(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光送信装置と光受信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光通信として、光の強度が第1の強度、光の波長が第1の波長、光を変調して通信する速度が第1の通信速度である第1の通信モードと、光の強度が前記第1の強度より小さい第2の強度、光の波長が前記第1の波長と異なる第2の波長、光を変調して通信する速度が前記第1の通信速度より遅い第2の通信速度である第2の通信モードとをサポートする光通信システムであって、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1及び第2の通信モードに対応する復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記捕捉追尾センサ及び前記復調部それぞれに入射させる光分割部と、
を備え、
前記光分割部は、前記第1の通信モードから前記第2の通信モードになるときの前記復調部へ配分される光強度の減り方の割合が、前記第1の通信モードから前記第2の通信モードになるときの前記捕捉追尾センサへ配分される光強度の減り方(減り方がゼロの場合を含む)の割合よりも大きくなるように、前記光を分割する、
ことを特徴とする光通信システム。
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタを移動させるビームスプリッタ移動手段とを備え、
前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、前記第1の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように前記第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、前記第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように前記第2の波長の光を反射及び透過し、
前記ビームスプリッタ移動手段は、前記第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、前記第2の通信モードのときは、光が前記第2の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、
前記復調部は、前記第1及び第2の通信モードの前記第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
前記光通信はDD−PSK方式で行われ、前記復調部は、光電変換部と、入射した光を前記光電変換部へ導く遅延時間の異なる複数の導光媒体と、受信された光を前記複数の導光媒体のいずれに入射するかを切り替える光スイッチとを含むことを特徴とする請求項3に記載の光通信システム。
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタに入射する光の光路を変更する光路移動手段とを備え、 前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、前記第1の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように前記第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、前記第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように前記第2の波長の光を反射及び透過し、
前記光路移動手段は、前記第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射するように光路を移動させ、前記第2の通信モードのときは、光が前記第2の領域に入射するように光路を移動させ、
前記復調部は、前記第1及び第2の通信モードの前記第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
光送信装置と光受信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光送信装置から送出される光の強度がP1、前記光の波長がλ1、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR1である第1の通信モードと、前記光送信装置から送出される光の強度がP2(P1>P2)、前記光の波長がλ2(λ1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR2(R1>R2)である第2の通信モードと、・・・前記光送信装置から送出される光の強度がPn(Pn−1>Pn)、前記光の波長がλn(λ1、λ2、・・・λn−1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がRn(Rn−1>Rn)である第nの通信モードというn個の通信モードをサポートする光通信システムであって、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1乃至第nの通信モードに対応する第1乃至第nの復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記捕捉追尾センサ及び前記第1乃至第nの復調部のいずれかに入射させる第1乃至第nのビームスプリッタと、
を備え、
