(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、複合ポリマー組成物である。
【0007】
本発明に記載の複合ポリマー組成物は、(i)1つ以上のポリオレフィ
ン、8重量%以下の1つ以上の分散安定剤、及び水
の溶融混練生成物を含むポリオレフィン水分散液と、(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーと、の乳化重合生成物を含み、1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のT
gを有し、0.5〜100重量%の官能化ポリオレフィンを含み、溶融混練生成物(i)が、水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、ポリマー粒子に重合し、複合ポリマー粒子を形成する。
【0008】
ポリオレフィン水分散液
ポリオレフィン
水分散液は、水分散液の固形分の総重量を基に、5〜99重量パーセントの1つ以上のポリオレフィンを含む。5〜99重量パーセントのすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、下限の5、8、10、15、20、25重量パーセントから、上限の40、50、60、70、80、90、95、または99重量パーセントまでであり得る。例えば、水分散液は、水分散液の固形分の総重量を基に、15〜99、または15〜90、または15〜80、または15〜75、または30〜70、または35〜65重量パーセントの1つ以上のポリオレフィンを含み得る。水分散液は、少なくとも1つ以上のポリオレフィンを含む。
【0009】
本発明で使用されるポリオレフィンは、50℃以下のT
gを有する。50℃以下のすべての単一値及び副範囲が、本明細書に開示され、本明細書に含められる。例えば、T
gは、50℃以下であり得、または代替例において、T
gは、40℃以下(50以外?)であり得、または代替例において、T
gは、30℃以下であり得、または代替例において、T
gは、15℃以下であり得、または代替例において、T
gは、0℃以下であり得、または代替例において、T
gは、−15℃以下であり得る。一実施形態において、ポリオレフィンは、−50℃以下のT
gを有する。
【0010】
ポリオレフィンの実施例は、これに限定されないが、一般に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−l−ブテンコポリマー、及びプロピレン−1−ブテンコポリマーとして表されるエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセン等の1つ以上のα−オレフィンのホモポリマー及びコポリマー(エラストマーを含む);一般に、エチレン−ブタジエンコポリマー及びエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーとして表される、共役または非共役ジエンを持つα−オレフィンのコポリマー(エラストマーを含む);及び、一般にエチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマー、及びエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーとして表される共役または非共役ジエンをもつ2つ以上のα−オレフィンのコポリマー等のポリオレフィン(エラストマーを含む);エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸またはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、及びエチレン−(メタ)アクリレートコポリマー等のエチレン−ビニル化合物コポリマーを含む。これらの樹脂は、単独または2つ以上の組み合わせのいずれかで用いられてもよい。
【0011】
選択された実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレン−αオレフィンコポリマー、プロピレン−αオレフィンコポリマー、及びオレフィンブロックコポリマーからなる群から選択される1つ以上のポリオレフィンを含み得る。具体的には、選択された実施形態において、基材ポリマーは、1つ以上の非極性ポリオレフィンを含み得る。
【0012】
特定の実施形態において、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド及びエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー等のポリオレフィンが、使用され得る。いくつかの実施形態において、例となるオレフィンポリマーは、米国特許第3,645,992号に記載されるような均一なポリマー、米国特許第4,076,698号に記載されるような高密度ポリエチレン(HDPE)、不均質に分岐した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、不均質に分岐した超低直鎖状密度ポリエチレン(ULDPE)、均一に分岐した直鎖状エチレン/α−オレフィンコポリマー、例えば、米国特許第5,272,236号及び同第5,278,272号に開示され明細書に参照により組み込まれている方法により調製することができる、均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンポリマー、及び低密度ポリエチレン(LDPE)またはエチレンビニルアセテートポリマー(EVA)等の高圧、フリーラジカル重合エチレンポリマー及びコポリマーを含む。
【0013】
他の特定の実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)系ポリマーであり得る。他の実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレン−メチルアクリレート(EMA)系ポリマーであり得る。他の特定の実施形態において、エチレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、またはエチレン−オクテンコポリマー、またはインターポリマーであり得る。他の特定の実施形態において、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、プロピレン−エチレンまたはプロピレン−エチレン−ブテンコポリマー、またはインターポリマーであり得る。
【0014】
特定の一実施形態において、ポリオレフィンは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とする、プロピレン/α−オレフィンコポリマーである。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」とは、配列が、約0.85超、代替例において約0.90超、他の代替例において約0.92超、及び他の代替例において約0.93超の
13C NMRにより測定されるアイソタクチックトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアッドは、当分野で周知であり、例えば、
