(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、ノズル先端からライニング材までの距離が遠いほど除去する能力が弱くなるという問題がある。そのため、ライニング材の厚さを除いた筒状構造物の内壁面近傍では最も水の力が弱くなり、取り残しが生じ易く、完全に取り除こうとすると非常に時間がかかってしまう。
【0007】
また、大量の水を使用する必要があるため、回収した水の処理費用が高額になるといった問題もある。さらに、水は0度以下の環境では凍結するため、作業温度が0度以下となる場所では使用できないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、煙突等の筒状構造物の内壁面に設けられたライニング材を、大量の水を使用することなく筒状構造物から除去することのできるライニング材除去用刃、ライニング材除去装置およびライニング材除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るライニング材除去用刃は、筒状構造物の内壁面に設けられたライニング材を除去するライニング材除去用刃であって、回転駆動される回転駆動盤と、前記回転駆動盤から外方向へ突出するように等角度間隔を隔てて設けられた複数本の撚り線材とを有し、前記各撚り線材は、弾性を有しているとともに、前記回転駆動盤の回転中心から前記撚り線材の先端までの距離が前記筒状構造物における前記ライニング材の厚さを除いた内周半径よりも大きくなるように形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様として、前記各撚り線材が、前記回転駆動盤の回転方向に対して半径方向よりも後方に傾斜されて設けられていてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、前記撚り線材が3本の鋼撚り線材により構成されており、前記回転駆動盤の上面には、前記各鋼撚り線材を挿入して固定するアーチ状固定部が設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明に係るライニング材除去装置は、前記ライニング材除去用刃と、前記回転駆動盤が下端部に固定される回転ロッドと、この回転ロッドを上下方向に移動させるロッド上下位置調整手段と、前記回転ロッドを回転させるロッド回転手段とを有する。
【0013】
また、本発明の一態様として、前記回転駆動盤の上方側で前記回転ロッドに固定された上方回転駆動盤と、この上方回転駆動盤から外方向へ突出され、等角度間隔を隔てて設けられた3本の支持ロッドと、各支持ロッドの先端に設けられたL字形鋼とを有するライニング材破砕刃を備えており、前記L字形鋼は、前記上方回転駆動盤の径方向に対して垂直に固定されているとともに、前記上方回転駆動盤の回転中心から前記L字形鋼の先端までの距離が、前記ライニング材の内面の半径よりも大きく、かつ前記筒状構造物の内周半径よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明に係るライニング材除去方法は、前記ライニング材除去装置を用いて筒状構造物の内面に設けられたライニング材を除去するライニング材除去方法であって、前記回転ロッドを前記筒状構造物の上方から挿入し、前記回転ロッドの下端部を前記筒状構造物の下方に突出させる回転ロッド挿入工程と、前記ライニング材除去用刃を前記回転ロッドの下端部に固定するライニング材除去用刃固定工程と、前記ロッド回転手段により前記回転ロッドを回転させるとともに、前記ロッド上下位置調整手段により前記回転ロッドを所定の速度で上昇させることにより前記筒状構造物の内面に設けられたライニング材を下方から上方に向けて除去するライニング材除去工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、煙突等の筒状構造物の内壁面に設けられたライニング材を、大量の水を使用することなく筒状構造物から除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るライニング材除去用刃およびライニング材除去装置の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態のライニング材除去装置1は、
図1に示すように、ライニング材除去用刃2と、このライニング材除去用刃2の上方側に設けられるライニング材破砕刃3と、前記ライニング材除去用刃2を下端部に固定する回転ロッド4と、この回転ロッド4を上下方向に移動させるロッド上下位置調整手段5と、前記回転ロッド4を回転させるロッド回転手段6とを有する。以下、各構成について説明する。
【0019】