第nのビームスプリッタは前記光アンテナから光を受け、強度Pi(i=1、・・・、n)の光のうちPSiだけ反射し、PDiだけ透過し、第nのビームスプリッタの波長λiに対する反射率がそれぞれほぼPSi/(PSi+PDi)となり、かつ、PSiが次数iによらずほぼ一定となるように第nのビームスプリッタと波長λiを設定し、かつ、第nのビームスプリッタは反射した光を前記捕捉追尾センサに入射させ、そして、各波長に対応する第j+1(j=1、・・・、n−1)の復調機に通信(復調)光を導くための第jのビームスプリッタは、波長λj+1の光をほぼ全反射し、それより速い通信速度に使用する波長の光をほぼ全透過するように設定し、第j(j=1、・・・、n−1)のビームスプリッタは、それぞれ、第j+1のビームスプリッタから透過された光を受け、自身が透過した光を第j−1のビームスプリッタ(但し、j=1の場合は、第1の復調部)に入射させて、n種類の波長を用いた光通信を可能とし、かつ、通信速度が遅い通信モードほど消費電力を段階的に小さくすることを特徴とする光通信システム。
前記光送信装置及び光受信装置は、それぞれ異なる衛星に搭載されるものであり、前記光通信は衛星間光通信であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光通信システム。
光送信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光通信として、光の強度が第1の強度、光の波長が第1の波長、前記光を変調して通信する速度が第1の通信速度である第1の通信モードと、光の強度が前記第1の強度より小さい第2の強度、光の波長が前記第1の波長と異なる第2の波長、前記光を変調して通信する速度が前記第1の通信速度より遅い第2の通信速度である第2の通信モードとをサポートする光受信装置であって、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1及び第2の通信モードに対応する復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記復調部及び前記捕捉追尾センサそれぞれに入射させる光分割部と、
を備え、
前記光分割部は、前記第1の通信モードから前記第2の通信モードになるときの前記復調部へ配分される光強度の減り方の割合が、前記第1の通信モードから前記第2の通信モードになるときの前記捕捉追尾センサへ配分される光強度の減り方(減り方がゼロの場合を含む)の割合よりも大きくなるように、前記光を分割する、
ことを特徴とする光受信装置。
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタを移動させるビームスプリッタ移動手段とを備え、
前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、前記第1の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように前記第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、前記第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように前記第2の波長の光を反射及び透過し、
前記ビームスプリッタ移動手段は、前記第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、前記第2の通信モードのときは、光が前記第2の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、
前記復調部は、前記第1及び第2の通信モードの前記第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものである、
ことを特徴とする請求項9に記載の光受信装置。
前記光通信はDD−PSK方式で行われ、前記復調部は、光電変換部と、入射した光を前記光電変換部へ導く遅延時間の異なる複数の導光媒体と、受信された光を前記複数の導光媒体のいずれに入射するかを切り替える光スイッチとを含むことを特徴とする請求項11に記載の光受信装置。
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタに入射する光の光路を変更する光路移動手段とを備え、 前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、前記第1の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように前記第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、前記第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように前記第2の波長の光を反射及び透過し、
前記光路移動手段は、前記第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射するように光路を移動させ、前記第2の通信モードのときは、光が前記第2の領域に入射するように光路を移動させ、
前記復調部は、前記第1及び第2の通信モードの前記第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものである、
ことを特徴とする請求項9に記載の光受信装置。
光送信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光送信装置から送出される光の強度がP1、前記光の波長がλ1、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR1である第1の通信モードと、前記光送信装置から送出される光の強度がP2(P1>P2)、前記光の波長がλ2(λ1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR2(R1>R2)である第2の通信モードと、・・・前記光送信装置から送出される光の強度がPn(Pn−1>Pn)、前記光の波長がλn(λ1、λ2、・・・λn−1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がRn(Rn−1>Rn)である第nの通信モードというn個の通信モードをサポートする光受信装置であって、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1乃至第nの通信モードに対応する第1乃至第nの復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記捕捉追尾センサ及び前記第1乃至第nの復調部のいずれかに入射させる第1乃至第nのビームスプリッタと、
