特許第6528064号(P6528064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528064
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】樹脂成形体用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20190531BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20190531BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20190531BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190531BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190531BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20190531BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D123/28
   C09D151/06
   C09D175/04
   B32B27/30 A
   B32B27/32 B
   B32B27/32 Z
   B32B27/40
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-83534(P2017-83534)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-178043(P2018-178043A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年7月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】金川 佳生
(72)【発明者】
【氏名】大野 富久
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−139336(JP,A)
【文献】 特開平08−048801(JP,A)
【文献】 特開2016−000770(JP,A)
【文献】 国際公開第02/083772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 1/00− 7/26
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記a.〜c.の成分を含有し、
a.構成するモノマー単位として長鎖アルキル基を有するモノマー成分を含有し、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上70℃以下であり、かつ水酸基価が12mgKOH/g以上42mgKOH/g以下である(メタ)アクリル樹脂
b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂
c.ポリイソシアネート化合物
かつ、上記b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が、上記a.(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料組成物を、表面に塗布したポリオレフィン系樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形体用の塗料組成物及び、当該塗料組成物を表面に塗布したポリオレフィン系樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1に記載されているように、
(A)塩素含有率10〜50質量%の塩素化ポリオレフィン樹脂と、
(B)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、
(C)重量平均分子量2,000〜50,000、水酸基価10〜90mgKOH/gのアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂、および
(D)イソシアネート化合物を必須成分とし、
イソシアネート当量と水酸基当量との比が、[イソシアネート当量]/[水酸基当量]=0.5/1.0〜1.2/1.0であり、
(A)成分、(B)成分、(C)成分総質量(固形分)中(A)成分が3〜20質量%、(B)成分が5〜40質量%であり、かつ(C)成分が40〜92質量%であることを特徴とするポリオレフィン素材に付着性良好な2液型塗料組成物は公知である。
そして、この2液型塗料組成物は、ポリオレフィン素材に対して、さらに光沢性、耐溶剤性、促進耐候性及び貯蔵安定性が良好であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−139336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の公知の2液型塗料組成物はポリオレフィン素材に対してプライマー処理を施すことなく1コートにて、付着性が良好な塗膜を形成させる点においては優れるものの、まだ十分に光沢を有する塗膜を得ることができなかった。さらに、耐温水性、耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性、耐ガソリン性、及び人の生活環境下における極低温下での貯蔵安定性は不十分であった。
そのため、上記公知の2液型塗料組成物を、より広範囲の環境下で使用すること、及び/又は最上層の塗膜層とすることは事実上困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決することができる本発明は以下の塗料組成物である。
1.下記a.〜c.の成分を含有し、
a.構成するモノマー単位として長鎖アルキル基を有するモノマー成分を含有し、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上70℃以下であり、かつ水酸基価が12mgKOH/g以上42mgKOH/g以下である(メタ)アクリル樹脂
b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂
c.ポリイソシアネート化合物
かつ、上記b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が、上記a.(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることを特徴とする塗料組成物。