ライニング材除去用刃2は、煙突等の筒状構造物7の内壁面71に設けられたライニング材72を除去し、ライニング材72が除去された前記筒状構造物7の内壁面71をケレン(錆び落としや脆弱な旧塗膜の除去等)するためのものであり、
図2に示すように、回転駆動される回転駆動盤21と、この回転駆動盤21から外方向へ突出される複数本の撚り線材22,22,22とを有している。
【0020】
回転駆動盤21は、
図2に示すように、略円盤状に形成されており、円盤中央を回転中心として回転駆動されるものである。この回転駆動盤21は、筒状構造物7内で回転するため、ライニング材72の内面の半径よりも小径に形成されている。なお、本実施形態において、回転駆動盤21は略円盤状に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、矩形状等であってもよい。
【0021】
撚り線材22は、前記回転駆動盤21とともに筒状構造物7内で回転し、先端側で前記筒状構造物7の内壁面71に設けられたライニング材72を削り落とすように除去するものである。また、撚り線材22は、ライニング材72が除去された筒状構造物7の内壁面71を先端で押し付けながらケレンするブラシとしても機能する部分でもあり、前記筒状構造物7の内壁面71を痛めないように適度な弾性を有しているとともに、前記回転駆動盤21の回転中心から前記撚り線材22の先端までの距離が前記筒状構造物7における前記ライニング材72の厚さを除いた内周半径よりも大きくなるように形成されている。
【0022】
本実施形態のライニング材除去用刃2においては、前記撚り線材22が3本の鋼撚り線材により構成されており、各鋼撚り線材は、適度な弾性および強度を確保するため、PC(プレストレスト・コンクリート)鋼からなる撚り線材を複数本束ねたPC鋼より線とし、このPC鋼より線を更に複数本撚り合わせて形成されている。
【0023】
また、各撚り線材22は、回転時におけるライニング材72や筒状構造物7との摩擦抵抗を軽減させるため、前記回転駆動盤21の回転方向に対して半径方向よりも後方に傾斜されて設けられている。具体的には、
図2に示すように、撚り線材22の先端部と、前記撚り線材22の先端における回転方向とのなす角θが鋭角になるように設けられている。
【0024】
さらに、本実施形態では、
図2(b)に示すように、前記回転駆動盤21の上面には、断面略U字形状に形成されたアーチ状固定部23が三つ固定されている。各アーチ状固定部23には、軸線方向に沿ってボルト24を挿通可能な挿通孔25が二箇所形成されている。そして、各アーチ状固定部23に撚り線材22を挿入し、先端までの距離を調整した状態でボルト24を用いて締結固定されるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態における撚り線材22には、安価で入手し易いPC鋼撚り線材を用いているが、素材はPC鋼材に限定されるものではなく、適度な弾性とライニング材72を削り落とすための強度を有していれば他の金属材や炭素繊維材、合成樹脂材等から適宜選択してもよい。
【0026】
ライニング材破砕刃3は、ライニング材72の内側面にライニング材除去用刃2では削り落とせない硬いコーティング材73でコーティングされている場合に用いるものであり、
図1および
図3に示すように、前記回転駆動盤21の上方側に固定される上方回転駆動盤31と、この上方回転駆動盤31から外方向へ突出され、等角度間隔を隔てて設けられた3本の支持ロッド32,32,32と、各支持ロッド32,32,32の先端に設けられたL字形鋼33,33,33とを有している。
【0027】
上方回転駆動盤31は、回転駆動盤21と同様、円盤状に形成されており、筒状構造物7内で回転するため、ライニング材72の内面の半径よりも小径に形成されている。また、上方回転駆動盤31の上面には、等角度間隔を隔てて三つのアーチ状固定部34が設けられている。なお、本実施形態では、使用部材を共通にして低コスト化を図るため、回転駆動盤21と上方回転駆動盤31とを同一構成としているが、この構成に限定されるものではない。
【0028】
支持ロッド32は、L字形鋼33を支持するための棒材であり、本実施形態では、上方回転駆動盤31の上面に設けられたアーチ状固定部34に挿入され、L字形鋼33の先端までの距離を調整した状態で複数のボルト35によって締結固定されている。
【0029】
L字形鋼33は、硬いコーティング材73を破砕するための刃であり、本実施形態では、
図3(b)に示すように、縦断面が略L字形状の鋼材によって形成されている。このL字形鋼33は、角の尖った先端部分がコーティング材73に当接するように、前記支持ロッド32の先端において、前記上方回転駆動盤31の径方向に対して垂直に固定されている。