を備え、
第nのビームスプリッタは前記光アンテナから光を受け、強度Pi(i=1、・・・、n)の光のうちPSiだけ反射し、PDiだけ透過し、第nのビームスプリッタの波長λiに対する反射率がそれぞれほぼPSi/(PSi+PDi)となり、かつ、PSiが次数iによらずほぼ一定となるように第nのビームスプリッタと波長λiを設定し、かつ、第nのビームスプリッタは反射した光を前記捕捉追尾センサに入射させ、そして、各波長に対応する第j+1(j=1、・・・、n−1)の復調機に通信(復調)光を導くための第jのビームスプリッタは、波長λj+1の光をほぼ全反射し、それより速い通信速度に使用する波長の光をほぼ全透過するように設定し、第j(j=1、・・・、n−1)のビームスプリッタは、それぞれ、第j+1のビームスプリッタから透過された光を受け、自身が透過した光を第j−1のビームスプリッタ(但し、j=1の場合は、第1の復調部)に入射させて、n種類の波長を用いた光通信を可能とし、かつ、通信速度が遅い通信モードほど消費電力を段階的に小さくすることを特徴とする光受信装置。
前記光送信装置及び光受信装置は、それぞれ異なる衛星に搭載されるものであり、前記光通信は衛星間光通信であることを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一項に記載の光受信装置。
【背景技術】
【0002】
図1は、静止軌道にある静止衛星と、より低軌道にあるユーザ衛星との間の光衛星間通信システムを説明する図である。同図に示すように、ユーザ衛星11(例えば、低軌道の大型地球観測衛星)又はユーザ衛星12(例えば、低軌道の小型地球観測衛星)から静止衛星10へは、レーザ光でデータを伝送し、静止衛星10から地上局13へは、電波もしくはレーザ光でデータを伝送するシステムである。この例では、静止衛星10とユーザ衛星11との間の通信速度は2.5Gbpsであり、静止衛星10とユーザ衛星12との間の通信速度は100Mbpsである。静止衛星10は、複数の低軌道衛星11、12、・・・を時分割でサポートする。
【0003】
レーザ光は電波と比較して直進性が高く、ユーザ衛星と静止衛星が正確に向かい合ってレーザ光を送受信する必要があることから、光衛星間通信では、レーザ光をデータ伝送のみならず、相手の衛星の捕捉追尾にも使用する。そのために静止衛星では、
図2に示すように、受信した1つのレーザ光を通信装置内で2つに分割し、その通信相手の方向を検知するための捕捉追尾用センサと、復調機とに分配している。静止衛星には、相手の衛星を捕捉及び追尾するために、粗捕捉追尾機構(CPM)26と精捕捉追尾機構(FPM)21が設けられている。CPM26は、衛星又は衛星に設けられたアンテナ全体の指向方向を変え、FPM21は、受信したレーザ光の方向を微小に調整する。
【0004】
光アンテナ20によって受信された受信光は、FPM21に設けられたミラー22によって反射され、ビームスプリッタ(BS)23で2つに分割されて、一方は捕捉追尾センサ24に、他方は復調機25に送られる。受信された光は、捕捉追尾センサ24と復調機25に対し、一例として1:10の割合で分配される。
【0005】
光衛星間通信システムでは、制御の難しい局発光源が不要で、かつ小型化が容易な差動位相キーイング−直接検出(DD−DPSK)変復調方式を使用している。この方式は、
図3に示すように、送信側のレーザダイオード(LD)30により発せられた光が光変調器31において送信データ(電気信号)によって変調され、光増幅器32で増幅され、光ファイバ33及び内部光学系34を通され、光アンテナ35によって宇宙空間へ送出される。宇宙空間を伝搬した光は受信側の光アンテナ20によって受信され、内部光学系36及び光ファイバ29を通って復調機25へ送られる。復調機25では、低雑音増幅器37によって増幅され、遅延線38を通った後、フォトダイオード39によって光電変換されて、受信データ(電気信号)が取り出される。
【0006】
しかし、DD−DPSK方式は、1ビットの長さが遅延線の長さで決まってしまうため、通信速度(データレート)を変えることが困難であるという問題がある。そこで、
図4に示すように、送信側であるユーザ衛星でレーザ光に変調を掛けて送出する期間とレーザ光を送出しない期間とを交互に設け、その比率を帰ることで通信速度を変えている。一方、光強度の平均は、(a)に示したフルレートの場合の光強度を1(単位は任意。以下同様)とすると、(b)のように、ハーフ(2分の1)レートの場合にはオンの期間の光強度を2とすれば光強度の平均値は1となり、(c)のようにクォータ(4分の1)レートの場合にはオンの期間の光強度を4とすれば光強度の平均値は1となり、通信速度の場合も同じ(平均)光強度とすることができる。
【0007】
光衛星間通信を利用するユーザの中には、例えば2.5Gbpsという高速の通信速度を要求する代わりに消費電力が多いことを許容するユーザ(大型地球観測衛星、低軌道衛星)が存在する一方で、極力低消費電力を要求する代わりに、例えば100Mbpsといった比較的低速の通信速度でもよいというユーザ(小型の地球観測衛星、低軌道衛星)も存在する。静止衛星側は、1台の光通信装置で両方のユーザ衛星と通信する必要があり、静止衛星の受信装置は桁違いに異なる2つ以上の通信速度に対応しなければならない。
【0008】
