特許第6528055号(P6528055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6528055
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20190531BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20190531BHJP
   B64C 3/56 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   B64C39/02
   B64C27/08
   B64C3/56
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-229728(P2018-229728)
(22)【出願日】2018年12月7日
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-84456(P2018-84456)
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715001390
【氏名又は名称】株式会社プロドローン
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 友喜
(72)【発明者】
【氏名】山口 明彦
(72)【発明者】
【氏名】国井 伸也
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/183551(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104494819(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0138732(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0158328(US,A1)
【文献】 特表2017−516709(JP,A)
【文献】 特開2018−4367(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0327307(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0183088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 3/56
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転翼を有するロータと、
前記ロータを支持するアームと、を備え、
前記アームの先端部は、上下に並べて配置された同方向に延びる2本の棒体により構成され、
前記2本の棒体の長手方向の寸法は前記水平回転翼の直径よりも短く、
前記各棒体は、それぞれ別の前記ロータを支持することを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
前記各棒体が支持する前記ロータは、互いの回転面が向き合うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記2本の棒体の一方にはロータガードの一端が、他方には該ロータガードの他端が接続され、
前記ロータガードは、前記水平回転翼を上下方向に囲むように配置されることを特徴とする請求項2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記ロータガードは、前記アームとの接続部を中心として水平方向に旋回可能であることを特徴とする請求項3に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記ロータガードは細長い線状の枠体であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記アームには複数の前記ロータガードが取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の無人航空機。
【請求項7】
前記アームは、その基端部または中ほどから、水平方向に旋回可能であることを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項4に記載の無人航空機。
【請求項8】
前記水平回転翼は、ブレードを時計回りまたは反時計回りに折り曲げて保管可能な折り畳み式プロペラであることを特徴とする請求項4または請求項7に記載の無人航空機。
【請求項9】
複数の前記アームを備え、
前記各アームの基端部およびその近傍部は1本の棒体として構成され、
前記複数のアームは、これらアームをすべて同じ方向に水平旋回させて折り畳んだときに、前記各アームの前記2本の棒体の間に、隣接する他の前記アームの基端部またはその近傍部が収まる位置関係にあることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無人航空機。