13C NMRスペクトルにより決定されるコポリマー分子鎖内のトライアッド単位に関しアイソタクチック配列を参照する、米国特許第5,504,172号及び国際公開第00/01745号に記載される。プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、プロピレンから誘導される単位及び1つ以上のα−オレフィンコモノマーから誘導されるポリマー単位を含む。プロピレン/α−オレフィンコポリマーを製造するのに使用される、例となるコモノマーは、C
2及びC
4〜C
10α−オレフィン、例えば、C
2、C
4、C
6、及びC
8α−オレフィンである。
【0015】
オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238(190℃で/2.16Kg)に従って測定される、1〜1500g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。1〜1500g/10分のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトフローレートは、下限の1g/10分、2g/10分、3g/10分、4g/10分、5g/10分、100g/10分、200g/10分、500g/10分、800g/10分、1000g/10分、1300g/10分、または1400g/10分から、上限の1500g/10分、1250g/10分、1000g/10分、800g/10分、500g/10分、100g/10分、50g/10分、40g/10分、及び30g/10分までであり得る。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1〜1500g/10分、または1〜500g/10分、または500〜1500g/10分、または500〜1250g/10分、または300〜1300g/10分、または5〜30g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。
【0016】
オレフィンコポリマーは、重量平均分子量割る数平均分子量(M
w/M
n)として定義される分子量分布(MWD)3.5以下、代替例において3.0以下、または他の代替例において1.8〜3.0を有する。
【0017】
かかるオレフィンコポリマーは、VERSIFY(商標)及びENGAGE(商標)の商標名の下にThe Dow Chemical Companyから市販され、またはVISTAMAXX(商標)及びEXACT(商標)の商標名の下に、ExxonMobil Chemical Companyから市販されている。
【0018】
特定の他の実施形態において、ポリオレフィンは、例えば、半結晶性ポリマーであり得、110℃未満の融解点を有し得る。好適な実施形態において、融解点は、25〜100℃であり得る。さらに好適な実施形態において、融解点は、40と85℃との間であり得る。
【0019】
他の選択される実施形態において、国際公開第2005/090427及び米国特許出願公開第2006/0199930号に記載されるような、オレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレンマルチブロックコポリマー等は、そのようなオレフィンブロックコポリマーを記載する範囲で本明細書に参照により組み込まれ、ポリオレフィンとして使用され得る。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、
(a)約1.7〜約3.5のM
w/M
n、少なくとも1つの摂氏での融解点、T
m、及びグラム/立方センチメートルでの密度、dを有し、T
m及びdの数値は、
T
m>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
2の関係に対応する、または
(b)約1.7〜約3.5のM
w/M
n、J/gの融解熱、ΔHにより特徴付けられ、及び最高DSC頂点と最高CRYSTAF頂点との間の温度差により定義される摂氏でのデルタ量、ΔTを有し、ΔT及びΔHの数値は、以下の関係を有し、
ΔHが0超及び130J/g以下の場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81であり、
ΔHが130J/g超の場合、ΔT≧48℃であり、
CRYSTAF頂点は、少なくとも5パーセントの堆積ポリマーを使用して決定され、5パーセント未満のポリマーが同定可能なCRYSTAF頂点を有する場合、CRYSTAF温度は、30℃となる、または
(c)圧縮成型されたエチレン/α−オレフィンインターポリマーの膜で測定される、300パーセント歪度及び1サイクルにおける、パーセントでの弾性回復性、Reにより特徴付けられ、グラム/立方センチメートルでの密度、dを有し、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、実質的に架橋相のない時、以下の関係を満たし、
Re>1481−1629(d)、または、
(d)TREFを使用して分画したとき、40℃〜130℃で溶出する分子率を有し、この分画が、同一の温度間で溶出する比較ランダムエチレンインターポリマー分画よりも、少なくとも5パーセント高い1モルあたりのコモノマー含有量を有することに特徴付けられ、前記比較ランダムエチレンインターポリマーは、同一のコモノマー(複数可)を有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの10パーセント以内のメルトインデックス、密度、及び(ポリマー全体を基に)モルあたりのコモノマー含有量を有する、または
(e)25℃での貯蔵弾性率、G´(25℃)及び100℃での貯蔵弾性率、G´(100℃)を有し、G´(25℃)とG´(100℃)との比率は、約1:1〜約9:1の範囲である、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであり得る。
【0020】
そのようなオレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはまた、
(a)TREFを使用し分画された時、40℃〜30℃の間で溶出する分子率を有し、分画が、少なくとも0.5以上〜約1のブロックインデックスを有し、分子量分布、M
w/M
n、が、約1.3超であることにより特徴付けられる、または
(b)0超〜約1.0の平均ブロックインデックス及び約1.3超の分子量分布、M
w/M
nを有し得る。
【0021】
特定の実施形態において、ポリオレフィンは、例えば、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する1つ以上の極性ポリオレフィンを含む。例となる極性ポリオレフィンは、これに限定されないが、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL、及びExxonMobil Chemical Companyから市販され、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、及び同第5,938,437号に記載されるESCOR等の商標で入手可能なエチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマーを含み、これらの特許はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の例となる基材ポリマーは、これに限定されないが、エチレンエチルアセテート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)を含む。
【0022】