【0030】
また、L字形鋼33は、コーティング材73を破砕する一方、前記筒状構造物7の内壁面71を傷つけないようにするために、前記上方回転駆動盤31の回転中心から前記L字形鋼33の先端までの距離が、前記ライニング材72の内面の半径よりも大きく、かつ前記筒状構造物7の内周半径よりも小さくなるように形成されていている。
【0031】
このライニング材破砕刃3は、上述のとおり、ライニング材72の内側面に硬いコーティング材73が設けられている場合に用いられるものであり、ライニング材除去用刃2より先にランニング材72に当接する方向側に配置される。本実施形態においては、
図1に示すように、下方から上方へ向けてライニング材72を除去するため、ライニング材破砕刃3は、ライニング材除去用刃2の上方側に配置されている。
【0032】
なお、ライニング材破砕刃3は、ライニング材72がライニング除去用刃2のみで除去できる場合には設ける必要はなく、
図4に示すように、ライニング除去用刃2を上下2段にして設けるようにしてもよい。
【0033】
回転ロッド4は、前記ライニング除去用刃2および前記ライニング材破砕刃3を筒状構造物7内において回転させるための棒状部材である。本実施形態における回転ロッド4は、
図1に示すように、下端部にはライニング材除去用刃2の回転駆動円盤21およびその上方側には前記ライニング材破砕刃3の上方回転駆動円盤31が固定されている。また、本実施形態における回転ロッド4は、複数の棒状部材を連結可能な構成となっており、任意の長さに伸張できるようになっている。
【0034】
ロッド上下位置調整手段5は、前記回転ロッド4を自動または手動により上下方向に移動させ、前記回転ロッド4に固定されている前記ライニング除去用刃2および前記ライニング材破砕刃3の上下位置を調整するものである。本実施形態におけるロッド上下位置調整手段5は、
図1に示すように、回転ハンドル51を有しており、この回転ハンドル51を回転させることによって、内部のギヤ等(図示しない)が前記回転ロッドを上下方向移動させるようになっている。なお、本実施形態では、筒状構造物7の軸線方向が上下方向であるため、ロッド上下位置調整手段5は回転ロッド4を上下方向に移動させているが、筒状構造物7の軸線方向に沿って移動させ得るものである。
【0035】
ロッド回転手段6は、前記回転ロッド4を回転駆動させるための手段であって、本実施形態では、前記回転ロッド4を回転駆動させるためのモーター61およびモーター61の回転数等を制御する制御盤62とを有している。前記モーター61は、ギヤ等(図示しない)を介して前記回転ロッド4に回転力が伝達できるようになっている。また、制御盤62は、モーター61の回転数および回転トルクを任意に制御できるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態のライニング材除去用刃2およびライニング材除去装置1の各構成の作用について、本発明に係るライニング材除去方法とともに説明する。
【0037】
まず、
図1に示すように、筒状構造物7の周囲に足場8を組み、筒状構造物7の上部にライニング材除去装置1を設置する。また、ライニング材72の飛散を防止するため、前記筒状構造物7の上方の空間を覆うように養生シート9で囲んでいる。本実施形態では、この筒状構造物7の上部に設置されたライニング材除去装置1を用いて、次に説明するライニング材除去方法に基づきランニング材72の除去作業を行う。
【0038】
本実施形態のライニング材除去方法は、前記回転ロッド4を前記筒状構造物7に挿入する回転ロッド挿入工程と、前記ライニング材除去用刃2を前記回転ロッド4の下端部に固定するライニング材除去用刃固定工程と、前記筒状構造物7の内壁面71に設けられたライニング材72を下方から上方に向けて除去するライニング材除去工程とを有する。
【0039】
回転ロッド挿入工程は、前記回転ロッド4を前記筒状構造物7の上方から挿入し、ライニング材72の除去作業を前記筒状構造物7の下方から行うために前記回転ロッド4の下端部を前記筒状構造物7の下方に突出させる工程である。本実施形態では、ロッド上下位置調整手段5に前記回転ロッド4を支持させ、回転ハンドル51を回しながら前記回転ロッド4を下方に移動させて挿入する。このとき、回転ロッド4は、上端部に複数の棒材を連結して適宜伸張させる。
【0040】
ライニング材除去用刃固定工程は、前記筒状構造物7の下方に突出させた前記回転ロッド4の下端部にライニング材除去用刃2を固定する工程である。本実施形態では、前記回転ロッド4の下端部に固定された回転駆動盤21のアーチ状固定部23に撚り線材22を挿入し、先端までの距離を調整してボルト24で締結固定する。撚り線材22が長い場合は、切断して調整することができる。このとき、アーチ状固定部23が回転駆動盤21の上面に設けられているため、ボルト24による締結作業がし易い。