【請求項10】
前記アームの基端部は1本の棒体により構成され、
前記アームの前記1本の棒体と前記2本の棒体とは、基端側から先端側に向かって二股に分岐した連結部材に接続され、
前記連結部材の内部には、前記ロータが有するブラシレスモータの駆動回路が収容されていることを特徴とする請求項1に記載の無人航空機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無人航空機技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用無人ヘリコプターに代表される小型の無人航空機は、機体が高価で入手困難なうえ、安定して飛行させるためには操作に熟練が必要とされるものであった。しかし近年、無人航空機の姿勢制御や自律飛行に用いられるセンサ類およびソフトウェアの改良が大きく進み、これにより無人航空機の操作性が著しく向上するとともに、高性能な機体を安価に入手できるようになった。こうした背景から現在、特に小型のマルチコプターについては、趣味目的だけでなく、広範な産業分野における種々のミッションへの応用が試行されている。
【0003】
下記特許文献1および2には、ロータの全長を覆うことでロータガードとして作用するアームやフレームを備えるマルチコプターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8794566(B2)号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/229534(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なマルチコプターでは、複数のアームが機体の中心から放射状に延び、それらアームの先端にロータが配置される構造が多く採用されている。これらアームやロータは機体の水平寸法の大半を占めており、運搬時および保管時のスペース効率を下げる要因となっている。特に、多数のロータを同一水平面上に並べる構成では、プロペラ同士が接触しないようにアームを長くとる必要があり、機体の水平寸法が大きくなりやすい。その他、アームに装着されるロータガードもマルチコプターのスペース効率を下げる要因となる。特に、上記特許文献1および2のマルチコプターのようにアームやフレームでロータの全長を覆う場合、機体の水平寸法が著しく増大し、スペース効率の問題がより深刻なものとなる。一方、マルチコプターを運搬・保管する都度アームやロータガードを取り外したり機体を分解したりすることは煩雑であり、飛行時の組立てミスを招くおそれもある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、スペース効率および可搬性のよい無人航空機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の無人航空機は、水平回転翼を有するロータと、前記ロータを支持するアームと、を備え、前記アームの先端部は、上下に並べて配置された同方向に延びる2本の棒体により構成され、前記2本の棒体の長手方向の寸法は前記水平回転翼の直径よりも短く、前記各棒体は、それぞれ別の前記ロータを支持することを特徴とする。
【0008】
例えばオクタコプターのように多数のロータを備える無人航空機では、機体の水平寸法を小さくするために、ロータを二重反転プロペラにしてアームの本数を減らすことがある。しかし、1本のアームの上下面にロータを配置する場合、これらロータの距離が近くなることでロータ1基あたりの推力効率が下がるという課題がある。本発明では、上下に配置されたロータが別々の棒体に配置されることで、1本のアームの上下面にロータを配置する構成よりもロータの距離を離して配置することができる。また、本発明の無人航空機のロータと同数のロータが同一水平面上に配置される構成に比べ、機体を平面視したときのアームの本数を半分に抑えることができる。これにより、ロータの推力効率の低下を軽減しつつ、機体の水平寸法を縮小することが可能となる。
【0009】
そして、本発明の無人航空機は、上記特許文献1および2のマルチコプターとは異なり、ロータを支持する2本の棒体が水平回転翼の直径よりも短い。本発明では、アーム(2本の棒体)にはロータガードのようなロータの保護機能をあえてもたせず、ロータの支持とロータの保護とを分離している。これにより機体の水平寸法の肥大化を避けるとともに、ロータの保護が必要でないときにこれを省略することを容易にしている。
【0010】
また、前記各棒体が支持する前記ロータは、互いの回転面が向き合うように配置されることが好ましい。
【0011】
アームの先端部が2本の棒体で構成されることにより、これら2本の棒体の内側の面(2本の棒体の互いに向き合う側の面)にロータを配置すること、つまり、各棒体に支持されるロータをその回転面が互いに向き合うにように配置することができる。これにより、2本の棒体の外側の面には他の部材や装置を配置可能なスペースが生まれる。