図2に示したビームスプリッタ(BS)23は、1つの波長に対してのみ透過/反射比率が設計されており、捕捉追尾センサ24に分配するレーザの強度と、復調機25に分配するレーザ光の強度を変更することはできない。このため、
図4に示すように、間欠的な変調・レーザ光送信を行うことで、最高速度の2分の1、4分の1、8分の1、24分の1等の通信速度を実現している。このとき、ユーザ衛星側からレーザ光が送信されない期間が周期的に挟まれるので、そのままでは受信されるレーザ光の平均強度が2分の1、4分の1、8分の1、24分の1等になってしまい、捕捉追尾用センサが機能しなくなる。そこで、
図4に示すように、ユーザ衛星から、2倍、4倍、8倍、24倍等の強度でレーザ光を送信して、通信速度に依らずに捕捉追尾用センサ配分されるレーザ光の平均強度が同じになるようにする方法が採られている。
【0009】
図5は、この状況を模式的に示している。すなわち、通信速度が遅い100Mbpsの場合であっても、通信相手方を捕捉追尾するために十分な光強度(図中斜線を引いた部分)が必要となるため、全体として必要な光強度は、通信速度が2.5Gbpsのときと同じになり、通信速度を下げても消費電力を低減できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光衛星間通信では、通信速度を低速にするほどユーザ衛星が送信するレーザ光の強度を強くしなければならないことにより、低速の通信速度と引き換えにユーザ衛星が期待する低消費電力化を実現することができない。本発明は、かかる問題点を解決し、通信速度が速いが消費電力が大きい通信モードと、通信速度は遅いが消費電力も小さくできる通信モードのいずれをも利用可能とする光通信システム及び光受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の光通信システムは、
光送信装置と光受信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光通信として、光の強度が第1の強度、光の波長が第1の波長、前記光を変調して通信する速度が第1の通信速度である第1の通信モードと、光の強度が前記第1の強度より小さい第2の強度、光の波長が前記第1の波長と異なる第2の波長、前記光を変調して通信する速度が前記第1の速度より遅い第2の通信速度である第2の通信モードとをサポートする光通信システムであって、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1及び第2の通信モードに対応する復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記捕捉追尾センサ及び前記復調部それぞれに入射させる光分割部と、
を備え、
前記光分割部は、第1の通信モードから第2の通信モードになるときの前記復調部へ配分される光強度の減り方の割合が、第1の通信モードから第2の通信モードになるときの前記捕捉追尾センサへ配分される光強度の減り方(減り方がゼロの場合を含む)の割合よりも大きくなるように、前記光を分割する、
ことを特徴とする。
【0013】
前記復調部は、第1の通信モードに対応する第1の復調機と、第2の通信モードに対応する第2の復調機からなり、
前記光分割部は、第1のビームスプリッタと、第2のビームスプリッタからなり、前記第1のビームスプリッタは、前記光アンテナから光を受け、これを反射又は透過した光を前記捕捉追尾センサに導き、
前記第2のビームスプリッタは、前記捕捉追尾センサに向かう光と異なる光(捕捉追尾センサに向かう光が第1のビームスプリッタで反射された光の場合は第1のビームスプリッタを透過した光、捕捉追尾センサに向かう光が第1のビームスプリッタを透過した光の場合は第1のビームスプリッタから反射された光)を受け、第1の通信モードのときは第1の波長の光のほとんどを第1の復調機へ導き、第2の通信モードのときは第2の波長の光のほとんどを第2の復調機へ導くように、第1及び第2の波長の光に対する透過率及び反射率が異なるように形成することができる。
【0014】
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタを移動させるビームスプリッタ移動手段とを備え、
前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、第1の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように第2の波長の光を反射及び透過し、
前記ビームスプリッタ移動手段は、第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、第2の通信モードのときは、光が第2の領域に入射する位置に前記ビームスプリッタを移動させ、
前記復調部は、第1及び第2の通信モードの第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものとすることができる。
【0015】
前記光通信はDD−PSK方式で行われ、前記復調部は、光電変換部と、入射した光を前記光電変換部へ導く遅延時間の異なる複数の導光媒体と、受信された光を前記複数の導光媒体これら複数の導光媒体のいずれに入射するかを切り替え光スイッチとを含むものとすることができる。
【0016】
前記光分割部は、反射率及び透過率が異なる第1及び第2の領域を有するビームスプリッタと、前記光アンテナからの光を前記第1又は第2の領域のいずれかで受けることができるように前記ビームスプリッタに入射する光の光路を変更する光路移動手段とを備え、
前記復調部及び捕捉追尾センサは、前記ビームスプリッタからの反射光又は透過光が入射されるよう配置され、
前記ビームスプリッタの前記第1の領域は、波長λ1の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が高くなるように第1の波長の光を反射及び透過し、前記第2の領域は、第2の波長の光に対して前記復調部へ配分される光が前記捕捉追尾センサへ配分される光よりも光強度が低くなるように第2の波長の光を反射及び透過し、
