特許第6527963号(P6527963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6527963
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20190531BHJP
   C08G 14/08 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   C08J9/14CEZ
   C08G14/08
【請求項の数】18
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-558228(P2017-558228)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2016088244
(87)【国際公開番号】WO2017110946
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-250591(P2015-250591)
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】向山 滋美
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/194174(WO,A1)
【文献】 国際公開第1999/11697(WO,A1)
【文献】 特開平11−140216(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/092086(WO,A1)
【文献】 特開2015−187249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08G 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペンタン、及び、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素を含有し、密度が10kg/m以上150kg/m以下のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのシクロペンタン含有量X(単位:mol)の値が0.25以上0.85以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素中のシクロペンタン比率が60mol%以上100mol%以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体を粉砕してヘプタン中で抽出処理を行った際にヘプタン中に抽出された沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの抽出量Y(単位:g)の値が、下記式(1)で算出される係数a以下、且つ、下記式(2)で算出される係数b以上の範囲内にある、フェノール樹脂発泡体。
a=−2.8X+8.4 ・・・(1)
b=0.39X+0.04 ・・・(2)
【請求項2】
前記沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素が、圧力101.325kPa、温度30℃において液状である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、シクロペンタンを60mol%以上99.9mol%以下含み、
前記炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値が25℃以上50℃以下である、請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、シクロペンタンを60mol%以上99.9mol%以下、及び沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種を0.1mol%以上40mol%以下含み、
前記炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値が25℃以上50℃以下であり、且つ、前記フェノール樹脂発泡体内の前記炭素数が6以下の炭化水素の含有量が、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたり0.3mol以上1.0mol以下である、請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率がいずれも0.0200W/m・K以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素を含み、
前記沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素がイソブタンを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物と、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤との少なくとも一方を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項8】
独立気泡率が90%以上、平均気泡径が40μm以上300μm以下であり、密度30kg/m換算圧縮強さが9N/cm以上である、請求項1〜7のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項9】
更に炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する請求項1〜8のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン含有量Z(単位:mol)の値が0.01以上0.4以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量と前記炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Zの合計(単位:mol)が0.3以上0.9以下である、フェノール樹脂発泡体。
【請求項10】
前記抽出量Y(単位:g)の値が、下記式(3)で算出される係数c以下である、請求項9に記載のフェノール樹脂発泡体。
c=−1.37Z+7.4 ・・・(3)
【請求項11】
更にハロゲン化飽和炭化水素を含有する請求項1〜10のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのハロゲン化飽和炭化水素含有量(単位:mol)の値が0.01以上0.35以下である、フェノール樹脂発泡体。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタンを含有する発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項13】
請求項9または10に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタン及び炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する発泡剤、並びに酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタン及びハロゲン化飽和炭化水素を含有する発泡剤、並びに酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項15】
前記フェノール樹脂、前記界面活性剤、前記高沸点炭化水素、前記発泡剤、及び前記酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物の混合に先んじて、前記高沸点炭化水素及び前記発泡剤を混合する、請求項12〜14のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項16】
前記分配部の圧力が0.3MPa以上10MPa以下である、請求項12〜15のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項17】
前記混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程においてダブルコンベアを使用して発泡性フェノール樹脂組成物に圧力を加え、
前記ダブルコンベア中の温度が60℃以上100℃以下である、請求項12〜16のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【請求項18】
前記発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程においてダブルコンベアを使用して発泡性フェノール樹脂組成物に圧力を加え、
前記混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量P(単位:質量%)と、前記ダブルコンベア中の温度Q(単位:℃)とから下記式(4)で算出される係数Rが、20以上36以下である、請求項12〜17のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
R=P+0.2286Q ・・・(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂発泡体及びその製造方法に関し、特に、建築用断熱材、車両用断熱材、機器用断熱材等の断熱材として使用可能な、熱伝導率が低いフェノール樹脂発泡体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材として用いられるフェノール樹脂発泡体は、熱伝導率が低いほど、薄い厚みで必要とする断熱性能が得られる為、断熱材の使用量を少なく出来ると共に、施工に必要とされる空間を小さくすることができ、例えば、住宅では、住宅の建面積に対し、有効な居住空間を広く出来る。
また、断熱材は、一旦施工されると長期間にわたって使用される為、長期間にわたり高い断熱性能を保持する必要がある。
更に、断熱材は、特に床、屋根、及び外壁等に用いられる場合には、優れた圧縮強さが求められる。
近年、省エネルギーと省資源化の為、長期優良住宅の必要性が増しており、断熱材には、従来にも増して、高い圧縮強さを保持しつつ、初期の熱伝導率が低く、且つ長期間にわたり低い熱伝導率を維持することが求められている。
【0003】
特許文献1、2及び3には、ノルマルペンタン又はイソペンタン等の高沸点の発泡剤と、パラフィン等とを併用することを特徴とするフェノール樹脂発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−140216号公報
【特許文献2】国際公開第99/11697号
【特許文献3】特開2007−131803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記従来技術のフェノール樹脂発泡体では、低温での熱伝導率を改善することができる。一方で、圧縮強さを確保した上で、初期の熱伝導率を一層改善し、加えて経時の熱伝導率上昇を低減することが更に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フェノール樹脂発泡体中に少なくともシクロペンタン及び特定の沸点範囲の高沸点炭化水素を内在させ、且つ、内在するシクロペンタン量が特定の範囲となるようにすると共に、フェノール樹脂発泡体からヘプタンに抽出される高沸点炭化水素の量が特定の範囲となるようにすることにより、初期の熱伝導率が低いと共に、長期間にわたり低い熱伝導率を維持し、且つ優れた圧縮強さを有するフェノール樹脂発泡体が得られることを見いだし、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
(i)シクロペンタン、及び、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素を含有し、密度が10kg/m以上150kg/m以下のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのシクロペンタン含有量X(単位:mol)の値が0.25以上0.85以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素中のシクロペンタン比率が60mol%以上100mol%以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体を粉砕してヘプタン中で抽出処理を行った際にヘプタン中に抽出された沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの抽出量Y(単位:g)の値が、下記式(1)で算出される係数a以下、且つ、下記式(2)で算出される係数b以上の範囲内にある、フェノール樹脂発泡体。
a=−2.8X+8.4 ・・・(1)
b=0.39X+0.04 ・・・(2)
【0008】
(ii)前記沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素が、圧力101.325kPa、温度30℃において液状である、(i)に記載のフェノール樹脂発泡体。
【0009】
(iii)前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、シクロペンタンを60mol%以上99.9mol%以下含み、
前記炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値が25℃以上50℃以下である、(i)または(ii)に記載のフェノール樹脂発泡体。
【0010】
(iv)前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、シクロペンタンを60mol%以上99.9mol%以下、及び沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種を0.1mol%以上40mol%以下含み、
前記炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値が25℃以上50℃以下であり、且つ、前記フェノール樹脂発泡体内の前記炭素数が6以下の炭化水素の含有量が、前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたり0.3mol以上1.0mol以下である、(i)または(ii)に記載のフェノール樹脂発泡体。
【0011】
(v)10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率がいずれも0.0200W/m・K以下である、(i)〜(iv)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【0012】
(vi)前記フェノール樹脂発泡体内中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素が、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素を含み、
前記沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素がイソブタンを含有する、(i)〜(v)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【0013】
(vii)150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物と、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤との少なくとも一方を含有する、(i)〜(vi)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【0014】
(viii)独立気泡率が90%以上、平均気泡径が40μm以上300μm以下であり、密度30kg/m換算圧縮強さが9N/cm以上である、(i)〜(vii)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体。
【0015】
(ix)更に炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する請求項(i)〜(viii)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン含有量Z(単位:mol)の値が0.01以上0.4以下であり、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量と前記炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Zの合計(単位:mol)が0.3以上0.9以下である、フェノール樹脂発泡体。
【0016】
(x)前記抽出量Y(単位:g)の値が、下記式(3)で算出される係数c以下である、(ix)に記載のフェノール樹脂発泡体。
c=−1.37Z+7.4 ・・・(3)
【0017】
(xi)更にハロゲン化飽和炭化水素を含有する(i)〜(x)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体であって、
