(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような耐候性試験機では一般に、耐候性試験における再現性を向上させる(試験結果のばらつきを抑える)ことが求められている。
【0006】
したがって、耐候性試験における再現性を向上させることが可能な耐候性試験機および耐候性試験機用試料ホルダを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダは、耐候性試験機における試験槽内
において光源を中心位置とする円環状の試料枠に取り付けられると共に試料を保持するための
耐候性試験機用試料ホルダであって、試料が保持される試料取付部を有する基部と、試料取付部
における一方の側面側へ向かって、基部から張り出すように設けられた
第1の張出部と
、試料取付部における他方の側面側へ向かって、基部から張り出すように設けられた第2の張出部とを備えたものである。
第1の張出部は、一方の側面側の他の耐候性試験機用試料ホルダにおける第2の張出部が重畳される、第1の重畳面を有していると共に、第2の張出部は、他方の側面側の他の耐候性試験機用試料ホルダにおける第1の張出部が重畳される、第2の重畳面を有している。第1の張出部では、試料取付部と直交する奥行方向に沿って延びる第1の段差を介して、第1の重畳面が基部よりも光源に対する背面側に配置されていると共に、第2の張出部では、上記奥行方向に沿って延びる第2の段差を介して、第2の重畳面が基部よりも上記背面側に配置されている。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機は、試験槽と、
この試験槽内において光を放射する光源と、試験槽内において光源が中心位置となるように配置された円環状の試料枠と、試験槽内
において試料枠にそれぞれ取り付けられると共に試料を保持するための複数の試料ホルダとを備えたものである。これらの複数の試料ホルダはそれぞれ、試料が保持される試料取付部を有する基部と、試料取付部
における一方の側面側へ向かって、基部から張り出すように設けられた
第1の張出部と
、試料取付部における他方の側面側へ向かって、基部から張り出すように設けられた第2の張出部とを備えている。複数の試料ホルダ同士が円環状の試料枠に沿って互いに隣接配置されたときに、一の試料ホルダにおける第1の張出部と、一方の側面側の他の試料ホルダにおける第2の張出部とが互いに重畳されて、一の試料ホルダに第1の重畳面が設けられると共に、一の試料ホルダにおける第2の張出部と、他方の側面側の他の試料ホルダにおける第1の張出部とが互いに重畳されて、一の試料ホルダに第2の重畳面が設けられる。複数の試料ホルダの各々において、第1の張出部では、試料取付部と直交する奥行方向に沿って延びる第1の段差を介して、第1の重畳面が基部よりも光源に対する背面側に配置されていると共に、第2の張出部では、上記奥行方向に沿って延びる第2の段差を介して、第2の重畳面が基部よりも上記背面側に配置されている。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダおよび耐候性試験機では、試料取付部を有する基部から、その試料取付部の
双方の側面側へ向かって
それぞれ張り出している、
第1および第2の張出部が設けられている。これにより、例えば、複数の試料ホルダ同士が
円環状の試料枠に沿って互いに隣接配置されたときに、それらの試料ホルダ間に隙間が生じにくくなるため、例えば試験槽内を循環する循環風の乱れが抑えられる結果、各試料取付部上の試料間での温度差が低減する。
また、第1の張出部に第1の重畳面が設けられると共に第2の張出部に第2の重畳面が設けられ、第1の張出部では、第1の段差を介して第1の重畳面が基部よりも上記背面側に配置されていると共に、第2の張出部では、第2の段差を介して第2の重畳面が基部よりも上記背面側に配置されていることにより、以下のようになる。すなわち、複数の試料ホルダ間に隙間が更に生じにくくなるため、例えば上記した循環風の乱れが更に抑えられる。その結果、各試料取付部上の試料間での温度差が更に低減するため、耐候性試験における再現性が更に向上する。
【0010】
なお、耐候性試験機用試料ホルダにおける第1の重畳面と、一方の側面側の他の耐候性試験機用試料ホルダにおける第2の重畳面とが、互いに角度を成して重畳すると共に、耐候性試験機用試料ホルダにおける第2の重畳面と、他方の側面側の他の耐候性試験機用試料ホルダにおける第1の重畳面とが、互いに角度を成して重畳するようにしてもよい。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダおよび耐候性試験機では、第1および第2の張出部同士において、
一方の側面側へ向けて張り出している
第1の張出幅
と、他方の側面側へ向けて張り出している第2の張出幅とが、互いに異なっていると共に、上記奥行方向に沿った
第1の段差の長さと第2の段差の長さとが、互いに異なっているようにしてもよい。このようにした場合、例えば上記したように隣接配置された複数の試料ホルダ間に、隙間がより一層生じにくくなると共に、
第1および第2の張出部同士を重畳させる際に、
これらの第1および第2の張出部同士の干渉が
、防止される。したがって、上記した試料間での温度差がより一層低減するため、耐候性試験における再現性がより一層向上すると共に、試料ホルダの取り付け作業が容易となるため、利便性が向上する。
【0012】
また、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダでは、上記基部が、
第1および第2の張出部の張出方向と直交する高さ方向に沿って、複数の試料取付部を有しているようにしてもよい。このようにした場合、上記高さ方向に沿って複数の試料が取り付けられるため、試料ホルダの試験槽内への1回の着脱作業によって、複数の試料の取り付けや取り外しが同時に行われるようになる。その結果、作業の簡便化が図られるため、利便性が向上する。また、
