特許第6528043号(P6528043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528043
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】連結式水陸両用車
(51)【国際特許分類】
   B60F 3/00 20060101AFI20190531BHJP
   B63H 11/08 20060101ALI20190531BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   B60F3/00 B
   B63H11/08 A
   B62D53/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-236526(P2014-236526)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-97804(P2016-97804A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】509202558
【氏名又は名称】JMUディフェンスシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 憲治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 広隆
(72)【発明者】
【氏名】引原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】多田 晃義
(72)【発明者】
【氏名】一盛 江里
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4934300(US,A)
【文献】 米国特許第4727949(US,A)
【文献】 特開2014−94657(JP,A)
【文献】 米国特許第4645023(US,A)
【文献】 特公昭41−4656(JP,B1)
【文献】 特開2013−132995(JP,A)
【文献】 特開平4−252710(JP,A)
【文献】 特公昭38−13664(JP,B1)
【文献】 特開2006−312364(JP,A)
【文献】 特開昭56−103692(JP,A)
【文献】 実開昭51−57493(JP,U)
【文献】 特開平9−226448(JP,A)
【文献】 特開2001−294181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 3/00
B62D 53/00
B63H 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置を有する複数の車両と、
各車両を前後方向に連結接続した連結リンクと
を備える連結式水陸両用車であって、
前記各車両は、
前記駆動装置の駆動により回転駆動する走行装置と、
前記駆動装置の駆動により、車体後方下向きに流体を噴出して推力を発生させる推進装置と
前記連結リンクとの接続部分に、前記連結リンクを角度制御して回動させることができるアクチュエータとを有し、
障害物を検出する障害物検出装置と、
前記各車両の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記障害物検出装置が検出した前記障害物、前記姿勢検出装置が検出した前記各車両の前記姿勢、位置、地形および潮位のデータに基づいて、前記障害物を乗り越える際、前記走行装置、前記推進装置および前記各車両の前記アクチュエータを自動で制御する航法制御装置と
を備えることを特徴とする連結式水陸両用車。
【請求項2】
前記推進装置は、ノズルから水を送り出して推力を発生させるウォータージェットであることを特徴とする請求項1に記載の連結式水陸両用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水陸両用車に関するものである。特に、連結部材により複数の車両を前後方向に接続した連結式水陸両用車に係るものである。
【背景技術】
【0002】
水陸両用車は、水上の航走および陸上の走行を行うことができる車両である。このような水陸両用車において、前部車両と後部車両とを連結手段により連結した連結式水陸両用車が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このような、連結式水陸両用車は、陸上を移動する際または水上から陸上に移動する際などにおいて、たとえば段差などのある不整地を走行をスムーズに行うことを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4727949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献では、陸上走行だけでなく、水上航走についても、陸上走行装置である履帯を回転させることにより推力(推進力)を得て行っている。陸上走行装置において、たとえば水上航走における推力の効率を高めようとすると、陸上走行の性能に影響する。このため、推進装置を設置し、水上航走などについては、ウォータージェットなどの推進装置により行う方が望ましい。
【0005】
しかしながら、連結式水陸両用車においては、たとえば、推進装置を前部車両に備えると、噴流が後部車両に当たって干渉することになる。また、後部車両だけに推進装置を備えた場合、連結部分の強度に影響することになる。このため、推進装置を備えるにあたって工夫することが必要となる。
【0006】
