面および前記第一吐出部の前記下面の間に液密が形成され、前記第一吐出口の前記基板からの高さが、前記基板に盛られる処理液の上面の高さと同一か、それよりも低い高さとなるように前記第一吐出部が配置され
、前記第一吐出口の幅が、前記第二吐出口の幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る基板処理装置によると、第一吐出部の下面と基板との間が、第一吐出部から吐出された処理液で満たされた状態となる。このため、エアノズルが供給するエアによって、処理液の境界が乱れることを抑制できる。したがって、基板を処理液で均一に処理できる。
また、第1の態様に係る基板処理装置によると、第一吐出口の幅を比較的大きくすることで、第一吐出口から吐出される処理液の流速を抑えることができる。このため、処理液が上流側に逆流することを抑制できる。また、第一吐出口におけるゴミ詰まりの発生を低減できる。このため、基板を処理液で均一に処理できる。
【0020】
また、第2の態様に係る基板処理装置によると、第二吐出部が吐出した処理液が上流側に逆流することを低減できる。このため、基板を処理液で均一に処理できる。
【0021】
また、第3の態様に係る基板処理装置によると、第二吐出口から吐出された処理液を、傾斜面によって下流側へ向けて流すことができる。
【0022】
また、第4の態様に係る基板処理装置によると、傾斜面を形成する傾斜部材を吐出口を形成する本体部とは別部材とすることによって、第二吐出部の製造が容易となる。
【0023】
また、第5の態様に係る基板処理装置によると、傾斜部材が本体部から取り外し可能とされることによって、第二吐出口のメンテナンスが容易となる。
【0024】
また、第6の態様に係る基板処理装置によると、第一、第二および第三部材を組み合わせることによって、第一および第二開口部を有するノズルを形成することができる。このノズルと基板との間で液密を形成する第一吐出部と、カーテン状の処理液を供給する第二吐出部とを近付けることができる。したがって、基板を処理液でより均一に処理できる。
【0025】
また、第7の態様に係る基板処理装置によると、第一吐出口の幅を比較的大きくすることで、第一吐出口から吐出される処理液の流速を抑えることができる。このため、処理液が上流側に逆流することを抑制できる。また、第一吐出口におけるゴミ詰まりの発生を低減できる。このため、基板を処理液で均一に処理できる。
【0026】
また、第8の態様に係る基板処理装置によると、第一吐出部よりも上流側に処理液が逆流することを抑制できる。
【0028】
また、第
9の態様に係る基板処理装置によると、アルカリ性の反応液によって進行する反応を炭酸水によって効果的に停止できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<1. 第1実施形態>
<基板処理装置1の構成および機能>
図1は、基板処理装置1を備えた基板処理システム100を示す概略平面図である。
【0031】
基板処理システム100は、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角形ガラス基板(以下、単に基板と称する。)90を処理する。
【0032】
基板処理システム100は、搬入部10、洗浄部11、デハイドベーク部12、塗布部13、減圧乾燥部14およびプリベーク部15を備えている。搬入部10は、基板処理システム100において処理される基板90を受け入れる部分である。洗浄部11は、搬入部10に搬入された基板90を洗浄して清浄化する。デハイドベーク部12は、洗浄部11にて洗浄液が付着した基板90を乾燥する。
【0033】
塗布部13は、デハイドベーク部12で乾燥された基板90の表面に処理液(ここでは、レジスト)を塗布する。減圧乾燥部14は、塗布部13で塗布された処理液を乾燥させる。プリベーク部15は、基板90を加熱することによって処理液を固化させ、基板90に処理液の薄膜を形成する。
【0034】
図1に示されるように、搬入部10、洗浄部11、デハイドベーク部12、塗布部13、減圧乾燥部14およびプリベーク部15は、この順に、一方向(第一方向D1)に沿って直線状に隣接するように配置されている。
【0035】
また、基板処理システム100は、処理液の薄膜が形成された基板90の表面に対して、所要の回路パターン状に露光する露光部16を備えている。露光部16は上記第1方向に直交する方向(第二方向D2)に延びている。露光部16の入り口側の部分は、プリベーク部15に隣接しており、露光部16の出口側の部分は、基板処理装置1に隣接している。
【0036】