第1および第2の張出部が設けられていることから、試料ホルダ全体が上記高さ方向に長くなっても、機械的な強度低下が防止される。
【0013】
この場合において、複数の試料取付部同士が、上記高さ方向に沿って所定の屈曲角にて屈曲しているようにしてもよい。言い換えると、上記基部が、
第1および第2の張出部の張出方向と直交する高さ方向に沿って、互いに屈曲された複数の試料取付部を有しているようにしてもよい。このようにした場合、例えば、耐候性試験機に適用される光源から発せられる光の放射照度が、これら複数の試料取付部間でばらつきにくくなる。その結果、各試料取付部上の試料間での温度差が更に低減するため、耐候性試験における再現性が更に向上する。
【0014】
ここで、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダでは、上記
第1および第2の張出部における張出方向への張出幅が、基部における高さ方向に沿った中央領域付近から両端部へ向けて、徐々に小さくなっているようにしてもよい。このようにした場合、上記したように、複数の試料取付部同士が上記高さ方向に沿って屈曲している場合においても、例えば上記したように隣接配置された複数の試料ホルダ間に、隙間が生じにくくなる。したがって、このような場合においても、上記した試料間での温度差が低減し、耐候性試験における再現性が向上することになる。
【0015】
また、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダでは、上記屈曲角が、耐候性試験機に適用される光源から発せられる光の配光曲線に基づいて、複数の試料取付部での放射照度が略等しくなるように規定された角度としてもよい。このようにした場合、耐候性試験機に適用される光源から発せられる光の放射照度が、複数の試料取付部において略等しくなることから、各試料取付部上の試料間での温度差がより一層低減し、耐候性試験における再現性がより一層向上する。
【0016】
また、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダでは、上記試験槽内を循環風が循環している場合において、複数の試料取付部の前方にそれぞれ配置され、耐候性試験機に適用される光源から発せられる光を透過する光透過部材と、複数の試料取付部上における試料と光透過部材との間を通過する上記循環風の風速が抑制されるように、その循環風の風向を制御する第1風向板と、を更に設けてもよい。このようにした場合、複数の試料取付部上における試料と光透過部材との間を通過する上記循環風の風速が、第1風向板によって抑制されることから、上記光源からの輻射熱による、循環風の流入側と流出側との間での温度上昇差(上記高さ方向での温度上昇差)が低減する。その結果、各試料取付部上の試料間での温度差が更に低減し、耐候性試験における再現性が更に向上する。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機では、上記試験槽内を循環風が循環している場合において、上記高さ方向に沿って循環風の下流側に位置する試料取付部上の試料へ向けて、その循環風の風向を制御する第2風向板を更に設けるようにしてもよい。このようにした場合、循環風の下流側に位置する試料取付部上の試料へ向けてその循環風の風向が制御されることから、上記光源からの輻射熱による、循環風の上流側と下流側との間での温度上昇差(上記高さ方向での温度上昇差)が低減する。その結果、各試料取付部上の試料間での温度差が更に低減し、耐候性試験における再現性が更に向上する。
【0018】
ここで、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダでは、上記基部における高さ方向に沿った少なくとも一方の端部に、耐候性試験機に適用される光源から発せられる光を遮光する遮光部材を、更に設けるようにしてもよい。このようにした場合、例えば、
上記円環状の試料枠を大きくして、
この試料枠上への試料ホルダの取付個数を増加させる場合(上記光源から各試料ホルダへの距離をより長く設定する場合)においても、試料ホルダにおける上記端部からの光漏れが抑えられる。その結果、試験槽内の不要な温度上昇が抑えられると共に、光エネルギーの無駄も抑えられる。
【0019】
また、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機では、
上記円環状の試料枠が、
この試料枠上における複数の試料ホルダの取り付け位置をそれぞれ固定する
、ホルダ固定部を有するようにしてもよい。このようにした場合、各試料ホルダを試料枠上に取り付ける際に、各試料ホルダを簡便に取り付けることができると共に、複数の試料ホルダ同士を等間隔で取り付けることも可能となる。その結果、作業の簡便化が図られるため、利便性が向上すると共に、上記した試料ホルダ間の隙間が更に生じにくくなるため、耐候性試験における再現性が更に向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機用試料ホルダおよび耐候性試験機によれば、上記
第1および第2の張出部を設けるようにしたので、例えば、複数の試料ホルダ同士が
円環状の試料枠に沿って互いに隣接配置されたときに、各試料取付部上の試料間での温度差を低減することができる。よって、このような試料ホルダを用いることで、耐候性試験における再現性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(試料取付部を有する基部と張出部とを有する試料ホルダの例)
2.変形例
変形例1(光源からの光の配光曲線を基に試料取付部同士の屈曲角を規定した例)
変形例2(光透過部材および風向板を更に有する試料ホルダの例)
変形例3(試験槽内に風向板を更に備えた耐候性試験機の例)
変形例4(変形例3において試料ホルダに遮光部材を更に設けた場合の例)
変形例5(試料枠にホルダ固定部を更に設けるようにした耐候性試験機の例)
3.その他の変形例