2.1に記載の塗料組成物を、表面に塗布したポリオレフィン系樹脂成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特にポリオレフィン系樹脂成形体に対して、プライマー等の下塗り層を介する必要なく、直接、高い光沢を有する塗膜を得ることができる。加えて、耐温水性、耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性、耐ガソリン性に優れた塗膜を形成でき及び人の生活環境下における極低温下での貯蔵安定性も優れる。
そのため、本発明の塗料組成物は、特にポリオレフィン系樹脂成形体に塗布して、より広範囲の環境下で使用すること、及び/又は最上層の塗膜層とすることができるという効果を発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の塗料組成物は、公知のポリオレフィン系樹脂からなる成形体全般に対して使用することができる。塗膜表面の光沢性が良好であるために、最上層となる塗膜層とすることもできる。また2液型の塗料とすることもでき、1液型の塗料とすることもできる。
【0008】
<a.(メタ)アクリル樹脂>
本発明において使用される(メタ)アクリル樹脂としては、従来から(メタ)アクリル樹脂として知られる樹脂を採用できる。
具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、窒素含有(メタ)アクリル酸エステルの1種以上、及び必要に応じてその他のビニル系モノマーを、ラジカル重合、アニオン重合、又はカチオン重合により重合することで得られる樹脂である。
【0009】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアルキル基、水酸基含有アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでもアルキル基として、炭素数が12以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸モノマーを共重合成分として含有することが、ポリオレフィン系樹脂成形体に対する塗膜の密着性を向上させる上で好ましく、含有する際には、(メタ)アクリル樹脂の重合する前のモノマー成分100質量%に対して、該長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸モノマー成分の質量分は、5質量部以上60質量部以下とすることが好ましく、8質量部以上40質量部以下とすることがより好ましく、8質量部以上30質量部以下とすることがさらに好ましい。特に、ラウリル(メタ)アクリレートを採用することが好ましい。
【0010】
アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えばフェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0011】
水酸基含有アルキル基、水酸基含有アリール基又は水酸基含有アリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート等の上記のアクリル酸エステルが有するアルキル基や芳香環に水酸基が結合したものが挙げられる。
【0012】
(メタ)アクリル酸アミドとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
【0013】
さらに、その他の窒素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの各種ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニルや、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンなどの各種スチレン系芳香族モノマー(芳香族ビニル系モノマー)、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネートなどのマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などによって代表される各種のジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明における a.(メタ)アクリル樹脂の性質について説明すると、好ましくはその水酸基価が12mgKOH/g以上42mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以上35mgKOH/g以下である。水酸基価が12mgKOH/g未満であると、耐揮発油性及び耐ガソリン性に劣ることになり、42mgKOH/gを超えると、特にポリオレフィン樹脂成形体に対する塗膜の密着性が悪化する。
好ましくはそのガラス転移温度(Tg)が35℃以上70℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上60℃以下である。ガラス転移温度が35℃未満では耐揮発油性及び耐ガソリン性に劣ることになり、70℃を超えると、特にポリオレフィン樹脂成形体に対する塗膜の密着性が悪化する。
好ましくはその数平均分子量(Mn)が3,000以上10,000以下であり、さらに好ましくは4,000以上8,000以下である。また重量平均分子量(Mw)が10,000以上18,000以下であり、さらに好ましくは13,000以上16,000以下である。さらに多分散度(Mw/Mn)が好ましくは1.8以上3.0以下であり、さらに好ましくは2.0以上2.5以下である。
数平均分子量が3,000未満又は重量平均分子量が10,000未満であると、耐揮発油性及び耐ガソリン性に劣る可能性があり、数平均分子量が10,000を超えたり、重量平均分子量が18,000を超えたりすると、密着性や貯蔵安定性に劣る可能性がある。
【0016】
<b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂>
b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂として、例えば、(メタ)アクリルモノマーを、過酸化物の存在下で、下記d.塩素化ポリオレフィン樹脂にて説明する方法等により得た塩素化ポリオレフィンにグラフト重合させて得られるものや、溶剤中で塩素化ポリオレフィンの原料モノマー等を、上記アクリル系モノマーやその他のモノマーとともに重合する方法により得ることができる。
(メタ)アクリルモノマーとしては、上記「<a.(メタ)アクリル樹脂>」の項目で列挙したモノマーを使用することができる。
【0017】
