特許第6528063号(P6528063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6528063-電池モジュールの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528063
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20190531BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20190531BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   H01M2/10 Y
   C08F290/06
   H01M2/02 K
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-36858(P2015-36858)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-162481(P2016-162481A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】片上 英治
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−237745(JP,A)
【文献】 特開2013−216782(JP,A)
【文献】 特開2008−226560(JP,A)
【文献】 特開2009−094015(JP,A)
【文献】 特開2012−256589(JP,A)
【文献】 特開2003−308811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
C08F 290/06
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
(A)電池及び該電池と組み合わされて電池モジュールを形成する外装部材から選択される第一の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(B)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C)電池及び該電池と組み合わされて電池モジュールを形成する外装部材から選択される第二の基材を、工程(B)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して第一の基材と貼り合せる工程
を含み、ここで工程(C)は、
(C1)前記第二の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(C2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第二の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C3)工程(C2)で得られた第二の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物と、工程(B)で得られた第一の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物とを介して、第一の基材と第二の基材とを貼り合せる工程
を含み、第一の基材及び第二の基材が共に前記外装部材である場合には、更に
(D1)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池に、光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(D2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、並びに
(D3)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体と電池とを、工程(D2)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して貼り合せる工程
を含む、電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
第一の基材及び第二の基材が、共に電池である、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールの製造方法及び電池モジュール製造用硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報関連機器、通信機器の分野が発達し、ノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話等の小型携帯電子機器の普及が促進している。また、環境エネルギー分野の発達にともない、太陽電池や燃料電池を利用した蓄電システム、電気自動車等の開発も促進している。このような電子機器類の開発、発展に伴い、これらの機器に用いる電源用の電池モジュールの需要が増大している。
【0003】
電池モジュール用の各種電池として、例えばラミネートシートからなる外装部材により電池を収納した扁平型電池が広く使用されている。電池モジュールにおける電池は、通常は外装部材と接着されている。電池モジュール製造のための電池と外装部材との接着手段として、加熱により溶融し、冷却により硬化するホットメルト型接着剤(特許文献1)や両面テープ(特許文献2)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−118112号公報
【特許文献2】特開2005−243530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、接着剤の均一な塗布の要求から適度な圧力を掛け続けるために特殊な設備が必要であり、細かい描画、凸凹のある箇所への塗布が困難であった。また、特許文献2記載の方法の場合、面積の小さな部位に貼り付けることが難しく、離型紙のような多量のゴミが出る、という問題があった。
よって、本発明が解決しようとする課題は、従来の設備での簡便な塗工及びゴミの削減を可能とする、電池及びモジュール外装の接着固定の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下を内容とする。
[1]下記工程:
(A)電池及び外装部材から選択される第一の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(B)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C)電池及び外装部材から選択される第二の基材を、工程(B)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して第一の基材と貼り合せる工程
を含み、第一の基材及び第二の基材が共に外装部材である場合には、更に
(D1)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池に、光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(D2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、並びに
(D3)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体と電池とを、工程(D2)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して貼り合せる工程
を含む、電池モジュールの製造方法。
[2]工程(C)が、
(C1)前記第二の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(C2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第二の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C3)工程(C2)で得られた第二の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物と、工程(B)で得られた第一の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物とを介して、第一の基材と第二の基材とを貼り合せる工程
を含む、前記[1]記載の方法。
[3]第一の基材及び第二の基材が、共に電池である、前記[1]又は[2]記載の方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか一項記載の方法に使用される、(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレート変性オリゴマーを含むラジカル反応硬化型樹脂、光開始剤並びに粘着性付与剤を含む、光硬化性樹脂組成物。
[5](メタ)アクリレート変性オリゴマーが、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン(メタ)アクリレート、水添ポリイソプレン(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上の(メタ)アクリレート変性オリゴマーを含む、前記[4]記載の光硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の設備での簡便な塗工及びゴミの削減を可能とする、電池及びモジュール外装の接着固定の方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、下記工程:
(A)電池及び外装部材から選択される第一の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(B)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C)電池及び外装部材から選択される第二の基材を、工程(B)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して第一の基材と貼り合せる工程
を含み、第一の基材及び第二の基材が共に外装部材である場合には、更に
(D1)第一の基材及び第二の基材の貼り合せ体及び/又は電池に、光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(D2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材及び第二の基材の貼り合せ体及び/又は電池表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、並びに
(D3)第一の基材及び第二の基材の貼り合せ体と電池とを、工程(D2)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して貼り合せる工程
を含む、電池モジュールの製造方法である。
【0010】
以下、本発明の方法における各工程について説明する。
[工程A]
工程(A)は、電池及び外装部材から選択される第一の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程である。
【0011】
[電池]
第一の基材として使用することができる電池は、その種類は特に制限されない。電池の種類の非限定的例としては、マンガン電池、リチウム電池等の一次電池、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池及び燃料電池を含む化学電池、太陽電池、熱電池を含む物理電池等が挙げられる。好ましくは二次電池であり、特に好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0012】
電池の形状は、光硬化性樹脂組成物を適用して外装部材又は他の電池と貼り合せることが可能な表面を有していれば、特に制限されない。一般に市販されている電池の形状であれば、本発明の方法に使用することができる。光硬化性樹脂組成物を適用する面又は光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して外装部材若しくは電池と貼り合せられる面(以下、これらの面のいずれか一方又は両方を指して単に「貼り合せ面」ということがある)を広く確保して接着性を高めることができるため、電池の形状は扁平型であることが好ましく、角形又は板状であることが更に好ましい。
【0013】