基板処理装置1は、露光部16において露光された基板90を現像液21(前処理液)に浸し、余分な処理液を除去する現像部20と、現像処理した基板90をリンス液31(処理液)ですすぐことによって、現像処理を停止するリンス部30と、基板90上のリンス液31を除去し、基板90を乾燥させる乾燥部300とを備えている。
【0037】
また、基板処理システム100は、ポストベーク部17および搬出部18を備えている。ポストベーク部17は、基板90を加熱することによって、基板90に付着したリンス液を除去する。搬出部18は、基板処理システム100において処理が完了した基板90を外部に搬出する部分である。基板処理装置1、ポストベーク部17および搬出部18は、第一方向D1とは反対側の方向(第三方向D3)に沿って直線状に隣接するように配置されている。基板処理システム100においては、基板90が露光部16においてUターンするように、その進行方向が第一方向D1から第三方向D3に変更される。
【0038】
図2は、第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す概略側面図である。
図3は、第1実施形態に係る基板処理装置1における、現像部20、リンス部30の境界部分を拡大して示す概略側面図である。
【0039】
図2に示されるように、基板処理装置1は、基板90の搬送方向(第三方向D3)の上流側に配された現像部20と、現像部20よりも下流側に配されたリンス部30と、リンス部30よりも下流側に配された乾燥部300とを備えている。以下の説明では、特に断らない限り、基板90の搬送方向の上流側を単に「上流側」と称し、その反対側を「下流側」と称する。
【0040】
基板処理装置1は、1つの筐体40を備えている。当該筐体40の中間部に設けられた仕切板41,410によって、筐体40が現像部20、リンス部30および乾燥部300に区画されている。仕切板41は、現像部20およびリンス部30の間を仕切っており、仕切板410は、リンス部30および乾燥部300の間を仕切っている。
【0041】
筐体40の上流側端部には、露光部16で処理された基板90を搬入するための搬入口42が設けられている。また筐体40の下流側端部には、現像部20、リンス部30および乾燥部300での処理が完了した基板90をポストベーク部17に搬出するための搬出口43が設けられている。また、仕切板41の中間部には、現像部20での処理が完了した基板90を通すための通路口411が形成されている。
【0042】
基板処理装置1においては、基板90は、第三方向D3に所要間隔の間隔をあけて配列された複数の搬送ローラ50によって搬送される(搬送工程)。搬送ローラ50は、第三方向D3に直交する水平方向(以下、直交方向と称する。)に沿って延びる回転軸511と、中心部が当該回転軸に固定されており、直交方向に所要の間隔をあけて配列された複数の車輪513とで構成されている。回転軸511は、駆動モータによって回転駆動可能とされている。基板90は、複数の車輪513の上端部に支持され、複数の車輪513が回転することで、第三方向D3に搬送される。
【0043】
現像部20は、基板90の上面に現像液21を供給するノズル22と、基板90の上面にエアを吹き付けるエアノズル24を備えている。ノズル22は、筐体40の内側であって、搬入口42の近傍に設けられている。また、エアノズル24は、仕切板41の上流側の一側面に固定されている。
【0044】
ノズル22は、直交方向に延びており、それらの下面には、直交方向に細長く延びる細隙の吐出口が形成されている。各吐出口から現像液21を吐出することによって、基板90の表面に現像液21を供給する。基板90がノズル22の下を通過することによって、基板90の上面全体が、表面張力を利用して現像液21が盛られた状態(すなわち、現像液21のパドルが形成された状態)となる。
【0045】
エアノズル24は、直交方向に延びるエア吐出口を備えたエアナイフ式のノズルである。エアノズル24は、複数の搬送ローラ50によって搬送される基板90に対して、基板90の幅方向よりも十分長いカーテン状(薄膜状または帯状)のエアを、基板90の上方から吹き付ける。これによって、基板90に盛られた(付着した)現像液21は、ほぼ除去される。すなわち、エアノズル24による現像液21の除去は、除去工程に相当する。基板90から除去された現像液21は、回収され必要に応じて再利用もしくは廃液される。
【0046】
このようにエアノズル24が供給するエアによって、基板90に盛られた現像液21のほとんどは、基板90がリンス部30に搬送される前に除去される。現像液21がリンス部30に持ち込まれることを抑制することによって、リンス部30における基板90の洗浄効果を高めることができる。