b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂に使用されるポリオレフィンは、特に制限はなく、ポリオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン系不飽和炭化水素の共重合体又は単独重合体からなる樹脂、ゴム状物等である。具体的には、プロピレン−α−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリ−4−メチル−1ペンテン等が挙げられる。さらには、上記のα−オレフィンの2種以上と共役又は非共役ジエンとの共重合体、例えば、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエン共重合体など、α−オレフィンと共役又は非共役ジエンとの共重合体、例えば、プロピレン−ブタジエン共重合体、プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体類など、ビルモノマー等のモノマーとα−オレフィンの共重合体及びその部分ケン化物も一例として挙げられる。
【0018】
また、b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂は、水酸基含有(メタ)アクリレートを、過酸化物存在下で、塩素化ポリオレフィンにグラフト重合させて得られる、水酸基含有(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィンであってもよい。
ここで使用される水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂としては、スーパークロン223M(日本製紙(株)製)、同224H、同260F、アクリディックCL−408(DIC(株)製)等を使用することができる。
本発明の塗料組成物中のb.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量としては、上記a.(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を好ましくは10質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上25質量部以下となる範囲である。含有量が10質量部未満であると、耐温水性や耐候性、密着性に劣る可能性があり、30質量部を超えると、塗膜の光沢の低下、耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性、耐ガソリン性、貯蔵安定性に劣る可能性がある。
【0019】
<c.ポリイソシアネート化合物>
c.ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート基を2個以上有する化合物を使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート;そのモノマー及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。硬化性が良好であることから、上記ポリイソシアネート化合物は、多量体であることが好ましい。中でもイソシアネート基を3個以上有するものが好ましい。
【0020】
ポリイソシアネート化合物は、ブロックされているものでも、ブロックされていないものでも、どちらでも好適に使用することが可能である。
上記ポリイソシアネート化合物として、ブロックイソシアネートを使用する際には、使用されるブロック化剤としては特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトン等の活性メチレン系;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルへキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル、フルフリルアルコール等のアルコール系;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン系等を挙げることができる。
【0021】
c.ポリイソシアネート化合物としては、市販品を用いることができ、イソシアヌレート変性された市販品として「コロネ−トHX」(東ソー(株)製)、「デュラネートTPA−100」(旭化成(株)製)、「タケネートD−170N」(三井化学(株)製)等が挙げられる。ビュレット変性された市販品として「タケネートD−165NN」(三井化学(株)製)等が挙げられる。また、トリメチロールプロパンアダクト変性された市販品として「コロネートL」(東ソー(株)製)、「タケネートD−102」(三井化学(株)製)、「タケネートD−140N」(三井化学(株)製)等が挙げられる。更に、イソシアネートをブロック剤でマスクして安定化したブロック型イソシアネートの市販品として、「コロネート2507」(東ソー(株)製)、「コロネート2513」(東ソー(株)製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の塗料組成物において、c.ポリイソシアネート化合物はa.(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して好ましくは5質量部以上20質量部以下の範囲、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下の範囲内となるように配合することができる。又は、c.ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO基)とa.(メタ)アクリル樹脂中の水酸基(OH基)との当量比(NCO/OH)は、得られる塗膜の付着性及び硬化性のバランスの観点から、好ましくは0.5/1以上3.0/1以下、さらに好ましくは0.8/1以上2.5/1以下とすることができる。ここで、当量比(NCO/OH)を0.5/1以下とすると耐薬品性が劣る可能性があり、当量比(NCO/OH)を3.0/1以上では可使時間が短くなる可能性がある。
【0023】
<d.塩素化ポリオレフィン樹脂>
本発明の塗料組成物は、d.塩素化ポリオレフィン樹脂を含有しても良い。塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に塩素が導入されて得られる樹脂である。塩素化ポリオレフィン樹脂の原料であるポリオレフィンとしては、上記b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂にて使用されるポリオレフィンを採用できる。d.塩素化ポリオレフィンとしては、スーパークロン822、3221S、3228S(日本製紙(株)製)等を使用することができる。