一実施形態において、極性ポリオレフィンは、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得、安定剤は、例えばエチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含み、但し、基材ポリマーは、例えば、安定剤よりも、ASTMD−974に従って測定される低い酸価を有し得ることを条件とする。
【0023】
特定の実施形態において、ポリオレフィンは、0.5〜100重量%の改質または官能化ポリオレフィンを含有し得る。0.5〜100重量%のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、改質ポリオレフィンの量は、下限の総ポリオレフィンの0.5、1、15、25、35、45、55、65、75、85、または95重量%から、上限の総ポリオレフィンの1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100重量%までの範囲にわたり得る。
【0024】
種々の実施形態において、ポリオレフィンの官能化は、融液中、溶液中、ポリオレフィンが液状媒体に分散している場合、押出機中、固体状態、または膨潤状態等で行うことができる。官能化は、ある程度の架橋結合をもたらすであろうことが、理解されるであろう。
【0025】
オレフィンポリマー及び/または複合ポリマー粒子は、当業者に周知の、典型的なグラフト化、水素化、ナイトレン挿入反応、または他の官能化反応により、改質し得る。好適な官能化は、フリーラジカル機構を使用するグラフト化反応である。本明細書において使用する場合、用語「官能化ポリオレフィン」は、これらの任意の官能化反応に従って改質または官能化された複合ポリマー粒子のオレフィンポリマーまたはポリオレフィン成分を意味する。
【0026】
種々のラジカルグラフト可能な種は、個々で、または比較的短いグラフトとしてポリマーと結合し得る。これらの種は、それぞれが少なくとも1つのヘテロ原子を含有する不飽和分子を含む。これらの種は、これに限定されないが、無水マレイン酸、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジシクロヘキシル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジオクタデシル、N−フェニルマレイミド、シトラコン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジエチル、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、及びこれらの化合物のそれぞれのエステル、イミド、塩、及びディールス・アルダー付加物を含む。これらの種はまた、シラン化合物を含む。
【0027】
材料のシランクラスのラジカルグラフト可能な種は、個々で、または比較的短いグラフトとしてポリマーと結合し得る。これらの種は、これに限定されないが、ビニルアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等を含む。一般に、このクラスの材料は、これに限定されないが、シリコンに結合したアルコキシ、アシルオキシ、またはハライド基等の加水分解性基を含む。このクラスの材料はまた、シリコンに結合したアルキル及びシロキシ基等の非加水分解基を含む。他のラジカルグラフト可能な種は、個々で、または短いグラフトからより長いグラフトとしてポリマーと結合し得る。これらの種は、これに限定されないが、メタクリル酸;アクリル酸;アクリル酸のディールス・アルダー付加物;メチル、エチル、ブチル、イソブチル、エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、ヒドロキシエチル、及びジメチルアミノエチルを含むメタクリレート;メチル、エチル、ブチル、イソブチル、エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、及びヒドロキシエチルを含むアクリレート;グリシジルメタクリレート;3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン及び3−(メタクリルオキシ)プロピル−トリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランメタクリレート;アクリロニトリル;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン;スチレン;.α.−メチルスチレン;ビニルトルエン;ジクロロスチレン;N−ビニルピロリジノン、ビニルアセテート、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシメチルトリアルコキシシラン、及び塩化ビニルを含む。
【0028】
熱グラフト化法は、反応のための1つの方法であるが、異なる形態の放射、電子ビーム、またはレドックスラジカル発生を含む光開始等の他のグラフト化法が使用され得る。
【0029】
官能化は、フリーラジカル機構を介し、例えば酸化物を用いて生じ得るが、末端不飽和基(例えば、ビニル基)または内部不飽和基がポリマーに存在するときは、そのような基でも発生し得る。かかる官能化は、これに限定されないが、水素化、(塩素化等の)ハロゲン化、オゾン酸化、ヒドロキシル化、スルホン化、カルボキシル化、エポキシ化、及びグラフト化反応を含む。ハロゲン、アミン、アミド、エスター、カルボン酸、エーテル、シラン、シロキサン等の任意の官能基または無水マレイン酸等の官能不飽和化合物は、既知の化学を介し、末端または内部不飽和に追加することができる。他の官能化法は、「Metalation and Functionalization of Polymers and Copolymers」という表題の米国特許第5,849,828号、「Process for Oxidative Functionalization of Polymers Containing Alkylstyrene」という表題の米国特許第5,814,708号、及び「Functionalization of Polymers Based on Koch Chemistry and Derivatives Thereof」という表題の米国特許第5,717,039号に開示される方法を含む。これらの特許それぞれは、本明細書に参照によってその全体が組み込まれる。
【0030】
フリーラジカルを形成するために、分解することによりグラフト化反応を開始することができる複数の種類の化合物があり、中でも、アゾ含有化合物、カルボキシペルオキソ酸及びペルオキシエステル、アルキルヒドロペルオキシド、及びジアルキル及びジアシルペルオキシドが挙げられる。これらの多くの化合物及びこれらの特性が、記載されている(参照:J. Branderup,E.Immergut,E.Grulke,eds.“Polymer Handbook,”4th ed.,Wiley,New York,1999,Section II,pp.1−76.)。開始剤の分解により形成される種が、酸素系フリーラジカルになることが好ましい。開始剤が、カルボキシペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、及びジアシルペルオキシドから選択されることが、さらに好ましい。
【0031】