【0047】
リンス部30は、基板90にリンス液31を供給するリンスパドルノズル32(第一処理液ノズル)および液ナイフノズル33(第二処理液ノズル)を備えている。また、基板90の上方からリンス液31を供給する複数のシャワーノズル34を備えている。乾燥部300は、基板90の上面および下面にカーテン状のエアを供給することによって、基板90上に盛られたリンス液31を除去し、基板90を乾燥させる一対のエアノズル35a,35bを備えている。一対のエアノズル35a,35bは、乾燥部300における搬出口43付近に設けられている。
【0048】
リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33は、筐体40における仕切板41の下流側近傍に設けられている。リンスパドルノズル32は、液ナイフノズル33よりも上流側の位置に配されている。
【0049】
図4は、下面320側から見たリンスパドルノズル32を示す概略平面図である。リンスパドルノズル32は、基板90の上面と平行な平坦面である下面320を有している。リンスパドルノズル32の下面320には、直交方向に延びる細隙の吐出口321(第一吐出口)が設けられている。リンスパドルノズル32は、この吐出口321からリンス液31を吐出して、基板90に供給する。吐出口321の長さは、基板90の幅よりも長い。このため、リンスパドルノズル32は、複数の搬送ローラ50によって搬送される基板90の幅方向に対して均一にリンス液31を供給することが可能となっている。リンスパドルノズル32が基板90に処理液を吐出する工程は、第一処理液吐出工程に相当する。
【0050】
リンスパドルノズル32の吐出口321が、基板90の上面に近接するように、リンスパドルノズル32が配置されている。このため、リンスパドルノズル32が吐出したリンス液31は、基板90に当たった後、その上方に近接するリンスパドルノズル32の下面320に当たる。換言すると、リンスパドルノズル32が吐出したリンス液31は、基板90に接液した後、基板90の上方に近接するリンスパドルノズル32の下面320に接液する。すなわち、吐出されたリンス液31は、基板90および下面320に接触しつつ、基板90および下面320の隙間で広がっていく。したがって、リンスパドルノズル32がリンス液31を吐出している状態では、
図3に示されるように、リンスパドルノズル32の吐出口321周辺の下面320と、基板90の上面との隙間が、リンスパドルノズル32が吐出したリンス液31で満たされている。つまり、基板90および下面320の間に、液密が形成されている。換言すると、リンスパドルノズル32の下面320がリンス液31に接触した状態(リンス液接触状態)に維持されている。これによって、エアノズル24から吹き出されたエアがリンスパドルノズル32よりも下流側へ侵入することが抑制される。つまり、リンスパドルノズル32は、エアの経路を塞いで、封水(または水封)する。このように封水することによって、基板90に対してリンス液を幅方向にわたって均一に供給できるため、現像ムラの発生を有効に低減できる。
【0051】
吐出口321の基板90からの高さH1は、基板90に盛られるリンス液31の上面の高さと同一か、それよりも低い高さに配置される。例えば、基板90に盛られるリンス液31の厚さが、4mmであるとすると、吐出口321が、基板90の上面から2mm〜4mm離れた高さに配置される。本実施形態では、吐出口321の基板90からの高さH1は、後述する液ナイフノズル33の吐出口331(第二吐出口)の基板からの高さH2よりも低くなっている。
【0052】
なお、リンスパドルノズル32の下面320は、基板90の上面に対して平行であることが望ましいが、必ずしも平行でなくてもよい。すなわち、リンスパドルノズル32の吐出口321の下流側部分において、基板90に供給されたリンス液31が当たる面を有しておればよい。
【0053】
液ナイフノズル33は、基板90の幅方向よりも長い細隙の吐出口331を有している。液ナイフノズル33は、
図3に示されるように、リンス液31を基板90に対して斜めに吐出する。より具体的には、吐出口331からカーテン状(薄膜状または帯状)のリンス液31を下流側に向けて吐出する。液ナイフノズル33のリンス液31の吐出方向D4と基板90の上面とが成す角度θは、20°以上40°以下、より好ましくは、25°以上35°以下とされている。液ナイフノズル33が複数の搬送ローラ50によって搬送される基板90に向けて、リンス液31を吐出する工程は、第二処理液吐出工程に相当する。