前記フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのハロゲン化飽和炭化水素含有量(単位:mol)の値が0.01以上0.35以下である、フェノール樹脂発泡体。
【0018】
(xii)上記(i)〜(viii)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタンを含有する発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0019】
(xiii)上記(ix)または(x)に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタン及び炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する発泡剤、並びに酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0020】
(xiv)上記(xi)に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタン及びハロゲン化飽和炭化水素を含有する発泡剤、並びに酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させた後、加熱し、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程において、発泡性フェノール樹脂組成物の上下方向側から圧力を加え、板状に成形されたフェノール樹脂発泡体を製造する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0021】
(xv)前記フェノール樹脂、前記界面活性剤、前記高沸点炭化水素、前記発泡剤、及び前記酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物の混合に先んじて、前記高沸点炭化水素及び前記発泡剤を混合する、(xii)〜(xiv)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0022】
(xvi)前記分配部の圧力が0.3MPa以上10MPa以下である、(xii)〜(xv)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0023】
(xvii)前記混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程においてダブルコンベアを使用して発泡性フェノール樹脂組成物に圧力を加え、
前記ダブルコンベア中の温度が60℃以上100℃以下である、(xii)〜(xvi)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
【0024】
(xviii)前記発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する過程においてダブルコンベアを使用して発泡性フェノール樹脂組成物に圧力を加え、
前記混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量P(単位:質量%)と、前記ダブルコンベア中の温度Q(単位:℃)とから下記式(4)で算出される係数Rが、20以上36以下である、(xii)〜(xvii)のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
R=P+0.2286Q ・・・(4)
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、初期の熱伝導率が低いと共に、長期間にわたり低い熱伝導率を維持し、且つ優れた圧縮強さを備えるフェノール樹脂発泡体及びその製造方法を提供できる。よって、本発明のフェノール樹脂発泡体は、建築用断熱材、車両用断熱材、機器用断熱材等の断熱材として好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態で使用する混合機の模式図例である。
図2】本発明の一実施形態で使用するスラット型ダブルコンベアを用いた成形機の模式図例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0028】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の密度は、10kg/m以上150kg/m以下であり、好ましくは15kg/m以上70kg/m以下である。密度が低すぎると、十分な圧縮強さを得ることができない。また気泡膜が薄い為、発泡体中の発泡剤が空気と置換し易く、長期の断熱性能が低下し易いという懸念がある。一方、密度が高すぎると、気泡膜を形成する樹脂部分の熱伝導が大きくなり、断熱性能が低下するという懸念がある。
【0029】
ここで、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、本発明者らが、種々の炭化水素の中でも、シクロペンタンを特定量含有させ、且つ、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素を特定量含有させ、そして任意に、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハロゲン化飽和炭化水素を特定量含有させることより、フェノール樹脂発泡体の10℃及び23℃の初期断熱性能、並びに、長期断熱性能を大幅に改善しつつ、当該フェノール樹脂発泡体に優れた圧縮強さを付与しうることを見出してなされたものである。
そこで、以下では、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体が含有するシクロペンタン、高沸点炭化水素、任意に含有し得る炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンおよびハロゲン化飽和炭化水素、並びに、それらの含有量について説明する。
【0030】
(シクロペンタン)
シクロペンタンは、主として、上述の密度を有するフェノール樹脂発泡体を製造する際に発泡剤として機能するとともに、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率を低くして断熱性能を向上させつつ、圧縮強さを確保するために用いられる。本発明者は、シクロペンタンは、ノルマルペンタンやイソペンタンと異なり環状構造を有すると共に沸点が高いためと推察されるが、発泡剤としてシクロペンタンを用い、更に高沸点炭化水素を添加すると、フェノール樹脂発泡体の圧縮強さが低下する現象を回避しつつ、初期の熱伝導率が低いと共に、長期間にわたり低い熱伝導率を維持し、優れた圧縮強さを有するフェノール樹脂発泡体が得られることを見出した。
【0031】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのシクロペンタン含有量X(単位:mol)の値の大きさが0.25以上0.85以下である。シクロペンタンの含有量が少なすぎると、長期断熱性能が低下する傾向がある。なおシクロペンタンの含有量を低下させ、代わりに他の発泡剤(ノルマルペンタンやイソペンタン)を用いると、初期断熱性能が悪化すると共に、長期断熱性能の悪化が大きくなる虞がある。また、シクロペンタンの含有量が多すぎると、10℃及び23℃の初期断熱性能、並びに圧縮強さが低下する傾向が生じる傾向がある。シクロペンタン含有量Xの値は、好ましくは、0.3以上0.77以下、より好ましくは0.35以上0.7以下、特に好ましくは0.4以上0.65以下である。
【0032】
また、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体中に含まれる炭素数が6以下の炭化水素中でシクロペンタンが占める比率は、60mol%以上100mol%以下であり、好ましくは70mol%以上、より好ましくは75mol%以上であり、また好ましくは99.9mol%以下である。炭素数が6以下の炭化水素中のシクロペンタン比率が少なすぎると、フェノール樹脂発泡体の優れた断熱性能及び圧縮強さが損なわれやすくなるため、一定比率以上含まれていることが必要である。
【0033】
なお、本実施形態における炭化水素とは、水素原子と炭素原子のみより構成される化合物であり、炭素数が6以下の炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘキセン等のアルカン、アルケン、ジエンを含む鎖状脂肪族炭化水素、及び、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキセン等のシクロアルカン、シクロアルケンを含む環状脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0034】
更に、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、発泡体中に含まれる炭素数6以下の炭化水素が、シクロペンタンおよび沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。そして、発泡体中に含まれる炭素数6以下の炭化水素は、シクロペンタンの含有量が60mol%以上99.9mol%以下であり、且つ沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種の含有量が0.1mol%以上40mol%以下であることがより好ましく、シクロペンタン含有量が70mol%以上95mol%以下であり、且つ沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種の含有量が5mol%以上30mol%以下であることが更に好ましく、シクロペンタン含有量が75mol%以上90mol%以下であり、且つ沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素より選ばれた少なくとも1種の含有量が10mol%以上25mol%以下であることが特に好ましい。
フェノール樹脂発泡体中に含まれる炭素数6以下の炭化水素が、シクロペンタンと共に、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素を含有すると、高い独立気泡率が得やすくなり、長期断熱性能が向上し易い。また、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素を含有すると、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の含有量が少なくても、10℃で良い初期断熱性能が得られる傾向があり、製造コスト及びフェノール樹脂発泡体の優れた特性である難燃性の高さを維持しやすい。しかし、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素の含有量が多すぎると、10℃及び23℃の初期断熱性能の改善効果が低下しやすい傾向がある。
なお、本実施形態における沸点とは、常圧沸点である。
【0035】
ここで、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素としては、プロパン、プロピレン、イソブタン、ノルマルブタン、1−ブテン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、2−メチルプロペン、ブタジエン等が挙げられ、熱伝導率及び安定性の観点からは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンが好ましく、イソブタンが特に好ましい。
【0036】
なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体に含まれる炭素数が6以下の炭化水素は、下記式(5)で算出される沸点平均値が25℃以上50℃以下であることが好ましい。上記沸点平均値は、より好ましくは28.5℃以上46.5℃以下であり、特に好ましくは31℃以上44℃以下である。沸点平均値が低すぎると、混合ガスの熱伝導率が高くなる傾向がある為、23℃の初期断熱性能が低下する懸念がある上に、気泡内から逃げ難いシクロペンタンの含有量が減少する(即ち、シクロペンタンよりも低沸点の炭化水素の含有量が増加する)為に長期断熱性能の改善効果が低下する傾向が生じるという懸念がある。一方、炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値が高すぎると、低温下で炭化水素が液化し易くなる為に10℃での初期断熱性能が低下し易くなる傾向が生じると共に、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素と併用した際に気泡サイズが大きくなり易く、輻射により断熱性能の向上効果が軽減され易くなるという懸念がある。
沸点平均値TAV=a×Ta+b×Tb+c×Tc+… ・・・(5)
ここで、上式(5)において、含有する各炭化水素の含有率(モル分率)がa,b,c,…であり、沸点(℃)がTa,Tb,Tc,…である。
【0037】
更に、本実施形態のフェノール樹脂発泡体における、炭素数が6以下の炭化水素の含有量は、発泡体内の空間体積22.4×10−3(22.4L)あたり、0.3mol以上1.0mol以下であることが好ましい。発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量は、より好ましくは0.35mol以上、更に好ましくは0.45mol以上であり、より好ましくは0.85mol以下、更に好ましくは0.77mol以下、特に好ましくは0.7mol以下、最も好ましくは0.65mol以下である。炭素数が6以下の炭化水素の含有量は、少ないと長期の断熱性能が低下し易くなるという懸念があり、多すぎると10℃及び23℃の初期断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。
【0038】
(炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン)
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、炭素数が3または4(すなわち、炭素数が3以上4以下)のハイドロフルオロオレフィンを含有していてもよい。炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンは、上述の密度を有するフェノール樹脂発泡体を製造する際に、上記シクロペンタンと共に発泡剤として機能し、くわえてフェノール樹脂発泡体の気泡径を小さくして熱伝導率を低くし、断熱性能を向上させるために用いられる。なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、炭素数が3または4のハイドロオレフィンとして、炭素数が3のハイドロフルオロオレフィン、炭素数が4のハイドロフルオロオレフィンの何れか一方のみを含有していてもよく、炭素数が3のハイドロフルオロオレフィンと炭素数が4のハイドロフルオロオレフィンの双方を含有していてもよい。
【0039】
ここで、本実施形態のフェノール樹脂発泡体における炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンは、少なくとも、フッ素原子、水素原子及び炭素―炭素不飽和結合(オレフィン性二重結合)を有する炭素数3または4の化合物である。そして当該化合物は、実質的に零のオゾン層破壊係数(ODP)および零または非常に低い地球温暖化係数(GWP)を有する。ここで、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンとしては、ハイドロフルオロプロペン、ハイドロクロロフルオロプロペン、ハイドロブロモフルオロプロペン、ハイドロフルオロブテン、ハイドロクロロフルオロブテン、ハイドロブロモフルオロブテンなどが挙げられる。これらの中でも、安定性の面からは、テトラフルオロプロペン(ハイドロフルオロプロペン)、クロロトリフルオロプロペン(ハイドロクロロフルオロプロペン)、ヘキサフルオロ−2−ブテン(ハイドロフルオロブテン)、クロロヘキサフルオロ−2−ブテン(ハイドロクロロフルオロブテン)が好ましい。
【0040】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体が、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する場合、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン含有量Z(単位:mol)の値の大きさは、好ましくは0.01以上0.4以下であり、より好ましくは0.02以上0.35以下、更に好ましくは0.03以上0.3以下である。炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンは、フッ素原子などのハロゲン原子及び炭素―炭素不飽和結合を有する。そのような構造によりシクロペンタン及び高沸点炭化水素との親和性が低い為と考えられるが、フェノール樹脂発泡体が、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを一定量以上含有していると、気泡径が小さくなり熱伝導率を改善する効果がある。一方で、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量が多すぎると、当該化合物のフェノール樹脂との高い親和性により、発泡体から飛散し易いと共に独立気泡率が低下し易い為と考えられるが、フェノール樹脂発泡体の長期断熱性能及び圧縮強さが低下する傾向がある。