多くの他の不飽和ヘテロ原子含有種と同様、無水マレイン酸は、任意の従来の方法により、一般的にフリーラジカル開始剤、例えば、ペルオキシド及び化合物のアゾクラスの存在下で、または電離放射線により、ポリマーにグラフト化され得る。ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペロキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペロキシ)−3−ヘキサン、ラウリルペルオキシド、及びtert−ブチルペルアセテート等のペルオキシド開始剤の内の任意の1つの有機開始剤が、好適である。好適なアゾ化合物は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)である。有機開始剤は、異なる温度で変動する反応性を有し、異なる種類のグラフト化のためのフリーラジカルを生成し得る。当業者は、グラフト化条件の必要に応じて適切な有機開始剤を選択してもよい。
【0032】
グラフト化法で使用される開始剤の量と種類、無水マレイン酸の量、及び温度、時間、せん断、環境、添加剤、希釈剤等を含む反応条件は、マレイン化ポリマーの最終構造に影響を与え得る。例えば、無水マレイン酸/無水コハク酸の度合い、これらのオリゴマー、及びグラフト化ポリマーにグラフト化した加水分解生成物を含むこれらの誘導体は、上述の考慮事項により影響を受け得る。さらに、分岐の度合い及び種類、及び架橋結合の量は、反応条件及び濃度によっても影響を受け得る。基材オレフィンインターポリマーの生成物は、マレイン化ポリマーの最終構造においても、役割を担う。得られた構造は、ひいては最終生成物の特性及び使用に影響を与えるだろう。一般に、使用される開始剤及び無水マレイン酸の量は、官能化ポリマー及びその後の使用のために必要な、所望される度合いのマレイン化及び所望されるメルトフローを提供するために決定された量を超えないだろう。
【0033】
グラフト化反応は、ポリマー骨格へのグラフトを最大化し、オレフィンインターポリマーにグラフトされないグラフト化剤の単独重合等の副反応を最小化する条件下で行われるべきである。無水マレイン酸(及び/またはその誘導体)のいくらかの断片が、オレフィンインターポリマーにグラフトしないことは珍しいことではなく、一般的に未反応グラフト化剤が最小化されることが所望される。ペルオキシド及びマレイン酸等のグラフト化反応物質は、ポリオレフィン分散液に添加され得、グラフト化反応は、融液中、溶液中、分散状態のときは押出機中、固体状態、及び膨潤状態等で行うことができる。マレイン化は、これに限定されないが、二軸押出機、一軸押出機、ブラベンダー、及びバッチ式反応器等、多種の装置内で行うことができる。
【0034】
好適な無水マレイン酸グラフト化ポリマーは、AMPLIFYポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)である。追加の実施例は、FUSABOND(E.I. DuPont de Nemoursから入手可能)、EXXELOR(ExxonMobil Chemical Companyから入手可能)、及びPOLYBOND(Chemtura Corporationから入手可能)、及びLICOCENE(Clariant International Ltd.から入手可能)を含む。
【0035】
一実施形態において、無水マレイン酸グラフト化ポリマーは、グラフト化ポリマーの総重量を基に、0.3重量パーセント〜10.0重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を含む。さらなる実施形態において、無水マレイン酸グラフト化ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーである。さらなる実施形態において、無水マレイン酸グラフト化ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化エチレン/α−オレフィンインターポリマーである。
【0036】
本発明の追加の実施形態は、他のカルボニル含有化合物でグラフト化されたオレフィンインターポリマーのために提供する。一実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、グラフト化無水マレイン酸オレフィンインターポリマーについて上述の分子量分布及び/または密度と同量または同程度の分子量分布及び/または密度を有し得る。別の実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、上述されるように、グラフト化無水マレイン酸オレフィンインターポリマーに使用される同量または同程度の量のグラフト化化合物及び開始剤を使用して調製される。別の実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、上述されるように、グラフト化無水マレイン酸と同一または同程度のグラフト化化合物を含有する。
【0037】
追加のカルボニル含有化合物は、これに限定されないが、ジブチルマレイン酸、ジシクロヘキシルマレイン酸、ジイソブチルマレイン酸、ジオクタデシルマレイン酸、N−フェニルマレイミド、シトラコン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジエチル、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、それらのエステル、それらのイミド、それらの塩、及びそれらのディールス・アルダー付加物を含む。
【0038】
本発明の追加の実施形態は、他のカルボニル含有化合物でグラフト化されたオレフィンインターポリマーのために提供する。一実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、グラフト化無水マレイン酸オレフィンインターポリマーについて上述の分子量分布及び/または密度と同量または同程度の分子量分布及び/または密度を有し得る。別の実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、上述されるように、グラフト化無水マレイン酸オレフィンインターポリマーに使用される同量または同程度の量のグラフト化化合物及び開始剤を使用して調製される。別の実施形態において、これらのグラフト化オレフィンインターポリマーは、上述されるようにグラフト化無水マレイン酸と同一または同程度のグラフト化化合物を含有する。
【0039】
追加のカルボニル含有化合物は、これに限定されないが,ジブチルマレイン酸、ジシクロヘキシルマレイン酸、ジイソブチルマレイン酸、ジオクタデシルマレイン酸、N−フェニルマレイミド、シトラコン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジエチル、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、それらのエステル、それらのイミド、それらの塩、及びそれらのディールス・アルダー付加物を含む。
【0040】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのシラン化合物でグラフト化されたオレフィンインターポリマーを提供する。グラフト化されたシランオレフィンインターポリマーは、少量の加水分解生成物及び/または他の誘導体を含有し得る、または含有し得ない。
【0041】
当業者は、上記の列挙は、例となるポリオレフィンの非包括的な列挙であることを認識するであろう。本発明の範囲は、請求項によってのみ制限されるであろうことが理解されよう。