【0012】
このとき、前記2本の棒体の一方にはロータガードの一端が、他方には該ロータガードの他端が接続され、前記ロータガードは、前記水平回転翼を上下方向に囲むように配置される構成としてもよい。
【0013】
2本の棒体に支持されるロータをその回転面が互いに向き合うにように配置し、これら棒体にロータガードの端部を接続することで、両ロータの水平回転翼を一のロータガードで上下方向に囲むことができる。
【0014】
また、前記ロータガードは、前記アームとの接続部を中心として水平方向に旋回可能であることが好ましい。
【0015】
ロータガードを水平方向に旋回させ、アーム(2本の棒体)の側面に沿うようにロータガードを折り畳むことにより、ロータガードを取り外すことなく機体の水平寸法を縮小することができる。
【0016】
このとき、前記ロータガードは細長い線状の枠体であることが好ましく、また、前記アームには複数の前記ロータガードが取り付けられることが好ましい。
【0017】
ロータガードを細長い線状の枠体とすることでロータガードを軽量化することができる。そして各アームにこれを複数備えることで、無人航空機の使用環境に応じてロータガードの安全性能を調節することが可能となる。例えば、プロペラの保護のみを目的とする場合には、周辺物の主な形状に対して最も効率的な数のロータガードを設ければよく、不測の事態における通行人等の安全の確保するためにはロータガードの死角を減らすように適宜その数を増やせばよい。
【0018】
また、前記アームは、その基端部または中ほどから、水平方向に旋回可能であることが好ましい。
【0019】
アームが水平方向に折り曲げ可能であることにより、アームを都度取り外すことなく無人航空機をコンパクトに運搬・保管することが可能となる。特に、ロータガードも折り畳み可能であれば、ロータガードを取り外す手間も省くことができる。特に、ロータが互いの回転面を向き合わせて配置されているときには、アーム折り畳み後の機体の垂直寸法も小さく抑えることができる。
【0020】
このとき、前記水平回転翼は、ブレードを時計回りまたは反時計回りに折り曲げて保管可能な折り畳み式プロペラであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の無人航空機は、複数の前記アームを備え、前記各アームの基端部およびその近傍部は1本の棒体として構成され、前記複数のアームは、これらアームをすべて同じ方向に水平旋回させて折り畳んだときに、前記各アームの前記2本の棒体の間に、隣接する他の前記アームの基端部またはその近傍部が収まる位置関係にあることが好ましい。
【0022】
アームの基端部を1本の棒体で構成し、すべてのアームを折り畳んだときに、隣接する一方のアームの基端部が他方のアームの2本の棒体の間に収まるように各アームを配置することにより、機体をよりコンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0023】
また、前記アームの基端部は1本の棒体により構成され、前記アームの前記1本の棒体と前記2本の棒体とは、基端側から先端側に向かって二股に分岐した連結部材に接続され、前記連結部材の内部には、前記ロータが有するブラシレスモータの駆動回路が収容されていることが好ましい。
【0024】
ブラシレスモータの駆動回路が生じさせる高周波ノイズは他のセンサ部品の検出精度に影響を及ぼすことがある。連結部材内に駆動回路を配置することで、機体の中心部から駆動回路を引き離すことができ、駆動回路のノイズによる影響を軽減することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の無人航空機によれば、機体のスペース効率および可搬性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】マルチコプターの飛行時の状態を示す外観斜視図である。
図2】マルチコプターの運搬時および保管時の状態を示す外観斜視図である。
図3】展開されたアームの側面図、および折り畳まれたアームの側面図である。
図4図3(a)および図3(b)に示されるアームの平面図である
図5図3(a)の側面視断面図である。
図6】マルチコプターの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下に示す実施形態は、複数のロータを備える無人航空機であるマルチコプター10についての例である。なお、以下の説明における「上」および「下」、「垂直」とは、図1および図2に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向であって、Z1側を上とする。また、「水平(方向)」とは同座標軸表示におけるX−Y平面(方向)をいう。マルチコプター10について「周方向」とは、マルチコプター10を平面視したときの時計回りまたは反時計回り方向をいう。
【0028】
[機体概要]