【0041】
なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体には、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン等の無機ガス、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、フラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチル、塩化エチル、ジクロロメタン、イソプロピルクロリド等のハロゲン化飽和炭化水素が含まれていてもよい。なお、ハロゲン化飽和炭化水素としては、毒性の低さ及び環境への影響の小ささから、イソプロピルクロリドが好ましい。
【0042】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体が、ハロゲン化飽和炭化水素を含有する場合、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのハロゲン化飽和炭化水素炭素数含有量は、好ましくは0.01mol以上0.35mol以下であり、より好ましくは0.25mol以下であり、更に好ましくは0.15mol以下である。
また、前述の炭素数が6以下の炭化水素および炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン以外に発泡性や揮発性を有する物質が多く含有されると、初期の断熱性能や長期の断熱性能が低下する可能性がある。そのため、後述の方法で測定した、発泡体中に含まれる沸点が−100℃以上81℃以下の物質中にしめる、シクロペンタン、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン及び沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素の合計量の割合は、60mol%以上100mol%以下が好ましく、85mol%以上100mol%以下がより好ましく、95mol%以上100mol%以下が特に好ましい。
【0043】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体が、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する場合、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量と、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Zとの合計(単位:mol)は、好ましくは0.3以上0.9以下であり、より好ましくは0.35以上0.8以下、更に好ましくは0.45以上0.7以下である。なおこの場合において、シクロペンタンを除く炭素数が6以下の炭化水素は、フェノール樹脂発泡体内に含有されていても含有されていなくても良い。炭素数が6以下の炭化水素及び炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの合計含有量が少ないと、長期の断熱性能が低下し易くなるという懸念があり、多すぎると10℃及び23℃の初期断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。
【0044】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体が、ハロゲン化飽和炭化水素を含有する場合、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Z、及びハロゲン化飽和炭化水素の含有量との合計(単位:mol)は、好ましくは0.3以上1.0以下であり、より好ましくは0.35以上0.85以下、更に好ましくは0.45以上0.7以下である。なおこの場合において、シクロペンタンを除く炭素数が6以下の炭化水素及び炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンは、フェノール樹脂発泡体内に含有されていても含有されていなくても良い。炭素数が6以下の炭化水素、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化飽和炭化水素の合計含有量が少ないと、長期の断熱性能が低下し易くなるという懸念があり、多すぎると10℃及び23℃の初期断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。
【0045】
(高沸点炭化水素)
沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素は、主として、上記シクロペンタン、およびフェノール樹脂発泡体が任意に含有し得る上記炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンと併用することで発泡体の熱伝導率を低くし、断熱性能及び圧縮強さを向上するために用いられる。
【0046】
ここで、本実施形態のフェノール樹脂発泡体における沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素は、水素原子と炭素原子のみより構成される化合物であり、ベンゼン環、ナフタレン環等の共役二重結合を含まない、直鎖状、分岐状または環状構造を有する化合物であることが好ましい。本実施形態における高沸点炭化水素は、炭素数5当たり二重結合の数が1つ以下の化合物であることが好ましく、より好ましくは炭素数10当たりの二重結合の数が1つ以下、更に好ましくは炭素数20当たりの二重結合の数が1つ以下の化合物であり、特に好ましくは二重結合を有さない化合物である。これは、高沸点炭化水素が分子内に共役二重結合等の二重結合を有していると、シクロペンタンとの親和性が低下し、気泡内の低温において液化したシクロペンタンの安定化能が低下する為である。
なお、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素は、単一の化合物でも複数の化合物の混合物でも良い。そして、高沸点炭化水素としては、例えば、シクロオクタン、ノナン、デカン、デカリン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサンなどの炭素数8以上20以下の直鎖、イソ、環状化合物が挙げられる。
【0047】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体における高沸点炭化水素の沸点は、低すぎても、高すぎても、10℃及び23℃の初期断熱性能及び/又は圧縮強さの改善効果が、低下する傾向がある。沸点が低すぎると、液化したシクロペンタンの安定化能が急激に低下する為と考えられるが、高沸点炭化水素の含有量が多くても十分な断熱性能の改善効果を示さない傾向がある。一方、沸点が高すぎると、分子サイズが大きくなり、シクロペンタンとの親和性が低下する為ではないかと考えられるが、十分な初期断熱性能の改善効果を示すのに多くの高沸点炭化水素が必要となり、そして、高沸点炭化水素の含有量が多くなると、長期断熱性能の改善効果が低減し易い傾向があると共に、発泡体の圧縮強さを低下させる傾向がある。そのため、高沸点炭化水素の沸点は、好ましくは160℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下である。また、フェノール樹脂発泡体が沸点の異なる複数の高沸点炭化水素を含有している場合には、高沸点炭化水素中の40質量%以上が沸点160℃以上350℃以下の炭化水素であることが好ましく、80質量%以上が沸点160℃以上300℃以下の炭化水素であることが更に好ましく、80質量%以上が沸点160℃以上260℃以下の炭化水素であることが特に好ましい。
なお、本実施形態における沸点は、常圧沸点であり、また、非常に沸点の高い(例えば、沸点が250℃以上の)炭化水素の沸点については、原油等の分析にも用いられる無極性カラムを装着したガスクロマトグラフにより求められるガスクロ法沸点である。
【0048】
また、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、発泡体中に含まれる沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の量が、発泡体中のシクロペンタン含有量との関係において、以下の条件を満たすことを特徴とする。
即ち、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素のヘプタン抽出量Y(単位:g)が、下記式(1)で算出される係数a以下、下記式(2)で算出される係数b以上の範囲内にあることを特徴とする。
a=−2.8X+8.4 ・・・(1)
b=0.39X+0.04 ・・・(2)
ここで、「ヘプタン抽出量」とは、フェノール樹脂発泡体をヘプタン中で一次粒子の体積平均粒径が30μm以下となるように粉砕して抽出処理を行った際にヘプタン中に抽出された量である。また、上式(1),(2)中、Xは、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのシクロペンタン含有量(単位:mol)を指す。
【0049】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体では、高沸点炭化水素の抽出量Yが係数b未満であると、発泡体中のシクロペンタン含有量に対する高沸点炭化水素の量が不足し、10℃及び23℃の初期断熱性能が低下する傾向があり、高沸点炭化水素の抽出量Yが係数aを超えると、圧縮強さが低下する傾向があると共に、フェノール樹脂発泡体の優れた特性である難燃性の高さが、低下する傾向がある。
【0050】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体が上述した炭素数が3または4のハイロドロフルオロオレフィンを含有する場合、発泡体中に含まれる沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の量が、発泡体中の炭素数が3または4のハイロドロフルオロオレフィン含有量との関係において、以下の条件を満たすことが好ましい。
即ち、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素のヘプタン抽出量Y(単位:g)が、下記式(3)で算出される係数c以下の範囲内にあることが好ましい。
c=−1.37Z+7.4 (3)
上式(3)中、Zは、フェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの炭素数が3または4のハイロドロフルオロオレフィン含有量(単位:mol)を指す。
【0051】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体では、高沸点炭化水素の抽出量Yが係数cを超えると、極性を有するハイドロフルオロオレフィンと非極性の高沸点炭化水素の相互作用の影響で発泡時の気泡の形成に影響を与えられる為ではないかと考えられるが、圧縮強さが低下する傾向がある。
【0052】
なお、圧縮強さの低下および難燃性の低下を抑制する観点からは、高沸点炭化水素の抽出量Yは、下記式(6)で算出される係数a’以下であることが好ましく、下記式(7)で算出される係数a”以下であることが更に好ましい。また、10℃及び23℃の初期断熱性能を高める観点からは、高沸点炭化水素の抽出量Yは、下記式(8)で算出される係数b’以上であることが好ましく、下記式(9)で算出される係数b”以上であることが更に好ましい。更に、圧縮強さの観点からは、高沸点炭化水素の抽出量Yは、下記式(10)で算出される係数c’以下であることが更に好ましい。
a’=−1.95X+6.2 ・・・(6)
a”=−0.56X+4.0 ・・・(7)
b’=0.47X+0.14 ・・・(8)
b”=0.56X+0.28 ・・・(9)
c’=−0.78Z+5.5 ・・・(10)
【0053】
そして、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素は、圧力101.325kPa(1atm)、温度30℃で液状であることが好ましく、より好ましくは温度20℃で液状であり、更に好ましくは温度10℃で液状である。
発泡体が使用される温度条件において高沸点炭化水素が固形状であると、10℃及び23℃の初期断熱性能の改善効果が不十分となり易い傾向があり、10℃及び23℃の初期断熱性能の十分な改善効果を示すのに多くの高沸点炭化水素が必要となる。そして、高沸点炭化水素の含有量が多くなると、圧縮強さが低下し易い傾向がある。なお、高沸点炭化水素が固形状であると初期断熱性能の改善効果が不十分となる理由は、明らかではないが、高沸点炭化水素が発泡体内で固形化し、シクロペンタンと高沸点炭化水素とが相互作用し難くなるためであると推察される。
【0054】
(フェノール樹脂発泡体の性状等)
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、後述する10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率がいずれも0.0200W/m・K以下であることが好ましく、10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率は、0.0195W/m・K以下であることがより好ましく、0.0190W/m・K以下であることが更に好ましく、0.0185W/m・K以下であることが特に好ましい。また、シクロペンタンを使用したフェノール樹脂発泡体では低温下での熱伝導率が高くなることがあるが、シクロペンタンと、高沸点炭化水素と、任意に、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンと、沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素とを含む本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体では、10℃環境下における熱伝導率を低くすることができる。そして、10℃環境下における熱伝導率は、0.0185W/m・K以下であることが好ましく、より好ましくは0.0180W/m・K以下であり、更に好ましくは0.0175W/m・K以下であり、特に好ましくは0.0170W/m・K以下である。更に、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、後述する加速試験後熱伝導率の加速試験前の初期熱伝導率からの悪化(上昇)幅(加速試験後熱伝導率−初期熱伝導率)が、好ましくは0.0020W/m・K以下であり、より好ましくは0.0010W/m・K以下であり、更に好ましくは0.0005W/m・K以下であり、特に好ましくは0.0003W/m・K以下である。このような熱伝導率のフェノール樹脂発泡体であれば、常温下及び低温下のいずれにおいても優れた断熱性能を示すと共に、長期間優れた断熱性能を維持するため、好ましい。
【0055】
また、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、小さいと断熱性能の経時低下が起き易くなりかつ圧縮強さが低下する傾向があるため、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、96%以上100%以下が特に好ましい。
【0056】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、小さすぎると圧縮強さの低下および断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向があり、大きすぎると初期の断熱性能が悪くなる傾向がある。このため、平均気泡径は、40μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上170μm以下がより好ましく、60μm以上130μm以下が更に好ましい。
【0057】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の圧縮強さは、弱すぎると、(1)取扱い時及び使用時に変形し気泡膜が破壊され断熱性能の経時低下が起き易くなる、(2)使用時に必要な圧縮強さを得る為に発泡倍率を下げると樹脂部分の熱伝導率が大きくなり初期の熱伝導率が低下すると共に、重くなり取り扱い性が悪くなる、等の点が危惧される。そのため、フェノール樹脂発泡体の密度30kg/m換算圧縮強さが9N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは11N/cm以上であり、さらに好ましくは13N/cm以上である。また、密度30kg/m換算圧縮強さの上限は特に限定されないが、通常30N/cm以下である。
なお、上述したように発泡体の発泡倍率を下げることでフェノール樹脂発泡体に求められる圧縮強さ得ることもできるが、発泡倍率を下げずに優れた圧縮強さが得られれば、原材料コストを低減できると共に、軽量となる為施工時に作業者の負担を軽減することが出来、本実施形態によればこのような利点を享受することが可能となる。
