特許第6528037号(P6528037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528037
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】変位測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   G01B21/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-240453(P2014-240453)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-102695(P2016-102695A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512256454
【氏名又は名称】KSコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 順
(72)【発明者】
【氏名】皆川 恵三
(72)【発明者】
【氏名】中西 義隆
(72)【発明者】
【氏名】中里 彰人
(72)【発明者】
【氏名】小座間 琢也
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−040211(JP,A)
【文献】 特許第2700397(JP,B2)
【文献】 独国特許発明第2013205512(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に発生する変位量を計測する変位測定装置であって、
前記構造体から離隔して設置される支持台部と、
前記支持台部に接続されるバネ部と、
前記バネ部に振幅自在に支持される錘部と、
前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する変位計とを備えたことを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記バネ部及び錘部は、地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に周辺地盤に発生する振動による動き出しまでの時間が、0.5秒以上になるように調整されることを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記支持台部は、平台部と、前記平台部に立てられる柱状部とを備え、
前記バネ部は、前記平台部に下端が固定されるとともに上端が前記錘部の底面に接続され、
前記錘部には、前記柱状部に対して上下方向の移動が自在となるガイド部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記支持台部は、上方に延びる支柱部と、前記支柱部の上部から前記構造体に向けて張り出される張出部とを備え、
前記バネ部は、前記張出部に上端が固定されるとともに下端が前記錘部の上面に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記錘部の側面には、前記変位計として上下方向のいずれか一方向にレーザ光が照射されるようにレーザ式変位計が取り付けられるとともに、前記構造体の側面からは前記レーザ光を反射させる反射板が張り出されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記錘部の側面又は前記構造体の側面には、前記変位計として前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する接触式変位計が取り付けられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項7】
前記錘部に、加速度計が取り付けられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項8】
地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に発生する変位量を計測する変位測定装置であって、
前記構造体から離隔して設置される支持台部と、
前記支持台部に接続されるアクチュエータ部と、
前記アクチュエータ部に支持される錘部と、
前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する変位計と、
前記錘部に取り付けられる加速度計とを備え、
前記加速度計によって検出される信号に基づいて制御される前記アクチュエータ部によって前記錘部が定位置に固定されることを特徴とする変位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由落下させた重錘やハンマなどで杭などの構造体を打撃して支持力などを確認する際に使用される変位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭頭を重錘や油圧ハンマなどで打撃した際の杭の変位量を計測することで、杭の先端が支持層に到達しているか否かを判定する杭の打ち止め管理方法が知られている(特許文献1−3など参照)。
【0003】
また、杭頭を重錘で打撃した際の載荷荷重と杭の変位量とを計測することで、杭の支持力を測定する急速載荷試験などの杭の載荷試験方法が知られている(特許文献4参照)。
【0004】