【0041】
また、本実施形態では、ライニング材除去用刃2の上方にライニング材破砕刃3を設ける。具体的には、ライニング材除去用刃2の上方に固定されている上方回転駆動盤31のアーチ状固定部34に支持ロッド32を挿入し、L字形鋼33の先端までの距離を調整してボルト35で締結固定する。なお、ライニング材破砕刃3を用いない場合は、
図4に示すように、支持ロッド32およびL字形鋼33の変わりに撚り線材22を固定することができる。
【0042】
ライニング材除去工程は、前記筒状構造物7の内壁面71に設けられたライニング材72を下方から上方に向けて除去する工程である。ロッド回転手段6により前記回転ロッド4を回転させるとともに、ロッド上下位置調整手段5により前記回転ロッド4を所定の速度で上昇させる。
【0043】
ライニング材破砕刃3では、先端のL字形鋼33が角の尖った先端部分によって硬いコーティング材73を破砕する。このとき、ライニング材破砕刃3のL字形鋼33は、前記上方回転駆動盤31の回転中心から前記L字形鋼33の先端までの距離が前記筒状構造物7の内周半径よりも小さいため、前記筒状構造物7の内壁面71を傷つけずに、前記コーティング材73およびライニング材72のみを破砕する。
【0044】
ライニング材除去用刃の撚り線材22では、ライニング材72の除去を行う。本実施形態における撚り線材22は、PC鋼より線を更に複数本撚り合わせて形成されているために高い強度を有しており、ライニング材72を削り落とすように除去することができる。また、前記撚り線材22は適度な弾性を有しているため、前記ライニング材72より硬い前記筒状構造物7の内壁面71に当接すると前記弾性によってしなり、前記内壁面71を痛めずにケレンする。このケレンにより、前記内壁面71にライニング材72を残さずに除去することができる。
【0045】
また、各撚り線材22は、前記回転駆動盤21の回転方向に対して半径方向よりも後方に傾斜されて設けられているため、回転時におけるライニング材72や筒状構造物7の内壁面71との摩擦抵抗が軽減され、撚り線材22への過度な応力や筒状構造物7への過度の負荷を抑制する。そのため、撚り線材2や筒状構造物7の破損等を抑制できる。また、ロッド回転手段6による駆動エネルギーも省エネルギーにすることもできる。
【0046】
仮に、各撚り線材22が過度の負荷を受けても、数本の線材の撚りがほどける程度で済む。そのため、多少の撚りがほどけても、ライニング材72の除去作用およびケレン作業は続けることができる。また、本実施形態では、各撚り線材22が回転駆動盤21の上面に設けられているため、各撚り線材22が破損しているか否かを上方から目視で確認できる。
【0047】
また、本実施形態では、3本の撚り線材22,22,22が等角度間隔を隔てて設けられているため、回転駆動盤21の中心が回転ロッドの回転中心と一致し、回転駆動がスムーズに行われる。また、ライニング材72等に当接させる本数を少なくすることにより、摩擦抵抗を抑制することもできる。
【0048】
さらに、除去作業を下方から行うことにより、回転ロッド4に上下方向の引っ張り力が生じるため、ライニング材除去用刃2やライニング材破砕刃3は暴れることなく、安定して回転駆動させることができる。
【0049】
以上のような本実施形態のライニング材除去用刃2、ライニング材除去装置1およびライニング材除去方法によれば、以下の効果を得ることができる。
1.撚り線材22によって筒状構造物7内のライニング材72を削り落とすとともに、前記筒状構造物7の内壁面71をケレンすることで、前記ライニング材72を残らず除去することができる。
2.撚り線材22はライニング材72に直接接触しながら除去を行うため、短時間で作業を行うことができる。
3.水を使わずに作業が行えるため、回収したライニング材72の処理が容易にできるとともに、作業温度が0度以下となるような場所においても作業することができる。
【0050】
なお、本発明に係るライニング材除去用刃、ライニング材除去装置およびライニング材除去方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0051】
例えば、ライニング材除去装置1は、複数のパーツに分解し、筒状構造物7の上で組み立てられるようにしてもよい。
【0052】
また、上述した本実施形態では、筒状構造物7が煙突である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、マンホールや水道管等のように、内壁面71にライニング材72が設けられている全ての筒状構造物7に適用可能である。