【0058】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物と、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤との少なくとも一方を含有することが好ましい。そして、150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物と、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤との含有量の合計は、フェノール樹脂発泡体に対して0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物、及び/又は、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤を発泡体が含有していると、初期の断熱性能が向上する傾向があると共に、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素を使用することによりフェノール樹脂発泡体の難燃性が低下するのを防ぐことができ、更には、フェノール樹脂発泡体の難燃性が向上する。しかし、上記金属水酸化物およびリン系難燃剤の含有量が少なすぎると、初期の断熱性能向上効果及び難燃性向上効果が不十分となる傾向がある。また、金属水酸化物およびリン系難燃剤の含有量が多すぎると、初期の熱伝導率が悪くなる傾向があると共に、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。
なお、本実施形態において、金属水酸化物やリン系難燃剤などの化合物が「水に難溶性」であるとは、温度23℃において、蒸留水100gに対し、化合物100gを混合した時に水に溶解する化合物量が15g以下であることを指す。
【0059】
ここで、150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カオリン等が挙げられる。なお、後述する酸硬化触媒と反応性を有する金属水酸化物は、表面をコーティングし、酸硬化触媒との反応性を低減または無くすことが好ましい。上述した中でも、水酸化アルミニウムは、後述する酸硬化触媒と反応性を有することがなく、また、初期の断熱性能向上効果及び難燃性向上効果も高いので、好ましい。
なお、150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物の体積平均粒径は、0.5μm以上500μm以下が好ましく、2μm以上100μm以下が更に好ましく、5μm以上50μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が小さすぎると、初期の断熱性能向上効果が小さくなり易い傾向があり、体積平均粒径が大きすぎると、難燃性向上効果が小さくなり易い傾向がある。
【0060】
また、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤としては、例えば、芳香族縮合エステル、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリリン酸アンモニウムは、初期の断熱性能向上効果及び難燃性向上効果が高いので、好ましい。
なお、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤の体積平均粒径は、0.5μm以上500μm以下が好ましく、2μm以上100μm以下が更に好ましく、5μm以上50μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が小さすぎると、初期の断熱性能向上効果が小さくなり易い傾向があり、体積平均粒径が大きすぎると、難燃性向上効果が小さくなり易い傾向がある。
【0061】
なお、本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体中に含有させる150℃以上で水を放出する水に難溶性の金属水酸化物、及び/又は、分解温度が150℃以上で水に難溶性のリン系難燃剤の種類や含有量は、必要に応じ一般的な前処理を行った後、蛍光X線分析、X線電子分光法、原子吸光法、オージェ電子分光法等の分析方法を用いることにより定性・定量することができる。
また、フェノール樹脂発泡体中に分散している金属水酸化物、及び/又は、リン系難燃剤の体積平均粒径は、発泡体を切断し、光学式顕微鏡で拡大し、オージェ電子分光法等の微小局部の元素分析等を用いて組成から微分散する物質を特定することにより金属水酸化物、及び/又は、リン系難燃剤の粒子の存在位置を確認し、分散する粒子の粒径を測定して平均値を算出することにより求めることができる。なお、上述のようにして求めた粒子の占有面積と組成物の密度から金属水酸化物、及び/又は、リン系難燃剤の含有率を求めることも可能である。
更に、本実施形態において、金属水酸化物、及び/又は、リン系難燃剤を用いる場合、その体積平均粒径は、レーザー回折光散乱方式粒径分布測定装置により求めることができる。
【0062】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、前述以外の無機微粉体、及び/又は、前述以外の有機微粉体を含有していてもよい。これらの微粉体は、後述する酸硬化触媒と反応性を有さないことが好ましい。
【0063】
ここで、フェノール樹脂発泡体が、タルク、酸化ケイ素、ガラス粉、酸化チタンなどの、酸硬化触媒と反応性を有さない無機微粉体を含有していると、初期の断熱性能が向上する傾向がある。しかし、含有する無機微粉体の量が多すぎると、初期の熱伝導率が悪くなる傾向があると共に、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。この為、酸硬化触媒と反応しない無機微粉体は、フェノール樹脂発泡体に対して0.1質量%以上35質量%以下含有されていることが好ましく、1質量%以上20質量%以下含有されていることがより好ましく、2質量%以上15質量%以下含有されていることが特に好ましい。
なお、酸硬化触媒と反応性を有さない無機微粉体の体積平均粒径は、好ましくは0.5μm以上500μm以下、更に好ましくは2μm以上100μm以下、特に好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0064】
一方、フェノール樹脂発泡体が、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウムなどの、後述する酸硬化触媒と反応性を有する金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩及び金属粉体などの無機微粉体を含有すると、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。そのため、フェノール樹脂発泡体は、酸硬化触媒と反応性を有する無機微粉体を含有しないほうが好ましい。
【0065】
また、フェノール樹脂発泡体が、フッ素樹脂微粉体、ポリプロピレン微粉体、フェノール樹脂発泡体粉等の酸硬化触媒との反応性を有さない有機微粉体を含有していると、初期の断熱性能が向上する傾向がある。しかし、含有する有機微粉体の量が多すぎると、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。この為、酸硬化触媒との反応性を有さない有機微粉体の含有量は、フェノール樹脂発泡体に対して0.1質量%以上35質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
なお、酸硬化触媒との反応性を有さない有機微粉体の体積平均粒径は、好ましくは、0.5μm以上2000μm以下、更に好ましくは5μm以上500μm以下、特に好ましくは10μm以上200μm以下である。
【0066】
一方、フェノール樹脂発泡体が、塩基性イオン交換樹脂微粉体などの酸硬化触媒と反応性を有する有機微粉体を含有すると、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。そのため、フェノール樹脂発泡体は、酸硬化触媒と反応性を有する有機微粉体を含有しないほうが好ましい。
【0067】
ここで、本実施形態のフェノール樹脂発泡体中に分散する上記微粉体の、組成、平均粒径及び含有量は、発泡体を切断し、光学式顕微鏡で拡大し、微粉体の存在位置を確認し、オージェ電子分光法等の微小局部の元素分析等を用いて組成から微分散する物質を特定することにより微粉体の存在位置を確認し、分散する微粉体の粒径を測定して体積平均値を算出する手法、及び、分散する微粉体の占有面積と組成物の密度より含有率を算出する手法を用いて求めることができる。
なお、本実施形態において、微粉体を用いる場合、その体積平均粒径は、レーザー回折光散乱方式粒径分布測定装置により求めることができる。
【0068】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、上述した成分以外に、発泡性に影響を与えない範囲で可塑剤等を含有していてもよいが、酸硬化触媒と反応性を有する化合物、又は酸硬化触媒により変質する化合物を含有しないことが好ましい。フェノール樹脂発泡体は、例えば、オルガノメトキシシランの部分加水分解縮合物等の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合物を含有すると、断熱性能の経時低下が起き易くなる傾向がある。そのため、フェノール樹脂発泡体は、加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を含有しないことが好ましい。
【0069】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、酸硬化触媒と反応性を有する化合物の含有量と、酸硬化触媒により変質する化合物の含有量との合計量が、フェノール樹脂発泡体に対して0.5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。
なお、酸硬化触媒と反応性を有する化合物及び酸硬化触媒により変質する化合物には、フェノール樹脂、フェノール骨格を有する化合物、アルデヒド類、及び含窒素化合物は含まれない。
【0070】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の形成に使用するフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との重合によって合成することができる。重合に使用するフェノール類とアルデヒド類との出発モル比(フェノール類:アルデヒド類)は、1:1〜1:4.5の範囲内が好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:2.5の範囲内である。
なお、フェノール樹脂には、添加剤として尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。本実施形態において、これらの添加剤を加える場合、フェノール樹脂とは添加剤を加えた後のものを指す。
【0071】
ここで、本実施形態においてフェノール樹脂の合成の際に好ましく使用されるフェノール類としては、フェノール、レゾルシノール、カテコール、o−、m−及びp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。2核フェノール類もまた使用できる。
【0072】
また、本実施形態で好ましく使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0073】
フェノール樹脂の40℃における粘度は、200mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは500mPa・s以上50,000mPa・s以下である。また、水分量は2質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0074】
なお、上記無機及び/又は有機の微粉体を添加する時の上記微粉体とフェノール樹脂との混合方法は特に限定されず、ピンミキサーを有する混合機等を利用して混合してもよいし、二軸押出機、混練機等を用いて混合してもよい。微粉体をフェノール樹脂と混合する段階も特に限定されず、フェノール樹脂を合成する際、原料中に添加しておいてもよいし、フェノール樹脂の合成終了後、各添加剤を加える前後に添加してもよい。フェノール樹脂を粘度調整した後でもよいし、界面活性剤及び/又は発泡剤と共に混合してもよい。但し、微粉体をフェノール樹脂に添加することで、全体の粘度は上昇するため、粘度調整前のフェノール樹脂に微粉体を添加する際には、フェノール樹脂の粘度調整は水分量等で推定しながら行うことが好ましい。また、微粉体は、フェノール樹脂、界面活性剤、炭化水素を含有する発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物に添加してもよい。更に、微粉体は、フェノール樹脂に必要量混合しておいてもよいし、高濃度の微粉体入りフェノール樹脂をマスターバッチとして用意しておき、フェノール樹脂に必要量添加してもよい。
【0075】
微粉体を含有するフェノール樹脂の40℃における粘度は、発泡性フェノール樹脂組成物の通液配管内の圧力の上昇による装置の負荷を考慮すると、200mPa・s以上300,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは100,000mPa・s以下、更に好ましくは、50,000mPa・s以下である。また、水分量は2質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0076】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂、界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、シクロペンタンおよび任意に炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物から得られる。界面活性剤、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素及び発泡剤は、フェノール樹脂に予め添加しておいてもよいし、酸硬化触媒と同時に添加してもよい。ここで、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素と、シクロペンタンおよび任意に炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する発泡剤とを予め混合した状態で、フェノール樹脂に添加することが好ましい。即ち、後述する本実施形態のフェノール樹脂発泡体の製造方法においては、フェノール樹脂、界面活性剤、高沸点炭化水素、発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物の混合よりも前に、高沸点炭化水素及び発泡剤を予め混合しておくことが好ましい。このような予混合を行うことで、発泡性フェノール樹脂組成物中の高沸点炭化水素の分散状態及びフェノール樹脂発泡体中での高沸点炭化水素の分布状態が改善されるためと推察されるが、得られるフェノール樹脂発泡体の断熱性能及び圧縮強さを向上させることができる。なおこのような予混合は、発泡性フェノール樹脂組成物の混合と同じ混合機を用いて行ってもよいし、異なる混合機を用いて行ってもよい。
【0077】
本実施形態に用いられる界面活性剤は、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油との縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、エチレンオキサイドグラフトポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。界面活性剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量についても特に制限はないが、フェノール樹脂100質量部当たり0.3質量部以上10質量部以下の範囲で好ましく使用される。
【0078】
本実施形態で使用する酸硬化触媒は、特に限定はしないが、水を多く含む酸硬化触媒を使用すると発泡体気泡壁の破壊等が起こる恐れがある。そのため、酸硬化触媒としては、無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましい。無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等があげられ、これらは一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等を添加してもよい。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
なお、上記酸硬化触媒をフェノール樹脂に添加したら、ピンミキサー等を使用して出来るだけ速やかに一様に分散させる。
【0079】
前述した発泡剤の使用量は、フェノール樹脂の粘度や含水量、発泡硬化温度により異なるが、好ましくはフェノール樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下、より好ましくは3質量部以上15質量部以下の割合で使用される。