これらの文献に開示された杭の打ち止め管理方法及び載荷試験方法では、打撃時の杭の変位量を計測することになるが、相対的な変位量を計測する装置を使用する場合は、杭の打撃による影響を受けない不動点を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2700397号公報
【特許文献2】実開平4−30410号公報
【特許文献3】特開平5−25826号公報
【特許文献4】特開2002−303570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1−3にも記載されているように、杭の打設現場において、杭の変位測定装置を不動点に設置することは、敷地の狭さや障害物の存在などの制約によって難しい場合が多いのが実情である。
【0007】
このため特許文献1では、杭の側面にウエイトの慣性力を利用した変位測定装置を取り付けて変位を計測している。この変位測定装置では、杭の側面に固定されたケースの内空に、バネとダッシュポットの組み合わせによってウエイトが吊るされている。
【0008】
そして、ウエイトと杭(ケース)との相対的な変位をポテンションメータで計測するとともに、ウエイト自体の絶対変位を加速度センサの検出値から算出させる。
【0009】
すなわち、油圧ハンマ等で杭頭を打撃すると、杭は高い周波数領域の動きをするが、バネとダッシュポットによって懸架されたウエイトは慣性力によって元の位置に止まろうとし、動く場合でも高い周波数領域の動きには追従せずに低い周波数の周期(1/数秒)で振動する。
【0010】
このため、引用文献1では、ウエイトの動きを加速度センサによって検出し、その加速度を2回積分することによってウエイトの変位量を算出して、杭のポテンションメータによる計測値に加算又は減算させる。
【0011】
このように引用文献1の変位測定装置は、ウエイトが杭の側面に取り付けられるためウエイトの動き出しが早い(1/数秒)うえに、ポテンションメータと加速度計の2つの計測器も衝撃を受けやすい環境下におかれるため故障のおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、構造体の打撃による影響を受ける地点に設置される場合であっても、故障しにくく精度の高い変位量の計測をおこなうことが可能な変位測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の変位測定装置は、地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に発生する変位量を計測する変位測定装置であって、前記構造体から離隔して設置される支持台部と、前記支持台部に接続されるバネ部と、前記バネ部に振幅自在に支持される錘部と、前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する変位計とを備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記バネ部及び錘部は、地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に周辺地盤に発生する振動による動き出しまでの時間が長くなるように調整されることが好ましい。例えば、前記振動による動き出しまでの時間が、0.5秒以上になるように調整される。
【0015】
また、前記支持台部は、平台部と、前記平台部に立てられる柱状部とを備え、前記バネ部は、前記平台部に下端が固定されるとともに上端が前記錘部の底面に接続され、前記錘部には、前記柱状部に対して上下方向の移動が自在となるガイド部が設けられる構成とすることができる。
【0016】
一方、前記支持台部は、上方に延びる支柱部と、前記支柱部の上部から前記構造体に向けて張り出される張出部とを備え、前記バネ部は、前記張出部に上端が固定されるとともに下端が前記錘部の上面に接続される構成とすることもできる。
【0017】
さらに、前記錘部の側面には、前記変位計として上下方向のいずれか一方向にレーザ光が照射されるようにレーザ式変位計が取り付けられるとともに、前記構造体の側面からは前記レーザ光を反射させる反射板が張り出される構成とすることができる。
【0018】
また、前記錘部の側面又は前記構造体の側面には、前記変位計として前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する接触式変位計が取り付けられる構成とすることもできる。
【0019】
さらに、前記錘部に、加速度計が取り付けられる構成とすることもできる。また、地盤に打ち込まれる構造体を打撃した際に発生する変位量を計測する変位測定装置であって、前記構造体から離隔して設置される支持台部と、前記支持台部に接続されるアクチュエータ部と、前記アクチュエータ部に支持される錘部と、前記錘部の側面と前記構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する変位計と、前記錘部に取り付けられる加速度計とを備え、前記加速度計によって検出される信号に基づいて制御される前記アクチュエータ部によって前記錘部が定位置に固定されることを特徴とする構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成された本発明の変位測定装置は、構造体から離隔して設置される支持台部と、それに接続されるバネ部及び錘部を備えている。そして、錘部と構造体との間に発生する相対変位を変位計によって計測する。