本発明の塗料組成物にd.塩素化ポリオレフィン樹脂を配合する場合には、a.(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部までとなるように、さらに好ましくは8質量部までとなるように配合することができる。10質量部を超えて配合すると、光沢性、耐揮発油性、耐ガソリン性及び貯蔵安定性に劣る可能性がある。
d.塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法は特に限定されないが、四塩化炭素などの有機溶剤にポリオレフィンを溶解して塩素化する溶液塩素化法、ポリオレフィンを塊状状態で塩素化する方法、ポリオレフィンを水性懸濁状態で塩素化する方法などが知られている。
【0024】
例えば、溶液塩素化法において、塩素の導入は、反応系への塩素ガスの吹き込みにより行うことができる。塩素ガスの吹き込みは、紫外線の照射下で行ってもよいし、ラジカル反応開始剤の存在下又は不存在下で行ってもよい。塩素ガスの吹き込みを行う際の圧力は制限されず、常圧であってもよいし、加圧下であってもよい。塩素ガスの吹き込みを行う際の温度は特に制限されないが、通常は50〜140℃である。
このようにしてポリオレフィンへの塩素の導入を行って塩素化ポリオレフィンを得ることができる。その後、系内の塩素系溶媒は、通常、減圧などにより留去されるか、或いは、有機溶剤で置換される。
【0025】
ラジカル反応開始剤としては、有機過酸化物系化合物又はアゾニトリル類を使用してよい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエートなどが挙げられる。アゾニトリル類としては、例えば、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
【0026】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、顔料、有機溶剤、硬化触媒、表面調整剤、沈降防止剤、消泡剤、粘性調整剤、光輝材配向剤、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS)等の成分を含有していてもよい。本発明の塗料組成物に用いることができる顔料としては、メタリック顔料、パール顔料、着色顔料及び体質顔料を挙げることができる。メタリック顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、銅ブロンズフレーク、雲母状酸化鉄、マイカフレーク、金属酸化物を被覆した雲母状酸化鉄、金属酸化物を被覆したマイカフレーク等が挙げられる。パール顔料としては、例えば、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等が挙げられる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラック等の無機顔料;アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカ等が挙げられる。これらを、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、ポリオレフィン系樹脂成形体の表面を塗装するための塗料として使用することができる。このポリオレフィン系樹脂成形体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体等の公知のポリオレフィン系樹脂成形体でよく、架橋されたものでも、未架橋のものでも良く、又はエラストマーでもよい。
本発明の塗料組成物は着色又は無色のクリアー塗料としても良く、着色塗料とすることもできる。また必要に応じて、ポリオレフィン系樹脂成形体の表面に予め下塗り層を形成させておいてもよく、下塗り層を形成させておかなくてもよい。また本発明の塗料組成物からなる塗膜上にさらに上塗り層や印刷層を形成させておくことができるが、形成させなくてもよい。
また本発明の塗料組成物は、a.(メタ)アクリル樹脂を含有する成分とc.ポリイソシアネート化合物を含有する成分との2成分からなる2液型の塗料組成物とすることができ、ポリイソシアネート化合物としてブロックポリイソシアネート等を採用して1液型とすることもできる。このとき、b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂は、上記a.成分及び/又はc.成分に配合しておくことができる。
【実施例】
【0028】
<a.(メタ)アクリル樹脂(A−1〜A−19)の合成>
(合成例1)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた4つ口フラスコに酢酸イソブチルを150質量部仕込み、窒素気流中で撹拌しながら90℃温度まで昇温した。
メチルメタクリレート(MMA)47質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)35質量部、ラウリルメタクリレート(LMA)10質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)7質量部、メタクリル酸(MAA)1質量部、及び、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)((株)日本ファインケム製、ABN―E)3質量部からなる混合液を、滴下装置を用いて2時間かけて前記フラスコ中に滴下して重合反応を行った。
混合液を全て滴下したのち、90℃のまま3時間撹拌を続けて重合反応を行い、(メタ)アクリル樹脂(A−1)を合成した。加熱を止めて室温まで冷却し、(A−1)樹脂を含む樹脂組成物(固形分比率40質量%)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A−1)の水酸基価は30mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。なお、使用したモノマーの配合比から理論計算した(メタ)アクリル樹脂(A−1)のガラス転移温度(Tg)は44℃であった。
【0029】
(合成例2〜19)
下記表1及び2記載の配合比に従い、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル樹脂(A−2)〜(A−19)を合成し、各(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物を得た。
なお、得られた各樹脂の水酸基価、重量平均分子量、ガラス転移温度の求め方は以下の通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
(メタ)アクリル樹脂(A−1〜A−19)の合成に際し、上記合成例1に記載した以外は以下に示すものを使用した。
tBMA・・・t−ブチルメタクリレート