また、前述した沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素は、シクロペンタンの使用量および任意に使用される炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの使用量によっても異なるが、フェノール樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上1.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以上1質量部以下の割合で使用される。
酸硬化触媒もその種類により使用量は異なり、無水リン酸を用いた場合、好ましくはフェノール樹脂100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下、より好ましくは5質量部以上25質量部以下の割合で使用される。また、パラトルエンスルホン酸一水和物60質量%とジエチレングリコール40質量%との混合物を使用する場合、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上30質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下の割合で使用される。
【0080】
(フェノール樹脂発泡体の製造方法)
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、上述した発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合し、分配部から吐出させた後、発泡及び硬化させることにより成形される。
【0081】
ここで、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を吐出させる時の混合機の分配部の圧力は、低すぎると、ボイドの増加、断熱性能の低下や長期の断熱性能の低下の傾向が生じる懸念があり、高すぎると、高耐圧の設備が必要となって設備コストが高くなるとともに、発泡体の均質性が低下する傾向がある。そのため、混合機の分配部の圧力は、0.3MPa以上10MPa以下が好ましく、0.5MPa以上3MPa以下がより好ましい。係る混合機の分配部の圧力は、混合機及び/又は分配部の温度、分配部の先端の径や分配部より先に設けられた配管の径や長さをコントロールする等の方法によって、調節が可能である。
【0082】
本実施形態において、混合機に投入する発泡性フェノール樹脂組成物中には水分が含まれることが好ましい。水分も発泡に寄与するため、水分が少なすぎると発泡倍率が上がらず初期断熱性能が低下する懸念がある。一方、水分が多すぎると独立気泡率が低下し易くなり、長期の断熱性能及び圧縮強さが低下する懸念がある。そのため、混合機に投入するフェノール樹脂の水分をコントロールすることが好ましい。混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量は、2質量%以上20質量%以下に調節することが好ましく、より好ましくは2.5質量%以上13質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0083】
本実施形態において、混合器の分配部から吐出された発泡性フェノール樹脂組成物は、例えばダブルコンベアを用いる方法や、金属ロールもしくは鋼板を用いる方法、さらには、これらを複数組み合わせて用いる方法等により、上下方向側(上面方向及び下面方向)から圧力を加えて板状に成形することが出来る。なかでも、ダブルコンベアを用いる方法は得られる板状発泡体の平滑性がよく好ましい。例えばダブルコンベアを利用する場合には、混合機の分配部から発泡性フェノール樹脂組成物を連続的に走行する下面材上に吐出させた後、同じく連続的に走行する上面材で被覆させながら、発泡性フェノール樹脂組成物をダブルコンベア中へ連続的に案内させた後、加熱しながら上下方向側から圧力を加えて、所定の厚みに調整しつつ、発泡硬化させ、板状に成形する方法で板状フェノール樹脂発泡体を得ることができる。ここで、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する過程のダブルコンベア中の温度は、低すぎると発泡倍率が上がらず初期断熱性能が低下する懸念があり、高すぎると独立気泡率が低下し易く長期の断熱性能及び圧縮強さが低下する懸念がある。そのため、ダブルコンベア中の温度は、好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは65℃以上98℃以下であり、更に好ましくは70℃以上95℃以下である。
【0084】
そして、本実施形態における、前述した混合機に投入されるフェノール樹脂中に含まれる水分量P(単位:質量%)と、上記記載の発泡、硬化する過程のダブルコンベア中の温度Q(単位:℃)から下記式(4)によって算出される係数Rは、大きすぎるとフェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3(22.4L)あたりの炭素数が6以下の炭化水素の含有量(炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する場合は、炭素数が6以下の炭化水素の含有量と炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Zの合計)が減少し、長期の断熱性能が低下する懸念があり、小さすぎるとフェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3(22.4L)における炭素数が6以下の炭化水素の含有量(炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンを含有する場合は、炭素数が6以下の炭化水素の含有量と炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量Zの合計)が増加し、初期断熱性能が低下する懸念がある。そのため、係数Rは、20以上36以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは21.5以上33以下であり、特に好ましくは23以上29以下である。
R=P+0.2286Q ・・・(4)
【0085】
本実施形態における板状フェノール樹脂発泡体は、後硬化することが出来、後硬化温度は、好ましくは40℃以上130℃以下であり、より好ましくは60℃以上110℃以下である。後硬化は一段階で行ってもよいし、硬化の具合にあわせ硬化温度を変えて数段階に分けて硬化させてもよい。
【実施例】
【0086】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例中のフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体の組成、構造、特性は以下のようにして測定し、評価した。
【0087】
(1)発泡体密度
発泡体密度は、20cm角のフェノール樹脂発泡体を試料とし、この試料の面材、サイディング材を取り除いて重量と見かけ容積を測定して求めた値であり、JIS−K−7222に従い測定した。
【0088】
(2)平均気泡径
平均気泡径は、JIS−K−6402に記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡体の厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面を50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値を求めた。平均気泡径は横切った気泡の数の平均値で1,800μmを除した値である。
【0089】
(3)独立気泡率
独立気泡率は、ASTM−D−2856−94(1998)のA法を参考に以下の方法で測定した。
発泡体の厚み方向中央部から、約25mm角の立方体試片を切り出した。発泡体の厚みが薄く25mmの均質な厚みの試片が得られない場合は、発泡体から巾及び長さが約25mm、厚みが発泡体の厚みと等しい直方体試片を切り出し、面材を有する上下表面を約1mmずつスライスして得た均質な厚みを有する試片を用いる。試片の各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm)を計測すると共に試片の重量(W:有効数字4桁,g)を測定した。引き続き、空気比較式比重計(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM−D−2856−94のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm)を測定した。また、上記「(2)平均気泡径」の測定法に従い気泡径(t:cm)を計測すると共に、既測定の各辺の長さより、試片の表面積(A:cm)を計測した。t及びAより、式VA=(A×t)/1.14により、試片表面の切断された気泡の開孔体積(VA:cm)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度は1.3g/mLとし、試片に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(VS:cm)を式VS=試片重量(W)/1.3により、算出した。
下記式(11)により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=〔(V2−VS)/(V1−VA−VS)〕×100 ・・・(11)
同一製造条件の発泡体サンプルについて6回測定し、その平均値をその製造条件サンプルの代表値とした。
なお、フェノール樹脂と密度の異なる無機物等の固形物を含有するフェノール樹脂発泡体については、閉鎖空間を含まない状態まで粉砕し、重量を測定すると共に空気比較式比重計(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し体積を測定して求めた固形物含有フェノール樹脂の密度を、前記固形フェノール樹脂の密度として用いた。
【0090】
(4)密度30kg/m換算圧縮強さ
フェノール樹脂発泡体積層板から、長さ100mm、幅100mmの試験片を切り出し、面材を取り除いて試験片を得た。得られた試験片を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、24時間間隔で行う2回の秤量値の差が0.1%以下になるまで養生した。養生後の試験片の寸法及び重量を測定し、発泡体密度(kg/m)を測定すると共に、JIS K 7220に準拠して10%圧縮強さ(N/cm)を測定した。
上記発泡体密度及び10%圧縮強さを用いた下記式(12)により、密度30kg/m換算圧縮強さを求めた。
密度30kg/m換算圧縮強さ(N/cm)=(10%圧縮強さ/発泡体密度)×30 ・・・・(12)
【0091】
(5)10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率
JIS−A−1412−2:1999に準拠し、以下の方法で10℃と23℃における熱伝導率を測定した。
フェノール樹脂発泡体サンプルを約600mm角に切断し、試片を23±1℃、湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに重量の経時変化を測定し、24時間経過の重量変化が0.2質量%以下になるまで、状態調節をした。状態調節された試片は、同環境下に置かれた熱伝導率測定装置に導入した。熱伝導率測定装置が、試片が置かれていた23±1℃、湿度50±2%にコントロールされた室内に置かれていない場合は、フェノール樹脂発泡体を23±1℃、湿度50±2%の雰囲気下で速やかにポリエチレン製の袋に入れ袋を閉じ、1時間以内に袋から出し、10分以内に熱伝導率の測定に供した。
熱伝導率測定は、発泡部を傷つけないように面材を剥がし、10℃環境下における熱伝導率は低温板0℃高温板20℃の条件で、23℃環境下における熱伝導率は低温板13℃高温板33℃の条件で、それぞれ試験体1枚・対称構成方式の測定装置(英弘精機社、商品名「HC−074/600」)を用い行った。
【0092】
(6)加速試験後熱伝導率
EN13166を参考に、25年経過後を想定した下記加速試験後の熱伝導率を測定した。
フェノール樹脂発泡体サンプルを約600mm角に切断し、気体透過性面材を有する発泡体は、面材を有したまま、気体不透過性面材を有する場合は、発泡体自体の特性を評価する為、発泡部を傷つけないように面材を剥がし、試片とし加速試験に供した。
600mm角の試片は、110±2℃に温調された循環式オーブン内に14±0.05日間入れ加速試験を行った。
引き続き「(5)10℃環境下における熱伝導率及び23℃環境下における熱伝導率」の測定方法に従い、10℃及び23℃環境下における熱伝導率の測定を行った。
【0093】
(7)フェノール樹脂及びフェノール樹脂発泡体中の水分量
(A)フェノール樹脂中の水分量
水分量を測定した脱水メタノール(関東化学(株)製)に、フェノール樹脂原料を3質量%から7質量%の範囲で溶解して、その溶液の水分量から脱水メタノール中の水分を除して、フェノール樹脂原料の水分量を求めた。測定した水分量から、フェノール樹脂原料の水分率を計算した。測定にはカールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、MKC−510)を用いた。水分量の測定にはカールフィッシャー試薬としてSigma−Aldrich製のHYDRANAL−Composite 5Kを用い、カールフィッシャー滴定用として林純薬工業製のHAYASHI−Solvent CE 脱水溶剤(ケトン用)を用いた。また、カールフィッシャー試薬の力価測定用として三菱化学製のアクアミクロン標準水・メタノール(水分2mg)を用いた。水分量の測定は装置内に設定されているメソッド1、またカールフィッシャー試薬の力価はメソッド5を用いて求めた。得られた水分量の、フェノール樹脂原料の質量に対する割合を求め、これをフェノール樹脂原料の水分率とした。
(B)フェノール樹脂発泡体中の水分量
フェノール樹脂発泡体中の水分量は、ボートタイプ水分気化装置を有するカールフィッシャー水分計を使用し、水分気化装置で110℃に加熱して気化させた水分を測定した。
なお、水和物等の高温加熱により分解し水分を発生する固形物を含有するフェノール樹脂発泡体については、分解温度以下の低温で加熱し、含有水分を気化させて水分量を測定した。
【0094】
(8)発泡体中に含有される沸点が−100℃以上81℃以下の物質の組成比
面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体試料を10gと金属製やすりを10L容器(製品名テドラーバック)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。テドラーパックの上からヤスリを使い試料を削り、細かく粉砕した。続いて、81℃に温調されたオーブン内に10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、GC/MSで測定し、発生したガス成分の種類と組成比を分析した。
なお、別途、発生したガス成分の検出感度を測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成比を算出した。そして、炭素数が6以下の炭化水素中におけるシクロペンタンおよび沸点が−50℃以上5℃以下の炭化水素の比率を求めた。
【0095】
(9)発泡体中の炭素数が6以下の炭化水素の含有量、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量、及びハロゲン化飽和炭化水素の含有量
フェノール樹脂発泡体サンプルを約100mm角に切断し、試片6個を準備すると共に、密封可能な耐熱性を有するチャック付袋(以下「チャック付袋」と略す)を6袋準備し、各々の袋の重量を精密天秤で、測定した。試片を70℃に温調された循環式オーブン内に24±0.5時間入れ含有する水分を飛散させた後、速やかに、別々のチャック付袋に入れ、封をして、室温まで冷やす。室温まで冷却後、各々のチャック付袋より試片を取り出し、速やかに試片の面材を剥離して各試片の重量(W1)を精密天秤より測定すると共に、各辺の長さをノギスにより測定し、試片の体積(V)を算出した。その後、各試片を各々のチャック付袋に戻し、一部の開口部を残し再度封をし、室温の油圧プレスの盤面間に入れ、油圧プレスで約200N/cmの圧力まで徐々に圧縮し、試片の気泡を破壊した。3試片については、試片の一部試料を採取し、上記のフェノール樹脂発泡体中の水分量の測定法により、含有する水分量(WS1)を測定した。引き続き、一部の開口部を残した試片入りチャック付袋を、81℃に温調された循環式オーブン内に30±5分入れた後、直ちに、粉体が袋から出ないようにしつつ袋内気体を排出し、袋を密封し、室温まで冷やす。室温まで冷却後、上記で水分量(WS1)測定に供していない試片入りチャック付袋の重量を精密天秤で測定し、チャック付袋の重量を差し引き、揮発成分が除かれた重量(W2)を測定した。同時に、上記で水分量(WS1)を測定した3試片の袋より、一部試料を採取し、同様にして81℃に温調された循環式オーブン内に30±5分入れた後の水分量(WS2)を測定した。