光硬化性樹脂組成物を適用する電池表面の素材は、使用する光硬化性樹脂組成物との間に十分な接着性を確保することができるものであれば、特に制限されない。電池表面に通常使用される素材からなる面であれば、貼り合せ面として採用することができ、先に何らかの塗装等が電池表面に施されていてもよい。貼り合せ面の形状は、凹凸のない平坦な面であることが好ましいが、光硬化性樹脂組成物を適用した面全体での貼り合せが可能であれば、凹凸を有していてもよい。
【0014】
[外装部材]
第一の基材として使用することができる外装部材は、前記電池と組み合わされて電池モジュールを形成する。外装部材の形状は、電池又は他の外装部材と貼り合せることが可能な表面を有していれば、特に制限されず、電池の形状、最終的に得られる電池モジュールの形状等に応じて適宜選択される。電池を収納するために、外装部材の形状は筐体状であることが好ましいが、単一の外装部材のみで電池を収納することは必ずしも必要ではない。例えば蓋及び二組の対向する側壁からなるケースと底板のような複数の部材の組合せにより電池を収納する構成としてもよく、第一の基材はそのうちのいずれか一の部材であってもよい。
【0015】
外装部材の素材は、外装部材と光硬化性樹脂組成物との間に十分な接着性を確保することができるものであれば特に制限されない。プラスチック、金属等当業者に公知の素材からなる外装部材を本発明の方法に用いることができ、ラミネートシートが好ましい例として挙げられる。外装部材の貼り合せ面の形状については、先に電池について記載したとおりである。
【0016】
[光硬化性樹脂組成物]
光硬化性樹脂組成物は、エネルギー線によって重合、硬化する樹脂を含む組成物である。光硬化性樹脂組成物の種類としては、ラジカル反応硬化型樹脂組成物、カチオン反応硬化型樹脂組成物、アニオン反応硬化型樹脂組成物、重縮合・重付加反応硬化型樹脂組成物等が例示できる。光硬化性樹脂組成物としては、エネルギー線による硬化の速度等の観点から、ラジカル反応硬化型樹脂組成物が好ましい。光硬化性樹脂組成物には、硬化の反応機構が異なる樹脂同士を含む、2種類以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0017】
ラジカル反応硬化型樹脂組成物に使用されるラジカル反応硬化型樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びビニルエステル樹脂が挙げられる。好ましくは(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂又はビニルエステル樹脂であり、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂である。ここで、(メタ)アクリル樹脂として、具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;ポリイソプレン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、水添ポリイソプレン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン(メタ)アクリレート、UV3700B(日本合成化学工業(株)製)又はUV3630ID80(日本合成化学工業(株)製)のようなポリウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート変性オリゴマー又は(メタ)アクリレート変性ポリマーが挙げられる。
【0018】
カチオン反応硬化型樹脂組成物に使用されるカチオン反応硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、ビニルエーテル樹脂、及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂又はオキセタン化合物である。
【0019】
アニオン反応硬化型樹脂組成物に使用されるアニオン反応硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シアノアクリレート系樹脂、オキセタン化合物、ポリスチレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シアノアクリレート系樹脂又はポリスチレン系樹脂であり、より好ましくは、シアノアクリレート系樹脂又はポリスチレン系樹脂である。
【0020】
重縮合・重付加反応硬化型樹脂組成物に使用される重縮合反応硬化型樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシリコーン樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はシリコーン樹脂であり、より好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はシリコーン樹脂である。
【0021】
光硬化性樹脂組成物中に、エネルギー開裂型開始剤を含めることができる。エネルギー開裂型開始剤として、例えば、光開始剤として、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及び2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル等のアシルフォスフィン酸エステル類;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1,4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、1,10−ジアミノデカン、4,4’−トリメチレンジピペラジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類、アリールジアゾニウム塩、ジアリールハロニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリホスホニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体等のイオン性光酸発生剤;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等の非イオン性光酸発生剤等が挙げられる。市販品として、I−184(BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、ルシリンTPO(BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)が挙げられる。これらの光開始剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