前記光路移動手段は、第1の通信モードのときは、光が前記第1の領域に入射するように光路を移動させ、第2の通信モードのときは、光が第2の領域に入射するように光路を移動させ、
前記復調部は、第1及び第2の通信モードの第1及び第2の波長にそれぞれ対応したものとすることができる。
【0017】
前記光送信装置及び光受信装置は、それぞれ異なる衛星に搭載されるものであり、前記光通信は衛星間光通信とすることができる。ただし、衛星間に限らず、例えば地上局と衛星との間の通信、あるいは地上又は海上同士の間の通信にも適用可能である。
【0018】
前記光はレーザ光とすることができる。ただし、レーザ光以外の光を使用することも可能である。
【0019】
上記の課題を解決するために、上記発明をより一般化したものとして、
光送信装置と光受信装置との間で送受信される光によって光通信並びに互いの捕捉追尾を行うとともに、前記光送信装置から送出される光の強度がP1、前記光の波長がλ1、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR1である第1の通信モードと、前記光送信装置から送出される光の強度がP2(P1>P2)、前記光の波長がλ2(λ1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がR2(R1>R2)である第2の通信モードと、・・・前記光送信装置から送出される光の強度がPn(Pn−1>Pn)、前記光の波長がλn(λ1、λ2、・・・λn−1とは異なる)、前記光を変調してデータを送信する送信速度がRn(Rn−1>Rn)である第nの通信モードというn個の通信モードをサポートする光通信システムであって、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から送出された光を受信する光アンテナと、
捕捉追尾センサと、
前記第1乃至第nの通信モードに対応する第1乃至第nの復調部と、
前記光アンテナから光を受け、これを分割して前記捕捉追尾センサ及び前記第1乃至第nの復調部のいずれか入射させる第1乃至第nのビームスプリッタと、
を備え、
第nのビームスプリッタは強度P
i(i=1、・・・、n)のレーザ光のうちPS
iだけ反射し、PD
iだけ透過し、第nのビームスプリッタの波長λ
iに対する反射率がそれぞれほぼPS
i/(PS
i+PD
i)となり、かつ、PS
iが次数iによらずほぼ一定となるように第nのビームスプリッタと波長λ
iを設定し、そして、各波長に対応する第j+1(j=1、・・・、n−1)の復調機に通信(復調)光を導くための第jのビームスプリッタは、波長λ
j+1の光をほぼ全反射し、それより速い通信速度に使用する波長の光をほぼ全透過するように設定することによって、n種類の波長を用いた光通信を可能とし、かつ、通信速度が遅い通信モードほど消費電力を段階的に小さくすることものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態1]
図6は、本発明の実施の一形態に係る装置を示す。この装置は、静止衛星の中に設けられるもので、従来技術として示した
図2の装置に対応する。
図6に示した装置には、第1のビームスプリッタ40及び第2のビームスプリッタ41と、第1の復調機42及び第2の復調機43が設けられている。そして、ある時点では通信速度2.5Gbpsでの通信を行い、別の時点では通信速度100Mbpsでの通信を行う。
【0022】
図6において、(a)は2.5Gbpsの速度で通信する場合、(b)は100Mbpsの速度で通信する場合を示している。通信速度を2.5Gbpsで通信するときのレーザ光の波長をλ
1、通信速度100Mbpsで通信するときのレーザ光の波長をλ
2(λ
1とは異なる)とする。ただし、λ
1、λ
2は、いずれも赤外領域の波長であることが望ましい。復調機42は通信速度2.5Gbpsで通信するときの復調機、復調機43は通信速度100Mbpsで通信するとき復調機である。捕捉追尾センサ24には、捕捉追尾用受光素子及びその周辺回路が含まれる。捕捉追尾センサ24の入力の手前に設けられたビームスプリッタ40は、レーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、光アンテナ20が捉えたレーザ光を2つに分割する。反射されたレーザ光は、捕捉追尾センサ24に入力され、通過したレーザ光は、ビームスプリッタ41に入力される。
【0023】
レーザ光の波長がλ
1である場合(
図6(a))には、ビームスプリッタ40は、入力された強度P
1のレーザ光を、強度PS
1のレーザ光と強度PD
1のレーザ光に分割する。同様に、入力されたレーザ光の波長がλ
2である場合(
図6(b))には、ビームスプリッタ40は、入力された強度P
2のレーザ光を、強度PS
2のレーザ光と強度PD
2のレーザ光に分割する。
【0024】
ビームスプリッタ41は、レーザ光の波長がλ
1のとき(
図6(a))はそのほとんどを透過し、レーザ光の波長がλ
2のとき(
図6(b))のときはそのほとんどを反射するよう作成されている。その結果、レーザ光の波長がλ
1のときは、レーザ光のほとんどは復調機41に入力され、レーザ光の波長がλ
2のときは、レーザ光のほとんどは復調機43に入力される。このようなビームスプリッタ40及び41は、ビームスプリッタの透過/反射比を適切に設計することによって実現可能である。
【0025】
図6に示した装置を光衛星間通信システムに用いれば、
P
1=PS
1+PD
1
及び
P
2=PS
2+PD
2
を満足する範囲で、レーザ光全体の強度を大幅に低下させ、かつ、捕捉追尾センサに入力されるレーザ光の強度をほとんど変えない(PS
1≒PS
2)ようにすることが可能である。すなわち、ユーザ衛星から送信するレーザ光全体の強度を、通信速度100Mbpsで通信するのに十分な範囲で低く抑えても、静止衛星の捕捉追尾センサに十分なレーザ光を入力できる。