次に、上記W1とW2の差分(W1−W2)から上記水分量の差分(WS1−WS2)を差し引くと共に、試片の体積(V)から、固形フェノール樹脂密度を1.3g/cmとし、W2から計算された樹脂体積を差し引いた体積(発泡体内の空間体積)と空気の密度(0.00119g/mL)により計算された空気浮力重量(WF)を加算し揮発成分重量(W3)を求めた。すなわち、W3は下記式(13)により算出した。
W3=(W1−W2)−(WS1−WS2)+WF ・・・(13)
そして、W3に上記測定法(8)で測定された炭素数が6以下の炭化水素のガス成分中比率、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンのガス成分中比率、およびハロゲン化飽和炭化水素のガス成分中比率をそれぞれ掛けて、各々の含有重量(W4、W4´、W4´´)を算出した。なお、フェノール樹脂と密度の異なる無機物等の固形物を含有するフェノール樹脂発泡体については、閉鎖空間を含まない状態まで粉砕し、重量を測定すると共に空気比較式比重計(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し体積を測定して求めた固形物含有フェノール樹脂の密度を、前記固形フェノール樹脂密度として用いた。
発泡体中の炭素数が6以下の炭化水素の含有量、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量、およびハロゲン化飽和炭化水素の含有量(mol/22.4×10−3)は、上述の発泡体内の空間体積22.4×10−3における、上記W4、W4´、W4´´と上記測定法(8)で測定されたそれぞれの物質の測定量と分子量により算出した。また、同様にして発泡体中のシクロペンタンの含有量(mol/22.4×10−3)も算出した。
【0096】
(10)沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の含有量
(i)ヘプタン中での粉砕物の抽出処理
面材を含まない約5mm角に切断分割したフェノール樹脂発泡体サンプル0.25gおよびヘプタン(和光純薬社、高速液体クロマトグラフフィー用)10mlを混合し、下記の手順で、発泡体を粉砕しつつ、発泡体中の高沸点炭化水素のヘプタンへの抽出処理を行った。
フェノール樹脂発泡体サンプルは、発泡体の厚み方向の中央部10mmの厚み部分より採取し、発泡体切断より10分以内に抽出処理を始めた。
ここで本処理では、切断分割したフェノール樹脂発泡体をヘプタンになじませると共に予備粉砕を行う為、次の操作を行った。すなわち、内容積約100mlのスクリュー式蓋で密閉可能な円筒状ガラス容器に、IKA社製ULTRA-TURRAX(登録商標)Tube Drive control用専用部材BMT-50-G(ボールミルタイプ粉砕チューブとガラス製ボール(約6mm径)のセット)のガラス製ボール25個、約5mm角に切断分割したフェノール樹脂発泡体サンプル0.25g、およびヘプタン(和光純薬工業社、高速液体クロマトグラフフィー用)10mlを入れ、蓋を閉め円筒状ガラス容器を密閉した後、同容器を、円筒が水平方向になるよう手に持ち、同容器の円筒長手方向に、振り幅20±5cm、振り速度80±20回/分の速度で、5±0.5分間容器を振とうした。なお、振とう粉砕操作は、一往復が、1回である。
引き続き、上記円筒状ガラス容器内の内容物全量(予備粉砕された発泡体、ヘプタン、およびガラス製ボール)を、BMT-50-Gの密閉可能なボールミルタイプ粉砕チューブに移し、当該粉砕チューブを密閉した。この粉砕チューブをIKA社製ULTRA-TURRAX(登録商標)Tube Drive controlにセットし、4000rpmで5分±10秒間粉砕処理をした。なお、内容物を出し空となった上記円筒状ガラス容器は、内容物を出した後速やかに蓋を閉め、約23℃の雰囲気下に静置した。
粉砕終了後、粉砕チューブ内全内容物(粉砕された発泡体、ヘプタン、およびガラス製ボール)を使用後密閉しておいた円筒状ガラス容器に移し、16時間±15分間、約23℃雰囲気下に静置した。内容物の入った円筒状ガラス容器を、手で、振り速度80±20回/分の速度で10回振とうした。その後速やかに円筒状ガラス容器内全内容物を、孔径0.5μmの疎水性PTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC社 T050A047A)を用いてろ過し、フェノール樹脂発泡体及びガラス製ボールを除去して、ろ液(ヘプタン抽出液)を得た。
なお、本処理における発泡体の粉砕状態の目安は、発泡体の一次粒子の体積平均粒子径が30μm以下となる程度に粉砕すればよい。
ろ液の一部を赤外分光分析用ZnSe結晶板(ピアーオプティックス社)上で乾燥させ、赤外分光分析により、炭化水素成分以外の不純物がヘプタン中に含有されているか分析した。なお、赤外分光装置及び積算回数の例は、赤外分光装置Spectrum One(Perkin Elmer社)、積算回数4回、が挙げられる。
赤外分光分析により、高沸点炭化水素の定量に悪影響を与える炭化水素成分以外の不純物がろ液中に含まれないことが確認されたろ液は、特に後処理を加えることなく後述のガスクロマトグラフ分析に供され、ガスクロマトグラフにより検出された全ピークを高沸点炭化水素として各温度域の検出ピーク面積を積算した。
一方本抽出処理では、フェノール樹脂に含まれるオリゴマー成分が上記ろ液に含まれ、該赤外分光分析により検出されることがあるが、ガスクロマトグラフ分析では該オリゴマーの保持時間が高沸点炭化水素と大きく異なるため、ガスクロマトグラフ分析による高沸点炭化水素の定量に影響を与えることはない。ただし、該赤外分光分析により、ろ液中に、ガスクロマトグラフ分析による高沸点炭化水素の定量に影響を与える不純物が存在する可能性がある場合は、上記抽出処理の前に以下の前処理を行う。
(ii)前処理の例
面材を含まない約5mm角に切断分割したフェノール樹脂発泡体サンプル0.25g、蒸留水(関東化学社、高速液体クロマトグラフィー用)10ml、およびメタノール(関東化学社、高速液体クロマトグラフィー用)10mlを混合し、下記の手順で発泡体を粉砕しつつ、フェノール樹脂発泡体中に含まれる、親水性成分の除去処理を行った。なお、本前処理で使用する機器およびフェノール樹脂発泡体サンプルの採取方法は上記(i)の抽出処理と同様である。
ボールミルタイプ粉砕チューブに、BMT-50-Gのガラス製ボール25個、約5mm角に切断分割したフェノール樹脂発泡体サンプル0.5g、蒸留水(関東化学社、高速液体クロマトグラフィー用)10ml、およびメタノール(関東化学社、高速液体クロマトグラフィー用)10mlを入れ、粉砕チューブを密閉した。この粉砕チューブをIKA社製ULTRA-TURRAX(登録商標)Tube Drive controlにセットし、5800rpmで10分間粉砕処理を行った。引き続き、上記粉砕チューブ内の内容物全量(粉砕された発泡体、ガラス製ボール、蒸留水とメタノール混合溶液)は、密閉容器中で24±0.5時間、約23℃雰囲気下に静置された。
その後、上記内容物からガラスボールを除去したものを、遠心分離機により、15000回転で30分間遠心分離し、固形物を孔径0.5μmの親水化処理されたPTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC社 H050A047A)を用いてろ過して、固形物を分取した。なお、本処理において遠心分離管に残った固形物は、メタノール(関東化学社、高速液体クロマトグラフィー用)20mlで数回に分け洗い出し、ろ過に供した。
ろ過後の固形物全量を、上述(i)の抽出処理に供した。
(iii)精製による分離
上記(ii)の前処理を行っても、ガスクロマトグラフ分析で沸点140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の定量に影響を与える不純物が存在する場合は、液体クロマトグラフィー等の不純物が除去できる精製法により精製を行った後、ガスクロマトグラフ分析を行う。また、精製において、沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の量が精製ロス等により減少する場合には、ヘプタン(抽出液)に含有されている沸点140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の平均沸点に近い標準物質(高沸点炭化水素)をヘプタン(和光純薬工業社、高速液体クロマトグラフフィー用)に溶解し、同様の精製処理を行い、精製ロス率を算出し、補正を行う。
(iv)ガスクロマトグラフ分析による高沸点炭化水素のピーク定性、および沸点140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素の定量方法
ガスクロマトグラフ分析は、高沸点炭化水素の沸点が高くなると共に保持時間が長くなるので、140℃以上450℃以下の沸点の高沸点炭化水素の分析が可能な測定条件で行った。
ガスクロマトグラフの構成としては、カラムとして耐熱性がある無極性液相を有するキャピラリーカラム、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を用い、測定条件としては、注入口温度を高くすると共に、カラム温度を低温から高温まで昇温し、分析した。ガスクロマトグラフ分析条件の具体例を以下に示す。
ガスクロマトグラフは、アジレント・テクノロジー社 7890型、検出器は水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。カラムは、シグマ−アルドリッチ社 キャピラリーカラム商品名Equity−1、内径0.25mm、液相ポリジメチルシロキサン、膜厚0.25μm、長さは、30mとした。キャリアガスはヘリウムを用い、流量は、1ml/分とした。注入口の温度は350℃、注入方法はスプリット法(1:10)とし、(i)の抽出処理で得られたろ液の注入量は1μlとした。カラム温度は40℃に温調しておき、注入と同時に、昇温速度5℃/分で、300℃まで昇温した。検出器(FID)の温度は、350℃とした。
ガスクロマトグラフ分析により検出される物質の沸点は、既知の沸点の高沸点炭化水素を同一測定条件でガスクロマトグラフ分析に付し、ガスクロマトグラフでの検出までの保持時間から沸点と保持時間の相関を求め、この相関と、ろ液中の高沸点炭化水素の検出までの保持時間より求めた。本手法における、既知の沸点を有する高沸点炭化水素溶液としては、ノルマルオクタン(沸点125.7℃、関東化学社 一級)、ノルマルノナン(沸点150.8℃、関東化学社 特級)、ノルマルデカン(沸点174.1℃ 関東化学社 特級)、ノルマルドデカン(沸点216.3℃、関東化学社 特級)、ノルマルヘキサデカン(沸点287℃、関東化学社 特級)、エイコサン(沸点344℃、東京化成工業社 GC用標準物質)、ペンタコサン(沸点404℃、東京化成工業社 GC用標準物質)、トリアコンタン(沸点450℃、東京化成工業社 等級GR)の1000ppmヘプタン(和光純薬工業社、高速液体クロマトグラフィー用)溶液を用い、各高沸点炭化水素のガスクロマトグラフでの検出までの保持時間を測定し求めた。
ろ液中の各温度域の高沸点炭化水素の量(重量%)は、ノルマルドデカン(沸点216.3℃、関東化学社 特級)の含有量の異なるヘプタン(和光純薬工業社、高速液体クロマトグラフ用)溶液を、ヘプタン(抽出液)分析時と同一の条件でガスクロマトグラフにより分析し、ヘプタン(溶液)中のノルマルドデカン含有量と検出ピーク面積より求めた検量線により、算出した。
なお、高沸点炭化水素抽出重量が少なく検出ピーク面積が非常に低い場合には、適宜、ヘプタンに対する発泡体比率を増やす、或いは、ヘプタン(抽出液)を濃縮後分析するなどして、発泡体からの高沸点炭化水素抽出重量を測定した。
発泡体重量当たりの高沸点炭化水素の抽出重量と発泡体の密度より、発泡体内の空間体積22.4×10−3当たりの高沸点炭化水素抽出重量(g)を算出した。
なお、抽出重量の算出に当たっては、通常は固形フェノール樹脂密度を1.3g/cmとするが、フェノール樹脂と密度の異なる無機物等の固形物を含有するフェノール樹脂発泡体については、別途、閉鎖空間を含まない状態まで粉砕し、重量を測定すると共に空気比較式比重計(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し体積を測定して求めた固形物含有フェノール樹脂の密度を、固形フェノール樹脂の密度として用いた。
【0097】
(11)フェノール樹脂の粘度
フェノール樹脂の粘度は、回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値とした。また、板状成形する際の発泡性フェノール樹脂組成物の粘度は、樹脂の硬化による粘度上昇の影響をできるだけ排除した評価とするため、該粘度計を用いて、40℃で2分間経過後の測定値とした。
【0098】
(12)粉体の体積平均粒径
粉体の体積平均粒径は、レーザー回折光散乱方式粒径分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラックHRA;9320−X100)を使用し、粉体を水中に一様に分散させるため超音波で1分間処理した後に測定した。
【0099】
(実施例1)
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kgと99質量%フェノール2510kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。オストワルド粘度が60センチストークス(25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液でpHを6.4に中和した。
得られた反応液を、60℃で脱水処理した。そして、脱水後の反応液の水分量を測定したところ、水分量は3.5質量%であった。
脱水後の反応液100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、プルロニックF−127)を2.5質量部の割合で混合した。これをフェノール樹脂Aとした。
【0100】
フェノール樹脂A100質量部に対して、ノルマルドデカン(沸点216℃、融点−10℃)(以下「nDD」と略す。)1.4質量部、発泡剤としてシクロペンタン7.5質量部、酸硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物11質量部を混合し、得られた発泡性フェノール樹脂組成物を25℃に温調したミキシングヘッドに供給し、マルチポート分配管を通して、移動する下面材上に供給した。なお、nDDと発泡剤は、混合機(ミキサー)に供給する手前でスタティックミキサーにより均一に混合し、混合機に供給した。使用する混合機(ミキサー)を図1に示す。本混合機は、特開平10−225993号公報に開示されている混合機を大きくすると共に、混合機本体の手前に、高沸点炭化水素と発泡剤を均質に混合する為のスタティックミキサーを付設したものである。即ち、混合機は、上部側面にフェノール樹脂に界面活性剤を添加したフェノール樹脂1、及び高沸点炭化水素2と発泡剤3の混合物の導入口を有し、回転子dが攪拌する攪拌部の中央付近の側面に硬化触媒4の導入口を備えている。攪拌部以降は発泡性フェノール樹脂組成物5を吐出するためのノズルeに繋がっている。即ち、混合機は、触媒導入口までを混合部a、触媒導入口〜攪拌終了部を混合部b、攪拌終了部〜吐出ノズルまでを分配部cとし、これらにより構成されている。分配部cは先端に複数のノズルeを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。また分配部cには系内の温度と圧力が測定できるように、分配部温度センサー及び分配部圧力センサーがセットされている(図示せず)。さらに、各混合部及び分配部はそれぞれ温度調整を可能にするための温調用ジャケットを備えている。この分配部温度センサーで計測された温度は43.8℃、この分配部圧力センサーで計測された圧力は0.73MPaであった。
【0101】
面材としてはポリエステル製不織布(旭化成せんい(株)製「スパンボンドE05030」、秤量30g/m、厚み0.15mm)を使用した。
下面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、上面材で被覆されると同時に、上下面材で挟み込むようにして、スラット型ダブルコンベアへ送り、20分の滞留時間で硬化させた。使用するスラット型ダブルコンベアを図2に示す。本コンベアは、特開2000−218635号公報に開示されているスラット型ダブルコンベアであり、発泡性フェノール樹脂組成物が吐出されてから3分後に通過する位置の上部スラットコンベアの上下プレート間の中央に、発泡・硬化する過程のダブルコンベア温度が測定できるように、コンベア温度センサーがセットされている(図示せず)。このコンベア温度センサーで計測された温度は、78℃であった。なお、図2中、6は面材、10は下部スラットコンベア、20は上部スラットコンベア、30は保温材、31は給気ファン、32は排気ファン、33は混合機、34は切断装置、40はパネル状のフェノール樹脂発泡体、41は成形装置を示す。そして、上下面材で被覆された発泡性フェノール樹脂組成物は、スラット型ダブルコンベアにより上下方向から面材を介して適度に圧力を加えることで板状に成形した。
その後、上記で得られた硬化が完了していない発泡体は、110℃のオーブンで2時間加熱して厚み48.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。
【0102】