【0021】
ここで、支持台部にバネ部を介して振幅自在に支持された錘部は、支持台部が振動しても慣性力によって元の位置に止まろうとするため、構造体よりも動き出しが遅れる。よって、錘部が動き出すまでの間に変位計によって計測された相対変位は、構造体の絶対変位とみなすことができる。
【0022】
このため、構造体の打撃による影響を受ける地点に変位測定装置が設置される場合であっても、打撃による衝撃力を受けることがないので、故障しにくく精度の高い変位量の計測をおこなうことができる。
【0023】
また、バネ部のバネ定数や錘部の質量を調整することによって、打撃時に発生した振動による錘部の動き出しまでの時間を長くすることが容易にできる。特に、振動による動き出しまでの時間が0.5秒以上に設定されていれば、衝撃載荷試験や急速載荷試験などにおいて、錘部が動き出す前に充分に構造体の変位量を計測することができる。
【0024】
このような変位測定装置は、支持台部の平台部にバネ部の下端を固定してその上に錘部を接続し、平台部に立てられた柱状部に対して上下方向の移動が自在となるガイド部を錘部に設けることによって、容易に製作することができる。
【0025】
また、支持台部に上方に延びる支柱部とその上部から張り出される張出部を設け、その張出部からバネ部によって錘部を吊り下げる構成であっても、容易に製作することができる。
【0026】
さらに、錘部の側面と構造体の側面との間に発生する相対変位を計測するために非接触式のレーザ式変位計を利用することで、大きな打撃や繰り返しの打撃を行っても損傷することのない、高精度の装置にすることができる。
【0027】
また、変位計として錘部の側面と構造体の側面との間に発生する相対変位を計測する接触式変位計を利用することによっても、簡単に変位測定装置を製作することができる。
【0028】
そして、錘部に加速度計を取り付けて加速度を検出できる構成にしておくことで、錘部が動き出した後も補正によって構造体の絶対変位を算出できるようになる。この結果、錘部やバネ部の調整が不要になったり、調整だけでは対応できない時間帯の絶対変位も計測することができるようになる。
【0029】
さらに、錘部をアクチュエータ部に支持させ、加速度計によって検出される信号に基づいて錘部が定位置に固定されるようにアクチュエータ部を制御する構成であれば、錘部や支持台部の構成を小型化することが可能になる。また、長時間、錘部を最初の位置(定位置)に固定させておくことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態の変位測定装置の構成を示した説明図である。
図2】杭と錘部との動き出しのずれを説明するために、変位と時間との関係を示したグラフである。
図3】実施例1の変位測定装置の構成を示した説明図である。
図4】実施例2の変位測定装置の構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の変位測定装置1の構成を示した説明図である。この変位測定装置1を使って、地盤Gに打ち込まれる構造体を打撃した際に発生する変位量を計測する。
【0032】
本実施の形態では、構造体としての杭Pの杭頭P1を、自由落下させた重錘Wや油圧ハンマなどで打撃する場合について説明する。このような杭頭P1の打撃は、杭Pの打ち込み時のほか、急速載荷試験時、衝撃載荷試験時などに行われる。
【0033】
急速載荷試験は、静的載荷試験と衝撃載荷試験の欠点を解消するために考案された杭Pの試験方法で、この方法によれば載荷時間を衝撃載荷試験の約10倍に当たる0.05〜0.2秒程度にすることで弾性波動の伝播による影響をなくし、静的載荷試験に近い信頼性の高い試験結果を得ることができる。
【0034】
急速載荷試験では、杭頭P1に荷重計(図示省略)を介してゴムなどの緩衝材(図示省略)を載置し、その上に重錘Wを自由落下させて杭Pを打撃する。このように緩衝材を重錘Wと杭頭P1との間に介在させることによって、載荷時間を長くすることができる。
【0035】
一方、重錘Wを杭頭P1に直接、落下させると、衝撃荷重が短時間(0.01〜0.02秒程度)に杭頭P1に載荷されて、杭Pに波動現象が発生する。衝撃載荷試験は、この短時間に杭頭P1に発生するひずみと加速度から、一次元波動理論に基づいて杭Pの支持力を算出する試験方法である。
【0036】
これらの試験においては、載荷荷重の大きさは、杭Pの側面P2に貼り付けられるひずみ計(図示省略)又は杭頭P1に設置される油圧式ロードセルによって計測することができる。
【0037】
そして、杭Pの上下方向(鉛直方向)の変位量を、本実施の形態の変位測定装置1で計測する。
【0038】
この変位測定装置1は、杭Pから離隔して設置される支持台部2と、支持台部2に接続されるバネ部3と、バネ部3に振幅自在に支持される錘部4と、錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する相対変位を計測する変位計としてのレーザ式変位計6とによって主に構成される。
【0039】
また、レーザ式変位計6の周辺となる錘部4の側面43には、加速度計8が取り付けられる。
【0040】
支持台部2は、地盤Gの表面に設置される三脚部21と、三脚部21の上部に設けられる平台部22と、平台部22の上面に立てられる柱状部としてのレール部23とによって主に構成される。
【0041】