【0026】
図7は、このことを模式的に示した図であり、従来の技術について示した
図5に対応する。例えば
図7左側のように通信速度が2.5Gbpsのときの消費電力が合計で6だとして、
図7右側のように捕捉追尾に必要な光強度をほぼそのままにしつつ100Mbpsの通信が可能である範囲で光強度を下げれば、全体の消費電力を1.2、すなわち5分の1まで低減することができる。これをレーザ光強度で見れば、例えば2.5Wから0.5Wに低減できる。このとき電気からレーザ光への電極変換効率を10%と仮定すれば、消費電力は25Wから5Wへと大幅に低減できる。
【0027】
これにより、消費電力が多いことを許容する代わりに高速の通信速度を要求するユーザ衛星のニーズと、極力低消費電力を要求する代わりに比較的低速の通信速度でよいといったユーザ衛星のニーズに、1機の静止衛星で適切に対応することができる。特に、電力リソースの厳しい小型衛星であっても光衛星間通信が可能となる。
【0028】
なお、
図6に示したビームスプリッタ40、41の反射率及び透過率、捕捉追尾センサ24及び復調機42、43の配置は一例であり、例えば捕捉追尾センサ24を
図6の一番下に配置し、ビームスプリッタ40、41を透過したレーザ光が捕捉追尾センサ24に入力されるように変形することも可能である。
【0029】
図8は、低軌道のユーザ衛星から静止衛星へ通信速度が2.5Gbpsでデータが伝送される場合の概要を示し、
図9は、別の低軌道のユーザ衛星から静止衛星へ通信速度が100Mbpsでデータが伝送される場合の概要を示している。
【0030】
図8に示したユーザ低軌道衛星1に搭載された送信機には、レーザダイオード(LD)30
1、光変調機31
1、光増幅器32
1が含まれる。レーザダイオード30
1から発せられた波長λ
1のレーザ光は、光変調器において、送信データとして送信機の外部から入力される2.5Gbpsの電気信号によって変調される。変調されたレーザ光は、光増幅器32
1によって2.5Wにまで増幅され、必要に応じて遅延線33
1を通り、内部光学系34
1を経て、送信用光アンテナ35
1から宇宙空間に送出される。
【0031】
このとき、内部光学系34
1と光アンテナ35
1によって粗捕捉追尾系(CPM)で通信相手先の衛星を指向し、内部光学系34
1の中の精捕捉追尾系(FRM)(
図8には不図示)でレーザ光の送出方向を微調整する。送出された波長λ
1のレーザ光は、約40,000kmの宇宙空間を伝搬し、静止衛星3の受信用光アンテナ20によって受信される。この間に、送信アンテナ利得、伝搬による減衰、受信アンテナ利得を合算すると、静止衛星に届くレーザ光強度は1億分の1(10
-8倍)程度に減少する。
【0032】
静止衛星3の光アンテナにレーザ光が入射すると、受信されたレーザ光は内部光学系のビームスプリッタ40で1/6(16.7%)が反射され、捕捉追尾センサ24に入射する。この捕捉追尾センサ24に入射したレーザ光の角度に基づいてユーザ低軌道衛星1の位置を正確に検知し、粗捕捉追尾機構(CPM)(図示せず)及び精捕捉追尾機構(FPM)で受信レーザ光を正確に復調機に導く。
【0033】
一方、ビームスプリッタ40を透過した残りの5/6(83.3%)のレーザ光は、次にビームスプリッタ41を全透過し、復調機42に入射する。ビームスプリッタ41を透過する際の損失は存在するものの、無視できるレベルである。復調機42は、入射したレーザ光を復調して、2.5Gbpsのデータを取り出す。
【0034】
図9のユーザ低軌道衛星2において
図8のユーザ低軌道衛星1の場合と異なるのは、レーザダイオード(LD)30
2から発せられる波長がλ
2であること、送信機の外部から入力される電気信号が100Mbpsであること、レーザ光が光増幅器32
2で増幅されるのは0.5Wまでであることである。光アンテナ352から送出された波長λ
2レーザ光は、約40,000kmの宇宙空間を伝搬し、静止衛星3の受信アンテナによって受信される。この間に、2.5Gbpsの場合と同様に、レーザ光強度は1億分の1(10
-8倍)程度に減少する。
【0035】
図9に示した静止衛星3では、光アンテナ20にレーザ光が入射すると、受信されたレーザ光は内部光学系のビームスプリッタ40において5/6(83.3%)が反射され、捕捉追尾センサ24に入射する。この捕捉追尾センサ24に入射した角度に基づいてユーザ低軌道衛星の位置を正確に検知し、粗捕捉追尾機構(CPM)及び精捕捉追尾機構(FPM)で受信レーザ光を正確に復調機に導く。
【0036】
一方、ビームスプリッタ40を透過した残りの1/6(16.7%)のレーザ光は、ビームスプリッタ41において全反射され、復調機43に入射する。ビームスプリッタ41で反射される際の損失は存在するものの、無視できるレベルであることは、
図8の場合と同様である。復調機43は、入射したレーザ光を復調し、100Mbpsのデータを取り出す。
【0037】
ここで、
図8の場合(波長λ
1)に捕捉追尾センサ24に到達するレーザ光の強度を概算すると、
2.5W×10
-8×(1/6)=4.2×10
-9W
となる。一方、
図9の場合(波長λ
2)に捕捉追尾センサ24に到達するレーザ光の強度は、
0.5W×10
-8×(5/6)=4.2×
-9W
となる。すなわち、どちらの場合も捕捉追尾センサに到達するレーザ光の強度はほぼ同じである。よって、
図8のユーザ低軌道衛星1から送出された出力2.5Wのレーザ光(通信速度2.5Gbps)でも、
図9のユーザ低軌道衛星2から送出された出力0.5Wのレーザ光(通信速度100Mbps)でも、静止衛星3ではほぼ同じ性能で捕捉追尾動作を行うことができる。
【0038】
一方、
図9の場合の復調機43に到達するレーザ光は、
図8の場合の復調機42に比べて約25分の1(0.5×(1/6):2.5×(5/6))の強度である。しかしながら通信速度も、
図8の場合の2.5Gbpsに対して、