光開始剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜15質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。
【0022】
光硬化性樹脂組成物に、エネルギー開裂型開始剤を含めておく場合、光硬化性樹脂組成物に含まれる樹脂として、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂組成物が挙げられる。エネルギー開裂型開始剤の量は、特に限定されないが、上記した光開始剤の量が挙げられる。
【0023】
光硬化性樹脂組成物には、光学透明性安定性の観点から、熱・光安定剤を配合することができる。熱・光安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ヒドロキシルアミン系加工熱安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及びベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、及びヒンダードアミン系光安定剤であり、より好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0024】
ここで、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート)、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ピクリン酸、ターシャリーブチルカテコール、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、及び4,4’−チオビス[エチレン(オキシ)(カルボニル)(エチレン)]ビス[2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。酸化防止剤は市販品として、イルガノックス1010(I’nox1010)(BASF社製)が挙げられる。
【0025】
熱・光安定剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部であり、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0026】
光硬化性樹脂組成物には、エネルギー線の非存在下、光硬化性樹脂組成物と混合すると、60℃以下の温度でラジカル、カチオン又はアニオンを発生し、光硬化性樹脂組成物を硬化させる化合物を含めておくことができる。例として、有機過酸化物(例えば、クメンパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート)、ポリアミン、酸無水物(無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等)、芳香族アミン、ヒドラジド、アミンアダクト類、ジシアンジアミド、ポリスルフィド樹脂、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等)、酸(有機酸又は低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤等)、塩基(脂肪族ポリアミン等のポリアミン、イミダゾール、ヒドラジド及びケチミン等のアミン化合物、低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物等)、ポリアミド樹脂、ポリメルカプタン、及び白金族系金属化合物又はその錯体(塩化白金(IV)、塩化白金酸六水和物、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体等)等が挙げられる。これらの化合物は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの化合物の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.001〜15質量部であり、より好ましくは0.01〜10質量部であり、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0027】
光硬化性樹脂組成物には、可塑剤を配合することができる。可塑剤として、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル等の多価カルボン酸アルキルエステル(例えば、多価カルボン酸のC3〜C12アルキルエステル等);トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル;トリメリット酸エステル;トリエチレングリコール ビス(2−エチルヘキサノエート)等のポリオキシアルキレングリコールのアルキルエステル(例えば、ジ、トリ又はテトラエチレングリコールのC3〜C12アルキルエステル等);ゴム系ポリマー、ゴム系コポリマー(例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエンもしくはポリブテン、又はこれらの水素化物、これらの両末端に水酸基を導入した誘導体もしくはこれらの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体等);熱可塑性エラストマー;石油樹脂;脂環族飽和炭化水素樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;ロジンフェノール等のロジン系樹脂;不均化ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、水添(水素化)ロジンエステル系樹脂等のロジンエステル系樹脂;キシレン樹脂等;アクリルポリマー、アクリルコポリマーが挙げられる。これらの可塑剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。可塑剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、1〜60質量部、好ましくは10〜30質量部である。
【0028】