ライトエステルL−7・・・炭素数12〜13の長鎖アルキルを有する(メタ)アクリレートの混合物(共栄社化学(株)製)
SA・・・ステアリルアクリレート
HEA・・・ヒドロキシエチルアクリレート
【0033】
表1、2に記載した、「ガラス転移温度」の計算方法について説明する。
<ガラス転移温度の計算>
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、当該樹脂の原料として用いられるモノマー成分に含まれているモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)とモノマーの質量分率から、式(I):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn (I)
〔式中、Tgは、求めようとしている(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各モノマーの質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各モノマーの質量分率に対応するモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。
本発明においては、(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、式(I)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊モノマー、多官能モノマーなどのようにガラス転移温度が不明のモノマーについては、ガラス転移温度が判明しているモノマーのみを用いてガラス転移温度を求めた。
【0034】
表1、2に記載した、「水酸基価」の測定方法や、「数平均分子量」と「重量平均分子量」の測定機器と測定条件について説明する。
(水酸基価の測定)
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量りとり、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間撹拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0035】
(数平均分子量、重量平均分子量の測定)
以下のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム測定条件で行った。
使用機器:HLC8220GPC(東ソー(株)製)
使用カラム:TSKgel SuperHZM−M、TSKgel GMHXL−H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(東ソー(株)製)
検出器:RI
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
【0036】
塗料組成物の作製
<実施例1>
(メタ)アクリル樹脂(A−1)を含む樹脂組成物を250質量部(固形分としては100質量部)、アクリル変性塩素化ポリオレフィン(日本製紙(株)製スーパークロン223M、固形分35質量%)を40質量部(固形分としては14質量部)、イソシアネート化合物(旭化成(株)製TPA−100:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレートタイプ、イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%)10質量部を混合し、さらに酢酸イソブチルで希釈して塗料組成物(固形分比率20質量%)を作製した。
【0037】
<実施例2〜21、及び、比較例1〜21>
表3〜6記載の配合比に従い、実施例1と同様に実施例2〜21、比較例1〜21の各塗料組成物を得た。
実施例及び比較例の各塗料組成物の調製に際し、以下に示すものを使用した。
スーパークロン223M:日本製紙(株)製のアクリル変性塩素化ポリオレフィン、固形分35質量%
スーパークロン224H:日本製紙(株)製のアクリル変性塩素化ポリオレフィン、固形分40質量%
スーパークロン260F:日本製紙(株)製のアクリル変性塩素化ポリオレフィン、固形分35質量%
アクリディックCL−408:DIC(株)製のアクリル変性塩素化ポリオレフィン、固形分60質量%
TPA−100:旭化成(株)製のヘキサメチレンジイソシアネートのヌレートタイプ、イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%
スーパークロン822:日本製紙(株)製の酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率24.5%、固形分20質量%
スーパークロン3221S:日本製紙(株)製の酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率21.0%、固形分100質量%
スーパークロン3228S:日本製紙(株)製の酸変性塩素化ポリオレフィン、塩素含有率28.0%、固形分100質量%
なお、表3〜6の配合量は固形分で示す。
【0038】
<試験板の作成>
イソプロパノールにて脱脂したポリプロピレン製の基材(サイズ150mm×100mm×1.5mm)に、各塗料組成物をスプレーで塗装し、10分間室温で静置した後、80℃で40分間加熱硬化させ、厚み20μmの塗膜を有する各試験板を作製した。
なお、後述する光沢性の評価については、前記で使用した塗料組成物とは別に光沢性評価用の塗料組成物(塗料組成物の固形分100質量部に対して、アルミペースト7質量部(固形分比)を添加したもの)を用意し、これを使用して同様にポリプロピレン製の基材にスプレーで塗装し、加熱硬化させて光沢性評価用の試験板を作製した。
なお、アルミペーストは東洋アルミニウム(株)製のアルペースト1109M(アルミニウム顔料、固形分65質量%)を使用した。
【0039】
<評価>
実施例1〜21及び比較例1〜21の塗料組成物の「密着性」「光沢性」「耐温水性」「耐揮発油性」「耐酸性」「耐アルカリ性」「耐ガソリン性」「貯蔵安定性」評価について、その評価方法と評価基準について以下説明し、これら評価結果を表3〜6に示した。
(密着性)
JIS K5600−5−6「塗膜の機械的性質―付着性」に準拠したクロスカット法により付着性試験を行い、ポリプロピレン基材に対する塗膜の密着性を下記評価基準に基づいて評価した。
なお、評価は5が良好で、点数が低くなるにつれて悪い結果を示している。
この評価が4以上のものを、密着性に優れた塗料組成物であると判断した。
5: カットのふちが完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない
4: カットの交差点における塗膜の小さな剥がれがあり、剥離部分の面積が5%未満である
