(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528072
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】ヒートシンク構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20190531BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20190531BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 B
H01L23/46 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-161695(P2015-161695)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-41521(P2017-41521A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591031485
【氏名又は名称】株式会社高砂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭33−014930(JP,Y1)
【文献】
実開平05−082051(JP,U)
【文献】
特開2001−217357(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0321046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/467
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁面が長手方向に延在する複数のフィンが並設されたヒートシンクの前記フィン間に乱流発生板が装填されたヒートシンク構造であって、
前記乱流発生板は、
前記フィンに沿って延在する板状本体部と、
前記板状本体部の平坦面から前記フィンの前記側壁面に向かって突出すると共に、先端部が前記フィンの前記側壁面に圧接される複数の翼片と、を備える、
ヒートシンク構造。
【請求項2】
前記翼片の基端は前記板状本体部に連結され、前記翼片は、前記フィン間で前記板状本体部の前記平坦面に対して直角以外の角度で突出する、
請求項1記載のヒートシンク構造。
【請求項3】
前記板状本体部には開口部が設けられ、前記開口部の外形の一部に前記翼片の前記基端が含まれている、
請求項2に記載のヒートシンク構造。
【請求項4】
前記翼片は、板材に前記開口部が形成されるように門形の切除を行った後、切除部分により囲まれた前記翼片が前記板材に対して所定角度になるように前記翼片の前記基端で折り曲げられている、
請求項3に記載のヒートシンク構造。
【請求項5】
前記翼片は、前記フィンの長手方向及び前記フィンの高さ方向において、一定の周期で前記板状本体部の前記平坦面から左右交互に突出している、
請求項1〜4の何れか一項に記載のヒートシンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を発生させる電源ユニットなどに固定して利用されるヒートシンクの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2009−88056号公報がある。この公報に記載されたヒートシンクは、ベース部上に垂直に立設されてなる複数のフィンを有している。フィンは、長手方向に延在すると共に、互いに平行になるように配置されている。そして、各フィンは、長手方向において複数のフィン部分に分断されている。分断されたフィン部分において、フィンの根元は、長手方向で一つ置きにV字状に曲げられている。それによって、フィンは僅かに側方にオフセットされる。このような構成により、ヒートシンクは、長手方向において、オフセットしないフィンとオフセットされたフィンとが交互に出現する。その結果、フィンに沿って流れる風を、フィン間で乱流にし易くしている。
前述したヒートシンクの製造に際し、ヒートシンクのフィンをカッタにより長手方向で分断させる。その後、任意のフィンを側方に僅かにオフセットさせる。そのためには専用の加工機が利用される。この加工機の加工型は、各フィンを差し込むための多数の孔を有する。加工機は加工型を側方にシフトさせるための機構を備えている。そして、前述した構成のヒートシンクを製造するにあたって、加工機の加工型の孔内にフィンが先ず差し込まれる。その後、加工型を水平方向に僅かに移動させる。これにより、フィンの根元をV字状に変形させて、フィンを水平方向にオフセットさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−88056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のヒートシンクでは、フィンの根元の曲げ角度に限界があり、様々なフィンの間隔に対応させ難く、汎用性を高め難いといった問題点がある。
【0005】
本発明は、放熱効果を向上させるにあたって、汎用性を高めることができるヒートシンク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側壁面が長手方向に延在する複数のフィンが並設されたヒートシンクの前記フィン間に乱流発生板が装填されたヒートシンク構造であって、
前記乱流発生板は、
前記フィンに沿って延在する板状本体部と、
前記板状本体部の平坦面から前記フィンの前記側壁面に向かって突出すると共に、先端部が前記フィンの前記側壁面に圧接される複数の翼片と、を備える。
【0007】