図9の場合には100Mbpsと25分の1になるので、問題なく復調することができる。
【0039】
前述のように、波長λ
1及びλ
2をいずれも赤外領域とし、両者に10nm程度の差をつけるようにすれば、既存の誘電体多層膜技術を用いることによって、本実施形態に示すように動作するビームスプリッタ40及び41を作成することが可能である。
【0040】
本実施形態では、
図8に示した2.5Gbpsでの通信時には、2.5Wの送信レーザ光強度が必要であり、そのために光増幅器の電気からレーザへの変換効率を10%とすると、25Wの電力を必要とする。一方、
図9に示した100Mbpsでの通信時には、0.5Wの送信レーザ光強度が必要であり、そのために光増幅器は5Wの電力を必要とする。よって、
図9のユーザ低軌道衛星2では、
図8のユーザ低軌道衛星1に比べて、通信速度を下げることで、消費電力を20W低減することが可能となる。
【0041】
ただし、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例である。上記のように消費電力を低減するために重要な点は、2.5Gbpsでの通信モードから、100Mbpsでの通信モードになるときに復調機へ配分される光強度の減り方(復調機42に配分される光の光強度から復調機43に配分される光の光強度への減り方)の割合が、捕捉追尾センサ24へ配分される光強度の減り方(減り方がゼロの場合を含む)の割合よりも大きくなるようにするということである。
【0042】
[実施形態2]
図10は、4種類の通信速度(4つの通信モード)に対応するための装置を示しており、4種類の通信速度に対応するために異なる4つの波長を利用している。これらの4つの波長を受信側で分割するために4つのビームスプリッタ50
1、50
2、50
3、50
4を利用し、さらに4つの波長に対応する4つの復調機51
1、51
2、51
3、51
4を用いる。波長λ
1の受信レーザ光のうちビームスプリッタ50
4で反射されるレーザ光強度をPS
1、ビームスプリッタ50
4を透過するレーザ光強度をPD
1とすると、ビームスプリッタ50
4の波長λ
1に対する反射率は、
PS
1/(PS
1+PD
1)
となる。同様に波長λ
2、λ
3、λ
4に対する反射率を、それぞれ
PS
2/(PS
2+PD
2)
PS
3/(PS3+PD
3)
PS
4/(PS
4+PD
4)
と表すことができる。
【0043】
ここで、ビームスプリッタ50
4を、低い通信速度で使用する波長ほど高い反射率となるようにし、かつ、PS
1、PS
2、PS
3、PS
4が波長によらずほぼ同じになるように設定する。さらに、ビームスプリッタ50
3はλ
4をほぼ全反射し、λ
1、λ
2、λ
3をほぼ全透過し、ビームスプリッタ50
2はλ
3をほぼ全反射し、λ
1、λ
2をほぼ全透過し、ビームスプリッタ50
1はλ
2をほぼ全反射し、λ
1をほぼ全透過するように設定する。このようにすることによって、通信速度が遅い通信モードほど消費電力を段階的に小さくすることが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態をより一般化することができる。すなわち、使用する波長の数(通信モードの数)をn(nは3以上の整数)、簡単のめたに長い波長ほど遅い通信速度に使うこととし(必須事項ではない)、ビームスプリッタ50
nは強度P
i(i=1、・・・、n)のレーザ光のうちPS
iだけ反射し、PD
iだけ透過し、ビームスプリッタ50
nの波長λ
i(波長λ
iは次数iが大きくなるほど長波長)に対する反射率がそれぞれほぼPS
i/(PS
i+PD
i)となり、かつ、PS
iが次数iによらずほぼ一定となるようにビームスプリッタ50
nと波長λ
iを設定する。そして、各波長に対応する復調機51
j+1(j=1、・・・、n−1)に通信(復調)光を導くためのビームスプリッタ50
jは、波長λ
j+1をほぼ全反射し、それより短い波長をほぼ全透過するように設定する。このようにすることによって、n種類の波長を用いた光通信が可能となり、かつ、通信速度が遅い通信モードほど消費電力を段階的に小さくすることが可能となる。
【0045】
[実施形態3]
図11に示した実施形態は、複数の通信速度に対応するために、単一のビームスプリッタ60に複数の領域60
1、60
2が設けられ、これらの領域における特定波長のレーザ光に対する透過率及び反射率が異なるように設計されている。そして、光路が固定されたレーザ光がこれら複数の領域を通過するように、ビームスプリッタ60を移動させる駆動機構(図示せず)が設けられている。駆動機構は、小型モータを含む既存の技術を使って容易に実現できる。
【0046】
図11に示した実施形態のビームスプリッタ60は、特定の波長に対して、ビームスプリッタ60を右下に動かしてレーザ光が領域60
1に入射すると透過率が高くなる。一方、ビームスプリッタ60を左上に動かしてレーザ光が領域60
2に入射すると反射率が高くなる。すなわち、右下に動かすと、レーザ光の捕捉追尾センサ24への配分が少なくなり、
図6(a)のλ
1と同じ状況になる。また、ビームスプリッタ60を左上に動かすと、レーザ光の捕捉追尾センサ24への配分が多くなり、
図6(b)のλ
2と同じ状況になる。本実施例では、波長を変えずに2.5Gbpsと100Mbpsの両方の通信速度で捕捉追尾センサ24と復調機への配分比率を変更することが可能となる。当然、通信速度が2.5Gbpsのときに比べて通信速度が100Mbpsのときは消費電力を少なく抑えられ、かつ十分な光強度で捕捉追尾を実行することができる。
【0047】
図12は、低軌道のユーザ衛星から静止衛星へ通信速度2.5Gbpsでデータが伝送される場合の概要を示しており、
図13は、別の低軌道のユーザ衛星から静止衛星へ通信速度が100Mbpsでデータが伝送される場合の概要を示している。静止衛星では、
図11に示した、複数の領域60
1、60