【0042】
架橋剤
本明細書に開示される官能化ポリオレフィンもまた、これに限定されないが、ペルオキシド、シラン、硫黄、放射、またはアジド系硬化システムを含む、種々の鎖延長及び架橋プロセスによって改質され得る。種々の架橋技術の完全な説明は、米国特許第5,869,591号及び同第5,977,271号に記載され、これら両方共に、本明細書に参照によってそれらの全体が組み込まれる。種々の実施形態において、ポリオレフィンの架橋化は、融液中、溶液中、ポリオレフンが液状媒体に分散している場合、押出機中、固体状態、または膨潤状態等で行うことができる。ポリオレフィンは、ポリオレフィンの官能化で、または感応化なしで架橋され得ることが、理解されるだろう。
【0043】
安定剤
水分散液は、安定した分散液の形成を促進するため、本明細書において分散剤としても参照される、少なくとも1つ以上の安定剤をさらに含む。安定剤は、好適に外部安定剤でもよい。水分散液は、分散液の固形分の総重量を基に、2〜25重量パーセントの1つ以上の安定剤を含む。2〜25重量パーセントのすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、下限の2、5、7、9、11、14、19、または24重量パーセントから、上限の4、6、8 10、15、20、または25重量パーセントまでであり得る。例えば、分散液は、分散液の固形分の総重量を基に、2〜25、または代替例において1〜5、または代替例において3〜10、または代替例において2〜8パーセント、または代替例において5〜20パーセント、または代替例において10〜20重量パーセントの1つ以上の安定剤を含み得る。選択される実施形態において、安定剤は、界面活性剤、ポリマー、またはそれらの混合物であり得る。特定の実施形態において、安定剤は、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する極性ポリマーであり得る。例となる実施形態において、安定剤は、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する1つ以上の極性ポリオレフィンを含む。例となるポリマー安定剤は、これに限定されないが、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL、及びExxonMobil Chemical Companyから市販され、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号及び同第5,938,437号に記載されるESCOR等の商標の下入手可能な、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマーを含み、これらの特許はそれぞれ、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。他の例となるポリマー安定剤は、これに限定されないが、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)を含む。他のエチレン−カルボン酸コポリマーもまた、使用することができる。当業者は、他の多くの有用なポリマーもまた使用され得ることを認識するであろう。
【0044】
使用され得る他の安定剤は、これに限定されないが、長鎖脂肪酸、脂肪酸塩または、12〜60個の炭素原子を有する脂肪酸アルキルエステルを含む。他の実施形態において、長鎖脂肪酸または脂肪酸塩は、12〜40個の炭素原子を有し得る。
【0045】
安定剤は、任意選択で、部分的にまたは完全に中和剤で中和され得る。特定の実施形態において、長鎖脂肪酸またはEAA等の安定剤の中和は、モル換算で25〜200パーセントであり得、または代替例において、モル換算で50〜110パーセントであり得る。例えばEAAに関し、中和剤は、例えば水酸化アンモニウムまたは水酸化カリウム等の塩基であり得る。他の中和剤は、例えば、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムを含み得る。別の代替例において、中和剤は、例えば、炭酸塩であり得る。別の代替例において、中和剤は、例えば、モノエタノールアミンまたは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)等の任意のアミンであり得る。本明細書に開示する実施形態において有用なアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びTRIS AMINO(それぞれAngusから入手可能)、NEUTROL TE(BASFから入手可能)、及びトリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びN,N−ジメチルエタノールアミン(それぞれThe Dow Chemical Company、Midland、MIから入手可能)を含み得る。他の有用なアミンは、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−プロピルアミン、ジメチル−nプロピルアミン、N−メタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、N,N,N’N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロパノール)エチレンジアミン、1.2−ジアミノプロパンを含み得る。いくつかの実施形態において、アミンの混合物または、アミン及び界面活性剤の混合物が使用され得る。当業者は、適切な中和剤の選択は、配合された特定の組成物に依存し、そのような選択は当業者の知識内であることを理解するであろう。
【0046】
本発明の実施において有用であり得る追加の安定剤は、これに限定されないが、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、または非イオン界面活性剤を含む。陰イオン界面活性剤の実施例は、これに限定されないが、スルホン酸、カルボン酸、及びリン酸塩を含む。陽イオン界面活性剤の実施例は、これに限定されないが、第4級アミンを含む。非イオン界面活性剤の実施例は、これに限定されないが、エチレンオキシド及びシリコーン界面活性剤を含有するブロックコポリマーを含む。本発明の実践において有用な安定剤は、外部界面活性剤または内部界面活性剤のいずれかになり得る。外部界面活性剤は、分散液調製中にポリオレフィンに化学的反応状態にならない界面活性剤である。本明細書における有用な外部界面活性剤の実施例は、これに限定されないが、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩及びラウリルスルホン酸塩を含む。内部界面活性剤は、分散液調製中にポリオレフィンに化学的反応状態にならない界面活性剤である。本明細書における有用な内部界面活性剤の実施例は、2,2−ジメチロールプロパン酸及びその塩を含む。本発明の実施において有用であり得る追加の界面活性剤は、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書で開示される実施形態において使用され得る種々の市販されている界面活性剤は、それぞれRTD Hallstarから入手可能な、OP−100(ステアリン酸ナトリウム)、OPK−1000(ステアリン酸カリウム)、及びOPK−181(オイレン酸カリウム)、Baker Petroliteから入手可能なUNICID 350、それぞれCognisから入手可能なDISPONIL FES 77−IS及びDISPONIL TA−430、それぞれRhodiaから入手可能なRHODAPEX CO−436、SOPROPHOR 4D384、3D−33、及び796/P、RHODACAL BX−78及びLDS−22、RHODAFAC RE−610、及びRM−710、及びSUPRAGIL MNS/90、及びそれぞれThe Dow Chemical Company、Midland、Michiganから入手可能なTRITON QS−15、TRITON W−30、DOWFAX 2A1、DOWFAX 3B2、DOWFAX 8390、DOWFAX C6L、TRITON X−200、TRITON XN−45S、TRITON H−55、TRITON GR−5M、TRITON BG−10、及びTRITON CG−110を含む。