(実施例2)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.1質量部、発泡剤としてのシクロペンタンの量を7.3質量部とし、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を81℃に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み49.5mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は43.2℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.73MPaであった。
【0103】
(実施例3)
反応液の脱水条件のみ異なり、水分量を5.7質量%とした以外は、実施例1と同様にしたフェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.1質量部、発泡剤としてのシクロペンタンの量を7.1質量部とし、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を83℃に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み51.5mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.71MPaであった。
【0104】
(実施例4)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.7質量部、発泡剤としてのシクロペンタンの量を6.0質量部とし、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を85℃に変更した以外は、実施例3と同様にして厚み50.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.5℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.75MPaであった。
【0105】
(実施例5)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン93mol%とイソブタン7mol%の混合物5.7質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み48.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.8℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.80MPaであった。
【0106】
(実施例6)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.2質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み48.5mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.78MPaであった。
【0107】
(実施例7)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.9質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み48.9mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.76MPaであった。
【0108】
(実施例8)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み49.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.76MPaであった。
【0109】
(実施例9)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.17質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み50.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.75MPaであった。
【0110】
(実施例10)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.12質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み51.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.8℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.77MPaであった。
【0111】
(実施例11)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.08質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして厚み51.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.78MPaであった。
【0112】
(実施例12)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン87mol%とイソブタン13mol%の混合物5.6質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み48.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.8℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.82MPaであった。
【0113】
(実施例13)
反応液の脱水条件のみ異なり、水分量を11.0質量%とした以外は、実施例1と同様にしたフェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン85mol%とイソブタン15mol%の混合物4.1質量部を使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を99℃に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み56.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.71MPaであった。
【0114】
(実施例14)
反応液の脱水条件のみ異なり、水分量を8.5質量%とした以外は、実施例1と同様にしたフェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン85mol%とイソブタン15mol%の混合物4.6質量部を使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を96℃に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み54.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.77MPaであった。
【0115】
(実施例15)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン85mol%とイソブタン15mol%の混合物4.7質量部を使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を90℃に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み50.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.8℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.83MPaであった。
【0116】
(実施例16)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.5質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン80mol%とイソブタン20mol%の混合物5.6質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み48.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.1℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.81MPaであった。
【0117】
(実施例17)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.2質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み48.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.2℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.80MPaであった。
【0118】
(実施例18)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.9質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み49.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.83MPaであった。
【0119】
(実施例19)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.16質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み50.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.83MPaであった。
【0120】
(実施例20)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.12質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み51.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.84MPaであった。
【0121】
(実施例21)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.07質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み51.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.5℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.86MPaであった。
【0122】
(実施例22)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルノナン(沸点151℃、融点−51℃)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み51.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0123】
(実施例23)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルデカン(沸点172℃、融点−30℃)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み51.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0124】
(実施例24)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えて凝固点−10℃以下、沸点範囲150〜220℃の飽和炭化水素混合物(三協化学社製、メタルクリーナー2000)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み49.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0125】
(実施例25)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルテトラデカン(JX日鉱日石エネルギー社製、TSパラフィン TS 4、融点5.3℃、沸点245〜248℃)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み51.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0126】
(実施例26)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えて凝固点−10℃以下、沸点範囲240〜260℃の飽和炭化水素混合物(三協化学社製、メタルクリーナー3000)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み51.0mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0127】
(実施例27)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルヘキサデカン(JX日鉱日石エネルギー社製、TSパラフィン TS 6、融点17℃、沸点276〜308℃)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み50.4mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0128】
(実施例28)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルオクタデカン(JX日鉱日石エネルギー社製、TSパラフィン TS 8、融点26℃、沸点300〜332℃)0.3質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み49.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0129】
(実施例29)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えて高度に精製処理されたコスモ石油ルブリカンツ社製パラフィン系オイル、「コスモホワイトP 60」0.6質量部を使用した以外は、実施例16と同様にして厚み48.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0130】
(実施例30)
フェノール樹脂100質量部に対して、押出機を用いて水酸化アルミニウム(アルモリックス社製 B325、体積平均粒径27μm)5質量部を混合した水酸化アルミニウム混合フェノール樹脂105質量部に対して、nDDの量を0.5質量部に変更した以外は、実施例16と同様にして厚み47.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0131】
(実施例31)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.5質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン78mol%とイソブタン22mol%の混合物5.6質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み50.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.1℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0132】
(実施例32)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.7質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン72mol%とイソブタン28mol%の混合物5.4質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.8℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0133】
(実施例33)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.3質量部に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み49.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0134】