三脚部21は、地表に凹凸があっても平台部22を水平に据え付けることができる構成となっている。また、三脚部21によって平台部22の高さを調整することができる。
【0042】
バネ部3には、例えば螺旋状のコイルバネを使用することができる。バネ部3の下端31は平台部22の上面に固定され、上端32は錘部4の底面41に接続される。
【0043】
このバネ部3には、バネ定数(k)が既知のコイルバネが使用される。一方、錘部4には、質量(m)が既知の部材が使用される。この錘部4には、支持台部2が振動しても、慣性の法則によって所望する時間以上に最初の位置に止まり続けることができる程度の重量の部材が使用される。
【0044】
この錘部4は、例えば四角柱状や円柱状に成形される。そして、錘部4のレール部23側の側面44には、ガイド部5が設けられる。このガイド部5は、レール部23と組み合わされる。
【0045】
詳細には、レール部23は、平台部22の上面に対して直交するように立てられる。そして、このレール部23に対して上下方向(鉛直方向)の移動が自在となるようなガイド部5が組み付けられる。
【0046】
またガイド部5は、錘部4が杭P側やレール部23側に搖動するのを制限する機能を有している。すなわち、バネ部3に支持された錘部4が、上下方向(鉛直方向)にのみ抵抗を受けることなく移動できるように、レール部23とガイド部5が設けられる。
【0047】
さらに、錘部4の杭P側の側面43には、レーザ式変位計6が取り付けられる。このレーザ式変位計6は、レーザ光が下方に向けて照射されるように取り付けられる。
【0048】
一方、杭Pの変位測定装置1側の側面P2には、レーザ式変位計6の反射板61が取り付けられる。この反射板61は、側面P2に対して略直交する方向に張り出される。
【0049】
レーザ式変位計6は、反射板61よりも上方に配置され、下方の反射板61に向けてレーザ光が照射される。反射板61で反射されたレーザ光は、レーザ式変位計6の受光レンズ(図示省略)に入射される。
【0050】
レーザ式変位計6は、三角測量を応用した三角測距方式によって変位量を計測する。上述したようにレーザ式変位計6を設置した場合は、反射板61の上下方向(鉛直方向)の変位量を計測することができる。
【0051】
この反射板61の上下方向の変位量は、反射板61が取り付けられる杭Pの変位量とすることができる。なお、レーザ光が上方に向けて照射されるようにレーザ式変位計6が設置される場合は、反射板61はレーザ式変位計6よりも上方の側面P2から張り出されることになる。
【0052】
一方、加速度計8には、加速度センサが内蔵されている。錘部4が動き出すと、この加速度センサによって加速度が検出される。そして、検出された加速度を2回積分することによって、錘部4の変位量を算出することができる。
【0053】
次に、本実施の形態の変位測定装置1を使った杭Pの変位の計測方法について説明するとともに、変位測定装置1の作用について説明する。
【0054】
まず、図1に示すように、杭Pに隣接した位置に変位測定装置1を設置する。この位置は、杭Pを打撃した際に発生する振動が地盤Gを介して伝搬する位置であるため、通常では不動点にはならない位置である。
【0055】
変位測定装置1は、平台部22が水平となるように三脚部21を調整して据え付けられる。また、錘部4の側面43に取り付けられたレーザ式変位計6が反射板61の真上に配置されるように、平台部22の高さを三脚部21によって調整する。
【0056】
このようにして変位測定装置1を設置した後に、杭頭P1に向けて重錘Wを落下させる。落下した重錘Wによって杭頭P1が打撃されると、図2の上段に示すように杭Pに変位(変位量δ)が発生する。
【0057】
杭Pの変位(変位量δ)は、打撃直後(t=0)から始まり、沈下とリバウンドを繰り返して収束していく。一方、図2の下段に示すように、錘部4の変位は、杭Pの変位より時間t1だけ遅れて始まる。
【0058】
これは、支持台部2に打撃による振動が伝搬しても、バネ部3によって振幅自在に支持された錘部4が慣性の法則により静止状態を保とうとするため、時間t1の遅れをもって動き出すことによる。
【0059】
レーザ式変位計6は、錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する上下方向(鉛直方向)の相対変位を計測しているが、錘部4に変位が発生する前は、その計測値は杭Pの絶対変位とみなすことができる。
【0060】
上述したように、急速載荷試験の載荷時間は0.05〜0.2秒程度であり、衝撃載荷試験の載荷時間は0.01〜0.02秒程度である。このため、少なくともこの載荷時間の間、錘部4を静止させることができればよいことになる。
【0061】
錘部4の振幅の周期Tは、次の式によって算定することができる。
【0062】
T=2π√(m/k)
ここで、mは錘部4の質量、kはバネ部3のバネ定数を示す。
【0063】
そして、この周期Tが長くなるほど、錘部4の動き出しまでの時間が長くなると考えられる。時間t1は、T/2程度になると考えられる。
【0064】
このため、錘部4の質量m及びバネ部3のバネ定数kを調整することによって、錘部4の振幅の周期Tを長周期にすれば、錘部4の動き出しまでの時間を長くすることができる。
【0065】
例えば、周期Tを2〜3秒程度にすることで、急速載荷試験及び衝撃載荷試験の載荷時間内(1秒以下)は、錘部4を静止させておくことができるようになる。なお、錘部4を静止させておく時間(錘部4の動き出しまでの時間)は、0.5秒程度であってもよい。
【0066】