光硬化性樹脂組成物には、更に、粘着性付与剤を含有することができる。粘着性付与剤として、例えば熱可塑性エラストマー;石油樹脂;脂環族飽和炭化水素樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、ロジンフェノール等のロジン系樹脂;不均化ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、水添(水素化)ロジンエステル系樹脂等のロジンエステル系樹脂;キシレン樹脂等;アクリルポリマー、アクリルコポリマーが挙げられる。これらの粘着性付与剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。粘着性付与剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、1〜60質量部、好ましくは10〜30質量部である。
【0029】
光硬化性樹脂組成物には、更に、適用した光硬化性樹脂組成物中に泡が生じることを防止する又は生じた泡を消すための消泡剤、光学部材の表面に対する濡れ性を改善するための界面活性剤及びシランカップリング剤、並びに光学部材の表面に膜を形成するための膜形成剤を含むことができる。
【0030】
消泡剤は、抑泡剤、破泡剤、溶泡剤に分類されるが、これらのいずれをも用いることができる。消泡剤の例としては、非イオン系、ポリエーテル系、シリコーン系、アクリル系等の消泡剤を挙げることができる。また、SiO、Al、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微粒子を添加することもできる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン(ノニオン)型界面活性剤が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合せて使用することができる。
【0032】
アニオン界面活性剤として、石ケン、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、及びメチルタウリン酸塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
両性界面活性剤としては、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アルキルベタイン、スルホベタイン、及びアミオキサイド等が挙げられる。両性界面活性剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
非イオン(ノニオン)型界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル型化合物、ポリオキシソルビタンエステル等のエステル型化合物、アルキルフェノール型化合物、フッ素型化合物、及びシリコーン型化合物等が挙げられる。非イオン(ノニオン)型界面活性剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン類;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類を例示でき、トリアルコキシシラン類が好ましく、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
膜形成剤としては、特に限定されないが、レベリング性の観点から、好ましくはシリコーン系添加剤、アクリル系レベリング剤、ワックス系表面調整剤、及びフッ素系表面改質剤である。より好ましくは、シリコーン系添加剤、アクリル系レベリング剤、及びフッ素系表面改質剤であり、更に好ましくは、アクリル系レベリング剤、及びフッ素系表面改質剤である。このような膜形成剤として、具体的には、ラウリルアクリレートが挙げられる。
【0037】
消泡剤、界面活性剤、シランカップリング剤及び膜形成剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対して、各々好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0038】
先に挙げた消泡剤、界面活性剤、シランカップリング剤及び膜系製剤等の他にも、光硬化性樹脂組成物に各種添加剤を添加することで、比誘電率、絶縁性、難燃性、放熱性、耐電解液性、耐高温、耐振動性、着色等の機能、特性を付与することができる。添加剤の種類及び添加量は、各種添加剤による効果を奏し、かつ光硬化性樹脂組成物の硬化性及び接着性を保つことができる範囲であれば特に制限されない。
【0039】
本発明の方法に使用するための光硬化性樹脂組成物もまた、本発明の一態様である。光硬化性樹脂組成物として、例えば、(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレート変性オリゴマーを含むラジカル反応硬化型樹脂、光開始剤並びに粘着性付与剤を含む光硬化性樹脂組成物が挙げられる。任意成分として、消泡剤を含むこともできる。取扱性や、組成物の流動性を保ち基材への適用を容易にする観点から、前記光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレート変性オリゴマーとして、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン(メタ)アクリレート、水添ポリイソプレン(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上の(メタ)アクリレート変性オリゴマーを有することが好ましく、ポリウレタンアクリレート樹脂を含むことが更に好ましい。また、光開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド類又はフェニルケトン系化合物を含むことが好ましく、粘着性付与剤としてロジンエステル系樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
工程(A)で、光硬化性樹脂組成物を電池又は外装部材に適用する方法としては、当業者に公知の方法を特に制限なく用いることができ、ディスペンサーでの塗布、コーターでの塗布、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等が適用方法の例として挙げられる。光硬化性樹脂組成物の適用量は、適用した光硬化性樹脂組成物層の厚みで好ましくは10〜1000μm、より好ましくは25〜500μm、更に好ましくは50〜350μmである。