【0023】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機(耐候性試験機1)の概略構成例を模式的に表したものである。
【0024】
耐候性試験機1は、試験槽10内に配置された各種の材料からなる試料(試験片)9について、促進的環境条件下での耐候性試験を行うものである。この耐候性試験機1は、
図1に示したように、温度および湿度等の調節が可能な試験槽10内に、光源11、一対の試料枠12a,12b、試料ホルダ13、受光器14、回転軸120および制御部19を備えている。
【0025】
光源11は、試験槽10内の中央付近に、Z軸方向に沿って延在するように配置されている。光源11は、試験槽10内において周囲に光Loutを放射するものである。この光源11は、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは紫外線蛍光ランプ等のランプ光源により構成されている。
【0026】
試料枠12a,12bはそれぞれ、光源11が中心位置となるように配置された円環状の枠であり、複数の試料ホルダ13をそれぞれ取り付けるためのものである。これらの試料枠12a,12bはそれぞれ、
図1に示したように、回転軸120が回転方向R1に沿って回転することで、この回転方向R1と同じ向きの回転方向R2に沿って、光源11を中心(回転中心)とした一定速度での回転動作を行うようになっている。これにより、後述する各試料ホルダ13、受光器14、および、図示しないブラックパネル温度計もまた、光源11を中心として回転方向R2に沿った回転動作が行われるようになっている。
【0027】
試料ホルダ13は、
図1に示したように、試料枠12a,12bの間を繋ぐようにして取り付けられており、これらの試料枠12a,12bに対して着脱可能となっている。各試料ホルダ13は、試験槽10内において試料9を保持するためのホルダ(耐候性試験機用試料ホルダ)であり、詳細は後述するが、光源11に対向する試料取付部S1〜S3を有している。また、これらの試料取付部S1〜S3上には、試料9、または、後述する受光器14もしくはブラックパネル温度計が配置されている。このような複数の試料ホルダ13全体では、Z軸と直交する平面上において、それらの個数に応じた多角形状をなしている。換言すると、これら複数の試料ホルダ13は、上記した試料枠12a,12b上で多角形を構成するように並んで配置されている。なお、このような試料ホルダ13の詳細構成例については、後述する(
図2〜4)。
【0028】
受光器14は、光源11から放射された光Loutの放射照度を測定するためのもの(照度計)であり、試料枠12a,12b上に取り付けられている。具体的には、例えば
図1に示したように、この受光器14は、試料枠12a,12b上において、試料9が取り付けられていない(配置されていない)試料ホルダ13上に配置されている。なお、この受光器14により得られた受光データ(受光値)は、後述する制御部19へ伝送されるようになっている。
【0029】
前述したブラックパネル温度計は、試料9が取り付けられていない試料ホルダ13上に取り付けられており、試料取付部S1〜S3の表面温度を代表する温度情報を測定するための温度計である。この温度情報としては、光Loutの光エネルギーが温度化された成分と、試験槽10内の環境温度成分と、試料9の表面を流れる風(後述する循環風W)による熱伝達成分などを含んでいる。このようなブラックパネル温度計は、例えば、バイメタル、白金抵抗体、サーミスタまたは熱電対等の感熱体と、黒色に塗装された板とを含んで構成されている。
【0030】
制御部19は、耐候性試験機1全体の動作を制御する部分である。制御部19は、このような制御動作の1つとして、例えば、受光器14により得られた受光データに基づいて光源11の放射強度を制御することにより、試料9への放射照度を制御する機能を有している。また、制御部19は、温度制御の基準を上記したブラックパネル温度計に選択した場合に、このブラックパネル温度計により得られた温度情報に基づいて、試験槽10内の温度制御や、試料9の表面を流れる風(後述する循環風W)の風速の制御を行う機能(温度制御機能)を有している。
【0031】
[試料ホルダ13の詳細構成]
続いて、
図1に加えて
図2〜
図4を参照して、前述した試料ホルダ13の詳細構成例について説明する。
【0032】
図2は、試料ホルダ13の詳細構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図2(A)は、試料ホルダ13を正面から見たときの構成例(Z−X面構成例)を、
図2(B)は、試料ホルダ13の側面構成例(Y−Z面構成例)を、それぞれ示している。また、
図3は、
図2に示した試料ホルダ13の上面構成例(X−Y面構成例)を、模式的に表したものである。
図4は、
図2に示した試料ホルダ13を、X−Y平面内において複数個(この例では2個)で隣接配置させた場合の上面構成例(X−Y面構成例)を、模式的に表したものである。
【0033】
図2に示したように、試料ホルダ13は、基部130と、この基部130からX軸方向(張出方向)に沿ってそれぞれ張り出している張出部131L,131R(羽部)と、基部130の端部にそれぞれ形成された突起部132U,132Dと、を備えている。
【0034】
(基部130)
基部130は、Z軸方向(上記張出方向と直交する高さ方向:例えば垂直方向)に沿って延在する矩形状となっており、このZ軸方向に沿って、試料9が保持される複数の試料取付部(この例では3つの試料取付部S1〜S3)を有している。具体的には
図2(B)に示したように、この基部130は、Z軸方向に平行な試料取付部S2と、この試料取付部S2の上方(Z軸上の正方向)側に配置され、試料取付部S2(Z軸)に対して屈曲している試料取付部S1と、試料取付部S2の下方(Z軸上の負方向)側に配置され、試料取付部S2(Z軸)に対して屈曲している試料取付部S3とを有している。このように試料ホルダ13では、3つの試料取付部S1〜S3同士が、Z軸方向に沿って所定の屈曲角にて屈曲している。