周期Tは、変位測定装置1の取り扱い易さなどとの関係から任意に設定することができる。例えば、錘部4の重量が大きくなってもよい場合は、周期Tが10秒程度になる変位測定装置1を製作することができる。
【0067】
このように構成された本実施の形態の変位測定装置1は、杭Pから離隔して設置される支持台部2と、それに接続されるバネ部3及び錘部4を備えている。そして、錘部4と杭Pとの間に発生する相対変位をレーザ式変位計6によって計測する。
【0068】
ここで、支持台部2にバネ部3を介して振幅自在に支持された錘部4は、支持台部2が振動しても慣性力によって元の位置に止まろうとするため、杭Pよりも動き出しが遅れる。よって、錘部4が動き出すまでの間にレーザ式変位計6によって計測された相対変位は、杭Pの絶対変位とみなすことができる。
【0069】
このため、杭Pの打撃による影響を受ける地点に変位測定装置1が設置される場合であっても、レーザ式変位計6のみで杭Pを打撃した際に発生する変位量の計測をおこなうことができる。
【0070】
また、バネ部3のバネ定数kや錘部4の質量mを調整することによって、錘部4の振幅する周期Tを所望する長周期に容易に設定することができる。特に、周期Tを長周期にすることによって振動による動き出しまでの時間が0.5秒以上に設定されていれば、衝撃載荷試験や急速載荷試験において、錘部4が動き出す前に充分に構造体の変位量を計測することができる。
【0071】
さらに、錘部4の振幅する周期Tが、2秒以上の長周期に設定されていれば、錘部4が動き出すまでに1秒以上の時間を確保することができるので、リバウンドなどの載荷後のしばらくの間の杭Pの変位量を計測することができる。
【0072】
他方、錘部4に加速度計8を取り付けて錘部4の加速度を検出できる構成にしておくことで、錘部4が動き出した後にレーザ式変位計6が計測した値も利用できるようになる。
【0073】
すなわち、錘部4の動きを加速度計8によって検出し、その検出された加速度を2回積分すれば、錘部4の変位量を算出することができる。そして、レーザ式変位計6による計測値に、演算された錘部4の変位量を加算又は減算させることで、杭Pの絶対変位を求めることができる。
【0074】
このように錘部4に加速度計8を取り付けておくことで、錘部4の質量mやバネ部3のバネ定数kの調整が不要になったり、調整だけでは対応できない載荷から時間がたった時間帯(錘部4が動き出した後の時間帯)の杭Pの絶対変位も算出することができるようになる。
【0075】
さらに、杭Pに直接取り付けるのではなく、別体として地盤G上に設置する変位測定装置1であれば、錘部4を大きくして周期Tを長くすることが容易にできる。
【0076】
また、別体として地盤G上に設置する変位測定装置1であれば、打撃による衝撃力を受けることがないので、レーザ式変位計6及び加速度計8が打撃による衝撃力などで故障しにくくなる。
【0077】
このような変位測定装置1は、支持台部2の平台部22にバネ部3の下端31を固定してその上に錘部4を接続し、平台部22に立てられたレール部23に対して上下方向の移動が自在となるガイド部5を錘部4に設けることによって、容易に製作することができる。
【0078】
また、錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する相対変位を計測するために非接触式のレーザ式変位計6を利用することで、大きな打撃や繰り返しの打撃を行っても損傷することのない、高精度に変位量を計測することが可能な装置にすることができる。
【実施例1】
【0079】
以下、前記した実施の形態の変位測定装置1とは別の形態の実施例1の変位測定装置1Aについて、図3を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0080】
前記実施の形態で説明した錘部4は、バネ部3の上に載せられる構成であったが、実施例1では、錘部4をバネ部3によって吊り下げる構成の変位測定装置1Aについて説明する。
【0081】
この変位測定装置1Aは、杭Pから離隔して設置される支持台部2Aと、支持台部2Aから吊り下げられるバネ部3と、バネ部3に吊り下げられる錘部4と、錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する相対変位を計測するレーザ式変位計6と、レーザ式変位計6の真上の錘部4の側面43に取り付けられる加速度計8とによって主に構成される。
【0082】
支持台部2Aは、地盤Gの表面に設置される三脚部21と、三脚部21の上部に設けられる平台部22と、平台部22の上面に立てられて上方に延びる支柱部24と、支柱部24の上部から杭Pに向けて張り出される張出部25とによって主に構成される。
【0083】
支柱部24は、平台部22の上面に対して直交するように立てられる。また、支柱部24の上端には、支柱部24に対して直交し、かつ平台部22と平行となるように張出部25が設けられる。
【0084】
そして、バネ部3の上端32は張出部25の下面に固定され、下端31は錘部4の上面42に接続される。錘部4が静止している状態で、錘部4の底面41と平台部22の上面との間には、錘部4の振幅以上の離隔が確保されている。
【0085】
このように、支持台部2Aに上方に延びる支柱部24とその上部から張り出される張出部25を設け、その張出部25からバネ部3によって錘部4を振幅自在に吊り下げる構成であっても、容易に製作することができる。