3: 剥離部分の面積が、5%以上15%未満である
2: 剥離部分の面積が、15%以上35%未満である
1: 剥離部分の面積が、35%以上である
【0040】
(光沢性)
光沢性評価用の試験板を使用し、光沢計(BYK−Gardner GmbH製)を用いて60°光沢値を測定した。この光沢値が高いほど、塗膜外観が良好であることを示す。
この光沢値が90以上のものを、光沢性に優れた塗料組成物であると判断した。
【0041】
(耐温水性)
JIS K5600−6−2「塗膜の化学的性質―耐液体性(水浸せき法)」に準拠した方法により、試験板を40℃の温水に10日間浸漬させた。10日間経過後、温水から試験板を取り出して室温で24時間乾燥させたのち、塗膜外観を目視で観察した。評価は下記の基準で行った。また、温水浸漬後の試験板について、前述の付着性試験を行い、密着性の評価も行った。
○: ブリスター、白化、膨れ、割れ、剥がれなど外観異常なし
×: ブリスター、白化、膨れ、割れ、剥がれなど外観異常あり
【0042】
(耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性)
JIS K5600−6−1「塗膜の化学的性質―耐液体性(一般的方法)」に準拠した方法により、試験板を各溶媒中に浸漬させたあとの塗膜の状態を観察することで、耐揮発油性、耐酸性、及び、耐アルカリ性、の各評価を行った。各評価の試験条件は下記の通りとした。
耐揮発油性・・・試験板を浸漬させる溶媒はヘプタンを使用した。浸漬温度は25℃、浸漬時間は3時間とした。
【0043】
耐揮発油性は、試験板の塗膜の状態(フクレ)を下記の基準で目視評価した。
なお、数値が高いほど良好な結果を表す。
この評価が4以上のものを、耐揮発油性に優れた塗料組成物であると判断した。
5: 塗膜フクレが全く生じていない。
4: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、1%未満と判断される。
3: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、1%以上3%未満と判断される。
2: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、3%以上7%未満と判断される。
1: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、7%以上と判断される。
【0044】
耐酸性・・・試験板を浸漬させる溶媒は0.1N塩酸を使用した。浸漬温度は25℃、浸漬時間は24時間とした。
耐アルカリ性・・・試験板を浸漬させる溶媒は0.1N水酸化ナトリウム水溶液を使用した。浸漬温度は55℃、浸漬時間は4時間とした。
【0045】
耐酸性、耐アルカリ性は、試験実施前後の色度の変化率を測定した。分光色差計(CM−3700A、コニカミノルタ(株)製)を用いて波長460nmの反射率及び色度(L値、a値、b値)を測定した。
更に得られた色度の測定結果から試験前後の色度の変化率(ΔE*ab)を式1で求めた。
ΔE*ab=((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2・・・(式1)
求めたΔE*abを下記の基準で評価した。
なお、数値が高いほど良好な結果を表す。
この評価が4以上のものを、耐酸性又は耐アルカリ性に優れた塗料組成物であると判断した。
5: ΔEが1未満である。
4: ΔEが1以上2未満である。
3: ΔEが2以上3未満である。
2: ΔEが3以上5未満である。
1: ΔEが5以上である。
【0046】
(耐ガソリン性)
ガソリンを十分に浸み込ませた脱脂綿を、各試験板の塗膜の上にのせ、500gの荷重をかけた状態で20往復ラビングさせた後の塗膜の状態を目視観察した。
塗膜の剥がれの評価を下記の基準に基づいて評価した。
なお、数値が高いほど良好な結果を表す。
この評価が4以上のものを、耐ガソリン性に優れた塗料組成物であると判断した。
5: 剥がれの大きさが10倍に拡大しても視認できない
4: 剥がれの大きさが1mm未満
3: 剥がれの大きさが1mm以上3mm未満
2: 剥がれの大きさが3mm以上10mm未満
1: 剥がれの大きさが10mm以上
【0047】
(貯蔵安定性(−20℃))
JIS K5600−2−7の「4.低温安定性」に記載されている方法に準じ、本発明のc.ポリイソシアネート化合物を添加する前の各塗料組成物、すなわち、本発明のa.成分とb.成分及び必要に応じd.成分を混合した組成物を、−20℃で7日間保存し、7日間経過後の状態を観察して下記の基準に基づいて評価を行った。
○: 流動性良好
×: 結晶物生成、増粘が見られる
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
本発明に沿った具体例である実施例1〜21によれば、密着性、耐温水性、耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性、耐ガソリン性、貯蔵安定性に優れ、かつ光沢が高いという効果を奏した。
これに対して、b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィンの含有量が少ない比較例1や、b.(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィンを含有しない比較例11によれば、密着性に劣り、逆にアクリル変性塩素化ポリオレフィンの含有量が多い比較例2及び3によれば、光沢性が低く、耐揮発油性、耐ガソリン性、貯蔵安定性に劣る結果となった。
(メタ)アクリル樹脂が長鎖アルキル基を含有しない比較例4によれば、密着性に劣っていた。さらに(メタ)アクリル樹脂の水酸基価が低い比較例5〜7、15〜17によれば、少なくとも耐揮発油性及び耐ガソリン性に劣り、場合により耐温水性、耐酸性、耐アルカリ性にも劣る結果となった。逆に(メタ)アクリル樹脂の水酸基価が高過ぎる比較例8〜10、12〜14によれば、少なくとも耐温水性としての密着性に劣る結果となった。同じく(メタ)アクリル樹脂の水酸基価が高い比較例20及び21によれば、耐揮発油性、耐ガソリン性及び貯蔵安定性に劣る結果となった。
また(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が低い比較例18によれば、耐揮発油性及び耐ガソリン性に劣る結果となった。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が高すぎる比較例19によれば、密着性に劣る結果となった。
c.ポリイソシアネート化合物を使用しない比較例5によれば、耐揮発油性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐ガソリン性に劣る結果となった。