図1および図2は、本実施形態(以下、「本例」ともいう。)にかかるマルチコプター10の外観を示す斜視図である。図1は、マルチコプター10の飛行時の状態を示す図である。図2は、マルチコプター10の運搬時および保管時の状態を示す図である。
【0029】
マルチコプター10は、水平回転翼であるプロペラ42を有するロータR、およびロータRを支持するアーム70を備えている。各アーム70の基端部(根元)は、シェルカバー19に覆われた図示しない骨格部であるセンターフレームに固定されている。本例ではセンターフレームに4本のアーム70が接続されており、これらアーム70は、マルチコプター10の周方向に沿って等間隔に配置され、機体の中心から放射状に延びている。
【0030】
各アーム70の先端部は上下に並べて配置された同方向に延びる2本の棒体72,73により構成されている。2本の棒体72,73はそれぞれ別のロータRを支持しており、これらロータRは互いの回転面が向き合うように配置されている。
【0031】
棒体72,73の先端には、細長い線状の枠体であるロータガード78が2本設けられている。ロータガード78は、その一端が上側の棒体72の先端に、他端が下側の棒体73の先端に接続されており、プロペラ42を上下方向に囲むように展開される。
【0032】
本例のセンターフレームには、アーム70の他、2台のバッテリー60と、レーザスキャナ90が固定されている。また、シェルカバー19の内側にはマルチコプター10の制御装置やセンサ部品等が収容されている。なお、本例のマルチコプター10は測量用の機体例であるためレーザスキャナ90が搭載されているが、本発明の無人航空機の用途は特に制限されない。つまりレーザスキャナ90は省略してもよい。
【0033】
図2に示されるように、本例のマルチコプター10は、アーム70、ロータガード78、およびプロペラ42の全てが折り畳み可能であり、マルチコプター10の運搬時・保管時には、これらを取り外すことなく機体の水平寸法を縮小することが可能とされている。
【0034】
[アームの構成]
以下、図3から図5を参照してアーム70の構造について説明する。図3(a)は展開されたアーム70の側面図である。図3(b)は折り畳まれたアーム70の側面図である。図4は、図3(a)および図3(b)に示されるアーム70の平面図である。図5は、図3(a)の側面視断面図である。なお、以下の説明では、マルチコプター10が有する4本のアーム70のうちの1本を例にその構造を述べるが、後述するセンサハウジング749に保持されるセンサの種類を除き、他のアーム70についてもその基本的な構造は同一である。また、以下の説明において、「基端側」とは図3から図5に描かれた矢印に平行な方向のうち矢示b側をいい、「基端部」とは基端側の端部をいう。同様に、「先端側」とは矢示t側をいい、「先端部」とは先端側の端部をいう。
【0035】
(構成概要)
本例のアーム70は、基幹部70a、関節部70b、およびフォーク部70cを有している。基幹部70aとは、アーム70の基端部を含む1本の棒体71により構成される部分である。フォーク部70cとは、アーム70の先端側に配置された2本の棒体72,73、および、これら棒体72,73と棒体71とを連結する連結部材74を含む部分である。関節部70bとは、基幹部70aとフォーク部70cとの接続部であり、フォーク部70cを水平方向に折り曲げ可能とするジョイント部である。なお、これら基幹部70a、関節部70b、およびフォーク部70cは便宜上の括りであり、その境界を厳密に切り分ける必要はない。基幹部70aはセンターフレームに固定された部分、フォーク部70cは二股に分岐した部分、関節部70bはこれらのジョイント部、程度の意味である。
【0036】
(基幹部および関節部)
基幹部70aを構成する棒体71は、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製の円筒パイプ材である。棒体71は、その基端部が上述のセンターフレームに移動不能に固定されており、その先端部はアダプタ部材741を介して連結部材74に接続されている。本例ではこのアダプタ部材741と、後述する基幹側接続部74aとが関節部70bを構成している。
【0037】
(フォーク部)
上でも述べたように、本例のフォーク部70cは、アーム70の先端部を構成する2本の棒体72,73と連結部材74とを有している。
【0038】
フォーク部70cの一部である連結部材74は、CFRP製の平板材と樹脂製の板状部材とを組み立てて形成された継手部である。
【0039】
連結部材74は、基幹側接続部74aと分岐側接続部74bとを有している。基幹側接続部74aは棒体71が接続される部分であり、板面を上下に向けたCFRP製の2枚の平板材が上下に平行に並べられることで構成されている。分岐側接続部74bは棒体72,73が接続される部分であり、基端側から先端側に向かって上下に二股に分岐し、側面視略U字型に形成されている。分岐側接続部74bの側面にはCFRP製の平板材が使用され、分岐側接続部74bの上下面には樹脂製の板状部材が使用されている。分岐側接続部74bの先端には、棒体72,73が接続されるアダプタ部材742,743(図5参照)が固定されている。