【0086】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0087】
以下、前記した実施の形態の変位測定装置1及び実施例1の変位測定装置1Aとは別の形態の実施例2の変位測定装置1Bについて、図4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0088】
前記実施の形態及び実施例1では、変位計としてレーザ式変位計6を使用する場合について説明したが、実施例2では、接触式変位計7を変位計として使用する変位測定装置1Bについて説明する。
【0089】
実施例2の変位測定装置1Bは、接触式変位計7以外の構成については前記実施の形態で説明した変位測定装置1と同じであるため、重複する説明は省略する。
【0090】
なお、図4では、加速度計8を錘部4の上面42に取り付けた図としたが、これに限定されるものではなく、側面43の空いている位置に取り付けることもできる。
【0091】
この接触式変位計7は、錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する上下方向(鉛直方向)の相対変位を変位量として計測する。この接触式変位計7は、杭Pの側面P2を上下方向に安定走行させるための複数の車輪72,・・・と、移動距離を計測するための測定輪71とによって主に構成される。
【0092】
この測定輪71には、ロータリエンコーダなどの回転角を計測するセンサが内蔵されており、計測された回転角に基づいて算出された測定輪71の移動距離が変位量となる。
【0093】
図4では、接触式変位計7を錘部4の杭P側の側面43に取り付け、測定輪71及び車輪72,・・・を杭Pの側面P2に接触させている。これに対して、杭Pの錘部4側の側面P2に接触式変位計7を取り付け、測定輪71及び車輪72,・・・を錘部4の側面43に接触させる構成とすることもできる。
【0094】
このように変位計として錘部4の側面43と杭Pの側面P2との間に発生する相対変位を計測する接触式変位計7を利用することによっても、簡単に変位測定装置1Bを製作することができる。
【0095】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0096】
以下、前記した実施の形態の変位測定装置1及び実施例1,2の変位測定装置1A,1Bとは別の形態の実施例3の変位測定装置について説明する。なお、前記実施の形態又は実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0097】
前記実施の形態及び実施例1,2では、バネ部3によって錘部4を振幅自在に支持させる場合について説明したが、実施例3では、バネ部3に代えてアクチュエータ部によって錘部4を支持させる変位測定装置について説明する。
【0098】
このアクチュエータ部は、サーボモータを備えており、サーボモータの駆動によって長さを調整することができる。そして、このサーボモータは、加速度計8によって検出される信号に基づいて制御される。
【0099】
すなわち、杭Pの打撃直後の錘部4が静止しているときには、加速度計8によって検出される加速度は0となるため、サーボモータは駆動せず、アクチュエータ部の長さは変化しない。
【0100】
一方、打撃後しばらくして錘部4が動き出そうとすると、加速度計8が加速度を検出するので、錘部4の変位量を算出することができる。そこで、サーボモータを駆動して、錘部4の変位量を相殺する方向にアクチュエータ部の長さを変更することで、錘部4を最初に静止していた位置に固定することができる。
【0101】
このような実施例3の変位測定装置の構成であれば、錘部4や支持台部2,2Aの構成を小型化することが可能になる。また、自由振幅させる場合には錘部4が動き出してしまう時間が経過した後も、アクチュエータ部を使った構成であれば錘部4を最初の位置(定位置)に留まらせることができる。
【0102】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0103】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0104】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、構造体が杭Pの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鋼矢板や支柱が構造体であっても本発明の変位測定装置1,1A,1Bを使用することができる。
【0105】
また、前記実施の形態及び実施例1では、レーザ式変位計6のレーザ光を反射板61に向けて照射することで上下方向の変位量を計測する構成としたが、これに限定されるものではなく、接触式変位計であるダイヤルゲージの先端を反射板61に押し当てて上下方向の変位量を計測する構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0106】
1 変位測定装置
2 支持台部
22 平台部
23 レール部(柱状部)
3 バネ部
31 下端
32 上端
4 錘部
41 底面
42 上面
43 側面
5 ガイド部
6 レーザ式変位計(変位計)
61 反射板
1A 変位測定装置
2A 支持台部
24 支柱部
25 張出部
1B 変位測定装置
7 接触式変位計(変位計)
8 加速度計
G 地盤
P 杭(構造体)
P2 側面
T 周期
δ 変位量
図1
図2
図3
図4