【0035】
(張出部131L,131R)
張出部131L,131Rは、上記した各試料取付部S1〜S3における双方の側面側(X軸方向)へ向かって、基部130から張り出すようにして設けられている。具体的には
図2,
図3に示したように、張出部131Lは、各試料取付部S1〜S3における一方の側面側(X軸上の負方向)へ向かって、張り出している。また、張出部131Lは、各試料取付部S1〜S3における他方の側面側(X軸上の正方向)へ向かって、張り出している。
【0036】
このような一対の張出部131L,131Rにはそれぞれ、
図2〜
図4に示したように、他の試料ホルダ13における張出部131R,131Lが重畳される、重畳面SL,SRが設けられている。換言すると、例えば
図4に示したように、複数の試料ホルダ13同士が、張出部131L,131Rの張出方向(例えば水平方向)に沿って互いに隣接配置されたときに、一方の試料ホルダ13における張出部131L,131Rと、他方の試料ホルダ13における張出部131R,131Lとが、互いに重畳されるようになっている。具体的には、
図4に示した例では、符号P1にて示したように、一方の試料ホルダ13における張出部131L(重畳面SL)と、他方の試料ホルダ13における張出部131R(重畳面SR)とが、互いに重畳されている。
【0037】
また、
図2(A)に示したように、これらの張出部131L,131Rではそれぞれ、張出方向(X軸方向)への張出幅(後述する張出幅WL,WR)が、基部130における高さ方向(Z軸方向)に沿った中央領域付近から両端部へ向けて、徐々に小さく(狭く)なっている。具体的には、この
図2(A)に示した例では、まず、基部130における上記中央領域としての試料取付部S2の形成領域においては、張出部131L,131Rにおける各張出幅は、一定となっている。一方、試料取付部S1,S3の各形成領域では、張出部131L,131Rにおける各張出幅は、基部130の両端部へ向けて、徐々に(この例では線形的な変化にて)小さくなっている。
【0038】
また、
図3,
図4に示したように、これらの張出部131L,131Rにはそれぞれ、試料取付部S2と直交する奥行方向(Y軸方向)に沿って、段差が設けられている。言い換えると、各試料取付部S1〜3と比べ、各張出部131L,131R(各重畳面SL,SR)は、Y軸上の正方向に沿って奥まった位置に配置されている。そして、例えば
図3に示したように、これら一対の張出部131L,131R同士において、上記した張出幅(張出幅WL,WR)と、上記した奥行方向に沿った段差の段差長(段差長LL,LR)とがそれぞれ、互いに異なっている。具体的には、この
図3に示した例では、張出部131Lにおける張出幅WLおよび段差長LLはそれぞれ、張出部131Rにおける張出幅WRおよび段差長LRと比べ、大きくなっている(WL>WR,LL>LR)。このように、一対の張出部131L,131Rは、互いに不均等な張出形状(重畳面形状,段差形状)を有している。
【0039】
(突起部132U,132D)
また、
図2に示したように、試料ホルダ13における基部130の高さ方向(Z軸方向)に沿った両端部には、この高さ方向に沿って突出する突起部132U,132D(凸部)が形成されている。具体的には、基部130における上端部(Z軸上の正方向側の端部)には、突起部132Uが形成されていると共に、基部130における下端部(Z軸上の負方向側の端部)には、突起部132Dが形成されている。このような突起部132U,132Dはそれぞれ、前述した試料枠12a,12b上に試料ホルダ13を取り付ける際に使用される部分である。
【0040】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
この耐候性試験機1では、試験槽10内において、必要に応じて光源11から光Loutが放射される。また、この際に、複数の試料ホルダ13が取り付けられた試料枠12a,12bがそれぞれ、この光源11を中心とした回転動作を行う。これにより、促進的環境条件(加速試験環境)の下で、各試料ホルダ13上の試料9に対して、光Loutが照射される。このような光Loutの放射が所定の試験時間(例えば数時間〜数千時間程度)行われることで、各試料9(材料)の劣化度合い等が評価され、耐候性試験がなされる。
【0041】
このような耐候性試験の際に、制御部19は、受光器14により得られた受光データに基づいて、光源11の放射強度を制御することにより、試料9への放射照度を制御する。これにより、受光データの値が予め設定された試験条件値と略一致(望ましくは一致)するように光源11の放電電力が制御され、安定した放射動作が担保されることになる。
【0042】
この制御部19はまた、図示しないヒータおよび冷凍機等の動作をそれぞれ制御することにより、例えば、試験槽10内の温度や、前述したブラックパネル温度計の温度制御を行う。なお、このような温度制御は、例えばPID(Proportional-Integral-Derivative)制御を用いて行われる。
【0043】
(B.作用・効果)
続いて、
図1〜
図4に加えて
図5,
図6を参照して、本実施の形態の耐候性試験機1および試料ホルダ13における作用および効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
図5は、
図4に示した試料ホルダ13同士の隣接配置の場合における斜視構成例を、模式的に表したものである。また、
図6は、比較例に係る試料ホルダ(試料ホルダ103)を、X−Y平面内において複数個(この例では2個)で隣接配置させた場合における斜視構成例を、模式的に表したものである。
【0044】
(比較例)
まず、
図6に示した比較例の試料ホルダ103は、
図2〜
図5に示した本実施の形態の試料ホルダ13において、一対の張出部131L,131Rがいずれも設けられていない(基部130のみが設けられている)ものに対応している。つまり、この試料ホルダ103は、試料ホルダ13とは異なり、Z軸方向に沿って延在する単純な矩形状となっている。