2を有する単一のビームスプリッタ60を用いている。なお、
図12及び
図13において、
図8及び
図9と同一構成部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
ビームスプリッタ60は、一例として特定の波長に対して第1の領域60
1の反射率が16.7%、透過率が83.3%とし、第2の領域60
2の反射率が83.3%、透過率が16.7%とし、第1の領域を高速通信用、第2の領域を低速通信用に使用することができる。復調機61は、1台で複数の通信速度に対応可能なものである。これについては、後述の実施形態4(
図14及び
図15)において具体的な構成例を示す。
【0049】
[実施形態4]
図14は、DD−DPSK方式を用いる場合に使用可能な復調機の例を示した図である。復調において遅延検波を行うDD−DPSK方式の場合、ビット長の異なる複数の通信速度を切り替えるためには、導光媒体(例えば、光ファイバや基板上に形成されたガラスなど)で構成される1ビット遅延線の切り替えが必要となる。
図14に示した例では、長さ、すなわち遅延時間が異なる2つの遅延線部62
1及び62
2と、光スイッチ64が設けられている。復調機に入った受信レーザ光は低雑音光増幅器63によって増幅された後、光スイッチ64によって遅延線部62
1又は遅延線部62
2のいずれかを通過するよう切り替えられる。なお、
図14に示した例では、光スイッチ64はレーザ光が遅延線62
2側に導かれる位置にあるが、光スイッチ64の接続が逆になっていればレーザ光は遅延線62
1側に導かれる。遅延線部62
1又は62
2を通ったレーザ光は、いずれも単一のフォトダイオード65に入射され、光電変換されて電気信号が取り出される。
【0050】
図15は、3つの通信速度に対応するために、3つの遅延線部62
1、62
2、62
3及び2つの光スイッチ64
1及び64
2を設けた例を示している。
図15の例では、光スイッチ64
1及び64
2は、レーザ光が遅延線62
2側に導かれる位置にある。そして、光スイッチ64
1、64
2の切り替えの組み合わせで、レーザ光を遅延線部62
1及び62
3にも通すことができる。同様にして、遅延線部の数をさらに増やして、より多くの通信速度に対応できることは明らかである。
図14又は15に示した回路を
図11〜13に示した復調機に組み込むことによって、DD−DPSK方式において単一の復調機で複数の通信速度に対応することが可能となる。
【0051】
捕捉追尾センサへのレーザ光と復調機へのレーザ光との配分が常に一定である従来技術とは異なり、受信側の光通信装置内で、場所により反射率及び透過率が異なるビームスプリッタとその駆動装置を付加することで、通信速度に応じて捕捉追尾センサへのレーザ光と復調機へのレーザ光の分配を変更し、復調用のレーザ光の強度の、通信速度に応じた低減が実現できる。このことから、通信速度が低い場合は受信側の平均受信レーザ光強度の低減が可能となり、送信側においては、送信レーザ光強度を削減することができることから電力消費を低減することができる。前述の
図7に示したように、送信レーザ光強度を5分の1(例えば2.5Wから0.5W)に低減できれば、電気からレーザ光への変更効率を10%とすると、低軌道衛星の光増幅器の消費電力が25Wから5Wとなり、20Wの低減が可能となる。
【0052】
[実施形態5]
図16に示した実施形態は、
図11に示した実施形態と同様に、特定波長のレーザ光に対して透過率及び反射率が異なる複数の領域60
1、60
2を有する単一のビームスプリッタ60を用いる。ただし、
図11ではビームスプリッタ60を駆動手段で移動させたが、本実施形態ではビームスプリッタ60は固定し、精捕捉追尾機構(FPM)21を用いて僅かに光路をずらすことで、ビームスプリッタ60に入射する位置が領域60
1、60
2のいずれかとなるようにする。領域60
1、60
2は、前述のように特定波長のレーザ光に対する透過率及び反射率が異なるように設計されている。
【0053】
本実施形態の場合には、2つの捕捉追尾センサ70
1、70
2と、2つの復調機71
1、71
2が必要となるが、ビームスプリッタ60を移動させる駆動手段は不要となる。宇宙用途の装置の設計では冗長系を持たせることができない駆動部を極力避けることが要請されることから、本実施形態のように駆動手段を省くことの利点は大きい。
【0054】
[実施形態6]
図17は、変調方式として、PSKホモダイン検波方式又は強度変調直接検出(IM/DD)方式を用いた場合の実施形態を示している。これらの方式では1台の復調機を複数のフロック速度に対応させることが可能となるので、
図17の実施形態では1台の復調機75で2.5Gbps(波長λ
1)、100Mbps(波長λ
2)という複数の通信速度に対応させている。波長λ
1及びλ
2は、赤外領域とすることが望ましい。この場合ビームスプリッタ76は、波長λ
1のレーザ光に対する透過率が83.3%、反射率が16.7%、波長λ
2のレーザ光に対する反射率が16.7%、透過率が83.3%となるように設定されている。そして、いずれの場合も捕捉追尾センサ77に入射されるレーザ光強度がほぼ同じになるようにすると、
図7に模式的に示したように、通信速度100Mbps(波長λ
2)での通信時の使用するレーザ光の強度を、通信速度2.5Gbps(波長λ
1)での通信時に使用するレーザ光の強度の5分の1程度に低減することが可能となり、100Mbpsでの通信時の消費電力を大幅に低減することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
これまでは、衛星間通信について説明したが、本発明は、衛星間に限らず、例えば地上局と衛星との間の通信、あるいは地上又は海上同士の間の通信にも適用可能である。さらに、これまでは光としてレーザ光を用いる場合について説明したが、例えば十分に短い距離での通信の場合は、レーザ光ではなく通常の光を用いる場合にも適用可能である。