【0054】
すなわち、基板90は、搬送されながら、リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33の下を通過することによって、基板90の上面全体が、表面張力を利用してリンス液31が盛られた状態(すなわち、リンス液31のパドルが形成された状態)となる。このように本実施形態では、エアノズル24、リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33によって、基板90の表面に付着した現像液21がリンス液31に置き換えられる。
【0055】
液ナイフノズル33から下流側に向けてリンス液31を吐出することによって、基板90に供給されたリンス液31が、リンスパドルノズル32を超えて上流側に逆流することを抑制できる。仮に、リンスパドルノズル32よりも上流側にリンス液が逆流してしまうと、リンス液31の境界に乱れが発生することとなり、基板90の幅方向にわたって、リンス液31を均一に供給することが困難となり、現像ムラが発生するおそれがある。このため、リンス液31の逆流を抑制することによって、現像ムラの発生を抑制できる。
【0056】
なお、液ナイフノズル33を起こして、吐出方向D4と基板90の上面が成す角度θを90°とし、基板90の上面に対して真っすぐにカーテン状のリンス液31を供給してもよい。また、液ナイフノズル33が、上流側に向けてリンス液31を吐出することも妨げられない。
【0057】
リンスパドルノズル32が基板90に供給するリンス液31の単位時間あたりの液量は、液ナイフノズル33が基板90に供給するリンス液31の単位時間あたりの液量よりも小さくしてもよい。具体的には、リンスパドルノズル32が供給するリンス液31は、液ナイフノズル33が供給するリンス液31に対して20〜30%程度少なくしてもよい。
【0058】
リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33は、リンス液31を常時吐出するようにしてもよい。しかしながら、例えば、基板90の前端または後端が所定位置を通過したことをセンサーで検出して、リンスパドルノズル32または液ナイフノズル33からリンス液31の吐出を開始するようにしてもよい。また、基板90の前端または後端が所定位置を通過したことをセンサーで検出して、リンスパドルノズル32または液ナイフノズル33からのリンス液31の吐出を停止するようにしてもよい。これによって、リンス液31の余分な消費を抑えることができる。
【0059】
リンスパドルノズル32は、現像処理が完了した基板90に対して、初めてリンス液31を供給する。このため、現像ムラの発生を抑えるためには、リンスパドルノズル32が、基板90の幅方向にわたって、均一にリンス液31を供給することが望ましい。リンスパドルノズル32の吐出口321の一部でゴミ詰まりが発生すると、その部分からリンス液31を正常に供給できなくなり、均一な処理液の吐出が困難となってしまう。その結果、基板90の幅方向にわたって、リンス液31での均一処理が行えず、搬送方向(第三方向D3)に延びる筋状の現像ムラが発生してしまう虞れがある。
【0060】
そこで、リンスパドルノズル32の吐出口321の幅(搬送方向における開口幅)W1を、可能な限り大きくすることによって、ゴミ詰まりの発生を低減することができる。また、吐出口321の幅を大きくすることによって、リンスパドルノズル32から吐出されるリンス液31の流速を低減することができる。これによって、リンスパドルノズル32と基板90との隙間で広がったリンス液31が、上流側へ逆流することを抑制できる。
【0061】
本実施形態では、リンスパドルノズル32の吐出口321の幅は、液ナイフノズル33の吐出口331の幅よりも大きくしている。例えば、リンスパドルノズル32の吐出口321の幅は2〜4mmとされ、液ナイフノズル33の吐出口331の幅は0.2〜0.5mmとされる。
【0062】
液ナイフノズル33は、
図3に示すように、吐出方向D4に若干延びている。これは、液ナイフノズル33に供給されたリンス液31を、直交方向に均一に広げるとともに、吐出口331から吐出方向D4に沿って均一に吐出するためのスペースを、液ナイフノズル33の内部に設けることが望ましいからである。したがって、下流側に向けてカーテン状のリンス液31を吐出する場合、