【0045】
したがって、例えば
図6に示したように、この比較例の試料ホルダ103を、X−Y平面内において(試料枠12a,12b上に)複数個で隣接配置させたときに、それらの試料ホルダ103間に、隙間Gが生じることになる。言い換えると、各試料ホルダ103は、試料枠12a,12b上で隙間Gを空けて取り付けられることになる。このような隙間Gが試料ホルダ103間に生じることで、この比較例に係る耐候性試験機では、例えば以下のような問題が生じるおそれがある。
【0046】
すなわち、まず、試験槽10内では、光源11から試料9へ向けて光Loutを照射する照射試験の際に、この光源11からの輻射熱によって試料9の温度が上昇し過ぎないようにするため、試料9の表面に循環風(後述する循環風W)が流れるようになっている。ところが、試料ホルダ103間の隙間Gから循環風が漏れてしまうと、この循環風の流れが不規則なものとなる(循環風の乱れが大きくなる)結果、各試料ホルダ103(試料取付部S1〜S3)上の試料9間での温度差が増大してしまうおそれがある。そして、このような試料9間での温度差が増大すると、耐候性試験における試験結果にばらつきが生じ、耐候性試験における再現性が低下してしまうおそれがある。
【0047】
また、上記した隙間Gが生じると、この隙間Gにおいて光源11からの光Loutも漏れてしまい、光エネルギーの無駄が大きくなってしまうことになる。更に、このようにして隙間Gから漏れた光Loutは、試験槽10の壁面に当たることで、この試験槽10内の温度を上昇させてしまい、その結果、試料9の表面における温度制御目標であるBPT(ブラックパネル温度)と、試験槽10内の温度とを、同時にコントロールするのが困難となってしまう。加えて、光源11は一般的に紫外線を多く含むものであるため、隙間Gから漏れた光Loutによって、試験槽10内の部品が劣化してしまうおそれもある。
【0048】
更に、耐候性試験の際には一般に、試料9の表面や裏面に対して所定の液体(水や酸化液等)をスプレ噴射する場合があるが、上記した隙間Gから液体が漏れてしまうと、試料9において、本来は噴射されない面にも液体が掛かってしまうおそれがある。
【0049】
ちなみに、本実施の形態および比較例にて説明した回転式(光源11を中心として試料9を回転動作させる方式)の耐候性試験機の他に、固定式(光源11を中心として試料9を固定配置させる方式)の耐候性試験機が挙げられる。ただし、この固定式の耐候性試験機では、例えば試料9間で厚みが異なっている場合、光源11と各試料9との距離も異なることから、試料9間での放射照度のばらつきが大きくなり、耐候性試験における再現性が低下してしまうおそれがある。
【0050】
(実施の形態)
これに対して、本実施の形態の試料ホルダ13では、
図1〜
図4に示したように、試料取付部S1〜S3を有する基部130から、その試料取付部S1〜S3の側面側(X軸方向)へ向かって張り出している、張出部131L,131Rが設けられている。つまり、この試料ホルダ13では、
図6に示した比較例の試料ホルダ103とは異なり、基部130に加えて張出部131L,131Rが設けられている。
【0051】
これにより本実施の形態では、例えば
図5に示したように、複数の試料ホルダ13同士を、X−Y平面内において張出部131L,131Rの張出方向に沿って(試料枠12a,12b上に)隣接配置させたときに、以下のようになる。すなわち、それらの隣接配置された試料ホルダ13間に、隙間Gが生じにくくなる(望ましくは、隙間Gが生じなくなる)。したがって、例えば前述したような、試験槽10内を循環する循環風の乱れが抑えられる結果、本実施の形態では上記比較例と比べ、各試料ホルダ13(試料取付部S1〜S3)上の試料9間での温度差が、低減することになる。よって、本実施の形態の耐候性試験機1では、このような試料ホルダ13を用いることで、上記比較例と比べ、耐候性試験における再現性を向上させる(試験結果のばらつきを抑える)ことが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、試料ホルダ13間に隙間Gが生じにくくなることから、例えば隙間Gからの光Loutの漏れも抑えることができ、上記比較例と比べ、前述した光エネルギーの無駄を低減することも可能となる。更に、本実施の形態では上記比較例と比べ、このような隙間Gからの光Loutの漏れに起因した、試験槽10内の不要な温度上昇を抑えることや、光Loutに含まれる紫外線による、試験槽10内の部品劣化を抑えることも可能となる。加えて、例えば耐候性試験の際に、前述した液体のスプレ噴射を行う場合においても、このような隙間Gからの液体の漏れを低減することができ、例えば上記比較例とは異なり、試料9において本来は噴射されない面に液体が掛かってしまうおそれを、回避することも可能となる。
【0053】
また、本実施の形態の試料ホルダ13では、
図2〜
図5に示したように、張出部131L,131Rにはそれぞれ、他の試料ホルダ13における張出部131R,131Lが重畳される、重畳面SL,SRが設けられている。換言すると、例えば
図4に示したように、複数の試料ホルダ13同士が、張出部131L,131Rの張出方向に沿って互いに隣接配置されたときに、一方の試料ホルダ13における張出部131L,131Rと、他方の試料ホルダ13における張出部131R,131Lとが、互いに重畳されるようになっている。このようにして、隣接配置された複数の試料ホルダ13同士において、張出部131L,131Rが互いに重畳される(重畳面SL,SRが設けられる)ようにしたことで、それらの試料ホルダ13間に、隙間Gが更に生じにくくなる。したがって、例えば上記した循環風の乱れが更に抑えられる結果、各試料ホルダ13(試料取付部S1〜S3)上の試料9間での温度差が更に低減するため、耐候性試験における再現性を更に向上させることが可能となる。
【0054】
更に、本実施の形態の試料ホルダ13では、例えば