【0040】
分岐側接続部74bの側面には、分岐側接続部74bから下方に延びる脚部であるランディングギア79が結合されている。ランディングギア79は、CFRP製の平板材を角管形状に組み立てることで形成されている。ランディングギア79の下端には、ランディングギア79の他の部位よりも下方に張り出すことで地面や床面との衝突を緩和し、ランディングギア79の欠けや割れを防止する、ゴム製の当りブロック791が設けられている。
【0041】
フォーク部70cの一部である2本の棒体72,73は、上下に並べて配置された同方向に延びる棒体であり、主にCRFP製の円筒パイプ材により構成されている。各棒体72,73のパイプ材の先端には、クランプ761でパイプ材に結合された樹脂製の平板部材であるモータマウント76が取り付けられている。モータマウント76にはロータRがねじ固定されている。フォーク部70cの棒体72,73はそれぞれ別のロータRを支持しており、これらロータRは、互いの回転面が向き合うように配置されている。
【0042】
本例のマルチコプター10では、上下に配置されたロータRが別々の棒体72,73に支持されているため、例えば1本のアームの上下面にロータを配置する構成よりも、これらロータRの距離を離して配置することができる。また、マルチコプター10のロータRと同数のロータが同一水平面上に配置される構成に比べ、機体を平面視したときのアームの本数が半分に抑えられている。これにより、ロータRの1基あたりの推力効率の低下を軽減しつつ、マルチコプター10の水平寸法を縮小することが可能とされている。
【0043】
なお、上述の効果は、棒体72,73が支持する両方のロータRの回転面を上に向けた場合でも得ることができる。一方、本例ではこれらロータRが2本の棒体72,73の内側の面(2本の棒体72,73の互いに向き合う側の面)に支持され、その回転面が互いに向き合うように配置されていることで、アーム70を折り畳んだときに機体の垂直寸法を小さく抑えることが可能とされている。
【0044】
また本例のマルチコプター10では、アーム70がすべて折り畳まれたときに、互いに隣接する一方のアーム70の基幹部70aおよび関節部70b(基幹側接続部74a)が、他方のアーム70のフォーク部70cの間に配置される(図2参照)
【0045】
アーム70の基端側の部分を1本の棒体(基幹部70a,基幹側接続部74a)として構成し、隣接するアーム70のフォーク部70cを構成する2本の棒体との上下方向における位置を異ならせることにより、折り畳まれたアーム70同士の干渉が防止され、機体をよりコンパクトに折り畳むことが可能とされている。
【0046】
また、図5に示されるように、連結部材74の分岐側接続部74bの内部には、ロータRが有するブラシレスモータ41(以下、単に「モータ41」という。)の駆動回路であるESC411(Electric Speed Controller)が収容されている。ESC411が生じさせる高周波ノイズは他のセンサ部品の検出精度に影響を及ぼすことがある。本例のように連結部材74の中にESC411が配置されることで、センターフレームに搭載されたセンサ部品から離れた位置にESC411を配置することができ、ESC411のノイズによる影響が軽減されている。
【0047】
また、分岐側接続部74bの下面を構成する板状部材には、オプティカルフローセンサ33を保持するセンサハウジング749が一体成形されている。本例のマルチコプター10では、機体の周方向において互いに点対称となる位置にある一対のアーム70は、そのセンサハウジング749にオプティカルフローセンサ33が、他の一対のアーム70のセンサハウジング749にはレーザ測距センサ35が保持されている。なお、センサハウジング749に収容するセンサの種類は任意であり特に制限されない。本例の分岐側接続部74bの上下面は樹脂製の板状部材であり形状の自由度が高い。分岐側接続部74bの上下面における任意の位置にセンサハウジングを設け、そこに任意のセンサを配置することにより、センサの取付け位置の自由度が高められるとともに、センサを用いた機能拡張の可能性が広げられる。さらには、分岐側接続部74bの上下面に設けられるものはセンサハウジングには限られず、例えばパラシュート装置の接続部等であってもよい。
【0048】
このことは、樹脂部材であるモータマウント76についても同様である。モータマウント76の上下面のうち、ロータRを支持する側の反対側の面には任意の用途を持たせることが可能である。
【0049】
なお、本例のマルチコプター10は、アーム70に連結部材74を使用することで連結部材74に付随する追加的な性能を得ているが、連結部材74は本発明の無人航空機の必須の要素ではなく、例えば2本の棒体72,73の基端部がセンターフレームに直接固定される構成とすることもできる。
【0050】
(ロータガード)