ヒートシンク構造は、ヒートシンクに乱流発生板が差し込まれて構成される。ヒートシンクには、冷却が最も必要な箇所に乱流発生板が適宜に差し込まれる。これにより、ヒートシンクの局所的な冷却をも可能にする。例えば、発熱するパワーユニットと、発熱しにくい制御ユニットとをヒートシンクに並置させる場合、パワーユニット側を集中的に冷却する必要がある。このような場合に、乱流発生板をパワーユニット側に配置させると、的確で効率の良い冷却が可能になる。また、乱流発生板は複数の翼片を有しているので、ヒートシンクのフィン間を流れる風に乱流を容易に発生させることができる。これにより、ヒートシンクを効率良く冷却することができる。乱流発生板は、ヒートシンクのフィン間の全てに装填させてもよく、または全フィン間の一部にのみ装填させてもよい。従って、ヒートシンクの冷却効率を調整し易く、汎用性を高めることができる。
【0008】
また、前記翼片の基端は前記板状本体部に連結され、前記翼片は、前記フィン間で前記板状本体部の前記平坦面に対して直角以外の角度で突出すると好ましい。
翼片は板状本体部の平坦面から直角以外の角度で突出している。その結果、翼片の先端部を板状本体部の平坦面に対して強く圧接させることができる。これにより、乱流発生板の脱落を確実に防止することができる。さらに、翼片によってフィン間で乱流を起こし易く、ヒートシンクの冷却効率が向上される。
【0009】
また、前記板状本体部には開口部が設けられ、前記開口部の外形の一部に前記翼片の前記基端が含まれていると好ましい。
このような構成を採用すると、開口部内を風が往き来することができる。よって、乱流を促進させることができる。
【0010】
また、前記翼片は、板材に前記開口部が形成されるように門形の切除を行った後、切除部分により囲まれた前記翼片が前記板材に対して所定角度になるように前記翼片の前記基端で折り曲げられていると好ましい。
このような手順で翼片を成形すると、乱流発生板の製造が容易である。
【0011】
また、前記翼片は、前記フィンの長手方向及び前記フィンの高さ方向において、一定の周期で前記板状本体部の前記平坦面から左右交互に突出していると好ましい。
このような構成によって、乱流の発生を促進させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放熱効果を向上させるにあたって、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るヒートシンク構造の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】ヒートシンクに乱流発生板を装着する前後の状態を示す斜視図である。
【
図3】ヒートシンクに装填する前の乱流発生板の形状を示す斜視図である。
【
図4】乱流発生板の製造途中の状態を示す平面図である。
【
図5】ヒートシンクに乱流発生板を装着する前後の状態を示す斜視図である。
【
図6】ヒートシンクに装着した後の乱流発生板の形状を示す斜視図である。
【
図7】乱流発生板による風の流れの一例を示す正面図である。
【
図8】乱流発生板による風の流れの一例を示す斜視図である。
【
図9】乱流発生板の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るヒートシンク構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示されるように、ヒートシンク1は、電気自動車の急速充電器やシステム電源などに利用される。ヒートシンク1のベース1aの底面には、発熱するパワーユニット4と、発熱しにくい制御ユニット3とが密着するように並置されている。パワーユニット4は、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)、ダイオード、IGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor: 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのパワー半導体のいずれかを含む部品または回路から構成され、制御ユニット3は、オペアンプ、コンパレータ、マイコンチップのいずれか含む部品または回路から構成されている。
【0016】
ヒートシンク1の平板状ベース1aには複数本のフィン2が並設されている。ヒートシンク1はアルミ材の押し出し成形により製造されている。各フィン2の側壁面2aは長手方向に延在している。一方のフィン2の側壁面2aと他方のフィン2の側壁面2aとは対向している。そして、一方のフィン2の側壁面2aと他方のフィン2の側壁面2aとの間の隙間S内に乱流発生板10が装填される。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、アルミ材又は鋼材からなる乱流発生板10は、ヒートシンク1の隙間S内に装填される。乱流発生板10は、フィン2に沿って延在する矩形の板状本体部11と、本体部11の平坦面11aから突出する複数枚の翼片12とを有する。ヒートシンク1の隙間S内に乱流発生板10が装填された状態で、各翼片12は本体部11からフィン2の側壁面2aに向かって突出する。各翼片12の先端部12bはフィン2の側壁面2aに圧接される。これによって、乱流発生板10がヒートシンク1の隙間Sから脱落するのを防止している。
【0018】
各翼片12の基端12aは板状本体部11に連結されている。各翼片12は、ヒートシンク1に装填する前の状態で、板状本体部11の平坦面11aに対して直角に突出する。各翼片12は、ヒートシンク1に装填した後の状態で、板状本体部11の平坦面11aに対して直角以外の角度αで突出する(
図4及び
図5参照)。
【0019】
その結果、翼片12の先端部12bを板状本体部11の平坦面11aに対して強く圧接させることができる。よって、乱流発生板10の脱落を確実に防止することができる。さらに、このような翼片12によってフィン2間で乱流を起こし易く、ヒートシンク1の冷却効率を向上させることができる。例えば、各翼片12は、隙間S内で斜め上方に向かって45度の角度αで突出する。
【0020】