図3に示したように、これら一対の張出部131L,131R同士において、張出方向(X軸方向)への張出幅WL,WRと、奥行方向(Y軸方向)に沿った段差の段差長LL,LRとがそれぞれ、互いに異なっている。これにより本実施の形態では、例えば上記したように隣接配置された複数の試料ホルダ13間に、隙間Gがより一層生じにくくなると共に、張出部131L,131R同士を重畳させる際に、これら張出部131L,131R同士の干渉が防止される。したがって、上記した試料9間での温度差がより一層低減するため、耐候性試験における再現性をより一層向上させることが可能となると共に、試料ホルダ13の取り付け作業が容易となるため、利便性を向上させることも可能となる。
【0055】
加えて、本実施の形態の試料ホルダ13では、例えば
図2,
図5に示したように、上記張出方向と直交する高さ方向(Z軸方向)に沿って、基部130に複数の試料取付部(この例では3つの試料取付部S1〜S3)が設けられている。このような複数の試料取付部S1〜S3が基部130に設けられることで、試料ホルダ13の試験槽10内への1回の着脱作業によって、複数の試料9(この例では3つの試料9)の取り付けや取り外しが、同時に行われるようになる。その結果、本実施の形態では、作業の簡便化が図られるため、利便性を向上させることが可能となる。また、この試料ホルダ13においては、上記した張出部131L,131Rが設けられていることから、試料ホルダ13全体が上記した高さ方向に長くなっても、機械的な強度低下を防止することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態の試料ホルダ13では、例えば
図2(B),
図5に示したように、このような複数の試料取付部S1〜S3同士が、上記した高さ方向(Z軸方向)に沿って、所定の屈曲角にて屈曲している。これにより本実施の形態では、例えば、光源11から発せられる光Loutの放射照度が、これら複数の試料取付部S1〜S3間で、ばらつきにくくなる。その結果、本実施の形態では、各試料ホルダ13(試料取付部S1〜S3)上の試料9間での温度差が更に低減するため、耐候性試験における再現性を更に向上させることが可能となる。
【0057】
更に、本実施の形態の試料ホルダ13では、例えば
図2(A)に示したように、各張出部131L,131Rにおける張出方向(X軸方向)への張出幅WL,WRが、基部130における高さ方向(Z軸方向)に沿った中央領域付近から両端部へ向けて、徐々に小さくなっている。これにより本実施の形態では、上記したように、複数の試料取付部S1〜S3同士が上記した高さ方向に沿って屈曲している場合においても、隣接配置された複数の試料ホルダ13間に、隙間Gが生じにくくなる。したがって、このような場合においても、上記した試料9間での温度差が低減し、耐候性試験における再現性を向上させることが可能となる。
【0058】
なお、本実施の形態では、これまでに説明した試料ホルダ13の代わりに、例えば以下のような試料ホルダ13A,13Bを用いるようにしてもよい。これらの試料ホルダ13A,13Bを用いた場合においても、基本的には、試料ホルダ13を用いた場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
具体的には、まず、
図7(A),
図7(B)に示した試料ホルダ13Aでは、各試料取付部S1〜S3における一方の側面側(X軸方向)のみへ向かって、基部130から張出部が張り出すようにして設けられている。具体的には、この
図7(A),
図7(B)に示した試料ホルダ13Aの例では、張出部131Lが、各試料取付部S1〜S3における一方の側面側(X軸上の負方向)へ向かって、張り出している。つまり、この試料ホルダ13Aでは試料ホルダ13とは異なり、張出部131R(各試料取付部S1〜S3における他方の側面側(X軸上の正方向)へ向かって張り出している張出部)は、設けられてない。
【0060】
また、例えば
図8(A),
図8(B)に示した試料ホルダ13Bでは、上記した高さ方向(Z軸方向)に沿って、基部130に2つの試料取付部S1,S2が設けられている。すなわち、試料ホルダ13では、基部130に3つの試料取付部S1〜S3が設けられているのに対し、この試料ホルダ13Bでは、基部130に2つの試料取付部S1,S2が設けられている。なお、このような試料ホルダ13Bにおいても、上記した試料ホルダ13Aの場合と同様に、一対の張出部131L,131Rのうちの一方のみが設けられているようにしてもよい。
【0061】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜5)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
[変形例1]
図9,
図10はそれぞれ、変形例1(変形例1−1,1−2)に係る試料ホルダ13等の構成例を、模式的に表したものである。なお、
図10においては、便宜上、光源11を光源11’として示している。
【0063】
まず、これらの変形例1−1,1−2ではそれぞれ、前述した複数の試料取付部同士の屈曲角が、光源11(または光源11’)から発せられる光Loutの配光曲線に基づいて、これら複数の試料取付部での放射照度が略等しくなる(望ましくは等しくなる)ように規定された角度となっている。なお、この配光曲線は、光源の種類(光源11または光源11’など)や、光源11(または光源11’)から試料取付部S1〜3(または試料取付部S1,S2)までの距離によって、異なるものである。
【0064】
具体的には、
図9に示した変形例1−1では、前述した試料ホルダ13または試料ホルダ13Aにおける3つの試料取付部S1〜S3同士の屈曲角θ1が、以下のようにして規定されている。すなわち、光源11から発せられる光Loutの配光曲線C1に基づいて、これら3つの試料取付部S1〜S3での放射照度が略等しくなるように、屈曲角θ1=例えば30°と規定されている。
【0065】
一方、