【0047】
液状媒体
分散液は、さらに液状媒体を含む。液状媒体は、任意の媒体であり得る。例えば、液状媒体は水でもよい。本発明の分散液は、分散液の総体積に基づいて、液状媒体の35〜80体積パーセントを含む。特定の実施形態において、水含有量は、分散液の総体積を基に35〜75、代替例において35〜70、または代替例において45〜60体積パーセントの範囲になり得る。分散液の水含有量は、好適に固形分含有量(ポリオレフィンと安定剤)が約1体積パーセント〜約74体積パーセントであるよう制御され得る。特定の実施形態において、固形分範囲は、約10体積パーセント〜約70体積パーセントになり得る。特定の実施形態において、固形分範囲は、約20体積パーセント〜約65体積パーセントである。特定の他の実施形態において、固形分範囲は、約25体積パーセント〜約55体積パーセントである。
【0048】
追加成分
いくつかの実施形態において、水分散液は、任意選択でアクリルラテックス、ビニルアクリルラテックス、スチレンアクリルラテックス、ビニルアセテートエチレンラテックス、及びそれらの組み合わせ等の1つ以上のバインダー組成物、任意選択で1つ以上の充填剤、任意選択で1つ以上の添加剤、任意選択で1つ以上の顔料、例えば、酸化チタン、雲母、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、粉砕ガラス、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、飛灰、及び粘土、任意選択で1つ以上の助溶剤、例えばグリコール、グリコールエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチルレート、アルコール、ミネラルスピリット、及び安息香酸エステル、任意選択で1つ以上の分散剤、例えば、アミノアルコール及びポリカルボキシレート、任意選択で1つ以上の界面活性剤、任意選択で1つ以上の消泡剤、任意選択で1つ以上の防腐剤、例えば、殺生物剤、防カビ剤、殺菌剤、殺藻剤、及びそれらの組み合わせ、任意選択で1つ以上の増粘剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、疎水的に改質されたアルカリ可溶性エマルション(UCAR POLYPHOBE TR−116等のHASE増粘剤)及び疎水的に改質されたエトキシル化ウレタン増粘剤(HEUR)等のセルロース系増粘剤、または任意選択で1つ以上の追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニア、及び炭酸塩をさらに含み得る。
【0049】
水分散液の形成
水分散液は、当業者に認識される任意の数の方法により形成され得る。一実施形態において、1つ以上のポリオレフィン、1つ以上のサブ粒子、及び任意選択で1つ以上の安定剤が、分散液を形成するため、押出機内で水及びアンモニア、水酸化カリウム、またはこれら2つの組み合わせ等の中和剤と共に溶融混練される。別の実施形態において、1つ以上のポリオレフィン及び1つ以上のサブ粒子が、混合され、次いでポリオレフィン/サブ粒子化合物が、押出機内で任意の安定剤、水、及び1つ以上の中和剤の存在下で溶融混練され、それにより分散液を形成する。いくつかの実施形態において、分散液はまず、約1〜約3重量%の水を含有するよう希釈され、そして続いて、約25重量%超の水を含むようさらに希釈される。
【0050】
当業者に既知の任意の溶融混練方法が、使用され得る。いくつかの実施形態において、混練機、BANBURY混合機、一軸押出機、または複数軸押出機、例えば二軸押出機が、使用される。本発明に従った分散液の生成方法は、特に限定されない。例えば、特定の実施形態において、押出機、例えば二軸押出機は、背圧調整器、溶湯ポンプ、または歯車ポンプと結合される。例となる実施形態もまた、それぞれポンプを含む塩基貯水槽及び初期貯水槽を提供する。所望する量の塩基及び初期水が、塩基貯水槽及び初期貯水槽それぞれから提供される。任意の好適なポンプは使用され得るが、いくつかの実施形態において、例えば240バールの圧力で約150cc/分の流量を提供するポンプが、塩基及び初期水を押出機へ提供するために使用される。他の実施形態において、注液ポンプは、200バールで300cc/分及び133バールで600cc/分の流量を提供する。いくつかの実施形態において、塩基及び初期水は、予熱器で余熱される。
【0051】
1つ以上のポリオレフィンは、ペレット、粉末、またはフレークの形態で、供給装置から樹脂が溶解または混合される押出機の注入口へ供給される。1つ以上のサブ粒子は、供給装置を介して、1つ以上のポリオレフィンと共に同時に押出機へ供給され得る、または代替例において、1つ以上のサブ粒子は、1つ以上のポリオレフィンへ混合され、次いで、供給装置を介して押出機へ供給され得る。代替例において、追加の1つ以上のサブ粒子は、1つ以上のポリオレフィン及び任意選択で1つ以上のサブ粒子を含む溶融化合物への乳化帯以前に、注入口を介し、さらに計量され得る。いくつかの実施形態において、分散剤は、1つ以上のポリオレフィンに樹脂を通し及び樹脂と共に添加され、他の実施形態において、分散剤は、二軸押出機に別途提供される。樹脂溶融体は、次いで、混合及び運搬帯から、水及び塩基貯水槽からの初期量の水及び塩基が注入口を通し添加される押出機の乳化帯へ送られる。いくつかの実施形態において、分散剤は、追加でまたは独占的に水流へ添加され得る。いくつかの実施形態において、さらなる希釈水は、押出機の希釈及び冷却帯の貯水槽から水注入口を介し、添加され得る。一般に、分散液は、冷却ゾーンで、少なくとも30重量パーセントの水に希釈される。
【0052】
他の実施形態において、ペルオキシド等の架橋剤は、マレイン酸等の官能化添加剤と共に、これらが官能基を架橋及び/または官能化し得るような高温で、押出機内または溶融ブレンダー/混練機内で、希釈水と共に注入され得る。さらに、この希釈された混合物は、所望される希釈度が達成されるまで任意の回数、希釈され得る。いくつかの実施形態において、水は二軸押出機にではなく、むしろ樹脂溶融体が押出機から出た後に、その溶融体を含む流れに添加される。このようにして、押出機に蓄積される蒸気圧が除去され、分散液が、動静翼混合装置等の第2の混合装置内で形成される。
【0053】
なおも別の実施形態において、ポリオレフィン分散液は、マレイン酸及び有機ペルオキシドと共に、加圧された反応器でペルオキシドがポリオレフィンと架橋結合し、またマレイン酸をポリオレフィンにグラフトするような高温(>120℃)で加熱される。アクリルシェルは、コア/シェル型複合粒子を形成するため、これらの官能化粒子にさらに添加され得る。