そこで、本発明は上記のような課題を解決し、各車両において推進装置を有する連結式水陸両用車を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る連結式水陸両用車は、駆動装置を有する複数の車両と、各車両を前後方向に連結接続した連結リンクとを備える連結式水陸両用車であって、各車両は、駆動装置の駆動により回転駆動する走行装置と、駆動装置の駆動により、車体後方下向きに流体を噴出して推力を発生させる推進装置と、連結リンクとの接続部分に、連結リンクを角度制御して回動させることができるアクチュエータとを有し、障害物を検出する障害物検出装置と、各車両の姿勢を検出する姿勢検出装置と、障害物検出装置が検出した障害物、姿勢検出装置が検出した各車両の姿勢、位置、地形および潮位のデータに基づいて、障害物を乗り越える際、走行装置、推進装置および各車両のアクチュエータを自動で制御する航法制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る連結式水陸両用車によれば、推進装置からの噴流が水平方向よりも俯角方向(下方向)に向かうように推進装置を構成するようにしたので、前部車両が有する推進装置からの噴流が後部車両に当たらず、後部車両への噴流の干渉を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る連結式水陸両用車100の構成の概略を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るウォータージェット11の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る水陸両用車100の障害物の乗り越えに係る説明をするための図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る水陸両用車100の自動制御に係る説明のための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態に係る連結式水陸両用車について図面などを参照しながら説明する。ここで、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。さらに、添字などで区別している複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る連結式水陸両用車100の構成の概略を示す図である。図1の連結式水陸両用車100(以下、水陸両用車100という)は、前部車両100Aと後部車両100Bとを、連結部材となる連結リンク101で連結接続する。前部車両100Aおよび後部車両100Bは、陸上走行装置20(20A,20B)と推進装置となるウォータージェット11(11A、11B)とをそれぞれ備えている。走行装置となる陸上走行装置20は、エンジンなどの駆動装置(図示せず)により、スプロケット21(21A,21B)を回転駆動させ、履帯22(22A,22B)を回転駆動させて陸上走行、水際走行などを可能とする。ここでは、履帯22(22A,22B)を回転駆動させて陸上走行などを行うが、たとえば車輪を回転駆動させて陸上走行などを行うようにしてもよい。
【0012】
図2は本発明の実施の形態1に係るウォータージェット11の概略構成を示す図である。本実施の形態のウォータージェット11は、車体10の後方で、水平方向よりも下方向(俯角方向)に水を噴出させる噴流方向とする。噴流方向を下に向けることにより、前部車両100Aが有するウォータージェット11Aの噴流が、後部車両100Bの進行に干渉せずに推進力を得ることができる。後部車両100Bが有するウォータージェット11Bについては、噴流方向を水平方向よりも下方向(俯角方向)にする必要はないが、ここでは、ウォータージェット11Aと同様にする。
【0013】
ダクト12はノズル14から噴流させる水の流路となる管であり、取水口13およびノズル(ジェットノズル)14と連通している。取水口13は、車両底面にあって、ウォータージェット11内に取り込むための開口部分である。また、ノズル14は、水を噴出する。
【0014】
ダクト12内には、駆動軸15、動翼(インペラ)16および静翼17を設置する。動翼16は、回転することにより、取水口13からノズル14に到る水の流れを形成する。静翼17は、水を整流などしてノズル14に送る。駆動軸15は、エンジンと接続し、エンジンから駆動力が与えられて動翼16を回転させる。
【0015】
ここで、図2(a)はウォータージェット11全体を水平方向よりも下方向(俯角方向)に水を噴出させるように傾けて設置し、噴流方向を後方下向きにするウォータージェット11(水陸両用車100)を実現したものである。また、図2(b)は、ノズル14を水平方向よりも下方向(俯角方向)に水を噴出させるように傾け、噴流方向を後方下向きにするウォータージェット11(水陸両用車100)を実現したものである。また、図2(c)は、ノズル14を車体10よりも下に装備し、噴流を車体10よりも下に噴出させるウォータージェット11(水陸両用車100)を実現したものである。ノズル旋回装置18は、ノズルを旋回させて、水の噴出方向を変える装置である。
【0016】
各車両がウォータージェット11を有することで、水陸両用車100の運動性能を高めることができる。ここで、上述した特許文献1では、前部車両と後部車両とを連結する連結手段は、前部車両と後部車両との距離を保つために接続するものであり、前部車両と後部車両との位置関係を積極的に変更する制御ができない。
【0017】
そこで、本実施の形態では、前部車両100Aおよび後部車両100Bは、それぞれ連結リンク101との接続部分にアクチュエータ103(103A、103B)を有するようにする。そして、各アクチュエータ103が駆動することにより、連結リンク101について、接続部分を中心とする回転運動(回動)を回転角度を調整制御しつつ、積極的に行わせることができる。このため、後部車両100Bが前部車両100Aを持ち上げる、前部車両100Aが後部車両100Bを持ち上げるなどを行い、前部車両100Aと後部車両100Bとの位置関係(特に高さ方向の関係)を制御しながら変更可能である。障害物の乗り越えに利用することができる。
【0018】
図3は本発明の実施の形態1に係る水陸両用車100の障害物の乗り越えに係る説明をするための図である。図3に基づいて、ここで、図3における障害物は、水面からの深さHにある水底面の段差であるものとする。
【0019】
通常の走行、航走においては、図1に示すように、アクチュエータ103Aおよびアクチュエータ103Bによる連結リンク101の制御を積極的に行わない。連結リンク101は基本的には水平の状態である。
【0020】