図10に示した変形例1−2では、前述した試料ホルダ13Bにおける2つの試料取付部S1,S2同士の屈曲角θ2が、以下のようにして規定されている。すなわち、光源11’から発せられる光Loutの配光曲線C2に基づいて、これら2つの試料取付部S1,S2での放射照度が略等しくなるように、屈曲角θ2=例えば12.5°と規定されている。なお、この配光曲線C2は、上記した配光曲線C1とは、光源の種類(光源11’)や、光源11’から試料取付部S1,S2までの距離が、異なるものである。
【0066】
このような構成により変形例1−1,1−2では、光源11から発せられる光Loutの放射照度が、複数の試料取付部において略等しくなる(望ましくは等しくなる)ことから、各試料取付部上の試料9間での温度差が、より一層低減することになる。よって、本変形例では、耐候性試験における再現性をより一層向上させることが可能となる。
【0067】
[変形例2]
図11は、変形例2に係る試料ホルダ(試料ホルダ13C)の側面構成例(Y−Z面構成例)を、模式的に表したものである。本変形例の試料ホルダ13Cは、
図11に示したように、実施の形態で説明した試料ホルダ13において、光透過部材133、風向板134および遮風板136を更に設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0068】
光透過部材133は、各試料取付部S1〜S3(上の試料9)の前方に配置されており、光源11から発せられる光Loutを透過する部材である。具体的には、この光透過部材133は、例えば、光源11からの光Loutのうち、紫外光の中の窓ガラス等を通る光のみを透過させるようになっている。
【0069】
遮風板136は、試料ホルダ13Cと光透過部材133との間の側面に配置されており、各試料取付部S1〜S3上における試料9と光透過部材133との間から流出する循環風Wが抑制されるように設けられている部材である。これにより、通常の耐候性試験の場合と比べて、試料9の温度を上昇させることが可能となっている。
【0070】
風向板134は、
図11に示したように、各試料取付部S1〜S3上における試料9と光透過部材133との間を通過する循環風Wの風速が抑制されるように、この循環風Wの風向を制御する部材である。具体的には、この風向板134は、この例では、試料ホルダ13Cにおける基部130の下方(循環風Wの下流側)に設けられており、上記したようにして通過する循環風Wの風路を遮るようにして配置されている。なお、この循環風Wは、前述したように、試験槽10内を循環して試料9の表面を流れるようにする風であり、光源11から試料9へ向けて光Loutを照射する照射試験の際に、この光源11からの輻射熱によって試料9の温度が上昇し過ぎるのを防ぐようになっている。このような風向板134は、本発明における「第1風向板」の一具体例に対応している。
【0071】
このような構成により、本変形例の試料ホルダ13Cでは、
図11に示したように、循環風Wが、各試料取付部S1〜S3上における試料9と光透過部材133との間を通過すると(循環風Win)、この循環風Wの下流側に配置された風向板134によってその風路が遮られる。これにより、この循環風Wの風速が抑えられたうえで、試料ホルダ13C内から循環風Wが流出することになる(循環風Wout)。このようにして循環風Wの風速が抑えられることで、光源11からの輻射熱による、循環風Wの流入側と流出側との間での温度上昇差(試料ホルダ13Cの高さ方向での温度上昇差)が、低減する。つまり、この例では、循環風Wの流入側(上流側)に位置する試料取付部S1上の試料9と、循環風Wの流出側(下流側)に位置する試料取付部S3上の試料9との間での温度上昇差が、低減することになる。このようにして、本変形例では、各試料取付部S1〜S3上の試料9間での温度差が更に低減し、耐候性試験における再現性を更に向上させることが可能となる。
【0072】
[変形例3]
図12は、変形例3に係る耐候性試験機(耐候性試験機1A)の構成例を、模式的に表したものである。本変形例の耐候性試験機1Aは、
図12に示したように、実施の形態で説明した耐候性試験機1において、試験槽10内に風向板18を更に設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0073】
風向板18は、試験槽10内における循環風Wの上流側に配置されており、試料ホルダ13の高さ方向(Z軸方向)に沿って循環風Wの下流側に位置する試料取付部S3上の試料9へ向けて、この循環風Wの風向を制御する部材である。なお、このような風向板18は、本発明における「第2風向板」の一具体例に対応している。
【0074】
このような構成により、本変形例の耐候性試験機1Aでは、
図12に示したように、循環風Wの下流側に位置する試料取付部S3上の試料9へ向けてその循環風Wの風向が制御されることから、光源11からの輻射熱による、循環風Wの上流側と下流側との間での温度上昇差(試料ホルダ13の高さ方向での温度上昇差)が、低減する。つまり、この例では、循環風Wの上流側に位置する試料取付部S1上の試料9と、循環風Wの下流側に位置する試料取付部S3上の試料9との間での温度上昇差が、低減することになる。このようにして、本変形例においても、各試料取付部S1〜S3上の試料9間での温度差が更に低減し、耐候性試験における再現性を更に向上させることが可能となる。
【0075】
[変形例4]
図13は、変形例4に係る耐候性試験機(耐候性試験機1B)の構成例を、模式的に表したものである。本変形例の耐候性試験機1Bは、上記変形例3で説明した耐候性試験機1Aにおいて、試料ホルダ13の代わりに本変形例の試料ホルダ(試料ホルダ13D)を設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0076】
この試料ホルダ13Dは、
図13に示したように、試料ホルダ13において遮光部材135U,135Dを更に設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0077】