ロータガード78は、CFRP製の小径のパイプ材を継ぎ合わせて形成された枠体である。棒体72,73の先端には、ロータガード78を支持するハブ部789が設けられている。ロータガード78は、その一端が上側の棒体72に、他端が下側の棒体73に接続されており、棒体72,73のロータR(プロペラ42)を上下方向に囲むように展開される。
【0051】
本例のマルチコプター10では、アーム70の先端部が2本の棒体72,73で構成されており、これら2本の棒体72,73の内側の面(2本の棒体72,73の互いに向き合う側の面)にそれぞれロータRが配置されている。これに加え、ロータガード78の端部がこれら棒体72,73に接続されることにより、両ロータRのプロペラ42を一のロータガード78で上下方向に囲むことが可能とされている。
【0052】
また、各ロータガード78はハブ部789を中心として水平方向に旋回可能である。マルチコプター10を運搬・保管するときには、フォーク部70cの側面に平行に沿うようにロータガード78を折り畳むことで、ロータガード78をコンパクトに収納することができる。
【0053】
各アーム70はそれぞれ2本のロータガード78を有している。これらロータガード78は、フォーク部70cの側面に平行に折り畳まれたときの配置角度を0°としたときに、135°まで展開することができる。ロータガード78を135°に展開したときには、ロータガード78が有する固定片781が、ハブ部789の図示しない軸体に嵌まり込み、ロータガード78の位置が固定される。また、棒体72,73には、折り畳まれたロータガード78を保持するクリップ782が設けられている。
【0054】
なお、本例のアーム70は2本のロータガード78を有しているが、一のアーム70が備えるロータガード78の本数は2本には限定されず、マルチコプター10の使用環境に応じて適宜調節可能である。例えば、プロペラ42の保護のみを目的とする場合には、周辺物の主な形状に対して最も効率的な数のロータガード78を設ければよく、不測の事態における通行人等の安全確保を目的とする場合には、ロータガード78の死角を減らすよう適宜その数を増やせばよい。
【0055】
また、本例のロータガード78には、軽量で、かつ、折り畳みに適しているという理由で、細長い線状の枠体が採用されているが、本発明のロータガードの形態は本例のものには限定されない。本発明のロータガードは、棒体72,73のロータR(プロペラ42)を上下方向に囲むものであることを条件として、例えば幅広の着脱式のロータガードであってもよい。さらには、ロータガードは本発明の無人航空機の必須の要素ではなく、不要であれば省略することもできる。
【0056】
そして、図3等に示されるように、本例のマルチコプター10は、ロータRを支持する2本の棒体72,73がプロペラ42の直径よりも短い。本例のマルチコプター10では、アーム70にはロータRの保護機能をあえてもたせず、ロータRの支持とロータRの保護とを分離している。これにより機体の水平寸法の肥大化が避けられており、また、ロータRの保護が必要でないときにはこれを容易に省略することが可能とされている。
【0057】
(プロペラ)
ロータRのプロペラ42は、ブレードを時計回りまたは反時計回りに折り曲げることができる折り畳み式プロペラである。
【0058】
このように、本例のマルチコプター10では、アーム70が水平方向に折り畳み可能であるとともに、ロータガード78とプロペラ42も折り畳み可能な構造を有している。これにより、マルチコプター10を運搬・保管するときには、アーム70の構成部材を一切取り外すことなく、簡便に、そのスペース効率および可搬性を高めることが可能とされている。
【0059】
なお、上述のアーム70、ロータガード78、およびプロペラ42の折り畳み構造はマルチコプター10のスペース効率や可搬性を向上させるうえで極めて有意であるが、これらは選択可能な要素であり、これら折り畳み構造のうちのいずれか、または全てを省略することも可能である。
【0060】
[機能構成]
図6はマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。マルチコプター10の機能は、制御部であるフライトコントローラFC、複数のロータR、ロータRを構成するブラシレスモータ41の駆動回路であるESC411、操縦者(オペレータ端末51)と通信を行う通信装置52、測量用の外部装置であるレーザスキャナ90、および、これらに電力を供給するバッテリー80により構成されている。
【0061】
フライトコントローラFCはマイクロコントローラである制御装置20を有している。制御装置20は、中央処理装置であるCPU21と、RAMやROM・フラッシュメモリなどの記憶装置からなるメモリ22とを有している。
【0062】
フライトコントローラFCはさらに、IMU31(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、GPS受信器32、気圧センサ34、および電子コンパス36を含む飛行制御センサ群Sを有しており、これらは制御装置20に接続されている。
【0063】