(実施例34)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.9質量部に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み50.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.2℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0135】
(実施例35)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.16質量部に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み50.4mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0136】
(実施例36)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.11質量部に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み50.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.1℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0137】
(実施例37)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.07質量部に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み50.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.90MPaであった。
【0138】
(実施例38)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン62mol%とイソブタン38mol%の混合物5.4質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は1.00MPaであった。
【0139】
(実施例39)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.3質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン84mol%、ハイドロフルオロオレフィンHFO1233zd(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、ハネウェル社製、商品名ソルスティス(登録商標)LBA)(以下HFO1233zdと略す)3mol%およびイソブタン13mol%の混合物5.6質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.81MPaであった。
【0140】
(実施例40)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.7質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン81mol%、HFO1233zd8mol%およびイソブタン11mol%の混合物5.8質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.9℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.80MPaであった。
【0141】
(実施例41)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.3質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン57mol%、HFO1233zd40mol%およびイソブタン3mol%の混合物8.9質量部を使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を80℃に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み50.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は39.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.70MPaであった。
【0142】
(実施例42)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.8質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン46mol%、HFO1233zd52mol%およびイソブタン2mol%の混合物10.6質量部を使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を78℃に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み51.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は39.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.65MPaであった。
【0143】
(実施例43)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.6質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン80mol%、ハイドロフルオロオレフィンHFO1336mzz(シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、デュポン社製、商品名Formacel(登録商標)1100)15mol%およびイソブタン5mol%の混合物6.8質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み50.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.79MPaであった。
【0144】
(実施例44)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.9質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン94mol%およびイソプロピルクロリド6mol%の混合物5.9質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.9℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.69MPaであった。
【0145】
(実施例45)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン75mol%、イソプロピルクロリド20mol%およびイソブタン5mol%の混合物5.9質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み50.4mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は39.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.66MPaであった。
【0146】
(実施例46)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.5質量部とし、発泡剤として、シクロペンタン75mol%、HFO1233zd10mol%、イソプロピルクロリド10mol%およびイソブタン5mol%の混合物6.5質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み50.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.1℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.67MPaであった。
【0147】
(実施例47)
高沸点炭化水素と発泡剤の混合物を供給するノズルと同一円周上にノズルをもう一つ有し高沸点炭化水素と発泡剤をそれぞれ単独で供給可能とした以外は実施例1と同様の混合機(ミキサー)を用い、フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を1.2質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン80mol%とイソブタン20mol%の混合物5.6質量部を使用し、nDDと発泡剤をそれぞれ単独で混合機(ミキサー)に供給した(すなわち、発泡剤と高沸点炭化水素の予混合を行わない)以外は、実施例4と同様にして厚み48.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.81MPaであった。なお、発泡性フェノール樹脂組成物の組成は実施例17と同様である。
【0148】
(実施例48)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.16質量部に変更した以外は、実施例47と同様にして厚み50.2mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.0℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.84MPaであった。なお、発泡性フェノール樹脂組成物の組成は実施例19と同様である。
【0149】
(比較例1)
nDDの量を0質量部に変更した(即ち、ノルマルドデカンを配合しなかった)以外は、実施例4と同様にして厚み50.8mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.5℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.80MPaであった。
【0150】
(比較例2)
フェノール樹脂100質量部に対して、発泡剤としてノルマルペンタン6.0質量部を使用し(即ち、シクロペンタンを使用しなかった)、フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み50.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.4℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.83MPaであった。
【0151】
(比較例3)
フェノール樹脂100質量部に対して、発泡剤としてイソペンタン6.0質量部を使用し(即ち、シクロペンタンを使用しなかった)、フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして厚み50.6mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.2℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.86MPaであった。
【0152】
(比較例4)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.05質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン85mol%とイソブタン15mol%の混合物5.7質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして厚み49.3mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.1℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.85MPaであった。
【0153】
(比較例5)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を2.5質量部に変更した以外は、比較例4と同様にして厚み48.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.6℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.78MPaであった。
【0154】
(比較例6)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えてノルマルオクタン(沸点126℃、融点−60℃)0.6質量部を使用した以外は、比較例4と同様にして厚み50.1mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.81MPaであった。
【0155】
(比較例7)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDに替えて高度に精製処理されたコスモ石油ルブリカンツ社製パラフィン系オイル「コスモホワイトP 260」0.8質量部を使用した以外は、比較例4と同様にして厚み49.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は42.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.81MPaであった
【0156】
(比較例8)
反応液の脱水条件のみ異なり、水分量を15.0質量%とした以外は、実施例1と同様にしたフェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部とし、発泡剤を3.1質量部使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を101℃に変更した以外は、比較例4と同様にして厚み53.5mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は39.5℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.75MPaであった。
【0157】
(比較例9)
反応液の脱水条件のみ異なり、水分量を3.5質量%とした以外は、実施例1と同様にしたフェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部とし、発泡剤を10.5質量部使用し、コンベア温度センサーで計測されたダブルコンベア温度を68℃、スラット型ダブルコンベアでの滞留時間を35分に変更した以外は、比較例4と同様にして厚み46.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は41.3℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は0.89MPaであった。
【0158】
(比較例10)
フェノール樹脂100質量部に対して、nDDの量を0.3質量部とし、発泡剤としてシクロペンタン40mol%とイソブタン60mol%の混合物5.4質量部を使用した以外は、比較例4と同様にして厚み50.7mmのフェノール樹脂発泡体を得た。分配部温度センサーで計測された温度は40.7℃、分配部圧力センサーで計測された圧力は1.08MPaであった。
【0159】
上記実施例及び比較例の混合機投入フェノール樹脂中の水分量、得られたフェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりのシクロペンタン含有量、炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィン(HFO)含有量、炭素数が6以下の炭化水素と炭素数が3または4のハイドロフルオロオレフィンの含有量合計、炭素数が6以下の炭化水素の含有量、ハロゲン化飽和炭化水素の含有量、炭素数が6以下の炭化水素中のシクロペンタン比率及び沸点が−50〜5℃の炭化水素比率、並びに、炭素数が6以下の炭化水素の沸点平均値を表1及び2に、得られたフェノール樹脂発泡体内の空間体積22.4×10−3あたりの高沸点炭化水素のヘプタン中への抽出量を表3及び4に、得られたフェノール樹脂発泡体の特性及び熱伝導率の評価結果を表5及び6に、各々示す。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明によれば、初期の熱伝導率が低いと共に、長期間にわたり低い熱伝導率を維持し、且つ優れた圧縮強さを備えるフェノール樹脂発泡体及びその製造方法を提供できる。よって、本発明のフェノール樹脂発泡体は、建築用断熱材、車両用断熱材、機器用断熱材等の断熱材として好ましく使用される。
【符号の説明】
【0167】
1・・・フェノール樹脂、2・・・沸点が140℃以上350℃以下の高沸点炭化水素、3・・・発泡剤、4・・・硬化触媒、5・・・発泡性フェノール樹脂組成物、6・・・面材、7・・・スタティックミキサー、10・・・下部スラットコンベア、20・・・上部スラットコンベア、30・・・保温材、31・・・給気ファン、32・・・排気ファン、33・・・混合機、34・・・切断装置、40・・・パネル状のフェノール樹脂発泡体、41・・・成形装置、a・・・混合部、b・・・混合部、c・・・分配部、d・・・撹拌用回転子、e・・・吐出用ノズル。
図1
図2