板状本体部11には複数の矩形の開口部13が設けられている。開口部13の矩形の外形の一辺には翼片12の基端12aが含まれている。開口部13は、板状本体部11上でマトリックス状に配列され、各翼片12は、各開口部13の下端から突出する。この突出にあたって、翼片12は、フィン2の長手方向及びフィン2の高さ方向において、一定の周期で板状本体部11の平坦面11aから左右交互に突出している。例えば、翼片12は、板状本体部11から左と右とが一枚ずつ交互に出現するように突出する。
【0021】
翼片12が出現する周期は、開口部13が出現する周期と同じであり、翼片12は開口部13に一対一で対応している。開口部13の採用により、開口部13内を風が往き来することができるので、開口部13によって乱流を促進させることができる(
図7参照)。特に、開口部13がマトリックス状に配列されることで、乱流の発生を更に促進させることができる。
【0022】
図4に示されるように、板材Bに開口部13が形成されるように、門形の打ち抜き加工をして、板材Bから部分的な切除を行う。その後、門形の切除部分14により囲まれ翼片12を、板材Bの平坦面11aに対して所定角度になるように基端12a(一点鎖線参照)で直角に折り曲げる。このようにして、各翼片12を乱流発生板10に作り出すことができる。板材Bを利用して、このように成形することで、溶接を利用することなく、乱流発生板10の製造が容易になる。
【0023】
図2及び
図5に示されるように、乱流発生板10を一方のフィン2と他方のフィン2との間の隙間S内に上から差し込む。このとき、板状本体部11に対して直角に延在する翼片12は、基端12aを中心にして直角以外の角度αで曲がって、隙間S内に装填されていく。装填完了後において、隙間S内の乱流発生板10は、
図6に示された形状をなす。このような装填作業によって、翼片12の先端部12bはフィン2の側壁面2aに強く圧着される。特に、翼片12の先端部12bは円弧の形状をなしているので、翼片12の先端部12bは、フィン2の側壁面2aに対する接触面積を減らして、翼片12をフィン2間の隙間S内に装填させ易い。
【0024】
乱流発生板10は、ヒートシンク1のベース1aに装着されたパワーユニット4に対応する位置で、隙間S内に長手方向で並べるようにして差し込まれる(
図1参照)。乱流発生板10は、ヒートシンク1に関して必要な面積に対応する枚数だけ並べるように差し込むだけの作業でよい。作業性は極めて良好である。
【0025】
ヒートシンク構造にあっては、ヒートシンク1に乱流発生板10が差し込まれて構成される。ヒートシンク1において、冷却が最も必要な箇所に乱流発生板10を適宜に差し込むことで、局所的な冷却をも可能にする。例えば、
図1に示されるように、発熱するパワーユニット4と、発熱しにくい制御ユニット3とをヒートシンク1に並置させる場合に、パワーユニット4側を集中的に冷却する必要がある。このような場合に、乱流発生板10をパワーユニット4側に配置させることで、的確で効率の良い冷却が可能になる。
【0026】
さらに、乱流発生板10は複数の翼片12を有しているので、ヒートシンク1のフィン2間を流れる風に、
図7及び
図8に示されるような乱流を発生させることができる。このような乱流によって、ヒートシンク1を効率良く冷却することができる。乱流発生板10は、ヒートシンク1のフィン2間の全てに装填させてもよく、またはヒートシンク1の全フィン2間の一部にのみ装填させてもよい。乱流発生板10の採用により、ヒートシンク1の冷却効率が調整し易く、汎用性を高めることができる。
【0027】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、下記のような種々の変形が可能である。
【0028】
図9に示されるように、乱流発生板20は、矩形の板状本体部21を有している。この本体部21には、マトリックス状に配列した矩形の開口部23が形成されている。各翼片22は、各開口部13の下端から突出する。翼片22は開口部23に一対一で対応し、本体部21で左右一対をなす平坦面21aのうちの一方から同じ角度αをもって一方向に突出している。各翼片22は、ヒートシンク1に装填する前の状態において、板状本体部21の平坦面21aに対して直角に突出する。
【0029】
各翼片22は、ヒートシンク1の隙間S内に装填した後の状態で、板状本体部21の平坦面21aに対して直角以外の角度αで突出する(
図9参照)。例えば、各翼片22は、基端22aで折れ曲がるようにして、隙間S内で斜め上方に向かって45度の角度αで突出する。乱流発生板20をヒートシンク1の隙間S内に装填した場合、翼片22の円弧状の先端部22bはフィン2の一方の側壁面2aに圧着され、本体部21の平坦面21aはフィン2の他方の側壁面2aに圧着される。
【0030】
前述した乱流発生板10,20の翼片12,22は、ヒートシンク1の隙間S内に装填される前の状態において、板状本体部11,21に対して直角で突出してなくてもよい。
【0031】
乱流発生板10,20の長さや高さは、フィン2の長さや高さに合わせて適宜変更される。
【0032】
乱流発生板10,20の開口部13,23は、矩形に限定されずに円形や三角、多角形であってもよい。
【0033】
翼片12,22の先端部12b,22bは、のこ歯であっても波形であってもよい。
【0034】
翼片12,22の形状は、矩形であっても三角形状であってもよい。
【0035】
翼片12,22は、隙間S間で斜め下方に向かって突出するように配置されてもよい。翼片12,22の突出角度αは、乱流発生板10,20の材質などを考慮して、乱流発生板10,20が隙間Sから抜け難くなるように設定される。
【0036】
隙間S内に乱流発生板10,20を装填するにあたって、翼片12,22は、基端12a,22aで塑性変形しても弾性変形してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ヒートシンク
1a ベース
2 フィン
2a フィンの側壁面
10 乱流発生板
11 板状本体部
11a 板状本体部の平坦面
12 翼片
12a 基端
12b 先端部
13 開口部
15 切り残し部
20 乱流発生板
21 板状本体部
21a 平坦面
22 翼片
23 開口部