図3に示すように、液ナイフノズル33の搬送方向の長さが長くなる。このため、仮にリンスパドルノズル32を省略した場合、エアノズル24と液ナイフノズル33を接近させることが困難であるため、基板90が乾燥してしまう虞れがある。また、仮にリンスパドルノズル32を省略した場合において、液ナイフノズル33をまっすぐに起こして、吐出方向D4と基板90の上面が成す角度θを90°とすることも考えられる。しかし、この場合は、エアノズル24からのエアでリンス液31の液面が乱されることによって、リンス液31を均一に供給することが困難となる虞れがある。したがって、これらの観点からも、リンス液31で基板90を均一に処理する上で、リンスパドルノズル32を設けることは極めて有効である。
【0063】
図5は、リンス部30におけるリンス液31を供給する流路を説明するための模式図である。リンス部30においては、上流エリア301、中流エリア302および下流エリア303で、基板90に供給するリンス液31の純度が異なっている。
【0064】
より具体的には、下流エリア303にある複数のシャワーノズル34には、最も純度の高いリンス液31が供給される。例えば、リンス液31として超純水を用いる場合には、基板処理装置1が設置される工場内に設置された超純粋を貯留したタンクから、超純水(直水)がポンプなどで送られ、リンス部30に供給される。
【0065】
リンス部30の下流エリア303に供給されたリンス液31は、シャワーノズル34によって基板90に供給される。そして、基板90からあふれたリンス液31は、落下して装置内の排水口を通り、第一回収タンク61に回収される。第一回収タンク61に回収されたリンス液31は、基板90の洗浄に使用されたため、元のリンス液31に比べて、純度が低下している。
【0066】
第一回収タンク61に回収されたリンス液31は、ポンプで吸い上げられ、中流エリア302にあるシャワーノズル34に送られ、基板90に供給される。そして、基板90からあふれたリンス液31は、落下して排水口を通り、第二回収タンク63に回収される。第二回収タンク63に回収されたリンス液31は、下流エリア303および中流エリア302で使用されたものであるため、第一回収タンク61に回収されたリンス液31よりも純度が低下している。
【0067】
第二回収タンク63に回収されたリンス液31は、ポンプで吸い上げられ、上流エリア301にあるリンスパドルノズル32および液ナイフノズル33に送られ、基板90に供給される。なお、第二回収タンク63からリンスパドルノズル32および液ナイフノズル33につながる配管の途中に、フィルター65を取り付けることによって、リンス液31からパーティクルなどの異物を除くようにしてもよい。上流エリア301において使用されたリンス液31は、適宜廃棄される。
【0068】
このように、リンス液31を再利用することによって、リンス部30における洗浄性能は維持したまま、リンス液31の消費量を抑えることができる。
【0069】
なお、リンス液31に現像液21の反応を停止させる機能を持たせることも考えられる。例えば、現像液21が水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などのアルカリ性の反応液である場合、リンス液31に酸性の炭酸水を混合することによって、反応を効率よく停止させることができる。この場合、
図5に示されるように、第二回収タンク63からリンスパドルノズル32および液ナイフノズル33につながる配管に、炭酸水を貯留したタンク70を接続する。これによって、リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33に向かうリンス液31に、炭酸水が供給される。
【0070】
タンク70およびタンク70とリンスパドルノズル32または液ナイフノズル33とをつなぐ配管71は、炭酸水供給部に相当する。中流エリア302または下流エリア303のシャワーノズル34には炭酸水が供給されない。このため、これらの中流エリア302および下流エリア303において、炭酸水を除去することが可能である。
【0071】
なお、リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33のいずれか一方にのみに、炭酸水を供給するようにしてもよい。上述したように、現像処理後の基板90は、まず、リンスパドルノズル32からリンス液31が供給される。このリンス液31に炭酸水を混ぜることで、より効果的に反応を停止させることができる。したがって、現像ムラの発生をより効果的に抑制できる。
【0072】
<2. 第2実施形態>