【0054】
溶融混練生成物は、水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有する官能化及び/または架橋化ポリマー粒子を含む。150nm〜2000nmのすべての値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、粒径は、下限の150、350、550、750、950、1150、1350、1550、1750、または1950nmから、上限の200、400、600、800、1000、1200、1400、1600、1800、または2000nmまでの範囲にわたり得る。
【0055】
(メタ)アクリルモノマー
本明細書において使用する場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0056】
本明細書で用いられる(メタ)アクリルモノマーは、例として、C1−C18(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びジシクロペンタジエニルメタクリレート、及びそれらの混合物、及びそれらの組み合わせを含む。
【0057】
(メタ)アクリルモノマーは、官能化、非官能化、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0058】
例となる官能化(メタ)アクリルモノマーは、これに限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミドを含む。
【0059】
乳化重合
乳化重合条件は、当分野において周知である。乳化重合方法は、一般に1つ以上の界面活性剤を使用する。任意選択で、例となる界面活性剤は、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤を含む。
【0060】
1つ以上の架橋及び/またはグラフト結合剤は、任意選択で乳化重合に添加され得る。例となる架橋剤は、例えば、ジビニルベンゼン;トリアリル(イソ)シアヌレート及びトリアリルトリメリテ−トを含むビニル基含有モノマー;エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ならびにその混合物及び組み合わせを含む(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物を含む。
【0061】
例となるグラフト結合剤は、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルジアリルマレエート、及びアリルアクリロキシプロピオネートを含む。
【0062】
代替例の実施形態おいて、本発明の複合ポリマー粒子は、マトリックスポリマー樹脂に添加剤として使用され得る。かかるマトリックスポリマー樹脂は、例えば、ポリカーボネート(PC)及びPCブレンド、(ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(PBT/PET)及びポリ乳酸等の)ポリエステル、ポリスチレン(PS)、(アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の)スチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、(ポリアミド6及びポリアミド66等の)ポリアミド(PA)、及び(POMコポリマー等の)アセタール樹脂を含み得る。
【0063】
複合ポリマー粒子
本明細書において使用する場合、用語「複合ポリマー粒子」は、ポリオレフィン分散液の存在下で、(メタ)アクリルモノマーの乳化重合から作られる粒子を示す。
【0064】
一実施形態において、複合ポリマー粒子は、架橋構造を有する。
【0065】
別の実施形態において、複合ポリマー粒子は、コア/シェル構造を示す。
【0066】
なおも別の実施形態において、複合ポリマー粒子は、一部シェル構造を持つコアを有する。
【0067】
なおも別の実施形態において、複合ポリマー粒子のポリオレフィン成分は、例えば、乳化重合プロセス中を含むポリオレフィン分散液の形成後、官能化される。
【0068】
代替例において、複合ポリマー粒子は、コアがポリオレフィンを含むコア/シェル構造を有する。
【0069】
なおも別の実施例の実施形態において、複合ポリマー粒子は、ポリオレフィンコアの周囲に少なくとも部分的シェルを形成するため、(メタ)アクリルモノマーがポリオレフィンと重合するコア/シェル構造を有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、複合ポリマー粒子は、オレフィンから誘導される50〜95重量%単位及び(メタ)アクリルから誘導される5〜50重量%単位を含み得る。50〜95重量%のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、オレフィンから誘導される単位は、上限の55、60、65、70、75、80、85、90、または95重量%から、下限の50、55、60、65、70、75、80、85、または90重量%までであり得る。例えば、オレフィンから誘導される単位は、50〜95重量%、または代替例において、オレフィンから誘導される単位は、60〜95重量%、または代替例において、オレフィンから誘導される単位は、70〜90重量%、または代替例において、オレフィンから誘導される単位は、85〜95重量%、または代替例において、オレフィンから誘導される単位は、65〜85重量%の範囲にわたり得る。5〜50重量%のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、(メタ)アクリルから誘導される単位は、上限の10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%から、下限の5、10、15、20、25、30、35、40、または45重量%までの範囲にわたり得る。例えば、(メタ)アクリルから誘導される単位は、5〜50重量%の範囲にわたり得、または代替例において、(メタ)アクリルから誘導される単位は、10〜50重量%の範囲にわたり得、または代替例において、(メタ)アクリルから誘導される単位は、5〜40重量%の範囲にわたり得、または代替例において、(メタ)アクリルから誘導される単位は、5〜30重量%の範囲にわたり得、または代替例において、(メタ)アクリルから誘導される単位は、15〜35重量%の範囲にわたり得る。
【0071】
いくつかの複合粒子の実施形態において、メタ(アクリル)相は、部分的に架橋結合する。
【0072】
いくつかの複合粒子の実施形態において、(メタ)アクリル相は、少なくとも50℃のT
gを有する。50℃以下のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示される。例えば、(メタ)アクリル相のT
gは、少なくとも50℃〜、または代替例において、(メタ)アクリル相のT
gは、少なくとも50℃〜、または代替例において、(メタ)アクリル相のT
gは、少なくとも60℃〜、または代替例において、(メタ)アクリル相のT
gは、少なくとも70℃〜、または代替例において、(メタ)アクリル相のT
gは、少なくとも80℃〜上限の125℃になり得る。
【0073】
複合ポリマー組成物は、マトリックス樹脂の1つ以上の特性を向上させるため、マトリックス樹脂に添加剤として使用され得る。そのような特性は、例えば、衝撃強度、低温特性、耐候性、色安定性、高温特性、及び加工性を含む。