遮光部材135U,135Dは、基部130における高さ方向(Z軸方向)に沿った両端部に設けられており、光源11から発せられる光Loutを遮光する部材である。具体的には、
図13中の「×(バツ)」印にて示したように、これらの遮光部材135U,135Dの配置箇所においては、光源11からの光Loutが遮光され、それらの後方へは光Loutが進行しないようになっている。なお、これらの遮光部材135U,135Dのうちの一方のみを設けるようにしてもよい。すなわち、基部130における高さ方向に沿った一方の端部にのみ、遮光部材を設けるようにしてもよい。
【0078】
このような構成により、本変形例の耐候性試験機1Bでは、例えば
図13中の矢印P2で示したように、試料枠12a,12bを大きくして、これらの試料枠12a,12b上への試料ホルダ13Dの取付個数を増加させる場合(光源11から各試料ホルダ13Dへの距離をより長く設定する場合)に、以下のようになる。すなわち、このような場合においても、上記した遮光部材135U,135Dが各試料ホルダ13Dに設けられていることから、各試料ホルダ13Dにおける両端部からの光漏れが抑えられる(望ましくは防止される)。その結果、本変形例では、試験槽10内の不要な温度上昇を抑えることが可能となると共に、光エネルギーの無駄も抑えることが可能となる。
【0079】
[変形例5]
図14は、変形例5に係る耐候性試験機(耐候性試験機1C)の構成例を、模式的に正面図(Z−X正面図)にて表したものである。本変形例の耐候性試験機1Cは、
図14に示したように、実施の形態で説明した耐候性試験機1において、試料枠12aの代わりに本変形例の試料枠(試料枠12c)を設けたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0080】
この試料枠12cは、
図14に示したように、試料枠12aにおいて、複数の開口部121(凹部)を更に設けたものに対応している。これらの開口部121は、試料枠12c上における各試料ホルダ13の取り付け位置をそれぞれ固定する、ホルダ固定部として機能する部分である。試料枠12cにおける開口部121(凹部)の上面の高さは、試料枠12aの上面との高さと同じである。このようにすることで、試料枠12aと試料枠12cとに試料ホルダ13を取り付けた際に、試料ホルダ13の高さが同じになる。よって、試料枠12cに試料ホルダ13を取り付けた場合においても、光源11と試料ホルダ13との位置関係が、試料枠12aの場合と同じになる。
【0081】
このような構成により、本変形例の耐候性試験機1Cでは、各試料ホルダ13を試料枠12c,12b上に取り付ける際に、各試料ホルダ13を簡便に取り付けることができると共に、複数の試料ホルダ13同士をX軸方向に沿って等間隔で取り付けることも可能となる。その結果、本変形例では、作業の簡便化が図られるため、利便性を向上させることが可能となると共に、前述した試料ホルダ13間の隙間Gが更に生じにくくなるため、耐候性試験における再現性を更に向上させることも可能となる。
【0082】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0083】
例えば、上記実施の形態等では、耐候性試験機における各機器の構成(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0084】
また、上記実施の形態等では、前述したランプ光源を用いて本発明における「光源」を構成する場合の例について説明したが、これには限られず、例えばLED(Light Emitting Diode)等の他の光源を用いて、本発明における「光源」を構成するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態等では、紫外光を透過させる紫外光透過部材を用いた場合の例について説明したが、これには限られず、例えば、紫外光を透過させない部材を用いてもよいし、赤外光を透過させない部材を用いるようにしてもよい。
【0086】
更に、上記実施の形態等では、試料ホルダにおける構成(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態等では、試料ホルダにおける複数の試料取付部同士が、互いに屈曲している場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、これら複数の試料取付部同士が互いに屈曲していない(平坦となっている)ようにしてもよい。また、試料ホルダ(基部)に試料取付部が複数設けられている場合だけではなく、例えば、試料ホルダ(基部)に試料取付部が1つだけ設けられているようにしてもよい。更に、上記実施の形態等では、試料ホルダが試験槽内に複数配置されている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、試験槽内に試料ホルダが1つだけ配置されているようにしてもよい。
【0087】
加えて、上記実施の形態等では、制御部による各種の制御動作や耐候性試験方法等について説明したが、上記実施の形態等で説明した手法には限られず、他の手法を用いて各種の制御動作や耐候性試験等を行うようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態等で説明した一連の制御は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、上記した各機能をコンピュータ(マイクロコンピュータ等)により実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【解決手段】試料ホルダ13は、耐候性試験機1における試験槽10内に配置されると共に試料9を保持するためのホルダであり、この試料9が保持される試料取付部S1〜S3を有する基部130と、試料取付部S1〜S3の少なくとも一方の側面側(X軸方向)へ向かって、基部130から張り出すように設けられた張出部131L,131Rとを備えている。