【0041】
[適用部位]
光硬化性樹脂組成物を適用する部位は、電池又は外装部材の表面の少なくとも一部であり、表面全面であってもよく、またコの字型のように表面の一部を除いた領域や、ニの字型のように分離した二以上の領域であってもよい。全面に光硬化性樹脂組成物を塗工することで、より良好な接着性を確保することができる。部分的に塗工することで、電池及び電池又は外装部材との間に空間を生じ、電池の放熱性を高めることができる。適切な適用部位は、光硬化性樹脂組成物の適用方法、電池又は外装部材の形状、電池モジュールに要求される特性等により、適宜選択される。
【0042】
[工程B]
工程(B)は、光硬化性樹脂組成物に光等のエネルギー線を照射し、第一の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程である。光照射装置により照射するエネルギー線としては、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線又は電磁波が挙げられるが、装置の簡便性及び普及性から紫外線が好ましい。光照射装置には、当業者に公知の装置を用いることができる。
【0043】
工程(B)において、光照射により光硬化性樹脂組成物を硬化させるタイミングは、任意のタイミングを採用することができ、第一の基材に光硬化性樹脂組成物を適用した後とすることができるが、光硬化性樹脂組成物を適用すると同時に光照射を行ってもよく、また光硬化性樹脂組成物が適用面に接触する前に前記光硬化性樹脂組成物に光照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化物を形成する工程としてもよい。
【0044】
工程(B)において、光を照射することにより光硬化性樹脂組成物を硬化させる条件は、特に限定されず、例えば、積算光量は、好ましくは30〜15,000mJ/cmであり、より好ましくは50〜10,000mJ/cmであり、更に好ましくは100〜10,000mJ/cmである。照射時間は、使用する光源から照射される光の強度と積算光量に応じて適宜変更することができるが、操作性の観点から、1秒〜2分であることが好ましく、30秒〜60秒であることがより好ましい。光照射の条件は、そのほかにも光硬化性樹脂組成物の組成や、硬化物に要求される硬化率に合わせて適宜設定される。
【0045】
適用される光硬化性樹脂組成物は、硬化物に要求される硬化率に合わせて硬化状態を設定することができる。例えば、光照射によりBステージと呼ばれる半硬化状態とすることもできるし、完全硬化に近い状態まで硬化することもできる。この場合、工程(B)での硬化後における光硬化性樹脂組成物の硬化率は、40%〜99%の範囲とすることが好ましく、45%〜80%の範囲とすることがより好ましく、50%〜70%の範囲とすることが更に好ましい。ここで、本明細書において、「硬化率」とは、硬化性樹脂組成物の硬化度合を示す値であり、硬化性樹脂組成物中の硬化反応に関与する官能基の、硬化反応による消費率として表される。硬化率は、例えば硬化前の組成物及び硬化物のIR分析による吸収ピーク強度の変化によって算出することができる。光硬化性樹脂組成物がアクリル樹脂である場合、光照射の前後でのアクリル基のIR吸収を測定し、その吸光度の変化率を硬化率とすることができる。
【0046】
[工程C]
工程(C)は、電池及び外装部材から選択される第二の基材を、工程(B)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して第一の基材と貼り合せる工程である。これにより、第一の基材及び第二の基材の貼り合せ体が得られる。工程(C)においては、貼り合せる際に、硬化した光硬化性樹脂組成物と電池又は外装部材との接触を促進させるために、加圧等の手段を用いてもよい。また、貼り合せた後、光硬化性樹脂組成物が完全には硬化していない場合、更に光照射を行うことにより、光硬化性樹脂組成物を完全に硬化させて、第一の基材及び第二の基材の貼り合せ体を製造することができる。更に光照射を行う工程を含める場合、第一の基材又は第二の基材の少なくとも一方が透明体であることが、光照射が光硬化性樹脂組成物の全面に十分に行われるため好ましい。また、更に光照射を行う代わりに、熱により光硬化性樹脂組成物の硬化を行うこともできる。この場合、光硬化性樹脂組成物は有機過酸化物を含むことが好ましい。有機過酸化物の種類や添加量等は、先に記載したとおりである。
【0047】
工程(C)においては、貼り合せる対象となる電池又は外装部材には、あらかじめその貼り合せ面に光硬化性樹脂組成物を塗工し硬化させることにより、硬化した光硬化性樹脂組成物の層を設けていてもよい。すなわち、工程(C)は、
(C1)前記第二の基材に光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(C2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第二の基材表面に該光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、及び
(C3)工程(C2)で得られた第二の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物と、工程(B)で得られた第一の基材表面の光硬化性樹脂組成物の硬化物とを介して、第一の基材と第二の基材とを貼り合せる工程
を含んでいてもよい。工程(C1)、(C2)及び(C3)での基材の選択や光硬化性樹脂組成物の適用方法、硬化方法等は、先に工程(A)、(B)及び(C)について記載したとおりである。工程(C1)で使用される光硬化性樹脂組成物の組成、工程(C2)での光照射方法等は、工程(A)及び(B)で採用されたものと同じであることが操作性や簡便性の観点から好ましいが、工程(C3)で第一の基材及び第二の基材を貼り合せることが可能である限り、工程(A)及び(B)で採用された条件から独立して設定することができる。
【0048】
電池の積層体を作成する場合においては、第一の基材及び第二の基材として電池を採用し、電池同士を貼り合せる。また、電池同士を貼り合せた積層体を、工程(A)又は(C)での第一の基材又は第二の基材としてもよい。
【0049】