【0074】
さらに、複合ポリマー組成物は、マトリックス樹脂の使用で、または使用なしで有用であり得る。例えば、複合ポリマー組成物は、缶用コーティング、コーティング、セルロースコーティング、バインダー及び不織布、織物コーティング、インク及び顔料、フィルム、吸収剤、イオン交換、カーペット裏地または接着剤、繊維接着剤、ワイピング製品、及び泡沫に使用され得る。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0076】
ポリオレフィン水分散液を、KWP(Krupp Werner&Pfleiderer Corp.(Ramsey、New Jersey)ZSK25押出機(軸直径25mm、450rpmで回転する60L/D)を使用し、以下の方法に従って調製する。The Dow Chemical CompanyからのENGAGE 8200(密度=0.87g/cm
3、メルトフローインデックス=5(190℃/2.16kg)、ガラス転移温度(T
g)=−53℃)等の基材ポリオレフィン樹脂(エチレン−オクテンコポリマー)及び(Clariant International Ltd.(Muttenz、Switzerland)からのLICOCENE PE MA 4351等の)マイレン化ポリエチレンを、押出機の供給口に、Schenck Mechatronロスインウェイト式供給装置及びSchenck定量供給装置それぞれを介し、供給する。次いで、ポリマーを溶融ブレンドし、次いで、初期水溶液流及びラウリルエーテル(2EO)硫酸塩(Huntsman CorporationからのEmpicol ESB 70)の存在下で、高圧で乳化する。さらに、LUPEROX 101及び/またはマレイン酸等のペルオキシド混合物を、ペルオキシドが粒子と架橋結合する及び/または粒子と結合し無水マレイン酸が粒子の表面にグラフトするよう、押出機のこの帯に添加する。LUPEROX 101は、Arkema, Inc. and Sigma−Aldrich Co.,LLC等、種々の供給源から入手可能である。
【0077】
次いで、エマルション相を、70重量パーセント未満の範囲の固形分含有量を有する水分散液を形成するために追加の希釈水を添加する、押出機の希釈及び冷却帯に前方搬送する。初期水溶液流及び希釈水は、すべてIsco2本架けシリンジポンプ(Teledyne Isco, Inc.(Lincoln、Nebraska、USA)から)により供給する。押出機のバレル温度を150℃に設定する。分散液の固形分を基にした割合でマレイン酸(1.75%)の溶液及びLUPEROX 101(0.2%)ペルオキシドを注入し、押出機から分散液を出す。分散液が押出機を出た後、さらに冷却及びメッシュサイズ200μmの濾し袋でろ過する粒径分析は、Beckman Coulter LS 13320 Laser Light Scattering Particle Sizer(Beckman Coulter Inc.、Fullerton、California)で、体積平均粒径を得る標準的な方法を使用し、行うことができる。
【0078】
【表1】
【0079】
ポリオレフィン/(メタ)アクリル複合コア/シェルポリマーを、乳化重合を使用し、ポリオレフィン水分散液を本発明のコア/シェルポリマー組成物を生成するための種子として使用し、以下の方法に従って生成する。
【0080】
すべての重合は、表1に示すポリオレフィン分散液の固形分としての量を丸底フラスコ反応器に注ぎ65℃を維持しながら窒素ガスでパージすることにより行う。触媒溶液を、攪拌しながら反応器に添加する。反応は、示されるモノマー(官能化モノマー及び架橋性モノマーを含む)を予混合し、表1に示される割合でモノマーエマルションを調製し、混合物を60分間超、反応器に注入することにより維持することができる。同時に、酸化還元対をフリーラジカル開始剤として90分超反応器に供給する。反応を60℃で90分間維持し、25℃まで冷まし、190μm濾紙を通して濾過する。得られた分散液は、ポリオレフィンと比較し15重量%のPMMA系アクリルシェルを含有するポリオレフィン粒子を含むであろう。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明のコア/シェルポリマー組成物を、以下の方法に従って噴霧乾燥する。Mobile Minor spray dryer(GEA Process Engineering Inc.(Copenhagen、Denmark))に備えられた二流体ノズル噴霧器。ノズルへの窒素圧力は、1バール、6.0kg/時間の空気流にあたる50%流量に固定する。ガラスジャーを、サイクロン底部の弁が開いているサイクロンの下に設置する。次いで、オレフィン−アクリル分散液(〜40重量%固形分)を、加熱した室にエマルション供給ポンプで注入する。噴霧乾燥実験は、120℃に固定した注入口温度で、N
2環境で行い、出口温度は、分散液の供給速度を調整することにより40℃に制御する。その間、疎水表面改質したCaCO
3(Solvay Chemicals(Brussels、Belgium)からのWINNOFIL(登録商標))を、固結防止剤として室に供給する。乾燥粉末の平均粒径は、20−40μmの範囲になるはずである。
【0083】
本発明の複合ポリマー組成物(オレフィン:アクリル=100:15、アクリル相90.5%MMA/MAA4%/EHA4%/1.5%エチレングリコールジメタクリレート及び0.5重量%トリメチルシリメタクリレート(TMOSMA)は、ポリカーボネート(SABIC Americas,Inc.(Houston、Texas)から商業的に入手可能なLEXAN 141、メルトインデックス12g/分)に、耐衝撃性改良剤として使用することができる。
【0084】
混合方法
グラフト化ポリオレフィンコア−シェルを、ポリカーボネート(Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)から入手可能なLEXAN 141R等)またはポリアミド6(BASFから入手可能なULTRAMID 8202等)に、耐衝撃性改良剤として使用する。混合前に樹脂を、110℃で4時間、低圧乾燥機内で完全に乾燥させる。
【0085】
5%添加度で樹脂及び耐衝撃性改良剤を、Werner and Pfleiderer ZSK 30共回り二軸押出機(L/D=26)で混合する。
【0086】
樹脂及び改良剤押出機の供給口へ、重量分析K−Tron供給装置を介し供給し、次いで溶融ブレンドする。次に、押出ストランドを冷まし、粒度計(Sheer&Cie−Stuttgart30)でペレット化する。
【0087】
押出機の温度分布は、一般的に260−270−280−285−290℃(ホッパーから押型まで)で、混合は、150RPMの軸速度及び10kg/時間の生産量で行う。
【0088】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
エチレン系ポリマーの密度は、ISO1183に従って測定する。
プロピレン系ポリマーの密度は、ASTM D792に従って測定する。
メルトフローインデックスは、ASTM D−1238に従って測定する。
【0089】
本発明は、その趣旨及び本質的な特徴から逸脱することなく、他の形態で具体化され得、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の説明ではなく、添付の特許請求項の範囲が参照されるべきである。