上記実施形態に係る基板処理装置1は、リンス部30において、2つのノズル(リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33)を備えている。しかしながら、これらの2つのノズルを1つのノズルで構成することも考えられる。なお、これ以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同符号またはアルファベットを追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0073】
図6は、第2実施形態に係る基板処理装置1Aにおける、現像部20、リンス部30Aの境界部分を拡大して示す概略側面図である。
図6に示すように、基板処理装置1Aは、リンスパドルノズル32および液ナイフノズル33の代わりに、1つのノズル36を備えている点で、基板処理装置1と相違している。
【0074】
ノズル36は、吐出口321A(第一吐出口)が形成されている第一吐出部32Aと、吐出口331A(第二吐出口)が形成されている第二吐出部33Aとを有している。
【0075】
図7は第2実施形態に係るノズル36の概略断面図である。第一吐出部32Aは、第一部材81および第二部材82によって構成されている。第一部材81および第二部材82は、搬送方向(第三方向D3)において互いに連結されることによって、基板90の幅方向に延びる細隙の吐出口321A、および、該吐出口321Aに連通する空洞部323を形成する。第一部材81および第二部材82の間には、スペーサー811が挟みこまれており、該スペーサー811の形状によって、空洞部323の形状および吐出口321Aの開口幅が規定されている。空洞部323は、タンク70から供給されるリンス液31の流路を形成する。第一部材81の下面320A及び第二部材82の下面320Bは、基板90の上面に平行である、平滑な平坦面(第一下面)を形成していることが好ましい。
【0076】
吐出口321Aから吐出されたリンス液31は、基板90の上面と下面320Aまたは基板90の上面と下面320Bとの間で広がる。このため、基板90の上面と下面320Aまたは基板90と下面320Bとの間は、リンス液31によって液密となり、封水される。このように、第一吐出部31Aは、第1実施形態係るリンスパドルノズル32と共通する機能を備えている。なお、下面320A及び下面320Bのうち、少なくとも一方において、封水できればよい。このため、下面320A及び下面320Bのうち、少なくとも一方が、平滑であることが好ましい。また、下面320A,320Bは、封水可能である限りにおいて、必ずしも基板90の上面と平行である必要はない。
【0077】
第二吐出部33Aは、搬送方向(第三方向D3)において互いに連結されることによって、吐出口331Aおよび該吐出口331Aに連通する空洞部333を形成する第二部材82および第三部材83によって形成されている。第二部材82および第三部材83の間には、スペーサー812が挟みこまれており、このスペーサー812の形状によって、空洞部333の形状および吐出口331Aの開口幅が規定される。空洞部333は、タンク70から供給されるリンス液31の流路を形成する。
【0078】
吐出口321Aの開口幅は、吐出口331Aの開口幅よりも大きくすることが好ましい。吐出口321Aの開口幅を大きくすることによって、吐出口321Aにおけるゴミ詰まりを低減できる。これによって、吐出口321Aからの均一な処理液の吐出が可能となる。
【0079】
第二吐出部33Aにおける第二部材82には、吐出口331Aの下方の位置に、搬送方向下流側かつ下向きに傾斜する傾斜面335を有している。吐出口331Aから下方に吐出されたリンス液31は、傾斜面335に沿って下向きおよび搬送方向下流向きの合成方向に向けて流れつつ、カーテン状(薄膜状または帯状)に成形されて、基板90に供給される。このように、第二吐出部33Aは、第1実施形態に係る液ナイフノズル33と共通する機能を備えている。
【0080】
吐出口321Aから吐出されるリンス液31の単位時間あたりの吐出量は、吐出口331Aから吐出されるリンス液31の単位時間あたりの吐出量よりも小さくしてもよい。吐出口331Aからのリンス液31の吐出量を増やすことによって、基板90に十分なリンス液31を供給することが望ましい。
【0081】
本実施形態に係る基板処理装置1Aによると、第1実施形態に係るリンスパドルノズル32および液ナイフノズル33を用いる代わりに、単一のノズル36によって、基板90との間でリンス液31の液密を形成するとともに、基板90にカーテン状のリンス液31の供給できる。このため、液密の形成位置からカーテン状のリンス液31の供給位置までの長さを短くできる。これによって、基板90が乾燥したり、もしくは、基板90上のリンス液31が不足したりすることを抑制できるため、より均一に基板90を処理できる。したがって、現像ムラの発生を効果的に抑制できる。