IMU31はマルチコプター10の機体の傾きを検出するセンサであり、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されている。気圧センサ34は、検出した気圧高度からマルチコプター10の海抜高度(標高)を算出する高度センサである。本例の電子コンパス36には3軸地磁気センサが用いられている。電子コンパス36はマルチコプター10の機首の方位角を検出する。GPS受信器32は、正確には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)の受信器である。GPS受信器32は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)または地域航法衛星システム(RNSS:Regional Navigational Satellite System)から現在の経緯度値を取得する。
【0064】
本例のマルチコプター10は、その水平位置を検出するセンサとして、上述のGPS受信器32に加え、オプティカルフローセンサ33を併用している。オプティカルフローセンサ33はアーム70のセンサハウジング749から地表に向けられ、地表の撮影画像をパターン認識することで機体の移動を検知する。これにより、水平位置の特定精度が高められるだけでなく、GPS信号の届かない屋内でもマルチコプター10を飛行させることが可能とされている。また、本例のマルチコプター10は、その飛行高度を検出するセンサとして、上述の気圧センサ34に加え、レーザ測距センサ35を併用している。レーザ測距センサ35はアーム70のセンサハウジング749から地表に向けられ、対地高度を取得する。これにより、気圧変化による飛行高度の誤差を補正することが可能とされている。
【0065】
その他、本例のマルチコプター10には、機体の前方にある周辺物を検知し、その距離等を測る深度カメラ37および超音波センサ38が設けられている。本例ではこれら深度カメラ37および超音波センサ38の用途は特に特定されない。
【0066】
フライトコンローラFCは、これら飛行制御センサ群Sにより、機体の傾きや回転のほか、飛行中の経緯度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得することが可能とされている。
【0067】
制御装置20は、マルチコプター10の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するプログラムである飛行制御プログラムFSを有している。飛行制御プログラムFSは、飛行制御センサ群Sから取得した情報を基に個々のロータRの回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を飛行させる。
【0068】
制御装置20はさらに、マルチコプター10を自律飛行させるプログラムである自律飛行プログラムAPを有している。そして、制御装置20のメモリ22には、マルチコプター10の目的地や経由地の経緯度、飛行中の高度や速度などが指定されたパラメータである飛行計画FPが登録されている。自律飛行プログラムAPは、オペレータ端末51からの指示や所定の時刻などを開始条件として、飛行計画FPに従ってマルチコプター10を自律的に飛行させることができる。
【0069】
このように、本例のマルチコプター10は高度な飛行制御機能を備えた無人航空機である。ただし、本発明の無人航空機はマルチコプター10の形態には限定されず、例えば飛行制御センサ群Sから一部のセンサが省略された機体や、自律飛行機能を備えず手動操縦のみにより飛行可能な機体を用いることもできる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10:マルチコプター(無人航空機),FC:フライトコントローラ,S:飛行制御センサ群,33:オプティカルフローセンサ,35:レーザ測距センサ,R:ロータ,
41:ブラシレスモータ,411:ESC,42:プロペラ(水平回転翼,折り畳み式プロペラ),70:アーム,70a:基幹部,70b:関節部,70c:フォーク部,71:1本の棒体,72,73:2本の棒体,74:連結部材,74a:基幹側接続部,74b:分岐側接続部,741−743:アダプタ部材,749:センサハウジング,76:モータマウント,761:クランプ,78:ロータガード,781:固定片,782:固定クリップ,789:ハブ部,79:ランディングギア
【要約】
【課題】スペース効率および可搬性のよい無人航空機を提供する。
【解決手段】水平回転翼を有するロータ(R)と、前記ロータ(R)を支持するアーム(70)と、を備え、前記アーム(70)の先端部は、上下に並べて配置された同方向に延びる2本の棒体(72,73)により構成され、前記2本の棒体(72,73)の長手方向の寸法は前記水平回転翼の直径よりも短く、前記各棒体(72,73)は、それぞれ別の前記ロータ(R)を支持することを特徴とする無人航空機(10)によりこれを解決する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6