図3(a)に示すように、前部車両100Aが障害物にさしかかると、後部車両100Bが有するアクチュエータ103Bは、たとえば深さHに応じ、アクチュエータ103B(後部車両100B)からみて連結リンク101の円周側先端(アクチュエータ103Aとの接続部分)を下げるように、連結リンク101を回転させる。このとき、前部車両100Aの前側は浮力などにより維持または斜め前を向き、前部車両100Aの後側は水中側に下がって斜め後ろを向く。ここで、特に限定するものではないが、アクチュエータ103Aを制御することにより、前部車両100Aの前側の向きを調整するようにしてもよい。
【0021】
図3(b)に示すように、前部車両100Aは陸上走行装置20Aおよびウォータージェット11Aを駆動して、障害物を登る。後部車両100Bは、ウォータージェット11Bを駆動して推力を与える(前部車両100Aを押す)。そして、アクチュエータ103Aは、アクチュエータ103A(前部車両100A)からみて連結リンク101の円周側先端(アクチュエータ103Bとの接続部分)を下げるように連結リンク101を制御する。また、アクチュエータ103Bは、アクチュエータ103B(後部車両100B)からみて連結リンク101の円周側先端(アクチュエータ103Aとの接続部分)を上げるように連結リンク101を制御する。
【0022】
図3(c)に示すように、障害物を乗り越えた前部車両100Aは陸上走行装置20Aを駆動して、後部車両100Bを引っ張りながら障害物上を走行する。このとき、ウォータージェット11Aが利用可能な水深であれば、ウォータージェット11Aを駆動してもよい。後部車両100Bはウォータージェット11Bを駆動する。このとき、アクチュエータ103Aおよびアクチュエータ103Bによる連結リンク101の制御を積極的に行わない。
【0023】
図3(d)に示すように、後部車両100Bが障害物にさしかかると、アクチュエータ103Aは、たとえば深さHに応じ、アクチュエータ103A(前部車両100A)からみて連結リンク101の円周側先端(アクチュエータ103Bとの接続部分)を上げるように、連結リンク101を回転させる。ここで、特に限定するものではないが、アクチュエータ103Bを制御することにより、後部車両100Bの前側の向きを調整するようにしてもよい。これにより、前部車両100Aが後部車両100Bを引き上げる。
【0024】
図3(e)に示すように、前部車両100Aおよび後部車両100Bは、それぞれ陸上走行装置20Aおよび陸上走行装置20Bを駆動して障害物上を走行する。このとき、ウォータージェット11が利用可能な水深であれば、ウォータージェット11を駆動してもよい。
【0025】
以上のように、前部車両100Aと後部車両100Bとを連結リンク101で連結接続した本実施の形態の水陸両用車100においては、ウォータージェット11からの噴流が水平方向よりも俯角方向(下方向)に向かうようにウォータージェット11を構成するようにしたので、前部車両100Aが有するウォータージェット11Aからの噴流が後部車両100Bに当たらず、後部車両100Bへの噴流の干渉を防ぐことができる。推進装置であるウォータージェット11を各車両が有することで、陸上走行装置20を走行のみに利用することも可能となるため、走行性能を高めることができる。
【0026】
また、前部車両100Aおよび後部車両100Bにアクチュエータ103を有し、連結リンク101の回転運動を行わせることができるので、たとえば水中にある障害物を乗り越える際に、障害物の高さ、水深などの乗り越え状況に合わせて、障害物に対する前部車両100Aの角度調整、後部車両100Bの引き上げなどを行うことができ、障害物の乗り越え性能を改善することができる。
【0027】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2に係る水陸両用車100の自動制御に係る説明のための図である。実施の形態1では特に示さなかったが、水陸両用車100の障害物の乗り越えを、陸上走行装置20、ウォータージェット11およびアクチュエータ103を自動制御することで行うようにしてもよい。
【0028】
たとえば、障害物の乗り越えに関し、図4においては、航法制御装置40は、衛星測位システム(GPS:Global Positioning System )51、地形データ記憶装置52、潮位データ記憶装置53、障害物検出装置54、姿勢検出装置55から得られたデータに基づいて、陸上走行装置20、ウォータージェット11およびアクチュエータ103を自動制御する。
【0029】
衛星測位システム51は、GPS衛星からの電波を受信して、水陸両用車100の位置(緯度、経度)を測位する。地形データ記憶装置52は、水陸両用車100が走行(航走)する場所の地形に関するデータを記憶する。潮位データ記憶装置53は、潮の満ち引きに関するデータを潮位データとして記憶する。障害物検出装置54は、たとえば、水中カメラ、ソナーなどの装置であり、障害物の振動などを検出する装置である。そして、姿勢検出装置55は、前部車両100Aおよび後部車両100Bのそれぞれの姿勢(傾きなど)を検出する装置である。
【0030】
以上のように、本実施の形態の水陸両用車100によれば、検出装置、測位装置などから得られるデータに基づいて、陸上走行装置20、ウォータージェット11およびアクチュエータ103を自動制御して、障害物の乗り越えを自動で行うことができる。
【0031】
実施の形態3.
上述した実施の形態1および実施の形態2においては、推進装置を、水を送り出すウォータージェット11としたが、水以外の流体を噴出する推進装置としてもよい。
【0032】
また、上述した実施の形態1および実施の形態2では、2台の車両を進行方向に対して前後方向に連結した水陸両用車100で構成したが、たとえば3台以上の車両を連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 車体
11,11A,11B ウォータージェット
12 ダクト
13 取水口
14 ノズル
15 駆動軸
16 動翼
17 静翼
18 ノズル旋回装置
20,20A,20B 陸上走行装置
21,21A,21B スプロケット
22,22A,22B 履帯
40 航法制御装置
51 衛星測位システム
52 地形データ記憶装置
53 潮位データ記憶装置
54 障害物検出装置
55 姿勢検出装置
100 連結式水陸両用車(水陸両用車)
100A 前部車両
100B 後部車両
101 連結リンク
103,103A,103B アクチュエータ
図1
図2
図3
図4