【0082】
<ノズル36の第1変形例>
図8は、第1変形例に係るノズル36Aを示す概略断面図である。ノズル36Aの第二吐出部33Bは、第二部材82Aの傾斜面335Aが液密を形成する下面320Bと同じ高さまで延在している。このため、吐出口331Aから吐出されたリンス液31は、傾斜面335A上を流れて、液密を形成するリンス液31に接触するように供給される。つまり、ノズル36Aにおいては、リンス液31が傾斜面335A上でカーテン状(薄膜状または帯状)に形成されて、下面320Bの下流側部分で合流する。
【0083】
ノズル36Aを採用した場合、液密状態のリンス液31に、カーテン状のリンス液31を穏やかに供給できる。これによって、現像ムラの発生を効果的に抑制できる。
【0084】
<ノズル36の第2変形例>
図9は、第2変形例に係るノズル36Bを示す概略断面図である。ノズル36Bにおいては、第一部材72Aおよび第三部材83の間に第二吐出部33Cを構成する第二部材82Bが備えられている。そして、該第二部材82Bは、本体部821および板状の傾斜部材823を備えている。傾斜部材823は、ボルトなどの固定手段を介して、本体部821の下部に対して着脱可能に取り付けられている。傾斜部材823の素材は特に限定されるものではないが、例えば加工のしやすさや強度などの点で、傾斜部材823をSUS(ステンレス鋼)で形成することが好適である。
【0085】
傾斜部材823は、本体部821に対して上下方向において重なって固定される部分と、本体部821から搬送方向下流側に張り出しつつ下方に延びることによって、傾斜面335Bを形成する部分とを有する。傾斜面335Bは、傾斜面335と同様に基板90の幅方向に広がっており、吐出口331Aから吐出されたリンス液31をカーテン状に成形して、基板90に供給する。
【0086】
第2変形例に係るノズル36Bよると、傾斜面335Bを第二部材82Bとは別部材の傾斜部材823によって構成される。このため、第二部材82Bの形成がしやすい。また、
図9に示すように、傾斜部材721は、その第二部材82Bから搬送方向下流側に張り出した部分と吐出口331Aとが対向するように、第二部材82Bに取り付けられている。このため、ノズル36Bを採用した場合、傾斜部材823を取り外すことによって、吐出口331Aのメンテナンス作業、例えば、吐出口331Aに詰まった異物を除去する作業が行い易いという利点がある。なお、吐出口331Aにおける異物の除去は、例えば、傾斜部材823を取り外して、吐出口331Aに薄板を差し込むことによって実現できる。
【0087】
<ノズル36の第3変形例>
図10は、第3変形例に係るノズル36Cを示す概略断面図である。ノズル36Cの構成は、ほぼノズル36Bの構成に類似するが、第三部材83Aにおける、第二部材82B(詳細には、本体部821)と対向する部分が、本体部821における傾斜部材823の取付位置付近まで延びている。このため、第二部材82Bの本体部821と、第三部材83との間で形成される空洞部333Aが傾斜部材823の取付位置付近まで延びている。したがって、吐出口331Bが傾斜面335Bに近接する位置に形成されている。
【0088】
このように、吐出口723を傾斜部材823の傾斜面335Bに接近させることによって、流速が比較的大きい状態で、搬送方向の下流側にリンス液31を流すことができる。このため、吐出口331Bから吐出されるリンス液の単位時間あたりの吐出量をある程度低減させても、リンス液31をカーテン状に成形して供給することができる。したがって、ノズル36Cによれば、リンス液31の使用量を抑えることができる。
【0089】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、基板90に付着した現像液21(前処理液)をそれとは異なる種類のリンス液31(処理液)に置換している。しかしながら、基板90に付着した前処理液を同種の新たな処理液に置き換える場合においても、本発明は有効である。
【0091】
また、上記実施形態では、現像処理を行う場合を例に挙げて説明したが、これは本発明の一例に過ぎない。例えば、エッチング処理、または剥離処理などの他の基板処理においても、本発明は有効である。
【0092】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記実施形態で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。