貼り合せる第一及び第二の基材の大きさ、特に貼り合せ面の大きさは、特に制限されず、任意の大きさの基材同士を貼り合せることができる。電池と外装部材とを貼り合せる場合であっても、最終的に電池モジュールが得られる限り、電池の貼り合せ面が外装部材の貼り合せ面より大きくなってもよい。筐体状の外装部材と貼り合せる場合には、電池を筐体に収納させるため、電池は筐体内に収納可能な大きさであることが好ましい。電池同士を貼り合せて積層体を作製する場合には、電池同士の貼り合せ面の大きさは同じであることが好ましく、同一規格の電池を用いることが更に好ましい。
【0050】
本発明の工程(A)、(B)及び(C)を含む方法には、例えば図1に模式図として示したような態様が含まれる。すなわち:
1.電池に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、他の電池と貼り合せること。
2.電池に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、あらかじめ光硬化性樹脂組成物を適用し硬化させた層を備えた他の電池と貼り合せること。
3.電池に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、外装部材と貼り合せること。
4.外装部材に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、電池と貼り合せること。
5.外装部材に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、あらかじめ光硬化性樹脂組成物を適用し硬化させた層を備えた電池と貼り合せること。
6.外装部材に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、他の外装部材と貼り合せること。
7.外装部材に光硬化性樹脂組成物を適用、硬化し、あらかじめ光硬化性樹脂組成物を適用し硬化させた層を備えた他の外装部材と貼り合せること。
【0051】
[工程(D1)、(D2)及び(D3)]
工程(A)及び(C)で選択された第一の基材及び第二の基材が共に外装部材である場合には、本発明の方法は、更に、
(D1)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池に、光硬化性樹脂組成物を適用する工程、
(D2)該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程、並びに
(D3)第一の基材と第二の基材との貼り合せ体と電池とを、工程(D2)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して貼り合せる工程を含む。
【0052】
工程(D1)は、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池に、光硬化性樹脂組成物を適用する工程である。すなわち、工程(C)で得られた第一の基材と第二の基材との貼り合せ体と、更に用意された電池のいずれか一方又は両方に、光硬化性樹脂組成物を適用する。使用される電池及び光硬化性樹脂組成物並びに光硬化性樹脂組成物の適用方法については、先に工程(A)について記載したとおりである。
【0053】
工程(D2)は、該光硬化性樹脂組成物に光を照射し、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体及び/又は電池表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程である。光硬化性樹脂組成物の硬化方法については、先に工程(B)について記載したとおりである。
【0054】
工程(D3)は、第一の基材と第二の基材との貼り合せ体と電池とを、工程(D2)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して貼り合せる工程である。貼り合せの方法については、先に工程(C)について記載したとおりである。工程(D1)、(D2)及び(D3)により、本発明の方法には、少なくとも一つ、電池と外装部材とを貼り合せる工程が含まれる。
【0055】
例えば複数の電池を貼り合せて積層体を構築した後、外装部材と貼り合せるような、工程(A)、(B)及び(C)からなる工程を複数含む電池モジュールの製造方法もまた、本発明の一態様である。この場合に、各々の基材を貼り合せる順序は特に制限されない。また、貼り合せる対象となる外装部材は、その電池モジュールとしての最終的な形状に応じて、あらかじめ又は貼り合せ体の製造後に、外装部材同士を光硬化性樹脂組成物により接着してもよく、そのような外装部材同士の接着工程を含む電池モジュールの製造方法も、本発明の一態様である。
【0056】
[電池モジュール]
本発明の方法で得られる電池モジュールは、先に挙げられた貼り合せ体を含むモジュールである。また、本発明の方法で得られる電池モジュールの使用例として、ノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話等の電子機器用電池、太陽電池や燃料電池を利用した蓄電システム用電源、電気自動車用電源等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例により本発明を説明する。
【0058】
表1に示す各成分を、表1の記載のとおりの配合量にてポリエチレン容器に秤量し、スリーワンモーター(東京理科機器社製、MAZELA)、攪拌羽を用いて均一に混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
(実験方法)
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製 SHOT MASTER300、MPP1)を用いて、調製した光硬化性樹脂組成物を50mm×50mmの大きさのガラス基板に塗布して、試験サンプルを作成した。光硬化性樹脂組成物の膜厚は50μm、塗布幅は40mm×40mmとした。
水銀キセノンランプ(HOYA社製、EXECURE4000)を用いて、紫外線照射強度(365nm)300mW/cm(浜松ホトニクス社製紫外線積算光量計にて測定)で光照射を行い、硬化樹脂層を形成した(照射時間60秒、硬化率98%)。形成した硬化樹脂層に、40mm×40mmの大きさの面を有する扁平型電池を、当該面を貼り合せ面として積載し接着した。
【符号の説明】
【0061】
1:電池
2:光硬化性樹脂組成物層
3:外装部材
図1